▶ 前澤化成工業株式会社の特許一覧
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096368
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】水抜き配管装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/64 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
E04B1/64 B
E04B1/64 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212070
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000201582
【氏名又は名称】前澤化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】大島 ゆかり
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA02
2E001DH14
2E001FA21
2E001GA24
2E001GA65
2E001HD11
2E001HD13
(57)【要約】
【課題】基礎の立上部の厚さが異なる場合でも対応可能な水抜き配管装置を提供すること。
【解決手段】建物の基礎コンクリート1の立上部3によって囲まれた空間と基礎コンクリート1の外部とを連通する水抜き配管装置11であって、立上部3の厚さに応じて水抜き配管装置11の両端開口間、つまり、内スリーブ管11Bの一端開口である流入口13Aから外スリーブ管11Aの他端開口である流出口13Bまでの長さを変更可能であることで、長さの異なる複数種類の水抜き配管を用意せずとも、厚さの異なる基礎の立上部に対応可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎の立上部によって囲まれた空間と、基礎の外部と、を連通する水抜き配管装置であって、
前記立上部の厚さに応じて前記水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能である
ことを特徴とする水抜き配管装置。
【請求項2】
互いに重合する複数の管体からなり、
前記管体同士の重合範囲を変更することで前記水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の水抜き配管装置。
【請求項3】
複数の管体からなり、
前記管体同士を連結させることで前記水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の水抜き配管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の基礎内に溜まった水を外部に排出するための水抜き配管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベタ基礎工法等によって形成された基礎の立上部を貫通するように排水管を設けることで、基礎の立上部で囲まれた空間に水が溜まった際に、その水を水抜き配管によって外部に排出できるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-207499号公報
【特許文献2】特開2020-66941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に基礎の立上部の厚さは120mm以上であるが、その厚さは住宅メーカーや住宅の仕様等により150mm、160mm、またはそれ以上の厚さとなる場合がある。このため、それぞれの厚さに対応した長さの水抜き配管を製造する必要があり、また、基礎の立上部の厚さが既存の水抜き配管の長さでは対応できない場合に、既存の長さの水抜き配管を現場で加工する必要があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、基礎の立上部の厚さが異なる場合でも対応可能な水抜き配管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の請求項1の水抜き配管装置は、
建物の基礎の立上部によって囲まれた空間と、基礎の外部と、を連通する水抜き配管装置であって、
前記立上部の厚さに応じて前記水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、基礎の立上部の厚さに応じて水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能であるため、長さの異なる複数種類の水抜き配管を用意せずとも、厚さの異なる基礎の立上部に対応可能となる。
【0007】
本発明の請求項2の水抜き配管装置は、請求項1に記載の水抜き配管装置であって、
互いに重合する複数の管体からなり、
前記管体同士の重合範囲を変更することで前記水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、管体同士の重合範囲を変更することで水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能となる。
【0008】
本発明の請求項3の水抜き配管装置は、請求項1に記載の水抜き配管装置であって、
複数の管体からなり、
前記管体同士を連結させることで前記水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、管体同士を連結させることで、水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1としての水抜き配管装置を用いた床下排水構造を示す断面図である。
【
図2】水抜き配管装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図3】蓋部材を除く水抜き配管装置の内部構造を示す分解斜視図である。
【
図4】水抜き配管装置の内部構造を示す断面図である。
【
図5】外スリーブ管の凹溝部と内スリーブ管の凸条部との係止状態を示す拡大断面図である。
【
図6】(a)、(b)は重合長さ寸法を変更する一例を示す断面図である。
【
図7】(a)~(c)は水抜き配管装置を用いた床下排水構造の施工の一例を示す図である。
【
図8】(a)は蓋部材が外スリーブ管に取り付けられた状態、(b)は化粧処理後に蓋部材が外スリーブ管に取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図9】本発明の変形例1としての水抜き配管装置の内部構造を示す縦断面図である。
【
図10】本発明の実施例2としての水抜き配管装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図11】
図10の水抜き配管装置の内部構造を示す断面図である。
【
図12】(a)~(c)は排水経路長さ寸法を変更する一例を示す断面図である。
【
図13】(a)は蓋部材が外スリーブ管に取り付けられた状態、(b)は化粧処理後に蓋部材が外スリーブ管に取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図14】(a)は本発明の変形例2としての蓋部材が本体管に取り付けられた状態、(b)は化粧処理後に蓋部材が本体管に取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図15】(a)は本発明の変形例3としての係合管が本体管に連結された状態を示す断面図、(b)は本発明の変形例4としての係合管が本体管に連結された状態を示す断面図、(c)は本発明の変形例5としての係合管が本体管に連結された状態を示す断面図である。
【
図16】(a)は本発明の変形例6としての水抜き配管装置の構成を示す斜視図、(b)、(c)は係合管の係合態様を変えて排水経路長さ寸法を変更した状態を示す断面図である。
【
図17】(a)は本発明の変形例7としての水抜き配管装置の構成を示す断面図、(b)、(c)は係合管の係合態様を変えて排水経路長さ寸法を変更した状態を示す断面図である。
【
図18】(a)、(b)は水抜き配管装置の形状の変形例を示す縦断面図である。
【
図19】水抜き配管装置を、勾配を付けて設置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[形態1]
形態1は、建物の基礎の立上部によって囲まれた空間と、基礎の外部と、を連通する水抜き配管装置であって、
前記立上部の厚さに応じて前記水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、基礎の立上部の厚さに応じて水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能であるため、長さの異なる複数種類の水抜き配管を用意せずとも、厚さの異なる基礎の立上部分に対応可能となる。
【0011】
[形態2]
形態2は、形態1に記載の水抜き配管装置であって、
互いに重合する複数の管体からなり、
前記管体同士の重合範囲を変更することで前記水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、管体同士の重合範囲を変更することで水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能となる。
【0012】
[形態3]
形態3は、形態1に記載の水抜き配管装置であって、
一方の管体に対して他方の管体をスライドさせることで前記重合範囲を変更可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、簡単な作業で重合範囲を変更することができる。
【0013】
[形態4]
形態4は、形態3に記載の水抜き配管装置であって、
前記一方の管体に対して前記他方の管体を係止可能な係止部を備え、
前記係止部は、前記重合範囲が異なる複数の係止部を含む
ことを特徴としている。
この特徴によれば、一方の管体に対して他方の管体を基礎の立ち上げ部の厚さに応じた係止部に係止させることで、一方の管体と他方の管体との位置ずれを防止できる。
【0014】
[形態5]
形態5は、形態4に記載の水抜き配管装置であって、
前記係止部は、前記重合範囲を大きくする方向への係止力が、前記重合範囲を小さくする方向への係止力よりも大きい
ことを特徴としている。
この特徴によれば、施工時に、設定した長さよりも短い長さとなってしまうことを防止できる。
【0015】
[形態6]
形態6は、形態2に記載の水抜き配管装置であって、
一方の管体に対して他方の管体が螺合し、
前記一方の管体に対して前記他方の管体を回転させることで前記重合範囲を変更可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、簡単な作業で重合範囲を変更することができる。
【0016】
[形態7]
形態7は、形態2~6のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
前記一方の管体または前記他方の管体の少なくとも一方の端部に指掛け部を備える
ことを特徴としている。
この特徴によれば、重合範囲を変更する作業が容易となる。
【0017】
[形態8]
形態8は、形態1に記載の水抜き配管装置であって、
複数の管体からなり、
前記管体同士を連結させることで前記水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、管体同士を連結させることで、水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能となる。
【0018】
[形態9]
形態9は、形態8に記載の水抜き配管装置であって、
複数の管体は、本体管と、連結管と、を含み、
前記本体管に前記連結管を連結させることが可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、本体管に連結管を連結させることで、水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能となる。
【0019】
[形態10]
形態10は、形態9に記載の水抜き配管装置であって、
前記連結管に前記連結管を連結させることが可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、本体管に連結管を連結させるだけでなく、連結管にさらに連結管を連結させることを可能とすることで、3種類以上の長さに対応可能となる。
【0020】
[形態11]
形態11は、形態2~10のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
前記管体の外周面に弾性部材または非加硫部材を設ける
ことを特徴としている。
この特徴によれば、基礎のコンクリートと管体との間に隙間が生じることがなく、隙間からの害虫等の侵入を防止できる。
【0021】
[形態12]
形態12は、形態11に記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性部材または前記非加硫部材は、防蟻剤を含有する
ことを特徴としている。
この特徴によれば、シロアリに対する防蟻効果を高めることができる。
【0022】
[形態13]
形態13は、形態11または12に記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性部材または前記非加硫部材は、前記管体の外周面のうち少なくとも外部側端部または外部側端部近傍を被覆するように設けられる
ことを特徴としている。
この特徴によれば、害虫等の侵入を効果的に防止できる。
【0023】
[形態14]
形態14は、形態13に記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性部材または前記非加硫部材は、
第1部材と、前記第1部材よりも硬度の低い第2部材と、を含み、
前記管体の外周面のうち外部側端部または外部側端部近傍に前記第1部材が設けられ、前記第1部材よりも内部側に前記第2部材が設けられる
ことを特徴としている。
この特徴によれば、外部側端部または外部側端部近傍には、相対的に硬度の高い第1部材が設けられることで、弾性部材または非加硫部材の流出を防止できる一方、第1部材よりも内部側に相対的に硬度の低い第2部材が設けられることで、基礎のコンクリートと管体との間に隙間が生じることを確実に防止できる。
【0024】
[形態15]
形態15は、形態1~14のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
外部側開口には、該開口を閉鎖する閉鎖部材が取り付けられる
ことを特徴としている。
この特徴によれば、外部側開口からの害虫等の侵入を防止できる。
【0025】
[形態16]
形態16は、形態15に記載の水抜き配管装置であって、
前記閉鎖部材は、鍔部を備え、
前記鍔部は、中心側から外縁側にかけて肉薄となるように前記外部側開口への取付方向に向けて傾斜する傾斜面が形成されている
ことを特徴としている。
この特徴によれば、閉鎖部材を取り付けた際の意匠性が向上する。
【0026】
[形態17]
形態17は、形態15または16に記載の水抜き配管装置であって、
前記閉鎖部材は、鍔部を備え、
前記鍔部の外径は、前記外部側開口の外径よりも大きい
ことを特徴としている。
この特徴によれば、閉鎖部材を取り付けた際に、鍔部により外部側開口の周囲の基礎の外側面または化粧処理が施された場合の化粧面に重なるため、意匠性が向上する。
【0027】
[形態18]
形態18は、形態15~17のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
前記閉鎖部材は、管内周面に対して螺合する螺合部を備える
ことを特徴としている。
この特徴によれば、閉鎖部材による外部側開口の閉鎖が容易に解かれてしまうことを防止できる。
【0028】
[形態19]
形態19は、形態18に記載の水抜き配管装置であって、
前記閉鎖部材は、管内周面と接触するシール部材を備え、
前記シール部材は、前記螺合部を螺合する場合に、管内周面に螺合する範囲よりも前記外部側開口側の所定範囲にわたり管内周面と接触する
ことを特徴としている。
この特徴によれば、基礎の外側面に化粧処理が施され、外部側開口から基礎の外側面または化粧処理を施した場合の化粧面までの厚みが増すことで、閉鎖部材の螺合部を最奥まで螺合できない場合でも、シール部材を管内周面と接触させることができる。
【0029】
[形態20]
形態20は、形態18に記載の水抜き配管装置であって、
前記閉鎖部材は、管内周面と接触するシール部材を備え、
前記シール部材は、前記螺合部を螺合する場合に、管内周面に螺合する範囲よりも内部側の所定範囲にわたり管内周面と接触する
ことを特徴としている。
この特徴によれば、基礎の外側面に化粧処理が施され、外部側開口から基礎の外側面または化粧処理を施した場合の化粧面までの厚みが増すことで、閉鎖部材の螺合部を最奥まで螺合できない場合でも、シール部材を管内周面と接触させることができる。
【0030】
[形態21]
形態21は、形態1~20のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
管体を所定角度傾斜して配置したときに外部側開口の端面が垂直となる
ことを特徴としている。
この特徴によれば、管体を所定角度勾配を付けて設置した場合に、基礎の外側面と外部側開口の端面とを揃えることができる。
【0031】
以下に、本発明に係る水抜き配管装置の実施形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0032】
本発明の実施例1としての水抜き配管装置について、
図1~
図8を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1としての水抜き配管装置を用いた床下排水構造を示す断面図である。
図2は、水抜き配管装置の構成を示す分解斜視図である。
図3は、蓋部材を除く水抜き配管装置の内部構造を示す分解斜視図である。
図4は、水抜き配管装置の内部構造を示す断面図である。
図5は、外スリーブ管の凹溝部と内スリーブ管の凸条部との係止状態を示す拡大断面図である。
図6は、(a)、(b)は重合長さ寸法を変更する一例を示す断面図である。
図7は、(a)~(c)は水抜き配管装置を用いた床下排水構造の施工の一例を示す図である。
図8は、(a)は蓋部材が外スリーブ管に取り付けられた状態、(b)は化粧処理後に蓋部材が外スリーブ管に取り付けられた状態を示す断面図である。
【0033】
[水抜き配管装置11の構成]
図1に示されるように、住宅等の建物の床下構造としての本実施例の基礎コンクリート1(基礎)は、主に配筋とコンクリートとから構成され、底盤コンクリート部2(床スラブ)と、該底盤コンクリート部2の周縁部に立設される立上部3と、からなる所謂ベタ基礎とされている。底盤コンクリート部2及び立上部3の内部には、複数の鉄筋(図示略)が縦横に交差するように配設されている。立上部3は、平面視で底盤コンクリート部2の周縁部に枠状に設けられているため、例えば、住宅建築中の降雨、または住宅建築後の大雨による床下浸水により、立上部3で囲まれた空間に水が溜まることがある。そして、この立上部3で囲まれた空間に溜まった水を基礎コンクリート1外へ排水するための排水経路として、床下排水構造10が設けられている。
【0034】
図1に示されるように、床下排水構造10は、建物の基礎コンクリート1の立上部3によって囲まれた空間と基礎コンクリート1の外部とを連通する水抜き配管装置11と、蓋部材12と、を有している。水抜き配管装置11は、立上部3で囲まれた空間に溜まった水を基礎コンクリート1外へ排水するためのものであって、管軸方向の両端開口のうち基礎内に臨む流入口13Aと、この流入口13Aに連通して基礎外に臨む流出口13Bと、を有し、立上部3で囲まれた空間に溜まった基礎内の水が流入口13Aから水抜き配管装置11の内部に流入し、流出口13Bから基礎外に流出されるようになっている。水抜き配管装置11を用いて排水しないときには、流出口13Bを蓋部材12により閉鎖することで、基礎コンクリート1内への水やシロアリ等の害虫や小動物、埃、ごみ等の進入が防止されるようになっている。
【0035】
図2~
図4に示されるように、水抜き配管装置11は、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂材(PVC)等により円筒状に形成される外スリーブ管11A(管体)と、例えば、ポリエチレン樹脂材(PE)等により円筒形状に形成される内スリーブ管11B(管体)と、外スリーブ管11Aの外周面に巻装される防蟻シート11C、11C’と、を有する。
【0036】
外スリーブ管11Aの管軸方向の長さは所定の長さ寸法L1(例えば、L1=120mm)とされ、内スリーブ管11Bの管軸方向の長さは所定の長さ寸法L2(例えば、L1=120mm)とされている。また、内スリーブ管11Bの外径寸法L7は、外スリーブ管11Aの内径寸法L5よりも短寸とされていることで(L7<L5)、内スリーブ管11Bは外スリーブ管11A内に挿入可能とされており、外スリーブ管11Aに対し内スリーブ管11Bを管軸方向にスライド移動させて重合(重複)する重合寸法L3(重合範囲)を変更することで、水抜き配管装置11の全長寸法、つまり、流入口13Aから流出口13Bまでの排水経路長さ寸法L4を、長さ寸法L1よりも長寸の任意の長さ寸法に段階的に変更可能とされている。
【0037】
外スリーブ管11Aの流出口13B側の端部には、内径寸法及び外径寸法が他の部分よりも長寸の拡径部21が形成されており、該拡径部21側から蓋部材12が挿入可能とされている。また、外スリーブ管11Aの内周面には、管軸に対し直交する円環状の凹溝部22が、流入口13A側の開口端部から所定間隔L20(例えば、L20=10mm)おきに複数(本実施例では10個)形成されている。
【0038】
内スリーブ管11Bは、一端側が外スリーブ管11A内に挿入可能とされ、他端側に流入口13Aを有する。内スリーブ管11Bの外周面には、管軸に対し直交する円環状の凸条部32が、流出口13Bと反対側の開口端部から所定間隔L20(例えば、L20=10mm)おきに複数(本実施例では10個)形成されている。凸条部32の外径寸法L8は、外スリーブ管11Aの内径寸法L5よりも若干長寸とされており(L8>L5)、凸条部32が弾性変形することにより外スリーブ管11A内に挿入可能であり、凸条部32が凹溝部22内に嵌入して係止されることで、外スリーブ管11Aに対する内スリーブ管11Bの管軸方向への移動が規制される。
【0039】
より詳しくは、
図5に示されるように、凹溝部22と凸条部32は、管軸方向に沿う縦断面視が略三角形状をなすように形成され、係止部としての凸条部32の先端が被係止部としての凹溝部22内に入り込んで係止されるようになっている。係止状態において、係止力を上回る外力が管軸方向に加えられると、凸条部32の先端が弾性変形して凹溝部22から逸脱して管軸方向にスライド移動可能となる。
【0040】
また、凸条部32は、流入口13A側の傾斜面32Aと流出口13B側の傾斜面32Bとを有し、傾斜面32Aの下端と傾斜面32Bの下端とを結ぶ管軸に平行な線に対する傾斜面32Bの傾斜角度θ2は、管軸に平行な線に対する傾斜面32Aの傾斜角度θ1よりも大きくなるように形成されている(θ2>θ1)。
【0041】
つまり、傾斜面32Bの方が傾斜面32Aよりも管軸に対する傾斜角度が大きいため、外スリーブ管11A内に内スリーブ管11Bを押し込む際に傾斜面32Bが凹溝部22の内面に当接するときの係止力の方が、外スリーブ管11Aから内スリーブ管11Bを引き抜く際に傾斜面32Aが凹溝部22の内面に係止されるときの係止力よりも大きくなっている。このような構造により、施工時に、設定した長さよりも短い長さとなってしまうことを防止できる。
【0042】
尚、本実施例では、内スリーブ管11Bの外周面に形成された複数の凸条部32と、外スリーブ管11Aの内周面に形成された複数の凹溝部22とからなる複数の係止手段のうち、同時に係止状態となる係止手段の個数を変更することで重合寸法L3を変更可能な形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、外スリーブ管11Aの内周面に形成された複数の凹溝部22のいずれかに、内スリーブ管11Bの外周面に形成された1個の凸条部32を係止させることで重合寸法L3を変更可能、または、外スリーブ管11Aの内周面に形成された1個の凹溝部22に、内スリーブ管11Bの外周面に形成された複数の凸条部32のうちいずれかを係止させることで重合寸法L3を変更可能としてもよい。
【0043】
また、内スリーブ管11Bの流出口13B側の端部にシール部材を設け、外スリーブ管11Aの内周面に対して密着するようにするようにしてもよく、このようにすることで、基礎の施工後に外スリーブ管11Aと内スリーブ管11Bの隙間からコンクリート内に水がしみ出ることを防止できる。
【0044】
また、内スリーブ管11Bの外周面における流入口13A側の端部には、外側に突出する指掛け部としてのフランジ部33が形成されている。フランジ部33の外径寸法L9は、外スリーブ管11Aの外径寸法L6よりも長寸とされているため(L9>L6)、フランジ部33が外スリーブ管11Aの端部に近づいたときでも、フランジ部33が外スリーブ管11Aの外周面より外方に突出するため、フランジ部33に容易に指を掛けることができる。
【0045】
尚、本実施例では、指掛け部の一例として、内スリーブ管11Bの外周面に環状に形成されたフランジ部33を適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、内スリーブ管11Bの周方向の一部にのみ指掛け部が形成されていてもよい。また、指掛け部は端部でなく端部近傍に形成されていてもよい。
【0046】
防蟻シート11C、11C’は、弾性部材または非加硫部材に防蟻剤を含有させたものを、所定厚み寸法(例えば、2~5mm)のシート状物として形成したものであり、例えば、ブチル再生ゴムが挙げられ、ブチル再生ゴム単独、またはブチル再生ゴムに天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマー等を一種以上混合したものであってもよい。また、弾性部材または非加硫部材に補強剤、充填剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、粘着剤、加工助剤、着色剤、架橋剤、架橋助剤等を適宜配合しても良い。
【0047】
また、第1部材としての防蟻シート11C’は、第2部材としての防蟻シート11Cよりも硬度が高く、流出口13B側の端部(外部側端部)に設けられ、防蟻シート11Cは、防蟻シート11C’よりも流入口13A側(内部側)に設けられている。尚、本実施例では、流出口13B側の端部に設けられる防蟻シート11C’の方が流入口13A側の防蟻シート11Cよりも硬度が高い形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、防蟻シート11C、11C’の硬度は同一または略同一でもよい。また、防蟻シート11C、11C’は別個に形成されていてもよいし、2色成形等により一体に形成されていてもよい。さらに、少なくとも外スリーブ管11Aの外周面における流出口13B側の端部(外部側端部)または流出口13B側の端部近傍(外部側端部近傍)に設けられていれば、他の部分は設けられていなくてもよい。
【0048】
蓋部材12は、外径寸法L10が外スリーブ管11Aの拡径部21の内径寸法L5’よりも短寸(L10<L5’)の筒状部40と、筒状部40の一端開口を閉鎖するように設けられる円盤状の蓋板41と、から構成される。筒状部40の外周面には、外スリーブ管11Aの拡径部21内に挿入可能、かつ、拡径部21より奥側に挿入不可な環状のガイド部42が突設されており、該ガイド部42の外周面に形成された凹溝内には、ゴム材等からなるシール部材43が嵌装されている。
【0049】
よって、外スリーブ管11Aの流出口13Bに筒状部40が挿入され、ガイド部42が拡径部21内に位置すると、シール部材43が拡径部21の内周面に圧接されることで、流出口13Bが蓋部材12により水封状態で閉鎖される。
【0050】
また、蓋板41の外径寸法L11は、外スリーブ管11Aの拡径部21の外径寸法L6’よりも長寸とされていることで(L11>L6’)、蓋板41が外スリーブ管11Aの流出口13Bの周囲の端面に当接して流出口13Bが閉鎖されたときに、蓋板41の鍔部41Aが外スリーブ管11Aの外周面よりも外側に突出するように配置される。また、蓋板41の外周縁部には、中心側から外側にかけて肉薄となるように流出口13B側に傾斜する傾斜面41Bが形成されている。
【0051】
蓋板41の外面略中央位置には、矩形状の開口を有する凹部44が形成されており、該凹部44内にドライバー等の工具等を嵌入し、蓋部材12を管軸方向に引きぬくことで、蓋部材12を外スリーブ管11Aから取り外すことができるようになっている。
【0052】
なお、蓋部材12は外スリーブ管11A内に挿入されることで取り付けられる構造であるが、後述する実施例2のように蓋部材12が外スリーブ管11A内に螺合して取り付けられる構造であってもよい。
【0053】
このように構成された水抜き配管装置11は、
図6(a)、(b)に示されるように、内スリーブ管11Bを、外スリーブ管11Aにおける流出口13Bと反対側の開口から挿入可能であり、外スリーブ管11Aに対し内スリーブ管11Bを管軸方向にスライド移動させて重合(重複)する重合寸法L3を変更することで、水抜き配管装置11の全長寸法、つまり、流入口13Aから流出口13Bまでの排水経路長さ寸法L4を、長さ寸法L1よりも長寸の任意の長さ寸法に変更可能とされている。
【0054】
具体的には、
図6(a)に示されるように、内スリーブ管11Bのほぼ全域が外スリーブ管11A内に挿入された場合、重合寸法L3が長寸となるため、排水経路長さ寸法L4は短寸となる。一方、
図6(b)に示されるように、内スリーブ管11Bの一部が外スリーブ管11A内に挿入された場合、重合寸法L3が短寸となるため、排水経路長さ寸法L4は長寸となる。よって、立上部3の厚さ寸法に合わせて排水経路長さ寸法L4を変更することができる。
【0055】
また、外スリーブ管11Aに対し内スリーブ管11Bを管軸方向にスライド移動させるときに、凸条部32が凹溝部22内に嵌入して係止されることで、所望の排水経路長さ寸法L4に変更した後、接着剤やねじ部材等を用いて外スリーブ管11Aに対する内スリーブ管11Bの管軸方向への移動を規制しなくても、所望の排水経路長さ寸法L4に維持されるため、外スリーブ管11Aに対する内スリーブ管11Bの位置ずれが防止でされる。尚、係止状態において管軸方向に係止力よりも大きい外力を加えることで係止状態が解除されるため、長さの変更を容易に行うことができる。
【0056】
本実施例では、外スリーブ管11Aの長さ寸法が120mm、外スリーブ管11Aの凹溝部22及び内スリーブ管11Bの凸条部32がそれぞれ10mmおきに10個形成された例を示しており、排水経路長さ寸法L4を120~220mm(+フランジ33の厚み)の範囲で変更可能であるが、凹溝部22及び凸条部32の間隔を10mm以外の間隔(例えば、1mm、2mm、5mm、15mm等)としても良く、凹溝部22及び凸条部32の数を10個以外の数(例えば、2個、5個、15個等)としても良い。また、排水経路長さ寸法L4を変更可能な範囲についても120~220mm(+フランジ33の厚み)に限らず、外スリーブ管11Aや内スリーブ管11Bの長さを異なる長さとすることで、それ以外の範囲に変更可能としても良い。
【0057】
[水抜き配管装置11を用いた床下排水構造10の施工例]
次に、水抜き配管装置11を用いた床下排水構造10の施工例について、
図7及び
図8に基づいて説明する。
【0058】
まず、
図7(a)に示されるように、底盤コンクリート部2と立上部3とを構成するためのコンクリートが打設される部分に鉄筋(図示略)を配設する。また、立上部3の外面を構成するための外側の型枠FAを設置しておく。また、使用する水抜き配管装置11については、前述したように、外スリーブ管11Aに対し内スリーブ管11Bを管軸方向にスライド移動させて重合(重複)する重合寸法L3を変更することで、施工する立上部3の厚み寸法に応じた排水経路長さ寸法L4に予め設定しておく。尚、蓋部材12は外スリーブ管11Aから取り外しておく。
【0059】
次いで、
図7(b)に示されるように、底盤コンクリート部2を打設する。底盤コンクリート部2が硬化状態となる前に、水抜き配管装置11を載置する。例えば、水抜き配管装置11を底盤コンクリート部2に押しつけることにより、水抜き配管装置11の下側部分を底盤コンクリート部2に埋め込むように設置することができる。水抜き配管装置11の下面を硬化前の底盤コンクリート部2に押しつけることにより、水抜き配管装置11の下面と底盤コンクリート部2との間の空気を好適に抜くことができる。
【0060】
また、水抜き配管装置11の下面を硬化前の底盤コンクリート部2に押しつける際に、内スリーブ管11Bの流入口13Aの下端を、底盤コンクリート部2の上面と同高さまたはやや下方に配置することで、底盤コンクリート部2の上面にたまる水が流入口13Aに流入しやすくなる。また、外スリーブ管11Aの流出口13B側の端面を外側の型枠FAの内面に押し付けるように当接させて、型枠FAの内面と端面との間からコンクリートが進入しないようにする。なお、ここで流入口13Aに水を流入し易くするための集水路や誘導路を別途設置、もしくは、コンクリート面上に形成するようにしてもよい。
【0061】
また、水抜き配管装置11は、凸条部32の傾斜面32Bの傾斜角度θ2の方が、傾斜面32Aの傾斜角度θ1よりも大きいことで(θ2>θ1)、重合寸法L3を長寸とするスライド方向への係止力が、重合寸法L3を短寸とするスライド方向への係止力よりも大きい、つまり、内スリーブ管11Bの挿入方向へのスライド移動を規制する係止力の方が、抜脱方向へのスライド移動を規制する係止力よりも大きいため、水抜き配管装置11を硬化前の底盤コンクリート部2に配置してからコンクリートが硬化するまでの間に、例えば、型枠FBを設置するときに接触するなどの外力が加わるなどして、設定した長さよりも短い長さとなってしまうことを防止できる。
【0062】
また、内スリーブ管11Bのフランジ部33の下部がコンクリートに埋め込まれるように設置されるので、底盤コンクリート部2のコンクリートが硬化した後、立上部3のコンクリートが打設されるときに、流れ込むコンクリートに押されるなどして、内スリーブ管11Bが管軸方向に位置ずれすることが防止される。
【0063】
尚、特に図示しないが、外スリーブ管11Aの外周面下部における管軸の両側方に、底盤コンクリート部2の上面に固定するための一対の座部を突設したり、あるいは、外スリーブ管11Aの外周面下部に底盤コンクリート部2内に埋設される杭部を突設することで、水抜き配管装置11が周方向に転がることを防止するようにしてもよい。更に、前記した一対の座部における外スリーブ管11Aの載置面を僅かに傾斜して形成してもよく、このようにすることで、水抜き配管装置11を立上部3の内部から外部に向けて下方に傾斜させ易く、排水を促進させることができる。
【0064】
次いで、
図7(c)に示されるように、内側の型枠FBを設置する。このとき、内側の型枠FBの内面を、内スリーブ管11Bの流入口13A側の端面に押し付けるように当接させて、型枠FBの内面と端面との間からコンクリートが進入しないようにする。これにより水抜き配管装置11は管軸の両側から型枠FA、FBによって挟まれた状態になる。尚、フランジ部33の型枠FBとの当接面に、コンクリートの進入を防止するためのOリング等を設けてもよい。その後、立上部3のコンクリートを打設する。
【0065】
そして、立上部3のコンクリートが硬化した後、型枠FA、FBを撤去すると、水抜き配管装置11が立上部3を厚み方向に貫通するように配設された床下排水構造10が構成される。
【0066】
床下排水構造10が構成された状態において、立上部3の内面に対し流入口13Aが略面一に配置され、立上部3の外面に対し流出口13Bが略面一に配置される。また、流入口13Aの下端が底盤コンクリート部2の上面と同高さまたはやや下方に配置されることで、底盤コンクリート部2の上面に溜まる水が流入口13Aに流入しやすくなる。
【0067】
流入口13Aから内部に流入された水は、水抜き配管装置11内を流出口13B側に向けて誘導された後、流出口13Bから基礎外へ流出される。また、外スリーブ管11Aの内部に内スリーブ管11Bが重合するように挿入されることで、内スリーブ管11Bの内周面下部の方が外スリーブ管11Aの内周面下部よりも高くなるので、流入口13Aから内部に流入された水は内スリーブ管11Bから外スリーブ管11Aにスムーズに誘導される。尚、内スリーブ管11Bの内部に外スリーブ管11Aが挿入されるように外スリーブ管11Aと内スリーブ管11Bとを重合させてもよい。
【0068】
また、外スリーブ管11Aの外周面に防蟻剤を含有する防蟻シート11C、11C’が配置されることで、コンクリートと外スリーブ管11Aとの間に隙間が生じることがなく、隙間からのシロアリ等の害虫、埃、ごみ等の侵入を防止できるとともに、シロアリに対する防蟻効果が高められる。
【0069】
また、防蟻シート11C’は、外スリーブ管11Aの外周面のうち少なくとも流出口13B側の端部を被覆するように設けられることで、シロアリの侵入を効果的に防止できる。また、防蟻シート11C’の方が防蟻シート11Cよりも硬度が高いため、防蟻シート11C’の流出を防止できる一方、防蟻シート11C’よりも流入口13A側に相対的に硬度の低い防蟻シート11Cが設けられることで、コンクリートと外スリーブ管11Aの外周面との間に隙間が生じることを確実に防止できる。
【0070】
図8(a)に示されるように、内スリーブ管11Bにおいて凹溝部22に係止されていない凸条部32が外周面に露呈されることで、コンクリートの硬化後における内スリーブ管11Bの立上部3からの抜脱が好適に規制される。
【0071】
また、
図8(a)に示されるように、立上部3のコンクリートの硬化後に、流出口13Bに蓋部材12を取り付けることで、流出口13Bからのシロアリの侵入を防止できる。蓋部材12が取り付けられた状態において、蓋板41の鍔部41Aが、流出口13Bの周囲の外スリーブ管11Aの端面のさらに外側に拡がるコンクリートの表面に重なることで、流出口13Bの周囲の外スリーブ管11Aの端面とコンクリートの表面との境界部が隠蔽されるため、意匠性が向上する。
【0072】
また、蓋板41の外周縁部には、中心側から外側にかけて肉薄となるように流出口13B側に傾斜する傾斜面41Bが形成されているため、蓋部材12とコンクリート表面との境界部が目立ち難く、蓋部材12にて流出口13Bを閉鎖した際の意匠性が向上する。
【0073】
また、
図8(b)に示されるように、立上部3のコンクリートの硬化後、底盤コンクリート部2及び立上部3の外面(表面)に、モルタル等を塗布するなどの化粧処理を施すことにより塗膜部5が設けられることがある。
【0074】
また、この場合、蓋部材12の蓋板41は塗膜部5の表面側に配置されることで、蓋板41が外スリーブ管11Aの端面から離れることになるが、シール部材43は拡径部21の内周面に当接されるため、流出口13Bの水封状態は維持される。
【0075】
また、本実施例では、外スリーブ管11Aと内スリーブ管11Bとの重合範囲を変更することで排水経路長さ寸法L4を変更可能な形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、3本以上の管体を互いに重合させて排水経路長さ寸法L4を変更可能としてもよい。
【0076】
また、本実施例では、外スリーブ管11Aの一端に流出口が形成され、内スリーブ管11Bの他端に流入口が形成される構成であるが、外スリーブ管11Aの一端に流入口が形成され、内スリーブ管11Bの他端に流出口が形成される構成としても良い。
【0077】
[変形例1]
次に、本発明の変形例1としての水抜き配管装置11について、
図9に基づいて説明する。
図9は、本発明の変形例1としての水抜き配管装置の内部構造を示す縦断面図である。
【0078】
実施例1では、内スリーブ管11Bの外周面に形成された係止部としての凸条部32を、外スリーブ管11Aの内周面に形成された凹溝部22に係止させることで、外スリーブ管11Aに対して内スリーブ管11Bを管軸方向へスライド移動可能にするとともに、外スリーブ管11Aに対する内スリーブ管11Bの管軸方向へのスライド移動が規制される形態を例示した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図9に示されるように、外スリーブ管11Aの内周面に雌ねじ部25を螺旋状に形成するとともに、内スリーブ管11Bの外周面に雄ねじ部35を螺旋状に形成し、内スリーブ管11Bを管軸周りに回転させて雌ねじ部25に雄ねじ部35を螺入させるようにしてもよい。このようにすることで、外スリーブ管11Aに対して内スリーブ管11Bを管軸方向へスライド移動可能にするとともに、外スリーブ管11Aに対する内スリーブ管11Bの管軸方向へのスライド移動が規制される。
【0079】
この場合、内スリーブ管11Bを管軸周りに正回転または逆回転させることで重合寸法L3(重合範囲)を変更することで、水抜き配管装置11の全長寸法L4を、長さ寸法L1よりも長寸の長さ寸法に無段階に変更可能とされている。この際、内スリーブ管11Bを管軸周りに回転させるだけの簡単な作業で長さを変更し、かつ変更後の長さ寸法を維持することができる。尚、外スリーブ管11Aの内周面に螺旋状の雄ねじ部を形成するとともに、内スリーブ管11Bの外周面に螺旋状の雌ねじ部を形成してもよい。
【0080】
また、特に図示しないが、外スリーブ管11Aの内周面に対して内スリーブ管11Bの外周面が接触した状態で管軸方向へスライド移動可能にするようにしてもよい。このような構成では、内スリーブ管11Bの流出口13B側の端部にシール部材を設け、外スリーブ管11Aの内周面に対して密着するようにしてもよく、このようにすることで、基礎の施工後に外スリーブ管11Aと内スリーブ管11Bの隙間からコンクリート内に水がしみ出ることを防止できる。
【実施例0081】
本発明の実施例2としての水抜き配管装置について、
図10~
図13を参照して説明する。
図10は、本発明の実施例2としての水抜き配管装置の構成を示す分解斜視図である。
図11は、
図10の水抜き配管装置の内部構造を示す断面図である。
図12は、(a)~(c)は排水経路長さ寸法を変更する一例を示す断面図である。
図13は、(a)は蓋部材が外スリーブ管に取り付けられた状態、(b)は化粧処理後に蓋部材が外スリーブ管に取り付けられた状態を示す断面図である。尚、以下の説明において、前記実施例1と同様の部材や部位については、同様の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0082】
[水抜き配管装置11の構成]
図10及び
図11に示されるように、床下排水構造10に用いられる本実施例の水抜き配管装置51は、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂材(PVC)等により筒状に形成される本体管51A(管体)と、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂材(PVC)等により略四角筒状に形成され、本体管51Aに係合することにより連結(接続)可能な複数の連結管51B(管体)と、連結管51Bの端面に取り付け可能な略四角筒状のスペーサ部材51Cと、を有する。
【0083】
本体管51Aの管軸方向の長さは所定の長さ寸法L51(例えば、L51=120mm)とされ、複数の連結管51Bの管軸方向の長さは所定の長さ寸法L52(例えば、L52=20mm)とされている。つまり、本体管51Aの管軸方向の長さ寸法L51は、連結管51Bの管軸方向の長さ寸法L52よりも長寸とされている(L51>L52)。
【0084】
本体管51Aは、円筒状部52と、円筒状部52の流出口13B側に形成された拡径部21と、円筒状部52の流出口13Bと反対側の端部に形成され、連結管51Bが連結可能な被連結部53と、から構成される。被連結部53は、略四角筒状をなし、円筒状部52に一体に形成されてなり、流出口13Bと反対側の端面には、後述する係合凸部57が挿入可能な凹溝状の係合凹部55が、流入口13A側から見て略四角枠状に形成されている。
【0085】
連結管51Bは、本体管51Aの被連結部53と同じ内径寸法及び外径寸法を有する延長部56と、延長部56の一端面に管軸方向に向けて突設され、被連結部53の係合凹部55に挿入可能な係合凸部57と、延長部56の他端面に形成され、係合凸部57が挿入可能な係合凹部58と、から構成される。係合凹部58は、流入口13A側から見て略四角枠状に形成され、本体管51Aの係合凹部55と同形状とされている。
【0086】
また、連結管51Bの係合凸部57の少なくとも一部に係合凹部53または係合凹部58と密着させるためのシール部材を設けるようにしてもよく、このようにすることで、基礎の施工後に外スリーブ管11Aと内スリーブ管11Bの隙間からコンクリート内に水がしみ出ることを防止できる。
【0087】
これら連結管51Bは、管軸方向に向けて複数連結(接続)可能に形成され、各連結管51Bの延長部56の管軸方向の長さは延長寸法L53(例えば、L53=10mm)とされている。尚、延長寸法L53は上記に限らず、種々に変更可能である。また、延長寸法L53が異なる複数の連結管51B(例えば、L53=1mm、2mm、5mm、15mm等)を有してもよい。
【0088】
スペーサ部材51Cは、連結管51Bの係合凸部57と同形状の四角枠部材からなり、係合凹部58内に挿入されたときに、スペーサ部材51Cの端面と、連結管51Bの係合凹部58側の端面とが略面一となり、また、本体管51Aの係合凹部55に挿入されたときにも、スペーサ部材51Cの端面と、連結管51Bの係合凹部58側の端面とが略面一となる。
【0089】
本実施例の本体管51Aの内周面における拡径部21の流入口13A側の近傍位置には、雌ねじ部61が螺旋状に形成されるとともに、蓋部材12の筒状部40の外周面におけるシール部材43よりも流入口13A側の近傍位置には雄ねじ部62が螺旋状に形成されているため、蓋板41の凹部44内にドライバー等の汎用工具等を嵌入し、蓋部材12を、管軸を中心とする周方向に回転させながら手前側に引きぬくことで、蓋部材12を本体管51Aから取り外すことができるようになっている。
【0090】
なお、蓋部材12は本体管51A内に螺合することで取り付けられる構造であるが、前述する実施例1のように蓋部材12が本体管51A内に挿入されることで取り付けられる構造であってもよい。
【0091】
このように構成された水抜き配管装置51は、本体管51Aの流入口13A側の端面に連結管51Bを連結(接続)したり、該連結管51Bにさらに他の連結管51Bを係合して連結していくことで、水抜き配管装置51の全長寸法、つまり、流入口13Aから流出口13Bまでの排水経路長さ寸法L54を、長さ寸法L51よりも長寸の任意の長さ寸法に段階的に変更可能とされている。
【0092】
具体的には、
図12(a)に示されるように、本体管51Aの流入口13A側に配置した連結管51Bを、
図12(b)に示されるように、連結管51Bの係合凸部57が本体管51Aの係合凹部55内に嵌入して係合するように本体管51Aに連結されることで、水抜き配管装置51の排水経路長さ寸法L54が、延長寸法L53分、管軸方向に向けて延長される。次いで、本体管51Aに係合した連結管51Bのさらに流入口13A側に配置した他の連結管51Bを、
図12(c)に示されるように、連結管51Bの係合凸部57が本体管51Aの係合凹部55内に嵌入されるように本体管51Aに係合することで、水抜き配管装置51の排水経路長さ寸法L54が、延長寸法L53の2倍分、管軸方向に向けて延長される。
【0093】
そして、
図12(c)に示される排水経路長さ寸法L54に設定する場合、最も端部側の連結管51Bの係合凹部58内に、スペーサ部材51Cを嵌入することで、最も端部側の連結管51Bの端面が平坦状になる。また、スペーサ部材51Cが装着された最も端部側の連結管51Bの開口が水抜き配管装置51の流出口13Bとして機能する(
図13(c)参照)。なお、本体管51Aのみを用いて連結管51Bを用いない場合には、連結管51Bの係合凹部58内に、スペーサ部材51Cを嵌入することで、本体管51Aの端面が平坦状になり、本体管51Aの開口が水抜き配管装置51の流出口13Bとして機能する。
【0094】
このように構成された実施例2の水抜き配管装置51にあっては、本体管51Aの流入口13A側の端面に連結管51Bを連結(接続)したり、該連結管51Bにさらに他の連結管51Bを連結し、また、これを繰り返すことで、水抜き配管装置51の全長寸法、つまり、連結管51Bの連結数に応じて、流入口13Aから流出口13Bまでの排水経路長さ寸法L54を所望の長さに変更することができるため、施工する立上部3の厚み寸法に応じた長さ寸法に予め変更しておくことができる。なお、本体管51の長さ寸法L51は、120mmであり、連結管51Bを連結することで、排水経路長さ寸法L4を120mm以上の長さに変更可能であるが、本体管51の長さ寸法L51を他の寸法(例えば、50mm、100mm、150mm等)とし、排水経路長さ寸法L4を120mm未満の長さ以上の範囲で変更可能としたり、120mmを超える長さ以上の範囲で変更可能としてもよい。また、一定寸法の連結管51Bだけでなく、長さ寸法L53の異なる複数種類の連結管51Bを組み合わせて排水経路長さ寸法L4を変更するようにしても、様々な立上部3の厚さに対応できるようにしてもよい。
【0095】
そして、このように排水経路長さ寸法L54を所望の長さ寸法に設定した水抜き配管装置51を、前記実施例1の
図7及び
図8にて説明した施工方法と同じように施工することで、
図13(a)、または
図13(b)に示されるような床下排水構造10を構成することができる。
【0096】
また、シール部材43は、雄ねじ部62を雌ねじ部61に螺合する場合に、雄ねじ部62と雌ねじ部61との螺合範囲よりも流出口13B側の所定範囲にわたり管内周面と密着するため、
図13(b)に示されるように、基礎コンクリート1の表面に化粧処理が施され、流出口13Bから基礎コンクリート1の表面までの厚みが増すことで、蓋部材12の螺合部を最奥まで螺合できない場合でも、シール部材43を管内周面と密着させることができるため、水封状態を維持することができる。
【0097】
[変形例2]
次に、本発明の変形例2としての水抜き配管装置51及び蓋部材12について、
図14に基づいて説明する。
図14は、(a)は本発明の変形例2としての蓋部材が本体管に取り付けられた状態、(b)は化粧処理後に蓋部材が本体管に取り付けられた状態を示す断面図である。
【0098】
前記実施例2では、蓋部材12のシール部材43は、雄ねじ部62を雌ねじ部61に螺合する場合に、雄ねじ部62と雌ねじ部61との螺合範囲よりも流出口13B側の所定範囲にわたり管内周面と密着する位置に設けられている形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図14(a)に示されるように、本変形例の本体管51Aの内周面における拡径部21に雌ねじ部61が螺旋状に形成されるとともに、蓋部材12の筒状部40の外周面におけるシール部材43よりも流出口13B側の近傍位置に雄ねじ部62が螺旋状に形成されるようにしてもよい。
【0099】
このようにすることで、
図14(b)に示されるように、基礎コンクリート1の表面に化粧処理が施され、流出口13Bから基礎コンクリート1の表面までの厚みが増すことで、蓋部材12の螺合部を最奥まで螺合できない場合でも、シール部材43を管内周面と密着させることができるため、水封状態を維持することができる。
【0100】
尚、
図14(b)に示されるように、拡径部21の内周面に雌ねじ部61が形成され、筒状部40に形成された拡径部の外周面に雄ねじ部62が形成されることで、蓋部材12を流出口13Bに挿入したときにシール部材43が雌ねじ部61に密着することが回避されるが、雌ねじ部61は必ずしも拡径部21の内周面に形成されなくてもよい。
【0101】
[変形例3~5]
次に、本発明の変形例3~5としての水抜き配管装置51について、
図15に基づいて説明する。
図15は、(a)は本発明の変形例3としての係合管が本体管に連結された状態を示す断面図、(b)は本発明の変形例4としての係合管が本体管に連結された状態を示す断面図、(c)は本発明の変形例5としての係合管が本体管に連結された状態を示す断面図である。
【0102】
前記実施例2では、本体管51Aに対し最も流入口13A側に連結される連結管51B、つまり、水抜き配管装置51の流入口13Aを形成する連結管51Bの係合凹部58にスペーサ部材51Cを嵌入する形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図15(a)に示される変形例3のように、水抜き配管装置51の流入口13Aを形成する連結管51Bを、該連結管51Bよりも流出口13B側に連結される連結管51Bとは、機能や形状等が異なるものとしてもよい。
【0103】
具体的には、水抜き配管装置51の流入口13Aを形成する連結管51Bとして、例えば、流入口13Aが拡径されるように、延長部56の外周面及び内周面が流入口13Aに向けて外側に拡がるように形成されていてもよく、このようにすることで、底盤コンクリート部2の上面にたまった水が水抜き配管装置51の内部にスムーズに誘導されるようになる。
【0104】
また、前記実施例2では、延長部56の一端面に係合凸部57が形成され、延長部56の他端面に係合凸部57が挿入可能な係合凹部58が形成されている形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図15(b)に示される変形例4のように、被連結部53における連結管51Bが係合される端部の内周面に、係合凸部57が係合可能な段部70が形成されるとともに、各連結管51Bの延長部56の内周面に、係合凸部57やスペーサ部材51Cが係合可能な被係合部としての段部71が形成されていてもよい。
【0105】
また、
図15(c)に示される変形例5のように、被連結部53における連結管51Bが係合される端部の外周面に、係合凸部57が係合可能な段部72が形成されるとともに、各連結管51Bの延長部56の外周面に、係合凸部57やスペーサ部材51Cが係合可能な被係合部としての段部73が形成されていてもよい。
【0106】
[変形例6]
次に、本発明の変形例6としての水抜き配管装置について、
図16に基づいて説明する。
図16は、(a)は本発明の変形例6としての水抜き配管装置の構成を示す斜視図、(b)、(c)は係合管の係合態様を変えて排水経路長さ寸法を変更した状態を示す断面図である。
【0107】
前記実施例2及び変形例2~5においては、本体管51Aに係合された係合管にさらに他の係合管を係合させてその数を増減させることにより、排水経路長さ寸法を変更可能とした形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図16(a)に示されるように、本体管51Aに対する連結管51Bの係合態様を変えることで排水経路長さ寸法を変更可能としてもよい。
【0108】
図16(a)に示されるように、例えば、本体管51Aの被連結部53の内周面には、略四角枠状の段部80が形成され、段部80の4つの辺部80A~80Dのうち3つの辺部80A~80Cには、係合凹部81A~81Cが管軸方向に向けて所定長さに形成されている。連結管51Bの係合凸部57は、被連結部53の内周面に挿入可能となるように、延長部56の端面に四角枠状に突設されているとともに、この係合凸部57の4つの辺部のうち3つの辺部には、係合凹部81A~81Cに係合可能な係合凸部57A~57Cが突設されている。係合凸部57A~57Cの管軸方向の突出長さは、係合凸部57A、57B、57Cの順に長寸となっている(突出長さ57A<57B<57C)。一方、係合凹部81A~81Cは、突出長さが最も長寸の係合凸部57Cが嵌合可能となるように形成されている。
【0109】
図16(b)に示されるように、係合凸部57Aが係合凹部81Aに係合され、係合凸部57Bが係合凹部81Bに係合され、係合凸部57Cが係合凹部81Cに係合されるように、被連結部53に連結管51Bを連結させると、被連結部53の辺部80Dに係合凸部57の先端面が当接するため、延長寸法L53は、延長部56の管軸方向の長さ寸法となる。
【0110】
また、
図16(c)に示されるように、係合凸部57Aが係合凹部81Bに係合され、係合凸部57Bが係合凹部81Cに係合されるように被連結部53に連結管51Bを連結させると、最長の係合凸部57Cが辺部80Dに当接することで、係合凹部81A~81Cにはいずれの係合凸部57A~57Cも係合されず、延長寸法L53は、延長部56の管軸方向の長さ寸法と係合凸部57Cの突出寸法とを加算した寸法となるので最も長くなる。
【0111】
尚、特に図示しないが、係合凸部57Aが係合凹部81Cに係合され、係合凸部57Cが係合凹部81Aに係合されるように被連結部53に連結管51Bを連結させると、係合凸部57Bが辺部80Dに当接するため、係合凹部81Bにはいずれの係合凸部も係合されず、延長寸法L53は、延長部56の管軸方向の長さ寸法と係合凸部57Bの突出寸法とを加算した寸法となる。また、係合凸部57Bが係合凹部81Aに係合され、係合凸部57Cが係合凹部81Bに係合されるように被連結部53に連結管51Bを連結させると、係合凸部57Aが辺部80Dに当接することで、係合凹部81Cにはいずれの係合凸部も係合されず、延長寸法L53は、延長部56の管軸方向の長さ寸法と係合凸部57Aの突出寸法とを加算した寸法となる。
【0112】
このように、本体管51Aに対する連結管51Bの係合態様を変えることで排水経路長さ寸法を複数種類に変更可能としてもよい。この場合、複数の連結管51Bを用意することなく、連結管51Bを管軸周りに所定角度回転させていくだけで延長寸法L53を4種類変更できる。尚、本変形例では、3つの係合凸部各々を3つの係合凹部各々に選択的に係合可能とされていたが、3以上の係合凸部各々を3以上の係合凹部各々に選択的に係合可能としてもよい。
【0113】
また、本変形例の連結管51Bを本体管51Aに連結した後、本変形例の連結管51Bの端部に、さらに実施例2の連結管51Bを単数または複数個連結することで、排水経路長さ寸法をさらに長く変更するようにしてもよい。
【0114】
[変形例7]
次に、本発明の変形例7としての水抜き配管装置について、
図17に基づいて説明する。
図17は、(a)は本発明の変形例7としての水抜き配管装置の構成を示す断面図、(b)、(c)は係合管の係合態様を変えて排水経路長さ寸法を変更した状態を示す断面図である。
【0115】
図17(a)に示されるように、本変形例の外スリーブ管11Aは、流入口13A側の内周面に係合溝90が形成されている。係合溝90は、流入口13A側の端部から流出口13Bに向けて管軸方向に延びるガイド部90Aと、ガイド部90Aの長手方向に異なる位置から周方向に向けて延設される係合部90B~90Fと、を有している。一方、内スリーブ管11Bは、外スリーブ管11Aに挿入可能な挿入部91を有し、該挿入部91の外周面における流出口13B側の端部近傍位置には、係合溝90に係合可能な係合突起92が外方に向けて突設されている。
【0116】
このように構成された本変形例の水抜き配管装置11にあっては、
図17(b)に示されるように、係合突起92を係合溝90の位置に合わせた状態で、挿入部91を外スリーブ管11A内に挿入し、係合突起92がガイド部90Aに沿って移動するようにスライド移動させた後、最も流出口13B側に形成された係合部90Fに到達したときに内スリーブ管11Bを管軸周りに回動させることで、係合突起92が係合部90Fに係合され、内スリーブ管11Bの管軸方向へのスライド移動が規制されるとともに、排水経路長さ寸法が最も短い態様となる。。
【0117】
また、
図17(c)に示されるように、係合突起92が係合部90Cに到達したときに内スリーブ管11Bを管軸周りに回動させた場合、係合突起92が係合部90Cに係合され、内スリーブ管11Bの管軸方向へのスライド移動が規制されるとともに、外スリーブ管11A内に挿入されなかった部分が延長寸法L3’となり、
図17(B)に示す態様よりも延長寸法L3’分、排水経路長さ寸法が長くなる。
【0118】
このように、外スリーブ管11Aに対す内スリーブ管11Bの係合態様を変えることで排水経路長さ寸法を変更可能としてもよい。この場合、複数の管体を用意することなく、内スリーブ管11Bを外スリーブ管11Aに所定の深さ挿入した後、管軸周りに所定角度回転させていくだけで排水経路長さ寸法を段階的に変更できる。尚、係合部90B~90Fの数は種々に変更可能であり、上記のように5個に限定されるものではない。
【0119】
また、前記実施例1の水抜き配管装置11や前記実施例2及び変形例1~6の水抜き配管装置51にあっては、基本的に、外スリーブ管11A(管体)及び内スリーブ管11B(管体)や本体管51Aの円筒状部52などの管体は、管軸に対し直交する断面形状が円環状または略円環状に形成されていたが、
図18(a)に示されるように、管軸に対し直交する縦断面形状が略四角枠状に形成されていてもよいし、
図18(b)に示されるように、非円環形状または非矩形枠状に形成されていてもよい。つまり、環状であれば形状は任意である。
【0120】
また、
図18(a)、(b)に示されるように、下部が平坦状に形成されていることにより、
図7(b)にて説明したように、半硬化状態になった底盤コンクリート部2に水抜き配管装置11を載置する際の安定性が向上する。
【0121】
また、
図19(a)に示されるように前記実施例1に記載された水抜き配管装置11や、
図19(b)に示されるように前記実施例2に記載された水抜き配管装置51について、水抜き配管装置11の少なくとも一部の管体の管軸(
図19の一点鎖線)が、流入口13Aから流出口13Bにかけて緩やかに下方に傾斜するように配置することで、流入口13Aから流入した水が流出口13Bに好適に誘導されるようにすることができる。
【0122】
また、
図19(a)、(b)に示されるように、外スリーブ管11Aや本体管51Aは、拡径部21の管軸に対し他の部分の管軸が屈曲するように構成されているが、前記実施例1の水抜き配管装置11や前記実施例2及び変形例1~6の水抜き配管装置51を、管軸が流入口13Aから流出口13Bにかけて緩やかに下方に傾斜するように配置し、流入口13Aや流出口13Bを管軸に対し斜めに配置するようにしてもよい(例えば、
図19(a)の流入口13A参照)。
【0123】
このように、水抜き配管装置11、51を所定角度傾斜して配置したときに、流出口13Bの端面が垂直となることで(
図19参照)、水抜き配管装置11、51を所定角度勾配を付けて設置した場合に、基礎の外側面と流出口13Bの端面とを揃えることができる。
【0124】
また、実施例2及び変形例2~6では、本体管51Aに連結管51Bを連結し、さらに他の連結管51Bを係合させることで排水経路長さ寸法L54を変更可能な形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本体管51Aや連結管51Bといった種類に関係なく、複数の管体を管軸方向に複数連結(接続)することで排水経路長さ寸法L54を変更可能としてもよい。つまり、立上部3の厚さ寸法に応じて、本体管51Aを用いることなく、複数の連結管51Bを管軸方向に複数連結(接続)することで排水経路長さ寸法L54を変更可能としてもよい。
【0125】
[作用・効果]
以上説明したように、本発明の実施例1における水抜き配管装置11は、建物の基礎コンクリート1の立上部3によって囲まれた空間と基礎コンクリート1の外部とを連通する水抜き配管装置11であって、立上部3の厚さに応じて水抜き配管装置11の両端開口間、つまり、内スリーブ管11Bの一端開口である流入口13Aから、外スリーブ管11Aの他端開口である流出口13Bまでの長さを変更可能である。このようにすることで、基礎の立上部3の厚さに応じて水抜き配管装置11の両端開口間の長さを変更可能であるため、長さの異なる複数種類の水抜き配管を用意せずとも、厚さの異なる基礎の立上部分に対応可能となる。
【0126】
また、互いに重合する複数の管体(外スリーブ管11Aと内スリーブ管11B)とからなり、外スリーブ管11Aと内スリーブ管11Bとの重合範囲(重合寸法L3)を変更可能である。このように、外スリーブ管11Aに内スリーブ管11Bが重合範囲を変更することで、流入口13Aから流出口13Bまでの長さを変更可能となる。
【0127】
一方の管体である外スリーブ管11Aに対して、他方の管体である内スリーブ管11Bをスライドさせることで重合範囲(重合寸法L3)を変更可能であることで、簡単な作業で重合範囲を変更することができる。
【0128】
また、外スリーブ管11Aと内スリーブ管11Bとを係止可能な係止部としての凸条部32を備え、係止部は、重合する範囲が異なる複数の凸条部32を含む。このように、外スリーブ管11Aと内スリーブ管11Bとを立上部3の厚さに応じた凸条部32を係止状態とすることで、外スリーブ管11Aと内スリーブ管11Bとの位置ずれを防止できる。
【0129】
また、凸条部32は、重合範囲(重合寸法L3)を大きくするスライド方向への係止力が、前記重合する範囲を小さくするスライド方向への係止力よりも大きいことで、施工時に、設定した長さよりも短い長さとなってしまうことを防止できる。
【0130】
また、変形例1の水抜き配管装置11は、外スリーブ管11Aに対して内スリーブ管11Bが螺合し、外スリーブ管11Aに対して内スリーブ管11Bを回転させることで重合する範囲(重合寸法L3)を変更可能であることで、簡単な作業で重合する範囲を変更することができる。
【0131】
また、内スリーブ管11Bの外スリーブ管11Aと重合しない端部に指掛け部としてのフランジ部33を備えることで、重合する範囲を変更する作業が容易となる。
【0132】
また、前記実施例2の水抜き配管装置51は、建物の基礎コンクリート1の立上部3によって囲まれた空間と基礎コンクリート1の外部とを連通する水抜き配管装置51であって、本体管51Aと連結管51Bとを含む複数の管体から構成され、立上部3の厚さに応じて管体同士、例えば、本体管51Aと連結管51Bとを連結させたり、連結管51B同士を連結させたりすることで、流入口13Aから流出口13Bまでの長さを変更可能となる。このようにすることで、基礎の立上部3の厚さに応じて水抜き配管装置51の両端開口間の長さを変更可能であるため、長さの異なる複数種類の水抜き配管を用意せずとも、厚さの異なる基礎の立上部分に対応可能となる。
【0133】
また、複数の管体は、本体管51Aと連結管51Bと、を含み、本体管51Aに連結管51Bを連結させることが可能であり、また、連結管51Bに連結管51Bを連結させることが可能であることで、本体管51Aに連結管51Bを連結させるだけでなく、連結管51Bにさらに連結管51Bを連結させることを可能とすることで、3種類以上の長さに対応可能となる。
【0134】
また、外スリーブ管11Aや本体管51Aの外周面に弾性部材または非加硫部材としての防蟻シート11C、11C’を設けることで、立上部3のコンクリートと外スリーブ管11Aや本体管51Aとの間に隙間が生じることがなく、隙間からのシロアリ等の害虫、埃、ごみ等の侵入を防止できる。
【0135】
また、防蟻シート11C、11C’は防蟻剤を含有することで、シロアリに対する防蟻効果を高めることができる。
【0136】
また、防蟻シート11C、11C’は、外スリーブ管11Aや本体管51Aの外周面のうち少なくとも流出口13B側の端部(外部側端部)または流出口13B側の端部近傍(外部側端部近傍)を被覆するように設けられることで、シロアリ等の害虫、埃、ごみ等の侵入を効果的に防止できる。
【0137】
また、防蟻シート11C、11C’は、第1部材としての防蟻シート11C’と、防蟻シート11Cよりも硬度の低い防蟻シート11Cと、を含み、外スリーブ管11Aや本体管51Aの外周面のうち流出口13B側の端部(外部側端部)または流出口13B側の端部近傍側(外部側端部近傍)に防蟻シート11C’が設けられ、防蟻シート11C’よりも流入口13A側(内部側)に相対的に硬度の高い防蟻シート11Cが設けられることで、防蟻シートの流出を防止できる一方、防蟻シート11C’よりも流入口13A側に相対的に硬度の低い防蟻シート11Cが設けられることで、基礎のコンクリートと外スリーブ管11Aや本体管51Aとの間に隙間が生じることを確実に防止できる。
【0138】
また、流出口13Bには、該流出口13Bを閉鎖する閉鎖部材としての蓋部材12が取り付けられることで、流出口13Bからの等の害虫や小動物、埃、ごみ等の侵入を防止できる。
【0139】
また、蓋部材12は、外周縁部に鍔部41Aを備え、鍔部41Aは、中心側から外縁側にかけて肉薄となるように流出口13Bへの取付方向に向けて傾斜する傾斜面41Bが形成されていることで、蓋部材12と基礎の外側面または化粧処理が施された場合の化粧面との境界部が目立ち難くなり、蓋部材12を流出口13Bに取り付けた際の意匠性が向上する。
【0140】
また、鍔部41Aの外径は、流出口13Bの外径よりも大きいことで、蓋部材12を流出口13Bに取り付けた際に、鍔部41Aにより流出口13Bの周囲の基礎の外側面または化粧処理が施された場合の化粧面に重なり、流出口13Bと基礎の外側面または化粧処理が施された場合の化粧面との境界が隠蔽されるため、意匠性が向上する。
【0141】
また、蓋部材12は、管内周面に形成された雌ねじ部61対して螺合する螺合部としての雄ねじ部62を備えることで、蓋部材12による流出口13Bの閉鎖が容易に解かれてしまうことを防止できる。
【0142】
また、蓋部材12は、管内周面と密着するシール部材43を備え、シール部材43は、雄ねじ部62を雌ねじ部61に螺合する場合に、管内周面に螺合する範囲よりも流出口13B側の所定範囲にわたり管内周面と密着することで(
図13参照)、基礎の外側面に化粧処理が施され、流出口13Bから基礎の外側面までの厚みが増すことで、蓋部材12の雄ねじ部62を最奥まで螺合できない場合でも、シール部材43を管内周面と密着させることができる。
【0143】
以上、本発明の実施例1、2及び変形例1~7を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。