(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096475
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】固液分離セルおよび固液分離セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/26 20060101AFI20230630BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20230630BHJP
B01D 21/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
B01D21/26
B01D21/01 B
B01D21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212274
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 佳介
(57)【要約】
【課題】装置コストを低減することができる構造を有する固液分離セルおよびその固液分離セルの製造方法を提供する。
【解決手段】曲率を有する壁面を含む流路を有する曲がりチャネル10,12を用いた固液分離セル1であって、曲がりチャネル10,12の一端が、流体が流入する入口となっており、曲がりチャネルの他端が2つに分岐して、それぞれ流体が流出する出口となっており、渦巻き形状の複数の曲がりチャネル10,12が同一平面上に中心を略同一として多重の渦となるように配置されており、複数の曲がりチャネル10,12のうちの1つの曲がりチャネルの少なくとも2つある出口のうちの1つが他の1つの曲がりチャネルの入口に接続されて、複数の曲がりチャネル10,12が直列に接続されている、固液分離セル1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲率を有する壁面を含む流路を有する曲がりチャネルを用いた固液分離セルであって、
前記曲がりチャネルの一端が、流体が流入する入口となっており、
前記曲がりチャネルの他端が2つに分岐して、それぞれ前記流体が流出する出口となっており、
渦巻き形状の複数の曲がりチャネルが同一平面上に中心を略同一として多重の渦となるように配置されており、
前記複数の曲がりチャネルのうちの1つの曲がりチャネルの2つある前記出口のうちの1つが他の1つの曲がりチャネルの入口に接続されて、前記複数の曲がりチャネルが直列に接続されていることを特徴とする固液分離セル。
【請求項2】
請求項1に記載の固液分離セルであって、
前記流路の幅が、3~15mmの範囲であることを特徴とする固液分離セル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固液分離セルであって、
前記流路の深さが、1~10mmの範囲であることを特徴とする固液分離セル。
【請求項4】
被処理水に凝集剤を添加するための凝集剤添加手段と、
前記凝集剤が添加された被処理水を通水して固液分離を行い、濃縮水と処理水とに分離する、請求項1~3のいずれか1項に記載の固液分離セルと、
前記処理水の水質を測定する処理水水質測定手段と、
を備えることを特徴とする水質測定装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の固液分離セルの製造方法であって、
第1板状部材の第1表面に、前記曲がりチャネルの前記流路として渦巻き形状の複数の溝を同一平面上に中心を略同一として多重の渦となるように形成する溝形成工程と、
前記第1板状部材の前記第1表面に第2板状部材を貼り合わせる、貼り合わせ工程と、
前記複数の溝のうちの1つの溝の少なくとも2つある出口のうちの1つを他の1つの溝の入口に接続して、前記複数の溝を直列に接続する接続工程と、
を含むことを特徴とする固液分離セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体と液体を分離する固液分離セルおよびその固液分離セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理において、被処理水中に無機凝集剤や高分子凝集剤等の凝集剤を添加して、懸濁物質等を凝集させてフロックを形成し、凝集フロックを固液分離装置で固液分離する凝集処理が行われる。
【0003】
このような凝集処理において、固液分離装置として、曲率を有する壁面を含む流路を有する曲がりチャネルを用いた固液分離セルを用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような固液分離セルにおいて、曲がりチャネルが1段では粒子を十分に分離することができず、曲がりチャネルを多段にすることによって分離性能が向上する場合がある。しかし、曲がりチャネルを多段にするとセルの数が増えてしまい、装置コストが上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、装置コストを低減することができる構造を有する固液分離セルおよびその固液分離セルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、曲率を有する壁面を含む流路を有する曲がりチャネルを用いた固液分離セルであって、前記曲がりチャネルの一端が、流体が流入する入口となっており、
前記曲がりチャネルの他端が2つに分岐して、それぞれ前記流体が流出する出口となっており、渦巻き形状の複数の曲がりチャネルが同一平面上に中心を略同一として多重の渦となるように配置されており、前記複数の曲がりチャネルのうちの1つの曲がりチャネルの少なくとも2つある出口のうちの1つが他の1つの曲がりチャネルの入口に接続されて、前記複数の曲がりチャネルが直列に接続されている、固液分離セルである。
【0008】
前記固液分離セルにおいて、前記流路の幅が、3~15mmの範囲であることが好ましい。
【0009】
前記固液分離セルにおいて、前記流路の深さが、1~10mmの範囲であることが好ましい。
【0010】
本発明は、被処理水に凝集剤を添加するための凝集剤添加手段と、前記凝集剤が添加された被処理水を通水して固液分離を行い、濃縮水と処理水とに分離する、前記固液分離セルと、前記処理水の水質を測定する処理水水質測定手段と、を備える、水質測定装置である。
【0011】
本発明は、前記固液分離セルの製造方法であって、第1板状部材の第1表面に、前記曲がりチャネルの前記流路として渦巻き形状の複数の溝を同一平面上に中心を略同一として多重の渦となるように形成する溝形成工程と、前記第1板状部材の前記第1表面に第2板状部材を貼り合わせる、貼り合わせ工程と、前記複数の溝のうちの1つの溝の少なくとも2つある出口のうちの1つを他の1つの溝の入口に接続して、前記複数の溝を直列に接続する接続工程と、を含む、固液分離セルの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、装置コストを低減することができる構造を有する固液分離セルおよびその固液分離セルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る固液分離セルの一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る固液分離セルにおける曲がりチャネルの流路断面の一例を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る固液分離セルの製造方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0015】
[固液分離セル]
本発明の実施形態に係る固液分離セルは、曲率を有する壁面を含む流路を有する曲がりチャネルを用いた固液分離セルであって、曲がりチャネルの一端が、流体が流入する入口となっており、曲がりチャネルの他端が2つに分岐して、それぞれ流体が流出する出口となっており、渦巻き形状の複数の曲がりチャネルが同一平面上に中心を略同一として多重の渦となるように配置されており、複数の曲がりチャネルのうちの1つの曲がりチャネルの少なくとも2つある出口のうちの1つが他の1つの曲がりチャネルの入口に接続されて、複数の曲がりチャネルが直列に接続されている固液分離セルである。
【0016】
本実施形態に係る固液分離セルの一例の概略を
図1に示し、その構成について説明する。
【0017】
図1の固液分離セル1は、曲率を有する壁面を含む流路を有する曲がりチャネルを用いた固液分離セルであって、渦巻き形状の第1の曲がりチャネル10と渦巻き形状の第2の曲がりチャネル12とが同一平面上に中心を略同一として二重の渦となるように配置されている。なお、
図1において、第1の曲がりチャネル10を点線で表し、第2の曲がりチャネル12を実線で表している。
【0018】
第1の曲がりチャネル10は、被処理液を流入するための第1の曲がりチャネル入口20と、流体が流れるための例えば矩形状の1つの流路を有する配管が渦巻き状に形成された渦巻き状チャネルと、例えば濃縮液(第1チャネル濃縮水)を排出するための、流路の内周側から分かれた第1の曲がりチャネル第1出口24と、例えば処理液(第1チャネル処理水)を排出するための、流路の外周側から分かれた第1の曲がりチャネル第2出口26とを有する。このように、第1の曲がりチャネル10の一端が、流体が流入する第1の曲がりチャネル入口20となっており、曲がりチャネルの他端が2つに分岐して、それぞれ流体が流出する第1の曲がりチャネル第1出口24と第1の曲がりチャネル第2出口26となっている。
【0019】
第2の曲がりチャネル12は、被処理液を流入するための第2の曲がりチャネル入口22と、流体が流れるための例えば矩形状の1つの流路を有する配管が渦巻き状に形成された渦巻き状チャネルと、例えば濃縮液(第2チャネル濃縮水)を排出するための、流路の内周側から分かれた第2の曲がりチャネル第1出口28と、例えば処理液(第2チャネル処理水)を排出するための、流路の外周側から分かれた第2の曲がりチャネル第2出口30とを有する。このように、第2の曲がりチャネル12の一端が、流体が流入する第2の曲がりチャネル入口22となっており、曲がりチャネルの他端が2つに分岐して、それぞれ流体が流出する第2の曲がりチャネル第1出口28と第2の曲がりチャネル第2出口30となっている。
【0020】
第1の曲がりチャネル10の2つある出口のうちの1つ、ここでは第1の曲がりチャネル第1出口24が配管等の接続部材32によって第2の曲がりチャネル入口22に接続されて、第1の曲がりチャネル10と第2の曲がりチャネル12とが直列に接続されている。
【0021】
本実施形態に係る固液分離セル1の動作および固液分離方法について説明する。
【0022】
固液分離の対象となる懸濁物質等の固体粒子を含む被処理液は、第1の曲がりチャネル入口20から第1の曲がりチャネル10へ送液される。被処理液は、渦巻き状の第1の曲がりチャネル10の流路に導入され、流路を流れていくと、固体粒子と液体(水)との密度差と重力と流体力学的作用とにより、流路の例えば外周側の第1チャネル処理水と流路の例えば内周側の第1チャネル濃縮水とに分離される(第1チャネル分離工程)。第1の曲がりチャネル10で得られた第1チャネル処理水は、第1の曲がりチャネル第2出口26から排出される。第1の曲がりチャネル10で得られた第1チャネル濃縮水は、第1の曲がりチャネル第1出口24から接続部材32を通して第2の曲がりチャネル入口22から第2の曲がりチャネル12へ送液される。第1チャネル濃縮水は、渦巻き状の第2の曲がりチャネル12の流路に導入され、流路を流れていくと、固体粒子と液体(水)との密度差と重力と流体力学的作用とにより、流路の例えば外周側の第2チャネル処理水と流路の例えば内周側の第2チャネル濃縮水とに分離される(第2チャネル分離工程)。第2の曲がりチャネル12で得られた第2チャネル処理水は、第2の曲がりチャネル第2出口30から排出される。第2の曲がりチャネル12で得られた第2チャネル濃縮水は、第2の曲がりチャネル第1出口28から排出される(以上が固液分離工程)。
【0023】
第1の曲がりチャネル10と第2の曲がりチャネル12とを同一平面上に中心を略同一として二重の渦となるように配置してセルを構成することによって、セルの枚数を増やさなくても多段にすることができるため、装置コストを低減することができる。
【0024】
図2に曲がりチャネルの流路の断面を示すが、固体粒子(例えば懸濁物質や凝集物)を含む被処理液が被処理液入口から渦巻き状チャネルに導入されると、矩形状の流路の断面には二次流れ(ディーン渦)が生じる。これは遠心力による外向きの流れと、直進しようとする流れが外壁により強制的に曲げられることによる内向きへの圧力によるものである。
【0025】
固体粒子はこの二次流れ(ディーン渦)の中では内周側に集まるとされるが、固体粒子の密度、流路中を流れる流体の流束、流路の曲率等のバランスによっては、固体粒子が外周側に集まる場合もある。この場合には、曲がりチャネルは、流路の内周側から分かれた処理液出口と、流路の外周側から分かれた濃縮液出口と、を有していてもよい。曲がりチャネルは、曲がりチャネルにおける固体粒子の密度、流路中を流れる流体の流束、流路の曲率等のバランスを調整することにより、固体粒子と液体との密度差と、重力と、流体力学的作用とによって、被処理液から固体粒子を分離することができる。
【0026】
曲がりチャネルは、曲率を有する壁面を含む流路を有するものであればよく、特に制限はない。曲がりチャネルは、曲率を有する壁面を含む1つの流路を有する配管が渦巻き状に形成されたものである。曲がりチャネルの流路の断面形状は、矩形状、円状、楕円状等が挙げられ、ディーン渦の形成のためには、流路の断面形状が矩形状であることが望ましい。すなわち、曲がりチャネルは、上壁面と下壁面と曲率を有する側壁面とを含む流路を有する。
【0027】
被処理液の流量に応じて曲がりチャネルの内側に固体粒子が濃縮されるのか、外側に濃縮されるのかが変わるため、チャネル第1出口およびチャネル第2出口は、被処理液の流量に応じて適宜変更してもよい。
【0028】
第2の曲がりチャネル12で第1の曲がりチャネル10で得られた水をさらに濃縮したい場合には、第1の曲がりチャネル10の出口のうち固体濃度の高い方を、第2の曲がりチャネル入口22に接続すればよい。
【0029】
第2の曲がりチャネル12で第1の曲がりチャネル10で得られた水の固体濃度をさらに下げたい場合には、第1の曲がりチャネル10の出口のうち固体濃度の低い方を、第2の曲がりチャネル入口22に接続すればよい。
【0030】
曲がりチャネルは、固体粒子の分離の目的に応じて決められた所定の曲率、長さ、および幅を有することが好ましい。
【0031】
第1の曲がりチャネル10と第2の曲がりチャネル12とは必ずしも同じ幅、長さ、曲率半径でなくてもよく、固体粒子の分離性等に応じて適宜設計すればよいが、同一平面上に中心を略同一として二重の渦となるように配置する。第1の曲がりチャネル10と第2の曲がりチャネル12は、中央部を始点として同一平面に沿って互いに略並行に配設して2重渦巻状に旋回されて形成されている。
【0032】
固体粒子の分離に最適となる曲がりチャネルの仕様は、固体粒子の性状(密度、粒子径等)によって変化するため、流動解析ソフトを用いて決定することが望ましい。流動解析ソフトとしては、例えば、「ANSYS Fluent」(ANSYS社)等が挙げられる。
【0033】
ここでは、
図1に示すような第1の曲がりチャネル10と第2の曲がりチャネル12とを同一平面上に中心を略同一として二重の渦となるように配置した2段のセルを例として説明したが、3つ以上の曲がりチャネルを同一平面上に中心を略同一として3段以上の多重の渦となるように配置した多段のセルとしてもよい。
【0034】
この場合は、複数の曲がりチャネルのうちの1つの曲がりチャネルの少なくとも2つある出口のうちの1つが他の1つの曲がりチャネルの入口に接続されて、複数の曲がりチャネルが直列に接続されればよい。すなわち、第1の曲がりチャネルの2つある出口のうちの1つを第2の曲がりチャネル入口に接続して、以下、第(n-1)の曲がりチャネルの2つある出口のうちの1つを第nの曲がりチャネル入口に接続して、第1の曲がりチャネル~第nの曲がりチャネルを順次直列に接続すればよい(nは、2以上の整数)。多段セルの場合の段数には,特に制限はないが、製造し易さ等の点から2段(n=2)であることが好ましい。
【0035】
固液分離の対象となる被処理液は、懸濁物質等の固体粒子を含む水であればよく、特に制限はない。被処理液としては、例えば、被処理水中に無機凝集剤や高分子凝集剤等の凝集剤を添加して、懸濁物質等を凝集させてフロックを形成する凝集処理で得られる凝集フロックを含む水や、原料成分の粒子状残渣等を含む飲料水等が挙げられる。
【0036】
本実施形態に係る固液分離セルは、例えば、被処理水に凝集剤を添加するための凝集剤添加手段と、凝集剤が添加された被処理水を通水して固液分離を行い、濃縮水と処理水とに分離する固液分離手段と、処理水の水質を測定する処理水水質測定手段と、を備える水質測定装置における固液分離手段として用いることができる。本実施形態に係る固液分離セルは、例えば、特開2019-181342号公報で開示されたジャーテスタ等に用いることができる。固液分離チャネルの大きさをほとんど変えることなく、特開2019-181342号公報で開示された曲がりチャネルより長い固液分離機能を有することによって、より適切な固液分離が可能となる。
【0037】
[固液分離セルの製造方法]
上記固液分離セルは、例えば、次の方法によって製造すればよい。
図3に固液分離セルの製造方法の一例を示す。
【0038】
第1板状部材50の第1表面(第1板状部材第1表面)60に、曲がりチャネルの流路として渦巻き形状の複数の溝を同一平面上に中心を略同一として多重の渦となるように形成する(溝形成工程)。例えば、
図1に示すように、第1の曲がりチャネル10の流路となる第1の溝54と、第2の曲がりチャネル12の流路となる第2の溝56とを、中央部を始点として終点が少なくとも2つの出口に分岐するようにそれぞれ形成する。次に、第1の溝54と第2の溝56を形成した第1板状部材第1表面60に、第2板状部材52の第1表面(第2板状部材第1表面)62を接着剤等により貼り合わせてセルを形成する(貼り合わせ工程)。これによって、第1の溝54と第2の溝56が第2板状部材52によって塞がれて、第1の曲がりチャネル10の流路および第2の曲がりチャネル12の流路が形成される。第1の曲がりチャネル10の流路となる第1の溝54と、第2の曲がりチャネル12の流路となる第2の溝56との間に、流路からの漏洩を抑制するための漏洩抑制部材として例えば渦巻き形状のパッキンを着脱可能に配置してもよい。
【0039】
第2板状部材52における、第1の曲がりチャネル10の流路である第1の溝54の2つある出口のうちの1つとなる終点と、第2の曲がりチャネル12の流路である第2の溝56の始点に相当する箇所に第2板状部材52を貫通する貫通孔64,66をそれぞれ形成する。この貫通孔64と貫通孔66とを配管等の接続部材32によって接続して、第1の曲がりチャネル10の流路である第1の溝54と、第2の曲がりチャネル12の流路である第2の溝56とを直列に接続する(接続工程)。
【0040】
第1板状部材50、第2板状部材52として用いられる板状部材としては、例えば、ポリカーボネート板、アクリル板、塩化ビニル等の樹脂板、ステンレス等の金属板等が挙げられる。耐腐食性、加工の容易さ等の点から、ポリカーボネート板、アクリル板等の樹脂板が好ましい。
【0041】
溝の形成は、切削加工装置、例えば、高速回転する先端の刃によって切削加工を行うことができるトリマー等を用いて行えばよい。
【0042】
第1の溝54および第2の溝56の幅は、例えば、3~15mmの範囲、深さは、例えば、1~10mmの範囲とすればよい。
【0043】
接続部材32は、例えば、ポリカーボネート、テフロン(登録商標)等の樹脂、ステンレス等の金属等で構成された配管(チューブ)である。
【実施例0044】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
<実施例1>
幅450mm×長さ600mm×厚さ20mmのアクリル板の第1表面に、第1の曲がりチャネルおよび第2の曲がりチャネルの流路として渦巻き形状の2つの矩形状の溝(幅5mm、深さ2.5mm、4.5巻き)を同一平面上に中心を略同一として2重の渦となるように形成した。次に、溝を形成した板状部材の第1表面に、幅450mm×長さ600mm×厚さ20mmのポリカーボネート板を貼り合わせてセルを形成した。このとき、第1の溝と第2の溝との間に渦巻き形状のパッキン(材質:エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM))を配置した。第1の溝の2つある出口のうちの1つとなる終点と、第2の溝の始点に相当する箇所に貫通孔をそれぞれ形成し、これらの貫通孔をチューブ(材質:テフロン(登録商標))で接続して、第1の曲がりチャネルの流路と第2の曲がりチャネルの流路とを直列に接続した。
【0046】
<比較例1>
幅450mm×長さ600mm×厚さ20mmのアクリル板の第1表面に、曲がりチャネルの流路として渦巻き形状の1つの矩形状の溝(幅5mm、深さ2.5mm、4.5巻き)を形成した。次に、溝を形成した板状部材の第1表面に、幅450mm×長さ600mm×厚さ20mmのポリカーボネート板を貼り合わせてセルを形成した。これと同じセルをもう1つ作製した。一方のセルの溝の2つある出口のうちの1つとなる終点と、もう一方のセルの溝の始点に相当する箇所に貫通孔をそれぞれ形成し、これらの貫通孔をチューブ(材質:テフロン(登録商標))で接続して、第1の曲がりチャネルの流路と第2の曲がりチャネルの流路とを直列に接続した。
【0047】
実施例1の固液分離セルと比較例1の固液分離セルをそれぞれ用いて、被処理液(濁度標準物質であるカオリンの懸濁水、濁度3.2度)の固液分離処理を行ったところ、結果は、実施例1の第2の曲りチャネルの2つの出口の処理水のうち清澄なほうの濁度が1.2度、比較例1の第2の曲りチャネルの2つの出口の処理水のうち清澄なほうの濁度が1.3度であり、ほぼ同等の分離性能が得られた。
【0048】
比較例1の固液分離セルは4枚の板状部材を用いてセルを作製したのに対して、実施例1の固液分離セルは2枚の板状部材を用いてセルを作製したことによって、装置コストを低減することができた。
1 固液分離セル、10 第1の曲がりチャネル、12 第2の曲がりチャネル、20 第1の曲がりチャネル入口、22 第2の曲がりチャネル入口、24 第1の曲がりチャネル第1出口、26 第1の曲がりチャネル第2出口、28 第2の曲がりチャネル第1出口、30 第2の曲がりチャネル第2出口、32 接続部材、50 第1板状部材、52 第2板状部材、54 第1の溝、56 第2の溝、60 第1板状部材第1表面、62 第2板状部材第1表面、64,66 貫通孔。