(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096525
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】シリンダ錠及びドア
(51)【国際特許分類】
E05B 27/06 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
E05B27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212347
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】秋山 史記
(72)【発明者】
【氏名】三橋 隆史
(57)【要約】
【課題】シリンダ錠を小型化することが可能なクリックモーション機構を備えるシリンダ錠を提供すること。
【解決手段】外筒と、外筒に回動可能に篏合する内筒と、を備え、外筒及び内筒のうちいずれか一方には、円筒形状を有するクリックピンが配置され、クリックピンは、円筒形状の軸方向が外筒及び内筒の軸方向に沿うように配置され、外筒及び内筒のうちいずれか他方には、クリックピンが篏合する凹部が形成され、クリックピンは、外筒に対する内筒の回動状態が特定の状態である場合に、外筒に対する内筒の回動を抑制する、シリンダ錠。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、前記外筒に回動可能に篏合する内筒と、を備え、
前記外筒及び前記内筒のうちいずれか一方には、円筒形状を有するクリックピンが配置され、
前記クリックピンは、前記円筒形状の軸方向が前記外筒及び前記内筒の軸方向に沿うように配置され、
前記外筒及び前記内筒のうちいずれか他方には、前記クリックピンが篏合する凹部が形成され、
前記クリックピンは、前記外筒に対する前記内筒の回動状態が特定の状態である場合に、前記外筒に対する前記内筒の回動を抑制する、シリンダ錠。
【請求項2】
前記外筒は、前記クリックピンが配置される凹部を有する、請求項1に記載のシリンダ錠。
【請求項3】
前記クリックピンは、付勢部材によって前記外筒及び前記内筒の径方向に付勢され、前記付勢部材を係合可能な括れ部を有する、請求項1又は2に記載のシリンダ錠。
【請求項4】
前記付勢部材は、トーションバネである、請求項3に記載のシリンダ錠。
【請求項5】
前記外筒に設けられた孔部に挿脱可能に収容されるコンストラクションピンをさらに備え、
前記コンストラクションピンの位置と前記クリックピンが篏合する凹部の一部とが前記内筒の周方向で重なる、請求項1~3のいずれかに記載のシリンダ錠。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のシリンダ錠を備えるドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリンダ錠及びドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の扉に設置される、シリンダ錠が知られている。シリンダ錠は、外筒と、外筒に回動可能に篏合する内筒と、内筒の回動を規制するドライバーピン、及びタンブラーピンと、を有する。シリンダ錠に対応する解錠鍵には、タンブラーピンとの当接部に凹凸が形成されている。シリンダ錠の鍵穴に対して解錠鍵を挿入し、ドライバーピン、及びタンブラーピンの接触面を、内筒の外周面であるシアーラインに揃えることで、内筒が回動可能になる。これによって、シリンダ錠の施解錠が行われる。
【0003】
特許文献1には、シリンダ錠を解錠鍵の挿脱位置に正確に安定保持させるようにしたクリックモーション機構を備えるシリンダ錠について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術を含め、シリンダ錠のクリックモーション機構は、ボールをスプリングにより付勢して、ボールを内筒等に点接触させて回動可能にすると共に、解錠鍵の挿脱位置におけるボールの位置に対応する凹部を設けるものである。そして、解錠鍵の挿脱位置において凹部にボールを篏合させることで使用者の手指にクリック感を伝達し、解錠鍵の挿脱位置を示すものである。上記従来のクリックモーション機構は、ボールはシリンダ錠の例えば内筒等の部材と点接触するため、ボールがある程度の径を有していないとクリック感が得られず、シリンダ錠を小型化することが困難である。また、摩擦によりボールとボールが点接触する内筒等の部材とが摩耗する恐れもあり、ボールが凹部に嵌まり込んで脱離しなくなる恐れもある。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、シリンダ錠を小型化することが可能なクリックモーション機構を備えるシリンダ錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、外筒と、前記外筒に回動可能に篏合する内筒と、を備え、前記外筒及び前記内筒のうちいずれか一方には、円筒形状を有するクリックピンが配置され、前記クリックピンは、前記円筒形状の軸方向が前記外筒及び前記内筒の軸方向に沿うように配置され、前記外筒及び前記内筒のうちいずれか他方には、前記クリックピンが篏合する凹部が形成され、前記クリックピンは、前記外筒に対する前記内筒の回動状態が特定の状態である場合に、前記外筒に対する前記内筒の回動を抑制する、シリンダ錠に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るシリンダ錠の構成を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るシリンダ錠の構成を示す分解斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係るシリンダ錠の上面図である。
【
図9】第2実施形態に係るシリンダ錠の
図4に相当する断面図である。
【
図10】第3実施形態に係るシリンダ錠の
図4に相当する断面図である。
【
図11】本実施形態に係るシリンダ錠を備えるドアの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《第1実施形態》
<シリンダ錠>
本実施形態に係るシリンダ錠10は、
図1に示すように、施錠装置1において、シリンダ錠10を施解錠可能な解錠鍵5と共に用いられる。シリンダ錠10は、
図1及び
図2に示すように、内筒2と、外筒3と、装飾部材4と、ドライバーピン61と、タンブラーピン62と、クリックピン7と、付勢部材としてのトーションバネ8と、を有する。内筒2は、固定された外筒3に対して回動可能に篏合する。クリックピン7と、トーションバネ8とは、クリックモーション機構を構成する。
【0010】
(内筒)
内筒2は、
図2に示すように、外筒3に回動可能に篏合する略円筒状部材である。内筒2の材質は特に限定されないが、例えば、真鍮等の金属により構成される。内筒2は、摺動面である外周面20が、外筒3の内周面30に当接して外筒3と篏合する。内筒2には、内筒2の軸方向に沿って、解錠鍵5が挿入可能な鍵穴21が形成される。
【0011】
内筒2の外周面20には、
図2に示すように、鍵穴21に連通するピン孔22が複数形成される。複数のピン孔22は、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の少なくとも一部が挿脱可能な孔である。複数のピン孔22は、それぞれ円筒形状の内周面22aを有する。本実施形態に係るピン孔22は、内筒2の軸方向に沿って複数列のピン孔22が形成されると共に、上記複数列のピン孔22が内筒2の周方向において複数組形成される。
【0012】
内筒2の外周面20には、
図4~
図7に示すように、クリックピン7がクリック篏合する凹部23が形成される。凹部23のクリックピン7がクリック篏合する箇所以外の箇所は、埋めピン24により閉塞されている。外周面20には、
図5及び
図8に示すように、コンストラクションピン25が当接している。コンストラクションピン25は外筒3に設けられた孔部に挿脱可能に収容される。凹部23は、エンドミル等を使用して形成されるため、成形上、クリックピン7との篏合箇所以外にも凹部が形成されてしまう。本実施形態において、上記凹部23のクリックピン7との篏合箇所以外の凹部23oは、内筒2の周方向Dでコンストラクションピン25の当接箇所と重複している。このため、凹部23のクリックピン7との上記篏合箇所以外の凹部23oを埋めピン24により閉塞することで、凹部23にコンストラクションピン25が嵌まり込むことで内筒2が回動不能となることを防止できる。
【0013】
図6及び
図7は、
図5の要部拡大図であり、
図6はクリックピン7及び埋めピン24が未配置の状態を示す。
図7はクリックピン7及び埋めピン24が配置された状態を示す。
図6に示すように、凹部23oは内筒2の周方向Dでコンストラクションピン25と重複する。凹部23oには埋めピン24を篏合可能な孔部が設けられる。
図7に示すように、凹部23のうちクリックピン7との篏合箇所以外の凹部23oは、埋めピン24により閉塞される。
【0014】
コンストラクションピン25は、解錠鍵5とは別のコンストラクションキーに対応する鍵穴21を形成する、コンストラクション構造の一部である。
図8は、
図3のB-B断面図に相当し、解錠鍵5が挿入される前のシリンダ錠10の状態を示している。コンストラクション構造は、
図8に示すように、コンストラクションピン25と、ボール26と、下ピン27a及び27bと、下ピン27a及び27bが収容される孔部28a及び28bと、を有する。
図8の状態では、下ピン27aが鍵穴21内に突出した状態である。コンストラクションキーは、下ピン27aが突出した鍵穴21の形状に対応した形状を有している。この状態の鍵穴21に解錠鍵5が挿入されると、解錠鍵5によって下ピン27aが径方向外側に押し上げられ、ボール26及びコンストラクションピン25が外筒3側に移動する。この状態で内筒2が外筒3に対して回動されると、ボール26が、下ピン27bが収容される孔部28bに入り込み、ボール26に押し出された下ピン27bの先端部が鍵穴21内に突出する。上記構成を有するコンストラクション構造により、一度解錠鍵5が鍵穴21に挿入されると、コンストラクションキーはシリンダ錠10を施解錠不能になる。
【0015】
コンストラクションピン25と凹部23の一部を内筒2の周方向で重複させないように構成することで、コンストラクションピン25が、凹部23に嵌まり込むことを防止することも考えられる。しかし、この場合、上記重複を回避するためにシリンダ錠10の軸方向の長さを長くする必要がある。このため、コンストラクションピン25と凹部23の一部を内筒2の周方向で重複させると共に、凹部23のクリックピン7との上記篏合箇所以外の凹部を埋めピン24により閉塞する上記本実施形態の構成は、シリンダ錠10を小型化する観点から好ましい。
【0016】
(外筒)
外筒3は、
図2に示すように、内側に形成される孔部31に対して内筒2が篏合可能な略円筒状部材である。外筒3の材質は特に限定されないが、例えば、内筒2と同様に、真鍮等の金属により構成される。外筒3は、回動不能に固定されている。外筒3は、摺動面である内周面30が、内筒2の外周面20に当接して内筒2と篏合する。
【0017】
外筒3には、外筒3の軸方向に沿って、内筒が篏合可能な孔部31が形成される。外筒3の外周面には、孔部31に連通するピン孔32が複数形成される。複数のピン孔32は、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の少なくとも一部が挿脱可能な孔である。複数のピン孔32は、それぞれ円筒形状の内周面32aを有する。複数のピン孔22と、複数のピン孔32とは、内筒2を外筒3に対して回動させ、所定の位置とした際に、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の少なくとも一部が挿脱可能であるように互いに連通する。
【0018】
外筒3と内筒2とは、
図4及び
図5に示すように、一対の固定ピン91により篏合する。一対の固定ピン91は、外筒3の外周面から孔部31に連通する孔部に挿通されると共に、一部が内筒2の周方向に沿って形成される溝部に篏合する。これによって、内筒2は外筒3に対して回動可能に篏合する。
【0019】
外筒3は、
図2~
図4に示すように、クリックピン7が配置される凹部33を有する。凹部33は、外筒3の鍵穴21に対して解錠鍵5が挿入される側とは逆側の端部を、クリックピン7の形状に応じて切り欠いて形成される。仮に内筒2にクリックピン7が配置される凹部を形成する場合、内筒2に形成される固定ピン91が篏合する溝部と上記凹部が干渉することを避けるため、内筒2及び外筒3の軸方向の長さを長くする必要がある。このため、外筒3に凹部33が形成される本実施形態の構成は、凹部33が上記内筒2に形成される固定ピン91が篏合する溝部と干渉しないため、内筒2及び外筒3の軸方向の長さを長くする必要がなく、シリンダ錠10を小型化する観点から好ましい。
【0020】
(装飾部材)
装飾部材4は、
図1に示すように、シリンダ錠10の正面である、内筒2及び外筒3の鍵穴21側の面を被覆して装飾する部材である。装飾部材4は、鍵穴21と連通するように配置される孔部を有する。装飾部材4は、特に限定されないが、金属等により構成される。装飾部材4の表面には、意匠性を高めるためのメッキ層等が形成されていてもよい。装飾部材4により、内筒2及び外筒3は殆ど外部から視認不能になる。装飾部材4に代えて、内筒2及び外筒3の少なくとも正面部を、メッキ層の形成等により装飾してもよい。
【0021】
(ドライバーピン、タンブラーピン)
ドライバーピン61、及びタンブラーピン62は、ピン孔22及びピン孔32に摺動可能に収容される、略円柱形状の部材である。タンブラーピン62は、鍵穴21側に配置されるピンである。ドライバーピン61は一方の端部でタンブラーピン62と当接し、他方の端部は付勢部材(図示せず)と当接している。
図2では一部図示を省略して一組のドライバーピン61、及びタンブラーピン62のみを図示しているが、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62は、複数組存在し、複数組のピン孔22及びピン孔32に収容される。
【0022】
ドライバーピン61は、鍵穴21側に向けて付勢部材(図示せず)により付勢されている。鍵穴21に解錠鍵5が挿入されていない場合には、ドライバーピン61は内筒2と外筒3との間に位置しており、これによって、内筒2の回動が規制される。鍵穴21に解錠鍵5を挿入した状態で、ドライバーピン61とタンブラーピン62との接触面が内筒2と外筒3との接触面であるシアーラインと一致するように、各ドライバーピン61及びタンブラーピン62の長さ、並びに解錠鍵5の表面に形成される凹凸が設定される。ドライバーピン61とタンブラーピン62との接触面がシアーラインに揃った状態で解錠鍵5を回転させることで、内筒2が解錠鍵5と同調回転する。これによって、例えば扉のデッドボルトを出し入れし、シリンダ錠10の施解錠を行うことができる。
【0023】
(クリックピン)
クリックピン7は、外筒3に対する内筒2の回動状態が特定の状態、即ち、鍵穴21に対して解錠鍵5を挿脱可能な状態である場合に、外筒3に対する内筒2の回動を抑制する部材である。クリックピン7は、円筒形状を有し、外筒3の凹部33に配置される。クリックピン7の円筒形状の軸方向は、外筒3及び内筒2の軸方向に沿うように配置され、内筒2及び外筒3の径方向内側(軸心方向)に向けて付勢部材としてのトーションバネ8により付勢されている。クリックピン7は、軸方向両端部に同一の径を有する当接部71が形成される。クリックピン7は、軸方向中央部にトーションバネ8が係合可能な括れ部72を有する。これによって、トーションバネ8を配置するために径方向に別途空間を設ける必要が無いため、シリンダ錠10を小径化することができる。
【0024】
図4は、
図3のA-A断面図であり、外筒3に対する内筒2の回動状態が上記特定の状態である場合を示している。この状態では、当接部71の一部が内筒2に形成された凹部23に篏合し、外筒3に対する内筒2の回動が抑制される。かつ、当接部71の一部が内筒2に形成された凹部23に篏合する際に、解錠鍵5を回動させる使用者の手指にクリック感が伝達される。これによって、使用者は、解錠鍵5の挿脱可能な位置を認識できると共に、挿脱可能な位置で外筒3に対する内筒2の回動状態を容易に保持することができる。
【0025】
クリックピン7は円筒形状を有するため、内筒2と当接部71との接触が線接触になる。これによって、従来の内筒と点接触するボールを有するクリックモーション機構と比較して、同一のクリック感を使用者の手指に与えるための当接部71の径は上記ボールよりも小さいものとすることができる。これによって、シリンダ錠10を小型化することができる。当接部71の径は、例えば3.5mm未満とすることができ、2mm以下としてもよい。更に、従来のクリックモーション機構は、ボールに加えられる付勢力を強くした場合、使用に伴って内筒2の一部が摩耗する結果、ボールが内筒に形成される凹部に嵌まり込んで脱離不能になる恐れがある。これに対して、本実施形態に係るクリックピン7は円筒形状を有し、ボールと比較して内筒2との接触面積が大きいため、クリックピン7が凹部23に嵌まり込んで脱離不能になる、という恐れは少ない。このため、クリックピン7に加えられる付勢力をより強くすることができる。
【0026】
クリックピン7の当接部71の一部が内筒2に形成された凹部23に篏合し、外筒3に対する内筒2の回動が抑制された状態で、使用者が解錠鍵5を回動させると、当接部71は凹部23を乗り越えて内筒2の外周面20と当接する。クリックピン7は円筒形状を有するため、外筒3に対して内筒2を回動させると、それに伴ってクリックピン7も内筒2の外周面20に当接しながら自転する。これによって、クリックピン7と内筒2との間に発生する摩擦力を低減することができ、クリックピン7や内筒2の摩耗を抑制できるため、シリンダ錠10の耐久力を向上できる。
【0027】
クリックピン7の材質としては、特に限定されないが、金属を用いることができる。金属としては、例えば、SUS303等のステンレス鋼材が挙げられる。
【0028】
クリックピン7は、内筒2及び外筒3の周方向において1つ設けられることが好ましい。仮に外筒3に対して内筒2が360度、回動可能である場合、クリックピン7を内筒2及び外筒3の周方向に複数配置(例えば、対角線上に2つ配置)すると、複数の回動状態でクリック感が生じるため、解錠鍵5を挿脱可能な特定の回動状態が分かり難くなる恐れがあるためである。仮に外筒3に対して内筒2が360度、回動可能でない場合、複数の回動状態でクリック感が生じない範囲内において、クリックピン7を内筒2及び外筒3の周方向において複数設けてもよい。
【0029】
(付勢部材)
付勢部材としてのトーションバネ8は、弾性部材からなり、円弧形状を有する線状体又は板状体である。トーションバネ8は、クリックピン7に対して内筒2及び外筒3の径方向内側(軸心方向)に向かう付勢力を付与する。トーションバネ8は、
図4に示すように、クリックピン7の括れ部72の外周側の一部と当接する。トーションバネ8は、
図3に示すように、外筒3の周方向に沿って形成される溝部34に配置される。付勢部材としてトーションバネ8を用い、上記構成とすることで、シリンダ錠10を小径化することが可能となる。トーションバネ8の材質は特に限定されず、公知の材料を用いることができる。
【0030】
トーションバネ8の両端部は、外筒3に係合されて固定される。
図4に示すように、トーションバネ8は、内筒2及び外筒3の周方向における180度以内の箇所に亘って配置されることが好ましい。これによって、クリックピン7のクリック動作に伴って変形するトーションバネ8の一部が、外筒3の外縁に配置される部材に当接することを防止できる。
【0031】
[解錠鍵]
解錠鍵5は、シリンダ錠10を施解錠可能な解錠鍵である。本実施形態において、解錠鍵5の鍵穴21への挿入部は、円柱形状を有している。
図1における解錠鍵5はブランクキーを図示している。実際に解錠鍵5がシリンダ錠10に適用される際には、挿入部の外周表面に、シリンダ錠10の各ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の長さ及び配置に応じた凹部が形成される。
【0032】
《第2実施形態》
次に、
図9を用いて、本開示の第2実施形態に係るシリンダ錠10aの構成について説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0033】
図9は、第1実施形態の
図4に相当する断面図である。シリンダ錠10aは、内筒2aと、外筒3aと、クリックピン7aと、付勢部材としてのトーションバネ8aと、を有する。
【0034】
本実施形態に係るクリックピン7aは、クリックピン7と同様に円柱形状を有する。クリックピン7aは、内筒2aに形成される凹部23aに配置される。クリックピン7aは、トーションバネ8aにより径方向外側に付勢される。外筒3aには、外筒3aに対する内筒2aの回動状態が特定の状態、即ち、鍵穴21に対して解錠鍵5を挿脱可能な状態である場合に、クリックピン7aが篏合する凹部33aが設けられる。上記第2実施形態に係るシリンダ錠10aの構成によっても、シリンダ錠を小型化することが可能なクリックモーション機構を実現できる。
【0035】
《第3実施形態》
次に、
図10を用いて、本開示の第3実施形態に係るシリンダ錠10bの構成について説明する。
【0036】
図10は、第1実施形態の
図4に相当する断面図である。シリンダ錠10bは、内筒2aと、外筒3aと、クリックピン7aと、付勢部材としてのスプリング8bと、を有する。
【0037】
本実施形態に係るクリックピン7bは、クリックピン7と同様に円柱形状を有する。クリックピン7bは、内筒2aに形成される凹部23bに配置される。凹部23bには、付勢部材としてのスプリング8bが、クリックピン7bよりも径方向内側に配置される。クリックピン7bは、スプリング8bにより径方向外側に付勢される。上記第3実施形態に係るシリンダ錠10bの構成によっても、シリンダ錠を小型化することが可能なクリックモーション機構を実現できる。
【0038】
<ドア>
本実施形態に係るドア100は、
図11に示すように、建物躯体のドア開口部Aに開閉可能に納められる。ドア100は、戸先側に、ドア100の開閉操作用のハンドル9と、ハンドル9の上下にそれぞれ配置される一対のシリンダ錠10と、を有する。ドア100は、例えば、玄関ドアとして用いられる。シリンダ錠10に代えて、第2実施形態に係るシリンダ錠10a、及び第3実施形態に係るシリンダ錠10bのうちいずれかを適用してもよい。
【0039】
以上、本開示の実施形態に係るシリンダ錠及びドアについて説明した。しかし、本開示は上記の実施形態に限定されず、適宜変更が可能である。