(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096388
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】ハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20230630BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20230630BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
G02B1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212105
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】399020212
【氏名又は名称】東山フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 紘基
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009BB11
2K009CC21
4F100AH02B
4F100AH03B
4F100AK01B
4F100AK25B
4F100AL05B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
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4F100CA30B
4F100CB05C
4F100EJ08B
4F100EJ91D
4F100GB41
4F100JB14B
4F100JK12B
4F100JN01C
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】良好な硬度や耐擦傷性を有しながら、局所的な外力が加わった場合でもディスプレイの破損を抑制することのできるハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】
基材フィルム12と、前記基材フィルム12の面上に形成されたハードコート層14と、を有し、前記ハードコート層14が、電離放射線硬化性樹脂と、減衰性付与剤とを含有する樹脂組成物の硬化物から形成される、ハードコートフィルム10とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成されたハードコート層と、を有し、
前記ハードコート層が、電離放射線硬化性樹脂と、減衰性付与剤とを含有する樹脂組成物の硬化物から形成される、ハードコートフィルム。
【請求項2】
前記減衰性付与剤が、ジフェニルアミン系化合物およびビスフェノール系化合物からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物である、請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記減衰性付与剤が、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、および4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物である、請求項1または請求項2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記減衰性付与剤の含有量が、前記電離放射線硬化性樹脂100質量部に対し、1質量部以上、20質量部以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記基材フィルムの前記ハードコート層とは反対の面上に透明粘着層を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
前記ハードコート層の面上に、保護フィルムを有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルムに関し、さらに詳しくは、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイや、スマートホンなどに備えられるタッチパネル等において、ディスプレイ表面に用いられるハードコートフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードコートフィルムは、液晶表示装置や有機EL表示装置などの画像表示装置のディスプレイを保護するなどの目的で用いられている。近年、画像表示装置の分野では、曲げても表示機能をそのまま維持することができ、繰り返し屈曲して使用できるフレキシブルディスプレイが注目されている。フレキシブルディスプレイとしては、折り畳み可能なフォルダブルディスプレイや、筒状に丸めることができるローラブルディスプレイなどが知られている。フレキシブルディスプレイは、スマートホンやタブレット端末などの携帯端末や、収納できる据え置き型ディスプレイなどへの利用が期待されている。フレキシブルディスプレイのカバーウィンドウとしては、従来のディスプレイ装置で多用されてきた板状のガラス基板の代わりに、曲げやすい超薄型ガラスフィルム(UTG)やプラスチックフィルムが用いられる。
【0003】
UTGやプラスチックフィルムは、ガラス基板よりも傷がつきやすいため、UTGやプラスチックフィルムの表面を保護するのに、ハードコート層が形成されたハードコートフィルムの需要がさらに高まっている。ハードコートフィルムは多くの場合、光学粘着層(OCA)を介してディスプレイの前面ウィンドウや位相差フィルム等に貼り合わせられる。例えば特許文献1に、ポリイミドフィルム上にハードコート層が積層された、ハードコートフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなフレキシブルディスプレイにおいては、表面がガラス基板で覆われていないため、例えばボールペンなどの先の尖った物体が衝突するなど局所的な外力が加わった場合に、比較的容易にディスプレイが破損してしまうおそれがあるという課題がある。
本発明が解決しようとする課題は、良好な硬度や耐擦傷性を有しながら、局所的な外力が加わった場合でもディスプレイの破損を抑制することのできるハードコートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハードコートフィルムは、前記目的を達成するために、次の構成からなる。
本発明に係るハードコートフィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成されたハードコート層と、を有し、前記ハードコート層が、電離放射線硬化性樹脂と、減衰性付与剤とを含有する樹脂組成物の硬化物から形成される。
【0007】
ここで、前記減衰性付与剤が、ジフェニルアミン系化合物およびビスフェノール系化合物からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物であるとよい。また、前記減衰性付与剤が、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、および4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物であるとよい。前記減衰性付与剤の含有量が、前記電離放射線硬化性樹脂100質量部に対し、1質量部以上、20質量部以下であるとよい。
【0008】
前記基材フィルムの前記ハードコート層とは反対の面上に透明粘着層を有するとよい。また、前記ハードコート層の面上に、保護フィルムを有するとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るハードコートフィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成されたハードコート層と、を有し、前記ハードコート層が、電離放射線硬化性樹脂と、減衰性付与剤とを含有するハードコート層形成用組成物の硬化物から形成されることから、良好な硬度や耐擦傷性を有しながら、局所的な外力が加わった場合でもディスプレイの破損を抑制することができる。
【0010】
ここで、前記減衰性付与剤が、ジフェニルアミン系化合物およびビスフェノール系化合物からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物である場合には、局所的な外力が加わった場合にディスプレイの破損を抑制する効果に特に優れる。また、そのような減衰性付与剤として、上記に列挙した各化合物を好適に適用することができる。前記減衰性付与剤の含有量が、前記電離放射線硬化性樹脂100質量部に対し、1質量部以上、20質量部以下である場合には、ハードコート層において、耐衝撃性と耐擦傷性を高度に両立することができる。
【0011】
前記基材フィルムの前記ハードコート層とは反対の面上に透明粘着層を有する場合には、ハードコートフィルムをディスプレイの表面に密着性良く貼り付けるとともに、ディスプレイのガラスの飛散を防止することができる。また、前記ハードコート層の面上に、保護フィルムを有する場合には、ハードコートフィルムの加工や貼り合わせの工程で、ハードコート層の表面に傷が付くのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るハードコートフィルムの断面模式図の一例である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係るハードコートフィルムの断面模式図の一例である。
【
図3】本発明の第三実施形態に係るハードコートフィルムの断面模式図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
[第一実施形態にかかるハードコートフィルム]
図1は、本発明の第一実施形態に係るハードコートフィルムの断面図である。
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係るハードコートフィルム10は、基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成されたハードコート層14と、を有する。
【0015】
<基材フィルム>
基材フィルム12の具体的な構成は、透明性を有していれば、特に限定されるものではない。基材フィルム12としては、透明高分子フィルム、ガラスフィルムなどが挙げられる。透明性とは、可視光波長領域における全光線透過率が50%以上であることをいい、全光線透過率は、より好ましくは85%以上である。上記全光線透過率は、JIS K7361-1(1997)に準拠して測定することができる。基材フィルム12の厚さは、特に限定されるものではないが、取り扱い性、無色透明性、屈曲性などの観点から、12μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは20μm以上、特に好ましくは25μm以上である。また、より好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。なお、「フィルム」とは、一般に厚さが0.25mm未満のものをいうが、厚さが0.25mm以上のものであってもロール状に巻くことが可能であれば、厚さが0.25mm以上のものであっても「フィルム」に含まれるものとする。
【0016】
基材フィルム12が透明高分子フィルムである場合に、基材フィルム12を構成する高分子材料としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂,ポリエチレンナフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリプロピレン樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリシクロオレフィン樹脂,シクロオレフィンコポリマー樹脂などのポリオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂,ジアセチルセルロース樹脂等のセルロース系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。基材フィルム12の高分子材料は、これらのうちの1種のみで構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせで構成されていてもよい。これらのうちでは、光学特性や耐久性などの観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シクロオレフィンコポリマー樹脂、トリアセチルセルロース樹脂がより好ましい。
【0017】
基材フィルム12は、上記高分子材料の1種または2種以上を含む層からなる単層で構成されていてもよいし、上記高分子材料の1種または2種以上を含む層と、この層とは異なる高分子材料の1種または2種以上を含む層など、2層以上の層で構成されていてもよい。
【0018】
<ハードコート層>
ハードコート層14は、電離放射線硬化性樹脂と、減衰性付与剤とを含むハードコート層形成用樹脂組成物の硬化物から形成される。
【0019】
(電離放射線硬化性樹脂)
ハードコート層14は、高硬度、高屈曲性、生産性などの観点から、電離放射線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物から構成される。電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味する。電離放射線としては、紫外線(UV)、X線、γ線等の電磁波、α線、電子線(EB)、イオン線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらのうちでは、生産性の観点から、紫外線(UV)が特に好ましい。
【0020】
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線反応性の反応性基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーの少なくとも1種を含有する。電離放射線反応性の反応性基としては、アクリロイル基,メタクリロイル基、アリル基,ビニル基等のエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合型の反応性基やオキセタニル基などのカチオン重合型の反応性基などが挙げられる。これらのうちでは、アクリロイル基,メタクリロイル基、オキセタニル基がより好ましく、アクリロイル基、メタクリロイル基が特に好ましい。すなわち、電離放射線硬化性樹脂として、(メタ)アクリレートが特に好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよびメタクリレートの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイルおよびメタクリロイルの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリル」は「アクリルおよびメタクリルの少なくとも一方」をいう。
【0021】
電離放射線硬化性樹脂を構成する(メタ)アクリレートは、単官能(メタ)アクリレートのみで構成されていてもよいし、多官能(メタ)アクリレートのみで構成されていてもよいし、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの組み合わせで構成されていてもよい。電離放射線により硬化する組成物は、多官能(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
【0022】
(メタ)アクリレートとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でも、比較的柔軟で、ハードコートフィルム10の屈曲性が向上するなどの観点から、ウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0023】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、2-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0024】
多官能(メタ)アクリレートとしては、二官能(メタ)アクリレート、三官能(メタ)アクリレート、四官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。より具体的には、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0025】
また、オリゴマーやプレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。その他、電離放射線反応性の反応性基を有するポリマーなども挙げられる。
【0026】
電離放射線硬化性樹脂の(メタ)アクリレートは、上記する(メタ)アクリレートの1種単独で構成されていてもよいし、2種以上で構成されていてもよい。
【0027】
(減衰性付与剤)
減衰性付与剤は、ハードコート層に含有されることにより、ハードコート層の耐衝撃性の向上に寄与する。
【0028】
減衰性付与剤は、音、振動、電磁波、衝撃等のエネルギーが外力として加わると(その共振周波数で)回転する双極子(ダイポール)と呼ばれる分極(正負の偏り)を持った物質であり、この物質に音、振動、電磁波等のエネルギーが当たると、双極子が移動、あるいは回転し、その際にマトリックスの分子鎖や双極子同士の衝突により摩擦熱が発生し、熱エネルギーへと変換されて、加えられたエネルギーが減衰される。そのエネルギー変換効率は双極子能率(ダイポールモーメント)の大きさに依存する。例えば、物質の中で最も双極子能率が高いとされる水分子(H2O)にマイクロ波を照射すると水分子が回転し発熱する電子レンジの原理にその効果を確認することができる。
【0029】
そのような作用を持ち、ハードコート層14を構成する組成物に添加するのに適した減衰性付与剤としては、ジフェニルアミン系化合物、ビスフェノール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を挙げることができる。中でも、ジフェニルアミン系化合物およびビスフェノール系化合物からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物を用いることが好ましい。
【0030】
ジフェニルアミン系化合物としては、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン等を挙げることができる。一方、ビスフェノール系化合物としては、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)等を挙げることができる。これらの中では、電離放射線硬化性樹脂との相容性の観点から、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)が特に好ましい。
【0031】
電離放射線硬化性樹脂より構成されるマトリックス中に双極子能率の高い減衰性付与剤を配合することで耐衝撃性を有するハードコート層を得ることができる。このように減衰付与剤を含んで構成される耐衝撃性のハードコート層14は、外部より衝撃力が加わった際に、樹脂マトリックス内部に存在する双極子に変位が生じる。双極子に変位が生じるとは、樹脂マトリックス内部における各双極子が回転したり、位相がズレたりすることをいう。
【0032】
衝撃力(衝撃エネルギー)が加わる前の樹脂マトリックス内部における双極子の配置状態は、エネルギー的に安定な状態にあると言える。ところが、衝撃力(衝撃エネルギー)が加わることで、樹脂マトリックス内部に存在する双極子に変位が生じ、これにより、樹脂マトリックス内部における各双極子は不安定な状態に置かれることになる。すると、各双極子は、元の安定な状態に戻ろうとする。このとき、双極子を有する物質と隣接する高分子鎖や低分子との接触によりジュール熱が発生し、結果的に衝撃によって付加されたエネルギーが熱エネルギーに変換され消滅する。こうした、樹脂マトリックス内部における双極子の変位と、それに続く双極子の復元作用によるエネルギー消費を通じて、衝撃力の吸収の効果が生じるものと考えられる。
【0033】
ハードコート層14を構成する組成物における減衰性付与剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましい。1質量部以上であれば、耐衝撃性は十分なものとなる。この観点から、より好ましくは1.5質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上である。一方で減衰性付与剤の含有量は、20質量部以下であることが好ましい。20質量部以下であれば、ハードコート層14の表面の耐擦傷性を良好なものとすることができる。この観点から、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。ハードコート層14において、減衰性付与剤は、電離放射線硬化性樹脂の硬化物の中に分散された状態で分布する。
【0034】
(その他の成分)
ハードコート層14を構成する電離放射線により硬化する組成物には、電離放射線により硬化するポリマーに加え、電離放射線により硬化しないポリマーが含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。また、電離放射線により硬化する組成物には、重合開始剤が含まれていてもよい。また、必要に応じ、一般的に硬化性組成物に添加可能な添加剤などが含まれていてもよい。添加剤としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、搖変剤、防汚剤、抗菌剤、難燃剤、スリップ剤、無機粒子、樹脂粒子などが挙げられる。また、必要に応じ、溶剤が含まれていてもよい。
【0035】
電離放射線により硬化しないポリマーとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0036】
重合開始剤としては、光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤としては、アルキルフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系、オキシムエステル系などの光重合開始剤が挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジルメチル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン-1-[9-エチルー6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾールー3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)などが挙げられる。光重合開始剤は、これらの1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わされて用いられてもよい。
【0037】
光重合開始剤の含有量は、電離放射線により硬化する組成物全量基準で、0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上とするとよい。一方、その含有量は、10質量%以下、より好ましくは5質量%以下とするとよい。
【0038】
無機粒子および樹脂粒子は、例えばハードコート層14のブロッキングを防止する、シワを抑制する、表面硬度を向上するなどの目的で、ハードコート層14に添加される。添加する無機粒子や樹脂粒子により、ハードコート層14に微細な表面凹凸を形成することで、ハードコートフィルム10をロール状に巻き付けたり重ねたりした際に、表面と裏面が接着するブロッキングを抑えやすい。
【0039】
電離放射線により硬化する組成物は、溶剤により希釈されていてもよい。溶剤としては、エタノール,イソプロピルアルコール(IPA),n-ブチルアルコール(NBA),エチレングリコールモノメチルエーテル(EGM),エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(IPG),プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM),ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール系溶剤や、メチルエチルケトン(MEK),メチルイソブチルケトン(MIBK),シクロヘキサノン,アセトンなどのケトン系溶剤、トルエン,キシレンなどの芳香族系溶剤、酢酸エチル(EtAc),酢酸プロピル,酢酸イソプロピル,酢酸ブチル(BuAc)などのエステル系溶剤、N-メチルピロリドン,アセトアミド,ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤などが挙げられる。これらは、溶剤として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0040】
電離放射線により硬化する組成物の固形分濃度(溶剤以外の成分の濃度)は、塗工性、膜厚などを考慮して適宜定めればよい。例えば、1質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上などとすればよい。また、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下などとすればよい。
【0041】
(ハードコート層の厚みおよび硬度)
ハードコート層14の厚みは、特に限定されるものではないが、十分な硬度を有するなどの観点から、0.5μm以上であることが好ましい。より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは3.0μm以上である。また、基材フィルム12との熱収縮差に起因するカールが抑えられやすいなどの観点から、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは8.0μm以下、さらに好ましくは6.0μm以下である。ハードコート層14の厚みは、厚み方向において無機粒子や樹脂粒子に起因する凹凸のない部分における比較的平滑な部分の厚みである。
【0042】
ハードコート層14は、鉛筆硬度がHB以上であることが好ましい。より好ましくはH以上である。ここでいうハードコート層14の鉛筆硬度は、基材フィルム12の一方面上に形成されたハードコート層14の表面の鉛筆硬度であり、基材フィルム12の他方面上に透明粘着層22(後述)が形成されていない状態で測定されるものである。ハードコート層14の鉛筆硬度は、JIS K 5600-5-4に準拠して測定することができる。
【0043】
<ハードコートフィルムの製造方法>
ハードコートフィルム10は、基材フィルム12の面上にハードコート層14となる組成物を塗工し、必要に応じて乾燥後、紫外線照射等の電離放射線照射により硬化させて、基材フィルム12の面上にハードコート層14を形成することにより、製造することができる。この際、基材フィルム12とハードコート層14の密着性を向上させるために、基材フィルム12の表面には、塗工前に表面処理が施されてもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線処理などが挙げられる。
【0044】
ハードコート層14を形成する組成物の塗工には、例えば、リバースグラビアコート法,ダイレクトグラビアコート法,ダイコート法,バーコート法,ワイヤーバーコート法,ロールコート法,スピンコート法,ディップコート法,スプレーコート法,ナイフコート法,キスコート法などの各種コーティング法や、インクジェット法、オフセット印刷,スクリーン印刷,フレキソ印刷などの各種印刷法を用いて行うことができる。
【0045】
乾燥工程の実施条件は、塗工液に用いた溶剤等を除去できれば特に限定されるものではないが、50℃以上150℃以下の温度で10秒以上180秒以下程度行うことが好ましい。特に、乾燥温度は、50℃以上120℃以下が好ましい。
【0046】
紫外線照射には、高圧水銀ランプ、無電極(マイクロ波方式)ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、その他任意の紫外線照射装置を用いることができる。紫外線照射は、必要に応じて、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。紫外線照射量は、特に限定されるものではないが、50~800mJ/cm2が好ましく、100~300mJ/cm2がより好ましい。
【0047】
以上の構成のハードコートフィルム10は、基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成されたハードコート層14とを有する、ハードコートフィルムであって、ハードコート層14が、バインダー樹脂と、減衰性付与剤を含有するため、優れた耐衝撃性と耐擦傷性を有するハードコートフィルム10となる。
【0048】
[他の実施形態にかかるハードコートフィルム]
本発明に係るハードコートフィルムは、第一実施形態に係るハードコートフィルム10の構成に限定されるものではない。以下に、本発明に係るハードコートフィルムの他の実施形態について説明する。
【0049】
<第二実施形態>
図2には、第二実施形態に係るハードコートフィルム20として、光学粘着層(OCA)としての透明粘着層22を有する形態を示している。第二実施形態に係るハードコートフィルム20は、基材フィルム12と、基材フィルム12の一方の面上に形成されたハードコート層14と、を有する。また、基材フィルム12の他方の面上に透明粘着層22を有する。透明粘着層22の面上には、必要に応じて離型フィルム24が配置される。離型フィルム24は、使用前に透明粘着層22の保護層として機能し、使用時には、透明粘着層22から剥がされる。
【0050】
第二実施形態に係るハードコートフィルム20は、第一実施形態に係るハードコートフィルム10と比較して、基材フィルム12の他方の面上に透明粘着層22を有する点が相違し、これ以外については第一実施形態に係るハードコートフィルム10と同様であり、同様の構成についてはその説明を省略する。
【0051】
透明粘着層22は、ハードコートフィルム20をディスプレイの表面に密着性良く貼り付けるためのものである。また、ハードコートフィルム20は、透明粘着層22を有することで、ディスプレイのガラスの飛散を防止する効果を有する。すなわち、ハードコートフィルム20は、飛散防止フィルムとしての機能も有する。
【0052】
透明粘着層22を形成する粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などの公知の粘着性樹脂を含有することができる。中でも、光学的な透明性や耐熱性の観点から、(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤組成物は、透明粘着層22の凝集力を高めるために、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤などが挙げられる。
【0053】
粘着剤組成物には、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、可塑剤、シランカップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、充填剤、硬化促進剤、硬化遅延剤などの公知の添加剤が挙げられる。また、生産性などの観点から、有機溶剤を使用して希釈してもよい。
【0054】
透明粘着層22の膜厚は、特に限定されるものではないが、5μm以上、より好ましくは10μm以上であるとよい。また、その膜厚は、100μm以下、より好ましくは50μm以下であるとよい。
【0055】
透明粘着層22は、基材フィルム12の他方の面上に粘着剤組成物を直接塗布して形成する方法、離型フィルム24の面上に粘着剤組成物を塗布して形成した後、基材フィルム12の他方の面上に転写する方法、第一の離型フィルムの面上に粘着剤組成物を塗布して形成した後、第二の離型フィルムを貼り合わせ、いずれか一方の離型フィルムを剥離して基材フィルム12の他方の面上に転写する方法などにより形成することができる。
【0056】
透明粘着層22の25℃におけるせん断貯蔵弾性率は、好ましくは1.0×104Pa以上、より好ましくは2.0×104Pa以上、さらに好ましくは5.0×104Pa以上、特に好ましくは1.0×105Pa以上であり、好ましくは3.0×106Pa以下、より好ましくは2.0×106Pa以下、さらに好ましくは1.0×106Pa以下である。せん断貯蔵弾性率(G’)が1.0×104Pa以上であれば透明粘着層22が適度な柔軟性を有して形状追従性を有しながら耐衝撃性を良好なものとすることができ、3.0×106Pa以下であれば透明粘着層22の凝集力および粘着性がより良好となる。
【0057】
透明粘着層22は、浮きや剥がれを抑制する観点から、被着体に対する粘着力が、4N/25mm以上であることが好ましい。より好ましくは6N/25mm以上、さらに好ましくは10N/25mm以上である。
【0058】
<第三実施形態>
図3には、第三実施形態に係るハードコートフィルム30として、保護フィルムを有する形態を示している。第三実施形態に係るハードコートフィルム30は、基材フィルム12と、基材フィルム12の一方の面上に形成されたハードコート層14と、ハードコート層14の面上に粘着剤層26を介して配置された保護フィルム28と、を有する。また、基材フィルム12の他方の面上に透明粘着層22を有する。透明粘着層22の面上には、必要に応じて離型フィルム24が配置される。
【0059】
第三実施形態に係るハードコートフィルム30は、第二実施形態に係るハードコートフィルム20と比較して、ハードコート層14の面上に粘着剤層26を介して保護フィルム28を有する点が相違し、これ以外については第二実施形態に係るハードコートフィルム20と同様であり、同様の構成についてはその説明を省略する。
【0060】
保護フィルム28は、例えばロールプロセスなどで連続加工したりタッチパネルなどに貼り合わせたりするなどのハードコートフィルム30の取扱い時において、ハードコート層14の表面に傷が付くのを抑えることができるものである。保護フィルム28は、粘着剤層26を介してハードコート層14の面に貼り付けられている。保護フィルム28は、ハードコートフィルム30の加工後や貼り合わせ後などにおいては、粘着剤層26とともに低屈折率層14の面から剥がされる。このため、粘着剤層26は、ハードコート層14と粘着剤層26の間の接着力よりも保護フィルム28と粘着剤層26の間の接着力のほうが強く、ハードコート層14と粘着剤層26の間で界面剥離可能な接着力に調整される。
【0061】
保護フィルム28を構成する材料は、基材フィルム12を構成する材料として例示したものなどを適宜選択することができる。保護フィルム28の厚みは、特に限定されるものではないが、2μm以上、また500μm以下、さらに200μm以下の範囲内とすることができる。
【0062】
粘着剤層26を形成する粘着剤は、特に限定されるものではなく、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などを好適に用いることができる。特に、アクリル系粘着剤は、透明性や耐熱性に優れるため、好適である。(メタ)アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル重合体および架橋剤を含む粘着剤組成物から形成されることが好ましい。
【0063】
(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリルモノマーの単独重合体もしくは共重合体である。(メタ)アクリルモノマーとしては、アルキル基含有(メタ)アクリルモノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーなどが挙げられる。
【0064】
アルキル基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、炭素数2~30のアルキル基を有する(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。炭素数2~30のアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいし、環状であってもよい。アルキル基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、より具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチルなどが挙げられる。
【0065】
カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチルなどが挙げられる。カルボキシル基は、アルキル鎖の末端に位置していてもよいし、アルキル鎖の中間に位置していてもよい。
【0066】
水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどが挙げられる。水酸基は、アルキル鎖の末端に位置していてもよいし、アルキル鎖の中間に位置していてもよい。
【0067】
(メタ)アクリル重合体を形成する(メタ)アクリルモノマーは、上記のいずれか1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0068】
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤などが挙げられる。架橋剤は、これらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
粘着剤組成物には、(メタ)アクリル重合体、架橋剤以外に、その他添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、架橋促進剤、架橋遅延剤、粘着性付与樹脂(タッキファイヤー)、帯電防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、剥離助剤、顔料、染料、湿潤剤、増粘剤、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、金属不活性剤、アルキル化剤、難燃剤などが挙げられる。これらは粘着剤の用途や使用目的に応じて、適宜選択して使用される。
【0070】
粘着剤層26の膜厚は、特に限定されるものではないが、1μm以上、より好ましくは2μm以上であるとよい。また、その膜厚は、10μm以下、より好ましくは7μm以下であるとよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。例えば上記実施形態では、基材フィルム12の表面に表面処理を施してもよいと記載しているが、表面処理に代えて、基材フィルム12の表面に、易接着層を設ける構成であってもよい。また、基材フィルム12の表面には、ハードコート層14を形成する前に、ガスバリア性向上層、帯電防止層、オリゴマーブロック層などの各種機能層を予め設けてもよい。そして、ハードコート層14の表面には、透明導電層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層、防曇層などの各種機能層を設けてもよい。
【実施例0072】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。特記しない限り、試料の作製および評価に係る各工程は、大気中、室温にて実施している。
【0073】
<ハードコート層形成用組成物の調製>
(実施例1~2)
紫外線硬化性樹脂組成物(DIC製「ESS-620」、ウレタンアクリレート樹脂、溶剤:酢酸エチル、固形分濃度:79質量%)に、減衰性付与剤1として、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(大内新興化学製「ノクラックNS-30」、融点:208℃)、および光重合開始剤「Omnirad127」(IGM Resins B.V.製)を添加して、ハードコート層形成用組成物を調製した。この際、減衰性付与剤の配合量は、表1に記載のとおりとし(紫外線硬化性樹脂の固形分100質量部に対する質量部)、光重合開始剤の配合量は、紫外線硬化性樹脂と減衰性付与剤の固形分100質量%に対し3質量%となるようにした。さらに、ハードコート層形成用組成物において、固形分濃度42.5質量%となるように酢酸エチルを加えた。
【0074】
(実施例3~4)
<ハードコート層形成用組成物の調製>
減衰性付与剤1の代わりに、減衰性付与剤2として、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学製「ノクラックCD」、融点:90℃)を用いた以外は上記実施例1,2と同様にして、実施例3,4のハードコート層形成用組成物を調製した。
【0075】
(比較例1)
減衰性付与剤を用いなかった以外は実施例1~4と同様にして、比較例1のハードコート層形成用組成物を調製した。
【0076】
<ハードコート層の形成>
基材フィルム(東洋紡製ポリエチレンテレフタレートフィルム「TA048」、厚み80μm)に、#12のワイヤーバーを用いて、上記で調製した各ハードコート層形成用組成物を塗布し、80℃×60秒で乾燥後、高圧水銀ランプを用いて光量200mJ/cm2の紫外線を照射してハードコート層(膜厚5μm)を形成した。以上により、実施例1~4に係るハードコートフィルムを作製した。
【0077】
<評価方法>
(膜厚)
ハードコート層の膜厚を、フィルメトリクス製「Filmetrics F20 膜厚測定システム」を用い、分光干渉法により測定した。
【0078】
(スチールウール試験)
ハードコート層の耐擦傷性を評価するためにスチールウール試験を行った。学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業製 AB-301 COLOR FASTNESS RUBBING TESTER)を使用し、20mm×20mmの摩擦子に固定したスチールウール#0000(日本スチールウール株式会社製)を、ハードコートフィルムのハードコート層の表面に載せて往復させた。試験台のストローク長は120mm、試験台往復速度は60往復/分とし、荷重500g/cmで往復動させた。100往復ごとにサンプルを目視観察し、長さ10mm以上の傷が観察されないときの最大の回数を、スチールウール試験の評価値とした。
【0079】
(ハードコート層の鉛筆硬度)
鉛筆硬度試験機(テスター産業製)を使用してJIS K 5600-5-4に規定された方法によって、ハードコートフィルムを構成するハードコート層の硬度を測定した。試験荷重は500gで、鉛筆の硬度を変えながら5回繰り返し試験を行い、同じ鉛筆で、キズやへこみが生じた試験回数が5回中1回以内であったときの鉛筆の硬度の最高値を評価値とした。
【0080】
(ペンドロップ試験)
ハードコート層の耐衝撃性を評価するために、ペンドロップ試験を行った。ハードコートフィルムをハードコート層とは反対側の面で、光学粘着シート(東山フイルム製「S-PS58」、厚さ25μm)を介して厚さ2mmのガラス板にハンドローラーを用いて貼り合わせ、2kgローラーを1往復させて圧着した。次いで、ハードコート層を上にして厚さ5mmのSUS板上に設置し、ペンシル状に先端を尖らせた円柱(SUS304製、直径φ9mm、全長49.8mm、テーパー角25°、先端R(半径)0.8mm、重さ19.4g)を、尖らせた先端がハードコート層に垂直に衝突するようにして、ハードコートフィルムからの高さが400mmの位置から落下させた。衝突試験から5分後、3D測定レーザー顕微鏡(オリンパス製「LEXT OLS5000」、対物レンズ倍率10倍)を用いて、衝突によってハードコートフィルムの表面に生じた窪みの深さを測定した。概ね、このペンドロップ打痕の深さが50μm以下であれば、ハードコート層が高い耐衝撃性を備えていると言える。
【0081】
<評価結果>
下の表1に、各試料のハードコート層の成分組成と、評価の結果をまとめる。
【0082】
【0083】
表1によると、比較例1は、ハードコート層に減衰性付与剤を含有しないため、局所的な外力が加わった際に、50μmを超える深いペンドロップ打痕が発生した。これに対し、ハードコート層に減衰性付与剤を含む実施例1~4においては、ペンドロップ打痕の深さが50μm以下に抑えられており、ハードコート層に減衰性付与剤を添加することで、ハードコート層の耐衝撃性が向上していることが分かる。また、実施例1~4と比較例1で、スチールウール試験および鉛筆硬度の評価結果がほぼ同じになっており、減衰性付与剤を添加した場合でも、ハードコート層の耐擦傷性および高硬度は維持されることが確認される。
【0084】
減衰性付与剤として、実施例1,2ではビスフェノール系化合物を用い、実施例3,4ではジフェニルアミン系化合物を用いているが、いずれの減衰性付与剤を用いた場合にも、ペンドロップ打痕の深さの低減として評価されるハードコート層の耐衝撃性向上の効果が得られている。また、いずれの減衰性付与剤を用いた場合にも、減衰性付与剤の添加量を2質量部(実施例1,3)から10質量部(実施例2,4)に増加させることで、耐擦傷性向上効果が特に大きくなっている。特に、ジフェニルアミン系の減衰付与剤を用いている実施例4において、その効果が顕著である。
【0085】
以上のように、基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成されたハードコート層と、を有し、ハードコート層が、電離放射線硬化性樹脂と、減衰性付与剤を含有するハードコート層形成用組成物の硬化物から形成されるハードコートフィルムは、良好な硬度や耐擦傷性を有しながら、局所的な外力が加わった場合でもディスプレイの破損を抑制することができる。
【0086】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。