(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096534
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】分光計測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
G01N21/27 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212361
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】門奈 瑛樹
(72)【発明者】
【氏名】浦上 恒幸
(72)【発明者】
【氏名】青木 宏道
(72)【発明者】
【氏名】谷口 宣明
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA02
2G059BB20
2G059EE02
2G059EE13
2G059GG03
2G059JJ01
2G059KK01
(57)【要約】
【課題】複数種類の計測対象に関するデータを容易に且つ精度良く取得することができる分光計測装置を提供する。
【解決手段】分光計測装置1は、本体部2と、本体部2に着脱可能に取り付けられたヘッド部3Aと、分光器4と、を備える。本体部2は、筐体21、及び筐体21内に配置された制御部22を含む。ヘッド部3Aは、対象物に照射される照射光L1を出射する複数の光源31、複数の光源31が実装された配線基板33、及び対象物から発せられた測定光L2を導光する導光部34を含む。分光器4は、導光部34によって導光された測定光L2を分光して検出する。制御部22は、複数の光源31及び分光器4を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体、及び前記筐体内に配置された制御部を含む本体部と、
対象物に照射される照射光を出射する複数の光源、前記複数の光源が実装された配線基板、及び前記対象物から発せられた測定光を導光する導光部を含み、前記本体部に着脱可能に取り付けられたヘッド部と、
前記導光部によって導光された前記測定光を分光して検出する分光器と、を備え、
前記制御部は、前記複数の光源及び前記分光器を制御する、分光計測装置。
【請求項2】
前記導光部は、光入射開口及び光出射開口を有する円筒状の筒部材を含む、請求項1に記載の分光計測装置。
【請求項3】
前記配線基板は、開口を有し、
前記筒部材は、前記開口を介して前記配線基板の両側に延在している、請求項2に記載の分光計測装置。
【請求項4】
前記筒部材は、金属によって形成されている、請求項2又は3に記載の分光計測装置。
【請求項5】
前記筒部材の内面は、光反射面である、請求項2~4のいずれか一項に記載の分光計測装置。
【請求項6】
前記導光部は、前記対象物から発せられた前記測定光を前記分光器の光入射部に集光するレンズを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の分光計測装置。
【請求項7】
前記複数の光源は、前記導光部を包囲するように配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の分光計測装置。
【請求項8】
前記ヘッド部は、複数の第1貫通孔、及び第2貫通孔を有する保持部材を更に含み、
前記複数の第1貫通孔のそれぞれの内側には、前記複数の光源のそれぞれが配置されており、
前記第2貫通孔の内側には、前記導光部が配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の分光計測装置。
【請求項9】
前記分光器は、前記本体部に取り付けられている、請求項1~8のいずれか一項に記載の分光計測装置。
【請求項10】
前記分光器は、前記ヘッド部に取り付けられている、請求項1~8のいずれか一項に記載の分光計測装置。
【請求項11】
前記ヘッド部は、前記配線基板に実装されたメモリを更に含み、
前記メモリは、前記複数の光源の特性データを記憶しており、
前記制御部は、前記メモリから前記特性データを取得すると共に前記分光器から検出信号を取得し、前記特性データ及び前記検出信号を外部の演算部に出力する、請求項1~10のいずれか一項に記載の分光計測装置。
【請求項12】
前記ヘッド部は、前記配線基板に実装されたメモリを更に含み、
前記メモリは、前記複数の光源の特性データを記憶しており、
前記制御部は、前記メモリから前記特性データを取得すると共に前記分光器から検出信号を取得し、前記特性データ及び前記検出信号に基づいて前記対象物における所定の定量値を算出する、請求項1~10のいずれか一項に記載の分光計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物に照射される照射光を出射する複数の光源を含むヘッド部と、対象物からヘッド部に入射した測定光が伝播する光ケーブルと、光ケーブルを伝播した測定光を分光して検出する本体装置と、を備える分光計測装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような分光計測装置は、計測対象(例えば、人体に含まれる脂肪等)が特定の波長の光を吸収しやすいという性質を利用して、対象物における所定の定量値(例えば、人体における脂肪量、脂肪率等)を取得するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、計測対象が吸収しやすい光の波長は、計測対象によって変わる場合がある。一例として、脂肪が吸収しやすい光の波長は930nm程度であり、クロロフィルが吸収しやすい光の波長は670nm程度であり、水が吸収しやすい光の波長は956nm程度である。そのため、上述したような分光計測装置は、計測対象ごとに専用の設計になりやすい。
【0005】
本発明は、複数種類の計測対象に関するデータを容易に且つ精度良く取得することができる分光計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の分光計測装置は、筐体、及び筐体内に配置された制御部を含む本体部と、対象物に照射される照射光を出射する複数の光源、複数の光源が実装された配線基板、及び対象物から発せられた測定光を導光する導光部を含み、本体部に着脱可能に取り付けられたヘッド部と、導光部によって導光された測定光を分光して検出する分光器と、を備え、制御部は、複数の光源及び分光器を制御する。
【0007】
この分光計測装置によれば、例えば、照射光の波長が互いに異なる複数種類のヘッド部を用意しておくことで、複数種類の計測対象について、計測に適したヘッド部を選択して、それを本体部に取り付けることが可能となる。また、ヘッド部が複数の光源だけでなく導光部も含んでいるため、導光部と複数の光源との位置関係も計測対象に応じて最適化することが可能となる。しかも、導光部と分光器との距離が短くなるため、分光器に対する測定光の入射効率の向上、延いては、分光器による測定光の分光精度の向上を実現することが可能となる。よって、この分光計測装置によれば、複数種類の計測対象に関するデータを容易に且つ精度良く取得することができる。
【0008】
本発明の分光計測装置では、導光部は、光入射開口及び光出射開口を有する円筒状の筒部材を含んでもよい。これによれば、外乱光の入射を抑制しつつ、対象物の特定の部位から発せられた測定光を効率良く分光器に入射させることができる。
【0009】
本発明の分光計測装置では、配線基板は、開口を有し、筒部材は、開口を介して配線基板の両側に延在していてもよい。これによれば、複数の光源、配線基板及び導光部を効率良く配置して、ヘッド部を小型化することができる。
【0010】
本発明の分光計測装置では、筒部材は、金属によって形成されていてもよい。これによれば、筒部材の耐久性を向上させることができる。
【0011】
本発明の分光計測装置では、筒部材の内面は、光反射面であってもよい。これによれば、測定光をより効率良く分光器に入射させることができる。
【0012】
本発明の分光計測装置では、導光部は、対象物から発せられた測定光を分光器の光入射部に集光するレンズを含んでもよい。これによれば、測定光をより効率良く分光器に入射させることができる。
【0013】
本発明の分光計測装置では、複数の光源は、導光部を包囲するように配置されていてもよい。これによれば、照射光の照射に応じて対象物から発せられた測定光を安定的に導光部に入射させることができる。
【0014】
本発明の分光計測装置では、ヘッド部は、複数の第1貫通孔、及び第2貫通孔を有する保持部材を更に含み、複数の第1貫通孔のそれぞれの内側には、複数の光源のそれぞれが配置されており、第2貫通孔の内側には、導光部が配置されていてもよい。これによれば、導光部と複数の光源との位置関係を所定の状態に維持することができる。
【0015】
本発明の分光計測装置では、分光器は、本体部に取り付けられていてもよい。これによれば、制御部と共に分光器の共通化を実現することができる。
【0016】
本発明の分光計測装置では、分光器は、ヘッド部に取り付けられていてもよい。これによれば、複数種類の計測対象について、計測に適した分光器を用いることができる。
【0017】
本発明の分光計測装置では、ヘッド部は、配線基板に実装されたメモリを更に含み、メモリは、複数の光源の特性データを記憶しており、制御部は、メモリから特性データを取得すると共に分光器から検出信号を取得し、特性データ及び検出信号を外部の演算部に出力してもよい。これによれば、制御部の構成を単純化することができる。
【0018】
本発明の分光計測装置では、ヘッド部は、配線基板に実装されたメモリを更に含み、メモリは、複数の光源の特性データを記憶しており、制御部は、メモリから特性データを取得すると共に分光器から検出信号を取得し、特性データ及び検出信号に基づいて対象物における所定の定量値を算出してもよい。これによれば、分光計測装置をスタンドアローンの装置として動作させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数種類の計測対象に関するデータを容易に且つ精度良く取得することができる分光計測装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】
図1に示されるII-II線に沿っての断面図である。
【
図4】
図3に示されるIV-IV線に沿っての断面図である。
【
図5】
図3に示されるV-V線に沿っての断面図である。
【
図6】
図3に示されるVI-VI線に沿っての断面図である。
【
図7】
図1に示される分光計測装置の分解斜視図である。
【
図8】他のヘッド部の光源ユニットの正面図である。
【
図9】他のヘッド部の光源ユニットの正面図である。
【
図10】
図1に示される分光計測装置の動作例を示すシーケンス図である。
【
図11】他の分光計測装置の動作例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1に示されるように、分光計測装置1は、対象物Sに所定の波長の照射光L1を照射し、照射光L1の照射に応じて対象物Sから発せられた測定光L2を分光して検出する。分光計測装置1は、測定光L2の検出信号を外部の演算部100に出力する。演算部100は、測定光L2の検出信号に基づいて対象物Sにおける所定の定量値を算出する。演算部100は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等のコンピュータ装置である。一例として、分光計測装置1は、計測対象(例えば、人体に含まれる脂肪等)が特定の波長の光を吸収しやすいという性質を利用して、対象物Sにおける所定の定量値(例えば、人体における脂肪量、脂肪率等)を取得するために、測定光L2の検出信号を外部の演算部100に出力する。
【0023】
図1及び
図2に示されるように、分光計測装置1は、本体部2と、ヘッド部3Aと、分光器4と、を備えている。本体部2は、筐体21、制御部22、支持構造体23、スイッチ24及びケーブル25を含んでいる。ヘッド部3Aは、複数の光源31、メモリ32、配線基板33、導光部34、保持部材35及びカバー36を含んでいる。以下の説明では、測定光L2の入射方向に平行な方向を方向Aといい、方向Aにおける一方の側及び他方の側をそれぞれ第1側及び第2側という。
【0024】
筐体21は、筒状の側壁210、第1壁211及び第2壁212を含んでいる。側壁210は、例えば、方向Aに平行な直線を中心線とする円筒状を呈している。筐体21は、操作者が握るグリップとして機能する。側壁210の外面には、操作者が握りやすくなるように複数の溝が設けられている。第1壁211は、側壁210に対して第1側に配置されている。第1壁211は、第1側及び第2側に開口した開口211aを有している。本実施形態では、第1壁211は、側壁210における第1側の端部210aに、例えばボルト(図示省略)によって固定されている。第2壁212は、側壁210に対して第2側に配置されている。第2壁212は、貫通孔212aを有している。本実施形態では、第2壁212は、側壁210と一体的に形成されている。
【0025】
制御部22は、筐体21内に配置されている。制御部22は、筐体21内において側壁210に取り付けられた支持構造体23に、例えばボルト(図示省略)によって固定されている。制御部22は、複数の光源31及び分光器4を制御する。制御部22は、例えば、FPGA(field-programmable gate array)等の集積回路及びEEPROM(electrically erasable programmable read-only memory)等の不揮発性メモリを含む電子部品によって、構成されている。スイッチ24は、側壁210に設置されている。スイッチ24は、配線(図示省略)を介して制御部22と電気的に接続されている。ケーブル25は、筐体21の貫通孔212aを介して筐体21の内側及び外側に延在している。ケーブル25は、制御部22と演算部100とを電気的に接続している。例えば、ケーブル25は、USBコネクタを介して演算部100と電気的に接続される。
【0026】
図3、
図4,
図5及び
図6に示されるように、配線基板33は、配線基板33の厚さ方向が方向Aに一致した状態で、本体部2に対して第1側に配置されている。配線基板33は、方向Aから見た場合に、例えば円形状を呈している。配線基板33は、第1側及び第2側に開口した開口33aを有している。複数の光源31及びメモリ32は、配線基板33に実装されている。本実施形態では、複数の光源31及びメモリ32は、配線基板33における第1側の主面に実装されている。配線基板33における第2側の主面には、コネクタ33bが設けられている。コネクタ33bには、制御部22から延在する配線(図示省略)が着脱可能に接続されている。複数の光源31及びメモリ32は、それぞれ、配線基板33及びコネクタ33b並びに配線(図示省略)を介して、制御部22と電気的に接続されている。
【0027】
各光源31は、対象物S(
図1参照)に照射される照射光L1を第1側に出射する。各光源31は、例えば、LED(light emitting diode)である。メモリ32は、複数の光源31の特性データを記憶している。メモリ32は、例えば、EEPROM等の不揮発性メモリである。複数の光源31の特性データは、例えば、各光源31が出射する照射光L1の波長範囲、波長スペクトル及び/又は中心波長を示すデータ、各光源31が出射する照射光L1の強度等を校正するためのデータ、並びに、対象物Sにおける所定の定量値を算出するための定量アルゴリズムを示すデータを含んでいる。
【0028】
保持部材35は、配線基板33に対して第1側に配置されている。保持部材35は、方向Aから見た場合に、例えば円形状を呈している。保持部材35は、複数の第1貫通孔35a、第2貫通孔35b及び第3貫通孔35cを有している。複数の第1貫通孔35a、第2貫通孔35b及び第3貫通孔35cのそれぞれは、方向Aに沿って保持部材35を貫通している。配線基板33は、各第1貫通孔35aの内側に各光源31が配置され且つ第3貫通孔35cの内側にメモリ32が配置された状態で、例えばボルト(図示省略)によって、保持部材35に固定されている。なお、保持部材35は、第3貫通孔35cの代わりに、第2側に開口する凹部を有していてもよく、メモリ32は、当該凹部の内側に配置されていてもよい。
【0029】
導光部34は、対象物S(
図1参照)から発せられた測定光L2を第1側から第2側に導光する。本実施形態では、導光部34は、方向Aに平行な直線を中心線とする円筒状の筒部材340である。筒部材340は、第1側の光入射開口340a及び第2側の光出射開口340bを有している。筒部材340は、例えば、光出射開口340bを含む第2側の端部のみが拡径された円筒状を呈している。筒部材340は、金属(例えば、アルミニウム)によって形成されている。筒部材340の内面340cは、光反射面である。内面340cには、光反射率を高める処理が施されていてもよい。なお、複数の光源31は、筒部材340を包囲するように配置されている。一例として、方向Aから見た場合に、複数の光源31は一つの円周上に並んでおり、筒部材340は当該一つの円周の中心上に位置している。
【0030】
筒部材340は、筒部材340における第1側の部分が第2貫通孔35bの内側に配置された状態で、例えば止めねじ(図示省略)によって、保持部材35に固定されている。つまり、筒部材340は、第2貫通孔35bの内側に配置されている。筒部材340は、開口33aを介して配線基板33の両側に延在している。光入射開口340aは、配線基板33に対して第1側に位置しており、光出射開口340bは、配線基板33に対して第2側に位置している。なお、第2貫通孔35bにおける第1側の端部は、テーパ状に拡径されている。
【0031】
本実施形態では、複数の光源31及びメモリ32が配線基板33に実装され且つ筒部材340及び配線基板33が保持部材35に固定されることで、光源ユニット30が構成されている。光源ユニット30は、複数の位置決め孔30aを有している。各位置決め孔30aは、方向Aに沿って配線基板33を貫通しており且つ保持部材35において第2側に開口している。複数の位置決め孔30aには、第1壁211から第2側に突出した複数の位置決めピン20aが対応している。光源ユニット30は、各位置決め孔30aに各位置決めピン20aが挿入され且つ第1壁211に配線基板33が接触することで、本体部2に対して位置決めされる。
【0032】
光源ユニット30が本体部2に対して位置決めされた状態では、保持部材35の第2貫通孔35b、配線基板33の開口33a及び筐体21の開口211aが方向Aに沿って並んでいる。一例として、方向Aから見た場合に、第2貫通孔35bは開口33aに含まれており、開口33aは開口211aに含まれている。光源ユニット30が本体部2に対して位置決めされた状態では、筒部材340の光出射開口340bが筐体21の開口211aの内側に位置しており、コネクタ33bが開口211aを介して筐体21内に突出している。
【0033】
カバー36は、筒状の本体部材360及び板状の光透過部材361を含んでいる。本体部材360は、例えば、方向Aに平行な直線を中心線とする円筒状を呈している。光透過部材361は、本体部材360における第1側の端部を塞いだ状態で、本体部材360に固定されている。本実施形態では、カバー36に設けられた雌ねじ36aと筐体21に設けられた雄ねじ21aとが螺合することで、光源ユニット30が本体部2に対して位置決めされた状態が保持される。なお、雌ねじ36aは、本体部材360における第2側の端部360aの内面に設けられており、雄ねじ21aは、筐体21における第1側の端部210aの外面に設けられている。
【0034】
分光器4は、筒部材340によって導光された測定光L2を分光して検出する。分光器4は、測定光L2を入射させる光入射部4aを有する筐体、入射した測定光L2を筐体内において分光する回折格子、及び、分光された測定光L2を筐体内において検出する光検出素子を含んでいる。本実施形態では、分光器4は、光入射部4aが筐体21の開口211aに臨むように筐体21内に配置されており、光入射部4aが筒部材340の中心線上に位置するように支持構造体23によって保持されている。つまり、分光器4は、本体部2に取り付けられている。光源ユニット30が本体部2に対して位置決めされた状態では、筒部材340における第2側の端部が支持構造体23に接触している。分光器4の光検出素子は、配線(図示省略)を介して制御部22と電気的に接続されている。
【0035】
以上のように構成された分光計測装置1では、ヘッド部3Aが本体部2に着脱可能に取り付けられているため、ヘッド部3Aを他のヘッド部に交換することができる。ヘッド部3Aの交換が必要なのは、計測に適した「照射光L1の波長」及び「導光部34と各光源31との位置関係」等が計測対象及び計測位置等によって変わるからである。
【0036】
一例として、
図7に示されるように、複数種類のヘッド部3A,3B,3Cが用意されている場合、計測対象及び計測位置等に応じて、複数種類のヘッド部3A,3B,3Cから一つのヘッド部が選択され、当該一つのヘッド部が本体部2に取り付けられる。各ヘッド部3B,3Cは、複数の光源31の特性においてヘッド部3Aとは異なっている。この例では、ヘッド部3Aの直径は、ヘッド部3Bの直径よりも小さく、ヘッド部3Cの直径は、ヘッド部3Bの直径よりも大きい。なお、各ヘッド部3A,3B,3Cの直径は、同じであってもよい。
【0037】
図8に示されるように、ヘッド部3Bの光源ユニット30では、共通の中心を有する二つの円周上に複数の光源31が並んでおり、筒部材340が当該中心上に位置している。
図9に示されるように、ヘッド部3Cの光源ユニット30では、共通の中心を有する三つの円周上に複数の光源31が並んでおり、筒部材340が当該中心上に位置している。なお、各ヘッド部3B,3Cの光源ユニット30において、外側の円周上に並んでいる複数の光源31は、計測位置が対象物Sの表面から深い場合に用いられる。
【0038】
ヘッド部3Aの各光源31が出射する照射光L1の波長範囲、ヘッド部3Bの各光源31が出射する照射光L1の波長範囲、及びヘッド部3Cの各光源31が出射する照射光L1の波長範囲は、少なくとも一部において互いにずれた関係にある。例えば、計測対象が脂肪である場合には、脂肪が吸収しやすい光の波長は930nm程度であるため、875~940nmの波長範囲の照射光L1を出射する光源31が用いられる。計測対象がクロロフィルである場合には、クロロフィルが吸収しやすい光の波長は670nm程度であるため、670~700nmの波長範囲の照射光L1を出射する光源31が用いられる。計測対象が水である場合には、水が吸収しやすい光の波長は956nm程度であるため、935~950nmの波長範囲の照射光L1を出射する光源31が用いられる。
【0039】
各ヘッド部3B,3Cが複数の光源31の特性においてヘッド部3Aとは異なっている一方で、各ヘッド部3B,3Cの光源ユニット30における複数の位置決め孔30aの位置は、ヘッド部3Aの光源ユニット30における複数の位置決め孔30aの位置と同じである(
図3参照)。更に、各ヘッド部3B,3Cのカバー36における端部360aの形状及び雌ねじ36aの規格も、ヘッド部3Aのカバー36における端部360aの形状及び雌ねじ36aの規格と同じである(
図3参照)。
【0040】
したがって、複数種類のヘッド部3A,3B,3Cのいずれのヘッド部も本体部2に取り付けることができる。ここで、本体部2に対する各ヘッド部3A,3B,3Cの取付けの手順の一例について説明する。まず、制御部22から延在する配線(図示省略)がコネクタ33bに接続される(
図3参照)。続いて、各位置決め孔30aに各位置決めピン20aが挿入され、第1壁211に配線基板33が接触させられる(
図3参照)。これにより、光源ユニット30が本体部2に対して位置決めされる。続いて、カバー36に設けられた雌ねじ36aと筐体21に設けられた雄ねじ21aとが螺合させられる(
図3参照)。これにより、本体部2に対する上記一つのヘッド部の取り付けが完了する。
【0041】
複数種類のヘッド部3A,3B,3Cから選択された一つのヘッド部が本体部2に取り付けられると、対象物Sの分光計測、及び対象物Sにおける所定の定量値の算出が実施される。ここで、対象物Sの分光計測及び定量値の算出の手順の一例について、
図10を参照しつつ説明する。まず、ケーブル25が演算部100に接続されると、光源ユニット30及び制御部22の電源がONとなる。続いて、制御部22が光源ユニット30のメモリ32から複数の光源31の特性データを取得し、制御部22が複数の光源31の特性データ及び分光器4の特性データを演算部100に出力する。続いて、演算部100が、複数の光源31の特性データに基づいて、対象物Sにおける所定の定量値を算出するための定量アルゴリズムを選択する。
【0042】
続いて、スイッチ24が押下されるか、或いは制御部22が演算部100から計測指示を受けると、対象物Sの分光計測を実施する。すなわち、各光源31が照射光L1を出射すると共に、分光器4が測定光L2を分光して検出し、制御部22が分光器4から検出信号を取得する。このとき、制御部22が、複数の光源31の特性データに基づいて、各光源31が出射する照射光L1の強度等を校正すると共に、分光器4の特性データに基づいて、分光器4から出力される検出信号の強度等を校正する。続いて、制御部22が検出信号を演算部100に出力する。続いて、演算部100が、選択した定量アルゴリズム、及び取得した検出信号に基づいて、対象物Sにおける所定の定量値を算出し、その結果をディスプレイに表示する。
【0043】
以上説明したように、分光計測装置1によれば、例えば、照射光L1の波長が互いに異なる複数種類のヘッド部3A,3B,3Cを用意しておくことで、複数種類の計測対象について、計測に適したヘッド部を選択して、それを本体部2に取り付けることが可能となる。また、各ヘッド部3A,3B,3Cが複数の光源31だけでなく導光部34も含んでいるため、導光部34と複数の光源31との位置関係も計測対象に応じて最適化することが可能となる。しかも、導光部34と分光器4との距離が短くなるため、分光器4に対する測定光L2の入射効率の向上、延いては、分光器4による測定光L2の分光精度の向上を実現することが可能となる。よって、分光計測装置1によれば、複数種類の計測対象に関するデータを容易に且つ精度良く取得することができる。
【0044】
分光計測装置1では、導光部34が、光入射開口340a及び光出射開口340bを有する円筒状の筒部材340を含んでいる。これにより、外乱光の入射を抑制しつつ、対象物Sの特定の部位から発せられた測定光L2を効率良く分光器4に入射させることができる。
【0045】
分光計測装置1では、配線基板33が開口33aを有し、筒部材340が開口33aを介して配線基板33の両側に延在している。これにより、複数の光源31、配線基板33及び導光部34を効率良く配置して、各ヘッド部3A,3B,3Cを小型化することができる。
【0046】
分光計測装置1では、筒部材340が金属によって形成されている。これにより、筒部材340の耐久性を向上させることができる。
【0047】
分光計測装置1では、筒部材340の内面340cが光反射面である。これにより、測定光L2をより効率良く分光器4に入射させることができる。
【0048】
分光計測装置1では、複数の光源31が、導光部34を包囲するように配置されている。これにより、照射光L1の照射に応じて対象物Sから発せられた測定光L2を安定的に導光部34に入射させることができる。
【0049】
分光計測装置1では、各ヘッド部3A,3B,3Cにおいて、保持部材35が、複数の第1貫通孔35a、及び第2貫通孔35bを有しており、各第1貫通孔35aの内側に各光源31が配置されており、第2貫通孔35bの内側に導光部34が配置されている。これにより、導光部34と複数の光源31との位置関係を所定の状態に維持することができる。
【0050】
分光計測装置1では、分光器4が本体部2に取り付けられている。これにより、制御部22と共に分光器4の共通化を実現することができる。
【0051】
分光計測装置1では、制御部22が、各ヘッド部3A,3B,3Cのメモリ32から複数の光源31の特性データを取得すると共に分光器4から検出信号を取得し、特性データ及び検出信号を外部の演算部100に出力する。これにより、制御部22の構成を単純化することができる。
【0052】
本発明は、上述した各実施形態に限定されない。例えば、制御部22は、メモリ32から複数の光源31の特性データを取得すると共に分光器4から検出信号を取得し、取得した特性データ及び検出信号に基づいて対象物Sにおける所定の定量値を算出してもよい。これによれば、分光計測装置1をスタンドアローンの装置として動作させることができる。その場合、本体部2にディスプレイが設けられていてもよい。
【0053】
その場合の、対象物Sの分光計測及び定量値の算出の手順の一例について、
図11を参照しつつ説明する。まず、スイッチ24が所定の時間だけ押下されると、光源ユニット30及び制御部22の電源がONとなる。続いて、制御部22が光源ユニット30のメモリ32から複数の光源31の特性データを取得し、複数の光源31の特性データに基づいて、対象物Sにおける所定の定量値を算出するための定量アルゴリズムを選択する。続いて、制御部22が、スイッチ24の再度の押下をトリガとして(計測開始指示受領)、対象物Sの分光計測を実施する。このとき、制御部22が、複数の光源31の特性データに基づいて、各光源31が出射する照射光L1の強度等を校正すると共に、分光器4の特性データに基づいて、分光器4から出力される検出信号の強度等を校正する。続いて、制御部22が、選択した定量アルゴリズム、及び取得した検出信号に基づいて、対象物Sにおける所定の定量値を算出し、その結果をディスプレイに表示する。
【0054】
分光器4は、各ヘッド部3A,3B,3Cに取り付けられていてもよい。これによれば、複数種類の計測対象について、計測に適した分光器4を用いることができる。
【0055】
導光部34は、筒部材340の代わりに、又は筒部材340と共に、測定光L2を分光器4の光入射部4aに集光するレンズを含んでもよい。これによれば、測定光L2をより効率良く分光器4に入射させることができる。
【0056】
制御部22と演算部100とは、有線(ケーブル25)によって電気的に接続されたが、有線の代わりに、無線によって電気的に接続されてもよい。
【0057】
各ヘッド部3A,3B,3Cの直径が異なる場合には、ヘッド部3Aの各光源31が出射する照射光L1の波長範囲、ヘッド部3Bの各光源31が出射する照射光L1の波長範囲、及びヘッド部3Cの各光源31が出射する照射光L1の波長範囲は、同じであってもよい。計測対象が同じであっても、深さが異なる部位に対する分光計測が求められる場合がある。その場合に、複数のヘッド部3A,3B,3Cから、最適な直径を有するヘッド部を選択すれば(例えば、浅い部位に対する分光計測を実施したい場合には、小さい直径を有するヘッド部3Aを選択し、深い部位に対する分光計測を実施したい場合には、大きい直径を有するヘッド部3Cを選択すれば)、深さが異なる部位ごとに分光計測の最適化を図ることができる。
【0058】
各ヘッド部3A,3B,3Cの直径が異なる場合において、ヘッド部3Aの各光源31が出射する照射光L1の波長範囲、ヘッド部3Bの各光源31が出射する照射光L1の波長範囲、及びヘッド部3Cの各光源31が出射する照射光L1の波長範囲は、同じであるときには、ヘッド部3Aの各光源31が出射する照射光L1の強度、ヘッド部3Bの各光源31が出射する照射光L1の強度、及びヘッド部3Cの各光源31が出射する照射光L1の強度は、互いに異なっていてもよい。例えば、直径が大きいヘッド部ほど、各光源31が出射する照射光L1の強度を大きくしておけば、深い部位に対する分光計測を実施したい場合に、直径が大きく且つ各光源31が出射する照射光L1の強度が大きいヘッド部3Cを選択することで、深い部位に対する分光計測の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1…分光計測装置、2…本体部、3A,3B,3C…ヘッド部、4…分光器、4a…光入射部、21…筐体、22…制御部、31…光源、32…メモリ、33…配線基板、33a…開口、34…導光部、35…保持部材、35a…第1貫通孔、35b…第2貫通孔、340…筒部材、340a…光入射開口、340b…光出射開口、340c…内面、100…演算部、L1…照射光、L2…測定光、S…対象物。