(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096456
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】バーナ及び燃焼炉
(51)【国際特許分類】
F23D 17/00 20060101AFI20230630BHJP
F23D 1/00 20060101ALI20230630BHJP
F23C 1/04 20060101ALI20230630BHJP
F23C 9/08 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
F23D17/00 103
F23D1/00 Z
F23C1/04
F23C9/08 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212245
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 孝二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 篤徳
(72)【発明者】
【氏名】矢原 俊
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰申
【テーマコード(参考)】
3K065
3K091
【Fターム(参考)】
3K065QB11
3K065QC03
3K065RA02
3K091AA03
3K091BB02
3K091CC06
3K091CC12
3K091CC23
3K091CC24
3K091GA24
(57)【要約】
【課題】ガス燃料を補助燃料として用いるバーナにおいて、循環渦の乱れや循環渦内の燃焼反応を低下を抑制しつつ、ガス燃料の燃焼効率を高め得る構造を提案する。
【解決手段】バーナは、主燃料及び一次燃焼用空気の混合気を噴出する主燃料出口と、主燃料出口の周囲に配置された保炎板とを有する第1ノズルと、第1ノズルと同軸に配置され、主燃料出口の外周において二次燃焼用空気を吹き出す二次空気出口を有する第2ノズルと、第1ノズルの外面に沿ってバーナ軸線と平行に延びる複数の補助燃料噴射ノズルと、を備える。複数の補助燃料噴射ノズルは、保炎板の外周縁に沿って並んだ複数の補助燃料出口、又は、保炎板の外周縁の内側且つ内周縁の外側に配置された複数の補助燃料出口を有し、複数の補助燃料出口は混合気の流れと二次燃焼用空気の流れとの境界部分へ向けて補助燃料としてのガス燃料を噴出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナ軸線を中心とする筒状を呈し、主燃料及び一次燃焼用空気の混合気を噴出する主燃料出口と、前記主燃料出口の周囲に配置された保炎板とを有する第1ノズルと、
前記第1ノズルと同軸に配置され、前記主燃料出口の外周において二次燃焼用空気を吹き出す二次空気出口を有する第2ノズルと、
前記第1ノズルの外面に沿って前記バーナ軸線と平行に延びる複数の補助燃料噴射ノズルと、を備え、
複数の補助燃料噴射ノズルは、前記保炎板の外周縁に沿って並んだ複数の補助燃料出口、又は、前記保炎板の外周縁の内側且つ内周縁の外側に配置された複数の補助燃料出口を有し、前記複数の補助燃料出口は前記主燃料出口から出る前記混合気の流れと前記二次空気出口から出る前記二次燃焼用空気の流れとの境界部分へ向けて補助燃料としてのガス燃料を噴出する、
バーナ。
【請求項2】
前記複数の補助燃料噴射ノズルは、前記第1ノズルの外面と接合されている、
請求項1に記載のバーナ。
【請求項3】
前記複数の補助燃料噴射ノズルの下流端が前記保炎板に通されている、
請求項1又は2に記載のバーナ。
【請求項4】
前記保炎板は外周縁に複数の切り欠きを有し、前記切り欠きに前記複数の補助燃料噴射ノズルの下流端が通されている、
請求項1又は2に記載のバーナ。
【請求項5】
前記複数の補助燃料出口は、前記混合気の流れと前記二次燃焼用空気の流れとの境界部分に生じる循環渦の下流側へ向かう順流へ向けて前記ガス燃料を噴出する、
請求項1~4のいずれか一項に記載のバーナ。
【請求項6】
前記循環渦は、外循環渦と当該外循環渦よりも前記バーナ軸線に近い内循環渦とを含んでおり、
前記複数の補助燃料出口は、前記バーナ軸線を中心として実質的同一の回転位置に配置された内側の補助燃料出口と外側の補助燃料出口とを含み、前記内側の補助燃料出口は前記内循環渦の下流側へ向かう順流へ向けて前記ガス燃料を噴出し、前記外側の補助燃料出口は前記外循環渦の下流側へ向かう順流へ向けて前記ガス燃料を噴出する、
請求項5に記載のバーナ。
【請求項7】
前記複数の補助燃料出口は、前記ガス燃料に代えて燃焼用空気を吹き出すように切替可能である、
請求項1~6のいずれか一項に記載のバーナ。
【請求項8】
前記ガス燃料がアンモニアガスである、
請求項1~7のいずれか一項に記載のバーナ。
【請求項9】
少なくとも1つの請求項1~8のいずれか一項に記載のバーナが設けられた、還元雰囲気の高温還元ゾーンと、
前記高温還元ゾーンで生じた燃焼ガスが流入する、前記高温還元ゾーンよりも低温且つ酸化雰囲気の低温酸化ゾーンと、を備える、
燃焼炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス燃料を補助燃料として用いるバーナ及び当該バーナを備える燃焼炉に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO2)削減の時流から、火力ボイラにおいて二酸化炭素を発生させないCO2フリー燃料の使用が求められている。このような燃料として、水素リッチなガス燃料である水素(H2)やアンモニア(NH3)が例示される。例えば、特許文献1では、固体燃料とアンモニアとを混焼可能なバーナが開示されている。
【0003】
特許文献1のバーナは、微粉炭などの固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合気を噴き出す燃料供給ノズルと、燃料供給ノズルの外側に配置されて、燃焼用空気を混合気から径方向外側へ分離して噴き出す空気ノズルと、燃料供給ノズルの出口よりも下流側からアンモニアガスを噴き出すアンモニア供給ノズルとを備える。アンモニア供給ノズルは、燃料供給ノズルの出口の直ぐ下流側において燃料の燃焼によって酸素が消費されて低酸素濃度となった還元領域(一次燃焼領域)に向けて、アンモニアガスを供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたバーナ構造では、最も強い高温還元領域が形成されるのは、燃料供給ノズルの出口と空気ノズルの出口の間の前方であり、ここでは混合気とその外周の二次空気及び三次空気の流れによって循環渦が形成される。この循環渦内は可燃成分や熱が蓄えられるため、燃焼しやすい条件が維持され、着火の起点となるとともに、循環渦内及び循環渦の下流に高温還元領域が形成される。従って、特許文献1のようにアンモニアを一次燃焼領域へ向けて噴出するよりも、アンモニアなどのガス燃料を循環渦へ向けて噴出することが、燃焼効率を高めるうえで有利であると考えられる。一方で、循環渦へ向けてガス燃料を噴出する場合、ガス燃料の流量が増えると、ガス燃料の噴流によって循環渦の流れが乱されることや、未反応のガス燃料の流入による循環渦の温度低下によって循環渦内の燃焼反応が抑制されることが懸念される。
【0006】
本開示は以上の事情に鑑みてされたものであり、ガス燃料を補助燃料として用いるバーナにおいて、循環渦を乱したり循環渦内の燃焼反応を低下させたりすることを抑制しつつ、ガス燃料の燃焼効率を高め得る構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るバーナは、
バーナ軸線を中心とする筒状を呈し、主燃料及び一次燃焼用空気の混合気を噴出する主燃料出口と、前記主燃料出口の周囲に配置された保炎板とを有する第1ノズルと、
前記第1ノズルと同軸に配置され、前記主燃料出口の外周において二次燃焼用空気を吹き出す二次空気出口を有する第2ノズルと、
前記第1ノズルの外面に沿って前記バーナ軸線と平行に延びる複数の補助燃料噴射ノズルと、を備え、
複数の補助燃料噴射ノズルは、前記保炎板の外周縁に沿って並んだ複数の補助燃料出口、又は、前記保炎板の外周縁の内側且つ内周縁の外側に配置された複数の補助燃料出口を有し、前記複数の補助燃料出口は前記主燃料出口から出る前記混合気の流れと前記二次空気出口から出る前記二次燃焼用空気の流れとの境界部分へ向けて補助燃料としてのガス燃料を噴出することを特徴としている。
【0008】
また、本開示の一態様に係る燃焼炉は、
少なくとも1つの上記バーナが設けられた、還元雰囲気の高温還元ゾーンと、
前記高温還元ゾーンで生じた燃焼ガスが流入する、前記高温還元ゾーンよりも低温且つ酸化雰囲気の低温酸化ゾーンと、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記した本開示の一態様によれば、ガス燃料を補助燃料として用いるバーナにおいて、循環渦を乱したり循環渦内の燃焼反応を低下させたりすることを抑制しつつ、ガス燃料の燃焼効率を高め得る構造を提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るバーナを備えるボイラの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示に係るバーナの概略断面図である。
【
図4】
図4は、バーナの出口をバーナ軸線方向の前方から見た図である。
【
図5】
図5は、変形例1に係るバーナの出口をバーナ軸線方向の前方から見た図である。
【
図6】
図6は、変形例2に係るバーナの出口をバーナ軸線方向の前方から見た図である。
【
図7】
図7は、変形例2に係るバーナの出口をバーナ軸線方向の前方から見た図である。
【
図8】
図8は、変形例2に係るバーナの出口の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。まず、本開示の一実施形態に係るバーナ5を備えるボイラ10の概略構成から説明する。
【0012】
〔ボイラ10の概略構成〕
図1は、本開示の一実施形態に係るバーナ5を備えるボイラ10の概略構成を示す図である。
図1に示すボイラ10は、燃料を燃焼する燃焼炉2と、その燃焼熱を利用して蒸気を生成するボイラ本体40とを備える。ボイラ10は、微粉炭焚きの火力ボイラであって、粉体又は粒体状の化石燃料(固体燃料)を主燃料とする。但し、本開示に係るバーナ5が適用されるボイラは、微粉炭焚きボイラに限定されず、微粉炭及びバイオマスを主燃料とする混焼ボイラ、石油残渣を主燃料とする石油残渣焚きボイラなどであってもよい。
【0013】
燃焼炉2の内部には竪型の燃焼室20が形成されている。本実施形態に係る燃焼炉2は倒立式の竪型炉であって、燃焼室20の上部には高温還元ゾーン21が形成され、燃焼室20の下部には低温酸化ゾーン22が形成され、高温還元ゾーン21と低温酸化ゾーン22との間には絞り部23が設けられている。但し、燃焼炉2は、燃焼室20の下部に高温還元ゾーン21が形成され、燃焼室20の上部に低温酸化ゾーン22が形成された竪型炉であってもよい。或いは、本開示に係るバーナ5が適用される燃焼炉2は、竪型炉以外の態様の燃焼炉であってもよい。
【0014】
燃焼炉2の内壁のうち高温還元ゾーン21を形成している部分は耐火材25で覆われている。燃焼炉2の上部の炉壁には、高温還元ゾーン21へ燃料及び一段目燃焼用の空気を吹き出す複数のバーナ5が設けられている。各バーナ5から燃焼室20内へ燃料及び空気の混合気が吹き出して、火炎が生じる。複数のバーナ5は、対向する一対の炉壁の各々に設けられている。各炉壁には上下方向に少なくとも1段のバーナ段が設けられており、各バーナ段は水平方向に並ぶ複数のバーナ5で形成されている。このように対向配置された複数のバーナ5は、各バーナ5のバーナ軸線が交差しないように対向千鳥配置されている。
【0015】
高温還元ゾーン21の出口は、絞り部23を介して低温酸化ゾーン22の入口と接続されている。絞り部23の最も小さい水平断面積は、高温還元ゾーン21の水平断面積の20~50%程度である。
【0016】
燃焼炉2の下部の炉壁には、複数の空気ノズル26が設けられている。各空気ノズル26から低温酸化ゾーン22へ二段目燃焼用の空気が吹き出す。本実施形態では、上下方向に複数段の空気ノズル段が設けられており、各空気ノズル段は水平方向に並ぶ複数の空気ノズル26で形成されている。低温酸化ゾーン22のうち絞り部23と複数の空気ノズル26との上下間は冷却部24となっている。冷却部24の炉壁は、ボイラ本体40の水管(図示略)が張り巡らされた水冷壁となっている。
【0017】
低温酸化ゾーン22の出口11は煙道28の入口と接続されている。煙道28には、ボイラ本体40の伝熱管43が設けられている。煙道28の出口には排ガス処理系統30が接続されている。
【0018】
上記構成のボイラ10において、高温還元ゾーン21に供給される燃料と一段目燃焼用の空気との空気比は、1未満(例えば0.7程度)に維持される。その上、耐火材25で覆われた高温還元ゾーン21は、炉の他の部分と比較して炉内温度が下がりにくい。これにより、高温還元ゾーン21は平均約1500℃の高温の還元雰囲気(空気量が理論空気量よりも低い空気不足の雰囲気)となっており、高温還元ゾーン21では燃料のガス化が促進される。
【0019】
高温還元ゾーン21では、燃料がガス化して燃焼ガスが生じる。生じた燃焼ガスは、絞り部23を通じて低温酸化ゾーン22に流入する。空気ノズル26から低温酸化ゾーン22へ供給される二段目燃焼用の空気によって、低温酸化ゾーン22の空気比は1以上(例えば、1.1程度)に維持される。これにより、低温酸化ゾーン22は酸化雰囲気となっており、低温酸化ゾーン22では燃焼ガスの燃焼が促進される。
【0020】
低温酸化ゾーン22では、燃焼ガス中の未燃分の燃焼が完結する。低温酸化ゾーン22からの燃焼排ガスは、煙道28を通じて排ガス処理系統30へ流出する。煙道28や炉壁に設けられた伝熱管43で燃焼排ガスの熱が回収され、ボイラ本体40で蒸気が生成される。生成された蒸気は、例えば、発電設備の蒸気タービンで利用される。
【0021】
〔バーナ5〕
上記構成のボイラ10に備わるバーナ5は、固体燃料を主燃料とし、水素分を含むガス燃料を補助燃料として利用する混焼バーナである。固体燃料は、例えば微粉炭などの、粉体又は粒体状の化石燃料である。本実施形態ではガス燃料として、水素分と窒素分とを含むアンモニアガスが採用されている。但し、ガス燃料として、水素ガスや、プラントで発生する副生ガスが採用されてもよい。
【0022】
図2は、本開示に係るバーナ5の概略断面図であり、
図3は、
図2のバーナ5の出口近傍の拡大図である。
図2及び
図3に示すように、バーナ5は、所定のバーナ軸線70を中心として同軸に配置された第1ノズル71、第2ノズル72、及び、第3ノズル73から成る多重ノズルを備える。このバーナ軸線70の延伸方向を「バーナ軸線方向X」と称する。
【0023】
第1ノズル71には、粉末状の固体燃料と当該固体燃料を搬送する搬送空気とが供給される。搬送空気は、一次空気(一次燃焼用空気)となる。第1ノズル71の下流端には、周方向に連続する第1保炎板77が設けられている。第1保炎板77は、第1ノズル71の下流端へ進むに従ってラッパ状に拡径する。第1保炎板77によって第1ノズル71の下流端に主燃料出口71aが形成されている。主燃料出口71aからは、固体燃料及び搬送空気から成る混合気51が噴出する。
【0024】
第1ノズル71の下流端内部であって、第1保炎板77の上流側には、旋回調整板711が設けられている。第1ノズル71内であって、旋回調整板711よりも上流側には分散羽根713が設けられている。
【0025】
第1ノズル71の軸心部には、バーナ軸線70が通る重油バーナ79が挿入されている。重油バーナ79の下流端は第1ノズル71の下流端の近傍に位置する。そのため、第1ノズル71の下流端の流路断面は、バーナ軸線70を中心とする円環状となっている。
【0026】
第1ノズル71の外周には、第2ノズル72が設けられている。第1ノズル71と第2ノズル72との間には、流路断面が環状の第2流路72fが形成されている。第2流路72fには、風箱から二次空気52(二次燃焼用空気)が供給される。第2流路72fの下流端である二次空気出口72aは、主燃料出口71aの外周に位置し、主燃料出口71aから噴出する混合気51の流れの外周側へ二次空気52を吹き出す。
【0027】
第2ノズル72の外周には第3ノズル73が設けられている。第3ノズル73と第2ノズル72の間には、流路断面が環状の第3流路73fが形成されている。第3流路73fには、風箱から三次空気53(三次燃焼用空気)が供給される。第3流路73fの下流端である三次空気出口73aは、二次空気出口72aの外周側に位置し、二次空気出口72aから噴出する二次空気52の外周側において三次空気53を吹き出す。
【0028】
第2ノズル72の下流端には、下流側に進むに従ってラッパ状に拡径する第2保炎板72bが設けられている。更に、第3ノズル73の下流端の開口縁には、下流側に進むに従ってラッパ状に拡径する外側ガイド73bが設けられている。第1保炎板77及び第2保炎板72bによって、二次空気出口72aから噴出する二次空気52は、第1ノズル71から噴き出す混合気51から外側へ離れるように誘導される。また、第2保炎板72b及び外側ガイド73bによって、第3ノズル73から噴出する三次空気53は、第2ノズル72から噴き出す二次空気52から外側へ離れるように誘導される。
【0029】
図4は、バーナ5の出口をバーナ軸線方向Xの前方から見た図である。
図2,3及び4に示すように、第1ノズル71の外面には複数の補助燃料噴射ノズル91が周方向に並んで配置されている。補助燃料噴射ノズル91の径は第1ノズル71の径と比較して十分に小さい。各補助燃料噴射ノズル91は、第1ノズル71の外面に沿ってバーナ軸線方向Xに延伸している。第2流路72fにおける二次空気52の流れを阻害しないために、補助燃料噴射ノズル91は第1ノズル71の外面を這った態様であることが望ましい。本実施形態において、各補助燃料噴射ノズル91は第1ノズル71の外面と接合されて、複数の補助燃料噴射ノズル91と第1ノズル71とが一体となっている。第1ノズル71と補助燃料噴射ノズル91は、溶接によって化学的に接合されていてもよいし、ボルトなどによって機械的に接合されていてもよい。
【0030】
補助燃料噴射ノズル91内の第1流路91fには、ガス燃料源からガス燃料90が供給される。補助燃料噴射ノズル91の下流端である補助燃料出口91aからは、ガス燃料90が噴出する。また、第1流路91fは、ガス燃料90に加えて燃焼用空気が供給されるように構成されてもよい。この場合、補助燃料出口91aから噴出する気体は、ガス燃料90、燃焼用空気、並びに、ガス燃料90及び燃焼用空気の混合気の間で切り替え可能であってよい。
【0031】
複数の補助燃料出口91aは、主燃料出口71aと二次空気出口72aとの間に配置される。複数の補助燃料出口91aは、第1ノズル71の下流端に設けられた第1保炎板77の外周縁に沿って周方向に並んでいる。複数の補助燃料出口91aは、周方向に偏りなく配置されることが望ましい。
図4に示す例では、複数の補助燃料噴射ノズル91は第1保炎板77の外周縁と接しており、複数の補助燃料出口91aは第1保炎板77の外周縁よりも僅かに外側において第1保炎板77の外周縁に沿って配置されている。
【0032】
上記構成のバーナ5では、第1ノズル71へ供給された固体燃料と一次空気の混合気51が、分散羽根713及び旋回調整板711の作用によって主燃料出口71aから旋回流れとして噴出する。また、主燃料出口71aの外周側において、二次空気出口72aから二次空気52が吹き出し、三次空気出口73aから三次空気53が吹き出す。二次空気52は、第1保炎板77及び第2保炎板72bの作用によって、バーナ軸線70を中心として径方向外側へ広がるように吹き出す。同様に、三次空気53は、第2保炎板72b及び外側ガイド73bの作用によって、径方向外側へ広がるように吹き出す。
【0033】
混合気51の流れと二次空気52の流れの境界部分では、圧力の低下により循環渦55が生じる。循環渦55内には高温の燃焼ガスが滞留する。本実施形態では、
図3に示すように、外循環渦55aと、外循環渦55aよりもバーナ軸線70に近い内循環渦55bとが形成されている。外循環渦55a及び内循環渦55bの各々は、下流側へ向かう順流と、上流側へ戻ってくる逆流によって構成されている。三次空気53の旋回によって、循環渦55の径方向内側に循環領域50が形成される。循環領域50では、主燃料出口71aから出た混合気51の噴出流を主燃料出口71aへ向けて戻す循環流が生じ、高温の燃焼ガスと未燃の循環ガスとの交換が絶えず行われる。これにより、混合気51中の固体燃料の揮発成分が速やかに燃焼して、循環渦55で外周着火炎が生じる。更に、二次空気52、三次空気53の順に段階的に燃焼用空気と混合気51とが混合されることによって燃焼が生じる。
【0034】
バーナ5では、固体燃料の専焼と、ガス燃料の専焼と、固体燃料及びガス燃料の混焼とを切り替えることができる。固体燃料の専焼時には、第1流路91fへ燃焼用空気が供給される、又は、第1流路91fへのガス燃料の供給が停止される。ガス燃料の専焼時には、第1ノズル71へ燃焼用空気が供給されるとともに第1流路91fへガス燃料が供給される。固体燃料及びガス燃料の混焼時には、第1ノズル71へ固体燃料及び燃焼用空気が供給されるとともに第1流路91fへガス燃料90が供給される。バーナ5では、このような専焼と混焼との切替を、ボイラ10の運転を停止することなく行うことができる。
【0035】
補助燃料出口91aから噴出したガス燃料90の流れは、循環渦55の最も外側の流れ、即ち、下流側へ向かう順流の流れと合流する。これにより、ガス燃料90は着火の起点である循環渦55内に取り込まれ、ガス燃料90を効率的に燃焼させることができる。
【0036】
〔バーナ5の変形例1〕
図5は、変形例1に係るバーナ5Aの出口をバーナ軸線方向Xの前方から見た図である。
図5に示す変形例1に係るバーナ5Aでは、上記実施形態に係るバーナ5と比較して補助燃料噴射ノズル91の補助燃料出口91aの配置が異なる。変形例1に係るバーナ5Aでは、第1保炎板77の外周縁に複数の切り欠きが設けられており、この切り欠きに補助燃料噴射ノズル91の下流端が通されている。切り欠きの断面は、補助燃料噴射ノズル91の断面の一部又は全部が嵌る形状であってよい。この場合、補助燃料出口91aの一部分が第1保炎板77の外周縁よりも内側に配置され、残部が第1保炎板77の外周縁よりも外側に配置される。変形例1に係るバーナ5Aでは、第1保炎板77の外周縁の凹凸が低減される結果、補助燃料出口91aが、二次空気出口72aから吹き出す二次空気52の流れ、及び、主燃料出口71aから吹き出す混合気51の流れに与える影響を抑えることができる。
【0037】
〔バーナ5の変形例2〕
図6は、変形例2に係るバーナ5Bの出口をバーナ軸線方向Xの前方から見た図である。
図6に示すように、変形例2に係るバーナ5Bでは、バーナ軸線70を中心とした同じ回転位置に内側及び外側の複数の補助燃料出口91aが配置されている。また、内側及び外側の複数の補助燃料出口91aは、第1保炎板77の外周縁の内側且つ第1保炎板77の内周縁の外側に配置されている。
図6に示す例では、補助燃料噴射ノズル91の下流端が第1保炎板77を貫いている。但し、
図7に示すように、第1保炎板77の外周縁に複数の扇形の切り欠き77aが設けられて、この切り欠き77aに補助燃料噴射ノズル91の下流端が通されてもよい。
【0038】
図8は、変形例2に係るバーナ5Bの出口の拡大断面図である。
図8に示すように、内側の補助燃料出口91aから噴出したガス燃料90の流れは、内循環渦55bにおいて下流側へ向かう順流と合流する。換言すれば、内側の補助燃料出口91aから噴出したガス燃料90の流れが内循環渦55bにおいて下流側へ向かう順流と合流するように、内側の補助燃料出口91aの位置及び向きが調整される。また、外側の補助燃料出口91aから噴出したガス燃料90の流れは、外循環渦55aにおいて下流側へ向かう順流と合流する。換言すれば、外側の補助燃料出口91aから噴出したガス燃料90の流れが外循環渦55aにおいて下流側へ向かう順流と合流するように、外側の補助燃料出口91aの位置及び向きが調整される。このように、外循環渦55a及び内循環渦55bの各々にガス燃料90を供給して、各補助燃料出口91aからのガス燃料90の噴出流速を抑えつつガス燃料90の混焼率を高めることができる。
【0039】
〔総括〕
以上に説明したように、本開示に係るバーナ5,5A,5Bは、
バーナ軸線70を中心とする筒状を呈し、主燃料及び一次燃焼用空気の混合気51を噴出する主燃料出口71aと、主燃料出口71aの周囲に配置された保炎板77とを有する第1ノズル71と、
第1ノズル71と同軸に配置され、主燃料出口71aの外周において二次燃焼用空気52を吹き出す二次空気出口72aを有する第2ノズル72と、
第1ノズル71の外面に沿ってバーナ軸線70と平行に延びる複数の補助燃料噴射ノズル91と、を備える。そして、
複数の補助燃料噴射ノズル91は、保炎板77の外周縁に沿って並んだ複数の補助燃料出口91a、又は、保炎板77の外周縁の内側且つ内周縁の外側に配置された複数の補助燃料出口91aを有し、複数の補助燃料出口91aは主燃料出口71aから出る混合気51の流れと二次空気出口72aから出る二次空気52の流れとの境界部分へ向けて補助燃料としてのガス燃料90を噴出する。
【0040】
上記構成のバーナ5,5A,5Bによれば、補助燃料出口91aから出たガス燃料90は、混合気51の流れと二次空気52の流れとの境界に生じる循環渦55へ向けて流れる。これにより、ガス燃料90は着火の起点である循環渦55に取り込まれ、ガス燃料90を効率的に燃焼させることができる。また、ガス燃料90は複数の補助燃料出口91aから分散して噴出するから、補助燃料出口91aが単数である場合と比較して同量のガス燃料90を供給するための噴射流速を低く抑えることができる。これにより、噴出するガス燃料90によって循環渦55が乱されたり、循環渦55の温度低下によって循環渦55内の燃焼反応が鈍化したりすることを抑制することができる。なお、噴射流速を低く抑えるという観点から、補助燃料出口91aは少なくとも2つあればよいが、多数であることが望ましい。
【0041】
上記構成のバーナ5,5A,5Bにおいて、複数の補助燃料噴射ノズル91は、第1ノズル71の外面と接合されていてよい。
【0042】
これにより、複数の補助燃料噴射ノズル91と第1ノズル71とを一体的に取り扱うことができる。また、複数の補助燃料噴射ノズル91が第1ノズル71の外面に沿っていることで、複数の補助燃料噴射ノズル91が第2流路72fにおける二次空気52の流れ場に与える影響を抑えることができる。
【0043】
上記構成のバーナ5A,5Bにおいて、複数の補助燃料噴射ノズル91の下流端が保炎板77に通されていてよい。
【0044】
これにより、保炎板77の外周縁の内側に補助燃料出口91aを設けることが可能となる。
【0045】
上記構成のバーナ5Aにおいて、保炎板77は外周縁に複数の切り欠きを有し、この切り欠きに複数の補助燃料噴射ノズル91の下流端が通されていてよい。
【0046】
これにより、保炎板77の外周縁の内側に補助燃料出口91aを設けることが可能となる。また、保炎板77の外周縁の凹凸を抑えることができる。
【0047】
上記構成のバーナ5,5A,5Bにおいて、複数の補助燃料出口91aが、混合気51の流れと二次空気52の流れとの境界部分に生じる循環渦55の下流側へ向かう順流へ向けてガス燃料90を噴出するように構成されていてよい。
【0048】
ガス燃料90が循環渦55の上流側へ向かう逆流の流れに当接するように吹き出すと、ガス燃料90の流れによって循環渦55が乱されるおそれがある。これに対し、本開示に係るバーナ5,5A,5Bでは、循環渦55の下流側へ向かう順流へ向けてガス燃料90が噴出するので、ガス燃料90は循環渦55の流れを乱すことなく循環渦55に取り込まれる。
【0049】
上記構成のバーナ5Bにおいて、循環渦55は、外循環渦55aと当該外循環渦55aよりもバーナ軸線70に近い内循環渦55bとを含んでおり、
複数の補助燃料出口91aは、バーナ軸線70を中心として実質的同一の回転位置に配置された内側の補助燃料出口91aと外側の補助燃料出口91aとを含み、内側の補助燃料出口91aは内循環渦55bの下流側へ向かう順流へ向けてガス燃料90を噴出し、外側の補助燃料出口91aは外循環渦55aの下流側へ向かう順流へ向けてガス燃料90を噴出するように構成されていてよい。
【0050】
これによりガス燃料90の流量を大きくした場合であっても、複数の補助燃料出口91aから噴出したガス燃料90が外循環渦55aと内循環渦55bに分散して供給されることから、循環渦55へ向けて流れるガス燃料90の噴出流速を抑えることができる。そして、噴出するガス燃料90によって循環渦55が乱されたり、循環渦55の温度低下によって循環渦55内の燃焼反応が鈍化したりすることを抑制することができる。
【0051】
上記のバーナ5,5A,5Bにおいて、複数の補助燃料出口91aはガス燃料90に代えて燃焼用空気を吹き出すように切替可能であってよい。
【0052】
上記構成のバーナ5,5A,5Bによれば、バーナ5を主燃料のみの燃焼と、主燃料及び補助燃料の燃焼とを切り替えることができる。なお、上記実施形態では、主燃料として固体燃料が用いられているが、主燃料はガス燃料又は液体燃料であってもよい。また、主燃料と補助燃料とが同種の燃料であってもよい。或いは、上記構成のバーナ5,5A,5Bにおいて、ガス燃料90がアンモニアガスであってよい。
【0053】
また、本開示に係る燃焼炉2は、少なくとも1つの上記のバーナ5,5A,5Bが設けられた、還元雰囲気の高温還元ゾーン21と、高温還元ゾーン21で生じた燃焼ガスが流入する、高温還元ゾーン21よりも低温且つ酸化雰囲気の低温酸化ゾーン22と、を備える。
【0054】
上記構成の燃焼炉2によれば、高温還元ゾーン21で固体燃料と窒素分を多く含むガス燃料との混焼が行われることにより、固体燃料及びガス燃料に含まれる窒素分から生成するNOxの炉内脱硝が行われ、NOxの排出を抑えることができる。更に、固体燃料及び/又はガス燃料に含まれる水素分から生成された水が活性ガスに変換される水性ガス化反応が生じることから燃焼効率を向上させることができる。ここで、ガス燃料がアンモニアガスであれば、水性ガス化反応する水が多く発生するので、燃焼効率を更に向上させることができる。
【0055】
本開示の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されたものであり、本開示を本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。例えば、前述の詳細な説明では、本開示の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で1つの実施形態にまとめられている。但し、本開示に含まれる複数の特徴は、上記で論じたもの以外の代替の実施形態、構成、又は態様に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0056】
2 :燃焼炉
5,5A,5B :バーナ
21 :高温還元ゾーン
22 :低温酸化ゾーン
51 :混合気(主燃料と一次燃焼用空気の混合気)
52 :二次空気(二次燃焼用空気)
53 :三次空気(三次燃焼用空気)
55 :循環渦
55a :外循環渦
55b :内循環渦
70 :バーナ軸線
71 :第1ノズル
71a :主燃料出口
72 :第2ノズル
72a :二次空気出口
72b :第2保炎板
72f :第2流路
73 :第3ノズル
73a :三次空気出口
73f :第3流路
77 :第1保炎板
90 :ガス燃料
91 :補助燃料噴射ノズル
91a :補助燃料出口
91f :第1流路