(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096402
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】仮想空間管理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20120101AFI20230630BHJP
G06Q 30/0601 20230101ALI20230630BHJP
【FI】
G06Q50/16
G06Q30/06 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212139
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】304037223
【氏名又は名称】株式会社ゲートウェイアーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勝久
(72)【発明者】
【氏名】森下 賢樹
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB26
5L049CC27
(57)【要約】
【課題】既存の不動産を利用し、NFTと不動産の両方の価値を高める。
【解決手段】指定部22は、実在の不動産に近接する空間領域であって、その不動産が存在する空間領域とは物理的に異なる空間領域を指定する。生成部26は、指定された空間領域を仮想的な空間領域として表すデジタルデータを取引可能なトークンとして生成し、NFT市場50へ出展する。たとえば10階建てのビルについて、その11階をNFTとして生成し、取引する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実在の不動産に関連する空間領域であって、人の立ち入りを想定しない空間領域を指定する指定部と、
指定された空間領域を仮想的な空間領域として表すデジタルデータを取引可能なトークンとして生成する生成部と、
を備える仮想空間管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、指定部は前記実在の不動産に近接する空間領域であって、当該不動産が存在する空間領域とは物理的に異なる空間領域を指定する仮想空間管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、生成部はトークンに前記デジタルデータが由来する実在の不動産の権利情報を記録する仮想空間管理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、生成部はトークンに前記デジタルデータが由来する実在の不動産の権利者による許可情報を記録する仮想空間管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想空間、とくに不動産に付随する仮想空間を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブロックチェーン技術を背景とした暗号資産への関心が高まるとともに、ブロックチェーンの用途開発が進んでいる。その用途のひとつにゲームがある。ゲームアイテムやキャラクター等のゲーム内資産をブロックチェーン上に発行すれば、そうした資産をユーザー間で安全に交換、売買することができる。
【0003】
取引は非代替性トークンとも訳されるNFT(Non-Fungible Token)の形でなされる。NFTは、Ethereum(登録商標)の規格であるERC721に基づいて発行されるトークンをいう。ゲーム内資産はそれぞれNFTとしてブロックチェーンに記録され、その唯一性や真正性が保証される。ブロックチェーンに裏打ちされたNFTの登場により、かつては販売の対象になりにくかったゲーム内資産が、大きな財産的価値をもちはじめている。
【0004】
同様の状況はデジタルアート全般におきており、たとえば2021年2月には、24×24ピクセルのドット絵アイコンのキャラクターで知られるアーティスト作品が650ETH(当時のレートで約1億3500万円)で売買された。今後もNFTビジネスは拡大していくであろう。
【0005】
特許文献1には、ユーザーがプレイするゲーム内外でNFTをやりとりする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
NFTはデジタルアートやゲーム内資産の価値を高めた。本発明者はNFTを代表とする取引可能なトークンが別の資産の価値を生むことに想到し、本発明をなすにいたった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の仮想空間管理装置は、実在の不動産に関連する空間領域であって、人の立ち入りを想定しない空間領域を指定する指定部と、指定された空間領域を仮想的な空間領域として表すデジタルデータを取引可能なトークンとして生成する生成部とを備える。
【0009】
指定部は実在の不動産に近接する空間領域であって、当該不動産が存在する空間領域とは物理的に異なる空間領域を指定してもよい。「近接」は「付随」と言い換えてもよく、接する場合のほか、離間していても元となる不動産と空間上、所有権上、デザイン上、その他何らかの概念において関連付けができるものを言う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、実在の不動産の付加価値を高めることができる。または、本発明は実在の不動産に付随するデジタルデータの資産価値を生み出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る仮想空間の管理装置の構成を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る管理装置によりNFTが生成される処理を示すフローチャートである。
【
図3】生成されたNFTが売買され記録される処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず実施の形態を概説する。ゲームの世界では、もともとその中の土地や建物には所有者はいない。そこに目を付け、ゲームの中の仮想的な不動産をNFTとして売り出すビジネスが生まれた。
【0013】
一方、現実の不動産の場合、すでに所有者が存在する。したがって、それをデジタルデータにしてNFT化しても、現実の不動産の所有者との関係に疑問が生じる。技術的には可能ではある。しかし、たとえば自分が買って住んでいる現実の家を誰かがいつの間にかNFTにして所有し、住んでいたとしたら、決して気持ちのよいものではない。しかも、そのNFTが金銭で取引されていたとしたら、さらに不快に感じるであろう。
【0014】
本発明者は「実在する不動産のNFT化」を検討する過程でこの課題を認識し、以下の解決策に思い至った。すなわち、実在する不動産に関連するが、実際には人が立ち入ることができない空間領域であればNFTにできる。たとえば、10階建てのビルの場合、11階以上は存在しない。ならばその空間をNFTとして仮想世界の中だけで利用することができる。ここで「実在する不動産に関連する」例として、
・元の不動産の一部である。
・元の不動産の一部ではないが近接する。
などがあり、元の不動産と何らかの関係を認識できる性質を言う。
【0015】
ドバイにあるブルジュ・ハリファは世界一高いビルで163階を擁する。ならば、164階以上の階を仮想的なフロアに仕立ててNFTとして流通させることができる。しかも、「世界一のビルのさらに上の階」などという途方もない空間を所有できることは、まさにNFTビジネスの真骨頂であろう。
【0016】
もちろんブルジュ・ハリファの権利者と事前の合意があるべきである。たとえば、164階のNFTが売れたときは当該権利者とレベニューシェアをすべきであろう。そうした合意があれば、不動産の権利者も失うものがないどころか、いわば無から収益を得ることができる。本ビジネスを推進する者、NFTを購入する者とともにすべてWin─Winの関係を築くことができる。
【0017】
実施の形態1
図1において、仮想空間を管理する装置20(以下「管理装置20」)は、仮想空間を管理する主体であり、本ビジネスを主導する者(以下「管理主体」)が利用する。管理装置20は、不動産オーナー端末10、ユーザー端末40とともにNFT市場50を介してビジネスを展開する。NFT市場50で売買されたNFTはブロックチェーン60に記録される。これらの端末や装置は図示しないインターネット等のネットワークを介して通信する。
【0018】
不動産オーナー端末10は不動産を所有するオーナーまたはその不動産を預かる業者(以下これらを合わせて「オーナー」と呼ぶ)が利用する。
管理主体はオンライン、オフラインを問わず、事前にオーナーと相談し、NFTを作る対象とすべき不動産を決める。以下、対象となる不動産を仮に地上10階、地下1階を有する「ABCビル」とする。
【0019】
管理装置20は指定部22、調製部24、生成部26、ウォレット28を有する。指定部22はABCビルについて、管理主体の入力をもとに現実世界では誰も利用できない「11階」や「地下2階」をNFT生成の対象として指定する。「指定」は管理主体による入力をそのまま反映してもよいし、ABCビルの建屋情報をもとに「最上階よりも上の階」など簡単なアルゴリズムをもとに決定してもよい。いずれにしても、指定とはNFTを生成する対象の空間領域を決めることを言い、ここで指定された空間領域「ABCビル11階」はそのまま後述するNFTの名称として生成部26で利用される。
【0020】
調製部24は指定されたフロアである11階の内部を調製する。具体的には、調製部24は3DCADまたはそれと連携する機能をもち、管理主体により11階の内装設計がなされる。もちろん、いわゆるスケルトンの状態でNFT化し、それを買ったユーザーが内装設計をしてもよいが、仮想の世界ではスケルトンに戻すコストもかからない。ユーザーに11階をそのまま利用してもらうためにも指定部22によって豪華な内装を作っておく価値はある。内装は居住スペースとしてのものだけでなく、以下の例がある。
1.ふつうはビルの上にあるとは考えにくいサファリパークや恐竜が闊歩するテーマパークなど、意外性のある娯楽施設。
2.映画を連想させるような、お菓子、玩具、モンスターなど夢のある商品を製造する仮想的な工場。
【0021】
生成部26は内装まで作り込まれた11階の空間データをNFTに変換する。その際、以下の情報を付加するものとする。
1.ABCビルの権利情報、とくに現在のオーナー。
2.ABCビルのオーナーからこのNFTの生成が許可されていることを示す情報。
【0022】
これらの情報があれば、オーナーもNFTを購入するユーザーも安心できる。とくにオーナーからの許可は、それ自体タンパーフリーの電子署名としてNFTに入れることでさらに安心感が高まる。もちろん、管理主体とオーナーのレベニューシェアに関する情報を入れることもできる。
ウォレット28はNFTが後に売買されたとき、暗号通貨等による対価の支払いを受ける。ウォレット28はデータ格納機能だけでなく、それがウォレットとして機能するために必要なプログラムを持っている。
【0023】
ユーザー端末40はユーザーがNFTの取引を行うコンピュータで、暗号通貨や場合により購入済みのNFTやその証明書を格納するウォレット42をもつ。ユーザー端末40は多数存在するがここでは1台だけ描いている。
【0024】
NFT市場50は、管理装置20で生成されたNFTが出展され、ユーザー端末40が閲覧および売買する取引市場である。NFTが購入されたとき、管理装置20とユーザー端末40の間で互いのウォレットアドレスを指定した暗号通貨による支払いと、NFTの送信がなされる。この取引は、図示しないマイナーによる検証とブロック化を経て、ひとつのトランザクションとしてブロックチェーン60に記録される。マイナーへの報酬、いわゆる「ガス代」は管理装置20から支払ってもよいし、ユーザー端末40が支払ってもよい。なお、ブロックチェーン60は分散型データベースではあるが、図示の都合でひとつのデータベースとして描いている。
【0025】
図2は以上の構成によりNFT生成されるまでのプロセスを示す。まず管理主体とオーナーとの相談により、NFTを作る対象とすべき不動産を「ABCビル」と決める(S10)。つづいて、指定部22によりNFTを作るべき空間領域が「ABCビル11階」と指定される(S12)。
【0026】
つぎに調製部24により「ABCビル11階」11階の内装が与えられ、その結果が3DCGデータとして出力される(S14)。最後に生成部26により必要な情報を付加してNFTが生成される(S16)。
【0027】
図3はNFTが取引される流れを示す。管理主体の指示を受け、生成部26は生成したNFTをNFT市場50へ出展する(S20)。このあと、あるユーザーがこのNFTを購入したとき、対価の支払い、購入者の記録の更新、NFTのユーザーへの送信を経て、最終的にこの取引がブロックチェーン60へ記録され、ビジネスが完結する(S22)。
【0028】
以上、本実施の形態によれば、現実の不動産に新しい収益源を提供することができる。また、希少価値の高いNFTを生成および流通させることができる。元となる不動産の価値が高いほどNFTの価値も高くなり、NFTの価値が上がれば上がるほど不動産のオーナーの利益も増やすことができる。
【0029】
実施の形態2
ガスタンクも不動産である。内部には気体や液体が充填されており、内部への人の立ち入りは、点検等の特殊な場合を除き、禁止される。少なくとも一般人が入ることはない。現実世界では誰も利用できないからこそ、実施の形態1同様、NFTとして活用しやすい。
【0030】
本実施の形態を実現する構成は実施の形態1と同じでよく、違いは以下のとおりである。
1.指定部22はガスタンクについて「内部」や仮想的な「屋上スペース」などをNFT生成の対象として指定する。
2.調製部24は「ガスタンク内部」を居住スペースだけではなく例えばプラネタリウム会場やバイクが壁面を回転する球体など、元となる不動産の形状を活かした施設としてCG化することができる。
【0031】
3.調製部24は「屋上スペース」をスキー場の山頂とし、そこからガスタンクの敷地内へ滑り降りるスロープを描くことができる。すなわち、ガスタンクだけでなくそれと近接する空間領域も利用することができる。この際、利用する空間領域は不動産、すなわちガスタンクのオーナーの権利が及ぶ範囲であることが望ましい。
【0032】
なお、ガスタンクが2基あり、それらの間の土地もガスタンクのオーナーが所有している場合、指定部22は2基のガスタンクの間の空間領域を指定し、調製部24はそこに仮想的な3基目のガスタンクの3DCG画像を生成し、生成部26はこの画像をNFT化してもよい。この例では、3基目のガスタンクは元の2基のガスタンクとは離間をしているものの、所有権上、ないし、デザイン上、関連が認識できるため、不動産オーナーにレベニューシェアを持たせることにも納得感がる。また、デザイン上も統一感がある。
【0033】
実施の形態3
実施の形態1では、調製部24は指定された空間領域について内装を施すことにした。調製部24はさらに進んで、人がその空間領域へ到達するための空間についても画像を生成してもよい。たとえば、ABCビルの100階をNFTにする場合、1階から100階へ昇る仮想的なエレベータも調製すれば、ユーザーは高層エレベータから下界の景色を楽しみながら100階へ到達することができる。
【0034】
本実施の形態の場合、生成部26はエレベータへの乗降を許可するユーザー情報を書き込むためのデータ領域をNFTの中に設ける。実際にはあるユーザーがこのNFTを購入したとき、管理装置20のウォレット28または生成部26がNFTにそのユーザーの情報を書き込むことで、そのユーザーはNFTの所有者であると同時にその空間領域へアクセスする排他的な権利が付与される。
【符号の説明】
【0035】
10 不動産オーナー端末
20 管理装置
22 指定部
24 調製部
26 生成部