(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096554
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】二次電池、および、積層電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20230630BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20230630BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20230630BHJP
H01M 50/431 20210101ALI20230630BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230630BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20230630BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20230630BHJP
H01M 4/74 20060101ALI20230630BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230630BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20230630BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20230630BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20230630BHJP
H01M 50/454 20210101ALI20230630BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20230630BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230630BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230630BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M50/42
H01M50/44
H01M50/431
H01M4/38 Z
H01M4/66 A
H01M4/80 C
H01M4/74 C
H01M10/052
H01M4/134
H01M4/136
H01M50/46
H01M50/454
H01M50/457
H01M50/443 M
H01M50/434
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212392
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】逢坂 哲彌
(72)【発明者】
【氏名】三栗谷 仁
(72)【発明者】
【氏名】児島 映理
(72)【発明者】
【氏名】浅野 剛太
【テーマコード(参考)】
5H017
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC03
5H017CC05
5H017CC28
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017HH05
5H021AA06
5H021CC02
5H021CC04
5H021EE06
5H021EE21
5H021HH10
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AK05
5H029AL12
5H029AM04
5H029AM07
5H029BJ12
5H029CJ22
5H029DJ04
5H029DJ15
5H029DJ16
5H029EJ04
5H029EJ12
5H029HJ12
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA16
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA03
5H050DA04
5H050DA06
5H050DA07
5H050DA08
5H050DA19
5H050FA02
5H050GA22
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】 長寿命の二次電池1を提供する。
【解決手段】 二次電池1は、第1の集電板10と、金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極20と、有機材料を基体とする第1のセパレータ30と、多孔膜からなる第2のセパレータ40と、正極活物質を含む正極50と、第2の集電板60と、が順に積層されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の集電板と、
金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極と、
有機材料を基体とする第1のセパレータと、
多孔膜からなる第2のセパレータと、
正極活物質を含む正極と、
第2の集電板とが、この順に積層されていることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記第1のセパレータが、前記負極にコーティングされた、リチウム塩が溶解している電解液を含む紫外線硬化型樹脂からなる電解質膜であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記紫外線硬化型樹脂がエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートであることを特徴とする請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第2のセパレータと前記正極との間の前記正極の表面にコーティングされている、前記第1のセパレータと同じ組成の電解質膜からなる第3のセパレータを更に具備することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1のセパレータが、導電性微粒子を担持した、不織布または繊維抄造シートであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
前記導電性微粒子が、炭素粒子であることを特徴とする請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記正極が、硫黄系正極活物質を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記負極と前記正極との間の空間に、電解質が充填されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記第1の集電板および前記第2の集電板は、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、銀、または金からなる、板、発泡基板、または、パンチングメタル板であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
第1の二次電池と第2の二次電池とを含む複数の二次電池が積層されおり、
前記複数の二次電池のそれぞれは、
第1の集電板と、
金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極と、
有機材料を基体とする第1のセパレータと、
多孔膜からなる第2のセパレータと、
正極活物質を含む正極と、
第2の集電板とが、この順に積層されており、
前記第1の二次電池の前記第2の集電板は、前記第1の二次電池の上に積層されている前記第2の二次電池の前記第1の集電板を兼ねていることを特徴とする積層電池。
【請求項11】
前記第1のセパレータが、前記負極にコーティングされた、リチウム塩が溶解している電解液を含む紫外線硬化型樹脂からなる電解質膜であることを特徴とする請求項10に記載の積層電池。
【請求項12】
前記第1のセパレータが、導電性微粒子を担持した不織布または繊維抄造シートであることを特徴とする請求項11に記載の積層電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極を具備する二次電池、および、金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極を具備する二次電池が積層された積層電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末の普及、環境問題に対応した電気自動車やハイブリッド電気自動車の研究開発に伴い、高容量の二次電池が要望されている。高容量の二次電池としては、リチウムイオン電池が広く普及している。
【0003】
リチウムイオン電池よりも高容量の二次電池として、正極活物質として硫黄を有するリチウム硫黄電池が注目されている。硫黄は理論容量が1670mAh/g程度であり、リチウムイオン電池の代表的な正極活物質であるLiCoO2(理論容量:約140mAh/g)よりも理論容量が10倍程度高い。また硫黄は、低コストであり、資源が豊富である。
【0004】
リチウム硫黄電池では、放電時には正極において、単体硫黄が還元され多硫化物となる。多硫化物とリチウムとからなる多硫化リチウムは有機溶媒に溶解しやすく電解液にも溶出する。
【0005】
充電中に、電解液に溶出した多硫化アニオンは、負極表面に到達すると還元され、正極表面に到達すると酸化される。すなわち、電解液中で、物質移動による短絡が起こる。すると、充電電流を加え続けても充電されないという、いわゆるシャトル効果によってクーロン効率(放電容量/充電容量)が低下する。
【0006】
特開2005-79096号公報には、正極からの多硫化物の溶出を防止するために、正極の表面を高分子フィルムで被覆したリチウム硫黄二次電池が開示されている。
【0007】
一方、負極に金属リチウムを用いた二次電池では、充電時に樹枝状のリチウム(デンドライト)が生成することがある。充放電を繰り返すと、デンドライトが成長して、負極と正極とを隔離しているセパレータを貫通し、電池の内部短絡を引き起こすおそれがあった。
【0008】
国際公開第2015/141120号には、正極活物質として、Fe2(SO4)3を含むリチウム一次電池において、Feイオンが負極表面で析出しデンドライトを形成するのを防止するため、粉末、または、繊維状の材料を含む被覆層を負極に配設することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005-79096号公報
【特許文献2】国際公開第2015/141120号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の実施形態は、長寿命の二次電池、および、長寿命の積層電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態の二次電池は、第1の集電板と、金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極と、有機材料を基体とする第1のセパレータと、多孔膜からなる第2のセパレータと、正極活物質を含む正極と、第2の集電板と、がこの順に積層されている。
【0012】
本発明の別の実施形態の積層電池は、第1の二次電池と第2の二次電池とを含む複数の二次電池が積層されおり、前記複数の二次電池のそれぞれは、第1の集電板と、金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極と、有機材料を基体とする第1のセパレータと、多孔膜からなる第2のセパレータと、正極活物質を含む正極と、第2の集電板とが、この順に積層されており、前記第1の二次電池の前記第1の集電板は、前記第1の二次電池の上に積層されている前記第2の二次電池の前記第2の集電板を兼ねている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、長寿命の二次電池、および、長寿命の積層電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の二次電池の構成模式図である。
【
図2】従来の二次電池の充放電サイクル特性を示す図である。
【
図3】第1実施形態の二次電池の充放電サイクル特性を示す図である。
【
図4】第2実施形態の二次電池の構成模式図である。
【
図5】第3実施形態の二次電池の構成模式図である。
【
図6】第3実施形態の二次電池の充放電サイクル特性を示す図である。
【
図7】第4実施形態の積層電池の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1に示すように、本実施形態の二次電池1(以下、「電池1」という。)は、主要構成要素である、第1の集電板10と、負極20と、第1のセパレータ30と、第2のセパレータ40と、正極50と、第2の集電板60とが、この順に積層され、電池ケース70に収容されている。
【0016】
なお、実施形態に基づく図面は、模式的なものである。図面の各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なる。図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。一部の構成要素の図示、符号の付与を省略する。
【0017】
第1の集電板10は、負極集電板である。負極20は、金属リチウムまたはリチウム合金を含む。第1のセパレータ30は、有機材料を基体とする。第2のセパレータ40は、多孔膜からなる。正極50は、正極活物質を含む。第2の集電板60は、正極集電板である。第2のセパレータ40の孔には電解液45が充填されている。
【0018】
次に、電池1の構成要素について順に説明する。
【0019】
<第1の集電体>
第1の集電板10は、銅、鉄(ステンレス鋼等)、ニッケル、アルミニウム、銀、または金からなる金属板である。
【0020】
導電性を有する樹脂または導電性フィラーを含有させた樹脂を第1の集電板10として使用してもよい。第1の集電板10の厚さは、例えば1μm~1000μmであるが、この範囲に限定されない。
【0021】
<負極>
負極20は、厚さ100μmのリチウム金属板を、第1の集電板10である銅からなる厚さ500μmの金属板に、貼り付けることで作製されている。
【0022】
負極20は、負極活物質として金属リチウムまたはリチウム合金を含んでいればよい。リチウム合金としては、アルミニウム、錫、鉛、インジウム、ビスマス、カドミウムなどとの合金が用いられるが、Li-Al合金が好ましい。
【0023】
リチウム合金として、低融点金属とリチウムの合金を負極20として用いることによって、金属リチウム負極よりも、デンドライトの発生が抑制できる。リチウム合金に含まれるリチウム以外の元素の含有量は、放電容量の確保および内部抵抗の安定化の観点から、0.1質量%以上、5質量%以下が好ましい。
【0024】
<第1のセパレータ>
電池1では、有機材料を基体とする第1のセパレータ30は、負極20にコーティングされた、リチウム塩が溶解している電解液を含む紫外線硬化型樹脂からなる。
【0025】
紫外線硬化型樹脂のモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)、アクリルアミド、ジビニルベンゼン、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、コハク酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、スベリン酸ジアリル、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジビニルエーテル、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート(TTEGDA)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGDMA)、および、ポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも一つ以上である。
【0026】
光重合開始剤は、例えば、2-ヒドロキシ2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(HMPP)、ベンゾインエーテル、ジアルキルアセトフェノン、ヒドロキシルアルキルケトン、フェニルグリオキシレート、ベンジルジメチルケタル、アシルホスフィン、および、アルファ-アミノケトンからなる群から選択される1以上である。
【0027】
リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、LiClO4、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド(LiFSA)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA)、からなる群から選択される1以上である。
【0028】
電解液45としては、Li塩とグライムとが錯体を構成している各種のイオン液体を用いることが好ましい。グライムとしては、モノグライム(G1)、ジグライム(G2)、トリグライム(G3)、テトラグライム(G4)等を用いる。また、複数の種類のグライムを混合して電解液45として用いてもよい。
【0029】
電解液45は、粘度低減のため希釈剤として、例えば、ハイドロフルオロエーテル(HFE)を含んでいてもよい。以下に示すハイドロフルオロエーテルを希釈剤として好ましく用いることができる。
【0030】
HF2CF2CH2C-O-CF2CF2H(HFE-1)
F3CH2C-O-CF2CF2H(HFE-2)
【0031】
もちろん、従来のリチウムイオン電池で用いられている各種の有機溶媒を電解液45として用いてもよい。
【0032】
第1のセパレータ30の厚さは、例えば1μm以上100μm以下が好ましく、2μm以上30μm以下が特に好ましい。前記範囲未満では効果が十分ではなく、先記範囲超であると電気抵抗が高くなる。
【0033】
<第2のセパレータ>
第2のセパレータ40である多孔膜は、ポリマーで構成される。このような多孔膜を構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミド、アラミドが挙げられる。
【0034】
特にポリオレフィン系微多孔膜は、有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質があり、電解液との反応性を低く抑えることができることから好ましい。第2のセパレータ40の厚みは限定されないが、車両のモータ駆動用二次電池の用途においては、単層または多層で全体の厚み4μm~60μmであることが好ましい。第2のセパレータ40の微細孔の径は、最大で10μm以下(通常、1μm~10μm程度)である。第2のセパレータ40の空孔率は20~80%であることが好ましい。
【0035】
<正極>
正極50は、単体硫黄、金属硫化物、金属多硫化物、および有機硫黄化合物からなる群から選択される少なくとも一つを含む硫黄系活物質を有していればよい。金属硫化物としては、リチウム多硫化物が挙げられ、金属多硫化物としては、TSn (T=Ni、 Co、 Cu、 Fe、 Mo、 Ti、1≦n≦4) が挙げられる。また、有機硫黄化合物としては、有機ジスルフィド化合物、カーボンスルフィド化合物が挙げられる。
【0036】
正極50は、上記硫黄系活物質に加えて、結着剤および導電剤を含んでもよい。そして、これら電極材料のスラリー(ペースト)を、第2の集電板60に塗布して乾燥することにより、電極材料を担体に担持させて正極50が製造される。
【0037】
複合体中の硫黄系活物質の含有量は、好ましくは50~98質量%であり、より好ましくは80~98質量%である。活物質の含有量が前記範囲であれば、エネルギー密度を高くすることができるため好適である。塗布層厚さは、好ましくは、10μm~500μmであり、より好ましくは20μm~300μmであり、さらに好ましくは10μm~50μmである。
【0038】
結着剤は、電解液45と反応しないものであれば特に限定されることはない。例えば、結着剤としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(PAALi)、エチレンオキシドもしくは一置換エポキサイドの開環重合物などのポリアルキレンオキサイド、または、これらの混合物が挙げられる。
【0039】
<第2の集電板>
第2の集電板60は、第1の集電板10と同じ組成、同じ厚さの金属板を用いてもよいし、異なった金属板を用いてもよい。ただし、第2の集電板60は、発泡基板、または、パンチングメタル板であることが、表面に多くの活物質を担持できるため好ましい。
【0040】
<電池ケース>
内部が密封されている電池ケース70は、内圧が所定レベル以上に上昇した場合に、内圧を開放するように設定された安全弁(不図示)が設けられている。電池ケース70には、所要の強度を有する金属材料(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼)が用いられる。電池ケース70の一部が、第1の集電板10または第2の集電板60を兼ねていてもよい。
【0041】
<作製方法>
次に、電池1の作製方法の一例について簡単に説明する。
【0042】
第1のセパレータ30は、モノマーのUV硬化によって作製した。モノマー溶液の組成は、G1/G3:LiTFSI/ETPTA):HMPP=85:15:0.15である。すなわち、モノマーETPTAと光重合開始剤HMPPを、G1/G3(1/1:体積比):LiTFSI:HFE-1=1:1:4(モル比)に溶解して、モノマー溶液を調製した。モノマー溶液の調製は、スーパードライルーム(給気露点温度、-95℃)において、行った。
【0043】
厚さ50μmの銅板からなる第1の集電板10に、負極20である厚さ100μmの金属リチウムを貼り合わせた。金属リチウムの表面に、モノマー溶液を、0.5mg/cm2~5mg/cm2になるようにコーティングした、塗布されたモノマー溶液に、UV照射装置(波長365nm)を用いて、紫外線(1080mW/cm2)を、20秒間照射し、モノマー溶液を硬化することによって、第1のセパレータ30を作製した。第1のセパレータ30の厚さは、10μmであった。
【0044】
正極50は、硫黄系活物質である単体硫黄(S)と導電剤であるKBとを含むケッチェンブラック(KB)複合体である。KB複合体の重量比は、(S/KB=6/4)である。結着剤は、CMC(カルボキシメチルセルロース)およびSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)である。
【0045】
正極スラリーの作製では、硫黄60重量と、導電剤としてケッチェンブラック(KB)を40重量%の割合で混合し、さらに155℃、アルゴン雰囲気下で12時間の加熱処理を行うことで、S/KB複合体が作製された。S/KB複合体に結着剤として、CMC(カルボキシメチルセルロース)およびSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)を混合し、純水を加えて撹拌することによって正極スラリーは作製された。正極活物質の重量比は、(KB複合体/KB/CMC/SBR=92.5/4/1.5/2)である。
【0046】
厚さ7μmのアルミニウムからなる第2の集電板60に、カーボン導電塗料を下塗りしてから、正極50となる正極スラリーを、硫黄(S)塗布量3mg/cm2~4mg/cm2となるように塗布した。
【0047】
第1のセパレータ30が成膜された正極50に電解液45を適量加え、60℃で60分間、電解液45を正極50に浸漬させた。第1のセパレータが配設された負極20と、正極50とを、第2のセパレータを介して積層し、さらに電解液45を注入した後、全体を電池ケース70(アルミニウム)に封入した。
【0048】
<評価>
上記方法で作製した電池1の特性評価結果、解析結果を以下に示す。なお、比較のため、電池1と類似構成であるが、負極20に第1のセパレータ30が配設されていない比較例の電池101も作製し、同様に評価、解析を行った。
【0049】
充放電評価は、カットオフ電位を、1.5V-3.0V(vs.Li/Li+)、充放電速度を0.1C、電流密度25μA/cm2とした。サイクリックボルタンメトリー測定(CV)は、カットオフ電位を、1.5V-3.3V(vs.Li/Li+)、走査速度を0.1mV/sとした。
【0050】
比較例の電池101では、
図2に示すように、20サイクルにおいて、デンドライドによる短絡が発生した。
【0051】
これに対して、電池1では、
図3に示すように、60サイクルにおいても短絡は発生しなかった。すなわち、電池1の寿命は電池101の寿命の3倍超であった。
【0052】
<第2実施形態>
本実施形態の電池2は
図4に示すように、第3のセパレータ55を更に具備する。第3のセパレータ55は、第2のセパレータ40と正極50との間の正極50の表面にコーティングされている、第3のセパレータ55は、第1のセパレータ30と同じ組成の電解質膜からなる。
【0053】
サイクル試験において、実施形態の電池2は電池1よりも、大幅に充放電容量の低下が防止される。これは、すでに報告されているように、第3のセパレータ55によって、正極50からの多硫化リチウムの電解液45への溶出が少ないためである。
【0054】
電池2は、第1のセパレータ30と第3のセパレータ55とは、同じ構成であるため、製造が容易である。
【0055】
<第3実施形態>
本実施形態の電池3では、有機材料を基体とする第1のセパレータ30Bが、導電性微粒子を担持した、不織布または繊維抄造シートである。不織布は、繊維が一方向またはランダムに配向しており、交流、および/または融着、および/または接着によって繊維間が結合された繊維シートである。一方、「抄造」とは、本明細書においては、繊維が分散している溶液を、すいてシートを製造する方法だけでなく、繊維の集合体を圧縮してシートを製造する方法も含まれる。
【0056】
不織布または繊維シートを構成する繊維としては、セルロース、セルロースのフィブリル化物、セルロースの部分フィブリル化物等のセルロース系繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリアクリロニトリル等のアクリル繊維、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド繊維、パラ系アラミド、メタ系アラミド等のアラミド繊維等が例示されるがこれらに限定されない。
【0057】
導電性微粒子は、金属粒子(アルミニウム、ステンレス鋼、銀、金、銅、チタン等)または、炭素粒子である。特に、グラファイト、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)、および、これらの混合物等の炭素粒子が、好ましい。
【0058】
第1のセパレータ30Bの厚さは、例えば5μm以上100μm以下が好ましく、10μm以上50μm以下が特に好ましい。前記範囲未満では効果が十分ではなく、先記範囲超であると電気抵抗が高くなる。
【0059】
電池3では第1のセパレータ30Bは炭素粒子KBを担持した不織布である。厚さ35μmのポリオレフィン製の第1のセパレータ30Bは、空孔率が84%、導電性粒子の担持量は、0.2g/m2、表面抵抗率は。830Ω/cm2である。負極20の上に、第1のセパレータ30Bと第2のセパレータ40が順に積層された。なお、電池3では、第1のセパレータ30Bの空孔にも電解液45が充填された。
【0060】
図6に示すように、電池3は少なくとも40サイクルまでは短絡は発生しなかった。電池3の寿命は電池101の寿命の2倍超であった。
【0061】
<第4実施形態>
本実施形態の積層電池4は、第1の電池1Aと第2の電池1Bとを含む複数の二次電池1が積層されている。
【0062】
すでに説明したように、複数の電池1のそれぞれは、第1の集電板10と、金属リチウムまたはリチウム合金を含む負極20と、有機材料を基体とする第1のセパレータ30と、多孔膜からなる第2のセパレータ40と、正極活物質を含む正極50と、第2の集電板60と、が順に積層されている。
【0063】
第1の二次電池1Aの第2の集電板60は、第1の二次電池1Aの上に積層されている第2の二次電池1Bの第1の集電板10を兼ねている。
【0064】
積層電池4において積層されている複数の二次電池1の数は、特に制限はないが、例えば、5以上100以下である。
【0065】
積層電池4の電池1は、第1のセパレータが、負極にコーティングされた、リチウム塩が溶解している電解液を含む紫外線硬化型樹脂からなる電解質膜である。また、積層電池4の電池1は、第1のセパレータが導電性微粒子を担持した不織布であってもよい。さらに、積層電池4の電池1は、第2のセパレータと正極との間の前記正極の表面にコーティングされている、第1のセパレータと同じ組成の電解質膜からなる第3のセパレータを更に具備していてもよい。
【0066】
積層電池4は、複数の電池1を具備するため。高容量であり、かつ、長寿命である。さらに第2の集電板60が第1の集電板10を兼ねているため、製造が容易で、小型である。
【0067】
なお、以上の説明では、実験のため、簡単な構造の電池1について説明した。しかし、積層構造のセルを巻回してケースに収容した構造の電池等であってもよい。また電解液45は、ゲル電解質または固体電解質であってもよい。
【0068】
すなわち、本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではない。本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、組み合わせ、および応用が可能である。