(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096480
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】流体処理装置
(51)【国際特許分類】
H01J 65/00 20060101AFI20230630BHJP
H01J 61/35 20060101ALI20230630BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20230630BHJP
C02F 1/32 20230101ALN20230630BHJP
【FI】
H01J65/00 B
H01J61/35 F
B01J19/12 C
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212285
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】至極 稔
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 繁樹
【テーマコード(参考)】
4D037
4G075
5C043
【Fターム(参考)】
4D037AB01
4D037BA18
4D037BB04
4G075AA02
4G075BA04
4G075BA05
4G075CA33
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB24
4G075EB33
4G075EC06
4G075EC09
4G075EC21
4G075FA03
4G075FB02
5C043BB01
5C043DD31
5C043DD33
(57)【要約】
【課題】被処理流体への紫外線照射を効率的に進めることが可能な流体処理装置を提供する。
【解決手段】流体処理装置は、内管と、内管を取り囲むように設けられた外管と、内管と外管との間に挟まれた空間内に放電用ガスが充填されてなる放電空間と、放電空間に電圧を印加するための第一電極及び第二電極と、内管の内部に設けられ、被処理流体が流通される流路と、を備え、流路は、被処理流体を内管の内周壁に近付けるように案内する流体制御部を有する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と、
前記内管を取り囲むように設けられた外管と、
前記内管と前記外管との間に挟まれた空間内に放電用ガスが充填されてなる放電空間と、
前記放電空間に電圧を印加するための第一電極及び第二電極と、
前記内管の内部に設けられ、被処理流体が流通される流路と、を備え、
前記流路は、前記被処理流体を前記内管の内周壁に近付けるように案内する流体制御部を有する、流体処理装置。
【請求項2】
前記流路は、前記内管に挿通された流路管で構成されている、請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項3】
前記流路は、前記内管の管軸方向に延びており、前記流体制御部は、前記流路に挿通され、前記管軸方向に見たとき前記流路の断面積の1/2以上を占有する、請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項4】
前記流体制御部は、前記流路の前記放電空間に対向する領域のうち前記管軸方向の20%以上の領域に設けられる、請求項3に記載の流体処理装置。
【請求項5】
前記流体制御部は、前記管軸方向に間欠的に設けられるバッフル板である、請求項3に記載の流体処理装置。
【請求項6】
前記内管と前記流路管は、間隙を有するように配置されている、請求項2に記載の流体処理装置。
【請求項7】
前記外管は、紫外線反射部で覆われている、請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項8】
前記第一電極は前記外管に設けられ、かつ前記第二電極は前記内管に設けられており、前記第二電極に高電圧が印加され、かつ前記第一電極に低電圧が印加される、請求項1に記載の流体処理装置。
【請求項9】
前記流体制御部は、前記管軸方向の端部に、前記被処理流体の流通を維持する流通形成部が形成されている、請求項3に記載の流体処理装置。
【請求項10】
前記流路管は、前記内管よりも長尺であり、前記内管の管軸方向の両端よりも突出する、請求項2に記載の流体処理装置。
【請求項11】
前記流路管は、両端部にそれぞれ流体導入部及び流体導出部を備えており、
前記流体導入部及び流体導出部の流路径は、前記流路管の流路径よりも小さい、請求項2に記載の流体処理装置。
【請求項12】
前記流体導入部及び流体導出部の少なくとも一方には、前記流路管の管軸方向に直交する方向に窪んだ凹部が形成されている、請求項11に記載の流体処理装置。
【請求項13】
前記外管の外表面には、オゾン生成光を減衰させる減衰部が設けられている、請求項1に記載の流体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体処理装置に関し、特に紫外線を流体に照射して処理を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体中に含まれる微量の有機成分(TOC:Total Organic Carbon)を分解するため、波長200nm以下の紫外線を利用して溶液中のTOCを分解する装置が知られている。例えば、下記特許文献1では、エキシマランプの内部に被処理液体を流通させ、流通路の周囲から紫外線を照射する処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のエキシマランプは、内管と外管の間に放電空間を形成し、内管内部に被処理流体を流通させる構造であるが、紫外線は透過率が低いため、被処理流体への紫外線照射を効率的に進めることが困難であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被処理流体への紫外線照射を効率的に進めることが可能な流体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る流体処理装置は、内管と、
前記内管を取り囲むように設けられた外管と、
前記内管と前記外管との間に挟まれた空間内に放電用ガスが充填されてなる放電空間と、
前記放電空間に電圧を印加するための第一電極及び第二電極と、
前記内管の内部に設けられ、被処理流体が流通される流路と、を備え、
前記流路は、前記被処理流体を前記内管の内周壁に近付けるように案内する流体制御部を有するものである。
【0007】
この構成によれば、内管の内周壁の近くに被処理流体を流通させることができるため、内管からの紫外線が被処理流体に照射されやすい。その結果、被処理流体への紫外線照射を効率的に進めることができる。
【0008】
また、本発明に係る流体処理装置において、前記流路は、前記内管に挿通された流路管で構成されている、という構成でもよい。
【0009】
この構成によれば、流路管が内管と別体として構成されるため、内管に被処理流体が接することがなくなり、内管は、被処理流体からの圧力、熱変化の影響を受けにくい。
【0010】
また、本発明に係る流体処理装置において、前記流路は、前記内管の管軸方向に延びており、前記流体制御部は、前記流路に挿通され、前記管軸方向に見たとき前記流路の断面積の1/2以上を占有する、という構成でもよい。
【0011】
この構成によれば、流路内の被処理流体は、流体制御部の周囲を流れるため、内管の内周壁の近くを流れることとなる。
【0012】
また、本発明に係る流体処理装置において、前記流体制御部は、前記流路の前記放電空間に対向する領域のうち前記管軸方向の20%以上の領域に設けられる、という構成でもよい。
【0013】
この構成によれば、流体制御部としての機能が効果的に発揮される。
【0014】
また、本発明に係る流体処理装置において、前記流体制御部は、前記管軸方向に間欠的に設けられるバッフル板である、という構成でもよい。
【0015】
この構成によれば、バッフル板によって被処理流体が流路内で滞留しやすくなるため、被処理流体への紫外線照射を効率的に進めることができる。
【0016】
また、本発明に係る流体処理装置において、前記内管と前記流路管は、間隙を有するように配置されている、という構成でもよい。
【0017】
この構成によれば、内管が熱膨張したり、流路管が水圧で膨張したりした場合であっても、両者への負荷を緩和することができる。
【0018】
また、本発明に係る流体処理装置において、外管は、紫外線反射部で覆われている、という構成でもよい。
【0019】
この構成によれば、外管から外方に放射された紫外線を内管側へ反射させ、紫外線の利用効率を高めることができる
【0020】
また、本発明に係る流体処理装置において、前記第一電極は前記外管に設けられ、かつ前記第二電極は前記内管に設けられており、前記第二電極に高電圧が印加され、かつ前記第一電極に低電圧が印加される、という構成でもよい。
【0021】
第二電極は、高電圧が印加されるため、第一電極よりも高温になるが、第二電極は、対向する流路内を通過する被処理流体により熱が奪われるため、全体としての温度を平準化し、内管に生じる熱膨張による応力を低減する効果が得られる。
【0022】
また、本発明に係る流体処理装置において、前記流体制御部は、前記管軸方向の端部に、前記被処理流体の流通を維持する流通形成部が形成されている、という構成でもよい。
【0023】
この構成によれば、被処理流体を連続して処理することができる。
【0024】
また、本発明に係る流体処理装置において、前記流路管は、前記内管よりも長尺であり、前記内管の管軸方向の両端よりも突出する、という構成でもよい。
【0025】
この構成によれば、内管から放射された紫外線の利用効率を高めることができる。また、内管の両端で流路管を固定しやすい。
【0026】
また、本発明に係る流体処理装置において、前記流路管は、両端部にそれぞれ流体導入部及び流体導出部を備えており、
前記流体導入部及び流体導出部の流路径は、前記流路管の流路径よりも小さい、という構成でもよい。
【0027】
この構成によれば、流路管内にて管軸方向に移動可能な流体制御部を設けた場合であっても、流体導入部及び流体導出部の端部によって流体制御部の移動を規制することができる。
【0028】
また、本発明に係る流体処理装置において、前記流体導入部及び流体導出部の少なくとも一方には、前記流路管の管軸方向に直交する方向に窪んだ凹部が形成されている、という構成でもよい。
【0029】
この構成によれば、流体導入部及び流体導出部に継手部を接続する場合であっても、流体の圧力で継手部が流体導入部及び流体導出部から抜けるのを防止できる。
【0030】
また、本発明に係る流体処理装置において、前記外管の外表面には、オゾン生成光を減衰させる減衰部が設けられている、という構成でもよい。
【0031】
この構成によれば、オゾン生成光や、オゾン生成光により生成したオゾンによって樹脂製の継手部等が劣化することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】第一実施形態に係る流体処理装置の模式的な断面図
【
図2】第二実施形態に係る流体制御部及び流路管の斜視図
【
図3】第三実施形態に係る流体制御部及び流路管の斜視図
【
図4】第四実施形態に係る流体制御部及び流路管の斜視図
【
図5】第五実施形態に係る流体制御部及び流路管の斜視図
【
図6】第六実施形態に係る流体制御部及び流路管の斜視図
【
図7】第七実施形態に係る流体制御部及び流路管の斜視図
【
図8】第八実施形態に係る流体制御部及び流路管の斜視図
【
図9】第九実施形態に係る流体制御部及び流路管の斜視図
【
図10】第十実施形態に係る流体処理装置の模式的な断面図
【
図11】第十一実施形態に係る流体処理装置の模式的な断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に係る流体処理装置の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比は必ずしも実際の寸法比と一致しておらず、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0034】
[第一実施形態]
図1Aは、第一実施形態に係る流体処理装置の模式的な断面図である。流体処理装置1は、内管11と、内管11を取り囲むように設けられた外管12とを備える。また、流体処理装置1は、内管11の内部に挿通された流路管13を備える。流路管13内には、被処理流体が流通する。内管11、外管12、及び流路管13は、いずれも石英ガラスで構成される。
【0035】
内管11と外管12との間に挟まれた放電空間10内には、所定の放電用ガスが充填されている。本実施形態では、内管11と外管12との間の閉鎖空間内に放電用ガスとしてキセノンガスが充填され、放電空間が形成されるものとして説明する。
【0036】
外管12の外周壁には、第一電極21が設けられている。内管11の内周壁には、第二電極22が設けられている。第一電極21は、電源の低電圧側に接続され、第二電極22は、電源の高電圧側に接続される。第二電極22は、第一電極21に比べて放電空間10に接する面積が小さく、かつ電源の高電圧側に接続されるため、第一電極21よりも高温になる。しかし、第二電極22は、対向する流路管13内を通過する流体により熱が奪われるため、全体としての温度を平準化し、内管11に生じる熱膨張による応力を低減する効果が得られる。これにより、内管11の熱歪みの発生を抑制することができる。
【0037】
第一電極21と第二電極22との間に所定の電圧が印加されると、放電空間10内に電圧が印加され、放電プラズマが発生する。放電用ガスは、電圧を印加した際の放電によって波長200nm以下の真空紫外光を放射するものが用いられる。例えば、放電用ガスとしてXeガスを用いる場合には、このプラズマにより放電空間10内のXe原子が励起され、エキシマ励起分子Xe2
*が生成される。この励起分子Xe2
*が基底状態に戻るときにエキシマ発光を発生する。Xeエキシマ光は、172nmにピークを有するスペクトルを示す。
【0038】
内管11及び外管12は円筒管である。内管11の外径は、外管12の内径に対して0.5以上の比率であるのが好ましい。これにより、放電空間10の厚みを薄くすることができるため、内管11の内部への紫外線取り込み効率が高くなり、効率的に流路管13へ紫外線を照射することができる。
【0039】
外管12は、紫外線反射部で覆われている。これにより、外管12から外方に放射された紫外線を内管11側へ反射させ、紫外線の利用効率を高めることができる。紫外線反射部としては、外管12の外周壁に形成された反射コートが例示される。ただし、第一電極21が、紫外線反射部の機能を有していてもよい。
【0040】
また、外管12の外表面には、オゾン生成光(200nm以下の紫外線)を減衰させる減衰部14が設けられているのが好ましい。オゾンはオゾン生成光と酸素により生成されるため、減衰部14は、オゾン生成光が外気と当たらないような遮光性を持つものであれば特に限定されない。減衰部14としては、アルミナ、シリカを外管12の外表面にコーティングしたものが例示される。
【0041】
第一電極21は、金属製のテープ等で構成される。上記のように、第一電極21は、紫外線反射部の機能を持たせるため、好ましくは紫外線を反射する材質で構成されるのが好ましい。
【0042】
第二電極22は、紫外線を透過する又は遮光面積の少ない形状、材質で構成される。第二電極22は、例えば網目状、メッシュ状、コイル状等の形状を有する金属で構成される。
【0043】
本実施形態の流路管13は、内管11と一体でなく、別部材となっている。流路管13が内管11と別体として構成されることで、内管11に被処理流体が接することがなくなり、内管11は、被処理流体からの圧力、熱変化の影響を受けにくい。また、内管11が被処理流体で過冷却されることもなく、熱歪みの影響も小さくなる。さらに、発光部(放電空間10)と流通部(流路管13)が分けられることで、仮に発光部が破損した場合にも被処理流体が外部に漏れることがない。
【0044】
従来のように内管11が流路管を兼ねる構造の場合、内管11の耐久性を高めるため肉厚の石英ガラスを用いる必要があった。しかし、ガラス肉厚が大きいほど耐久性を高められるが、紫外線の透過率を低下させてしまうという問題がある。流路管13を内管11と別部材とすることで、内管11のガラス肉厚を薄くできるため、そのような問題を回避できる。
【0045】
流路管13と内管11の間には間隙が設けられている。これにより、内管11が熱膨張したり、流路管13が水圧で膨張したりした場合であっても、両者への負荷を緩和することができる。流路管13と内管11の間の隙間には第二電極22が配置される。
【0046】
流路管13は、内管11よりも長尺である。そして、流路管13は、内管11の両端からそれぞれ突出するように配置されている。これにより、内管11から放射された紫外線の利用効率を高めることができる。また、内管11の両端で流路管13を固定しやすい。
【0047】
流路管13は、両端部にそれぞれ流体導入部131及び流体導出部132を備えている。流体導入部131と流体導出部132は、それぞれ円筒管である。流体導入部131及び流体導出部132の管径(流路径)は、流路管13の管径(流路径)よりも小さく形成されている。流体導入部131及び流体導出部132には、不図示の継手部が接続される。流路管13は、流体導入部131及び流体導出部132に接続される段差部133を備える。
【0048】
流体導入部131及び流体導出部132は、その外周壁部分に凹部131a,132aがそれぞれ形成されている。窪んだ凹部131a,132aは、流路管13の管軸方向に直交する方向に窪んでいる。凹部131aは、流体導入部131の周方向に沿って形成される。また、凹部132aは、流体導出部132の周方向に沿って形成される。これにより、流体の圧力で継手部が流体導入部131及び流体導出部132から抜けるのを防止できる。
【0049】
流路管13の内部には、流路管13の管軸方向に沿って流体制御部30が設けられる。
図1Bは、流体制御部30及び流路管13の斜視図である。なお、
図1Bにおいて、流路管13は、管軸に沿って切断して示されている。
【0050】
流体制御部30は、被処理流体を内管11の内周壁に近付けるように案内する機能を有する。内管11の内周壁の近く、すなわち流路管13の内周壁の近くに被処理流体を流通させることで、内管11からの紫外線が被処理流体に照射されやすい。特に、波長が200nm以下の紫外線、主たる波長が172nmの紫外線が照射される場合、透過率が極端に低いため、被処理流体中の有機物を分解除去するためには、流体内での紫外線の光線距離をより短くすることが重要である。
【0051】
流路管13には、流路管13の管軸方向に沿って延びる主軸31が挿通されている。主軸31は、流路管13と略同軸上に配置される。これにより、流路管13内の被処理流体は、主軸31の周囲を流れるため、流路管13の内周壁の近くを流れることとなる。すなわち、第一実施形態において、主軸31が流体制御部30に相当する。主軸31は、流路管13に固定されておらず、流路管13内を移動可能である。
【0052】
流体制御部30は、管軸方向に見たとき流路管13の断面積の1/2以上を占有するのが好ましく、2/3以上を占有するのがより好ましい。第一実施形態では、主軸31の外径は9mm、流路管13の内径は11mmである。
【0053】
流体制御部30は、流路管13の放電空間10に対向する領域のうち管軸方向の20%以上の領域に設けられるのが好ましく、40%以上の領域に設けられるのがより好ましく、60%以上の領域に設けられるのが特に好ましい。流体制御部30を流路管13の放電空間10に対向する領域のうち管軸方向の20%以上の領域に設けることで、流体制御部30としての機能が効果的に発揮される。第一実施形態は、流体制御部30(主軸31)が、流路管13の放電空間10に対向する領域のうち管軸方向の略100%の領域に設けられている例である。
【0054】
また、主軸31は、主軸31の外周面から径方向に突出する複数の突起310を有する。突起310は、管軸方向に沿って延びる突条である。突起310は、管軸方向の同じ位置に複数設けられている。本実施形態では、突起310は、主軸31の周方向に等間隔に4つ設けられている。また、突起310は、管軸方向に3箇所設けられている。主軸31は、複数の突起310を有するため、突起310が流路管13の内周壁に接した場合にも、主軸31の外周面と流路管13の内周壁との間に隙間を形成することができる。
【0055】
主軸31は、管軸方向の端部に流通溝32(本発明の流通形成部の一例)が形成されている。流通溝32は、管軸方向に直交する方向に延びて、主軸31の外周面に開口している。これにより、主軸31の端面が段差部133に当接した場合であっても、主軸31の外周面と端面は連通した状態となる。その結果、流体導入部131及び流体導出部132は、流通溝32を介して常に主軸31の外周面と流路管13の内周壁との間の隙間と連通するため、被処理流体の流通が維持される。
【0056】
[第二実施形態]
第二実施形態は、流体制御部30の構成以外は第一実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。
図2は、第二実施形態に係る流体制御部30及び流路管13の斜視図である。
【0057】
流路管13には、流路管13の管軸方向に沿って延びる主軸31が挿通されており、主軸31は、管軸方向に間欠的に設けられる複数のバッフル板34を備える。第二実施形態では、主軸31に対して五つのバッフル板34が等間隔で支持されている。
【0058】
主軸31は、流路管13と略同軸上に配置される。主軸31は、軸方向の両端部31aと、両端部31aよりも細くなった中央部31bとを有する。バッフル板34は、中央部31bに支持されている。両端部31aは、径方向に突出する複数の突起310を有する。また、両端部31aには、流通溝32が形成されている。
【0059】
バッフル板34は、円板状をしており、バッフル板34の外径は、流路管13の内径よりも小さい。そのため、被処理流体は、バッフル板34の外周面と流路管13の内周壁との間に形成される間隙を流通可能である。すなわち、第二実施形態において、バッフル板34が流体制御部30に相当する。
【0060】
さらに、バッフル板34は、流路管13内を流れる被処理流体に乱流を発生させる。これにより、被処理流体を流路管13内で滞留させやすくすることができる。
【0061】
流体制御部30は、管軸方向に見たとき流路管13の断面積の1/2以上を占有するのが好ましく、2/3以上を占有するのがより好ましい。第二実施形態では、バッフル板34の外径は9mm、流路管13の内径は11mmである。
【0062】
バッフル板34の外径は、両端部31aの外径と略同じである。すなわち、主軸31の両端部31aも流体制御部30として機能することができる。また、バッフル板34は、主軸31の両端部31aと同様、径方向に突出する複数の突起310を有してもよい。
【0063】
流体制御部30は、流路管13の放電空間10に対向する領域のうち管軸方向の20%以上の領域に設けられるのが好ましく、40%以上の領域に設けられるのがより好ましく、60%以上の領域に設けられるのが特に好ましい。流体制御部30を流路管13の放電空間10に対向する領域のうち管軸方向の20%以上の領域に設けることで、流体制御部30としての機能が効果的に発揮される。具体的には、第二実施形態においては、複数のバッフル板34の管軸方向の長さ(厚み)と、主軸31の両端部31aの長さ(厚み)との合計が、流路管13の放電空間10に対向する領域での管軸方向の長さの20%以上であるのが好ましい。第二実施形態においては、バッフル板34の厚みや個数を変えることで容易に流体制御部30の領域を調整できる。
【0064】
また、流路管13と略同軸上に配置される主軸31には、流路管13の断面積の1/2以上を占有する流体制御部30が複数設けられており、前記流体制御部30は前記主軸31の長手方向の20%以上の領域に設けられるのが好ましく、40%以上の領域に設けられるのがより好ましく、60%以上の領域に設けられるのが特に好ましい。
【0065】
[第三実施形態]
第三実施形態は、流体制御部30の構成以外は第一実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。
図3は、第三実施形態に係る流体制御部30及び流路管13の斜視図である。
【0066】
第三実施形態では、主軸31の管軸方向端部に設けられた突起310aは、主軸31の端面を超えて外方へ延びている。これにより、主軸31の端面が段差部133に接近した場合であっても、突起310aが段差部133に当たるため、主軸31の外周面と端面は連通した状態となる。すなわち、第三実施形態の突起310aは、流通形成部として機能する。
【0067】
[第四実施形態]
第四実施形態は、流体制御部30の構成以外は第一実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。
図4は、第四実施形態に係る流体制御部30及び流路管13の斜視図である。
【0068】
第四実施形態では、主軸31の管軸方向端部に設けられた突起310bは、主軸31の周方向に連続して形成されており、リング状をしている。
【0069】
主軸31の端部付近には、管軸方向に直交する方向に貫通する第一穴35が形成されている。また、主軸31の端面の中心には、管軸方向に延びる第二穴36が形成されている。第二穴36は、第一穴35と連通する。これにより、主軸31の端面が段差部133に当接した場合であっても、主軸31の外周面と端面は連通した状態となる。すなわち、第四実施形態の第一穴35及び第二穴36は、流通形成部として機能する。
【0070】
[第五実施形態]
第五実施形態は、流路管13の構成以外は第四実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。
図5は、第五実施形態に係る流体制御部30及び流路管13の斜視図である。
【0071】
第五実施形態においては、第四実施形態と異なり、流路管13は、両端部に、流路管13よりも管径の小さい流体導入部131及び流体導出部132を備えていない。そのため、流路管13は、流体導入部131及び流体導出部132に接続される段差部133も備えていない。主軸31の管軸方向の移動が、第四実施形態においては、段差部133により規制されるが、第五実施形態においては、流路管13の内周壁に形成された凸部134により規制される。凸部134は、流路管13を加熱して外側から窪ませることで形成される。
【0072】
[第六実施形態]
第六実施形態は、流体制御部30の構成以外は第一実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。
図6は、第六実施形態に係る流体制御部30及び流路管13の斜視図である。
【0073】
第六実施形態では、主軸31は、主軸31の両端部に配置されるコイル37を有する。コイル37の内径は、主軸31の外径よりも大きく、コイル37の外径は、流路管13の内径よりも小さい。これにより、コイル37は、主軸31と流路管13の内周壁との間の隙間を形成するためのスペーサとして機能する。また、コイル37は、主軸31の両端面よりも突出するように配置される。これにより、主軸31の端面が段差部133に接近した場合であっても、コイル37が段差部133に当たるため、主軸31の外周面と端面は連通した状態となる。すなわち、コイル37は、流通形成部として機能する。
【0074】
[第七実施形態]
第七実施形態は、流体制御部30の構成以外は第一実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。
図7は、第七実施形態に係る流体制御部30及び流路管13の斜視図である。
【0075】
主軸31は、主軸31の外周面上で螺旋状に延びる突条311を有する。これにより、主軸31の外周面と流路管13の内周壁との間を流れる流体の経路長を長くすることができる。
【0076】
[第八実施形態]
第八実施形態は、流体制御部30の構成以外は第七実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。
図8は、第八実施形態に係る流体制御部30及び流路管13の斜視図である。
【0077】
主軸31は、主軸31の外周面上で螺旋状に延びる突条312及び突条313を有する。これにより、主軸31の外周面と流路管13の内周壁との間を流れる流体の経路長を長くすることができる。
【0078】
また、突条312と突条313の螺旋の向きは互いに反対である。これにより、被処理流体が主軸31の外周面と流路管13の内周壁との間を流れるとき、突条312に沿った流れによって生じる主軸31に加わる回転力と、突条313に沿った流れによって生じる主軸31に加わる回転力とが打ち消しあうので、流体制御部30の回転を防止できる。
【0079】
[第九実施形態]
第九実施形態は、流体制御部30の構成以外は第一実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。
図9は、第九実施形態に係る流体制御部30及び流路管13の斜視図である。
【0080】
主軸31の両端部にコイル38が接続されている。
図9の例では、コイル38は、主軸31と同じ線材から一体として形成されている。また、複数のバッフル板39が主軸31に支持されている。バッフル板39は、例えば主軸31に溶接される。バッフル板39は、径方向に突出する複数の突起390を有してもよい。
【0081】
第九実施形態は、バッフル板39の厚みが薄いため、流体制御部30(バッフル板39)の管軸方向の長さの合計が、流路管13の放電空間10に対向する領域での管軸方向の長さの20%未満となっている例である。ただし、バッフル板39によって被処理流体が流路管13内で滞留しやすくなるため、被処理流体への紫外線照射を効率的に進めることができる。
【0082】
[第十実施形態]
第十実施形態は、流路管13及び流体制御部30の構成以外は第一実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。
図10は、第十実施形態に係る流体処理装置1の模式的な断面図である。
【0083】
第十実施形態では、流体制御部30が流路管13に一体として形成されている。流路管13は、一端13aが閉塞され、かつ他端13bが開放された円筒管である。流路管13の他端13bには流体導出部132が接続されている。また、流路管13の他端13bの近くには流体導入部135が接続されている。
【0084】
流路管13の内部には、両端が開放された副流路管136が配置されている。副流路管136は、流路管13の他端13bに接合されている。副流路管136の管径と流体導出部132の管径は等しい。
【0085】
流体導入部135から導入された被処理流体は、流路管13と副流路管136との間の隙間を通って流路管13の一端13aに向かって流れる。これにより、流路管13内の被処理流体は、流路管13の内周壁の近くを流れることとなる。すなわち、副流路管136は、被処理流体を内管11の内周壁に近付けるように案内する流体制御部30として機能する。流路管13の一端13aに達した被処理流体は、副流路管136を通って流体導出部132から外部へ導出される。
【0086】
[第十一実施形態]
第十一実施形態は、流路管13及び流体制御部30の構成以外は第一実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。
図11は、第十一実施形態に係る流体処理装置1の模式的な断面図である。
【0087】
第十一実施形態では、流路管13の内部に、一端137aが閉塞され、かつ他端137bが開放された副流路管137が配置されている。副流路管137の他端137bは、流路管13の他端13bに接合されている。副流路管137には、他端137bの近くに貫通孔137cが形成されている。
【0088】
流体導入部131から導入された被処理流体は、流路管13と副流路管137との間の隙間を通って流路管13の他端13bに向かって流れる。これにより、流路管13内の被処理流体は、流路管13の内周壁の近くを流れることとなる。すなわち、副流路管137は、被処理流体を内管11の内周壁に近付けるように案内する流体制御部30として機能する。流路管13の他端13bに達した被処理流体は、貫通孔137cを介して副流路管137に流れ、流体導出部132から外部へ導出される。
【0089】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0090】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよい。
【0091】
上記の実施形態では、流路管13が内管11と別部材となっているが、これに限定されない。例えば、内管11は流路管13を兼ねてもよく、すなわち内管11の内部に直接被処理流体を流通させてもよい。このとき、第二電極22は、内管11の外周壁に設けられる。
【符号の説明】
【0092】
1 :流体処理装置
10 :放電空間
11 :内管
12 :外管
13 :流路管
14 :減衰部
21 :第一電極
22 :第二電極
30 :流体制御部
31 :主軸
32 :流通溝
34 :バッフル板
35 :第一穴
36 :第二穴
37 :コイル
38 :コイル
39 :バッフル板
131 :流体導入部
131a :凹部
132 :流体導出部
132a :凹部
133 :段差部
134 :凸部
135 :流体導入部
136 :副流路管
137 :副流路管
310 :突起
310a :突起
310b :突起
311 :突条
312 :突条
313 :突条
390 :突起