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  • 特開-アスファルト混合物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009639
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】アスファルト混合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/10 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
E01C19/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113085
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神尾 昌宏
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052AA04
2D052BA23
2D052CA09
2D052DA05
2D052DA10
2D052DA12
(57)【要約】
【課題】 比較的簡易な構成で、かつ設置スペースを抑えながらも、通常混合物や中温化混合物の出荷に即座に対応可能とするアスファルト混合物の製造方法を提供する。
【解決手段】 プラント本体3に未加熱の常温砂を貯蔵する常温砂貯蔵ビン20を備えると共に、操作盤4では、1バッチ分の中温化混合物を製造するのに要する総熱量から砂以外の材料が占める固定熱量を減じて砂が占める調整熱量を演算し、この調整熱量に見合う熱量となるように加熱砂と常温砂との混合割合を算出しておく。そして、中温化混合物を製造するときには、砂以外の材料は配合通りにミキサ19に投入する一方、砂は前記混合割合に基づいて加熱砂と常温砂とを前記ミキサ19に投入し、前記各材料を混合する間に常温砂に含まれる水分を蒸発させ、かつその際の気化熱を利用して所望の出荷温度に調整する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材を加熱乾燥するドライヤと、篩い分け・貯蔵・計量・混合機能を有するプラント本体とを備え、前記ドライヤにて所定温度に加熱乾燥した各種粒径の加熱骨材を前記プラント本体のミキサに所定割合で投入し、石粉及び溶融アスファルトを添加しながら混合することでアスファルト混合物を製造するアスファルト混合物の製造方法において、前記プラント本体に未加熱の常温砂を貯蔵する常温砂貯蔵ビンを備えると共に、製造するアスファルト混合物の出荷温度と、比熱と、前記ミキサの1バッチ分の混合容量とから、1バッチ分の前記アスファルト混合物を製造するのに要する総熱量を求め、前記プラント本体に貯蔵する砂以外の各種加熱骨材、石粉、溶融アスファルトの各貯蔵温度と、これら各材料の比熱と、1バッチ分の前記アスファルト混合物中の前記各材料の配合量とから、前記総熱量のうち砂以外の材料が占める固定熱量を求め、前記総熱量から前記固定熱量を減算して砂が占める調整熱量を求め、前記プラント本体に貯蔵する加熱砂の貯蔵温度と、前記常温砂貯蔵ビンに貯蔵する常温砂の貯蔵温度及び含水比と、砂の比熱と、1バッチ分の前記アスファルト混合物中の砂の配合量とから、前記調整熱量に見合う熱量となるように前記加熱砂と常温砂との混合割合を求めておき、前記アスファルト混合物を製造するときには、砂以外の材料は配合通りにミキサ内に投入する一方、砂は前記混合割合に基づいて加熱砂と常温砂とを前記ミキサ内に投入し、前記ミキサ内で混合する間に常温砂に含まれる水分を蒸発させ、かつその際の気化熱を利用してアスファルト混合物を所望の出荷温度に調整することを特徴とするアスファルト混合物の製造方法。
【請求項2】
前記常温砂貯蔵ビンに貯蔵する常温砂に対し、予め加水処理をして所定含水比に調整することを特徴とする請求項1記載のアスファルト混合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装材であるアスファルト混合物を製造する方法に関し、特に中温化混合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトプラントでは、アスファルト混合物の素材である骨材をドライヤにて160℃前後に加熱乾燥後、隣接するプラント本体上部の振動篩に供給し、該振動篩にて篩い分けて下位の骨材貯蔵ビンに粒径別に貯蔵しておき、出荷するアスファルト混合物の種類に応じた配合となるように前記骨材貯蔵ビンより所望粒径の骨材を所定量ずつ計量槽に払い出して計量すると共に、所定量の溶融アスファルト及び石粉等と共にプラント本体下部のミキサ内に投入して混合調整し、所望のアスファルト混合物を製造している。
【0003】
ところで、近年、省エネルギー化、CO2の排出量抑制等の観点から、骨材の加熱温度を通常のアスファルト混合物の温度よりも、例えば約30℃程度低く抑えた(約130℃程度)中温化混合物と呼ばれるアスファルト混合物を製造する機会が増えている。
【0004】
この対応として、本出願人も特許文献1(特開2006-132131号公報)に示されるように、アスファルトプラントのプラント本体の近傍にプラントにて製造した約160℃程度のアスファルト混合物を貯蔵する貯蔵サイロを別途配設し、該貯蔵サイロの下位にはプラント本体と同様に計量槽とミキサとを具備する一方、前記貯蔵サイロの側部には常温の冷骨材を貯蔵するサージビンを更に配設してなるアスファルト混合物の製造方法及び製造装置を提案している。
【0005】
そして、上記製造方法及び製造装置にあっては、出荷するアスファルト混合物の配合に応じて所望粒径の冷骨材を前記サージビンに貯蔵しておき、前記貯蔵サイロ及びサージビンからアスファルト混合物及び冷骨材をそれぞれ所定割合で前記ミキサ内に投入・混合することにより、出荷するアスファルト混合物を所望温度(例えば、約130℃程度)に調整(低下)可能としている。
【0006】
このように、上記製造方法及び製造装置によれば、通常のアスファルト混合物を製造するために、プラント本体の骨材貯蔵ビンに約160℃の加熱骨材を貯蔵している場合でも、それをわざわざ抜き取ること無く、約130℃の中温化混合物を即座に出荷可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-132131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記したアスファルト混合物の製造方法及び製造装置にあっては、プラント本体とは別にアスファルト混合物の貯蔵サイロを配設していると共に、その下位にはプラント本体と同様に、計量槽とミキサを具備した構成を採用しており、やや大掛かりな装置構成でそれなりのコストを要するものとなっている上、比較的広い設置スペースを要し、場合によっては設置が難しいといったことも想定される。
【0009】
本発明は上記の点に鑑み、比較的簡易な構成で、かつ設置スペースを抑えながらも、通常混合物や中温化混合物の出荷に即座に対応可能とするアスファルト混合物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載のアスファルト混合物の製造方法は、骨材を加熱乾燥するドライヤと、篩い分け・貯蔵・計量・混合機能を有するプラント本体とを備え、前記ドライヤにて所定温度に加熱乾燥した各種粒径の加熱骨材を前記プラント本体のミキサに所定割合で投入し、石粉及び溶融アスファルトを添加しながら混合することでアスファルト混合物を製造するアスファルト混合物の製造方法において、前記プラント本体に未加熱の常温砂を貯蔵する常温砂貯蔵ビンを備えると共に、製造するアスファルト混合物の出荷温度と、比熱と、前記ミキサの1バッチ分の混合容量とから、1バッチ分の前記アスファルト混合物を製造するのに要する総熱量を求め、前記プラント本体に貯蔵する砂以外の各種加熱骨材、石粉、溶融アスファルトの各貯蔵温度と、これら各材料の比熱と、1バッチ分の前記アスファルト混合物中の前記各材料の配合量とから、前記総熱量のうち砂以外の材料が占める固定熱量を求め、前記総熱量から前記固定熱量を減算して砂が占める調整熱量を求め、前記プラント本体に貯蔵する加熱砂の貯蔵温度と、前記常温砂貯蔵ビンに貯蔵する常温砂の貯蔵温度及び含水比と、砂の比熱と、1バッチ分の前記アスファルト混合物中の砂の配合量とから、前記調整熱量に見合う熱量となるように前記加熱砂と常温砂との混合割合を求めておき、前記アスファルト混合物を製造するときには、砂以外の材料は配合通りにミキサ内に投入する一方、砂は前記混合割合に基づいて加熱砂と常温砂とを前記ミキサ内に投入し、前記ミキサ内で混合する間に常温砂に含まれる水分を蒸発させ、かつその際の気化熱を利用してアスファルト混合物を所望の出荷温度に調整することを特徴としている。
【0011】
また、請求項2記載のアスファルト混合物の製造方法は、前記常温砂貯蔵ビンに貯蔵する常温砂に対し、予め加水処理をして所定含水比に調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る請求項1のアスファルト混合物の製造方法によれば、プラント本体に未加熱の常温砂を貯蔵する常温砂貯蔵ビンを備えると共に、1バッチ分の所望出荷温度のアスファルト混合物を製造するのに要する総熱量を求め、前記総熱量のうち砂以外の材料が占める固定熱量を求め、前記総熱量から前記固定熱量を減算して砂が占める調整熱量を求め、前記調整熱量に見合う熱量となるように加熱砂と常温砂との混合割合を求めておき、前記アスファルト混合物を製造するときには、砂以外の材料は配合通りにミキサ内に投入する一方、砂は前記混合割合に基づいて加熱砂と常温砂とを前記ミキサ内に投入し、前記ミキサ内で混合する間に常温砂に含まれる水分を蒸発させ、かつその際の気化熱を利用してアスファルト混合物を所望の出荷温度に調整するので、効果的にアスファルト混合物の温度調整を行える結果、既設のプラントに対して常温砂貯蔵ビンを追加設置するだけで対応でき、比較的簡易な構成で、かつ設置スペースを抑えながらも、通常混合物や中温化混合物の出荷に即座に対応することができる。
【0013】
また、請求項2記載のアスファルト混合物の製造方法によれば、前記常温砂貯蔵ビンに貯蔵する常温砂に対し、予め加水処理をして所定含水比に調整するので、仮に砂の配合量が少ない場合であっても、気化熱をより効果的に利用して中温化混合物の出荷に柔軟に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るアスファルト混合物の製造方法の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るアスファルト混合物の製造方法にあっては、骨材を加熱乾燥するドライヤと、篩い分け・貯蔵・計量・混合機能を有するプラント本体とを備え、前記ドライヤにて所定温度に加熱乾燥した各種粒径の加熱骨材を前記プラント本体のミキサに所定割合で投入し、別途計量した石粉及び溶融アスファルトを添加しながら混合することで所望のアスファルト混合物を製造可能とする。
【0016】
前記プラント本体には、通常のプラントと同様に、溶融アスファルトの貯蔵タンク、石粉の貯蔵サイロ、及び前記ドライヤにて加熱乾燥した加熱骨材を粒径別に貯蔵する骨材貯蔵ビンを備えると共に、前記ドライヤでの加熱処理を経ていない未加熱(ある程度の水分を含んだ状態)の常温砂を貯蔵する常温砂貯蔵ビンを備える。
【0017】
また、前記各貯蔵ビン(タンク、サイロ)には、貯蔵中の骨材、溶融アスファルト、石粉等の各材料の貯蔵温度を検出する温度センサを備える一方、前記常温砂貯蔵ビンには、前記温度センサに加えて、貯蔵中の常温砂に含まれる水分(含水比)を検出する水分センサを備える。
【0018】
また、前記プラント本体近傍にはプラント操作・制御用の操作盤を備え、前記各温度センサや水分センサからの各検出値を逐次取り込み可能とする。また、前記操作盤には、アスファルト混合物、及びその素材である骨材、石粉、溶融アスファルトの各比熱と、前記ミキサの1バッチ分の混合容量とを予め設定登録する。
【0019】
そして、前記アスファルトプラントにて出荷温度が通常混合物よりも低い中温化混合物を製造する場合には、前記操作盤では、事前に、アスファルト混合物の出荷温度(例えば、130℃)と、予め登録した比熱と、ミキサ1バッチ分の混合容量とから、1バッチ分の前記中温化混合物を製造するのに要する総熱量を演算する。
【0020】
次いで、前記各温度センサにて検出した、砂(粒径が2.5mm以下の骨材)以外の各種加熱骨材(例えば、5号砕石:20~13mm粒径相当の骨材、6号砕石:13~5mm粒径相当の骨材、7号砕石:5~2.5mm粒径相当の骨材)、石粉、溶融アスファルトの各貯蔵温度と、予め登録したこれら各材料の比熱と、1バッチ分の前記中温化混合物中の各材料の配合量とから、前記総熱量のうち砂以外の材料が占める固定熱量を演算する一方、前記総熱量から前記固定熱量を減じて前記総熱量のうち砂が占める調整熱量を演算する。
【0021】
次いで、前記同様に、前記各温度センサにて検出した、前記プラント本体の骨材貯蔵ビンに貯蔵する加熱砂の貯蔵温度と、前記常温砂貯蔵ビンに貯蔵する常温砂の貯蔵温度と、前記水分センサにて検出した常温砂の含水比と、予め登録した砂(骨材)の比熱と、1バッチ分の前記中温化混合物中の砂の配合量とから、水が蒸発する際の気化熱を加味した上で、前記調整熱量に見合う熱量となるように、前記加熱砂と常温砂との混合割合を演算しておく。
【0022】
即ち、高温で乾燥した状態の加熱砂に対し、低温で水分を含んだ状態の常温砂を所定割合で混合することにより、混合後の砂の保有する総熱量が予め求めておいた前記調整熱量と同等程度になるように、両者の混合割合を事前に求めておく。
【0023】
そして、上記各演算処理を経た後、実際に前記中温化混合物を製造するときには、砂以外の材料は配合通りに計量して前記ミキサ内に投入する一方、砂は予め求めた前記混合割合に基づいて加熱砂と常温砂とを所定量ずつ前記ミキサ内に投入する。そして、前記ミキサ内で前記各材料を混合する間に、前記常温砂に含まれる水分を蒸発させ、かつその際の気化熱を利用してアスファルト混合物の温度を所望の出荷温度(約130℃)に調整する(低下させる)。
【0024】
また、好ましくは、前記常温砂貯蔵ビンに加水(散水)手段を備え、前記常温砂貯蔵ビンに貯蔵する常温砂に対し、適宜加水(散水)処理を行うことで所定含水比に調整可能なようにするとよい。これにより、仮に常温砂中の含水比が元々低い場合や、砂の配合量が少ない中温化混合物を製造する場合であっても、水の気化熱を効果的に利用でき、余裕を持って所望の出荷温度に調整する(低下させる)ことが可能となる。
【0025】
このように、本発明のアスファルト混合物の製造方法にあっては、砂以外の各種骨材、溶融アスファルト等については通常混合物製造時の温度(約160℃)のまま、かつ配合通りにミキサ内に投入する一方、砂についてはドライヤにて加熱乾燥処理した加熱砂(約160℃)と、加熱乾燥処理を経ずに若干の水分を含んだ状態の常温砂(例えば約15℃)とをそれぞれ用意しておき、中温化混合物を製造する場合に、前記加熱砂と常温砂との混合割合を適宜調整した上で前記ミキサ内に投入して混合することにより、所望の出荷温度に調整(低下)可能としている。
【0026】
このとき、他の骨材と比較すると水分をやや多く含む砂に着目し、砂に含まれる水分が蒸発する際の気化熱を有効に利用することで、通常混合物の出荷温度(約160℃)から中温化混合物の出荷温度(約130℃)に効果的に調整する(低下させる)ことが可能となり、例えば、既設のアスファルトプラントのプラント本体に対して常温砂貯蔵ビンを追加設置するといった比較的簡単な構成で、かつ設置スペースも抑えながら、通常混合物や中温化混合物の何れの出荷要請にも即座に対応することが可能な、使い勝手のよいプラントを提供することができる。
【実施例0027】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0028】
図中の1は本発明に係るアスファルト混合物製造用のアスファルトプラントであって、各種粒径の骨材を加熱乾燥するロータリーキルン構造のドライヤ2、該ドライヤ2での加熱乾燥処理を経た加熱骨材を篩い分け・貯蔵・計量・混合するプラント本体3、及びこれらプラント内の各種装置・機器を操作・制御する操作盤4等を主体に構成している。
【0029】
前記ドライヤ2の上流側には、アスファルト混合物の素材である骨材を粒径毎に貯蔵する複数の骨材ホッパ5を備え、該骨材ホッパ5から配合に応じて切り出される各種粒径の骨材を、ベルトコンベヤ6を介して前記ドライヤ2の円筒状のドラム本体7内に供給するようにしている一方、前記ドライヤ2の下流側には、前記ドラム本体7の一端側に具備したバーナ8より供給される熱風との接触によって所定温度(例えば、約160℃)に加熱乾燥処理した加熱骨材を、前記プラント本体3上部の振動篩9へと供給する垂直搬送装置10を備えている。
【0030】
前記プラント本体3には、加熱骨材を篩い分ける前記振動篩9、該振動篩9にて篩い分けた加熱骨材を粒径別に貯蔵する骨材貯蔵ビン11、該骨材貯蔵ビン11より払い出される各種粒径の加熱骨材を累積計量する骨材計量槽12、溶融アスファルトを貯蔵するアスファルトタンク13、該アスファルトタンク13より供給ポンプ14にて供給される溶融アスファルトを計量するアスファルト計量槽15、石粉を貯蔵する石粉サイロ16、該石粉サイロ16よりスクリューフィーダ17を介して供給される石粉を計量する石粉計量槽18、上記各材料を投入して撹拌混合するミキサ19を備えている。
【0031】
また、前記骨材貯蔵ビン11の側部には、前記ドライヤ2での加熱乾燥処理を経ていない未加熱(ある程度の水分を含んだ状態)の常温砂を貯蔵する常温砂貯蔵ビン20を備えている。図中の21は前記常温砂を一時的に貯蔵する常温砂用の骨材ホッパであって、該骨材ホッパ21より切り出される常温砂を、ベルトコンベヤ22、垂直搬送装置23を介して前記常温砂貯蔵ビン20へと供給可能としている。なお、前記骨材ホッパ21は、必ずしも別途設ける必要はなく、前記骨材ホッパ5のうちの砂貯蔵用のホッパを兼用に用いてもよい。
【0032】
前記骨材貯蔵ビン11には、前記振動篩9にて篩い分けた加熱骨材を粒径別に貯蔵するための複数の区画室11a~11dを備えており、前記振動篩9の上流側(加熱骨材の投入側)下位の区画室11aには砂(加熱砂)を、その下流側に位置する各区画室11b~11dにはそれぞれ7号砕石、6号砕石、5号砕石を順に貯蔵する構成としている。
【0033】
また、前記骨材貯蔵ビン11の各区画室11a~11dには、貯蔵する加熱骨材の貯蔵温度を検出する温度センサ24a~24dをそれぞれ備えている一方、前記常温砂貯蔵ビン20には、貯蔵する未加熱の常温砂の貯蔵温度を検出する温度センサ25に加えて、前記常温砂の含水比を検出する水分センサ26を備えている。
【0034】
また、前記アスファルトタンク13、石粉サイロ16にも同様に、貯蔵する溶融アスファルト、石粉の貯蔵温度を検出する温度センサ27、28をそれぞれ備えている。なお、前記常温砂や石粉は、何れも常温での貯蔵であるため、例えば、当日の外気温等に応じて適宜設定することもでき、その場合には各温度センサ25、28が不要となる。
【0035】
前記操作盤4は、前記各温度センサ24a~24d、25、27、28、及び前記水分センサ26からの各検出値を信号線(図示せず)等を介して逐次取り込み可能としている。また、前記操作盤4には、アスファルト混合物、及びその素材である各種骨材、石粉、溶融アスファルトの比熱と、前記ミキサ19の1バッチ分の混合容量とを予め設定登録している。また、常温砂に含まれる水が蒸発する際の気化熱を演算するための基準値として、公知の、100℃での水の単位重量あたりの気化熱も併せて登録している。
【0036】
そして、上記構成のアスファルトプラント1にてアスファルト混合物を製造するときには、前記各骨材ホッパ5より切り出される各種粒径の骨材を前記ドライヤ2にて約160℃程度に加熱乾燥処理した後、前記プラント本体3上部の前記振動篩9へと供給し、該振動篩9にて篩い分けて下位の骨材貯蔵ビン11内の各区画室11a~11dに粒径別に貯蔵する。また、常温砂貯蔵用の前記骨材ホッパ21より切り出される常温砂を前記プラント本体3の常温砂貯蔵ビン20へと供給し、未加熱(ある程度の水分を含んだ状態)のまま貯蔵する。
【0037】
そして、出荷温度が約160℃の通常混合物を製造する場合には、従来通り、配合にしたがって、前記骨材貯蔵ビン11の各区画室11a~11dから下位の骨材計量槽12へと所定量ずつ払い出して累積計量し、計量した加熱骨材を更に下位のミキサ19内へと投入すると共に、前記アスファルト計量槽15、石粉計量槽18にてそれぞれ計量した所定量の溶融アスファルト及び石粉を前記ミキサ19内へと投入し、該ミキサ19では投入された前記各材料を撹拌混合して所望配合の約160℃の通常混合物を製造・出荷する。
【0038】
一方、出荷温度が通常混合物よりも低い、例えば約130℃程度の中温化混合物を製造する場合には、前記操作盤4では、事前に、製造する中温化混合物の配合と、前記出荷温度と、予め設定登録した比熱及び前記ミキサ19の1バッチ分の混合容量とから、1バッチ分の前記中温化混合物を製造するのに要する総熱量を演算して求めておく。
【0039】
次いで、前記骨材貯蔵ビン11の各区画室11b~11d、アスファルトタンク13、石粉サイロ16に備えた前記各温度センサ24b~24d、27、28にて検出される、砂以外の各種加熱骨材、溶融アスファルト、石粉の各貯蔵温度と、予め設定登録したこれら各材料の比熱と、1バッチ分の前記中温化混合物中の各材料の配合量とから、前記総熱量のうち砂以外の材料が占める固定熱量を演算して求める一方、前記総熱量から前記固定熱量を減じて前記総熱量のうち砂が占める調整熱量を演算して求める。
【0040】
次いで、前記骨材貯蔵ビン11の加熱砂貯蔵用の区画室11a、前記常温砂貯蔵ビン20に備えた各温度センサ24a、25にて検出される、加熱砂及び常温砂の各貯蔵温度と、前記水分センサ26にて検出される常温砂の含水比と、予め設定登録した砂(骨材)の比熱と、1バッチ分の前記中温化混合物中の砂の配合量とから、前記常温砂に含まれる水が蒸発する際の気化熱を加味した上で、前記調整熱量に見合う熱量となるように、前記加熱砂と常温砂との混合割合を演算して求めておく。
【0041】
そして、上記各演算処理を経た後、実際に前記中温化混合物を製造するときには、砂以外の材料はそれぞれ配合通りに計量して前記ミキサ19内に投入する一方、砂は予め求めた前記混合割合に基づき、加熱砂と常温砂とを所定量ずつ計量して前記ミキサ19内に投入し、該ミキサ19では投入された前記各材料を撹拌混合する。
【0042】
このとき、前記ミキサ19内では、前記各材料を混合する間に、前記常温砂に含まれる水分を蒸発させ、かつその際の気化熱を利用してアスファルト混合物の温度を所望の中温化混合物の出荷温度(約130℃程度)に調整し(低下させ)、出荷する。
【0043】
また、好ましくは、前記常温砂貯蔵ビン20内の上部に適宜の散水装置(加水手段)を備え、前記常温砂貯蔵ビン20内に貯蔵する常温砂に対し、前記散水装置にて散水(加水)処理を行うことで所定の含水比に調整する(高める)ようにしてもよい。これにより、仮に常温砂中の含水比が元々低い場合や、砂の配合量が少ない中温化混合物を製造する場合であっても、水の気化熱を効果的に利用し、余裕を持って所望の出荷温度に調整する(低下させる)ことが可能となる。
【0044】
このとき、前記水分センサ26の検出値を参照しながら散水(加水)処理を行うようにすれば、常温砂に対して不必要に加水し過ぎるのを(出荷時のアスファルト混合物中に水分が残るといった不具合を)防止できてより好ましいものとなる。
【0045】
なお、本発明者が実施したテストでは、前記操作盤4には、前記各材料の比熱として、例えば、アスファルト混合物:0.21kcal/kg℃、各種骨材(5~7号砕石、砂)及び石粉:0.20kcal/kg℃、溶融アスファルト:0.45kcal/kg℃をそれぞれ設定した。また、ミキサ19の1バッチ分の混合容量として1,000kgを、100℃での水の気化熱として539kcal/kgをそれぞれ設定した。
【0046】
そして、上記各設定の下、例えば、所望配合(5~7号砕石(トータル):252kg、石粉:45kg、溶融アスファルト:85kg、砂:618kg)の130℃の中温化混合物1,000kgを製造する場合、それに要する総熱量は約27,300kcal(130℃×1,000kg×0.21kcal/kg℃)となり、そのうち砂以外の材料が占める固定熱量は約14,300kcalとなった。したがって、それらの差から、砂が占める調整熱量は約13,000kcalとなった。
【0047】
そして、前記調整熱量に見合う熱量となるように、常温砂に含まれる水分が蒸発する際の気化熱を加味した上で、約160℃・含水比0%の加熱砂と、約10℃(当日の外気温程度)・含水比10%程度の常温砂との混合割合を演算すると、加熱砂:常温砂=0.83:0.17の混合割合が得られた。そして、砂以外の材料は配合通りに、また砂は前記混合割合にしたがって加熱砂515kg(618kg×0.83)と常温砂105kg(618kg×0.17)とを前記ミキサ19内に投入して混合した結果、目標とする出荷温度である約130℃程度の中温化混合物を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、新規骨材を素材としたアスファルト混合物を製造する場合だけに限らず、道路工事等によって掘り起こされるアスファルト舗装廃材を素材の一部として使用するアスファルト混合物を製造する場合等にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…アスファルトプラント 2…ドライヤ
3…プラント本体 4…操作盤
5…骨材ホッパ 11…骨材貯蔵ビン
11a…加熱砂貯蔵用の区画室 12…骨材計量槽
13…アスファルトタンク 15…アスファルト計量槽
16…石粉サイロ 18…石粉計量槽
19…ミキサ 20…常温砂貯蔵ビン
21…骨材ホッパ(常温砂用)
24a~24d、25、27、28…温度センサ
26…水分センサ
図1