(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096454
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】測位対象の装置、基準装置、測位システム、管理装置、測位方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/14 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
G01S5/14
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212243
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】318014809
【氏名又は名称】ALES株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】大澤 定夫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
(72)【発明者】
【氏名】大浜 勇作
(72)【発明者】
【氏名】高橋 友樹
(72)【発明者】
【氏名】楊 一凡
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA08
5J062BB05
5J062CC11
(57)【要約】
【課題】屋内などのエリアにおいて移動する測位対象の装置の現在位置をリアルタイムに当該測位対象の装置側で計算して使用できる測位システムを提供する。
【解決手段】測位対象の装置は、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行い、前記複数の基準装置との間の無線媒体による測位信号の送受信の結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、自装置(測位対象の装置)の現在位置を計算する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位対象の装置と、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置と、を備える測位システムであって、
前記測位対象の装置は、
前記複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行う通信部と、
前記複数の基準装置との間の前記無線媒体による前記測位信号の送受信の結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算する測位計算部と、を有する、ことを特徴とする測位システム。
【請求項2】
請求項1の測位システムにおいて、
前記複数の基準装置は、互いの時刻同期又は時刻差が管理され、
前記複数の基準装置はそれぞれ、前記測位対象の装置から送信された測位信号を受信し、前記測位信号の受信結果を前記測位対象の装置に送信し、
前記測位対象の装置は、前記複数の基準装置のそれぞれに測位信号を送信し、前記複数の基準装置のそれぞれから受信した前記測位信号の受信結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、自装置の現在位置を計算する、ことを特徴とする測位システム。
【請求項3】
請求項2の測位システムにおいて、
前記測位対象の装置は、前記複数の基準装置の間の時刻差の情報を取得し、前記時刻差の情報と前記測位信号の受信結果と前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、自装置の現在位置を計算する、ことを特徴とする測位システム。
【請求項4】
請求項1~3の測位システムにおいて、
前記複数の基準装置は、互いの時刻同期又は時刻差が管理され、
前記測位対象の装置は、前記複数の基準装置のそれぞれに測位信号を送信し、
前記複数の基準装置はそれぞれ、前記測位対象の装置から送信された測位信号を受信し、
前記複数の基準装置のいずれか一つの基準装置は、前記測位対象の装置から送信された測位信号を受信した受信結果を他の基準装置から受信し、自装置による前記測位信号の受信結果と、前記他の基準装置による前記測位信号の受信結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算する、ことを特徴とする測位システム。
【請求項5】
請求項4の測位システムにおいて、
前記いずれか一つの基準装置は、前記他の基準装置との間の時刻差の情報を取得し、前記時刻差の情報と前記測位信号の受信結果と前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算する、ことを特徴とする測位システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの測位システムにおいて、
前記無線媒体は、UWB(超広帯域)無線の電波である、ことを特徴とする測位システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの測位システムにおいて、
前記測位対象の装置は無線ICタグである、ことを特徴とする測位システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかの測位システムにおいて、
前記測位対象の装置は、位置座標が変化する移動体である、ことを特徴とする測位システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの測位システムにおいて、
通信ネットワークを介して前記複数の基準装置と通信可能な管理装置を備え、
前記管理装置は、
前記複数の基準装置の設置位置の座標の情報と前記複数の基準装置の間の時刻差の情報とを取得する情報取得部と、
前記複数の基準装置の設置位置の座標の情報と前記複数の基準装置の間の時刻差の情報とを記憶する記憶部と、
前記複数の基準装置の設置位置の座標の情報と前記複数の基準装置の間の時刻差の情報とを前記測位対象の装置に送信する送信部と、を備えることを特徴とする測位システム。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかの測位システムにおいて、
通信ネットワークを介して前記複数の基準装置と通信可能な管理装置を備え、
前記管理装置は、
前記測位対象の装置から送信された測位信号の受信結果を前記複数の基準装置から受信する受信部と、
前記複数の基準装置のそれぞれから受信した前記測位信号の受信結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算する測位計算部と、を備えることを特徴とする測位システム。
【請求項11】
請求項10の測位システムにおいて、
前記管理装置は、
前記複数の基準装置の設置位置の座標の情報と前記複数の基準装置の間の時刻差の情報とを取得する情報取得部と、
前記複数の基準装置の設置位置の座標の情報と前記複数の基準装置の間の時刻差の情報とを記憶する記憶部と、を備え、
前記管理装置の前記測位計算部は、前記複数の基準装置の間の時刻差の情報と、前記複数の基準装置による測位信号の受信結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算する、ことを特徴とする測位システム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかの測位システムを構成する前記測位対象の装置。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれかの測位システムを構成する前記基準装置。
【請求項14】
請求項9乃至11のいずれかの測位システムを構成する前記管理装置。
【請求項15】
測位対象の装置の位置座標を測位する方法であって、
前記測位対象の装置が、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行うことと、
前記測位対象の装置が、前記複数の基準装置との間の前記無線媒体による前記測位信号の送受信の結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項12の測位対象の装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行うためのプログラムコードと、
前記複数の基準装置との間の前記無線媒体による前記測位信号の送受信の結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位対象の装置、基準装置、測位システム、管理装置、測位方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、GNSS人工衛星からの電波が届きにくい屋内などのエリア内において、測位される測位対象の装置(以下「対象装置」ともいう。)と既知の位置座標に設置された複数の基準装置との間の見通し内環境(LOS環境)で電波、音波、光などの無線媒体を送受信し、その送受信の結果を入力として前記対象装置の位置座標を出力する測位システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記見通し内環境(LOS環境)での電波などの無線媒体の送受信を利用した従来のシステムにおいて、屋内などのエリアにおいて移動する測位対象の装置の現在位置をリアルタイムに当該測位対象の装置側で計算して使用したい、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る測位システムは、測位対象の装置と、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置と、を備える測位システムである。この測位システムに備える測位対象の装置は、前記複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行う通信部と、前記複数の基準装置との間の前記無線媒体による前記測位信号の送受信の結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算する測位計算部と、を有する。
【0006】
本発明の他の態様に係る測位対象の装置は、前記複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行う通信部と、前記複数の基準装置との間の前記無線媒体による前記測位信号の送受信の結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算する測位計算部と、を有する。
【0007】
本発明の更に他の態様に係る装置は、前記測位システムに備える複数の基準装置のいずれか一つの基準装置である。
【0008】
本発明の更に他の態様に係る装置は、前記測位システムに備える、通信ネットワークを介して前記測位対象の装置及び前記複数の基準装置と通信可能な管理装置である。この管理装置は、前記複数の基準装置の設置位置の座標の情報と前記複数の基準装置の間の時刻差の情報とを取得する情報取得部と、前記複数の基準装置の設置位置の座標の情報と前記複数の基準装置の間の時刻差の情報とを記憶する記憶部と、前記複数の基準装置の設置位置の座標の情報と前記複数の基準装置の間の時刻差の情報とを前記測位対象の装置に送信する送信部と、を備えてもよい。
【0009】
前記管理装置は、前記測位対象の装置から送信された測位信号の受信結果を前記複数の基準装置から受信する受信部と、前記複数の基準装置のそれぞれから受信した前記測位信号の受信結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算する測位計算部と、を備えてもよい。
ここで、前記管理装置は、前記複数の基準装置の設置位置の座標の情報と前記複数の基準装置の間の時刻差の情報とを取得する情報取得部と、前記複数の基準装置の設置位置の座標の情報と前記複数の基準装置の間の時刻差の情報とを記憶する記憶部と、を備え、前記測位計算部は、前記複数の基準装置の間の時刻差の情報と、前記複数の基準装置による測位信号の受信結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算してもよい。
【0010】
本発明の更に他の態様に係る方法は、測位対象の装置の位置座標を測位する方法である。この方法は、前記測位対象の装置が、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行うことと、前記測位対象の装置が、前記複数の基準装置との間の前記無線媒体による前記測位信号の送受信の結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算することと、を含む。
【0011】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、前記測位対象の装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行うためのプログラムコードと、前記複数の基準装置との間の前記無線媒体による前記測位信号の送受信の結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算するためのプログラムコードを含む。
【0012】
前記測位対象の装置、前記測位システム、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記複数の基準装置は、互いの時刻同期又は時刻差が管理され、前記複数の基準装置はそれぞれ、前記測位対象の装置から送信された測位信号を受信し、前記測位信号の受信結果を前記測位対象の装置に送信し、前記測位対象の装置は、前記複数の基準装置のそれぞれに測位信号を送信し、前記複数の基準装置のそれぞれから受信した前記測位信号の受信結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、自装置の現在位置を計算してもよい。
【0013】
前記測位対象の装置、前記測位システム、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記測位対象の装置は、前記複数の基準装置の間の時刻差の情報を取得し、前記時刻差の情報と前記測位信号の受信結果と前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、自装置の現在位置を計算してもよい。
【0014】
前記測位対象の装置、前記測位システム、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記複数の基準装置は、互いの時刻同期又は時刻差が管理され、前記測位対象の装置は、前記複数の基準装置のそれぞれに測位信号を送信し、前記複数の基準装置はそれぞれ、前記測位対象の装置から送信された測位信号を受信し、前記複数の基準装置のいずれか一つの基準装置は、前記測位対象の装置から送信された測位信号を受信した受信結果を他の基準装置から受信し、自装置による前記測位信号の受信結果と、前記他の基準装置による前記測位信号の受信結果と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算してもよい。
ここで、前記いずれか一つの基準装置は、前記他の基準装置との間の時刻差の情報を取得し、前記時刻差の情報と前記測位信号の受信結果と前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の現在位置を計算してもよい。
【0015】
前記測位対象の装置、前記測位システム、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記無線媒体は、UWB(超広帯域)無線の電波であってもよい。
【0016】
前記測位対象の装置、前記測位システム、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記測位対象の装置は無線ICタグであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、屋内などのエリアにおいて移動する測位対象の装置の現在位置をリアルタイムに測位対象の装置側で計算して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る測位システムの主要な構成の一例を示す説明図。
【
図2】他の実施形態に係る測位システムの主要な構成の一例を示す説明図。
【
図3】
図1の測位システムの基準装置及び対象装置の主要な構成の一例を示すブロック図。
【
図4】
図2の測位システムの基準装置、対象装置及び管理装置の主要な構成の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係る測位システムは、タグ(測位対象の装置)と、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数のアンカー(基準装置)との間で、見通し内環境(LOS環境)で超広帯域(UWB)の電波による測位信号の送受信を行い、その送受信の結果を入力としてタグ(測位対象の装置)の位置座標を出力する測位システムである。例えば、本実施形態の測位システムは、前記測位信号の送受信に基づくTDoA(到達時間差)方式又はToA(Time of Arrival)の測距推定法のアルゴリズムを用いてタグの位置座標を計算して出力する。
【0020】
本実施形態のTDoA方式の測位システムは、例えばGNSS人工衛星からの電波が届かない又は届きにくい屋内などのエリア内におけるタグの位置座標の測位に適する。本実施形態の測位システムは、タグなどの測位対象の装置の位置をリアルタイムに測位するリアルタイム位置測位システム(RTLS:Real Time Location System)の実現に適する。
【0021】
特に、本実施形態の測位システムは、屋内などのエリアにおいて移動するフォークリフト、ロボット、ドローンなどの移動体に搭載された測位対象の装置(タグ、エッジデバイス、UWBデバイス)の現在位置をリアルタイムに自装置内で計算して使用することが可能になる測位システムである。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る測位システムの主要な構成の一例を示す説明図である。
図1において、測位システムは、測位可能空間(以下「測位対象空間」ともいう。)10において、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置(以下「アンカー」ともいう。)20(1)~20(4)を備える。測位システムは、測位可能空間10における測位対象の装置(以下「対象装置」という。)30を更に備えてもよい。
【0023】
なお、
図1の例は、対象装置30の位置をTDoA方式で測位する測位システムを示しているが、ToA(Time of Arrival)方式などの他の測位方式で対象装置30の位置を測位してもよい。
【0024】
また、
図1の例では、測位可能空間10における基準装置20(1)~20(4)の数は4であるが、測位可能空間における基準装置の数は5以上であってもよい。また、測位可能空間10における対象装置30の数は1であるが、測位可能空間10における対象装置30の数は2以上であってもよい。
【0025】
また、
図1の例では、測位可能空間10の数が単数の場合について示されているが、
図2に例示するように測位可能空間の数は2であってもよいし、又は、3以上であってもよい。なお、
図2の測位システムにおける複数の測位可能空間10A,10Bに共通する事項について説明するときは測位可能空間10と記載する。また、各基準装置20A(1)~20A(4),20B(1)~20B(4)に共通する事項について説明するときは、基準装置20又は基準装置20(1)、20(2)、・・・と記載する。また、各対象装置30A,30Bについて記載するときときは対象装置30と記載する。
【0026】
また、
図2に例示するように、測位システムは、複数の基準装置20(1)~20(4)のそれぞれと通信可能な管理装置40を更に備えてもよい。管理装置40は、対象装置30と通信可能であってもよい。
【0027】
複数の基準装置20は、建物などの内部の2次元又は3次元の測位可能空間10の互いに異なる複数の位置に設置される。複数の基準装置20の設置位置は、水平方向の位置及び高さの少なくとも1つが互いに異なる。設置位置は、測位可能空間10内のできるだけ離れた位置が好ましい。
【0028】
基準装置20の数は、例えば測位方式のアルゴリズムに応じて設定される。例えば、TDoA方式で3次元空間における対象装置30の位置を測位する場合、基準装置20の数は例えば4以上である。なお、2次元のエリアで対象装置30の位置を測位する場合は、基準装置の数は3以上であってもよい。
【0029】
複数の基準装置20は、装置間に適用可能な任意の同期方法により、互いの時刻同期又は時刻差が管理されている。複数の基準装置20はそれぞれ、互いの時刻同期又は時刻差が管理された内部クロックを備える。
【0030】
ここで、上記「時刻同期」とは、複数の基準装置20の間で特定の時点どうしを同期させることを意味し、「時間同期」とも言われることがある。また、上記時刻同期が管理される場合の例としては、例えば、複数の基準装置20のそれぞれとの間の位置関係(例えば距離)が既知である位置に共通の送信装置を設置した状態で当該送信装置から送信された信号を複数の基準装置20が受信した受信タイミングのタイムスタンプの時刻差を測定し、その時刻差を基準装置間のOffset値(基準装置のクロックのずれ)として管理装置40などに保持することが挙げられる。この基準装置間のOffset値は、後述のTDoA方式の測位において対象装置30の複数の基準装置20との間の距離の計算に用いられる基準装置間の受信時間差(タイムスタンプの差)の補正に用いることができ、複数の基準装置20の間の時刻同期を行うことなく、対象装置30の現在位置の計算(推定)が可能になる。なお、上記Offset値は、初期設定の後、所定のタイミングに(例えば所定周期の定期的なタイミングに)、上記共通の送信装置からの信号の受信タイミングのタイムスタンプの時刻差を測定して更新してもよい。
【0031】
複数の基準装置20のそれぞれが設置された既知の位置座標は、例えば、測位対象空間10に予め設定された座標系における相対的な位置座標である。本実施形態における複数の基準装置20の位置座標は、測位可能空間10内の任意の点に原点が設定された直交座標系における相対的な位置座標であってもよい。例えば、複数の基準装置20の位置座標は、いずれか1つの基準装置20の設置位置を通る垂直座標軸上の任意の点に原点が設定された直交座標系における相対的な位置座標であってもよい。
【0032】
測位対象空間10の所定の座標系における複数の基準装置20の位置座標は、例えば、アンカー設置台(設置補助装置)の複数の補助アンカー(補助基準装置)と基準装置20との間の測位信号の送受信によって決定してもよい。
【0033】
複数の基準装置20の位置座標は、例えば、一般的な測量技術(例えば、トータルステーション、レーザ測距センサー)を使った測量作業を行って決定してもよい。また、複数の基準装置20の一部又は全部がGNSSの人工衛星からの電波を受信できるエリアに配置されている場合は、前記一部又は全部の基準装置20の既知の位置座標としてGNSS受信機で測定された位置座標を使用してもよい。この場合の位置座標は、例えば、緯度、経度及び高度であってもよいし、ある基準点を定義されたECEF(Earth-Centered Earth-Fixed)座標系における座標位置(X,Y,Z)であってもよい。また、ある基準点を原点としたENU(東East(m)、北North(m)、上Up(m):基準点からの相対距離)座標へ変換した変換座標系上の座標であってもよい。
【0034】
対象装置30は、例えばIC無線タグ(以下「タグ」ともいう。)である。対象装置30は、タグのほか、台車、フォークリフト、ロボット、ドローンなどの自走可能な装置、各種の部品、又は、各種の製品であってもよい。対象装置30は、移動中の装置若しくは一時停止中の装置であってもよいし、又は、固定配置された装置であってもよい。
【0035】
対象装置30は、複数の基準装置20のそれぞれに対して所定の無線媒体による測位信号の送信を行う。測位信号の送受信に用いる無線媒体は、電波、音波、光などの無線媒体である。本実施形態では、無線媒体としてUWB(超広帯域)無線の電波を用いる。UWBは、広帯域(例えば、数GHz帯中の任意の周波数を中心とした数百MHzの帯域幅)の微弱電波での通信技術であり、IEEE802.15.4で定義されている。
【0036】
管理装置40は、例えば、インターネットなどの通信ネットワーク45に構築されたクラウドコンピュータシステム(以下「クラウドシステム」ともいう。)である。管理装置40は、単一又は複数のコンピュータ装置で構成したサーバであってもよい。管理装置40と複数の基準装置20との間の通信は、例えば、移動通信網(例えば、LTE、5G)、無線ローカルネットワーク(例えばWi-Fi)などを含む通信ネットワーク45を介して行うことができる。この通信は、例えば有線又は無線の通信回線を介して行うことができる。通信回線は公衆回線であってもよいし専用回線であってもよい。
【0037】
図3は、
図1の測位システムの基準装置(アンカー)20及び対象装置(タグ)30の主要な構成の一例を示すブロック図である。
図3において、基準装置20は、UWB通信部210と、記憶部230とを備える。基準装置20は、USB電源供給機能やUSBデータ出力機能を備えてもよい。
【0038】
UWB通信部210は、対象装置30の測位時における測位信号の受信部及び測位信号の受信結果を対象装置30に送信する送信部としても機能する。
【0039】
UWB通信部210は、例えばUWB無線通信モジュールで構成されている。UWB通信部210は、対象装置30の測位時に、対象装置30からUWBの電波で送信(ブロードキャスト発信)された測位信号を、アンテナ211を介して受信する。また、UWB通信部210は、対象装置30から受信した測位信号に含まれる情報と、測位信号の受信時刻情報(Timestamp)とを出力する。
【0040】
対象装置30から送信される測位信号の送信フォーマットは、例えば、フレーム制御情報(Frame Control)、送信連続番号(Sequence Number)、対象装置30を識別可能な対象装置識別情報(TAG ID)、メッセージ識別情報(Message ID)、測位管理識別情報(Purpose ID)及びデータエラー修復用情報(CRC)を含む。測位管理識別情報(Purpose ID)は、例えば、測位の目的、測位の結果の用途及び測位の結果を使用する主体の少なくとも1つを識別可能な情報である。
【0041】
記憶部230は、UWB通信部210から出力された測位信号に含まれる各種情報と、測位信号の送受信結果の情報である測位信号の受信時刻情報(Timestamp)とを互いに関連付けて記憶する。また、記憶部230は、基準装置(自装置)20の位置座標の情報と、他の基準装置との間の時刻差の情報(例えば、前述のOffset値)とを記憶してもよい。
【0042】
対象装置30に送信される測位信号の受信結果の情報の送信フォーマットは、例えば、対象装置識別情報(TAG ID)、基準装置(自装置)20を識別可能な基準装置識別情報(Anchor ID)、対象装置カウント情報(TAG Counter)、測位管理識別情報(Purpose ID)、対象装置30からの測位信号の受信時刻情報(Timestamp)及び電波強度及び絶対時刻情報(Epoch Time)及びデータエラー修復用情報(CRC)を含む。受信結果の情報の送信フォーマットは、基準装置(自装置)20の位置座標の情報と、他の基準装置との間の時刻差の情報(例えば、前述のOffset値)とを含んでもよい。
【0043】
図3において、対象装置30は、UWB通信部310と、測位計算部320と、記憶部330とを備える。対象装置30は、基準装置20と同様に、USB電源供給機能やUSBデータ出力機能を備えてもよい。
【0044】
UWB通信部310は、例えばUWB無線通信モジュールで構成され、UWBの電波で、前述の測位管理識別情報(Purpose ID)等を含む送信フォーマットを有する測位信号を、アンテナ311を介して送信(ブロードキャスト発信)する送信部としても機能する。測位信号は、例えば、パルス状の信号であり、所定の時間間隔で周期的に発信される。
【0045】
また、UWB通信部310は、基準装置20から前述の送信フォーマットで送信された測位信号の受信結果の情報を受信する受信部としても機能する。
【0046】
記憶部330は、UWB通信部310から送信する測位信号に含める情報を記憶する。また、記憶部330は、基準装置20に予め設定されている測位管理識別情報(Purpose ID)を記憶してもよい。記憶部330は、複数の基準装置20の位置座標の情報と、基準装置間の時刻差の情報(例えば、前述のOffset値)とを記憶する。複数の基準装置20の位置座標の情報及び基準装置間の時刻差の情報(例えば、前述のOffset値)は、複数の基準装置20のそれぞれから受信して取得してもよいし、後述のように管理装置40から受信して取得してもよい。
【0047】
測位計算部320は、対象装置(自装置)30の現在位置を測位する測位エンジンとして機能する。測位計算部320は、例えば、複数の基準装置20との間のUWBの電波による測位信号の送受信の結果と、複数の基準装置20のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、対象装置(自装置)30の現在位置を計算する。この現在位置を計算には、基準装置間の時刻差の情報(例えば、前述のOffset値)を更に用いてもよい。また、測位計算部320は、対象装置(自装置)30の内部ではなく、対象装置(自装置)30に接続された小型のコンピュータ装置に設けてもよい。
【0048】
図4は、
図2の測位システムの基準装置(アンカー)20、対象装置(タグ)30及び管理装置40の主要な構成の一例を示すブロック図である。なお、
図4において、前述の
図3と共通する部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0049】
図4において、基準装置20及び対象装置30はそれぞれ、通信ネットワーク45の有線又は無線の通信回線を介して管理装置40と通信することができるNW通信部240及びNW通信部340を備える。
【0050】
例えば、対象装置30は、自装置の測位に先立って、任意のタイミングに複数の基準装置20の位置座標(又は各基準装置間の距離)の情報をアンカー座標ファイルとして管理装置40からダウンロードし、また、任意のタイミングに基準装置間の時刻差の情報(Offset値)をオフセットテーブルのファイルとして管理装置40からダウンロードすることができる。また、対象装置30は、定期的に(例えば数秒間隔で)管理装置にアクセスして問い合わせ、アンカー座標ファイル及びオフセットテーブルのファイルを継続的に更新してもよい。
【0051】
また例えば、複数の基準装置のいずれかの基準装置20は、対象装置30による測位に先立って、任意のタイミングに複数の基準装置20の位置座標の情報をアンカー座標ファイルとして管理装置40からダウンロードし、また、任意のタイミングに基準装置間の時刻差の情報(Offset値)をオフセットテーブルのファイルとして管理装置40からダウンロードしてもよい。この場合、基準装置20は、対象装置30による測位に先立って、管理装置40からダウンロードしたアンカー座標ファイル及びオフセットテーブルのファイルを、対象装置30からの要求に応じて対象装置30に送信する。
【0052】
NW通信部410は、通信ネットワーク45の有線又は無線の通信回線を介して複数の基準装置20及び対象装置30と通信することができる。
【0053】
図4において、管理装置40は、NW通信部410と測位計算部420と記憶部(DB)430とを備える。NW通信部410は、対象装置30の測位時における測位信号の送受信結果の情報の受信部としても機能する。
【0054】
NW通信部410は、通信ネットワーク45の有線又は無線の通信回線を介して複数の基準装置20及び対象装置30と通信することができる。NW通信部410は、複数の基準装置20の位置座標の情報と、基準装置間の時刻差の情報(例えば、前述のOffset値)とを、複数の基準装置20や対象装置30に送信する送信部としても機能する。
【0055】
NW通信部410は、対象装置30の測位時に、対象装置30の測位に関する測位関連情報を各基準装置20から受信する。基準装置20からの測位関連情報は、例えば、対象装置識別情報(TAG ID)、基準装置(自装置)20を識別可能な基準装置識別情報(Anchor ID)、対象装置カウント情報(TAG Counter)、測位管理識別情報(Purpose ID)、対象装置30からの測位信号の受信時刻情報(Timestamp)及び電波強度及び絶対時刻情報(Epoch Time)を含む。
【0056】
NW通信部410は、対象装置30で計算して測位された対象装置(自装置)30の現在位置の測位結果を、通信ネットワーク45の有線又は無線の通信回線を介して対象装置30から受信する受信部として機能してもよい。
【0057】
測位計算部420は、対象装置30の測位時における対象装置30の位置座標を計算する計算部として機能する。
【0058】
測位計算部420は、各基準装置20から受信した測位関連情報に基づいて、例えば、対象装置30毎に、対象装置30の現在位置を計算して測位する。測位計算部420は、各基準装置20から受信した測位関連情報に基づいて、測位管理識別情報(Purpose ID)毎に、且つ、対象装置30毎に、対象装置30の現在位置を計算して測位してもよい。この現在位置の計算には、基準装置間の時刻差の情報(例えば、前述のOffset値)を更に用いてもよい。
【0059】
記憶部(DB)430は、測位計算部420での計算に用いる測位関連情報、測位計算部420で測位管理識別情報(Purpose ID)毎に且つ対象装置30毎に計算された測位結果を記憶する。また、記憶部(DB)430は、複数の基準装置20のそれぞれについて、基準装置20の位置座標の情報と、基準装置間の時刻差の情報(例えば、前述のOffset値)を記憶する。また、記憶部(DB)430は、複数の基準装置20のそれぞれに予め設定した測位管理識別情報(Purpose ID)を記憶してもよい。
【0060】
特に、
図4の測位システムにおいては、管理装置40が測位計算部420を備えているので、対象装置30が自装置の現在位置を測位する測位機能を有していない場合でも当該対象装置30の測位が可能である。従って、
図4の測位システムでは、自装置の測位機能を有する対象装置(エッジデバイス)30と、自装置の測位機能を有しない対象装置(測位信号の発信のみ)の両方を混在させて使用することができる。
【0061】
なお、上記実施形態の測位システムにおいて、複数の基準装置20のいずれか一つの基準装置(以下「マスターアンカー」という。)が対象装置30の現在位置を計算して測位する測位機能を有してもよい。マスターアンカーは、対象装置30から送信された測位信号を受信した受信結果を他の基準装置(他のアンカー)から受信し、マスターアンカー(自装置)による測位信号の受信結果と、他のアンカーによる測位信号の受信結果と、複数の基準装置(マスターアンカー及び他のアンカー)のそれぞれの位置座標の情報とに基づいて、対象装置30の現在位置を計算する。この現在位置の計算には、基準装置(アンカー)間の時刻差の情報(例えば、前述のOffset値)を更に用いてもよい。このようにマスターアンカーが対象装置30の現在位置を計算して測位する測位機能を有する場合も、自装置の測位機能を有する対象装置(エッジデバイス)30と、自装置の測位機能を有しない対象装置(測位信号の発信のみ)の両方を混在させて使用することができる。
【0062】
各実施形態のTDoA方式の測位システムにおいて、対象装置30及び管理装置40に保持される複数の基準装置20の間の時刻のずれ(クロックのずれ)である動的に変化する時刻差(Offset値)は、例えば、次のような同期/Calibration処理によって決定することができる。ここで、複数の基準装置20の設置場所の位置座標(例えば直交座標系のX,Y,Z)の静的なデータは予め計測されて管理装置40に保持されている。管理装置40はタイムスタンプのズレを調べるコマンドで各基準装置を同期(Anchor Sync)させて、イニシエータとしての基準装置20(0)と他のレスポンダーとしての基準装置20(n)のTimestampを集める。例えば、管理装置40は、基準装置20(0)に他の基準装置20(n)との同期/Calibration処理の指示に行うと、基準装置20(0)は発信Timestamp(Tx0ts)をつけてUWBの電波による同期信号を送信(発信)する。他の基準装置20(n)は、その同期信号を受信すると、基準装置20(0)からの発信Timestamp(Tx0ts)と自身の受信Timestamp(Rxnts)が分かるので、そのTx0tsとRxntsを管理装置40に送る。この基準装置20(0)の送信時刻情報(Timestamp:Tx0ts)と、他の基準装置20(n)の受信時刻情報(Timestamp:Rxnts)が管理装置40に送られる。このTx0tsとRxntsとの差は、基準装置20(0)と他の基準装置20(n)とのクロックのズレ(TS_Offset)と基準装置間の距離を電波が飛ぶ飛行時間(ToF)の合計である。
【0063】
更に、管理装置40は、キャリブレーション用のコマンドで基準装置間の距離に相当するToF値を集める。このToF値は、基準装置間でTWR(2方向レンジング)を行うToF(Time of Flight)方式で測定した基準装置間の距離(例えば、基準装置20(0)と他の基準装置20(n)との間の距離Dis0n)である。
【0064】
管理装置40は、各基準装置から集めた送信時刻情報(Timestamp)及び受信時刻情報(Timestamp)と、基準装置間の距離とに基づき、基準装置間の時刻差の情報(Offset値)を計算することができる。例えば、基準装置20(0)と基準装置20(n)とのクロックのずれ(TS_Offset)は、TS_Offset=Tx0ts-Rxnts-Dis0n/c(c:光速)で計算できる。他の基準装置間の時刻差の情報(Offset値)も同様に計算することができる。これらの複数の基準装置間の時刻差の情報(Offset値)が管理装置40(及び対象装置30)にOffsetテーブルとして保持される。
【0065】
なお、上記時刻差の情報(Offset値)の計算に用いる基準装置間の距離は、上記設置場所の位置座標から計算してもよい。
【0066】
各実施形態のTDoA方式の測位システムにおいて、対象装置30及び管理装置40は、対象装置30の現在位置を、例えば次のアルゴリズムにより計算することができる。ここで、前述の
図1の測位可能空間10において、対象装置30から送信された測位信号が4箇所の基準装置20(1)、20(2)、20(3)、20(4)に到達した受信時刻(Timestamp)をT1、T2、T3、T4とし、測位信号の伝搬速度をv[m/s]とし、対象装置30と基準装置20(1)、20(2)、20(3)、20(4)のそれぞれとの距離をD1、D2、D3、D4とし、基準装置間の測位信号の受信時間差をΔT12=T1-T2、ΔT13=T1-T3、ΔT14=T1-T4、ΔT23=T2-T3、ΔT24=T2-T4、ΔT34=T3-T4とすると、次の(1)~(6)の関係式が成立する。
【数1】
【0067】
上記関係式(1)~(6)を用いて未知の変数である距離D1、D2、D3、D4を求めることができる。この求めた距離D1、D2、D3、D4それぞれを半径とし、基準装置20(1)、20(2)、20(3)、20(4)の既知の位置座標を原点とした4つの球面の交点を求める任意のアルゴリズムにより、3次元の測位可能空間10Aにおける対象装置30の現在位置を数センチメール(例えば3~10cm)の精度で計算することができる。
【0068】
なお、基準装置間に時刻差がある場合、上記関係式(1)~(6)におけるΔT12、ΔT13、ΔT14、ΔT23、ΔT24、ΔT34は、上記同期/Calibration処理によって予め決定して保持している時刻差の情報(Offset値)で補正される。
【0069】
以上、本実施形態によれば、屋内などのエリアにおいて移動するフォークリフト、ロボット、ドローンなどの移動体に組み込まれる対象装置30の現在位置をリアルタイムに対象装置(自装置)30側で計算して自走制御などの制御に使用することができる。
特に、本実施形態によれば、対象装置(エッジデバイス)30側で測位計算処理を行うため、測位処理による制御の伝搬遅延をミリ秒オーダーのレベルまで抑制することができる。
また、本実施形態によれば、フォークリフト、ロボット、ドローンなどの移動体に組み込まれる対象装置(エッジデバイス)30のハードウェアとして基準装置(アンカー)20のハードウェアを流用することができる。基準装置(アンカー)20のハードウェアは、CPU、メモリ、キャッシュメモリ、移動通信網(例えば、LTE、5G)、無線ローカルネットワーク(例えばWi-Fi)などを含む通信ネットワーク45を介した管理装置(RTLS)40との通信機能、USB電源供給機能、USBデータ出力機能などを備えているので、対象装置(エッジデバイス)30のための特殊なハードウェアを新たに作ることなく、対象装置(エッジデバイス)30は自装置の現在位置の測位が可能になる。
【0070】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに測位システムの構成要素(例えば、基準装置、対象装置、管理装置)は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0071】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、通信モジュール、Node B、Node G、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0072】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0073】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0074】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0075】
10 :測位可能空間(測位対象空間)
20 :基準装置
30 :対象装置(測位対象の装置)
40 :管理装置
45 :通信ネットワーク
210 :UWB通信部
211 :アンテナ
230 :記憶部
240 :NW通信部
310 :UWB通信部
311 :アンテナ
320 :測位計算部
330 :記憶部
340 :NW通信部
410 :NW通信部
430 :記憶部