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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096535
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 27/00 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
B61D27/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212364
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】菅野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】森 優智
(72)【発明者】
【氏名】長澤 千青
(57)【要約】
【課題】展望席室における最前列の客席又はその近傍の客席に着座する乗客に対する温熱環境を、快適且つ低コストで向上できる鉄道車両を提供する。
【解決手段】展望用の前面窓1aと側窓1bとを有する展望席室2と、展望席室の上部に設けた運転席室3と、展望席室と隣接して設けた一般席室4と、一般席室の屋根構体上に設置し調和空気TKを供給する空調機5とを備えた鉄道車両10である。一般席室の天井部41の裏側に車両前後方向へ配設され空調機と連結されて調和空気を送給する第1空調ダクト51と、第1空調ダクトと連結され展望席室の天井部21の後端部213近傍まで配設された第2空調ダクト52とを備え、第2空調ダクトの前端部521には、調和空気を展望席室の天井部に沿って車両前方へ吹き出す吹出口53を備えた。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
展望用の前面窓と側窓とを有する展望席室と、前記展望席室の上部に設けた運転席室と、前記展望席室と隣接して設けた一般席室と、前記一般席室の屋根構体上に設置し調和空気を供給する空調機とを備えた鉄道車両であって、
前記一般席室の天井部の裏側に車両前後方向へ配設され前記空調機と連結されて前記調和空気を送給する第1空調ダクトと、前記第1空調ダクトと連結され前記展望席室の天井部の後端部近傍まで配設された第2空調ダクトとを備え、
前記第2空調ダクトの前端部には、前記調和空気を前記展望席室の天井部に沿って車両前方へ吹き出す吹出口を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記吹出口は、前記展望席室の天井部の後端部近傍における左右両方の側窓側にそれぞれ配設され、当該吹出口の開口断面が車両枕木方向に細長い略長方形状又は略長円形状に形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された鉄道車両において、
前記吹出口は、前記展望席室の天井部の後端部に埋め込まれ、前記展望席室の天井部の後端部と前記第2空調ダクトの前端部との交差部は、室内側が凸状となるように滑らかに湾曲する第1湾曲面として形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された鉄道車両において、
前記展望席室の天井部は、当該天井部の前端部から後端部までの間で室内側へ凸状となるように滑らかに湾曲する第2湾曲面として形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された鉄道車両において、
前記第1空調ダクト又は前記第2空調ダクトに連結され前記展望席室の天井部の中間部まで配設された第3空調ダクトを備え、
前記第3空調ダクトの前端部には、前記調和空気を前記展望席室の天井部に沿って車両前方へ吹き出す第2吹出口を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項6】
請求項5に記載された鉄道車両において、
前記第2吹出口は、前記展望席室の天井部に埋め込まれ、前記展望席室の天井部の中間部と前記第3空調ダクトの前端部との交差部は、室内側が凸状となるように滑らかに湾曲する第3湾曲面として形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、詳しくは、展望用の前面窓と側窓とを有する展望席室と、当該展望席室の上部に設けた運転席室と、を備えた鉄道車両において、展望席室における温熱環境を向上させ得る鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、展望用の前面窓と側窓とを有する展望席室を備えた鉄道車両においては、展望用の前面窓及び側窓は通常の窓より大きく形成されているため、当該展望用の前面窓及び側窓から、夏季であれば日差しなどによる熱気が室内に多く入り、また、冬季であれば車外の寒気によって冷やされ展望用の窓近傍で生成した冷気が室内に流れることによって、展望用の前面窓に隣接する第1列席や側窓に隣接する窓側席における温熱環境が低下しやすい傾向にあった。そのため、従来から展望席室における温熱環境を改善するための工夫が提案されていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、図15図16に示すように、展望用の前面窓101aと側窓101bとを有する展望席室102と、展望席室102の上部に設けた運転席室103と、展望席室102と隣接して設けた一般席室104と、一般席室104の屋根構体上に設置し調和空気TKを供給する空調機105と、を備えた鉄道車両100であって、一般席室104における天井裏に車両前後方向へ配設され空調機105と連結された第1空調ダクト105aと、第1空調ダクト105aと連結され運転席室103における側窓下部103aの側構体寄りに配設され且つ展望席室102の前面窓101aの近傍まで車両前後方向へ配設された第2空調ダクト105bとを備え、展望席室102における天井部102aには、第2空調ダクト105bから分岐され展望席室102内へ調和空気TKを吹き出す複数の吹出口105cを、展望席室102の側窓101bに沿って連続状に設けた鉄道車両100が開示されている。
【0004】
上記特許文献1の鉄道車両100によれば、展望席室102における天井部102aには、第2空調ダクト105bから分岐され展望席室102内へ調和空気TKを吹き出す複数の吹出口105cを、展望席室102の側窓101bに沿って連続状に設けたので、一般席室104の屋根構体上に設置した空調機105から供給する調和空気TKを、第1空調ダクト105a及び第2空調ダクト105bを経由して複数の吹出口105cから展望席室102内に送風することができる。そのため、調和空気TKを展望席室102全体に行き渡らせて、展望席室102における温熱環境を向上させることができる。
【0005】
また、第2空調ダクト105bは、運転席室103における側窓下部103aの側構体寄りに配設され且つ展望席室102の前面窓101aの近傍まで車両前後方向へ配設されたので、第2空調ダクト105bを展望席室102の狭い天井裏スペースに通す必要がない。そのため、展望席室102の室内空間を狭くさせることなく、第2空調ダクト105bの開口断面積を必要な大きさに形成して、必要な量の調和空気TKを展望席室102に供給することができ、展望席室102の温熱環境を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-93925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された鉄道車両100では、以下のような問題があった。
すなわち、第2空調ダクト105bから分岐された複数の吹出口105cは、展望席室102における天井部102aに側窓101bに沿って連続状に設けたので、各吹出口105cから吹き出された調和空気TKは、図16に示すように、展望席室102の側窓101bと側構体102bに沿って床部102cへ向って下降した後、床部102cから中央通路102dを経由して天井部102a近傍まで上昇するように、車両枕木方向で円を描くように循環して、展望席室102内の温度の均一化を図る。
【0008】
ところが、それぞれの吹出口105cから吹き出された調和空気TKは、互いに車両枕木方向で円を描くように循環するため、夏季又は冬季において前面窓101aから侵入する熱気又は冷気の影響を受けやすい展望席室102の最前列の客席106a又はその近傍の客席106bに着座する乗客に対する温熱環境が、それより後方の客席106c、106dに着座する乗客に対する温熱環境より、悪化しやすいという問題があった。
【0009】
この最前列の客席106a又はその近傍の客席106bに着座する乗客に対する温熱環境を改善するため、第2空調ダクト105bの先端側の吹出口105cから吹き出す調和空気TKの風量を増大させる方法が考えられるが、吹出口105cへ調和空気TKを送給する第2空調ダクト105bが運転席室103における側窓下部103aの側構体寄りに配設され、展望席室102の客室空間を可能な限り広くするため天井部102aを極力高く配設させる必要性から、第2空調ダクト105bの開口断面積を拡大させることには限界があり、吹出口105cから吹き出す調和空気TKの風量を増大させることは容易ではなかった。
【0010】
また、仮に、第2空調ダクト105bの開口断面積を拡大させ、吹出口105cから吹き出す調和空気TKの風量を増大させたとしても、吹出口105cから吹き出された調和空気TKは、展望席室102の側窓101bと側構体102bに沿って床部102cへ向って勢いよく下降するため、流れの速い調和空気TKが側窓101bに近い乗客に当たり、不快なドラフト感を生じさせやすいという問題があった。
【0011】
さらに、運転席室103の側窓下部103aと展望席室102の天井部102aとの狭い空間に配設された第2空調ダクト105bは、ダクト形状や開口断面積が制限され、結果として、第2空調ダクト105bの圧力損失が増大することになる。そのため、空調機105の大型化や消費電力の増大に繋がりやすいという問題があった。また、第2空調ダクト105bが前面窓101aの近傍まで延設されているため、第2空調ダクト105bが長くなり、コスト増加の問題もあった。
【0012】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、展望席室における最前列の客席又はその近傍の客席に着座する乗客に対する温熱環境を、快適且つ低コストで向上できる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両は、以下の構成を備えている。
(1)展望用の前面窓と側窓とを有する展望席室と、前記展望席室の上部に設けた運転席室と、前記展望席室と隣接して設けた一般席室と、前記一般席室の屋根構体上に設置し調和空気を供給する空調機とを備えた鉄道車両であって、
前記一般席室の天井部の裏側に車両前後方向へ配設され前記空調機と連結されて前記調和空気を送給する第1空調ダクトと、前記第1空調ダクトと連結され前記展望席室の天井部の後端部近傍まで配設された第2空調ダクトとを備え、
前記第2空調ダクトの前端部には、前記調和空気を前記展望席室の天井部に沿って車両前方へ吹き出す吹出口を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明においては、一般席室の天井部の裏側に車両前後方向へ配設され空調機と連結されて調和空気を送給する第1空調ダクトと、第1空調ダクトと連結され展望席室の天井部の後端部近傍まで配設された第2空調ダクトとを備え、第2空調ダクトの前端部には、調和空気を展望席室の天井部に沿って車両前方へ吹き出す吹出口を備えたので、吹出口から吹き出された調和空気は、展望席室の天井部に沿って前面窓近傍まで移動した後、前面窓に沿って下降して、展望席室の最前列の客席又はその近傍の客席に着座する乗客に対して先行して送風される。また、調和空気が展望席室の天井部や前面窓に沿って移動することによって、天井部や前面窓から室内側へ放射する熱気や冷気を遮断又は低減させることができる。そのため、夏季又は冬季において上記熱気又は冷気の影響を受けやすい展望席室の最前列の客席又はその近傍の客席に着座する乗客に対する温熱環境を向上させることができる。
【0015】
また、吹出口から吹き出された調和空気は、展望席室の天井部に沿って前面窓近傍まで移動した後、前面窓に沿って下降してから、展望席室における客席側の空間を経由して展望席室と一般席室との境界部近傍まで帰還するので、調和空気を車両前後方向で長円又は円を描くように循環させることができる。また、調和空気を車両前後方向で循環させることによって、温度変化の少ない一般席室の調和空気を、展望席室内へ誘引させることができる。そのため、展望席室内の車両前後方向における温度の均一化を向上させることができる。また、調和空気を車両枕木方向で円を描くように循環させる場合のように、流れの速い調和空気が側窓に近い乗客に当たることが少なく、不快なドラフト感を生じさせにくい。その結果、展望席室の客席に着座する乗客の快適性を向上できる。
【0016】
さらに、展望席室の天井部の後端部近傍まで配設された第2空調ダクトの前端部に吹出口を備えたので、第2空調ダクトのダクト長を大幅に短縮でき、コスト低減に寄与できる。また、展望席室の天井部の後端部近傍では、天井裏のスペースに余地があり、第2空調ダクトのダクト形状や開口断面積が制限されにくい。その結果、第2空調ダクトの圧力損失を低減でき、空調機の小型化や消費電力の減少に繋がりやすい。
【0017】
よって、本発明によれば、展望席室における最前列の客席又はその近傍の客席に着座する乗客に対する温熱環境を、快適且つ低コストで向上できる鉄道車両を提供することができる。
【0018】
(2)(1)に記載された鉄道車両において、
前記吹出口は、前記展望席室の天井部の後端部近傍における左右両方の側窓側にそれぞれ配設され、当該吹出口の開口断面が車両枕木方向に細長い略長方形状又は略長円形状に形成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、吹出口は、展望席室の天井部の後端部近傍における左右両方の側窓側にそれぞれ配設され、当該吹出口の開口断面が車両枕木方向に細長い略長方形状又は略長円形状に形成されているので、吹出口から吹出された調和空気は、展望席室の側窓側の天井部に沿って流れる気流となり、より確実に前面窓近傍まで移動することができる。また、吹出口から吹出された調和空気の気流は、展望席室の側窓の上部から放射する熱気や冷気を、より効果的に遮断又は低減させることができる。そのため、側窓側の客席に着座する乗客の快適性をより一層向上できる。
【0020】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両において、
前記吹出口は、前記展望席室の天井部の後端部に埋め込まれ、前記展望席室の天井部の後端部と前記第2空調ダクトの前端部との交差部は、室内側が凸状となるように滑らかに湾曲する第1湾曲面として形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、吹出口は、展望席室の天井部の後端部に埋め込まれ、展望席室の天井部の後端部と第2空調ダクトの前端部との交差部は、室内側が凸状となるように滑らかに湾曲する第1湾曲面として形成されているので、吹出口から吹出された調和空気は、コアンダ効果によって滑らかな第1湾曲面に沿って展望席室の天井部側へ湾曲し、展望席室の天井部に沿って前面窓近傍まで移動することができる。また、第2空調ダクトの前端部に備えた吹出口を、展望席室の天井部の後端部から下方へ突出させず、天井部への埋め込み式として設置することができる。そのため、調和空気を吹き出す吹出口を形成した展望席室の天井部の見栄えを向上させつつ、吹出口から吹出された調和空気を、展望席室の天井部に沿って前面窓近傍までより多く送給させることができる。その結果、展望席室の最前列の客席又はその近傍の客席に着座する乗客に対する温熱環境をより一層向上させることができる。
【0022】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記展望席室の天井部は、当該天井部の中間部が前端部から後端部までの間で室内側へ凸状となるように滑らかに湾曲する第2湾曲面として形成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、展望席室の天井部は、当該天井部の前端部から後端部までの間で室内側へ凸状となるように滑らかに湾曲する第2湾曲面として形成されているので、天井部のデザイン性(見栄え)を高めると共に、吹出口から吹出された調和空気は、コアンダ効果によって滑らかな第2湾曲面に沿って前面窓近傍までより多く移動することができる。そのため、調和空気を吹き出す吹出口を形成した展望席室の天井部の見栄えを向上しつつ、展望席室の天井部に沿って調和空気を前面窓近傍までより多く送給させることができる。その結果、展望席室の最前列の客席又はその近傍の客席に着座する乗客に対する温熱環境をより一層向上させることができる。
【0024】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記第1空調ダクト又は前記第2空調ダクトに連結され前記展望席室の天井部の中間部まで配設された第3空調ダクトを備え、
前記第3空調ダクトの前端部には、前記調和空気を前記展望席室の天井部に沿って車両前方へ吹き出す第2吹出口を備えたことを特徴とする。
【0025】
本発明においては、第1空調ダクト又は第2空調ダクトに連結され展望席室の天井部の中間部まで配設された第3空調ダクトを備え、第3空調ダクトの前端部には、調和空気を展望席室の天井部に沿って車両前方へ吹き出す第2吹出口を備えたので、吹出口から吹出された調和空気と第2吹出口から吹出された調和空気とが加算されて、より多くの調和空気を展望席室の天井部に沿って前面窓近傍まで送給させることができる。その結果、展望席室の最前列の客席又はその近傍の客席に着座する乗客に対する温熱環境をより一層向上させることができる。
【0026】
(6)(5)に記載された鉄道車両において、
前記第2吹出口は、前記展望席室の天井部に埋め込まれ、前記展望席室の天井部の中間部と前記第3空調ダクトの前端部との交差部は、室内側が凸状となるように滑らかに湾曲する第3湾曲面として形成されていることを特徴とする。
【0027】
本発明においては、第2吹出口は、展望席室の天井部に埋め込まれ、展望席室の天井部の中間部と第3空調ダクトの前端部との交差部は、室内側が凸状となるように滑らかに湾曲する第3湾曲面として形成されているので、第2吹出口から吹出された調和空気は、コアンダ効果によって滑らかな第3湾曲面に沿って展望席室の天井部側へ湾曲し、展望席室の天井部に沿って前面窓近傍まで移動することができる。また、第3空調ダクトの前端部に備えた第2吹出口を、展望席室の天井部の中間部から下方へ突出させず、天井部への埋め込み式として設置することができる。そのため、調和空気を吹き出す第2吹出口を形成した展望席室の天井部の見栄えを向上させつつ、第2吹出口から吹出された調和空気を、展望席室の天井部に沿って前面窓近傍までより多く送給させることができる。その結果、展望席室の最前列の客席又はその近傍の客席に着座する乗客に対する温熱環境をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、展望席室における最前列の客席又はその近傍の客席に着座する乗客に対する温熱環境を、快適且つ低コストで向上できる鉄道車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態の一態様を表す鉄道車両の概略構成図である。
図2図1に示す鉄道車両のA-A断面図である。
図3図1に示す鉄道車両のB部詳細断面図である。
図4図3に示すC-C断面図である。
図5図1に示す鉄道車両における展望席室内の温度と調和空気の吹き出し温度との温度差の、流体解析に基づく分布図である。
図6図5に示すD-D断面における温度差の分布図である。
図7図5に示すE-E断面における温度差の分布図である。
図8】特許文献1の鉄道車両(図15参照)における展望席室内の温度と調和空気の吹き出し温度との温度差の、流体解析に基づく分布図である。
図9図8に示すF-F断面における温度差の分布図である。
図10図8に示すG-G断面における温度差の分布図である。
図11図1に示す鉄道車両の第1変形例の概略構成図である。
図12図1に示す鉄道車両の第2変形例の概略構成図である。
図13図12に示す鉄道車両のH部詳細断面図である。
図14図13に示すI-I断面図である。
図15】特許文献1に記載された鉄道車両の空調装置の概略構成図である。
図16図15に示す鉄道車両のX-X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本実施形態の一態様を表す鉄道車両について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本実施形態に係る鉄道車両の構成及び空調機構の動作方法を詳細に説明した上で、本鉄道車両における展望席室内の温度と調和空気の吹き出し温度との温度差の分布状況と、特許文献1の鉄道車両における展望席室内の温度と調和空気の吹き出し温度との温度差の分布状況とを比較して、本鉄道車両における温熱環境の効果を説明する。また、本実施形態における変形例(変形例1、変形例2)について、具体的に説明する。
【0031】
<本実施形態に係る鉄道車両の構成及び空調機構の動作方法>
まず、本実施形態に係る鉄道車両の構成及び空調機構の動作方法について、図1図4を用いて説明する。図1に、本実施形態の一態様を表す鉄道車両の概略構成図を示す。図2に、図1に示す鉄道車両のA-A断面図を示す。図3に、図1に示す鉄道車両のB部詳細断面図を示す。図4に、図3に示すC-C断面図を示す。
【0032】
図1図4に示すように、本実施形態に係る鉄道車両10は、展望用の前面窓1aと側窓1bとを有する展望席室2と、展望席室2の上部に設けた運転席室3と、展望席室2と隣接して設けた一般席室4と、一般席室4の屋根構体上に設置し調和空気TKを供給する空調機5とを備えた鉄道車両10である。ここでは、一般席室4の天井部41は、展望席室2の天井部21より高く形成されている。展望席室2の天井部21は、室内側の天井面が車両前後方向で略平坦に形成されている。また、展望席室2の天井部21は、略水平な車両中央CL側の天井部21aと、当該天井部21aの両側端部に配置された側窓1b側の天井部21bとを備えている。
【0033】
一般席室4と展望席室2との境界部では、互いの天井部41、21を傾斜状に連結する連結壁42が設けられている。また、連結壁42の前方には、運転席室3が形成されている。運転席室3には、屋根部31と、屋根部31を支持する側構体33と、屋根部31と側構体33との間に設置された窓部3bと、展望席室2の天井部21の上方に配置され窓下端部331と連結された床部32とを備えている。
【0034】
また、展望席室2における展望用の前面窓1aと側窓1bは、良好な展望視界を得るため、窓の上下方向の大きさが、一般席室4の側窓43より大きく形成されている。また、展望席室2には、前面窓1aの下端部から室内側へ膨出するボンネット部24を有し、ボンネット部24の後方に形成された床部22には、例えば、1人又は複数人用の客席6(61、62、63、64)が車両前後方向へ複数列設置されている。客席6(61、62、63、64)は、車両中央通路25を挟んで左右の側窓1b寄りに配置されている。一般席室4の床部42にも、同様の客席6(65)が、それぞれ車両前後方向に複数列設置されている。なお、一般席室4の天井部41には、図示しない排気口が設置され、排気口から吸引した室内の空気を空調機5へ帰還させている。
【0035】
また、本鉄道車両10では、一般席室4の天井部41の裏側に車両前後方向へ配設され空調機5と連結されて調和空気TKを送給する第1空調ダクト51と、第1空調ダクト51と連結され展望席室2の天井部21の後端部213近傍まで配設された第2空調ダクト52とを備えている。また、第2空調ダクト52の前端部521には、調和空気TKを展望席室2の天井部21に沿って車両前方へ吹き出す吹出口53を備えている。吹出口53は、一般席室4の天井部41と展望席室2の天井部21とを連結する連結壁42の下端部421によって、一般席室4側から見えないように配置されている。
【0036】
この吹出口53から吹き出された調和空気TKは、展望席室2の天井部21に沿って前面窓1a近傍まで移動した後、前面窓1aに沿って下降して、展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対して先行して送風される。また、調和空気TKが展望席室2の天井部21や前面窓1aに沿って移動することによって、天井部21や前面窓1aから室内側へ放射する熱気や冷気を遮断又は低減させることができる。そのため、夏季又は冬季において車外からの熱気又は冷気の影響を受けやすい展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対する温熱環境を向上させることができる。
【0037】
また、吹出口53から吹き出された調和空気TKは、展望席室2の天井部21に沿って前面窓1a近傍まで移動した後、前面窓1aに沿って下降してから、展望席室2における客席6側の空間(例えば、車両中央通路25や客席6と床部22との隙間等)を経由して展望席室2と一般席室4との境界部近傍まで帰還する。そのため、展望席室2内において、調和空気TKを車両前後方向で長円又は円を描くように循環させることができる。また、展望席室2内にて調和空気TKを車両前後方向で循環させることによって、温度変化の少ない一般席室4内の調和空気TKを、展望席室2内へ誘引させることができる。そのため、展望席室2内の車両前後方向における温度の均一化を向上させることができる。また、調和空気TKを車両枕木方向で円を描くように循環させる場合のように、流れの速い調和空気TKが側窓1bに近い位置に着座する乗客に当たることが少なく、不快なドラフト感を生じさせにくい。その結果、展望席室2の客席6に着座する乗客の快適性を向上できる。
【0038】
さらに、展望席室2の天井部21の後端部213近傍まで配設された第2空調ダクト52の前端部521に吹出口53を備えたので、第2空調ダクト52のダクト長を大幅に短縮でき、コスト低減に寄与できる。また、展望席室2の天井部21の後端部213近傍では、天井裏のスペースに余地があり、第2空調ダクト52のダクト形状や開口断面積が制限されにくい。その結果、第2空調ダクト52の圧力損失を低減でき、空調機5の小型化や消費電力の減少に繋がりやすい。
【0039】
よって、本鉄道車両10によれば、展望席室2における最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対する温熱環境を、快適且つ低コストで向上できる鉄道車両10を提供することができる。
【0040】
また、図3図4に示すように、吹出口53は、展望席室2の天井部21の後端部213近傍における左右両方の側窓1b側にそれぞれ配設され、当該吹出口53の開口断面が車両枕木方向に細長い略長方形状又は略長円形状に形成されていることが好ましい。具体的には、吹出口53は、側窓1b側の天井部21bに形成されている。
【0041】
この場合、吹出口53から吹出された調和空気TKは、展望席室2の側窓1b側の天井部21bに沿って流れる気流となり、より確実に前面窓1a近傍まで移動することができる。また、吹出口53から吹出された調和空気TKの気流は、展望席室2の前端側へ行くに従って徐々に下方へ拡大するため、展望席室2の前端側における側窓1bの上部から放射する熱気や冷気を、より効果的に遮断又は低減させることができる。そのため、展望席室2の前端側における側窓1b側の客席6に着座する乗客の快適性をより一層向上できる。
【0042】
また、吹出口53は、展望席室2の天井部21の後端部213に埋め込まれ、展望席室2の天井部21の後端部213と第2空調ダクト52の前端部521との交差部214は、室内側が凸状となるように滑らかに湾曲する第1湾曲面WM1として形成されていることが好ましい。なお、展望席室2の天井部21の後端部213と第2空調ダクト52の前端部521との交差部214における交差角(内角)θ1は、鈍角が好ましく、120~150度程度がより好ましい。
【0043】
この場合、吹出口53から吹出された調和空気TKは、以下に説明するコアンダ効果によって、滑らかな第1湾曲面WM1に沿って展望席室2の天井部21側へ湾曲し、展望席室2の天井部21に沿って前面窓1a近傍まで移動することができる。すなわち、吹出口53から吹き出された調和空気TKが滑らかに湾曲する第1湾曲面WM1を流れる際、第1湾曲面WM1に近接した部分の圧力が、第1湾曲面WM1から離間した部分の圧力(大気圧)より小さくなる。したがって、調和空気TKには、第1湾曲面WM1に対して近接した部分と離間した部分との間に、圧力差が生じる。この圧力差によって、調和空気TKの流れには、圧力が小さい第1湾曲面WM1側へ押される押圧力PPが作用する。この押圧力PPによって、吹出口53から吹出された調和空気TKは、滑らかな第1湾曲面WM1に沿って展望席室2の天井部21側へ湾曲し、展望席室2の天井部21に沿って前面窓1a近傍まで移動することができる(コアンダ効果)。
【0044】
また吹出口53は、展望席室2の天井部21の後端部213に埋め込まれているので、第2空調ダクト52の前端部521に備えた吹出口53を、展望席室2の天井部21の後端部213から下方へ突出させず、天井部21への埋め込み式として設置することができる。そのため、調和空気TKを吹き出す吹出口53を形成した展望席室2の天井部21の見栄えを向上させつつ、吹出口53から吹出された調和空気TKを、展望席室2の天井部21に沿って前面窓1a近傍までより多く送給させることができる。その結果、展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対する温熱環境をより一層向上させることができる。
【0045】
<本鉄道車両における温熱環境の効果>
次に、本鉄道車両10における展望席室2内の温度と調和空気TKの吹き出し温度との温度差の分布状況と、特許文献1の鉄道車両における展望席室2内の温度と調和空気TKの吹き出し温度との温度差の分布状況とを比較して、本鉄道車両10における温熱環境の効果を、図1図5図10を用いて説明する。上記温度差の分布状況は、流体解析(CFD:Conputational Fluid Dynamics)の結果に基づいて得られたものである。図5に、図1に示す鉄道車両における展望席室内の温度と調和空気の吹き出し温度との温度差の、流体解析に基づく分布図を示す。図6に、図5に示すD-D断面における温度差の分布図を示す。図7に、図5に示すE-E断面における温度差の分布図を示す。図8に、特許文献1の鉄道車両(図15参照)における展望席室内の温度と調和空気の吹き出し温度との温度差の、流体解析に基づく分布図を示す。図9に、図8に示すF-F断面における温度差の分布図を示す。図10に、図8に示すG-G断面における温度差の分布図を示す。図5図10では、吹出口から吹き出した調和空気の温度と展望席室内の温度との温度差をドットの密度によって表示し、ドット密度が高いほど温度差が小さく、ドット密度が低いほど温度差が大きいことを表す。なお、吹出口から吹き出す調和空気の風速は、一般的な風速である4m/秒を想定した。
【0046】
(本鉄道車両)
図1図5図7に示すように、本鉄道車両10では、展望席室2における天井部21の後端部213から前端部212までの天井部21に近い箇所で、吹出口53から吹き出した調和空気TKの温度と展望席室2内の温度との温度差が少ない領域(ドット密度が高い領域)が、略一定の厚さで層状に形成されている。この温度差の少ない領域は、展望席室2における天井部21の前端部212近傍から前面窓1aに沿って下方へ屈曲しながら最前列の客席61及びその近傍の客席62に向けて拡大されている。
【0047】
したがって、吹出口53から吹き出された調和空気TKは、展望席室2の天井部21に沿って前面窓1a近傍まで移動した後、前面窓1aに沿って下降して、展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対して、温度変化をあまり伴わない状態で、先行して送風されることになる。また、温度変化をあまり伴わない状態で、調和空気TKが展望席室2の天井部21や前面窓1aに沿って移動することによって、天井部21や前面窓1aから室内側へ放射する熱気や冷気を遮断又は低減させることも、想定できる。そのため、夏季又は冬季において車外からの熱気又は冷気の影響を受けやすい展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対する温熱環境を向上させることが、十分予測できる。
【0048】
また、調和空気TKにおける温度差の少ない領域は、展望席室2における天井部21の前端部212近傍から前面窓1aに沿って下方へ屈曲した後、車両中央通路又は客席61、62と床部22との隙間等へ延び、後方の客席63、64の領域に拡大されている。また、展望席室2における最前列の客席61より後方の客席62、63、64付近では、略同程度の温度差となっている。
【0049】
したがって、吹出口53から吹き出された調和空気TKは、展望席室2の天井部21に沿って前面窓1a近傍まで移動した後、前面窓1aに沿って下降してから、展望席室2における客席6側の空間(例えば、車両中央通路等)を経由して展望席室2と一般席室4との境界部近傍まで帰還すること、すなわち、展望席室2内において調和空気TKが車両前後方向で長円又は円を描くように循環することによって、展望席室2内の車両前後方向における温度の均一化を向上させることができたと考えられる。また、図6図7に示すように、天井部21に沿って流れる調和空気TKが側窓1bに近い乗客に直接当たることが少なく、不快なドラフト感を生じさせにくい。その結果、展望席室2の客席6に着座する乗客の快適性を向上できる。
【0050】
(特許文献1の鉄道車両)
図8図10に示すように、特許文献1の鉄道車両では、吹出口から吹き出した調和空気TKの温度と展望席室2内の温度との温度差が小さい領域(ドット密度が高い領域)が、展望席室2における後方の客席63、64付近に存在するが、車両前方へ行く程、温度差が大きい領域(ドット密度が低い領域)が増加する。この温度差の大きい領域は、展望席室2における天井部21の前端部212及び前面窓1aの付近に多く存在し、最前列の客席61及びその近傍の客席62に向けて拡大されている。なお、温度差が小さい領域が、最前列の客席61の上方の天井部21に狭い範囲で存在するが、最前列の客席61付近まで届いていない。
【0051】
したがって、吹出口から吹き出された調和空気TKは、互いに車両枕木方向で円を描くように循環するため、夏季又は冬季において前面窓1aから侵入する熱気又は冷気の影響を受けやすい展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対する温熱環境が、それより後方の客席63、64に着座する乗客に対する温熱環境より、悪化しやすいことが理解できる。
【0052】
また、図10に示すように、展望席室2における後方の客席64の付近では、側窓1bに近い個所に温度差が小さい領域が存在する。したがって、天井部21の吹出口から下方に吹き出す調和空気TKが側窓1bに近い乗客に直接当たり、不快なドラフト感を生じさせやすいことが、想定できる。
【0053】
<変形例>
次に、本実施形態の鉄道車両における変形例(変形例1、変形例2)について、図11図14を用いて具体的に説明する。図11に、図1に示す鉄道車両の第1変形例の概略構成図を示す。図12に、図1に示す鉄道車両の第2変形例の概略構成図を示す。図13に、図12に示す鉄道車両のH部詳細断面図を示す。図14に、図13に示すI-I断面図を示す。なお、前述した本実施形態の鉄道車両10と共通する構成は、共通の符号を附して、原則としてその説明を割愛する。
【0054】
(第1変形例)
第1変形例に係る本鉄道車両10Bでは、図11に示すように、展望席室2の天井部21Bは、当該天井部21Bの前端部212Bから後端部213Bまでの間で室内側へ凸状となるように滑らかに湾曲する第2湾曲面WM2として形成されている。ここでは、展望席室2の室内空間を狭くさせないため、天井部21Bの前端部212Bと後端部213Bとを、中間部211Bより上方へ持ち上げるように、配置されている。そのため、天井部21Bの前端部212Bは、僅かに上方へ凹状に屈曲している。しかし、これに限る必要はない。例えば、中間部211Bを、天井部21Bの前端部212Bと後端部213Bとより下方へ配置しても良い。また、第2湾曲面WM2は、必ずしも一定の曲率で湾曲させる必要はなく、異なる曲率で湾曲する複数の湾曲面を組み合わせても良いし、湾曲面と平坦面とを組み合わせても良い。
【0055】
この場合、天井部21Bが前端部212Bから後端部213Bまでの間で室内側へ凸状となるように滑らかに湾曲するので、天井部21Bのデザイン性(見栄え)を高めることができると共に、吹出口53から吹出された調和空気TKは、コアンダ効果によって滑らかな第2湾曲面WM2に沿って前面窓1a近傍までより多く移動することができる。
【0056】
そのため、調和空気TKを吹き出す吹出口53を形成した展望席室2の天井部21Bの見栄えを向上しつつ、展望席室2の天井部21Bに沿って調和空気TKを前面窓1a近傍までより多く送給させることができる。その結果、展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対する温熱環境をより一層向上させることができる。
【0057】
(第2変形例)
第2変形例に係る本鉄道車両10Cでは、図12図14に示すように、第1空調ダクト51又は第2空調ダクト52に連結され展望席室2の天井部21Cの中間部211Cまで配設された第3空調ダクト54を備え、第3空調ダクト54の前端部541には、調和空気TKを展望席室2の天井部21Cに沿って車両前方へ吹き出す第2吹出口55を備えている。ここで、第2吹出口55は、展望席室2の天井部21Cの中間部211Cにおける左右両方の側窓1b側にそれぞれ配設され、当該第2吹出口55の開口断面が車両枕木方向に細長い略長方形状又は略長円形状に形成されている。なお、第3空調ダクト54は、図2に示す運転席室3の側構体33近傍で窓下端部331と展望席室2の天井部21bとに囲まれた空間に配置されている。
【0058】
この場合、吹出口53から吹出された調和空気TKと第2吹出口55から吹出された調和空気TKとが加算されて、より多くの調和空気TKを展望席室2の天井部21Cに沿って前面窓1a近傍まで送給させることができる。その結果、展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対する温熱環境をより一層向上させることができる。
【0059】
また、第2吹出口55は、展望席室2の天井部21Cに埋め込まれ、展望席室2の天井部21Cの中間部211Cと第3空調ダクト54の前端部541との交差部215は、室内側が凸状となるように滑らかに湾曲する第3湾曲面WM3として形成されている。したがって、第2吹出口55から吹出された調和空気TKは、コアンダ効果によって滑らかな第3湾曲面WM3に沿って展望席室2の天井部21C側へ湾曲し、展望席室2の天井部21Cに沿って前面窓1a近傍まで移動することができる。なお、展望席室2の天井部21Cの中間部211Cと第3空調ダクト54の前端部541との交差部215における交差角(内角)θ1は、鈍角が好ましく、120~150度程度がより好ましい。
【0060】
また、第3空調ダクト54の前端部541に備えた第2吹出口55を、展望席室2の天井部21Cの中間部211Cから下方へ突出させず、天井部21Cへの埋め込み式として設置することができる。そのため、調和空気TKを吹き出す第2吹出口55を形成した展望席室2の天井部21Cの見栄えを向上させつつ、第2吹出口55から吹出された調和空気TKを、展望席室2の天井部21Cに沿って前面窓1a近傍までより多く送給させることができる。その結果、展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対する温熱環境をより一層向上させることができる。
【0061】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両10、10B、10Cによれば、一般席室4の天井部41の裏側に車両前後方向へ配設され空調機5と連結されて調和空気TKを送給する第1空調ダクト51と、第1空調ダクト51と連結され展望席室2の天井部21、21B、21Cの後端部213、213B近傍まで配設された第2空調ダクト52とを備え、第2空調ダクト52の前端部521には、調和空気TKを展望席室2の天井部21、21B、21Cに沿って車両前方へ吹き出す吹出口53を備えたので、吹出口53から吹き出された調和空気TKは、展望席室2の天井部21、21B、21Cに沿って前面窓1a近傍まで移動した後、前面窓1aに沿って下降して、展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対して先行して送風される。また、調和空気TKが展望席室2の天井部21、21B、21Cや前面窓1aに沿って移動することによって、天井部21、21B、21Cや前面窓1aから室内側へ放射する熱気や冷気を遮断又は低減させることができる。そのため、夏季又は冬季において上記熱気又は冷気の影響を受けやすい展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対する温熱環境を向上させることができる。
【0062】
また、吹出口53から吹き出された調和空気TKは、展望席室2の天井部21、21B、21Cに沿って前面窓1a近傍まで移動した後、前面窓1aに沿って下降してから、展望席室2における客席6側の空間を経由して展望席室2と一般席室4との境界部近傍まで帰還するので、調和空気TKを車両前後方向で長円又は円を描くように循環させることができる。また、調和空気TKを車両前後方向で循環させることによって、温度変化の少ない一般席室4の調和空気TKを、展望席室2内へ誘引させることができる。そのため、展望席室2内の車両前後方向における温度の均一化を向上させることができる。また、調和空気TKを車両枕木方向で円を描くように循環させる場合のように、流れの速い調和空気TKが側窓1bに近い乗客に当たることが少なく、不快なドラフト感を生じさせにくい。その結果、展望席室2の客席6に着座する乗客の快適性を向上できる。
【0063】
さらに、展望席室2の天井部21、21B、21Cの後端部213、213B近傍まで配設された第2空調ダクト52の前端部521に吹出口53を備えたので、第2空調ダクト52のダクト長を大幅に短縮でき、コスト低減に寄与できる。また、展望席室2の天井部21、21B、21Cの後端部213、213B近傍では、天井裏のスペースに余地があり、第2空調ダクト52のダクト形状や開口断面積が制限されにくい。その結果、第2空調ダクト52の圧力損失を低減でき、空調機5の小型化や消費電力の減少に繋がりやすい。
【0064】
よって、本実施形態によれば、展望席室2における最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対する温熱環境を、快適且つ低コストで向上できる鉄道車両10、10B、10Cを提供することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、吹出口53は、展望席室2の天井部21、21B、21Cの後端部213、213B近傍における左右両方の側窓1b側にそれぞれ配設され、当該吹出口53の開口断面が車両枕木方向に細長い略長方形状又は略長円形状に形成されているので、吹出口53から吹出された調和空気TKは、展望席室2の側窓1b側の天井部21bに沿って流れる気流となり、より確実に前面窓1a近傍まで移動することができる。また、吹出口53から吹出された調和空気TKの気流は、展望席室2の側窓1bの上部から放射する熱気や冷気を、より効果的に遮断又は低減させることができる。そのため、側窓1b側の客席6に着座する乗客の快適性をより一層向上できる。
【0066】
また、本実施形態によれば、吹出口53は、展望席室2の天井部21、21B、21Cの後端部213、213Bに埋め込まれ、展望席室2の天井部21、21B、21Cの後端部213、213Bと第2空調ダクト52の前端部521との交差部214は、室内側が凸状となるように滑らかに湾曲する第1湾曲面WM1として形成されているので、吹出口53から吹出された調和空気TKは、コアンダ効果によって滑らかな第1湾曲面WM1に沿って展望席室2の天井部21、21B、21C側へ湾曲し、展望席室2の天井部21、21B、21Cに沿って前面窓1a近傍まで移動することができる。また、第2空調ダクト52の前端部521に備えた吹出口53を、展望席室2の天井部21、21B、21Cの後端部213、213Bから下方へ突出させず、天井部21、21B、21Cへの埋め込み式として設置することができる。そのため、調和空気TKを吹き出す吹出口53を形成した展望席室2の天井部21、21B、21Cの見栄えを向上させつつ、吹出口53から吹出された調和空気TKを、展望席室2の天井部21、21B、21Cに沿って前面窓1a近傍までより多く送給させることができる。その結果、展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対する温熱環境をより一層向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、展望席室2の天井部21Bは、当該天井部21Bの前端部212Bから後端部213Bまでの間で室内側へ凸状となるように滑らかに湾曲する第2湾曲面WM2として形成されているので、天井部21Bのデザイン性(見栄え)を高めると共に、吹出口53から吹出された調和空気TKは、コアンダ効果によって滑らかな第2湾曲面WM2に沿って前面窓1a近傍までより多く移動することができる。そのため、調和空気TKを吹き出す吹出口53を形成した展望席室2の天井部21Bの見栄えを向上しつつ、展望席室2の天井部21Bに沿って調和空気TKを前面窓1a近傍までより多く送給させることができる。その結果、展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対する温熱環境をより一層向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、第1空調ダクト51又は第2空調ダクト52に連結され展望席室2の天井部21Cの中間部211Cまで配設された第3空調ダクト54を備え、第3空調ダクト54の前端部541には、調和空気TKを展望席室2の天井部21Cに沿って車両前方へ吹き出す第2吹出口55を備えたので、吹出口53から吹出された調和空気TKと第2吹出口55から吹出された調和空気TKとが加算されて、より多くの調和空気TKを展望席室2の天井部21Cに沿って前面窓1a近傍まで送給させることができる。その結果、展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対する温熱環境をより一層向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、第2吹出口55は、展望席室2の天井部21Cに埋め込まれ、展望席室2の天井部21Cの中間部211Cと第3空調ダクト54の前端部541との交差部215は、室内側が凸状となるように滑らかに湾曲する第3湾曲面WM3として形成されているので、第2吹出口55から吹出された調和空気TKは、コアンダ効果によって滑らかな第3湾曲面WM3に沿って展望席室2の天井部21C側へ湾曲し、展望席室2の天井部21Cに沿って前面窓1a近傍まで移動することができる。また、第3空調ダクト54の前端部541に備えた第2吹出口55を、展望席室2の天井部21Cの中間部211Cから下方へ突出させず、天井部21Cへの埋め込み式として設置することができる。そのため、調和空気TKを吹き出す第2吹出口55を形成した展望席室2の天井部21Cの見栄えを向上させつつ、第2吹出口55から吹出された調和空気TKを、展望席室2の天井部21Cに沿って前面窓1a近傍までより多く送給させることができる。その結果、展望席室2の最前列の客席61又はその近傍の客席62に着座する乗客に対する温熱環境をより一層向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、展望用の前面窓と側窓とを有する展望席室と、当該展望席室の上部に設けた運転席室とを備えた鉄道車両において、展望席室における温熱環境を向上させ得る鉄道車両として利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1a 前面窓
1b 側窓
2 展望席室
3 運転席室
4 一般席室
5 空調機
6、61、62、63、64 客席
10、10B、10C 鉄道車両
21、21B、21C 天井部
21a、21b 天井部
41 天井部
51 第1空調ダクト
52 第2空調ダクト
53 吹出口
54 第3空調ダクト
55 第2吹出口
211、211B、211C 中間部
212、212B、 前端部
213、213B 後端部
214、215 交差部
521、541 前端部
TK 調和空気
WM1 第1湾曲面
WM2 第2湾曲面
WM3 第3湾曲面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16