IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 愛三工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-燃料電池冷却システム 図1
  • 特開-燃料電池冷却システム 図2
  • 特開-燃料電池冷却システム 図3
  • 特開-燃料電池冷却システム 図4
  • 特開-燃料電池冷却システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009649
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】燃料電池冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04029 20160101AFI20230113BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20230113BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230113BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20230113BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20230113BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20230113BHJP
   B60L 58/33 20190101ALI20230113BHJP
【FI】
H01M8/04029
H01M8/00 Z
H01M8/04 J
H01M8/04746
B60L1/00 L
B60L3/00 H
B60L58/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113102
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 大作
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125BA09
5H125CD06
5H125EE70
5H125FF26
5H127AB04
5H127AC03
5H127CC06
5H127DB91
5H127DC75
5H127DC76
5H127DC77
5H127DC80
(57)【要約】
【課題】 燃料電池の冷却効率を低下させることなく、燃料電池流路内での冷媒の逆流を抑制する。
【解決手段】 車両に搭載された燃料電池冷却システムであって、冷媒流路が、冷却器流路と、燃料電池流路と、発熱体流路を有している。前記冷却器流路内の前記冷媒を冷却する冷却器と、前記燃料電池流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される燃料電池と、前記発熱体流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される発熱体と、前記燃料電池流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第1ポンプと、前記発熱体流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第2ポンプと、制御回路をさらに有する。前記車両の走行中に前記発熱体が作動すると、前記制御回路が、前記第2ポンプを作動させるとともに前記第1ポンプの回転数を上昇させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された燃料電池冷却システムであって、
内部に冷媒が流れる冷媒流路を備えており、
前記冷媒流路が、冷却器流路と、燃料電池流路と、発熱体流路を有しており、
前記燃料電池流路の上流端と前記発熱体流路の上流端が、前記冷却器流路の下流端に設けられた分岐部に接続されており、
前記燃料電池流路の下流端と前記発熱体流路の下流端が、前記冷却器流路の上流端に設けられた合流部に接続されており、
前記冷却器流路内の前記冷媒を冷却する冷却器と、
前記燃料電池流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される燃料電池と、
作動時に発熱し、前記発熱体流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される発熱体と、
前記燃料電池流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第1ポンプと、
前記発熱体流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第2ポンプと、
前記発熱体流路に介装された逆止弁と、
前記第1ポンプと前記第2ポンプを制御する制御回路と、
をさらに有し、
前記車両の走行中に、前記制御回路が、前記第1ポンプを作動した状態に維持し、
前記車両の走行中に前記発熱体が作動すると、前記制御回路が、前記第2ポンプを作動させるとともに前記第1ポンプの回転数を上昇させる、
燃料電池冷却システム。
【請求項2】
前記制御回路が、前記車両の走行中に前記第2ポンプを動作させるときに、前記燃料電池流路の下流端における前記冷媒の圧力が前記発熱体流路の下流端における前記冷媒の圧力よりも高くなるように前記第1ポンプの回転数と前記第2ポンプの回転数を制御する、請求項1に記載の燃料電池冷却システム。
【請求項3】
上流端が前記冷却器よりも上流側の前記冷却器流路に接続されており、下流端が前記冷却器よりも下流側の前記冷却器流路に接続されているバイパス流路と、
前記バイパス流路に流れる前記冷媒の流量を調整するバルブと、
をさらに有し、
前記車両の走行中に前記第2ポンプを作動させるときに、前記制御回路が、前記バルブの開度に応じて前記第1ポンプの回転数を調整する、請求項1または2に記載の燃料電池冷却システム。
【請求項4】
前記車両の走行中に前記第2ポンプを作動させるときに、前記制御回路が、前記冷媒の温度に応じて前記第1ポンプの回転数を調整する、請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料電池冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、燃料電池冷却システムに関する。
【0002】
特許文献1に開示の燃料電池冷却システムは、車両に搭載された燃料電池を冷却する。この燃料電池冷却システムは、内部に冷媒が流れる冷媒流路を備えている。冷媒流路には、冷媒流路内の冷媒を冷却する冷却器と、冷媒流路内の冷媒との熱交換によって冷却される燃料電池が設けられている。冷却器で冷却された冷媒が燃料電池に供給されることで、燃料電池が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-126911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池が設けられた流路と並列に、他の発熱体を冷却する流路が設けられる場合がある。以下では、燃料電池が設けられた流路を燃料電池流路といい、発熱体が設けられた流路を発熱体流路という。また、冷却器が設けられた流路を冷却器流路という。冷却器流路を通過した冷媒は、燃料電池流路と発熱体流路に分岐して流れる。燃料電池流路と発熱体流路を通過した冷媒は、合流して冷却器流路に流入する。この種の燃料電池冷却システムにおいて、発熱体流路を通過した冷媒が、燃料電池流路内に逆流する場合がある。このような逆流が生じると、燃料電池の冷却効率が低下する。また、逆流を抑制するために燃料電池流路に逆止弁を設けると、燃料電池流路の圧損が大きくなり、燃料電池の冷却効率が低下する。本明細書では、燃料電池の冷却効率を低下させることなく、燃料電池流路内での冷媒の逆流を抑制する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
車両に搭載された燃料電池冷却システムであって、内部に冷媒が流れる冷媒流路を備えている。前記冷媒流路が、冷却器流路と、燃料電池流路と、発熱体流路を有している。前記燃料電池流路の上流端と前記発熱体流路の上流端が、前記冷却器流路の下流端に設けられた分岐部に接続されている。前記燃料電池流路の下流端と前記発熱体流路の下流端が、前記冷却器流路の上流端に設けられた合流部に接続されている。前記燃料電池冷却システムが、前記冷却器流路内の前記冷媒を冷却する冷却器と、前記燃料電池流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される燃料電池と、作動時に発熱するとともに前記発熱体流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される発熱体と、前記燃料電池流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第1ポンプと、前記発熱体流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第2ポンプと、前記発熱体流路に介装された逆止弁と、前記第1ポンプと前記第2ポンプを制御する制御回路と、をさらに有する。前記車両の走行中に、前記制御回路が、前記第1ポンプを作動した状態に維持する。前記車両の走行中に前記発熱体が作動すると、前記制御回路が、前記第2ポンプを作動させるとともに前記第1ポンプの回転数を上昇させる。
【0006】
この燃料電池冷却システムでは、車両の走行中に、制御回路が第1ポンプを作動した状態に維持する。したがって、車両の走行中に燃料電池が燃料電池流路内の冷媒によって冷却される。また、車両の走行中に発熱体が作動すると、制御回路が第2ポンプを作動させる。このため、発熱体流路内に冷媒が流れ、発熱体が冷却される。また、制御回路は、第2ポンプを作動させるのとともに第1ポンプの回転数を上昇させる。したがって、第2ポンプの作動によって発熱体流路内の冷媒の圧力が高くなっても、発熱体流路から燃料電池流路へ冷媒が逆流することを抑制できる。このように、この燃料電池冷却システムでは、燃料電池流路に逆止弁を設けることなく、発熱体流路から燃料電池流路への冷媒の逆流を抑制できる。したがって、この燃料電池冷却システムでは、燃料電池の冷却効率を低下させることなく、発熱体流路から燃料電池流路への冷媒の逆流を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】燃料電池冷却システムの構成を示す冷媒回路図。
図2】ポンプ21の下限回転数R1minを例示する表。
図3図2とは別のシステムにおけるポンプ21の下限回転数R1minを例示する表。
図4】温度による制御を無くした場合のポンプ21の下限回転数R1minを例示する表。
図5】システムA、Bの間で制御規則を共通化した場合のポンプ21の下限回転数R1minを例示する表。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する一例の燃料電池冷却システムでは、前記制御回路が、前記車両の走行中に前記第2ポンプを動作させるときに、前記燃料電池流路の下流端における前記冷媒の圧力が前記発熱体流路の下流端における前記冷媒の圧力よりも高くなるように前記第1ポンプの回転数と前記第2ポンプの回転数を制御してもよい。
【0009】
この構成によれば、燃料電池流路への冷媒の逆流をより効果的に抑制できる。
【0010】
本明細書が開示する一例の燃料電池冷却システムは、上流端が前記冷却器よりも上流側の前記冷却器流路に接続されているとともに下流端が前記冷却器よりも下流側の前記冷却器流路に接続されているバイパス流路と、前記バイパス流路に流れる前記冷媒の流量を調整するバルブと、をさらに有していてもよい。前記車両の走行中に前記第2ポンプを作動させるときに、前記制御回路が、前記バルブの開度に応じて前記第1ポンプの回転数を調整してもよい。
【0011】
バイパス流路が存在する場合、バイパス流路に流れる冷媒の流量(すなわち、バルブの開度)によって冷媒流路の圧損が変化し、逆流を抑制するために適切な第1ポンプの回転数が変化する。上記のようにバルブの開度に応じて第1ポンプの回転数を調整することで、燃料電池流路への冷媒の逆流をより効果的に抑制できる。
【0012】
本明細書が開示する一例の燃料電池冷却システムは、前記車両の走行中に前記第2ポンプを作動させるときに、前記制御回路が、前記冷媒の温度に応じて前記第1ポンプの回転数を調整してもよい。
【0013】
冷媒の温度によって冷媒の粘度が変化し、燃料電池流路への冷媒の逆流の発生し易さが変化する。上記のように冷媒の温度に応じて第1ポンプの回転数を調整することで、燃料電池流路への冷媒の逆流をより効果的に抑制できる。
【実施例0014】
図1に示す実施例の燃料電池冷却システム10は、車両に搭載されている。燃料電池冷却システム10は、燃料電池12(FC:Fuel Cell)を有している。燃料電池12は、車両の走行用モータに電力を供給する。燃料電池冷却システム10は、燃料電池12を冷却する。
【0015】
燃料電池冷却システム10は、内部に冷媒が循環する冷媒流路50を有している。冷媒流路50は、冷却器流路52、燃料電池流路54、発熱体流路56、バイパス流路58を有している。
【0016】
冷却器流路52は、合流部60から分岐部62まで伸びている。冷却器流路52は、上流側流路52a、分岐流路52b、分岐流路52c、及び、下流側流路52dを有している。上流側流路52aの上流端は、冷却器流路52の上流端である合流部60に接続されている。分岐流路52b、52cは、上流側流路52aの下流側で2つに分岐した流路である。分岐流路52b、52cの下流端は、下流側流路52dの上流端に接続されている。下流側流路52dの下流端は、冷却器流路52の下流端である分岐部62に接続されている。冷却器流路52内の冷媒は、上流端である合流部60から、上流側流路52a、分岐流路52b、52c、下流側流路52dを経て下流端である分岐部62まで流れる。分岐流路52b、52cにおいては、冷媒が分岐流路52b、52cに分かれて流れる。分岐流路52bにはラジエータ14が設けられている。ラジエータ14は、外気との熱交換によって分岐流路52b内を流れる冷媒を冷却する。分岐流路52cには、ラジエータ16が設けられている。ラジエータ16は、外気との熱交換によって分岐流路52c内を流れる冷媒を冷却する。
【0017】
バイパス流路58の上流端は、冷却器流路52の上流側流路52aの途中に接続されている。バイパス流路58の下流端は、冷却器流路52の下流側流路52dの途中に接続されている。バイパス流路58と上流側流路52aとの接続部には、ロータリーバルブ20が設けられている。以下では、上流側流路52aのうち、ロータリーバルブ20よりも上流側の部分を第1部分52a-1といい、ロータリーバルブ20よりも下流側の部分を第2部分52a-2という。ロータリーバルブ20は、第1部分52a-1からバイパス流路58に流れる冷媒の流量と、第1部分52a-1から第2部分52a-2に流れる冷媒の流量を変更する。ロータリーバルブ20の開度Sが100%の場合には、第1部分52a-1内を流れる冷媒の全てが第2部分52a-2へ流れる。ロータリーバルブ20の開度Sが50%の場合には、第1部分52a-1内を流れる冷媒の半分が第2部分52a-2へ流れ、第1部分52a-1内を流れる冷媒の残りの半分がバイパス流路58へ流れる。ロータリーバルブ20の開度Sが0%の場合には、第1部分52a-1内を流れる冷媒の全てがバイパス流路58へ流れる。バイパス流路58には、イオン交換器18が設置されている。イオン交換器18は、バイパス流路58内を流れる冷媒中からイオンを除去する。冷媒には冷媒流路50を構成する配管等からイオンが溶出する。バイパス流路58(すなわち、イオン交換器18)に冷媒を流すことで、溶媒中のイオン濃度を低下させることができる。
【0018】
燃料電池流路54と発熱体流路56の上流端は、分岐部62において冷却器流路52の下流端に接続されている。燃料電池流路54と発熱体流路56の下流端は、合流部60において冷却器流路52の上流端に接続されている。
【0019】
燃料電池流路54には、ポンプ21が介装されている。ポンプ21は、燃料電池流路54内の冷媒を下流側へ送り出す。ポンプ21の下流側において、燃料電池流路54が分岐流路54aと分岐流路54bに分岐している。分岐流路54aに、燃料電池12が設置されている。燃料電池12は、分岐流路54a内を流れる冷媒との熱交換によって冷却される。分岐流路54bに、インタークーラー24が設置されている。インタークーラー24は、分岐流路54b内を流れる冷媒との熱交換によって冷却される。
【0020】
発熱体流路56には、ポンプ22とブレーキレジスタ28(BR:Brake Resistor)と逆止弁30が設置されている。ポンプ22は、発熱体流路56内の冷媒を下流側へ送り出す。ブレーキレジスタ28は、ポンプ22の下流側に設置されている。ブレーキレジスタ28は、余剰電力ヒータまたは電気ヒータと呼ばれる場合がある。ブレーキレジスタ28は、バッテリの満充電状態において車両のモータが回生動作をしたときに、回生動作によって発生した余剰電力を熱エネルギーに変換して消費する。ブレーキレジスタ28は、発熱体流路56内の冷媒との熱交換によって冷却される。逆止弁30は、ブレーキレジスタ28の下流側に配置されている。逆止弁30は、発熱体流路56内で冷媒が逆流することを防止する。
【0021】
燃料電池冷却システム10は、制御回路として、統合ECU70(統合Electronic Control Unit)とEV-ECU72(Electric Vehicle-Electronic Control Unit)を有している。EV-ECU72は、ブレーキレジスタ28等を制御する。統合ECU70は、ポンプ21、22、燃料電池12等を制御する。
【0022】
また、図示していないが、燃料電池冷却システム10は、冷媒の温度を検出する温度センサを有している。温度センサは、冷媒流路50の任意の位置に設置されている。
【0023】
次に、燃料電池冷却システム10の動作について説明する。車両が起動すると、統合ECU70は、燃料電池12を作動させることによって発電を行う。車両は、燃料電池12で生成された電力によって走行する。車両の走行中に、統合ECU70は燃料電池12を継続して動作させる。また、統合ECU70は、車両が起動すると、ポンプ21を作動させる。車両の走行中に、統合ECU70は、ポンプ21を作動した状態に維持する。ポンプ21が作動すると、燃料電池流路54と冷却器流路52によって構成される循環流路に冷媒が流れる。この循環流路内を流れる冷媒は、ラジエータ14、16によって冷却される。したがって、ラジエータ14、16によって冷却された冷媒が燃料電池流路54(特に、分岐流路54a)に流入し、燃料電池12が冷却される。したがって、燃料電池12が過度に高温になることが防止される。なお、統合ECU70は、燃料電池12の温度等に応じて、ポンプ21の回転数R1を制御する。例えば、統合ECU70は、燃料電池12の温度が高いほど、ポンプ21の回転数R1を高くする。これによって、燃料電池12の温度が適切に制御される。なお、ポンプ22が停止している状態でポンプ21が作動している場合には、逆止弁30が閉じることによって、燃料電池流路54の下流端54eから発熱体流路56へ冷媒が流入することが防止される。すなわち、逆止弁30が閉じることによって、発熱体流路56における冷媒の逆流が防止される。
【0024】
燃料電池流路54と冷却器流路52によって構成される循環流路に冷媒が循環しているときに、統合ECU70は、ロータリーバルブ20の開度Sを制御することによって、冷却器流路52の第1部分52a-1を通過した冷媒の一部または全部をバイパス流路58へ流す。これによって、統合ECU70は、イオン交換器18によって冷媒中のイオンを除去するイオン除去処理を実行する。統合ECU70は、冷媒中のイオン濃度が上昇したときに、イオン除去処理を実施する。
【0025】
バッテリの満充電状態において車両のモータが回生動作を実行すると、EV-ECU72はブレーキレジスタ28を作動させる。これによって、モータで生成される余剰電力がブレーキレジスタ28で消費される。ブレーキレジスタ28が作動すると、ブレーキレジスタ28が発熱する。EV-ECU72は、ブレーキレジスタ28を作動させると、その情報を統合ECU70へ送る。統合ECU70は、ブレーキレジスタ28が作動すると、ポンプ22を作動させる。ポンプ22が作動すると、逆止弁30が開き、発熱体流路56内の冷媒が下流側へ流れる。したがって、冷却器流路52を分岐部62まで流れた冷媒が、燃料電池流路54と発熱体流路56に分岐して流れるようになる。燃料電池流路54を通過した冷媒と発熱体流路56を通過した冷媒は、合流部60で合流して冷却器流路52へ流れる。発熱体流路56内に冷媒が流れると、発熱体流路56内の冷媒によってブレーキレジスタ28が冷却される。これによって、ブレーキレジスタ28が過度に高温になることが防止される。また、統合ECU70は、ブレーキレジスタ28の温度等に応じて、ポンプ22の回転数R2を制御する。例えば、統合ECU70は、ブレーキレジスタ28の温度が高いほど、ポンプ22の回転数R2を高くする。これによって、ブレーキレジスタ28の温度が適切に制御される。
【0026】
また、ポンプ22が作動すると、発熱体流路56の下流端56eにおける冷媒の圧力が高くなる。発熱体流路56の下流端56eにおける冷媒の圧力が燃料電池流路54の下流端54eにおける冷媒の圧力よりも高くなると、発熱体流路56の下流端56eから燃料電池流路54内に冷媒が流入する。すなわち、燃料電池流路54内で冷媒の逆流が生じる。発熱体流路56の下流端56eにはブレーキレジスタ28を通過した高温の冷媒が流れる。したがって、発熱体流路56の下流端56eから燃料電池流路54内に冷媒が流入すると、燃料電池12に高温の冷媒が供給される。これによって、燃料電池12の冷却が阻害される。このような冷媒の逆流を防止するために、統合ECU70は、ポンプ22の回転数R2に応じてポンプ21の回転数R1を調整する。
【0027】
図2は、統合ECU70が記憶しているポンプ21の回転数R1の制御規則を示している。図2の各表は、ポンプ21の下限回転数R1minを示している。統合ECU70は、ポンプ21を図2に示す下限回転数R1minよりも高い回転数R1で作動させる。図2(a)は冷媒の温度T(上述した図示しない温度センサにより検出される冷媒の温度)が60℃のときの制御規則を示しており、図2(b)は冷媒の温度Tが25℃のときの制御規則を示しており、図2(c)は冷媒の温度Tが-10℃のときの制御規則を示している。図2の各表に示すように、冷媒の温度T、ロータリーバルブ20の開度S、ポンプ22の回転数R2のそれぞれに応じてポンプ21の下限回転数R1minが定められている。図2の各条件における下限回転数R1minは、燃料電池流路54の下流端54eにおける冷媒の圧力が発熱体流路56の下流端56eにおける冷媒の圧力よりも高くなるように設定されている。
【0028】
例えば、図2(b)に示すように、ポンプ22の回転数R2が800rpmの場合には、ロータリーバルブ20の開度Sにかかわらず、ポンプ21の下限回転数R1minは0rpmである。したがって、ポンプ22が停止している状態(すなわち、ブレーキレジスタ28が停止している状態)では、ポンプ21の下限回転数R1minは0rpmである。また、図2(b)に示すように、ポンプ22の回転数R2が1500rpmであって、ロータリーバルブ20の開度Sが0%の場合には、ポンプ21の下限回転数R1minは594rpmである。なお、回転数R2が図2の表に示された各数値の間の値である場合には、図2の表に基づく補完によって下限回転数R1minが算出される。図2(b)の開度Sが0%の条件では、ブレーキレジスタ28の作動によってポンプ22が1500rpmの回転数R2で作動を開始すると、統合ECU70はポンプ21の下限回転数を0rpmから594rpmへ上昇させる。したがって、ブレーキレジスタ28の作動前にポンプ21の回転数R1が594rpm未満(例えば、400rpm)である場合には、統合ECU70は、ポンプ21の回転数R1を594rpm以上の値まで上昇させる。このように、ポンプ22の作動開始時にポンプ21の回転数R1を上昇させることで、燃料電池流路54の下流端54eにおける冷媒の圧力を上昇させることができる。このため、発熱体流路56の下流端56eにおける冷媒の圧力が燃料電池流路54の下流端54eにおける冷媒の圧力よりも高くなることを防止することができる。したがって、燃料電池流路54における冷媒の逆流を防止できる。このため、ポンプ22の作動時にも、燃料電池12を適切に冷却することができる。
【0029】
このように、車両の走行中にポンプ22が所定の回転数R2で作動を開始すると、ポンプ21の下限回転数R1minがポンプ22の回転数R2に応じた値まで上昇する。このため、統合ECU70は、上昇した下限回転数R1minよりもポンプ21の回転数R1が低い場合に、回転数R1を下限回転数R1minよりも高い値まで上昇させる。これによって、燃料電池流路54における冷媒の逆流が防止される。このように、燃料電池冷却システム10によれば、燃料電池流路54に逆止弁を設けることなく、燃料電池流路54における冷媒の逆流が防止される。したがって、燃料電池流路54における圧損を増加させることなく、燃料電池流路54における冷媒の逆流が防止される。したがって、燃料電池12の冷却効率を低下させることなく、燃料電池流路54における冷媒の逆流が防止される。なお、発熱体流路56には逆止弁30が設けられているが、ブレーキレジスタ28に対する冷却性能の要求値は燃料電池12に対する冷却性能の要求値ほど高くはないので、発熱体流路56には逆止弁30が設けられていても問題はない。また、発熱体流路56に逆止弁30を設けることで、ブレーキレジスタ28の停止中にポンプ22を作動させなくても、発熱体流路56における冷媒の逆流を防止できる。これによって、ポンプ22における電力消費を抑制できる。
【0030】
また、図2の各表に示すように、ポンプ22の回転数R2が高くなるほど、ポンプ21の下限回転数R1minが高くなる。このように、ポンプ21の下限回転数R1minが設定されていることで、冷媒の逆流が生じない範囲で適切にポンプ21の回転数R1を制御することができる。これにより、ポンプ21の回転数R1が必要以上に上昇することが防止される。
【0031】
また、図2の各表に示すように、ロータリーバルブ20の開度Sによって、ポンプ21の下限回転数R1minが異なる。ロータリーバルブ20の開度Sが変化すると、冷媒の流路の圧損が変化し、ポンプ21の適切な下限回転数R1minが変化する。したがって、ロータリーバルブ20の開度Sによってポンプ21の下限回転数R1minが異なっていることで、冷媒の逆流が生じない範囲でより適切にポンプ21の回転数R1を制御することができる。
【0032】
また、図2の各表に示すように、温度Tによって、ポンプ21の下限回転数R1minが異なる。例えば、開度Sが0%、回転数R2が2500rpmの条件における下限回転数R1minは、温度Tが60℃のときに1400rpmであり、温度Tが25℃のときに1433rpmであり、温度Tが-10℃のときに1393rpmである。温度Tが変化すると、冷媒の粘度が変化し、冷媒の流路の圧損が変化する。したがって、温度Tによってポンプ21の下限回転数R1minが異なっていることで、冷媒の逆流が生じない範囲でより適切にポンプ21の回転数R1を制御することができる。
【0033】
また、図3は、図2とは別のシステムにおけるポンプ21の下限回転数R1minを示している。すなわち、図2は燃料電池冷却システム10の一例であるシステムAについての制御規則を示しており、図3は燃料電池冷却システム10の別の一例であるシステムBについての制御規則を示している。図3の各表でも、図2の各表と同様に、温度T、開度S、回転数R2ごとにポンプ21の下限回転数R1minが設定されている。システムAとシステムBとの間では、一部の配管の配置等が異なっており、冷媒の流路の圧損が異なる。したがって、図3の各表における下限回転数R1minは、図2の各表における下限回転数R1minとは異なっている。図3の制御規則によれば、システムBの燃料電池流路54における冷媒の逆流を防止できる。
【0034】
以上に説明したように、ポンプ21の下限回転数R1minを、ロータリーバルブ20の開度S、ポンプ22の回転数R2,冷媒の温度T、及び、システムに応じて設定することで、より適切にポンプ21を制御することができる。
【0035】
なお、制御規則を簡略化するために、温度Tによる下限回転数R1minの制御をしなくてもよい。この場合、図2(a)~(c)において条件毎に下限回転数R1minの最大値を抽出することで、図4に示すように下限回転数R1minを設定してもよい。図4の制御規則によれば、温度Tが-10~60℃の範囲内にあれば、温度Tによる下限回転数R1minの変更を行わなくても、燃料電池流路54内における冷媒の逆流を防止できる。また、温度Tによる制御規則の簡略化に加えて、システムA、Bにおける制御方法を共通化してもよい。この場合、図2、3の各表において条件毎に下限回転数R1minの最大値を抽出することで、図5に示すように下限回転数R1minを設定してもよい。図5の制御規則は、システムA、Bのいずれでも冷媒の逆流を防止できる。
【0036】
なお、燃料電池流路54の下流端54eにおける冷媒の圧力が発熱体流路56の下流端56eにおける冷媒の圧力よりも高くなるように、システムの状態推定によって流量を指定して、冷媒が逆流しないように流量下限を設けてポンプの回転数を制御してもよい。
【0037】
なお、上述した実施例では、発熱体流路56に設置されている発熱体がブレーキレジスタ28であったが、他の発熱体が発熱体流路56に設置されていてもよい。
【0038】
また、上述した実施例では、バイパス流路58の上流端と冷却器流路52との接続部に設けられたロータリーバルブ20によってバイパス流路58に流れる冷媒の流量を制御した。しかしながら、バイパス流路58の途中、または、バイパス流路58の下流端と冷却器流路52との接続部に設けられた他のバルブによってバイパス流路58に流れる冷媒の流量を制御してもよい。この場合、そのバルブの開度に応じて、下限回転数R1minを設定することができる。
【0039】
また、上述した実施例では、バイパス流路58にイオン交換器18が設置されていた。しかしながら、バイパス流路58に、イオン交換器18の代わりに他の装置が設置されていてもよい。
【0040】
また、上述した実施例では、燃料電池流路54において、ポンプ21が燃料電池12の上流側に配置されていたが、ポンプ21が燃料電池12の下流側に配置されていてもよい。また、上述した実施例では、発熱体流路56において、上流側からポンプ22、ブレーキレジスタ28、逆止弁30の順にこれらの装置が配置されていたが、これらの装置の順序が異なっていてもよい。
【0041】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0042】
10:燃料電池冷却システム
12:燃料電池
14:ラジエータ
16:ラジエータ
18:イオン交換器
20:ロータリーバルブ
21:ポンプ
22:ポンプ
24:インタークーラー
28:ブレーキレジスタ
30:逆止弁
50:冷媒流路
52:冷却器流路
54:燃料電池流路
56:発熱体流路
58:イオン交換器流路
図1
図2
図3
図4
図5