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特開2023-96507充填機および充填処理にあたり行われる温度管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096507
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】充填機および充填処理にあたり行われる温度管理方法
(51)【国際特許分類】
   B67C 3/00 20060101AFI20230630BHJP
   B65B 3/00 20060101ALN20230630BHJP
【FI】
B67C3/00 Z
B65B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212326
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 賢一
【テーマコード(参考)】
3E079
3E118
【Fターム(参考)】
3E079AA02
3E079CD34
3E079DD02
3E079DD31
3E079DD32
3E079DD43
3E079FF03
3E079GG10
3E118AA02
3E118AB14
3E118BA05
3E118BA07
3E118BB02
3E118CA03
3E118CA12
3E118DA03
3E118DA20
3E118EA01
3E118EA03
3E118EA06
3E118EA08
3E118FA08
(57)【要約】
【課題】充填バルブの温度検知を安価に実現可能な充填機、および、充填バルブの検知温度に基づいて歩留まりの改善が可能な温度管理方法を提供すること。
【解決手段】容器への充填処理を行う充填機は、軸線を中心に回転可能に構成される回転体と、回転体の回転方向に並んで回転体に設けられる複数の充填バルブと、回転体に設けられ、液を貯留する液槽から充填バルブへと液を供給する複数の液管と、充填バルブおよび液管を含んで構成されている液供給系のうちの少なくとも一つに設けられ、温度を検知可能に構成されている検温部を含む少なくとも一つのRFタグと、検温部により検知される温度を示す温度データを、RFタグから回転体の回転の周期で読み取り可能に構成されている通信部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心に回転可能に構成される回転体と、
前記回転体に設けられて前記回転体の回転方向に並んでいる複数の充填バルブと、
前記回転体に設けられ、液を貯留する液槽から前記充填バルブへと前記液を供給する複数の液管と、
温度を検知可能に構成されている検温部を含み、前記充填バルブおよび前記液管を含んで構成されている液供給系のうちの少なくとも一つに設けられるRFタグと、
前記検温部により検知される前記温度を示す温度データを、前記RFタグから前記回転体の回転の周期で読み取り可能に構成されている通信部と、を備える、充填機。
【請求項2】
複数の前記液供給系と、
前記複数の液供給系に個別に設けられる複数の前記RFタグと、を備え、
前記複数のRFタグは、前記回転体の回転方向に並んで配置されている、
請求項1に記載の充填機。
【請求項3】
前記RFタグは、絶縁性を有する被覆部により覆われている、
請求項1または2に記載の充填機。
【請求項4】
前記被覆部は、前記液供給系への前記RFタグの設置に用いられる設置用領域を含む、
請求項3に記載の充填機。
【請求項5】
前記通信部により読み取られる前記温度データが示す前記温度と所定温度との比較結果を制御に用いる制御部を備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の充填機。
【請求項6】
前記制御部は、
前記充填機の起動後に前記充填バルブからの前記液の排出を開始する液排出開始部と、
前記液排出開始部により前記液の排出が開始された後、前記比較結果に基づき、前記液の排出を終了する液排出終了部と、を含む、
請求項5に記載の充填機。
【請求項7】
前記液排出開始部は、前記比較結果に応じて、前記液の排出を開始するか否かを判定する、
請求項6に記載の充填機。
【請求項8】
全数の前記液供給系に個別に設けられる複数の前記RFタグを備え、
前記液排出終了部は、全数の前記RFタグから得られる前記温度データが示す前記温度のそれぞれと前記所定温度との前記比較結果に基づき、前記温度のいずれも前記所定温度に達したのならば、前記液の排出を終了する、
請求項6または7に記載の充填機。
【請求項9】
前記制御部は、前記通信部により読み取られた前記温度データを蓄積する記憶部を備える、
請求項5から8のいずれか一項に記載の充填機。
【請求項10】
充填機による充填処理にあたり行われる温度管理方法であって、
前記充填機は、軸線を中心に回転可能に構成される回転体と、前記回転体に設けられて前記回転体の回転方向に並んでいる複数の充填バルブと、前記回転体に設けられ、液が貯留される液槽から前記充填バルブへと前記液を供給する複数の液管と、温度を検知可能に構成されている検温部を含み、前記充填バルブおよび前記液管を含んで構成されている液供給系のうちの少なくとも一つに設けられるRFタグと、前記検温部により検知される前記温度を示す温度データを、前記RFタグから前記回転体の回転の周期で読み取り可能に構成されている通信部と、を備え、
前記温度管理方法は、
前記充填機を起動させるステップと、
前記充填バルブからの前記液の排出を開始するステップと、
前記温度データが示す前記温度と所定の温度との比較結果に基づき、前記充填バルブからの前記液の排出を終了するステップと、
前記回転体に充填対象を供給し、前記充填対象への充填処理を開始するステップと、を含む、温度管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体等を容器等の充填対象に充填可能な充填機、および充填処理にあたり行われる温度管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
充填機を備えた充填ラインを稼働させながら、製品液が冷却または加温された状態で容器への充填処理を行う場合がある。充填ラインが停止すると、製品液の温度は、時間経過に伴い充填バルブや配管の内部で上昇または低下する。そのため、充填機を再起動し、充填ラインを開始するにあたり、充填バルブの吐出ノズルから、例えば、特許文献1に記載されているようなドレンパンに向けて製品液を排出させつつ、充填ラインに備わる熱交換器等の作用により製品液の温度が低下または上昇するのを待つ。この間、製品液はドレンパン等により回収され、いずれ廃棄される。製品液の排出開始から所定時間が経過したならば、充填バルブからドレンパンを退避させるとともに、充填バルブに容器を供給して充填処理を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-311492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充填機の再起動に続いて、充填バルブからドレンパン等へ製品液を排出させる時間は、経験に基づいて、充填バルブに供給される製品液の温度が規定の温度に確実に達するように、余裕を含んで一律的に定められている。そのため、製品液が必要量を超えて過剰に廃棄される可能性がある。
ここで、充填バルブは充填機の回転体と共に回転可能に構成されているから、製品液の温度を知るために充填バルブに温度センサを設けようとすると、スリップリングを用いた給電・通信用の部材の設置が必要となり、設置に要するコストが高い。製品液の廃棄量の適正化により歩留まりが改善するとしても、設置に多大なコストを要することに鑑みると、温度センサを充填機の回転系に設けることは難しい。充填機に備わる多数の充填バルブにそれぞれ温度センサおよび電線を設置するのならば、コストは著しく増加してしまう。
【0005】
同じくスリップリングを用いた配線が必要となる電磁流量計やロードセルは、充填機への搭載例があり、容器に製品液を充填するために用いられている。
充填バルブの温度検知を安価に実現できるのならば、歩留まり改善に加え、生産、洗浄・殺菌等の工程を問わず、検知温度を製品の製造に広く利用することができる。
【0006】
以上より、本開示は、充填バルブの温度検知を安価に実現可能な充填機、および、充填バルブの検知温度に基づいて歩留まりの改善が可能な温度管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る充填機は、軸線を中心に回転可能に構成される回転体と、回転体に設けられて回転体の回転方向に並んでいる複数の充填バルブと、回転体に設けられ、液を貯留する液槽から充填バルブへと液を供給する複数の液管と、温度を検知可能に構成されている検温部を含み、充填バルブおよび液管を含んで構成されている液供給系のうちの少なくとも一つに設けられるRFタグと、検温部により検知される温度を示す温度データを、RFタグから回転体の回転の周期で読み取り可能に構成されている通信部と、を備える。
【0008】
本開示に係る温度管理方法は、上述の構成要素を具備する充填機による充填処理にあたり行われる温度管理方法であって、充填機を起動させるステップと、充填バルブからの液の排出を開始するステップと、温度データが示す温度と所定の温度との比較結果に基づき、充填バルブからの液の排出を終了するステップと、回転体に充填対象を供給し、充填対象への充填処理を開始するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の充填機および温度管理工程によれば、充填機の起動に続いて、充填バルブから製品液を排出させる処理に際して、回転する液供給系に設置された検温RFタグから液供給系の温度データを周期的に読み取り、液供給系の温度が適温の閾値に達した時点で排出処理を終了させることができる。充填機の起動後、経験から決められた時間に亘り充填バルブから製品液を排出させる場合とは異なり、製品液の排出処理を適時に終了することができるので、製品液の廃棄量の適正化を図り、歩留まりを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る充填機を模式的に示す図である。
図2】充填バルブを含む液供給系、および液供給系に設けられた検温RFタグから温度データを読み取るリーダーを示す一部断面図である。
図3】充填バルブからドレンパンへの液の排出を説明するための平面模式図である。
図4】温度データの送受信および温度データを用いた制御に係る構成要素の一例を示す模式図である。
図5】検温RFタグの一例を示す平面図である。
図6】検温RFタグから周期的に検知される温度の一例を示すグラフである。
図7】充填処理にあたり行われる温度管理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔充填機の説明〕
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態に係る充填機の構成の一例を説明する。
図1に示す充填機1は、容器2を搬送しながら容器2に製品液を充填する。容器2は例えば、飲料等の製品液が充填される缶やボトルに相当する。製品液は、例えば、炭酸ガスを含む飲料や、茶の浸出液、水、果汁等に相当する。充填機1は、図示しない容器洗浄機や密封機と共に充填ラインを構成している。
【0012】
充填機1は、軸線Xを中心に回転される回転体10と、回転体10を支持する支持体11と、回転体10の回転方向Rに並んで配置される複数の充填バルブ3と、製品液が貯留される液槽としての液タンク4と、充填バルブ3および液管31を含んで構成される液供給系Lと、液供給系Lに設けられる検温RFタグ5と、通信部としてのリーダー6と、制御盤7と、ドレン装置8(図3)と、回転体10を囲む壁体9とを備えている。なお、図1には、支持体11の一部のみが示されている。
本実施形態の充填機1は、壁体9の内側で容器2への充填処理を行う。
【0013】
円環状の回転体10は、図示しない軸受により回転可能に支持され、図示しないモーター等から出力される回転駆動力により回転される。
回転体10の外周部には、全周に亘り、回転方向Rに等間隔に並んで多数の充填バルブ3が設けられている。充填バルブ3の数は、例えば、数十から120、あるいはそれ以上である。
図1等には、一部の充填バルブ3のみが示され、他の充填バルブ3の図示は省略されている。充填バルブ3は、回転体10と共に回転する。充填バルブ3に接続されている液管31も同様である。
【0014】
液タンク4は、充填バルブ3に対して上方に配置されている。本実施形態の液タンク4は、図示しないフレームを介して回転体10に支持されており、回転体10と共に回転する。液タンク4内は、大気圧に対して加圧される。
【0015】
液タンク4の底部41の中央部には、回転体10の軸線Xに沿って上下方向に延びた回転軸12が接続されている。回転軸12の内側に形成されている液流路12Aは液タンク4の内側に連通している。図示しない液供給源からロータリージョイント13の液導入ポートP1に導入される製品液は、ロータリージョイント13の固定部と回転部とに亘り設定されている流路と、液流路12Aとを通って液タンク4に供給される。
ロータリージョイント13には、液タンク4や充填バルブ3に供給される加圧用ガスの流路も設定されている。
【0016】
充填機1を含む充填ラインは、充填する製品液の種類に応じて製品液を冷却または加温する熱交換器等を液導入ポートP1よりも上流に備えている。そのため、常温に対して冷却または加温された製品液を容器2に充填することが可能である。
【0017】
製品液の流路は、液タンク4の底部41に設けられた図示しない主管から複数の液管31へと分岐している。あるいは、複数の液管31がそれぞれ底部41に設けられている。液管31はそれぞれ、回転軸12の径方向外側に向けて放射状に延び、回転体10の外端に相当する位置から下方へ充填バルブ3の位置まで延びている。
【0018】
液管31は、複数の充填バルブ3のそれぞれに個別に、1:1で対応している。そして、一つの充填バルブ3と、一つの液管31と、それらに付随する継手や弁等とから一つの液供給系Lが構成されている。そのため、充填機1は、N個の充填バルブ3と、同数であるN個の液管31とを備えており、充填バルブ3と液管31とを含んでN個の液供給系Lが構成されている。検温RFタグ5は、全数の液供給系Lにそれぞれ1つずつ設けられている。検温RFタグの構成および作用は後述する。
なお、充填バルブ3と液管31との対応関係は、必ずしも1:1には限られない。例えば、2つの充填バルブ3に対して一つの液管31が対応していてもよい。
【0019】
液タンク4に貯留される液は、液管31を通り、充填バルブ3の内部に設定されている流路に供給される。
充填バルブ3は、図2に示すように、液管31に連通してハウジング30の内部に形成されている液流路32と、液流路32に配置される弁体33と、ノズル34と、弁体33を軸方向に駆動する駆動部としてのエアシリンダ35とを備えている。エアシリンダ35により弁体33をハウジング30に対して上方に移動させることで、液流路32に連通したノズル34から液が吐出されて容器2に充填される。
【0020】
図示しない回転体から充填機1の回転体10に供給される容器2は、回転体10に設けられて各充填バルブ3のノズル34の下方にそれぞれ配置されるホルダ14に保持された状態で回転方向Rに搬送されながら、内側に製品液が充填される。充填が完了した容器2は、充填機1から下流の密封機に送られて密封される。
【0021】
各容器2に規定量の製品液を充填するため、液供給系Lを流れる製品液の流量を計測する電磁流量計36や、ホルダ14に設けられて荷重を計測するロードセル等の計器が用いられることが好ましい。ロードセルは、各ホルダ14に設けることができる。電磁流量計は、液タンク4に近い主管、あるいは各液供給系Lに設けることができる。電磁流量計、ロードセル、液タンク4に設けられる圧力計、温度計、液位計等は、回転体10に設けられている図示しない回転制御盤に電気的に接続することができる。当該回転制御盤は、液タンク4の上部に設けられているスリップリング15を介して電源や制御盤7に接続される。
【0022】
その他、充填バルブ3には、容器2内の空間に存在するガスを炭酸ガス(CO)等の不活性ガスに置換するために用いられる流路や、充填に伴う容器2からのガス抜き用の流路、充填バルブ3の内部流路の洗浄、殺菌時に、薬剤を含む液や蒸気等の洗浄・殺菌用媒体が流れる流路、あるいは、加圧空気を容器2内に導入するための流路、それらの流路に対応するエアシリンダ35等が設けられていてもよい。
【0023】
ところで、充填機1を停止させると、製品液を冷却または加温する熱交換器等から充填機1への送液が停止するので、停止からの時間経過に伴い、液供給系Lに滞留した製品液が適温から逸脱する。その後、充填機1を再起動し、充填ラインによる容器2への充填処理を再開するにあたり、停止中に適温を逸脱した製品液から適温の製品液へと置き換わるまでの間、充填バルブ3から製品液を排出させている。充填バルブ3から製品液が排出されている間に、熱交換器等から充填機1への送液が再開されることにより、製品液の温度は適温に向けて変化する。後述するように、検温RFタグ5からリーダー6に読み取られた温度データに基づいて、液供給系Lを流れる製品液が適温であるか否かを知り、適温に達していれば、充填バルブ3からの製品液の排出を停止することができる。
【0024】
充填バルブ3から排出される製品液を回収するために、例えば、図3に示すようなドレン装置8を用いることができる。ドレン装置8は、充填バルブ3のノズル34から下方へ排出される液を受けるドレンパン81と、ドレンパン81に接続されるドレンホース82と、ドレンパン81を回転体10の径方向に沿って進退移動可能に構成されている駆動機構83とを備えている。
【0025】
ドレンパン81は、充填バルブ3のノズル34の直下に配置される扇形状の第1領域811と、第1領域811から連続した下り勾配を形成する第2領域812とを備えている。充填バルブ3から液を排出させる処理中は、充填バルブ3が第1領域811の真上を回転方向Rに移動している間に限り充填バルブ3から液が排出される。それを実現するため、充填機1は、図示しない切り替え機構を備えている。
【0026】
かかる切り替え機構は、充填バルブ3に対して第1領域811の角度範囲においてのみ作動する。当該切り替え機構が作動すると、弁体33が上昇して充填バルブ3が開き、ノズル34から液が吐出される。
【0027】
第1領域811および第2領域812は、図示しない台板上に固定され、台板は、図示しない架台に設けられているエアシリンダ等の駆動機構83により、直線B上を移動可能に構成されている。
【0028】
壁体9は、充填機1よりも上流の容器洗浄機や、下流の密封機を囲む壁体と一体化され、充填ラインの装置全体の筐体(図示しない)を構成している。筐体の内側は、隔壁により複数の区画に仕切られていてもよい。当該筐体には、内側に設置されている機器の点検や整備を行うためにドアや窓が設けられている。
【0029】
回転体10を側方から囲む壁体9は、例えばステンレス鋼等の金属材料から形成され、開閉可能なドア90(図2)を備えている。ドア90の領域の一部を占める略矩形状の開口部91には、板状のガラス部材92が配置されている。ドア90の本体90Aは金属材料から形成されている。なお、ガラス部材92に代えて、例えばポリカーボネート等の樹脂材料から形成されている部材を使用することもできる。
【0030】
ガラス部材92は、充填バルブ3の全体と、液管31の下方へ延びた区間311とに亘り上下方向に延在している。ドア本体90Aとガラス部材92との間は、図示しないシールにより封止されている。
【0031】
ドア90の外側には、アンテナ61等を含むリーダー6が設置されている。リーダー6の構成は後述する。
リーダー6は、電磁波が透過するガラス部材92を介して、液供給系Lに設置されている検温RFタグ5に対向する。検温RFタグ5はいずれも、対応する液供給系Lの液管31の区間311に設置され、回転方向Rに並んでいる。回転体10が回転すると、リーダー6は、全ての検温RFタグ5に順次対向する。つまり、リーダー6は、回転体10の回転周期に応じて検温RFタグからデータを周期的に読み取り可能に構成されている。
【0032】
検温RFタグ5とリーダー6とが通信を安定して行えるように、全ての検温RFタグ5が上下方向における同じ位置に配置され、かつ、上下方向において検温RFタグ5の位置と同様の位置にリーダー6が配置されることが好ましい。ただし、通信に支障がない範囲で、上下方向における検温RFタグ5とリーダー6との位置が異なっていたり、検温RFタグ5のそれぞれの位置が上下方向にシフトしていたりすることは許容される。
本実施形態のリーダー6は、例えば、開口部91の上端の付近でドア本体90Aに固定されるブラケット93を用いて、ガラス部材92に対して平行に設置されている。その他、接着剤や粘着テープ等を用いてリーダー6をガラス部材92に貼り付けて設置することもできる。なお、リーダー6は、必ずしも壁体9に設置されている必要はなく、壁体9の外側あるいは内側で、適宜な支持部材にリーダー6を設置することができる。
【0033】
〔RFIDシステムの説明〕
以下、図4および図5を参照し、検温RFタグ5、リーダー6、および制御盤7を備えたRFIDシステムについて説明する。
検温RFタグ5は、被検知物の温度検知が可能に構成されている検温部を備えたRF(Radio Frequency)タグに相当する。
【0034】
ここで、RFタグは、RFID(Radio Frequency Identification)タグ、IC(Integrated Circuit)タグ、無線タグ等とも称され、アンテナと、ICチップとを備えている。RFタグは、電波の授受あるいは電磁誘導により、アンテナを備えた通信部と非接触で交信可能に構成されている。RFタグと、リーダーあるいはリーダライタ等の通信部とは、両者の間でデータの符号化、変調、復調、および復号化を行う。検温RFタグ5と通信部との交信距離等に応じて、公知の任意のRFタグを検温RFタグ5に採用することができる。
【0035】
検温RFタグ5は、構成の一例を図5に示すように、検温部51や図示しないメモリを含むICチップ50と、ICチップ50に接続されたアンテナ52とを備えている。検温部51により、液供給系Lをなす充填バルブ3や液管31の温度を検知する。検温部51による検知温度を製品液等の液温の管理に用いるため、液の温度変化に対して応答性良く温度変化する部位を選んで、例えば液管31に検温RFタグ5を設置することが好ましい。本実施形態において、液管31の肉厚は、充填バルブ3の液流路32の位置から外周面までの距離よりも短いため、液管31の外周部は、充填バルブ3の外周部と比べて、液温の変化に対する応答性が高い。
但し、本実施形態とは異なり、充填バルブ3の外周部に検温RFタグ5を設けることもできる。また、検温RFタグ5は、リーダー6と送受信可能な限りにおいて充填バルブ3の内部に埋め込んで設置することも可能である。そうすることで検温RFタグ5を液流路32に近づけ、応答性を向上させることができる。
【0036】
図5は、UHF(Ultra High Frequency;極超短波)周波数帯の電波方式でパッシブ型の検温RFタグ5を示している。かかる検温RFタグ5の搬送波の周波数帯は920MHz帯に相当する。検温RFタグ5には、リーダー6からの電波受信を通じて電力が供給されるため交信用の電池を内蔵しない、パッシブ型のRFタグを採用することが好ましい。そうすると、電池寿命の管理が不要である。なお、検温RFタグ5は、検温部51を作動させるための電池を内蔵していてもよい。
【0037】
図5に示す検温RFタグ5におけるアンテナ52は、検温RFタグ5の長手方向xの両側に位置するダイポールアンテナに相当し、ICチップ50は整合回路を含む。ダイポールアンテナや整合回路等は、例えば、樹脂材料からなる絶縁性の基材に、アルミニウム合金の粉体、あるいはカーボンナノチューブ等を含む導電性インクを用いて印刷され、絶縁性の保護層により覆われている。検温RFタグ5は、全体として薄いフィルム状に形成されている。
【0038】
充填機1を構成する部材の多くはステンレス鋼等の金属材料から形成されており、充填バルブ3および液管31も金属材料から形成されている。金属表面における反射により電波が拡散して交信距離が短くなったり交信不可となったりすることを避けるため、検温RFタグ5と、液供給系Lにおける設置部位との間には、空隙を設定する、あるいは、電磁波が透過する絶縁性の部材を介在させるとよい。そうした絶縁性部材と、水濡れや洗浄・殺菌時の圧力等から保護する部材とを兼ねて、本実施形態の検温RFタグ5が全体に亘り、絶縁性を有する被覆部53により覆われて封止されていてもよい。
なお、検温RFタグ5が設置される液管31や充填バルブ3の部位が、絶縁性を有する材料から形成されている場合は、当該部位に直接的に検温RFタグ5を設置することができる。その場合は、必ずしも被覆部53は必要ない。
【0039】
本実施形態の被覆部53は、樹脂材料から矩形の板状に成形されている。検温部51による温度検知の応答性に鑑みて、被覆部53は、絶縁性を有する材料の中でも熱伝導率が高い材料から形成されることが好ましい。また、充填機1の洗浄および殺菌に鑑みて、被覆部53は、耐熱性および耐薬品性が良好な材料から形成されることが好ましい。熱伝導率、耐熱性、および耐薬品性の点で、被覆部53の材料として、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)を採用することができる。
【0040】
被覆部53には、検温RFタグ5を液供給系Lに設置するための設置用領域531を与えることができる。図5に示す例では、検温RFタグ5の領域に対応する被覆部本体530に対し、長手方向xにおける両側に設置用領域531が適宜な面積で追加されている。この例の限りではなく、設置用領域531が長手方向xの一方側にのみ追加されていてもよい。また、設置用領域531は、短手方向yの一方側または両側に被覆部53の面積を拡大させるものであってもよい。
【0041】
検温RFタグ5の具体的な設置方法としては、例えば、図2に示すように、両側の設置用領域531を液管31に結束バンド54を用いて締め付けることができる。あるいは、図示を省略するが、ボルトが挿入される孔を設置用領域531に設け、設置用領域531を充填バルブ3のハウジング30等に締結することも可能である。
【0042】
リーダー6は、アンテナ61と、コントローラ62とを備えている。コントローラ62は、電源回路、復調回路、発信回路、メモリ、復号化を行う制御回路、および制御盤7と接続される入出力インタフェース部等を含んでいる。本実施形態において、リーダー6が検温RFタグ5からデータを読み取るとき、アンテナ61から発せられる電波または磁界により、検温RFタグ5のアンテナ52に電力が供給される。その電力によりICチップ50の検温部51等の回路やメモリが動作し、検温部51により検知された温度を示す温度データおよび固有のIDが、ICチップ50の回路による符号化および変調を経て、電波または磁界によりアンテナ52からリーダー6のアンテナ61へと送信される。コントローラ62は、アンテナ61に受信したデータを復調および復号化してメモリに読み出す。
【0043】
本実施形態のリーダー6のアンテナ61の偏波方式は、直線偏波および円偏波のいずれであってもよい。リーダー6による交信可能領域は、ガラス部材92に対して直交する方向に液供給系Lに向けて延びている。偏波方式に応じて、リーダー6と検温RFタグ5とを適切な位置関係に配置することが好ましい。液管31の外周壁には、検温RFタグ5のxy面をガラス部材92に向けて、かつ、液管31の区間311が延びている方向に長手方向xが一致するように検温RFタグ5が配置される。この検温RFタグ5に対し、偏波方式を問わず、リーダー6を安定して交信可能な向きに設置することができる。
【0044】
リーダー6は、N個の全ての検温RFタグ5のそれぞれから、回転体10の回転速度に応じて例えば数秒毎に温度データを読み取る。読み取られた温度データは、リーダー6から制御盤7へと出力される。
【0045】
つまり、RFID技術により、回転体10および液タンク4を含む回転系に設けられている検温RFタグ5から、壁体9等を含む固定系に設けられているリーダー6へと電線を介さずに、検温RFタグ5により検知された温度のデータを読み取ることができる。検温RFタグ5にパッシブ型のRFタグが採用されていると、リーダー6から検温RFタグ5へ給電しつつ交信することができるので、電池も、給電用の電線も必要ない。液供給系Lの温度検知に関して、スリップリング15を経由して回転系と固定系との間を電気的に接続する必要はない。
【0046】
検温RFタグ5を含むRFIDシステムの具体的な装置構成は、本実施形態の限りではない。例えば、コントローラ62の機能を制御盤7が備えている場合は、コントローラ62を省き、アンテナ61が直接的に制御盤7に接続されていてもよい。
【0047】
図6は、充填機1の高速回転時の読み取り可否の検証を目的として、120個の充填バルブ3を備えた充填機1の一つの充填バルブ3のみに検温RFタグ5を設置したときに得られた温度データを示す。なお、外乱等による異常値は除去されている。また、検証に用いた充填機1の直径は、約3.3mである。
検証試験においては、充填バルブ3のエアシリンダ35に接続される図示しないエアチューブに、液管31に設置する場合と同様に検温RFタグ5を設置した。回転体10の回転速度は、缶容器に係る生産能力で言うところの1500CPM(Can Per Minute)に相当する。
【0048】
図6に、1,2,3,4…と序数を付記しているように、回転体10の回転に伴い、一定時間t(約4秒間)毎に検温RFタグ5からの温度データの読み取り処理が実施されている。1つの読み取り処理につき、温度データが3つプロットされているように、検温RFタグ5から温度データが3回読み取られている。検証試験における読み取りの時間間隔(スキャンタイム)は、500m秒である。充填機1の回転速度が1500CPMよりも遅い場合は、スキャンタイムが同一であれば、1つの読み取り処理における読み取り回数(スキャン数)が増えていく。
1つの読み取り処理につき2回以上温度データが読み取られていれば、温度データが異常値を示しても、異常値を閾値により取り除きつつ、液供給系Lの温度を適切に把握して充填機1の制御に用いることができる。
【0049】
本検証試験により、図6に示す如く、安定した読み取りに成功したことが確認されたので、少なくとも1500CPMまでに相当する回転速度で稼働される充填機1には、リーダー6および検温RFタグ5を採用することができる。
なお、本検証試験では、高速回転時の読み取り可否の検証と併せ、回転速度を変えて運転し、以下に示す関係に基づき、スキャン数から、リーダー6による読み取りが可能な限界の角度を算出した。
スキャン数×スキャンタイム=読み取り可能時間
読み取り可能時間÷1周する時間×360°=読み取り可能角度
その結果、リーダー6に特定の充填バルブ3が正対する位置を基準として、回転方向Rの両側に±10ピッチの範囲に亘り読み取り可能であることが確認された。検証試験に用いた充填機1は120個の充填バルブ3を備えているので、読み取り可能な限界の角度は、約60°に相当する。
【0050】
本実施形態のリーダー6は、交信可能範囲内に複数の検温RFタグ5が存在する場合であっても、リーダー6に備わるアンチコリジョン機能により、各検温RFタグ5を識別しつつ複数の検温RFタグ5から温度データを一括して読み取ることが可能である。
上記の読み取り可能角度の確認結果からすれば、検温RFタグ5は、回転方向Rに移動しつつ、常時20個ずつ読み取り可能角度内に存在するので、120個の検温RFタグ5のうち20個ずつ順繰りに一括で読み取り、それらをIDにより識別しながら、複数の検温RFタグ5がそれぞれ示す液供給系Lの温度データを取得することができる。
【0051】
制御盤7は、演算装置およびメモリと、コントローラ62等に電線により接続される入出力インタフェース部と、記憶部75とを備えたコンピュータ装置であり、所謂PLC(Programmable Logic Controller)に相当する。図4には、検温RFタグ5から読み取られた温度データの利用に関する制御盤7のプログラムモジュールを示している。制御盤7は、プログラムのモジュールとして、温度比較部71と、温度データ蓄積部72と、液排出開始部73と、液排出終了部74とを備えている。
【0052】
温度比較部71は、リーダー6により読み取られて制御盤7へと入力された温度データが示す温度と、所定温度を示す閾値とを比較し、比較結果を取得する。
また、温度データ蓄積部72は、リーダー6により読み取られた温度データを記憶部75に蓄積させる。
【0053】
液排出開始部73および液排出終了部74は、充填機1の再起動時における充填バルブ3からの液の排出に関する。
液排出開始部73は、充填機1の起動に続いて充填バルブ3からの液の排出を開始する。液排出開始部73は、温度比較部71による比較結果に基づいて、液の排出を開始することが好ましい。
液排出終了部74は、液排出開始部73により液の排出が開始された後、温度比較部71による比較結果に基づいて、液の排出を終了する。
【0054】
本実施形態においては、N個の液供給系Lのそれぞれの温度データを検温RFタグ5からリーダー6に読み取り、制御盤7に取得することができる。そのため、温度比較部71は、液供給系Lのそれぞれの温度について、閾値との個別の比較結果を得ることができる。また、温度データ蓄積部72は、リーダー6により読み取られた温度データを検温RFタグ5のIDと紐付け、液供給系L毎に温度データを記憶部75に蓄積させることができる。
【0055】
N個の検温RFタグ5からそれぞれ得られる温度データが示す液供給系Lのそれぞれの温度は、必ずしも同等ではない。例えば、外乱等により一部の液管31で製品液の流量が低下すると、充填機1の起動時において当該液管を流れる製品液の温度が上昇または低下する速度が、他の液管31を流れる製品液の温度変化の速度に比べて減少する。そうすると、当該液管31の温度変化の速度も、他の液管31の温度変化の速度と比べて減少するので、当該液管31に設置された検温RFタグ5から得られる液供給系Lの温度は、他の液管31に設置された検温RFタグ5から得られる液供給系Lの温度とは相違する。
【0056】
〔温度管理工程〕
以下、図7を参照し、充填機1による容器2への充填処理にあたり制御盤7により行われる温度管理工程の手順を説明する。
充填機1や図示しない密封機等の運転が一時停止し(ステップS00)、充填ラインに設けられている冷却または加温用の熱交換器等も含めて充填ラインの作動が停止している間に、液タンク4や液供給系Lに存在する製品液の温度が、環境温度に近づき、規定の温度に対し許容される温度域(適温域)から逸脱する場合がある。
そのため、充填機1や密封機等を停止した状態から起動し(ステップS01)、充填ラインを再開するにあたっては、充填機1に容器2を供給しないで充填バルブ3から製品液を排出させつつ、充填バルブ3に供給される製品液の温度が適温に変化するまで待ち(ステップS03およびステップS04)、製品液が適温に達するまでは生産を開始しない。
【0057】
図7は、加温された製品液を充填する、つまりホット充填を行う場合の具体的処理の一例を示している。
制御盤7により、停止していた充填機1を起動させたならば(ステップS01)、温度比較部71は、リーダー6により検温RFタグ5から読み取られた温度データが示す液供給系Lの温度をホット充填用の閾値T1と比較する(ステップS02)。閾値T1は、ホット充填に適した温度域にある。
【0058】
液供給系Lの温度が閾値T1よりも高いのならば(ステップS02でYes)、充填機1の停止から起動までの時間が短い等の理由により、製品液の温度は適温に維持されている。そのため、液排出開始部73は、充填バルブ3から製品液を排出させる処理を開始しない。つまり、充填バルブ3からの液の排出処理が行われることなく、制御盤7により、回転体10への容器2の供給が再開されるとともに、充填バルブ3による容器2への充填処理が再開される(生産開始ステップS06)。
【0059】
液供給系Lの温度と閾値T1との比較においては(ステップS02)、温度比較部71は、全ての液供給系Lのそれぞれの温度と、閾値T1とを比較する。そして、液排出開始部73は、一部の液供給系Lの温度が閾値T1以下であるならば、残りの液供給系Lの温度が閾値T1よりも高いとしても、全ての充填バルブ3について、製品液を排出させる処理を開始する。
【0060】
つまり、全ての液供給系Lのそれぞれの温度のうち一つでも、閾値T1以下であるならば(ステップS02でNo)、液排出開始部73は、全充填バルブ3からの製品液の排出処理を開始する(ステップS03)。排出処理の開始にあたり、制御盤7による制御の下、駆動機構83によりドレンパン81が充填バルブ3の直下まで移動されるとともに、図示しない切り替え機構が、充填バルブ3を開く操作の可能な位置まで移動される。充填バルブ3はドレンパン81の上方を移動する間に亘り開き、ノズル34からドレンパン81に吐出された製品液は、ドレンホース82により図示しない回収タンクに送られ、いずれ廃棄される。
製品液の排出処理は、液供給系Lを流れる製品液の昇温により、液供給系Lの温度が閾値T1よりも高くなるまで継続される(ステップS03およびステップS04)。
【0061】
ステップS04においても、ステップS02と同様に、全ての液供給系Lのそれぞれの温度と、閾値T1とが比較される。
全ての液供給系Lのそれぞれの温度のいずれも、閾値T1よりも高いのならば(ステップS04でYes)、液排出終了部74は、全充填バルブ3からの製品液の排出を終了する(ステップS05)。
しかし、一部の液供給系Lの温度が閾値T1以下であるならば、残りの液供給系Lの温度が閾値T1よりも高いとしても、液排出終了部74は、全ての充填バルブ3について、製品液を排出させる処理を継続する。
【0062】
製品液の排出終了は、図示しない切り替え機構およびドレンパン81を生産時の位置まで退避させることによって行われる。
その後、回転体10への容器2の供給が再開されるとともに、充填バルブ3による容器2への充填処理が再開される(生産開始ステップS06)。
【0063】
コールド充填を行う場合の具体的処理の説明は省略する。コールド充填を行う場合は、コールド充填に適した温度域にある閾値T2を用いるとともに、上述の液供給系Lの温度の条件(ステップS02およびステップS04)を、液供給系Lの温度が閾値T2よりも低いことに置き換えれば足りる。
【0064】
検温RFタグ5から読み取られた温度データを用いる温度管理工程の手順は、上記の限りではない。
例えば、廃液中のループ(ステップS03およびステップS04)において、各液供給系Lを流れる製品液の流量差等に起因して、一部の検温RFタグ5から得られる温度の変化率が、他の検温RFタグ5から得られる温度の変化率と比べて閾値T3を超える程顕著に遅い、あるいは、一部の検温RFタグ5から得られる温度が所定時間内に閾値T1に達しない場合がありうる。こうした場合に、制御盤7のプログラムモジュールにより異常発生と判定することによれば、異常の発生した液供給系Lを検温RFタグ5から読み取られたIDにより特定するとともに、点検・整備のため、充填機1を停止させることができる。
【0065】
〔本実施形態の効果〕
以上で説明した本実施形態の充填機1および温度管理工程によれば、充填機1の起動に続いて、充填バルブ3から製品液を排出させる処理に際して、回転する液供給系Lに設置された検温RFタグ5からリーダー6に液供給系Lの温度データを周期的に読み取り、液供給系Lの温度が適温の閾値に達した時点で排出処理を終了させることができる。従来は、充填機1の起動後、経験から決められた時間に亘り充填バルブ3から製品液を排出させることで、必要量を大きく超過した量の製品液が廃棄される可能性があるところ、本実施形態によれば、製品液の排出処理を適時に終了することができ、製品液の廃棄量の適正化が図られるので、歩留まりを改善することができる。
【0066】
充填バルブ3の検知温度に基づいて歩留まりを改善する観点からは、少なくとも一つの液供給系Lに検温RFタグ5が設けられていれば足りる。但し、各液供給系Lを流れる製品液の流量差等に起因して、適温に達する時間にはばらつきがある場合は、全ての液供給系Lのいずれにも検温RFタグ5が設けられていると好ましい。そうすると、上述したように、各検温RFタグ5から得られる液供給系Lの温度と閾値T1との比較結果から、全液供給系Lの温度のいずれも適温に達するまで製品液の排出を継続することにより、全ての充填バルブ3にそれぞれ供給される製品液が適温に達している状態で生産を開始することができる。そのため、製品の品質確保に寄与することができる。
また、全数の液供給系Lのいずれにも検温RFタグ5が設けられていることによれば、各検温RFタグ5から得られる温度相互の比較により、温度変化の速度が遅い液供給系Lを特定することができるので、液供給系Lの詰まりの点検、整備に繋げることができる。
【0067】
充填機1に備えられた多数の液供給系Lの全てにそれぞれ検温RFタグ5を設けるとしても、検温RFタグ5は安価で容易に入手でき、検温RFタグ5およびリーダー6の設置にあたり、充填機1に電線やスリップリング等を設ける必要はない。
仮に有線の温度センサを液管31や充填バルブ3に設けようとすれば、給電用の電線および通信用の電線とスリップリングとの増設が必要となるのでコストが高い。液供給系Lの全数に温度センサを設けるとするならば、電線およびスリップリングの大規模な増設により、検温RFタグ5を含んでRFIDシステムを構築する場合と比べて数桁異なる程にコストが膨らんでしまう。
【0068】
検温RFタグ5は、安価でありながら、液温管理に足りる検知精度の検温部51を備えている。低廉なコストで入手および設置が可能な検温RFタグ5を含む無線接続の温度検知機構の採用によれば、高能力の充填ラインに備えられる充填機1の多数の液供給系Lの温度を個別に検知する場合でも、有線の温度センサを設置する場合と比べてコストを大幅に抑えつつ、回転体10に備えられた液供給系Lへの温度検知を実現でき、温度管理下における製品液の廃棄量を抑えて歩留まりを改善することができる。
【0069】
上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0070】
検温RFタグ5から読み取られる温度データは、生産中の温度管理にも利用することができる。つまり、充填バルブ3から容器2に製品液を充填する処理を行いながら、液供給系Lの温度を監視することができる。また、生産中に液供給系L毎に温度履歴を記憶部75に蓄積することで、トレーサビリティに寄与することができる。
さらに、検温RFタグ5から読み取られる温度データは、充填機1の洗浄、殺菌時の温度管理にも利用することができる。例えば、加温された洗浄用の液が供給される液供給系Lの温度が、十分な洗浄に必要な温度以上に保たれていることを読み取られた温度データから監視することができる。また、殺菌のために蒸気が供給される液供給系Lの温度についても同様である。
【0071】
充填機1の回転体10は、必ずしも壁体9を備えている必要はなく、屋内空間の壁等により区画されていない領域に据え付けられていてもよい。その場合は、例えば、回転体10が据え付けられたフロアに設置した架台やフレーム等の支持部によりリーダー6を支持することができる。
また、液供給系Lは、上記実施形態に限らず、適宜に構成することが可能である。例えば、液供給系Lが、充填バルブ3および液管31の他、液管31の上流側(製品液の流れにおける上流側)に接続される上流配管を含んで構成されていてもよい。当該上流配管と、液管31との対応関係は、1:1には限られず、例えば、2つの液管31に対して一つの上流配管が対応していてもよい。そうした場合に、上流配管に検温RFタグ5が設けられていてもよい。
【0072】
〔付記〕
以上で説明した充填機および温度管理方法は、以下を開示する。
〔1〕充填機1は、軸線Xを中心に回転可能に構成される回転体10と、回転体10に設けられて回転体10の回転方向Rに並んでいる複数の充填バルブ3と、回転体10に設けられ、液を貯留する液槽(4)から充填バルブ3へと液を供給する複数の液管31と、温度を検知可能に構成されている検温部51を含み、充填バルブ3および液管31を含んで構成されている複数の液供給系Lのうちの少なくとも一つに設けられるRFタグ5と、検温部51により検知される温度を示す温度データを、RFタグ5から回転体10の回転の周期で読み取り可能に構成されている通信部(6)と、を備える。
〔2〕充填機1は、複数の前記液供給系Lと、複数の液供給系Lに個別に設けられる複数のRFタグ5と、を備え、複数のRFタグ5は、回転体10の回転方向Rに並んで配置されている。
〔3〕RFタグ5は、絶縁性を有する被覆部53により覆われている。
〔4〕被覆部53は、液供給系LへのRFタグ5の設置に用いられる設置用領域531を含む。
〔5〕充填機1は、通信部(6)により読み取られる温度データが示す温度と所定温度との比較結果を制御に用いる制御部(7)を備える。
〔6〕制御部(7)は、充填機1の起動後に充填バルブ3からの液の排出を開始する液排出開始部73と、液排出開始部73により液の排出が開始された後、比較結果に基づき、液の排出を終了する液排出終了部74と、を含む。
〔7〕液排出開始部73は、比較結果に応じて、液の排出を開始するか否かを判定する。
〔8〕充填機1は、全数の液供給系Lに個別に設けられる複数のRFタグ5を備え、液排出終了部74は、全数のRFタグ5から得られる温度データが示す温度のそれぞれと所定温度との比較結果に基づき、温度が所定温度に達したのならば、液の排出を終了する。
〔9〕制御部(7)は、通信部(6)により読み取られた温度データを蓄積する記憶部75を備える。
〔10〕充填機1による充填処理にあたり行われる温度管理方法において、充填機1は、軸線を中心に回転可能に構成される回転体10と、回転体10に設けられて回転体10の回転方向Rに並んでいる複数の充填バルブ3と、回転体10に設けられ、液が貯留される液槽(4)から充填バルブ3へと液を供給する複数の液管31と、温度を検知可能に構成されている検温部51を含み、充填バルブ3および液管31を含んで構成されている液供給系Lのうちの少なくとも一つに設けられるRFタグ5と、検温部51により検知される温度を示す温度データを、RFタグ5から回転体10の回転の周期で読み取り可能に構成されている通信部(6)と、を備える。
その温度管理方法は、充填機1を起動させるステップS01と、充填バルブ3からの液の排出を開始するステップS03と、温度データが示す温度と所定の温度との比較結果(S04)に基づき、充填バルブ3からの液の排出を終了するステップS05と、回転体10に充填対象を供給し、充填対象への充填処理を開始するステップS06と、を含む。
【符号の説明】
【0073】
1 充填機
2 容器(充填対象)
3 充填バルブ
4 液タンク(液槽)
5 検温RFタグ(RFタグ)
6 リーダー(通信部)
7 制御盤(制御部)
8 ドレン装置
9 壁体
10 回転体
11 支持体
12 回転軸
12A 液流路
13 ロータリージョイント
14 ホルダ
15 スリップリング
30 ハウジング
31 液管
32 液流路
33 弁体
34 ノズル
35 エアシリンダ
36 電磁流量計
41 底部
50 ICチップ
51 検温部
52 アンテナ
53 被覆部
54 結束バンド
61 アンテナ
62 コントローラ
71 温度比較部
72 温度データ蓄積部
73 液排出開始部
74 液排出終了部
75 記憶部
81 ドレンパン
82 ドレンホース
83 駆動機構
90 ドア
90A ドア本体
91 開口部
92 ガラス部材(透過部材)
93 ブラケット
311 区間
530 被覆部本体
531 設置用領域
811 第1領域
812 第2領域
812A 排出口
B 直線
L 液供給系
P1 液導入ポート
R 回転方向
S00~S06 ステップ
t 一定時間
T1,T2,T3 閾値
X 軸線
x 長手方向
y 短手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7