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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096513
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】レンズユニット、及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20230630BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20230630BHJP
   G03B 15/05 20210101ALI20230630BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20230630BHJP
   G03B 17/55 20210101ALI20230630BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20230630BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20230630BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20230630BHJP
【FI】
G02B7/02 E
G02B7/02 A
G02B7/02 D
G03B15/02 F
G03B15/05
G03B17/02
G03B17/55
H04N5/225 400
H04N5/225 430
H04N5/225 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212333
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(72)【発明者】
【氏名】野田 隆行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓史
【テーマコード(参考)】
2H044
2H053
2H100
2H104
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AA05
2H044AA17
2H044AD02
2H044AE06
2H053CA04
2H100CC07
2H104CC12
5C122DA14
5C122EA02
5C122FB08
5C122GE11
5C122GG07
(57)【要約】
【課題】レンズユニット内に導電部材を通しつつ、鏡筒の強度を保つことのできるレンズユニットを提供する。
【解決手段】レンズユニット(11)は、複数のレンズと(L1~L6)、複数のレンズ(L1~L6)が収容される鏡筒(20)と、複数のレンズ(L1~L6)のうち最も物体側に配置される第1レンズ(L1)の非光学有効領域に配置されたヒーター(30)と、ヒーター(30)に接続される導電部材(40)と、を備え、複数のレンズ(L1~L6)のうち少なくとも1つのレンズである第2レンズ(L2)に導電部材(40)を通すための切欠き部(50)が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズと、
前記複数のレンズが収容される鏡筒と、
前記複数のレンズのうち最も物体側に配置される第1レンズの非光学有効領域に配置された電気的機能部品と、
前記電気的機能部品に接続される導電部材と、を備え、
前記複数のレンズのうち少なくとも1つのレンズに、前記導電部材を通すための切欠き部が設けられている、レンズユニット。
【請求項2】
前記鏡筒には、前記導電部材が挿入される開口部が形成され、
前記導電部材は、前記開口部を通って前記電気的機能部品と当該レンズユニットの外部に設けられた電力供給源とを接続する、
請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記鏡筒の光軸に垂直な方向に向けて突出して設けられたフランジを有し、
前記開口部は、前記フランジまたは前記フランジ近傍に形成されている、
請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記切欠き部が設けられているレンズはガラスレンズである、
請求項1から3の何れか1項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記切欠き部の形状は、
当該切欠き部が設けられているレンズの外周から光軸方向に向かう凹形状、又は、
当該切欠き部が設けられているレンズの外周を光軸に平行な平面とした形状である、
請求項1から4の何れか1項に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記電気的機能部品は前記第1レンズに熱を供給するヒーターである、
請求項1から5の何れか1項に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記電気的機能部品は、
前記第1レンズの像側面に配置され、
像側表面の摩擦係数が物体側表面の摩擦係数よりも大きい、
請求項1から6の何れか1項に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記電気的機能部品は照明装置である、
請求項1から5の何れか1項に記載のレンズユニット。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載のレンズユニットと、前記レンズユニットによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子と、を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、レンズユニット及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車やドローンなどの移動体に周囲の環境などを撮影するためのレンズユニットを用いられることが増えてきている。このような移動体に用いられるレンズユニットは、その用途によっては外部環境に露出するものもあり、急激な温度変化でレンズユニットの最も物体側のレンズ(物体側レンズ)が結露することがあり、また、寒冷環境下で使用される場合には物体側レンズ表面に氷雪が付着することも想定される。
【0003】
このような場合に、外部環境に露出したレンズユニットによって取得される画像や映像に水滴や氷雪が写り込んでしまい、所望の精度の画像や映像を取得できなくなってしまう懸念がある。
【0004】
これに対して、特許文献1には、フランジよりも物体側に配置される電気的機能部品に接続される電気配線をレンズユニット内で電気的機能部品に導くために、鏡筒に当該鏡筒の長手方向に延びる通孔または収容溝を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-071659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、鏡筒の長手方向に通孔または収容溝が延びて形成されていることから、鏡筒の強度が悪化してしまう。鏡筒に通孔または収容溝を形成した状態で強度を保とうとすると、鏡筒を径方向に厚くする必要があるため鏡筒が大型化してしまうという問題がある。また、このような鏡筒は内径が変形しやすいため、鏡筒にレンズを圧入等する際に力が加わると鏡筒及びレンズの同芯性が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の一態様は、レンズユニット内に導電部材を通しつつ、鏡筒の強度を保つことのできるレンズユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るレンズユニットは、複数のレンズと、前記複数のレンズが収容される鏡筒と、前記複数のレンズのうち最も物体側に配置される第1レンズの外周に沿って配置された電気的機能部品と、前記電気的機能部品に接続される導電部材と、を備え、前記複数のレンズのうち少なくとも1つのレンズに前記導電部材を通すための切欠き部が設けられている。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る撮像装置は、上記レンズユニットと、当該レンズユニットによって形成された光学像を電気的信号に変換にする撮像素子とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、レンズユニット内に導電部材を通しつつ、鏡筒の強度を保つことのできるレンズユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係る撮像装置の構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態1に係る切欠き部の設けられたレンズの斜視図であり、(a)は切欠き部の形状の一態様を示すレンズの斜視図であり、(b)は切欠き部の形状の他の態様を示すレンズの斜視図である。
図3】本発明の実施形態1の変形例1に係る撮像装置の構成を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態1の変形例2に係る撮像装置の構成を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態1の変形例3に係る撮像装置の構成を示す断面図である。
図6】本発明の実施形態2に係る撮像装置の構成を示す断面図である。
図7】本発明の実施形態3に係る撮像装置の構成を示す断面図である。
図8】本発明の実施形態4に係る撮像装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本件発明に係るレンズユニット11及び撮像装置1の実施の形態を説明する。但し、以下に説明するレンズユニット11及び撮像装置1は、本件発明に係るレンズユニット及び撮像装置の一態様であって、本件発明に係るレンズユニット及び撮像装置は以下の態様に限定されるものではない。
【0013】
(撮像装置1、レンズユニット11)
まず、本発明の一実施形態に係る撮像装置1及びレンズユニット11について、図1を参照して説明する。図1は本発明の実施形態1に係る撮像装置1の構成を示す断面図である。
【0014】
撮像装置1は、図1に示すようにレンズユニット11と撮像素子IMGとを備えている。また、レンズユニット11は、複数のレンズ(第1レンズL1~第6レンズL6)と、これら複数のレンズを収容する鏡筒20と、ヒーター30と、導電部材40とを備えている。
【0015】
(第1レンズL1~第6レンズL6)
レンズユニット11は、複数のレンズを備えており、本実施形態では物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズL1(第1レンズ)、正の屈折力を有する第2レンズL2、正の屈折力を有する第3レンズL3、正の屈折力を有する第4レンズL4、負の屈折力を有する第5レンズL5、正の屈折力を有する第6レンズL6の6枚のレンズを備えている。なお、レンズ構成はこれに限定されるものではなく、任意の構成を取り得る。
【0016】
本実施形態では図1に示すように、レンズユニット11が第1レンズL1~第6レンズL6の各々が固定された単焦点レンズである場合を例に説明するが、これに限定されるものではない。例えば第1レンズL1~第6レンズL6のうちの少なくとも1枚を光軸方向に沿って移動させることで変倍を行うズームレンズを構成してもよく、その具体的な動作は特に限定されるものではない。
【0017】
また、第1レンズL1~第6レンズL6のうち少なくとも1枚を光軸方向に沿って移動させることで合焦する構成や、光軸方向に垂直な方向に移動させることで防振する構成を採用することもできる。
【0018】
また、本実施形態に係るレンズユニット11は、画角が70°以上200°以下で構成されることが好ましい。車載レンズやドローン用レンズなど移動体に用いられるレンズには広い範囲を撮影するため広角なレンズが求められるからである。なお、画角の下限は75°であることがより好ましく、80°であることが更に好ましい。また、画角の上限は190°であることがより好ましく、180°であることが更に好ましい。
【0019】
一方で、このような広角レンズでは最も物体側に配置されるレンズの物体側に透明平行平板を配置して結露などの対策を行うことが難しい。広角レンズでは透明平行平板を配置するための鏡筒部分まで写り込んでしまうためである。これに対して、本実施形態に係るレンズユニット11は、後述するように第1レンズL1~第6レンズL6のうち少なくとも1つのレンズに切欠き部50を設けることで結露などの対策を行うことができる。
【0020】
(鏡筒20、フランジ203)
鏡筒20は、主鏡筒201および押え環202を備えている。主鏡筒201は、第1レンズL1~第6レンズL6を収容して保持するものであり、本実施形態では第1レンズL1は主鏡筒201の物体側から圧入され、第2レンズL2~第6レンズL6は主鏡筒201の像側から圧入されている。押え環202は、主鏡筒201に収容されているレンズを物体側から固定するものであり、本実施形態では主鏡筒201に物体側から螺合して固定されることで第1レンズL1を物体側から主鏡筒201の配置面に向けて固定している。
【0021】
また、鏡筒20は、レンズユニット11を外部の他部材(不図示)に組み付けるためのフランジ203を備えている。フランジ203は、主鏡筒201の側面に光軸に垂直な方向に向けて突出しするよう設けられている。フランジ203の像側面である取付面204を外部の他部材の対応する面に当接することでレンズユニット11を配置することができる。また、フランジ203を外部の他部材が把持することでレンズユニット11を配置することもできる。
【0022】
また、鏡筒20の主鏡筒201には開口部25が形成されている。本実施形態では開口部25は主鏡筒201の側面であってフランジ203の近傍、具体的にはフランジ203(より具体的には、フランジ203の取付面204)に隣接して形成されている。開口部25は、後述する導電部材40を通すために用いられ、導電部材40の数だけ設けられていてもよいし、複数の導電部材40を通す1つの大きい開口部25として設けられていてもよい。なお、開口部25の形状は特に限定されるものではなく、加工の容易性の観点から楕円形を含む円形であることが好ましいが、四角形などの多角形形状であってもよい。
【0023】
また、開口部25が形成される位置はフランジ203に隣接する位置に限定されず、フランジ203の近くに形成されていればよい。例えば、開口部25がフランジ203の近傍に設けられる条件として、次の式を満たすことが好ましい。
【0024】
D1/D2≦0.5 ・・・(1)
但し、D1:フランジ203の取付面204から開口部25までの距離
D2:鏡筒20の最も像側の端面から開口部25までの距離
【0025】
式(1)の上限を上回ると、開口部25の位置がフランジ203から離れすぎてしまい、鏡筒20内での導電部材40の引き回し距離が長くなってしまうため、組立性が悪くなってしまう。これに対し、式(1)を満たすように開口部25をフランジ203の近傍に形成することで、鏡筒20内での導電部材40の引き回し距離を短くすることができ、組立性を向上させることができる。なお、式(1)の上限は0.4が好ましく、0.3がより好ましく、0.25が更に好ましい。また、式(1)の下限は0(すなわち、開口部25がフランジ203に隣接して形成される)が好ましいが、フランジ203の強度を保つ観点からは0.05であることも好ましく、0.1がより好ましい。
【0026】
(ヒーター30)
本実施形態では、電気的機能部品として第1レンズL1の非光学有効領域にヒーター30が配置されている。ヒーター30は、発生した熱をレンズユニット11の最も物体側に配置される第1レンズL1に伝える役割を果たす。
【0027】
本実施形態ではヒーター30は、図1に示すように、第1レンズL1の像側面の非光学有効領域に外周に沿って配置され、第1レンズL1と第2レンズL2とで把持されるように固定されている。このとき、ヒーター30は像側表面の摩擦係数が物体側表面の摩擦係数よりも大きいことが好ましい。このように、ヒーター30と第1レンズL1が接する面の摩擦係数を小さくし、ヒーター30と第2レンズL2が接する面の摩擦係数を大きくすることで、ネジ式の押え環202で第1レンズL1を押える際に第1レンズL1と共にヒーター30が回ってしまうことを防ぐことができる。これにより、組立時に導電部材40である電気配線が切断されることや、接点が破損されてしまうことを抑制することができる。
【0028】
ヒーター30の配置は特に限定されるものではない。例えば、第1レンズL1の光軸に並行な外周面に沿って配置されていてもよいし、第1レンズL1の物体側の非光学有効領域に外周に沿って配置され押え環202によって第1レンズL1に付勢されていてもよい。なお、外周に沿って配置されるとは、必ずしもヒーター30の外径が第1レンズL1の外径と一致しているものではなく、組立性を考慮し、ヒーター30の外径が第1レンズL1の外径より小さい構成であってもよい。ヒーター30としては、例えば、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒーターなどを挙げることができる。
【0029】
本実施形態ではヒーター30を第1レンズL1の非光学有効領域に外周に沿って配置する構成を例に説明したが、これに限定されるものではなく、第1レンズL1の非光学有効領域であればどのように配置されていてもよい。例えば、第1レンズL1の非光学有効領域に細長い長方形形状のヒーター30が配置されていてもよい。また、ヒーター30の配置位置は第1レンズL1の像側面の非光学有効領域に限定されるものではない。例えば、ヒーター30は、第1レンズL1の側面(光軸に平行な面)の非光学有効領域に配置されていてもよいし、物体側面の非光学有効領域に配置されていてもよい。
【0030】
(導電部材40)
ヒーター30に対する給電は、導電部材40を介して行われる。導電部材40としては、例えば絶縁体で被覆されたリード線などを採用することができる。導電部材40は図1に示すように、主鏡筒201の側面に形成された開口部25を通って、ヒーター30とレンズユニット11の外部に設けられている電力供給源(不図示)とを接続し、ヒーター30に電圧や電流などを供給する。また、本実施形態はでは導電部材40が1本である場合を例に説明しているが、例えば2本以上の導電部材40を用いてもよい。
【0031】
(切欠き部50)
レンズユニット11に配置されている第1レンズL1~第6レンズL6のうち少なくとも1つのレンズに、導電部材40を通すための切欠き部50が設けられている。本実施形態では、第1レンズL1の像側に配置されたヒーター30に導電部材40を接続するため、第2レンズL2に切欠き部50が設けられている。なお、切欠き部50が設けられるレンズはこれに限定されるものではなく、例えば第3レンズL3に切欠き部50が設けられていてもよいし、2つ以上のレンズに切欠き部50が形成されていてもよい。小径化の観点から、少なくともヒーター30などの電気的機能部品に隣接するレンズに切欠き部50を設けることが好ましく、電気的機能部品とフランジ203又は開口部25の間に配置される全てのレンズに切欠き部50を設けることがより好ましい。
【0032】
切欠き部50の形状について、図2を参照して説明する。図2は切欠き部50の形状の一例を示す図であり、(a)は平面形状の切欠き部50を示し、(b)は凹形状の切欠き部51を示している。
【0033】
切欠き部50の形状は特に限定されるものではないが、例えば図2(a)に示すように第2レンズL2の外周を光軸に略平行な平面に切欠いた形状の切欠き部50であってもよいし、(b)に示すように、第2レンズL2の外周から光軸方向に向かって切欠いた凹形状の切欠き部51であってもよい。略平行な平面とは、製造誤差や設計上あるいは加工上必要な条件などにより厳密に平行でない面も含むものである。また、切欠き部51の凹形状としては、第2レンズL2を光軸方向から見たこき、例えばU字形状であってもよいし、三角形や四角形などの多角形状であってもよいし、楕円を含む円形状であってもよい。
【0034】
また、切欠き部50は、切欠き部50が設けられるレンズの光軸方向から見た物体側面において、次の式を満たすことが好ましい。
【0035】
0.01<Ks/Ls≦0.30 ・・・(2)
但し、Ks:切欠き部50が設けられるレンズの物体側面における切欠き部50の占める面積
Ls:切欠き部50が設けられるレンズの切欠き部50を含めた物体側面の面積
【0036】
式(2)の上限を上回ると、切欠き部50による当該切欠き部50が設けられるレンズの光学性能への影響を抑えることが難しい。これに対し、式(2)を満たすことで、切欠き部50が設けられることによる当該切欠き部50が設けられるレンズの光学性能への影響を抑えつつ、導電部材40を切欠き部50に通すことができる。なお、式(2)の上限は、0.25が好ましく、0.2が更により好ましい。また、式(2)の下限は特に限定されないが、導電部材40を通すために十分な切欠き部50の大きさを確保する観点から、下限値は0.03が好ましく、0.05がより好ましく、0.1がより好ましい。
【0037】
切欠き部50が設けられるレンズはプラスチックレンズであってもよいし、ガラスレンズであってもよく、特に限定されるものではないが、ガラスレンズであることがより好ましい。鏡筒20の材料としてよく使用されるアルミやプラスチックと比べて、ガラス材の方がヤング率が大きくポアソン比が小さい。このため、レンズに切欠き部50を設けた場合でもレンズの強度を保つことができる。また、ガラスレンズは温度変化による線膨張係数が小さいことから、温度変化による切欠き部50の大きさの変化を最小限におさえることができ、温度変化により導電部材40が損傷してしまうことを抑制することができる。
【0038】
本実施形態に係るレンズユニット11は、上述の構成を備えることで、レンズユニット11内に導電部材40を通しつつ、鏡筒20の強度を保つことができる。また、ヒーター30を備えることで、導電部材40から電力の供給を受け、第1レンズL1を温めることができる。例えばレンズユニット11が車載用レンズとして使用される場合、想定される使用温度範囲は-40℃~105℃になるが、そのような環境下において鏡筒20の内部温度と外界の温度の温度差が大きくなり、第1レンズL1が結露した場合でも、第1レンズL1を温めて結露を解消することができる。また、同様に第1レンズL1に氷雪が付着した場合もその氷雪を取り除くことができる。
【0039】
(その他)
本実施形態では、導電部材40が開口部25を通って鏡筒20の外へ配線される構成を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、開口部25に例えば金属など伝導性の高い部材で電気接点が設けられ、導電部材40が電気接点に接続されていてもよい。導電部材40が鏡筒20内で開口部25に設けられた電気接点とヒーター30とを電気的に接続することで、電気接点を介してレンズユニット11に接続される外部の電源からヒーター30に電力を供給することができる。
【0040】
この構成によれば、レンズユニット11を他部品に組み付ける作業の際にレンズユニット11の鏡筒20の外側に出た導電部材40が破損や断線してしまうことを防ぐことができる。
【0041】
<変形例1>
次に、実施形態1の変形例について、図3を参照して説明する。図3は、実施形態1の変形例1に係る撮像装置1’の構成を示す断面図である。図3に示すように、変形例1に係る撮像装置1’は、レンズユニット11’の第2レンズL2’ではなく第3レンズL3’に切欠き部50が設けられていること以外、実施形態1に係るレンズユニット11と同様の構成である。
【0042】
レンズユニット11’の第2レンズL2’は、第3レンズL3’と接合されており、その外径は第3レンズL3’よりも小さい。このため、導電部材40を通すために第2レンズL2’に切欠き部50を設ける必要はない。一方で、第3レンズL3’は第2レンズL2’と第3レンズL3’とからなる接合レンズとして保持されるために、主鏡筒201の内径又は接合レンズを保持するレンズ保持枠(不図示)の内径と略等しくなっている。このため、導電部材40を通すために第3レンズL3’に切欠き部50が設けられることになる。
【0043】
このように、切欠き部50が形成されるレンズは特に限定されるものではなく、鏡筒20内に導電部材40を通すために必要な箇所に配置されるレンズに設けられればよい。
【0044】
<変形例2>
また、実施形態1の他の変形例について、図4を参照して説明する。図4は、実施形態1の変形例2に係る撮像装置1’’の構成を示す断面図である。図4に示すように、変形例2に係る撮像装置1’’は、レンズユニット11’’のヒーター31が第1レンズL1’の物体側面側に配置され、第1レンズL1’にも切欠き部50が設けられていること以外、実施形態1に係るレンズユニット11と同様の構成である。
【0045】
変形例2に係るヒーター31は透明導電膜であり、第1レンズL1’の物体側面を覆うように配置されている。これによって、第1レンズL1’の物体側面を保護しつつ、第1レンズL1’を物体側面から温めることができる。もちろんヒーター31は第1レンズL1’の物体側面全面を覆わなくとも、非光学有効領域に外周に沿って設けられていてもよい。この場合には、ヒーター31は押え環202によって第1レンズL1’に付勢されて固定されればよい。
【0046】
ヒーター31を構成する透明導電膜としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)膜、FTO(Fluorine Doped Tin Oxide)膜などを採用することができる。
【0047】
そして、ヒーター31に導電部材40を接続するために、第1レンズL1’には導電部材40を通すための切欠き部50が設けられている。これにより、導電部材40を第1レンズL1’の切欠き部50を通して、第1レンズL1’の物体側面に配置されているヒーター31と接続させることができる。
【0048】
<変形例3>
実施形態1の更に他の変形例について、図5を参照して説明する。図5は、実施形態1の変形例3に係る撮像装置1’’’の構成を示す断面図である。図5に示すように、変形例3に係る撮像装置1’’’は、レンズユニット11’’’がヒーター31の代わりに照明装置32が第1レンズL1’の物体側面側に配置されていること以外、実施形態1の変形例2に係る撮像装置1’’と同様の構成である。
【0049】
図5に示すように、第1レンズL1’の物体側面の外周に沿って照明装置32を配置することにより、例えば手術用顕微鏡や手術用ロボットに用いられる場合など、明るさの足りない場所でも撮影対象を照らすことができ、良好に撮影を行うことができる。照明装置32としては、例えばリング照明などを採用することができる。また、電気的機能部品はこれらに限定されず、例えば、リングではない小型照明であってもよいし、レンズユニット1’’’内の温度より雰囲気温度が高い環境下では冷却素子を用いてもよいし、第1レンズL1又は第1レンズL1を含むレンズ群を駆動する可変駆動素子などであってもよい。
【0050】
〔実施形態2〕
次に、本発明の他の実施形態に係る撮像装置2及びレンズユニット12について、図6を参照して説明する。図6は本発明の実施形態2に係る撮像装置2の構成を示す断面図である。図6に示すように、実施形態2に係る撮像装置2のレンズユニット12は、鏡筒21の構成、及び、開口部26a、26bの構成以外、実施形態1に記載の撮像装置1と同様の構成である。
【0051】
図6に示すように、鏡筒21の主鏡筒202は第1レンズL1~第6レンズL6を保持する内側主鏡筒211aと、内側主鏡筒211aを保持する外側主鏡筒211bとを備えている。外側主鏡筒211bは、内側主鏡筒211aの像側からネジ部で螺合されて内側主鏡筒211aに固定され、押え環202は内側主鏡筒211aの物体側からネジ部で螺合され内側主鏡筒211aに固定される。このように主鏡筒を外側主鏡筒221aと内側主鏡筒211aの2つの部品から構成することで、鏡筒20全体の強度を上げることができる。
【0052】
また、外側主鏡筒211bにはフランジ203が設けられており、内側主鏡筒211aにおけるフランジ203近傍に開口部26aが形成されている。そして外側主鏡筒211bの像側端部近くに開口部26bが形成されている。導電部材40は、ヒーター30に接続され第2レンズL2の切欠き部50を通り、開口部26aを通って内側主鏡筒211aと外側主鏡筒211bの間を抜け、開口部26bを通って鏡筒21の外に到達するように配置される。
【0053】
このように、導電部材40を内側主鏡筒211aと外側主鏡筒211bとの間を通すことによって他の部材が導電部材40に当たるなどして破損や断線してしまうことを防ぐことができる。
【0054】
〔実施形態3〕
次に、本発明の更に他の実施形態に係る撮像装置3及びレンズユニット13について、図7を参照して説明する。図7は本発明の実施形態3に係る撮像装置3の構成を示す断面図である。図7に示すように、実施形態3に係る撮像装置3のレンズユニット13は、鏡筒22の構成、及び、開口部27a、27bの構成以外、実施形態1に記載の撮像装置1と同様の構成である。
【0055】
図7に示すように、鏡筒22は主鏡筒221と押え環222とを備え、押え環222の像側端部は主鏡筒221のフランジ223の外周部に当接するよう形成されている。この構成によって、フランジ223を押え環222で物体側から支えることができるため、フランジ223に像側から力がかかった場合でも強度を保つことができる。
【0056】
主鏡筒221には、押え環222と螺合するためのネジ部の像側に開口部27aが形成され、フランジ223に開口部27bが形成されている。また、主鏡筒221、フランジ223及び押え環222の像側端部で囲まれる部分には空間が形成される。導電部材40は、ヒーター30に接続され第2レンズL2の切欠き部50を通り、開口部27aを通って主鏡筒221とフランジ223と押え環222とで形成される空間を抜け、開口部27bを通ることで鏡筒22の外に到達するように配置される。
【0057】
このように、導電部材40を、開口部27aを通し、主鏡筒221とフランジ223と押え環222とで形成される空間を通すように配線することで、導電部材40が他の部材と当たってしまい破損や断線してしまうことを防ぐことができる。
【0058】
〔実施形態4〕
次に、本発明の更に他の実施形態に係る撮像装置4及びレンズユニット14について、図8を参照して説明する。図8は本発明の実施形態4に係る撮像装置4の構成を示す断面図である。図8に示すように、実施形態4に係る撮像装置4のレンズユニット14は、鏡筒23の構成、開口部28の構成、及び、第2レンズL2に加え第3レンズL3’にも切欠き部53が形成されていること以外、実施形態1に記載の撮像装置1と同様の構成である。
【0059】
実施形態4に示す撮像装置4のレンズユニット14は、図8に示すように、主鏡筒231はフランジを備えていない。また、開口部28は、主鏡筒231の側面でなく像側面に形成されている。なお、図8では簡略化のため主鏡筒231の像側面を省略しているが、開口部28は実施形態1~3に係る開口部25~27bと同様の大きさであればよく、設けられる位置などは特に限定されない。
【0060】
第3レンズL3’には、切欠き部50が設けられている。これにより、導電部材40は、ヒーター30に接続され、第2レンズL2の切欠き部50と第3レンズL3’の切欠き部50を通り、開口部28を通って鏡筒23の外へ到達するよう配置される。このように、ヒーター30より像側に配置され、かつ主鏡筒231の内径に保持される全てのレンズに切欠き部50を設けることで、導電部材40を鏡筒23の像側まで配線することができる。
【0061】
また、この場合には、隣り合うレンズ同士(図8では第2レンズL2と第3レンズL3)の間隔を調整するスペーサ60にも切欠き部61が形成される。これによって、主鏡筒231の内径に溝を形成することなく導電部材40を像側まで通すことができる。
【0062】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1、1’、1’’、1’’’、2、3、4 撮像装置
11、11’、11’’、11’’’、12、13、14 レンズユニット
20、21、22、23 鏡筒
201、221、231 主鏡筒
211a 内側主鏡筒
211b 外側主鏡筒
202、222、232 押え環
203、223 フランジ
204 取付面
25、26a、26b、27a、27b、28 開口部
30、31 ヒーター(電気的機能部品)
32 照明装置(電気的機能部品)
40 導電部材
50、51 切欠き部
60 スペーサ
61 切欠き部
L1、L1’ 第1レンズ
L2、L2’ 第2レンズ
L3、L3’ 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L6 第6レンズ
IMG 撮像素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8