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特開2023-9650軸流圧縮機及び軸流圧縮機用ディフューザ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009650
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】軸流圧縮機及び軸流圧縮機用ディフューザ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/54 20060101AFI20230113BHJP
   F04D 19/02 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
F04D29/54 D
F04D19/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113103
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】藤浪 賢
(72)【発明者】
【氏名】久慈 佳祐
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB27
3H130AB52
3H130AB62
3H130AB65
3H130AB69
3H130AC01
3H130BA66A
3H130CA07
3H130DA02Z
3H130EB00A
(57)【要約】
【課題】幅広い運転範囲(流体角度)で圧力損失が抑えられ、圧縮機効率が向上された軸流圧縮機を提供すること。
【解決手段】静翼を有する中央ケーシング21内で動翼を有するロータ22が回転駆動される流体圧縮部20と、流体圧縮部20から排出される圧縮流体を導くディフューザ30とを備え、ディフューザ30は、出口付近において流体圧縮部20側に屈曲反転され、円環状の外筒部30bが流体の流出方向に延長され、円筒形状の内筒部30cが流体の流出方向に平行とされている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に静翼が立設された略円筒状の中央ケーシング内で、外周面に動翼が立設された略円柱状のロータが回転駆動される流体圧縮部と、
外筒部及び内筒部の間に形成した流路に、前記流体圧縮部から排出される圧縮流体を導くディフューザと
を備え、
前記流体圧縮部側に屈曲反転された前記流路の出口付近において、前記外筒部は、円環状となされて前記流体の流出方向に延長され、前記内筒部は、前記流体の流出方向に平行な円筒形状とされている
ことを特徴とする軸流圧縮機。
【請求項2】
入口ケーシングを介して上流端から吸引した流体を圧縮し、圧縮した前記流体を下流端からディフューザ及び出口ケーシング室内を介して排出する流体圧縮部を備えた軸流圧縮機であって、
前記流体圧縮部は、外周面に動翼が立設された略円柱状のロータが、内周面に静翼が立設された略円筒状の中央ケーシング内で回転駆動されるように構成され、
前記ディフューザは、ディフューザ環からなり前記中央ケーシングの内周面の下流端に連続し該下流端から外方側に広がる略円錐筒状の外筒部と、前記ロータを支持する支持筒部材及び出口ケーシングの一部からなり前記ロータの外周面の下流端付近から外方側に広がる略円錐筒状の内筒部とからなり、これら外筒部と内筒部との間に略円錐筒状の流路を形成し、前記流路の出口付近が前記流体圧縮部側に屈曲反転されており、前記中央ケーシングの内周面の下流端と前記ロータの外周面の下流端との間から排出される圧縮された前記流体を前記流路を経て前記出口まで導き、
前記出口ケーシング室は、前記ディフューザの前記外筒部を囲む中空円環形状に形成された出口ケーシングからなり、前記ディフューザの出口を経た前記流体を周方向に流通させ、前記流体を、該出口ケーシング室内に連通し径方向外側に向けて前記出口ケーシングに接続された圧縮流体排出管から排出させ、
前記ディフューザの前記出口付近において、前記ディフューザの前記外筒部は、円環状となされて前記流体の流出方向に延長されており、前記内筒部は、前記流体圧縮部側に屈曲反転された部分の外周部分が、前記流体の流出方向に平行な円筒形状とされている
ことを特徴とする軸流圧縮機。
【請求項3】
前記内筒部は、前記流路が流体圧縮部側に屈曲反転された部分の手前上流部分が、前記流体の流通方向に平行な平面形状とされている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の軸流圧縮機。
【請求項4】
前記流路の前記出口付近において、前記外筒部が、円環状となされて前記流体の流出方向に延長され、前記内筒部が、前記流体の流出方向に平行な円筒形状とされていることにより、前記流路内における前記流体の境界層剥離が抑えられることを特徴とする請求項1、2又は3記載の軸流圧縮機。
【請求項5】
外筒部及び内筒部の間に、流体圧縮部から排出される圧縮流体を導き前記流体圧縮部側に屈曲反転された流路を形成し、前記流体圧縮部側に屈曲反転された前記流路の出口付近において、前記外筒部は、円環状となされて前記流体の流出方向に延長され、前記内筒部は、前記流体の流出方向に平行な円筒形状とされている
ことを特徴とする軸流圧縮機用ディフューザ。
【請求項6】
ディフューザ環からなり、軸流圧縮機の略円筒状の中央ケーシングの内周面の下流端に連続され該下流端から外方側に広がる略円錐筒状の外筒部と、
前記中央ケーシング内で回転駆動されるロータを支持する支持筒部材及び出口ケーシングの一部からなり、前記ロータの外周面の下流端付近から外方側に広がる略円錐筒状の内筒部とからなり、
前記外筒部と前記内筒部との間に略円錐筒状の流路を形成し、前記流路の出口付近が前記中央ケーシング側に屈曲反転されており、前記中央ケーシングの内周面の下流端と前記ロータの外周面の下流端との間から排出される圧縮された前記流体を前記流路を経て前記出口まで導き、
前記出口付近において、前記外筒部は、円環状となされて前記流体の流出方向に延長されており、前記内筒部は、前記中央ケーシング側に屈曲反転された部分の外周部分が、前記流体の流出方向に平行な円筒形状とされている
ことを特徴とする軸流圧縮機用ディフューザ。
【請求項7】
前記内筒部は、前記流路が前記流体圧縮部側に屈曲反転された部分の手前上流部分が、前記流体の流通方向に平行な平面形状とされている
ことを特徴とする請求項5又は6記載の軸流圧縮機用ディフューザ。
【請求項8】
前記流路の前記出口付近において、前記外筒部が、円環状となされて前記流体の流出方向に延長され、前記内筒部が、前記流体の流出方向に平行な円筒形状とされていることにより、前記流路内における前記流体の境界層剥離を抑えることを特徴とする請求項5、6又は7記載の軸流圧縮機用ディフューザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流圧縮機及び軸流圧縮機用ディフューザに関し、より詳しくは、幅広い運転範囲(流体角度)で圧力損失を抑え、圧縮機効率を向上させた軸流圧縮機及び軸流圧縮機用ディフューザに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸流圧縮機が提案されている(特許文献1)。この軸流圧縮機は、流体圧縮部を備えている。
【0003】
流体圧縮部は、入口ケーシングを介して上流端から吸引した気体を圧縮し、圧縮した気体を下流端からディフューザ(Diffuser)及び出口ケーシング室内を介して排出する。
【0004】
ディフューザは、軸流圧縮機の後方部分に位置し、流体圧縮部の出口と出口ケーシング室との間をつないでおり、流体圧縮部で圧縮された気体の流速を抑える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5453176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
軸流圧縮機においては、運転範囲(流体角度)によっては、ディフューザの出口付近における気体の境界層剥離による圧力損失が問題となる。圧力損失があると、圧縮機効率が低下する。
【0007】
本発明は、このような従来事情に鑑みてなされたものであり、幅広い運転範囲(流体角度)で圧力損失を抑え、圧縮機効率を向上させた軸流圧縮機及び軸流圧縮機用ディフューザを提供することを課題とする。
【0008】
本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0010】
(請求項1)
内周面に静翼が立設された略円筒状の中央ケーシング内で、外周面に動翼が立設された略円柱状のロータが回転駆動される流体圧縮部と、
外筒部及び内筒部の間に形成した流路に、前記流体圧縮部から排出される圧縮流体を導くディフューザと
を備え、
前記流体圧縮部側に屈曲反転された前記流路の出口付近において、前記外筒部は、円環状となされて前記流体の流出方向に延長され、前記内筒部は、前記流体の流出方向に平行な円筒形状とされている
ことを特徴とする軸流圧縮機。
(請求項2)
入口ケーシングを介して上流端から吸引した流体を圧縮し、圧縮した前記流体を下流端からディフューザ及び出口ケーシング室内を介して排出する流体圧縮部を備えた軸流圧縮機であって、
前記流体圧縮部は、外周面に動翼が立設された略円柱状のロータが、内周面に静翼が立設された略円筒状の中央ケーシング内で回転駆動されるように構成され、
前記ディフューザは、ディフューザ環からなり前記中央ケーシングの内周面の下流端に連続し該下流端から外方側に広がる略円錐筒状の外筒部と、前記ロータを支持する支持筒部材及び出口ケーシングの一部からなり前記ロータの外周面の下流端付近から外方側に広がる略円錐筒状の内筒部とからなり、これら外筒部と内筒部との間に略円錐筒状の流路を形成し、前記流路の出口付近が前記流体圧縮部側に屈曲反転されており、前記中央ケーシングの内周面の下流端と前記ロータの外周面の下流端との間から排出される圧縮された前記流体を前記流路を経て前記出口まで導き、
前記出口ケーシング室は、前記ディフューザの前記外筒部を囲む中空円環形状に形成された出口ケーシングからなり、前記ディフューザの出口を経た前記流体を周方向に流通させ、前記流体を、該出口ケーシング室内に連通し径方向外側に向けて前記出口ケーシングに接続された圧縮流体排出管から排出させ、
前記ディフューザの前記出口付近において、前記ディフューザの前記外筒部は、円環状となされて前記流体の流出方向に延長されており、前記内筒部は、前記流体圧縮部側に屈曲反転された部分の外周部分が、前記流体の流出方向に平行な円筒形状とされている
ことを特徴とする軸流圧縮機。
(請求項3)
前記内筒部は、前記流路が流体圧縮部側に屈曲反転された部分の手前上流部分が、前記流体の流通方向に平行な平面形状とされている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の軸流圧縮機。
(請求項4)
前記流路の前記出口付近において、前記外筒部が、円環状となされて前記流体の流出方向に延長され、前記内筒部が、前記流体の流出方向に平行な円筒形状とされていることにより、前記流路内における前記流体の境界層剥離が抑えられることを特徴とする請求項1、2又は3記載の軸流圧縮機。
(請求項5)
外筒部及び内筒部の間に、流体圧縮部から排出される圧縮流体を導き前記流体圧縮部側に屈曲反転された流路を形成し、前記流体圧縮部側に屈曲反転された前記流路の出口付近において、前記外筒部は、円環状となされて前記流体の流出方向に延長され、前記内筒部は、前記流体の流出方向に平行な円筒形状とされている
ことを特徴とする軸流圧縮機用ディフューザ。
(請求項6)
ディフューザ環からなり、軸流圧縮機の略円筒状の中央ケーシングの内周面の下流端に連続され該下流端から外方側に広がる略円錐筒状の外筒部と、
前記中央ケーシング内で回転駆動されるロータを支持する支持筒部材及び出口ケーシングの一部からなり、前記ロータの外周面の下流端付近から外方側に広がる略円錐筒状の内筒部とからなり、
前記外筒部と前記内筒部との間に略円錐筒状の流路を形成し、前記流路の出口付近が前記中央ケーシング側に屈曲反転されており、前記中央ケーシングの内周面の下流端と前記ロータの外周面の下流端との間から排出される圧縮された前記流体を前記流路を経て前記出口まで導き、
前記出口付近において、前記外筒部は、円環状となされて前記流体の流出方向に延長されており、前記内筒部は、前記中央ケーシング側に屈曲反転された部分の外周部分が、前記流体の流出方向に平行な円筒形状とされている
ことを特徴とする軸流圧縮機用ディフューザ。
(請求項7)
前記内筒部は、前記流路が前記流体圧縮部側に屈曲反転された部分の手前上流部分が、前記流体の流通方向に平行な平面形状とされている
ことを特徴とする請求項5又は6記載の軸流圧縮機用ディフューザ。
(請求項8)
前記流路の前記出口付近において、前記外筒部が、円環状となされて前記流体の流出方向に延長され、前記内筒部が、前記流体の流出方向に平行な円筒形状とされていることにより、前記流路内における前記流体の境界層剥離を抑えることを特徴とする請求項5、6又は7記載の軸流圧縮機用ディフューザ。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、幅広い運転範囲(流体角度)で圧力損失を抑え、圧縮機効率を向上させた軸流圧縮機及び軸流圧縮機用ディフューザを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る軸流圧縮機を模式的に示す縦断面図
図2】前記軸流圧縮機のディフューザ及び出口ケーシング室を示す要部縦断面図
図3】前記ディフューザの内筒部をなすディフューザ環の形状を示す下流側から見た破断斜視図
図4】前記ディフューザの内筒部をなすディフューザ環の形状を示す上流側から見た破断斜視図
図5】前記軸流圧縮機の出口ケーシング室を示す横断面図
図6】前記軸流圧縮機の出口ケーシング及びディフューザ環の形状を示す下流側から見た破断斜視図
図7】前記軸流圧縮機の出口ケーシング及びディフューザ環の形状を示す上流側から見た破断斜視図
図8】前記軸流圧縮機のディフューザ内の流速分布を示す図
図9】従来の軸流圧縮機のディフューザ内の流速分布を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る軸流圧縮機を模式的に示す縦断面図である。
【0015】
実施形態に係る軸流圧縮機は、図1に示すように、入口ケーシング10を介して上流端(前方端)から吸引した流体を圧縮し、圧縮した流体(単に、圧縮流体ともいう。)を下流端(後方端)からディフューザ30及び出口ケーシング室40内を介して排出する流体圧縮部20を備えた軸流圧縮機である。
【0016】
この実施形態の軸流圧縮機は、例えば、高炉 (鉄溶鉱炉、blast furnace)への空気供給に使用されるものであり、圧縮する流体は空気である。ただし、本発明に係る軸流圧縮機は、このような用途に限定されない。
【0017】
入口ケーシング10は、圧縮すべき流体が流入する中空部材であり、環状(円状又は渦巻状)の管状に形成されている。入口ケーシング10内を流通した流体は、流体圧縮部20へ送られる。
【0018】
流体圧縮部20は、中央ケーシング21内でロータ22が回転駆動されるように構成されている。中央ケーシング21は、略円筒状に構成され、内周面に多数の静翼21aが立設されている。
【0019】
ロータ22は、略円柱状に構成され、外周面に多数の動翼22aが立設されている。ロータ22は、図示しない駆動力源によって、軸回りに回転駆動される。中央ケーシング21の内周面とロータ22の外周面との間の間隔は、流体圧縮部20の上流端から下流端方向にゆくにしたがって、狭くなっており、容積が小さくなってゆく。
【0020】
流体圧縮部20においては、ロータ22が回転駆動されると、多数の動翼22aの列が、多数の静翼21aの列の間を通過して回転される。中央ケーシング21の内周面とロータ22の外周面との間の流体は、多数の動翼22aの回転により、動翼22aに追従して軸回りに回転される。動翼22a及び静翼21aは、中央ケーシング21の内周面とロータ22の外周面との間で回転される流体を、流体圧縮部20の下流端方向に導くように、周方向に対して傾斜して構成されている。中央ケーシング21の内周面とロータ22の外周面との間の流体は、流体圧縮部20の上流端から下流端方向に導かれることにより、圧縮される。圧縮流体の圧縮の程度は、図示しない制御装置により静翼可変機構を駆動制御して、静翼21aの傾き(流体角度)を変位させることにより、制御できる。生成された圧縮流体は、ディフューザ30へ送られる。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る軸流圧縮機のディフューザ及び出口ケーシング室を示す要部縦断面図である。
【0022】
ディフューザ30は、図1及び図2に示すように、軸流圧縮機の下流(後方)部分に位置し、流体圧縮部20の出口と出口ケーシング室40との間をつないでいる。ディフューザ30は、流体圧縮部20で圧縮された圧縮流体の流速を抑えるため、一般には末広がりのダイバージェント・ダクト形状に形成されている。ディフューザ30では、流体圧縮部20から送られた流体の速度エネルギーが静圧に変換されるため、ディフューザ30の出口30aでは、軸流圧縮機中でも最も圧力が高くなる。
【0023】
ディフューザ30は、中央ケーシング21の内周面の下流端に連続し該下流端から外方側に広がる略円錐筒状の外筒部30bと、ロータ22の外周面の下流端付近にある前端部から外方側に広がる略円錐筒状の内筒部30cとからなる。
【0024】
図3は、前記ディフューザの内筒部をなすディフューザ環の形状を示す下流側から見た破断斜視図である。
図4は、前記ディフューザの内筒部をなすディフューザ環の形状を示す上流側から見た破断斜視図である。
【0025】
ディフューザ30の外筒部30bは、図2図4に示すように、中央ケーシング21の下流端に接続された略円錐筒状のディフューザ環からなる。ディフューザ環は、軸対称形状である円環状に一体的に形成されている。
【0026】
内筒部30cは、図2に示すように、ロータ22の下流端(後方端)付近の外周面を回転可能に支持する略円錐筒状の支持筒部材30fと、この支持筒部材30fの下流端(後方端)に接続された出口ケーシング40bの後方部分とからなる。
【0027】
出口ケーシング40bは、圧縮された流体が流入する中空部材であり、ディフューザ30の外筒部30bを囲む中空環状(円状又は渦巻状)の管状に形成されている。出口ケーシング40bは、前縁部が、中央ケーシング21の下流端(後方端)付近の外面部に接続され、後縁部が、支持筒部材30fの下流端(後方端)に接続されている。出口ケーシング40bは、ディフューザ30の出口30aよりも後方の部分が、内筒部30cの一部となっている。出口ケーシング40bは、ディフューザ30の出口30aよりも前方の部分の内部が、出口ケーシング室40となっている。
【0028】
ディフューザ30において、外筒部30bと内筒部30cとの間には、略円錐筒状の流路30dが形成されている。流路30dは、ディフューザ30の出口30a付近において、流体圧縮部20側に屈曲反転されている。
【0029】
ディフューザ30は、中央ケーシング21の内周面の下流端(後方端)とロータ22の外周面の下流端(後方端)との間から排出される圧縮流体を、流路30dを経て出口30aまで導く。ディフューザ30の出口30a付近において、ディフューザ30の外筒部30bは、円環状となされて流体の流出方向に延長された延長部30eとなされている。
【0030】
ディフューザ30をなす内筒部30c、外筒部30b及び延長部30eは、ディフューザ環と一体的に、軸対称の回転体形状に形成されている。
【0031】
ディフューザ30においては、出口30a付近の外筒部30bが、円環状となされて流体の流出方向に延長された延長部30eとなされていることにより、ディフューザ30内における流体の境界層剥離の発生が抑えられ、幅広い運転範囲(流体角度)で圧力損失が抑えられ、圧縮機効率を向上させる。
【0032】
ディフューザ30の出口30a付近において、内筒部30cの一部である出口ケーシング40bの外周部分40aは、図2に示すように、流体の流出方向に平行な円筒形状とされている。円筒形状の外周部分40aは、ディフューザ30の外筒部30bの延長部30eとともに、ディフューザ30内における流体の境界層剥離の発生を抑え、幅広い運転範囲(流体角度)で圧力損失を抑え、圧縮機効率を向上させる。
【0033】
また、内筒部30cの一部である出口ケーシング40bの後面部分40cは、流体圧縮部20側に屈曲反転された部分の手前上流部分となり、流体の流通方向に平行な平面形状とされている。この後面部分40cも、平面形状とされていることにより、ディフューザ30内における流体の境界層剥離を抑える。
【0034】
図5は、本発明の実施形態に係る軸流圧縮機の出口ケーシング室を示す横断面図である。
図6は、前記軸流圧縮機の出口ケーシング及びディフューザ環の形状を示す下流側から見た破断斜視図である。
図7は、前記軸流圧縮機の出口ケーシング及びディフューザ環の形状を示す上流側から見た破断斜視図である。
【0035】
ディフューザ30を経た圧縮流体は、図5図7に示すように、流体圧縮部20でロータ22の回転Rにより与えられた回転エネルギーを有しているので、出口ケーシング室40では、ディフューザ30の出口30aを経た流体が周方向に流通する。出口ケーシング室40では、出口ケーシング室40内に連通し径方向外側に向けて出口ケーシング40bに接続された圧縮流体排出管50から、圧縮流体が排出される。圧縮流体排出管50は、筒形状の管であって、出口ケーシング40bに接続され、出口ケーシング室40から送られる圧縮流体を出口ケーシング40bの径方向外側に排出する。出口ケーシング室40内には、従来の軸流圧縮機において使用されていたホーン状部材が不要であるので、製造コストの低廉化を図ることができる。また、本発明に用いられるディフューザ環は、軸対称形状であるので、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0036】
出口ケーシング40bは、スムーズな円形でもよいし、複数のコ字状部材が周方向に配列されて接続されたエビ管型としてもよい。出口ケーシングをエビ管型とすることにより、各エビ管を接続するだけで出口ケーシングを製造でき、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0037】
本発明に係る軸流圧縮機のディフューザ内の流速分布と、従来の軸流圧縮機のディフューザ内の流速分布を示すことにより、本発明の効果を例証する。
図8は、前記軸流圧縮機のディフューザ内の流速分布を示す図である。
図9は、従来の軸流圧縮機のディフューザ内の流速分布を示す図である。
【0038】
実施形態の軸流圧縮機のディフューザ30においては、図8に示すように、流速分布が上流から下流に向けてほぼ一様に変化しており、境界層剥離が発生していない。
【0039】
これに対して、従来の軸流圧縮機のディフューザ内においては、図9に示すように、ディフューザ300内において流体の境界層剥離300dが生じ、圧力損失が生じ、圧縮機効率の低下要因となっている。
【0040】
実施形態の軸流圧縮機のディフューザ30においては、図8に示すように、出口30a付近において、外筒部30bが円環状となされて流体の流出方向に延長された延長部30eとなされ、内筒部30cの一部である出口ケーシング40bの外周部分40aが流体の流出方向に平行な円筒形状とされていることにより、ディフューザ30の流路30d内における流体の境界層剥離の発生が抑えられ、幅広い運転範囲(流体角度)で圧力損失が抑えられ、圧縮機効率が向上される。
【0041】
本発明に係る軸流圧縮機用ディフューザは、既設の軸流圧縮機のディフューザ部と取替えて使用することもできる。これにより、既設の軸流圧縮機であっても、ディフューザの流路内における流体の境界層剥離の発生が抑えられ、幅広い運転範囲(流体角度)で圧力損失が抑えられ、圧縮機効率が向上される効果が得られる。
【0042】
上述の実施形態中に示した種々の特定は、例示であって、何ら本発明を限定するものではない。本発明は、これらには限定されないものとして解釈されるものである。
【符号の説明】
【0043】
10 入口ケーシング
20 流体圧縮部
21 中央ケーシング
21a 静翼
22 ロータ
22a 動翼
30 ディフューザ
30a 出口
30b 外筒部
30c 内筒部
30d 流路
30e 延長部
30f 支持筒部材
40 出口ケーシング室
40a 外周部分
40b 出口ケーシング
40c 後面部分
50 圧縮流体排出管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9