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特開2023-9641(メタ)アクリル系ポリマー及び粘着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009641
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル系ポリマー及び粘着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
C09J133/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113087
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】河田 祐希
(72)【発明者】
【氏名】桑原 章滋
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DF021
4J040JB08
4J040JB09
4J040NA06
(57)【要約】
【課題】 本発明は、耐水性に優れ、使用時において優れた粘着性を有しており、被着体を容器などの基材に強固に貼着させることができる一方、被着体が不要となった時には被着体を基材から容器に剥離、除去することができる(メタ)アクリル系ポリマー及び粘着剤を提供する。
【解決手段】 本発明の(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル基の炭素数が2~12であるアルキル(メタ)アクリレート(A)単位、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)単位及び分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)単位を含有し、且つ、上記アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)単位の含有量と上記分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)単位の含有量との質量比(アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)単位の含有量/分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)の含有量)が3.5~25である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数が2~12であるアルキル(メタ)アクリレート(A)単位、分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)単位及び分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)単位を含有し、且つ、上記分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)単位の含有量と上記分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)単位の含有量との質量比(分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)単位の含有量/分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)の含有量)が3.5~25であることを特徴とする(メタ)アクリル系ポリマー。
【請求項2】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、紫外線架橋性基含有モノマー単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル系ポリマー。
【請求項3】
上記分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)単位の含有量と上記分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)単位の含有量との質量比(分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)単位の含有量/分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)の含有量)が3.5~17であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の(メタ)アクリル系ポリマー。
【請求項4】
上記(メタ)アクリル系ポリマー中における上記分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)の含有量が20~85質量%であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の(メタ)アクリル系ポリマー。
【請求項5】
上記分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)は、2-メトキシエチルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート及びメトキシポリエチレングリコールアクリレートからなる群から選ばれた少なくとも一種のアクリレートを含有することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の(メタ)アクリル系ポリマー。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の(メタ)アクリル系ポリマーを含有することを特徴とする粘着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル系ポリマー及び粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、清涼飲料水、液体調味料、化粧品などを収容するために、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂からなる容器が多く使用されている。そして、容器包装リサイクル法の施行により、容器はその使用後にリサイクルするために回収されている。回収された容器は、粉砕してフレークとし、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ水溶液を用いて洗浄した後に、乾燥させ、必要に応じてペレット状に加工して、リサイクル原料とされる。
【0003】
容器の外周には、ラベルなどの被着体が粘着剤を介して装着されている。被着体を容器の外周に装着させている粘着剤は、容器の使用中においては、被着体が容器の外周から剥離しない粘着性が要求される一方、容器のリサイクル処理時においては、容器の外周に装着された被着体を容易に剥離、除去することができることが要求され、相反する性能が要求される。
【0004】
特許文献1には、両面をそれぞれの剥離力が異なるように剥離処理してなる支持体の剥離力が大きい方の面に粘着剤層を有し、かつ被着体の紙表面に帯状粘着剤層を転写し得る粘着テープであって、上記粘着剤層がアルカリ可溶性、水可溶性又は水再分散性のアクリル系粘着剤からなり、かつ3~50g/m2の付着量を有すると共に、100℃における貯蔵弾性率が104Pa以上であり、かつ100℃における損失正接(tanδ)が0.40以下である紙類接着用粘着テープが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-113356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記紙類接着用粘着テープは、水可溶性又は水再分散性のアクリル系粘着剤からなるため、飲料水などの容器の外周に被着体を装着するために用いると、容器の外周に生じた結露によって粘着力が低下し、容器の外周に装着したラベルなどの被着体が剥離するという問題点を有している。
【0007】
本発明は、耐水性に優れ、使用時において優れた粘着性を有しており、被着体を容器などの基材に強固に貼着させることができる一方、被着体が不要となった時には被着体を基材から容器に剥離、除去することができる(メタ)アクリル系ポリマー及び粘着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル基の炭素数が2~12であるアルキル(メタ)アクリレート(A)単位、分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)単位及び分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)単位を含有し、且つ、上記分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)単位の含有量と上記分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)単位の含有量との質量比(分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)単位の含有量/分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)の含有量)が3.5~25であることを特徴とする。
【0009】
[アルキル(メタ)アクリレート(A)単位]
(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル基の炭素数が2~12であるアルキル(メタ)アクリレート(A)(以下、単に「アルキル(メタ)アクリレート(A)」ということがある)をモノマー単位として含有している。なお、本発明において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0010】
(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル基の炭素数が2~12であるアルキル(メタ)アクリレート(A)単位を含有している。(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートを含有していることによって、(メタ)アクリレートポリマーは、粘着剤として用いられた場合に優れた粘着性を有する。アルキル(メタ)アクリレート(A)は、カルボキシ基を有していないことが好ましい。アルキル(メタ)アクリレート(A)は、アルコキシ基を有していないことが好ましい。
【0011】
アルキル基とは、脂肪族飽和炭化水素から水素原子1個を除いた残りの原子団をいう。アルキル(メタ)アクリレート(A)のアルキル基の水素は、他の原子又は原子団によって置換されておらず、直鎖状又は分岐状の何れであってもよいが、(メタ)アクリレートポリマーは、粘着剤として用いられた場合に優れた粘着性を有するので、直鎖状であることが好ましい。
【0012】
アルキル(メタ)アクリレート(A)のアルキル基の炭素数は、2以上であり、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。アルキル(メタ)アクリレート(A)のアルキル基の炭素数は、12以下であり、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がより好ましい。アルキル(メタ)アクリレート(A)のアルキル基の炭素数が2以上であると、(メタ)アクリレートポリマーは、粘着剤として用いられた場合に優れた粘着性を有する。アルキル(メタ)アクリレート(A)のアルキル基の炭素数が12以下であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤は優れた粘着性を有する一方、粘着剤にアルカリ性水溶液を接触させることによって、粘着剤の粘着性を容易に低下させることができる。
【0013】
アルキル(メタ)アクリレート(A)としては、アルキル基の炭素数が2~12であれば、特に限定されず、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)メタクリレートなどが挙げられ、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合に優れた粘着性を有するので、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n-オクチルアクリレートが好ましく、ブチルアクリレートがより好ましい。なお、アルキル(メタ)アクリレート(A)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0014】
(メタ)アクリル系ポリマー中におけるアルキル(メタ)アクリレート(A)の含有量は、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がより好ましく、45質量%以上がより好ましく、47質量%以上がより好ましい。(メタ)アクリル系ポリマー中におけるアルキル(メタ)アクリレート(A)の含有量は、80質量%以下が好ましく、76質量%以下がより好ましい。アルキル(メタ)アクリレート(A)の含有量が30質量%以上であると、(メタ)アクリレートポリマーは、粘着剤として用いられた場合に優れた粘着性を有する。アルキル(メタ)アクリレート(A)の含有量が80質量%以下であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤は優れた粘着性を有すると共に、アルカリ性水溶液の接触によって粘着剤の粘着性を容易に低下させることができる。
【0015】
[分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)]
(メタ)アクリル系ポリマーは、分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)(以下、単に「アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)」ということがある)単位を含有している。分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)は、カルボキシ基を含有していないことが好ましい。
【0016】
(メタ)アクリル系ポリマーは、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)単位を含有していることによって、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤は優れた粘着性を有する一方、粘着剤にアルカリ性水溶液を接触させた時に、粘着剤がアルカリ性水溶液を吸収しやすくして、アルカリ性水溶液の接触によって粘着剤の粘着性を容易に低下させることができる。
【0017】
(メタ)アクリル系ポリマーは、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)単位を含有しているので、アルカリ性水溶液を吸収しやすくて、粘着剤を膨潤させて粘着剤の粘着性を容易に低下させることができる。
【0018】
分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)は、分子中にアルコキシ基を有しておればよく、粘着剤中へのアルカリ性水溶液の吸収をより容易にして、アルカリ性水溶液の接触によって粘着剤の粘着性をより容易に低下させることができるので、分子末端にアルコキシ基を有していることが好ましく、アルキル基の水素が、アルコキシ基、又は、分子内にアルコキシ基を有する原子団で置換されていることがより好ましく、アルキル基の水素が、アルコキシ基、又は、末端にアルコキシ基を有する原子団で置換されていることがより好ましく、アルキル基の水素がアルコキシ基で置換されていることがより好ましい。アルコキシ基は、アルキル基が酸素と結合した形の1価の原子団(C2n+1O-)(nは自然数である)をいう。
【0019】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)としては、例えば、(1)アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の水素がアルコキシ基に置換された、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、(2)アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の水素が、末端がアルキル基で閉塞されたポリオキシアルキレン基で置換された、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートなどが好ましく用いられる。なお、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0020】
上記(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートにおいて、アルコキシ基としては、特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基などが挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0021】
上記(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートにおけるアルコキシ基のアルキル基の炭素数は、4以下が好ましく、2以下がより好ましい。アルコキシ基のアルキル基の炭素数が4以下であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤の親水性が向上し、粘着剤にアルカリ性水溶液を接触させることによって、粘着剤の粘着性を容易に低下させることができる。
【0022】
上記(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、粘着剤中へのアルカリ性水溶液の吸収をより容易にして、アルカリ性水溶液の接触によって粘着剤の粘着性をより容易に低下させることができるので、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、2-メトキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましく、2-メトキシエチルアクリレートがより好ましい。
【0023】
上記(2)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートにおいて、末端がアルキル基で閉塞されたポリオキシアルキレン基は、下記構造式を有していることが好ましい。
[-(O-R1m-O-R2] (1)
(式(1)中、R1は炭素数が1~14のアルキレン基を、R2は炭素数が1~4のアルキル基を表し、mは、繰り返し単位の数であって自然数である。)
【0024】
アルキレン基とは、脂肪族飽和炭化水素中の異なる2個の炭素原子に結合する2個の水素原子を除いて生じる2価の原子団であり、直鎖状及び分岐状の双方の原子団を含む。
【0025】
アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基[-CH(CH3)-CH2-]、トリメチレン基[-CH2-CH2-CH2-]、ブチレン基、アミレン基[-(CH25-]、ヘキシレン基などが挙げられる。
【0026】
末端がアルキル基で閉塞されたポリオキシアルキレン基は、一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0027】
-(O-R1m-の構造としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、及びポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレン共重合体などが挙げられ、ポリオキシエチレンが好ましい。
【0028】
2としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基、ラウリル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基がより好ましい。
【0029】
2の炭素数は、4以下が好ましく、2以下がより好ましい。R2の炭素数が4以下であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤の親水性が向上し、粘着剤にアルカリ性水溶液を接触させることによって、粘着剤の粘着性を容易に低下させることができる。
【0030】
式(1)中、繰り返し単位mは、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。繰り返し単位mは、9以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がより好ましい。繰り返し単位mが1以上であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤の親水性が向上し、粘着剤にアルカリ性水溶液を接触させることによって、粘着剤の粘着性を容易に低下させることができる。繰り返し単位mが9以下であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤は優れた粘着性を有する。
【0031】
上記(2)のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート(エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート)、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレートがより好ましい。
【0032】
(メタ)アクリル系ポリマー中におけるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)の含有量は、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がより好ましい。(メタ)アクリル系ポリマー中におけるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)の含有量は、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がより好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がより好ましい。アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)の含有量が20質量%以上であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤は優れた粘着性を有する一方、粘着剤にアルカリ性水溶液を接触させることによって、粘着剤の粘着性を容易に低下させることができる。(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤の粘着性が向上する。アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)の含有量が80質量%以下であると、(メタ)アクリレートポリマーは、粘着剤として用いられた場合に優れた粘着性を有する。
【0033】
[分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)単位]
(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシ基(-COOH)を含有するモノマー(C)(以下、単に「モノマー(C)」ということがある)単位を含有する。カルボキシ基(-COOH)を含有するモノマー(C)は、エステル結合を含有していないことが好ましい。
【0034】
(メタ)アクリル系ポリマーが、分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)単位を含有しているので、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤は優れた粘着性を有する一方、粘着剤にアルカリ性水溶液を接触させることによって、粘着剤の粘着性を容易に低下させることができる。
【0035】
(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位としてアルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)及び分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)を含有している。(メタ)アクリル系ポリマーは、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)単位に起因してアルカリ性水溶液を吸収し易く構成されており、この吸収されたアルカリ性水溶液中に含まれるアルカリによって、モノマー(C)に含まれているカルボキシ基を塩とし、(メタ)アクリル系ポリマーを粘着剤として用いた場合に粘着剤の粘着性を低下させることができる。
【0036】
即ち、(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着剤として用いられた場合、常態においては優れた粘着性を発現する一方、アルカリ性水溶液に接触させると、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)単位によってアルカリ性水溶液を吸収し易く、この吸収されたアルカリ性水溶液に含まれるアルカリによってカルボキシ基を有するモノマー(C)単位のカルボキシ基を塩として粘着剤の粘着性を容易に低下させることができる。
【0037】
分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)としては、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、β-カルボキシエチルメタクリレートなどのアクリル系モノマー、マレイン酸、フマル酸などが挙げられ、アクリル系モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル系ポリマー中における分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)の含有量は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がより好ましい。(メタ)アクリル系ポリマー中における分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)の含有量は、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がより好ましく、13質量%以下がより好ましく、11質量%以下がより好ましく、9質量%以下がより好ましく、7質量%以下がより好ましい。分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)の含有量が0.5質量%以上であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤は優れた粘着性を有する一方、粘着剤にアルカリ性水溶液を接触させることによって、粘着剤の粘着性を容易に低下させることができる。分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)の含有量が20質量%以下であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、(メタ)アクリル系ポリマーは適度なガラス転移温度を有し、粘着剤は優れた粘着性を有する。
【0039】
(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)単位の含有量と分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)単位の含有量との質量比(分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)単位の含有量/分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)の含有量)(以下、「(B)/(C)含有比率」ということがある)は、3.5以上であり、4.0以上が好ましく、4.5以上がより好ましく、6.0以上がより好ましく、7.0以上がより好ましい。(B)/(C)含有比率が3.5以上であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤は優れた粘着性を有する一方、粘着剤にアルカリ性水溶液を接触させることによって、粘着剤の粘着性を容易に低下させることができる。
【0040】
(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)単位の含有量と分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)単位の含有量との質量比(分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)単位の含有量/分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)の含有量)は、25以下であり、23以下が好ましく、20以下がより好ましく、17以下がより好ましく、15以下がより好ましく、12以下がより好ましく、10以下がより好ましい。(B)/(C)含有比率が25以下であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤は優れた粘着性を有する一方、粘着剤にアルカリ性水溶液を接触させることによって、粘着剤の粘着性を容易に低下させることができる。
【0041】
[紫外線架橋性基含有モノマー(D)単位]
(メタ)アクリル系ポリマーは、紫外線架橋性基含有モノマー(D)単位を含有していることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーは、紫外線架橋性基含有モノマー(D)単位を含有していると、紫外線照射によって(メタ)アクリル系ポリマーに架橋構造を導入し、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤に優れた粘着性を付与することができる。
【0042】
紫外線架橋性基含有モノマー(D)とは、紫外線の照射によって化学結合を形成して架橋可能な紫外線架橋性基を有するモノマーをいう。
【0043】
紫外線架橋性基としては、特に限定されず、例えば、チオール基、グリシジル基、オキセタニル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、ベンゾフェノン基、ベンゾイン基、チオキサントン基などが挙げられ、ベンゾフェノン基、ベンゾイン基及びチオキサントン基が好ましく、ベンゾフェノン基がより好ましい。なお、(メタ)アクリロイルは、メタクリロイル又はアクリロイルを意味する。
【0044】
紫外線架橋性基含有モノマー(D)としては、特に限定されず、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ-4’-ブロモベンゾフェノンなどが挙げられ、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノンが好ましい。紫外線架橋性基含有モノマー(D)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、(メタ)アクリロイルオキシは、メタクリロイルオキシ又はアクリロイルオキシを意味する。
【0045】
(メタ)アクリル系ポリマー中における紫外線架橋性基含有モノマー(D)単位の含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。紫外線架橋性基含有モノマー(D)単位の含有量が0.01質量%以上であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤に優れた粘着性を付与することができる。
【0046】
(メタ)アクリル系ポリマー中における紫外線架橋性基含有モノマー(D)単位の含有量は、1質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましく、0.6質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下がより好ましい。紫外線架橋性基含有モノマー(D)単位の含有量が1質量%以下であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤が紫外線照射による架橋後において優れた粘着性を発現する。
【0047】
上記では、(メタ)アクリル系ポリマーが紫外線架橋性基含有モノマー(D)を含有することによって、(メタ)アクリル系ポリマーに架橋構造を導入することを説明したが、(メタ)アクリル系ポリマーに架橋構造を導入する方法としては、紫外線架橋性基含有モノマーを含有する代わりに、(メタ)アクリル系ポリマーに水酸基を有するモノマー単位を含有させ、イソシアネート基を有するイソシアネート化合物を含む硬化剤によって架橋構造を導入してもよい。又、(メタ)アクリル系ポリマーをエポキシ基を有する硬化剤によって架橋構造を導入してもよい。(メタ)アクリル系ポリマーに水酸基又はカルボキシ基を有するモノマー単位を導入させ、金属キレート系架橋剤によって架橋構造を導入してもよい。(メタ)アクリル系ポリマーに過酸化物を添加して必要に応じて架橋助剤(例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレートなど)の存在下にて加熱することによって架橋構造を導入してもよい。
【0048】
[添加剤]
(メタ)アクリル系ポリマーは、その物性を損なわない範囲内において、粘着付与剤、紫外線重合開始剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤及び帯電防止剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0049】
[(メタ)アクリル系ポリマー]
(メタ)アクリル系ポリマーは、汎用のラジカル重合方法を用いて製造される。(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、アルキル(メタ)アクリレート(A)、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)及び分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)に、必要に応じて、紫外線架橋性基含有モノマー(D)などが含まれたモノマー組成物を必要に応じて分子量調整剤の存在下にてラジカル重合開始剤を用いて溶媒中にてラジカル重合させることによって製造することができる。
【0050】
分子量調整剤としては、特に限定されず、例えば、n-ドデシルメルカプタン、ステアリル-3-メルカプトプロピオナートなどの単官能チオール化合物、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)トリス(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオナート)などの多官能チオール化合物などが挙げられる。
【0051】
ラジカル重合開始剤は、ラジカル重合に用いられる公知の重合開始剤が用いられればよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシ-α,α′-ジメチル-アセトフェノン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンなどの光ラジカル重合開始剤、t-ヘキシルパーオキシピバレート、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、アゾビスイソブチロニトリルなどの熱開裂型ラジカル重合開始剤などが挙げられる。なお、ラジカル重合開始剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0052】
ラジカル重合において用いられる溶媒としては、従来からラジカル重合に用いられている溶媒であれば、特に限定されず、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒などが挙げられ、酢酸エチルが好ましい。
【0053】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量Mwは、50000以上が好ましく、80000以上がより好ましく、100000以上がより好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量Mwは、2000000以下が好ましく、1500000以下がより好ましく、1000000以下がより好ましく、500000以下がより好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量Mwが50000以上であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤は優れた凝集力を有し、優れた粘着性を有する。
【0054】
(メタ)アクリル系ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、10.0以下が好ましく、6.0以下がより好ましく、5.0以下がより好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)が10.0以下であると、(メタ)アクリル系ポリマーが粘着剤として用いられた場合、粘着剤は、低分子量成分の含有量が低く抑えられており、糊残りの低減化を図ることができる。
【0055】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、(メタ)アクリル系ポリマー0.01gを採取し、採取した(メタ)アクリル系ポリマーを試験管に供給した上で、試験管にTHF(テトラヒドロフラン)を加えて(メタ)アクリル系ポリマーを500倍に希釈し、フィルタリングを行って、測定試料を作製する。
【0056】
この測定試料を用いてGPC法によって、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを測定することができる。
【0057】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 Waters社製 ACQUITY APCシステム
測定条件 カラム:Waters社製 HSPgel(TM)HR MB-M
移動相:テトラヒドロフラン使用 0.5mL/分
検出器:RI検出器
標準物質:ポリスチレン
SEC温度:40℃
【0058】
(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着剤として好適に用いられ、特に、容器の外周にラベルなどの被着体を装着させる粘着剤として好適に用いられる。
【0059】
(メタ)アクリル系ポリマーを粘着剤として用いて容器の外周にラベルを装着させる要領について説明する。容器の外周に装着するラベルは、容器の外周長よりも若干長い長さを有する帯状に形成されている。ラベルの長さ方向の端部の何れか一方に粘着剤を塗工した後、ラベルを容器の外周面に巻回させ、ラベルの長さ方向の両端部同士を粘着剤を介して重ね合わせた後、必要に応じて粘着剤に架橋処理を施すことによって、ラベルの両端部同士を貼着一体化させることにより、容器の外周面にラベルを巻回状態に装着させることができる。又は、ラベルの一面に、好ましくは一面全面に粘着剤を塗工し、必要に応じて粘着剤に架橋処理を施し、ラベルの一面に粘着剤層を形成し、ラベルをその一面に形成した粘着剤層によって容器の外周面に貼着一体化させてもよい。
【0060】
なお、粘着剤の架橋処理としては、例えば、(1)粘着剤に電離性放射線(例えば、α線、ベータ線、電子線、紫外線など)を照射して架橋させる方法、(2)粘着剤に硬化剤を添加して架橋させる方法、(3)粘着剤を加熱して架橋させる方法などが挙げられる。
【0061】
(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤は、常態において、優れた粘着性を有しており、長期間に亘って安定的に所望部材同士を粘着一体化させることができる。
【0062】
一方、容器の外周に装着したラベルなどの一部の被着体は、使用後又は所定期間経過後に、貼着箇所から剥離、除去される。(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤は、アルカリ性水溶液に接触させることによって粘着性を容易に低下させて、被着体を貼着箇所から容易に剥離、除去することができる。
【0063】
なお、アルカリ性水溶液としては、特に限定されず、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液などが挙げられる。
【0064】
粘着剤に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート(A)、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)及び分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)をモノマー単位として含有しているので、常態において優れた粘着性を有しており、被着体を所望箇所又は所望部材に貼着一体させることができる。
【0065】
一方、(メタ)アクリル系ポリマーは、分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)を含有しているので、アルカリ性水溶液を円滑に吸収して粘着剤を膨潤させて粘着剤の粘着性を低下させていると共に、粘着剤に吸収されたアルカリ性水溶液のアルカリ成分がモノマー(C)のカルボキシ基と反応して塩を形成することによって粘着剤の粘着性を低下させている。
【0066】
即ち、(メタ)アクリル系ポリマーは、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(B)及び分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)を含有しており、(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤にアルカリ性水溶液を接触させることによって、粘着剤の粘着性を相乗的に低下させて、被着体を容易に剥離、除去することができる。
【発明の効果】
【0067】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着剤として好適に用いることができ、常態において優れた粘着性を有すると共に、アルカリ性水溶液に接触することによって粘着性を容易に低下させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0069】
実施例及び比較例において、下記の化合物を用いた。
【0070】
[アルキル基の炭素数が2~12であるアルキル(メタ)アクリレート(A)]
・ブチルアクリレート
・2-エチルヘキシルアクリレート
【0071】
[分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)]
・2-メトキシエチルアクリレート
・2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート
・メトキシポリエチレングリコールアクリレート
【0072】
[分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)]
・アクリル酸
・メタクリル酸
【0073】
[その他のモノマー(E)]
・メチルメタクリレート
【0074】
[紫外線架橋性基含有モノマー(D)]
・4-アクリロイルオキシベンゾフェノン
【0075】
[分子量調整剤]
・n-ドデシルメルカプタン
【0076】
(実施例1~9、比較例1~6)
攪拌機、冷却管、温度計及び窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、アルキル基の炭素数が2~12であるアルキル(メタ)アクリレート(A)、分子中にアルコキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレート(B)、分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)及び紫外線架橋性基含有モノマー(D)を含むモノマー組成物、分子量調整剤並びに酢酸エチルを表1に示した所定量ずつ含む反応液を供給して回転速度100rpmで攪拌した。
【0077】
セパラブルフラスコ内を窒素ガスで置換した後、ウォーターバスを用いて反応液を96℃に加熱した。次に、セパラブルフラスコ内に、熱開裂型光重合開始剤としてt-ヘキシルパーオキシピバレート(日油社製 商品名「パーヘキシルPV」)を表2の「ラジカル重合開始時」の欄に記載された量(質量部)を添加してラジカル重合を開始した。
【0078】
ラジカル重合開始から表2に示した所定の経過時間ごとに所定量(質量部)のt-ヘキシルパーオキシピバレート(日油社製 商品名「パーヘキシルPV」)を反応液に添加してラジカル重合を6時間に亘って行い、ラジカル重合反応を終了した。反応液を常圧で130℃にて2時間放置した後、減圧で130℃にて2時間脱溶剤することで、(メタ)アクリル系ポリマーを得た。全てのモノマーはラジカル重合に用いられていた。
【0079】
得られた(メタ)アクリル系ポリマーについて、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及び分子量分布(Mw/Mn)を上記要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0080】
得られた(メタ)アクリル系ポリマーについて、対PET剥離強度及びアルカリ温水剥離性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0081】
[対PET剥離強度]
(メタ)アクリル系ポリマーを、幅100mm、長さ250mm、厚み60μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下「OPPフィルム」という)上に厚みが16μmとなるように塗工した。
【0082】
次に、紫外線照射装置[へレウス(旧フュージョンUVシステムズ)社製 商品名「Light Hammer6」(Hバルブ使用)]を用いて、照射強度が約48mW/cm2、積算光量が約100mJ/cm2(EIT INSTRUMENT MARKETS社製 商品名「UV Power PuckII」使用)となるように(メタ)アクリル系ポリマーに紫外線(UV―C)を照射して(メタ)アクリル系ポリマーを架橋させた。
【0083】
OPPフィルム上に、厚みが16μmの粘着剤層が積層一体化されてなる試験フィルムを作製した。この試験フィルムを幅15mmに切断して帯状の試験片を作製した。
【0084】
一方、アモルファスポリエチレンテレフタラート板(以下「PET板」という)を用意し、PET板の表面をヘキサンとアセトン(3対1)の混合溶剤を用いて払拭して脱脂した。PET板の表面に試験片を粘着剤層によって貼付した後、試験片上に2kgハンドローラーを往復させて積層体を作製した。積層体を23℃の雰囲気中に3日間放置して養生した。
【0085】
次に、剥離強度測定装置(島津製作所社製 商品名「オートグラフAGS―100NX」を用いて180°の角度で300mm/minの速度で試験片をPET板から剥離して剥離強度(N/25mm)を測定し、下記基準に基づいて評価した。
【0086】
◎・・・8.0N/25mm以上であった。
○・・・6.0N/25mm以上であり且つ8.0N/25mm未満であった。
×・・・6.0N/25mm未満であった。
【0087】
[アルカリ温水剥離性]
対PET剥離強度の測定時と同様の要領で試験片を作製した。厚みが300μmのポリエチレンテレフタレート板を用意した。ポリエチレンテレフタレート板の表面に、試験片を粘着剤層によって貼付して試験体を作製し、試験体を23℃の雰囲気中に3日間放置して養生した。試験体から一辺が10mmの平面正方形状のサンプル片10個を切り出した。
【0088】
水酸化ナトリウム4.0質量部と4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール(富士フィルム和光純薬社製 商品名「Triton X-100」)1.2質量部を水400質量部に溶解してアルカリ性水溶液を作製した。
【0089】
アルカリ性水溶液を金属製缶に供給し、撹拌機を用いてアルカリ性水溶液を回転速度200rpmで攪拌した。次に、ウォーターバスを用いてアルカリ性水溶液を85℃に昇温した後、サンプル片10片をアルカリ性水溶液中に投入し、回転速度350rpmで15分間攪拌した。15分間の攪拌終了後、サンプル片をアルカリ性水溶液中から取り出し、水200質量部に投入して、サンプル片に付着したアルカリ性水溶液を除去した。
【0090】
各サンプル片について、ポリエチレンテレフタレート板から剥離している試験片の面積[剥離面積(mm2)]を算出した。各サンプル片の試験片の剥離面積の和を算出し、下記基準に基づいて評価した。比較例3は、分子中にカルボキシ基を有するモノマー(C)を含有していないため、粘着性が低く、そのため、アルカリ温水剥離性の測定においても容易に剥離した。
【0091】
◎・・・1000mm2であった。
○・・・700mm2以上で且つ1000mm2未満であった。
×・・・700mm2未満であった。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】