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特開2023-96561プレート付きパイプライン及びプレート付きパイプラインの施工方法
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  • 特開-プレート付きパイプライン及びプレート付きパイプラインの施工方法 図1
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  • 特開-プレート付きパイプライン及びプレート付きパイプラインの施工方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096561
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】プレート付きパイプライン及びプレート付きパイプラインの施工方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 58/00 20060101AFI20230630BHJP
   F16L 9/02 20060101ALI20230630BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
F16L58/00
F16L9/02
F16L55/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212405
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000182937
【氏名又は名称】日鉄パイプライン&エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 千晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝裕
(72)【発明者】
【氏名】原田 肇
【テーマコード(参考)】
3H024
3H111
【Fターム(参考)】
3H024DA03
3H111BA02
3H111CB23
3H111DA08
3H111EA19
(57)【要約】
【課題】施工管理が容易になるプレート付きパイプライン及びその施工方法を提供する。
【解決手段】パイプライン10と、パイプライン10に配置され、導線Lが接続される導電性プレート20と、を備えるプレート付きパイプライン100であって、パイプライン10と導電性プレート20とは接着剤Aを介して取り付けられ、パイプライン10と導電性プレート20との間には、パイプライン10と導電性プレート20との距離が比較的近い近接部と、パイプライン10と導電性プレート20との距離が比較的遠い遠隔部と、が、接着剤Aによって形成されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプラインと、前記パイプラインに配置され、導線が接続される導電性プレートと、を備えるプレート付きパイプラインであって、
前記パイプラインと前記導電性プレートとは接着剤を介して取り付けられ、
前記パイプラインと前記導電性プレートとの間には、
前記パイプラインと前記導電性プレートとの距離が比較的近い近接部と、
前記パイプラインと前記導電性プレートとの距離が比較的遠い遠隔部と、
が、前記接着剤によって形成されていることを特徴とする、
プレート付きパイプライン。
【請求項2】
前記遠隔部の大きさは、2mm未満であることを特徴とする、
請求項1に記載のプレート付きパイプライン。
【請求項3】
前記導電性プレートの前記パイプラインに接する側の面の曲率が、JIS G3452:2019で規定された150Aの管の外径に相当することを特徴とする、
請求項1又は2に記載のプレート付きパイプライン。
【請求項4】
前記導電性プレートの、前記パイプラインの周方向の寸法が、30mm以上40mm以下であることを特徴とする、
請求項3に記載のプレート付きパイプライン。
【請求項5】
前記導電性プレートの前記パイプラインに接する側の面の曲率が、JIS G3452:2019で規定された65Aの管の外径に相当することを特徴とする、
請求項1又は2に記載のプレート付きパイプライン。
【請求項6】
前記導電性プレートの、前記パイプラインの周方向の寸法が、20mm以上30mm以下であることを特徴とする、
請求項5に記載のプレート付きパイプライン。
【請求項7】
前記接着剤は、アクリル系樹脂と導電性粉粒体とが混合されてなることを特徴とする、
請求項1から6のいずれか1項に記載のプレート付きパイプライン。
【請求項8】
前記接着剤における前記導電性粉粒体の体積が、前記接着剤の10%以上30%以下であることを特徴とする、
請求項7に記載のプレート付きパイプライン。
【請求項9】
前記近接部が、前記導電性プレートの周方向の両端に位置し、前記遠隔部が、前記導電性プレートの周方向の中央部に位置することを特徴とする、
請求項1から8のいずれか1項に記載のプレート付きパイプライン。
【請求項10】
外径がJIS G3452:2019で規定された100A以上に相当するパイプラインに対して共通の形状の導電性プレートを取り付ける取付工程と、
前記取付工程の前に、前記導電性プレートの前記パイプラインに接する側の面に接着剤を塗布する塗布工程と、
を備え、
前記導電性プレートの前記パイプラインに接する側の面は、前記導電性プレートと前記パイプラインの外周面とが接したとき、前記パイプラインの外周面との間に2mm未満の隙間が不均一に形成される形状となっており、
前記取付工程において、
前記導電性プレートは、少なくとも一部の前記外径を備える前記パイプラインに対しては、前記パイプラインとの距離が比較的近い近接部が、前記パイプラインの周方向において前記導電性プレートの両端に形成される一方、前記パイプラインとの距離が比較的遠い遠隔部が、前記周方向において前記導電性プレートの中央に形成され、
前記導電性プレートが前記近接部によって前記パイプラインに支持された状態で、前記接着剤を介して前記パイプラインに前記導電性プレートを押し付けることを特徴とする、
プレート付きパイプラインの施工方法。
【請求項11】
外径がJIS G3452:2019で規定された80A以下に相当するパイプラインに対して共通の形状の導電性プレートを取り付ける取付工程と、
前記取付工程の前に、前記導電性プレートの前記パイプラインに接する側の面に接着剤を塗布する塗布工程と、
を備え、
前記導電性プレートの前記パイプラインに接する側の面は、前記導電性プレートと前記パイプラインの外周面とが接したとき、前記パイプラインの外周面との間に2mm未満の隙間が不均一に形成される形状となっており、
前記取付工程において、
前記導電性プレートは、少なくとも一部の前記外径を備える前記パイプラインに対しては、前記パイプラインとの距離が比較的近い近接部が、前記パイプラインの周方向において前記導電性プレートの両端に形成される一方、前記パイプラインとの距離が比較的遠い遠隔部が、前記周方向において前記導電性プレートの中央に形成され、
前記導電性プレートが前記近接部によって前記パイプラインに支持された状態で、前記接着剤を介して前記パイプラインに前記導電性プレートを押し付けることを特徴とする、
プレート付きパイプラインの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート付きパイプライン及びプレート付きパイプラインの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パイプラインと、パイプラインに接続された導線と、を備える導線付きパイプラインが知られている。この種の導線付きパイプラインとして、例えば下記特許文献1に示すような、導線が溶接された導電性プレートが、パイプラインに対してエポキシ系樹脂と導電性粉粒体とが混合されてなる接着剤を介して取り付けられた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6785126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の導線付きパイプラインについて、導電性プレートはパイプラインの外周面に沿う形状、すなわちパイプラインの外周面と等しい曲率とすることを想定している。しかしながら、パイプラインは用途に応じて異なる外径のものが適宜選択される。
このため導電性プレートもパイプラインの外径に合わせた曲率のものを適宜使い分けることが想定されていたが、種類の管理が煩雑となる旨の課題があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、施工管理が容易になるプレート付きパイプライン及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るプレート付きパイプラインは、パイプラインと、前記パイプラインに配置され、導線が接続される導電性プレートと、を備えるプレート付きパイプラインであって、前記パイプラインと前記導電性プレートとは接着剤を介して取り付けられ、前記パイプラインと前記導電性プレートとの間には、前記パイプラインと前記導電性プレートとの距離が比較的近い近接部と、前記パイプラインと前記導電性プレートとの距離が比較的遠い遠隔部と、が、前記接着剤によって形成されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、パイプラインと導電性プレートとの接着部は、パイプラインと導電性プレートとの距離が比較的近い近接部と、パイプラインと導電性プレートとの距離が比較的遠い遠隔部と、を備える。この構造は、例えば、パイプラインと導電性プレートとの曲率が異なる場合に実現される。つまり、導電性プレートの形状が1種類のみであっても、複数の種類のパイプラインに適用することができる。よって、導電性プレートの施工管理を容易にすることができる。
【0008】
パイプラインと導電性プレートとが接着剤を介して取り付けられるとき、接着剤は、パイプラインと導電性プレートとの間における遠隔部に集中して配置される。これにより、パイプラインと導電性プレートとの間に接着剤が配置されやすくなる。よって、接着剤による接着強度を向上することができる。
【0009】
ここで、一般的に導電性プレートをパイプラインに接着するときには、接着剤を塗布した導電性プレートをパイプラインに押し付けるようにして施工する。このとき、遠隔部によって生じるパイプラインと導電性プレートとの間の領域に収まりきらない分の接着剤は、遠隔部から外部に流出する。これを目視することで、遠隔部に十分な接着剤が配置されたことを確認することができる。よって、施工管理時の視認性も向上することができる。
【0010】
更に、パイプラインと導電性プレートとを接着剤によって取り付けることで、パイプラインと導電性プレートとを溶接によって取り付ける場合と比較して、パイプラインに温度変化の影響を与えることなく取り付けることができる。ここで、パイプラインと導電性プレートとを溶接した場合には、パイプラインの表面が加熱される。これにより、パイプラインに熱応力が生じたり、パイプラインの表面における防錆等の表面処理に影響が及んだりすることがある。また、パイプラインが既設のものであって、内部にガス等の内容物が充満している場合には、溶接時の熱によってパイプラインの内容物が加熱されることがある。パイプラインと導電性プレートとを接着剤によって取り付けることで、上述の問題が起こることを防ぐことができる。
【0011】
また、前記遠隔部の大きさは、2mm未満であることを特徴としてもよい。
【0012】
この発明によれば、遠隔部の大きさが2mm未満である。ここで、遠隔部の大きさが2mm以上であると、接着剤によるパイプラインと導電性プレートとの接着力が低下し、十分な強度が得られない。つまり、遠隔部が2mm未満であることにより、接着剤の接着力を十分に発揮することができる。よって、より接着強度を確保することができる。
【0013】
また、前記導電性プレートの前記パイプラインに接する側の面の曲率が、JIS G3452:2019で規定された150Aの管の外径に相当することを特徴としてもよい。
【0014】
この発明によれば、導電性プレートのパイプラインに接する側の面の曲率が、JIS G3452:2019で規定された150Aの管の外径に相当する。これにより、100A~600Aのパイプラインを想定したとき、パイプラインがいずれの呼び径である場合においても遠隔部の大きさを2mm未満とすることができる。よって、導電性プレートの曲率を150Aとすることで、100A~600Aの範囲においては1種類の導電性プレートによってプレート付きパイプラインを構成することができる。
【0015】
また、前記導電性プレートの、前記パイプラインの周方向の寸法が、30mm以上40mm以下であることを特徴としてもよい。
【0016】
この発明によれば、導電性プレートの、パイプラインの周方向の寸法が、30mm以上40mm以下である。100A~600Aのパイプラインを想定したとき、導電性プレートのパイプラインに接する側の面の曲率がJIS G3452:2019で規定された150Aの管の外径に相当することに加えて、導電性プレートのパイプラインの周方向の寸法が30mm以上40mm以下であることによって、パイプラインがいずれの呼び径である場合においても遠隔部の大きさを2mm未満とすることをより確実に担保することができる。よって、導電性プレートの大きさを最小限としつつ、導電性プレートとパイプラインとの接着強度を確保することができる。
【0017】
また、前記導電性プレートの前記パイプラインに接する側の面の曲率が、JIS G3452:2019で規定された65Aの管の外径に相当することを特徴としてもよい。
【0018】
この発明によれば、導電性プレートのパイプラインに接する側の面の曲率が、JIS G3452:2019で規定された65Aの管の外径に相当する。これにより、50A~80Aのパイプラインを想定したとき、パイプラインがいずれの呼び径である場合においても遠隔部の大きさを2mm未満とすることができる。よって、導電性プレートの曲率を65Aとすることで、50A~80Aの範囲においては1種類の導電性プレートによってプレート付きパイプラインを構成することができる。
【0019】
また、前記導電性プレートの、前記パイプラインの周方向の寸法が、20mm以上30mm以下であることを特徴としてもよい。
【0020】
この発明によれば、導電性プレートの、パイプラインの周方向の寸法が、20mm以上30mm以下である。50A~80Aのパイプラインを想定したとき、導電性プレートのパイプラインに接する側の面の曲率がJIS G3452:2019で規定された65Aの管の外径に相当することに加えて、導電性プレートのパイプラインの周方向の寸法が20mm以上30mm以下であることによって、パイプラインがいずれの呼び径である場合においても遠隔部の大きさを2mm未満とすることをより確実に担保することができる。よって、導電性プレートの大きさを最小限としつつ、導電性プレートとパイプラインとの接着強度を確保することができる。
【0021】
また、前記接着剤は、アクリル系樹脂と導電性粉粒体とが混合されてなることを特徴としてもよい。
【0022】
この発明によれば、接着剤は、アクリル系樹脂と導電性粉粒体とが混合されてなる。アクリル系樹脂とエポキシ系樹脂とを比較したとき、アクリル系樹脂はエポキシ系樹脂よりも耐水性、耐湿性に優れた特性を有する。よって、接着剤にアクリル系樹脂を用いることによって、接着剤の耐水性及び耐湿性を改善することができる。よって、露出管において結露が発生したり、埋設管において土中の水分が侵入したりするといった環境であっても本構成を適用することができる。
【0023】
また、アクリル系樹脂は、エポキシ系樹脂よりも硬化速度が速い。よって、接着剤が硬化するまでに導電性プレートをパイプラインに保持する作業に要する時間を短くすることができる。よって、より作業性の向上に寄与することができる。
【0024】
また、前記接着剤における前記導電性粉粒体の体積が、前記接着剤の10%以上30%以下であることを特徴としてもよい。
【0025】
この発明によれば、接着剤における導電性粉粒体の体積が、接着剤の10%以上30%以下である。これにより、接着剤の接着力と、接着剤によって接着した導電性プレートとパイプラインとの導通性を両立することができる。
【0026】
また、前記近接部が、前記導電性プレートの周方向の両端に位置し、前記遠隔部が、前記導電性プレートの周方向の中央部に位置することを特徴としてもよい。
【0027】
この発明によれば、近接部が導電性プレートの周方向の両端に位置する。つまり、導電性プレートをパイプラインに接触させたとき、導電性プレートの両端がパイプラインに接する。よって、近接部が導電性プレートの周方向の中央に位置する場合と比較して、導電性プレートを安定させることができる。よって、より作業性の向上に寄与することができる。
【0028】
更に、遠隔部が、導電性プレートの周方向の中央部に位置する。これにより、導電性プレートに接着剤を塗布してパイプラインに接触させたとき、より導電性プレートとパイプラインとの間に接着剤が留まりやすくなる。よって、接着力の向上に寄与することができる。
【0029】
また、本発明に係るプレート付きパイプラインの施工方法は、外径がJIS G3452:2019で規定された100A以上に相当するパイプラインに対して共通の形状の導電性プレートを取り付ける取付工程と、前記取付工程の前に、前記導電性プレートの前記パイプラインに接する側の面に接着剤を塗布する塗布工程と、を備え、前記導電性プレートの前記パイプラインに接する側の面は、前記導電性プレートと前記パイプラインの外周面とが接したとき、前記パイプラインの外周面との間に2mm未満の隙間が不均一に形成される形状となっており、前記取付け工程において、前記導電性プレートは、少なくとも一部の前記外径を備える前記パイプラインに対しては、前記パイプラインとの距離が比較的近い近接部が、前記パイプラインの周方向において前記導電性プレートの両端に形成される一方、前記パイプラインとの距離が比較的遠い遠隔部が、前記周方向において前記導電性プレートの中央に形成され、前記導電性プレートが前記近接部によって前記パイプラインに支持された状態で、前記接着剤を介して前記パイプラインに前記導電性プレートを押し付けることを特徴とする。
【0030】
また、外径がJIS G3452:2019で規定された80A以下に相当するパイプラインに対して共通の形状の導電性プレートを取り付ける取付工程と、前記取付工程の前に、前記導電性プレートの前記パイプラインに接する側の面に接着剤を塗布する塗布工程と、を備え、前記導電性プレートの前記パイプラインに接する側の面は、前記導電性プレートと前記パイプラインの外周面とが接したとき、前記パイプラインの外周面との間に2mm未満の隙間が不均一に形成される形状となっており、前記取付け工程において、前記導電性プレートは、少なくとも一部の前記外径を備える前記パイプラインに対しては、前記パイプラインとの距離が比較的近い近接部が、前記パイプラインの周方向において前記導電性プレートの両端に形成される一方、前記パイプラインとの距離が比較的遠い遠隔部が、前記周方向において前記導電性プレートの中央に形成され、前記導電性プレートが前記近接部によって前記パイプラインに支持された状態で、前記接着剤を介して前記パイプラインに前記導電性プレートを押し付けることを特徴としてもよい。
【0031】
この発明によれば、少なくとも一部の前記外径を備える前記パイプラインにおいて、取付工程は、導電性プレートが、導電性プレートの周方向の両端に位置する近接部によってパイプラインに支持された状態で、接着剤を介してパイプラインに導電性プレートを押し付ける。これにより、導電性プレートをパイプラインに押し付ける作業を安定して行うことができる。よって、作業の向上に寄与することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、施工管理が容易になるプレート付きパイプライン及びその施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係るプレート付きパイプラインの概要図である。
図2図1に示す導電性プレートの斜視図である。
図3】本実施形態に係る導電性プレートをパイプラインに取り付けた場合の第1例である。
図4】本実施形態に係る導電性プレートをパイプラインに取り付けた場合の第2例である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るプレート付きパイプラインを説明する。
図1に示すように、プレート付きパイプライン100は、パイプライン10と、導電性プレート20と、接続部30と、を備える。
【0035】
パイプライン10は、導電性の金属により形成される管である。より具体的には、鋼管であることが好ましい。パイプライン10は、例えば、地中又は水中に設置されてもよいし、地上又は構造物上に設置されてもよい。このように配置されたパイプライン10は、設置場所や用途によって、水道管、排水管あるいはガス管等の役割を担う。また、パイプライン10の外表面には、用途に応じて防錆皮膜等の表面処理がされていてもよい。
【0036】
本実施形態において、パイプライン10の大きさは、JIS G3452:2019で規定された呼び径が100A~600Aのもの、あるいは、50A~80Aのものであるとする。上記規格の呼び径に制約されなくてもよい。例えば、JIS G3457、JIS G3454、API規格等の呼び径のものをパイプライン10として用いてもよいし、その他の規格によるものを用いてもよい。なお、本実施形態において、100A以上に相当する、又は80A以下に相当するといった記載をした場合には、上述のJIS G3452に限らず、これ以外の規格における当該呼び径に相当する範囲も含むものとする。
以下において、パイプライン10の中心軸に平行な方向を軸方向という。また、パイプライン10の中心軸と直交する方向を径方向という。また、パイプライン10の中心軸と直交する断面における、パイプラインの外周面の円周方向を周方向という。また、パイプライン10を、中心軸が水平方向に延びるように横向きに設置した状態について以下説明する。
【0037】
導電性プレート20は、パイプライン10に配置され、接続部30を介して導線Lが接続される。導電性プレート20は、導電性の金属材料により形成される。パイプライン10と導電性プレート20とは、同じ材質で形成されてもよいし、異なる材質で形成されてもよい。
【0038】
導電性プレート20は、軸方向と直交する横断面視において円弧状をなし、平面視において軸方向に沿う矩形状をなしている。前記円弧状は、少なくとも導電性プレート20のパイプライン10に接する側の面に形成される。
また、前記円弧状の曲率は、パイプライン10の大きさが100A~600Aである場合は、JIS G3452:2019で規定された呼び径が150Aである管の外径に相当することが好ましい。つまり、導電性プレート20のパイプライン10に接する側の面を呼び径が150Aの管に接触させると、導電性プレート20と前記管の外周面とが隙間なく接する形状とすることが好ましい。
【0039】
あるいは、前記円弧状の曲率は、パイプライン10の大きさが50A~80Aのものである場合は、JIS G3452:2019で規定された呼び径が65Aである管の外径に相当することが好ましい。つまり、導電性プレート20のパイプライン10に接する側の面を呼び径が65Aの管に接触させると、導電性プレート20と前記管の外周面とが隙間なく接する形状とすることが好ましい。
【0040】
また、導電性プレート20の前記矩形状における周方向の寸法は、導電性プレート20の曲率が150A相当である場合は30mm以上40mm以下であることが好ましい。導電性プレート20の曲率が65A相当である場合は20mm以上30mm以下であることが好ましい。上記範囲であれば、後述する遠隔部G2の大きさを2mm以下とすることができる。また、前記矩形状の軸方向の寸法は任意に選択可能であるが、50mm程度であることが好ましい。前記矩形状の軸方向の寸法は、施工上障害がなければ上限値は特に制限がなく、50mm以上であってもよい。
上述のように形成される導電性プレート20は、上述の曲率である金属管から切り出して成形してもよいし、平板を曲面状に加工することによって形成されていてもよい。
【0041】
パイプライン10と導電性プレート20とは、接着剤Aを介して取り付けられることが好ましい。また、本実施形態に係る接着剤Aは、アクリル系樹脂と導電性粉粒体とが混合されてなることが好ましい。アクリル系樹脂は、例えば、3M社製のアクリル系接着剤「DP8405NS Green」あるいは「DP8805NS Green」等が好適に用いられる。導電性粉粒体は、鉄粉が好適に用いられる。なお、接着剤Aにおける導電性粉粒体の体積は、10%~30%であることが好ましく、20%であることがより好ましい。以下、パイプライン10と導電性プレート20との間の部位、すなわちパイプライン10と導電性プレート20とが接着剤Aによって取り付けられている部位を、接着部Gと呼称する。
【0042】
パイプライン10と導電性プレート20との接着部Gは、近接部G1と、遠隔部G2と、を備える。また、上述のように接着部Gは接着剤Aによって取り付けられている。言い換えれば、パイプライン10と導電性プレート20との間には、近接部G1と、遠隔部G2とが、接着剤Aによって形成されている。
【0043】
近接部G1は、接着部Gにおいてパイプライン10と導電性プレート20との距離が比較的近い部位である。遠隔部G2は、接着部Gにおいてパイプライン10と導電性プレート20との距離が比較的遠い部位である。近接部G1では、遠隔部G2よりもパイプライン10と導電性プレート20との距離が近い。具体的には、例えば、パイプライン10と導電性プレート20との距離が0mm~0.5mmである部位を近接部G1とする。すなわち、近接部G1では、パイプライン10と導電性プレート20とが接触していてもよい。この場合は、当該接触している部位が近接部G1であるとしてもよい。
【0044】
これに対し、パイプライン10と導電性プレート20との距離が0.5mm以上である部位を遠隔部G2とする。言い換えれば、接着部Gにおける、近接部G1以外の部位を遠隔部G2とする。また、近接部G1においてパイプライン10と導電性プレート20とが接触している場合は、当該接触している部位以外の部位が遠隔部G2であるとしてもよい。
なお、本実施形態において、遠隔部G2の大きさ、すなわちパイプライン10と導電性プレート20との距離は、2mm未満であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい(詳細は後述する)。以下、接着部Gにおける近接部G1と遠隔部G2との関係について説明する。
【0045】
上述のように、本実施形態に係るパイプライン10は、呼び径が100A~600Aあるいは50A~80Aである。これに対し、本実施形態に係る導電性プレート20は、パイプライン10に接する側の面に形成される円弧状の曲率が、パイプライン10の呼び径が100A~600Aの場合には150Aである管の外径に相当し、パイプライン10の呼び径が50A~80Aの場合には65Aである管の外径に相当する。
ここで、パイプライン10に導電性プレート20を取り付けたとき、図3及び図4に示す2通りの状態となる。
【0046】
すなわち、導電性プレート20の円弧状の曲率がパイプライン10の外周面の曲率より小さい、すなわち、曲率半径が大きい場合は、図3に示すように、近接部G1が周方向における導電性プレート20の端部以外の部位に1箇所位置し、遠隔部G2が周方向における近接部G1の両隣に位置する。言い換えれば、接着部Gにおいて遠隔部G2が導電性プレート20の周方向における両端側(外側)に位置し、近接部G1が導電性プレート20の周方向の両端部以外の箇所に位置する。
【0047】
以下に示す表1は、例として周方向の寸法(板幅)が30mmである導電性プレート20(端子板)の円弧状の曲率を600A相当とした場合と、比較対象として導電性プレート20を平板状とした場合における、パイプライン10との間に生じる遠隔部G2の大きさ(ギャップ)をまとめたものである。具体的には、上述の条件に係る導電性プレート20と、パイプライン10との間に生じる遠隔部G2の大きさについて、パイプライン10の呼び径(管径)が100A~600Aであった場合をそれぞれまとめたものである。
【0048】
【表1】
【0049】
これに対し、導電性プレート20の円弧状の曲率がパイプライン10の外周面の曲率より大きい、すなわち、曲率半径が小さい場合は、図4に示すように、近接部G1が周方向における導電性プレート20の両端に位置し、遠隔部G2が導電性プレート20の中央側に位置する。言い換えれば、接着部Gにおいて、遠隔部G2が導電性プレート20の周方向における両端部以外の箇所に位置する。
【0050】
以下に示す表2は、周方向の寸法(板幅)が30mmである導電性プレート20(端子板)の円弧状の曲率を100A相当、150A相当、200A相当、300A相当とした場合における、パイプライン10との間に生じる遠隔部G2の大きさ(ギャップ)をまとめたものである。具体的には、上述の条件に係る導電性プレート20と、パイプライン10との間に生じる遠隔部G2の大きさについて、パイプライン10の呼び径(管径)が100A~600Aであった場合をそれぞれまとめたものである。
【0051】
【表2】
【0052】
以下に示す表3は、周方向の寸法(板幅)が20mmである導電性プレート20(端子板)の円弧状の曲率を50A相当、65A相当、80A相当とした場合における、パイプライン10との間に生じる遠隔部G2の大きさ(ギャップ)をまとめたものである。具体的には、上述の条件に係る導電性プレート20と、パイプライン10との間に生じる遠隔部G2の大きさについて、パイプライン10の呼び径(管径)が50A~80Aであった場合をそれぞれまとめたものである。
【0053】
【表3】
【0054】
表1に示すように、導電性プレート20の円弧状の曲率が600A相当である場合は、導電性プレート20が平板状であった場合と比較して、より遠隔部G2の大きさが小さくなることがわかる。また、いずれの組み合わせにおいても遠隔部G2の大きさは2mm以下であることがわかる。
【0055】
表2に示すように、パイプライン10の径と導電性プレート20の曲率が等しい場合は、遠隔部G2の大きさが0mmとなる。パイプライン10の径が導電性プレート20の曲率より大きい場合は、遠隔部G2の大きさが大きくなる。パイプライン10の径が導電性プレート20の曲率より小さい場合は、遠隔部G2の大きさが小さくなる。あるいは、表2に示すようにマイナス値となる。遠隔部G2の大きさがマイナスとなっている箇所は、導電性プレート20の円弧状の曲率よりもパイプライン10の呼び径が小さいことから、遠隔部G2と近接部G1との関係が図3に示す状態、すなわち遠隔部G2が周方向における導電性プレート20の両端側(外側)に位置していることを意味する。
【0056】
表1、表2及び表3の組み合わせにおいては、いずれも遠隔部G2の大きさが2mm未満である。ここで、導電性プレート20の形状を共通化させるにあたっては、極値のものを採用するよりも、遠隔部G2の数値が中間値となる組み合わせが多くなるものを選択することがより好ましい。表2を見たとき、導電性プレート20の曲率が150A相当または200A相当である場合には、いずれの組み合わせにおいても遠隔部G2の大きさが1mm以下となる。よって、100A~600Aのパイプライン10を想定したとき、導電性プレート20の曲率は150A相当または200A相当で、板幅を30mmとすることが好ましい。
【0057】
また、表3に示す組み合わせにおいては、導電性プレート20の曲率が65A相当である場合に、遠隔部G2の数値が中間値となる組み合わせが多くなる。よって、50A~80Aのパイプライン10を想定した場合は、導電性プレート20の曲率は65Aで、板幅を20mmとすることが好ましい。
【0058】
ここで、図3に示す状態と図4に示す状態においては、図4に示す状態、すなわち遠隔部G2が近接部G1の間に位置している状態の方が、施工性に優れる(理由は後述する)。このため、本実施形態においては、導電性プレート20の円弧状の曲率が150A相当であることが最善である。以下、図3に示す場合及び図4に示す場合における、導電性プレート20の施工に係る作業性を比較する。
【0059】
導電性プレート20をパイプライン10に施工する際は、接着剤Aを塗布した導電性プレート20をパイプライン10の表面に押し付けることで行う。この時、図3に示すように、近接部G1が遠隔部G2の間に位置している場合は、導電性プレート20を押し付ける力の加え方によって、近接部G1の位置が周方向におけるどちらかの側に偏ることがある。このため、接着剤Aが硬化するまで安定して保持することが難しい。
【0060】
これに対し、図4に示すように、遠隔部G2が近接部G1の間に位置している場合は、導電性プレート20をパイプライン10に押し付けるとき、周方向の両側の端部に位置した近接部G1によって押し付け力を受けるため、導電性プレート20の位置が安定しやすい。このため、接着剤Aが硬化するまで容易に安定して保持することができる。上記理由により、近接部G1が遠隔部G2の間に位置している場合よりも、遠隔部G2が近接部G1の間に位置している場合の方が、施工性に優れる。
【0061】
更に、導電性プレート20をパイプライン10に押し付けた時、パイプライン10に対して2箇所の近接部G1が接する。これにより、遠隔部G2の大きさが一定となる。これに対し、図3に示すように、遠隔部G2が周方向における導電性プレート20の両端側に位置している場合は、近接部G1の位置が安定しないことから、近接部G1の両隣に位置する遠隔部G2の大きさが同じにならないことがある。この場合であっても、遠隔部G2の最大の大きさが2mm以下である場合には、強度に影響を及ぼすことなく固定できる。
【0062】
上述のように、曲率が150A相当の場合と200A相当である場合には、表2に示すいずれも組み合わせにおいても遠隔部G2の大きさが2mm未満となっている。このため、100A~600Aのパイプライン10を想定した場合、導電性プレート20は曲率が150A相当のものと200A相当のもののいずれも適用可能である。作業性を考慮すると、図4に示す状態となる組み合わせが多い150Aを適用することがより好ましい。
【0063】
次に、遠隔部G2の最適な大きさが2mm未満であることについては、下記検証により検討を行った。すなわち、本実施形態に係る接着剤Aについて、3M社製のアクリル系接着剤「DP8405NS Green」に、比率20%の割合で還元鉄粉を混合したものによって試験片を接着したものを用いて引張試験を行った。下記記載の各試験片は、曲率板や、実管を用いて、実施形態に係る各条件を下記の通り再現したものである。上記試験の結果を、表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
表4における条件1は、導電性プレート20の側(端子側)として曲率が150A相当の曲率板を、パイプライン10の側(鋼管側)として呼び径が100Aの実管を使用した。このため、図3に示す状態、すなわち遠隔部G2(ギャップ)が周方向の端部側に生じた状態であり、遠隔部G2の大きさは0.63mmである。
条件2は、導電性プレート20の側(端子側)として曲率が150A相当の曲率板を、パイプライン10の側(鋼管側)として曲率が600A相当の曲率板を使用した。このため、図4に示す状態、すなわち遠隔部G2(ギャップ)が周方向の中央側に生じた状態であり、遠隔部G2の大きさは1mmである。
条件3は、導電性プレート20の側(端子側)として曲率が600A相当の曲率板を、パイプライン10の側(鋼管側)として曲率が150A相当の曲率板を使用した。このため、図4に示す状態、すなわち遠隔部G2(ギャップ)が周方向の中央側に生じた状態であり、遠隔部G2の大きさは1mmである。
条件4は、導電性プレート20の側(端子側)として平板を、パイプライン10の側(鋼管側)として呼び径が100Aの実管を使用した。このため、図3に示す状態、すなわち遠隔部G2(ギャップ)が周方向の端部側に生じた状態であり、遠隔部G2の大きさは2mmである。
上記各条件の遠隔部G2(ギャップ)の大きさは、上記各条件に係る部材の寸法を用いた計算によって求められた計算値である。このため、各実験に用いられた部材によっては、実際の取付け状態においてG2の大きさが上記計算値と異なることがある。しかしながら、このような誤差は最大で±0.1mm程度であり、下記検討において無視できる程度である。
なお、条件1及び条件4においては、導電性プレート20におけるパイプライン10に接しない側にテルミット溶接によって導線L(ケーブル)を設け、導線Lを引っ張ることにより引張荷重を測定したものである。
【0066】
導線Lは、接続部30あるいは導電性プレート20を介してパイプライン10に接続される。このことで、パイプライン10と導通し、電気防食の機能を担保する。導線Lとしては、例えば、架橋ポリエチレン等の絶縁体材料で被覆された600V用の単芯ケーブル等を採用することができる。また、導線Lとしては例えば、電気防食のために電流を流す経路として用いられる構成と、電気防食の状態を測定するためのリード線として用いられる構成とがある。これらの場合、導線Lは、パイプライン10と電気的に導通した状態で長期間使用される。
【0067】
引張試験の条件に係る接着部Gの引張荷重の基準について、下記のように検討の上規定した。すなわち、導線Lの太さを電気防食用として一般的に用いられる導線Lのうち最も大きい径である38mmとして、当該導線Lの引張荷重の性能が9kNであることから、導電性プレート20を引っ張った時の引張荷重が9kNを超えていれば、導線Lの引張強度と同等の接着力があると判断できる。このため、引張荷重の基準を9kNとして、これを超えていれば引張荷重の要求性能を満たすと判断することとした。
【0068】
上述の各条件について下記のように引張試験を実施した。なお、各条件においてそれぞれサンプル数n=3として、引張荷重の結果を表4に記載した。
まず、条件2及び条件3については、測定機により引張荷重を確認した。これにより、条件2においては11.32kNであり、条件3においては22.82kNであることから、いずれも必要な条件を満たしていることを確認した。なお、表4に示すように、これらの値はn=3のサンプルにおける最低値である。
【0069】
条件1については、n=3のサンプルのいずれもが導電性プレート20に取り付けられた導線Lの溶着部が、導電性プレート20とパイプライン10との接着部Gよりも先に破断した。
条件4については、n=3のサンプルのうち、2のサンプルは条件1と同様に、導電性プレート20に取り付けられた導線Lの溶着部が、導電性プレート20とパイプライン10との接着部Gよりも先に破断した。1のサンプルは、導線Lよりも先に接着部Gが破断した。
【0070】
条件1及び条件4における導線Lは、導電性プレート20に対してテルミット溶接により溶着されている。テルミット溶接により端子板に直接ケーブル線が取り付けられている場合は、その溶接強度は、ケーブルの引張強度より若干低下する。この条件を考慮しても、ケーブルの溶着部が破断した際の引張荷重が9kN以上であったことから、実用上の荷重に係る条件を満たし問題なしと判断した。条件4において接着部Gが破断したサンプルも、破断時の荷重が他の溶接部破断のものと相違なかったことから、実用上の強度に係る条件を満たし問題なしと判断した。
【0071】
また、接着剤Aの厚みが1mm以上2mm未満の場合でも、導電性プレート20に導線Lがテルミット溶接により直接取り付けられている場合の引張荷重と同等であることを確認した。よって、実用強度上は遠隔部G2が2mm未満であればよいことを確認した。この結果と、上述の導電性プレート20とパイプライン10との曲率の関係によって生じる遠隔部G2の大きさの関係から、遠隔部G2の大きさを2mm未満とすることが最適とした。
なお、引張強度は施主によって合否基準が異なる場合があるため、変化し得る引張強度の合否基準のみに依存することなく多様な実際の運用(合否基準)を満足できるように、一部の結果で接着部破断した2mmの条件を除いて、本発明の実施形態では2mm未満とすることが好ましい。
【0072】
接続部30は、図2に示すように、導電性プレート20のパイプライン10に面しない側の面に電気的に導通した状態で設けられた平板である。接続部30は、導電性プレート20に対して溶接されていることが好ましい。また、図2に示すように、接続部30は、取付穴31を備える。取付穴31は、導線Lを接続部30に対してボルト固定する際に用いる穴である。これにより、導線Lを導電性プレート20及びパイプライン10に導通する。導電性プレート20と接続部30とは、同じ材質で形成されてもよいし、異なる材質で形成されてもよい。
【0073】
上記、導電性プレート20に導線Lを接続する際に接続部30を介する構造について説明したが、これに限らない。例えば、導電性プレート20のパイプライン10に面しない側の面に、導線Lがテルミット溶接等によって直接取り付けられていてもよい。テルミット溶接によって導線Lを取り付ける場合には、接触部における導線Lを取り付ける面は、図3及び図4に示すように平坦であることが好ましい。
【0074】
(プレート付きパイプラインの施工方法)
次に、本実施形態に係るプレート付きパイプライン100の施工方法について説明する。施工方法は、塗布工程と、取付工程と、を備える。
塗布工程は、後述する取付工程の前に、導電性プレート20のパイプライン10に接する側の面に接着剤Aを塗布する工程である。接着剤Aは、導電性プレート20とパイプライン10との間に空隙が生じないために十分な量を塗布する。具体的には、接着剤Aを塗布した導電性プレート20をパイプライン10に取り付けたとき、導電性プレート20とパイプライン10との間から接着剤Aが漏れ出る程度塗布することが好ましい。
【0075】
取付工程は、パイプライン10に対して導電性プレート20を取り付ける工程である。取付工程においては、呼び径の異なるパイプライン10に対して共通の導電性プレート20を取り付ける。導電性プレート20は、導電性プレート20の円弧状の曲率より小さい曲率の外径を備えるパイプライン10に対しては、近接部G1が、パイプライン10の周方向において導電性プレート20の両端に形成される。一方、遠隔部G2が、周方向において導電性プレート20の中央に形成される。このとき、導電性プレート20のパイプライン10に接する側の面は、導電性プレート20とパイプライン10の外周面とが接したとき、パイプライン10の外周面との間に2mm未満の隙間が不均一に形成される形状となっている。
また、遠隔部G2が、周方向において導電性プレート20の中央に形成されるときには、導電性プレート20が近接部G1によってパイプライン10に支持された状態で、接着剤Aを介してパイプライン10に導電性プレート20を押し付けるようにして取り付ける。
【0076】
以上説明したように、本実施形態に係るプレート付きパイプライン100によれば、パイプライン10と導電性プレート20との接着部Gは、パイプライン10と導電性プレート20との距離が比較的近い近接部G1と、パイプライン10と導電性プレート20との距離が比較的遠い遠隔部G2と、を備える。この構造は、例えば、パイプライン10と導電性プレート20との曲率が異なる場合に実現される。つまり、導電性プレート20の形状が1種類のみであっても、複数の種類のパイプライン10に適用することができる。よって、導電性プレート20の施工管理を容易にすることができる。
【0077】
パイプライン10と導電性プレート20とが接着剤Aを介して取り付けられるとき、接着剤Aは、パイプライン10と導電性プレート20との間における遠隔部G2に集中して配置される。これにより、パイプライン10と導電性プレート20との間に接着剤Aが配置されやすくなる。よって、接着剤Aによる接着強度を向上することができる。
【0078】
ここで、一般的に導電性プレート20をパイプライン10に接着するときには、接着剤Aを塗布した導電性プレート20をパイプライン10に押し付けるようにして施工する。このとき、遠隔部G2によって生じるパイプライン10と導電性プレート20との間の領域に収まりきらない分の接着剤Aは、遠隔部G2から外部に流出する。これを目視することで、遠隔部G2に十分な接着剤Aが配置されたことを確認することができる。よって、施工管理時の視認性も向上することができる。
【0079】
更に、パイプライン10と導電性プレート20とを接着剤Aによって取り付けることで、パイプライン10と導電性プレート20とを溶接によって取り付ける場合と比較して、パイプライン10に温度変化の影響を与えることなく取り付けることができる。ここで、パイプライン10と導電性プレート20とを溶接した場合には、パイプライン10の表面が加熱される。これにより、パイプライン10に熱応力が生じたり、パイプライン10の表面における防錆等の表面処理に影響が及んだりすることがある。また、パイプライン10が既設のものであって、内部にガス等の内容物が充満している場合には、溶接時の熱によってパイプライン10の内容物が加熱されることがある。パイプライン10と導電性プレート20とを接着剤Aによって取り付けることで、上述の問題が起こることを防ぐことができる。
【0080】
また、遠隔部G2の大きさが2mm未満である。ここで、遠隔部G2の大きさが2mm以上であると、接着剤Aによるパイプライン10と導電性プレート20との接着力が低下し、十分な強度が得られない。つまり、遠隔部G2が2mm未満であることにより、接着剤Aの接着力を十分に発揮することができる。よって、より接着強度を確保することができる。
【0081】
また、導電性プレート20のパイプライン10に接する側の面の曲率が、JIS G3452:2019で規定された150Aの管の外径に相当する。これにより、100A~600Aのパイプライン10を想定したとき、パイプライン10がいずれの呼び径である場合においても遠隔部G2の大きさを2mm未満とすることができる。よって、導電性プレート20の曲率を150Aとすることで、100A~600Aの範囲においては1種類の導電性プレート20によってプレート付きパイプライン100を構成することができる。
【0082】
また、導電性プレート20の、パイプライン10の周方向の寸法が、30mm以上40mm以下である。100A~600Aのパイプライン10を想定したとき、導電性プレート20のパイプライン10に接する側の面の曲率がJIS G3452:2019で規定された150Aの管の外径に相当することに加えて、導電性プレート20のパイプライン10の周方向の寸法が30mm以上40mm以下であることによって、パイプライン10がいずれの呼び径である場合においても遠隔部G2の大きさを2mm未満とすることをより確実に担保することができる。よって、導電性プレート20の大きさを最小限としつつ、導電性プレート20とパイプライン10との接着強度を確保することができる。
【0083】
また、導電性プレート20のパイプライン10に接する側の面の曲率が、JIS G3452:2019で規定された65Aの管の外径に相当する。これにより、50A~80Aのパイプライン10を想定したとき、パイプライン10がいずれの呼び径である場合においても遠隔部G2の大きさを2mm未満とすることができる。よって、導電性プレート20の曲率を65Aとすることで、50A~80Aの範囲においては1種類の導電性プレート20によってプレート付きパイプライン100を構成することができる。
【0084】
また、導電性プレート20の、パイプライン10の周方向の寸法が、20mm以上30mm以下である。50A~80Aのパイプライン10を想定したとき、導電性プレート20のパイプライン10に接する側の面の曲率がJIS G3452:2019で規定された65Aの管の外径に相当することに加えて、導電性プレート20のパイプライン10の周方向の寸法が20mm以上30mm以下であることによって、パイプライン10がいずれの呼び径である場合においても遠隔部G2の大きさを2mm未満とすることをより確実に担保することができる。よって、導電性プレート20の大きさを最小限としつつ、導電性プレート20とパイプライン10との接着強度を確保することができる。
【0085】
また、接着剤Aは、アクリル系樹脂と導電性粉粒体とが混合されてなる。アクリル系樹脂とエポキシ系樹脂とを比較したとき、アクリル系樹脂はエポキシ系樹脂よりも耐水性、耐湿性に優れた特性を有する。よって、接着剤Aにアクリル系樹脂を用いることによって、接着剤Aの耐水性及び耐湿性を改善することができる。よって、露出管において結露が発生したり、埋設管において土中の水分が侵入したりするといった環境であっても本構成を適用することができる。
【0086】
また、アクリル系樹脂は、エポキシ系樹脂よりも硬化速度が速い。よって、接着剤Aが硬化するまでに導電性プレート20をパイプライン10に保持する作業に要する時間を短くすることができる。よって、より作業性の向上に寄与することができる。
【0087】
また、接着剤Aにおける導電性粉粒体の体積が、接着剤Aの10%以上30%以下である。これにより、接着剤Aの接着力と、接着剤Aによって接着した導電性プレート20とパイプライン10との導通性を両立することができる。
【0088】
また、近接部G1が導電性プレート20の周方向の両端に位置する。つまり、導電性プレート20をパイプライン10に接触させたとき、導電性プレート20の両端がパイプライン10に接する。よって、近接部G1が導電性プレート20の周方向の中央に位置する場合と比較して、導電性プレート20を安定させることができる。よって、より作業性の向上に寄与することができる。
【0089】
更に、遠隔部G2が、導電性プレート20の周方向の中央部に位置する。これにより、導電性プレート20に接着剤Aを塗布してパイプライン10に接触させたとき、より導電性プレート20とパイプライン10との間に接着剤Aが留まりやすくなる。よって、接着力の向上に寄与することができる。
【0090】
また、取付工程は、導電性プレート20が、導電性プレート20の周方向の両端に位置する近接部G1によってパイプライン10に支持された状態で、接着剤Aを介してパイプライン10に導電性プレート20を押し付ける。これにより、導電性プレート20をパイプライン10に押し付ける作業を安定して行うことができる。よって、作業の向上に寄与することができる。
【0091】
なお、本発明の技術的範囲は実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、導電性プレート20と接続部30とを接着剤Aによって取り付けてもよい。
また、パイプライン10に接する側の導電性プレート20の形状は、曲面でなくてもよい。パイプライン10と導電性プレート20との隙間が2mm未満とすることを確保できればよい。例えば、平板状であってもよいし、断面がV字形状であってもよいしコの字形状であってもよい。
【0092】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 パイプライン
20 導電性プレート
100 プレート付きパイプライン
A 接着剤
G1 近接部
G2 遠隔部
L 導線
図1
図2
図3
図4