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特開2023-96601レシーバタンクのフィルターキャップ固定構造
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  • 特開-レシーバタンクのフィルターキャップ固定構造 図1
  • 特開-レシーバタンクのフィルターキャップ固定構造 図2
  • 特開-レシーバタンクのフィルターキャップ固定構造 図2A
  • 特開-レシーバタンクのフィルターキャップ固定構造 図3
  • 特開-レシーバタンクのフィルターキャップ固定構造 図4
  • 特開-レシーバタンクのフィルターキャップ固定構造 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096601
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】レシーバタンクのフィルターキャップ固定構造
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/00 20060101AFI20230630BHJP
   F25B 39/04 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
F25B43/00 L
F25B39/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212470
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】390000158
【氏名又は名称】日軽熱交株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】秋本 竜昇
(72)【発明者】
【氏名】甲石 匡
(57)【要約】
【課題】レシーバタンクに切削加工を施す必要がなく、異種金属による腐食等のリスクのないレシーバタンクのフィルターキャップ固定構造を提供する。
【解決手段】筒状に形成されたレシーバタンク本体5bと、上記レシーバタンク本体の開口部から挿入され、上記開口部を閉塞するフィルターキャップ10とを具備するレシーバタンク5において、上記レシーバタンク本体の上記開口部側の内面に、上記フィルターキャップの挿入先端部と係合する係止凸部31を設け、上記フィルターキャップが上記係止凸部に係合した状態で、上記レシーバタンク本体に設けられた変形凸部32によって上記フィルターキャップの挿入後端部を固定する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されたレシーバタンク本体と、上記レシーバタンク本体の少なくとも一方の開口部から挿入され、上記開口部を閉塞するフィルターキャップとを具備するレシーバタンクにおいて、
上記レシーバタンク本体の上記開口部側の内面に、上記フィルターキャップの挿入先端部と係合する係止凸部が設けられ、上記フィルターキャップが上記係止凸部に係合した状態で、上記レシーバタンク本体に設けられた変形凸部によって上記フィルターキャップの挿入後端部を固定してなる、
ことを特徴とするレシーバタンクのフィルターキャップ固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載のレシーバタンクのフィルターキャップ固定構造において、
上記係止凸部は、少なくとも上記レシーバタンク本体の内面の対向位置に設けられ、上記変形凸部は、ヘッダーパイプに取り付けられる上記レシーバタンク本体の取付位置を除く全周の3箇所に設けられている、ことを特徴とするレシーバタンクのフィルターキャップ固定構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレシーバタンクのフィルターキャップ固定構造において、
上記フィルターキャップの挿入後端部から軸方向に延在する突起が設けられ、上記レシーバタンク本体に、上記突起の端部が確認可能な窓孔が設けられている、ことを特徴とするレシーバタンクのフィルターキャップ固定構造。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のレシーバタンクのフィルターキャップ固定構造において、
上記係止凸部及び上記変形凸部がかしめによって形成されている、ことを特徴とするレシーバタンクのフィルターキャップ固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レシーバタンクのフィルターキャップ固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特に過冷却部を併設するオールアルミニウム製のパラレルフロー型熱交換器には、冷媒を気液分離し、余剰の冷媒を備蓄するためのレシーバタンクが取り付けられている。このレシーバタンクは、通常、冷媒回路内の不純物を除去するためのフィルタが封入されている。
【0003】
レシーバタンク内にフィルタを封入する技術として、筒状のレシーバタンクの下端開口部側を拡管して、拡径内周面を形成し、かつ拡径内周面にフィルタと栓体が一体に形成されたフィルターキャップを保持する環状溝を設け、環状溝にフィルターキャップを保持する部材であるC型止め輪(Cリング)を上記環状溝に装着する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、レシーバタンク内にフィルタを封入する別の技術として、レシーバタンクの下部開口端近傍の内面の軸方向2箇所に環状溝を設け、下部開口端側の環状溝に固定部材であるC型止め輪(Cリング)が嵌合され、他方の環状溝にはフィルターキャップの上面側に設けられた爪部が嵌合されてフィルターキャップを固定する構造、又は、上記両環状溝にそれぞれに、Cリングを嵌合してフィルターキャップを固定する構造が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3482612号公報
【特許文献2】特許第5384853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2においては、いずれもレシーバタンクの内周面に溝加工して、Cリングを装着する構造であるため、切削加工等の精密加工が必要な上、Cリングの取付に手間がかかる懸念がある。また、Cリングは鉄系材料が使用されるため、異種金属同士の接触による腐食等のリスクの懸念がある。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、レシーバタンクに切削加工を施す必要がなく、異種金属による腐食等のリスクのないレシーバタンクのフィルターキャップ固定構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、この発明は、筒状に形成されたレシーバタンク本体と、上記レシーバタンク本体の少なくとも一方の開口部から挿入され、上記開口部を閉塞するフィルターキャップとを具備するレシーバタンクにおいて、上記レシーバタンク本体の上記開口部側の内面に、上記フィルターキャップの挿入先端部と係合する係止凸部が設けられ、上記フィルターキャップが上記係止凸部に係合した状態で、上記レシーバタンク本体に設けられた変形凸部によって上記フィルターキャップの挿入後端部を固定してなる、ことを特徴とする(請求項1)。
【0009】
このように構成することによって、レシーバタンク内に挿入されるフィルターキャップの挿入先端部を係止凸部に係合させた状態で、フィルターキャップの挿入後端部を変形凸部によって固定することができる。
【0010】
この発明において、上記係止凸部は、少なくとも上記レシーバタンク本体の内面の対向位置に設けられ、上記変形凸部は、ヘッダーパイプに取り付けられる上記レシーバタンク本体の取付位置を除く全周の3箇所に設けられているのが好ましい(請求項2)。
【0011】
このように構成することにより、フィルターキャップの挿入先端部と挿入口端部を安定した状態で固定することができる。
【0012】
また、この発明において、上記フィルターキャップの挿入後端部から軸方向に延在する突起が設けられ、上記レシーバタンク本体に、上記突起の端部が確認可能な窓孔が設けられているのが好ましい(請求項3)。
【0013】
このように構成することにより、窓孔から突起の先端部を確認することで、フィルターキャップの挿入後端部の位置を確認することができ、変形凸部によってフィルターキャップの挿入後端部を固定することができる。
【0014】
また、この発明において、上記係止凸部及び上記変形凸部をかしめによって形成するのが好ましい(請求項4)。
【0015】
このように構成することにより、レシーバタンク本体内に挿入されたフィルターキャップの挿入口端部の固定をかしめによって塑性変形された変形凸部によって容易にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、上記のように構成されているので、レシーバタンク本体に切削加工を施す必要がなく、フィルターキャップを固定するCリングの取付の手間を回避することができる。したがって、フィルターキャップの固定の作業工数を削減して容易にすることができる。また、異種金属同士の接触による腐食等のリスクを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明に係るレシーバタンク付き熱交換器の使用状態を示す概略正面図である。
図2図1のI部拡大断面図である。
図2A】この発明におけるレシーバタンクとヘッダーパイプと連結部材の連結状態を示す分解斜視図である。
図3】この発明におけるフィルターキャップの側面図(a)及び縦断面図(b)である。
図4】この発明におけるレシーバタンクにフィルターキャップを取り付ける手順を示す概略半断面図で、(a)はフィルターキャップの取付前、(b)はフィルターキャップの固定前、(c)はフィルターキャップの取付(固定)後である。
図5】この発明における変形凸部を示す説明図であって、(a)はレシーバタンク本体の概略底面図、(b)~(e)はそれぞれ(a)に示す0°,90°,180°及び270°の位置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
この発明に係るレシーバタンク付き熱交換器(以下に、熱交換器という)は、図1及び図2に示すように、それぞれがアルミニウム製の一対の略円筒状のヘッダーパイプ2a,2bと、これらヘッダーパイプ2a,2b間に架設される互いに平行な複数の熱交換チューブ3と、隣接する熱交換チューブ3間に介在されるコルゲートフィン4とを具備する熱交換器本体1と、冷媒中の水分を除去する乾燥剤6と冷媒中の不純物を除去するフィルタ11と栓体12とを一体に形成したフィルターキャップ10を具備するアルミニウム製の略円筒状のレシーバタンク5と、を具備し、アルミニウム製の連結部材7を介してヘッダーパイプ2a,2bのうちの一方のヘッダーパイプ2bとレシーバタンク5をろう付けにより一体接合してなる。
【0020】
上記ヘッダーパイプ2a,2bは、例えばアルミニウム製の押出形材にて略円筒状に形成されており、その上下端部にはキヤップ部材2cが被着固定されている。また、一方のヘッダーパイプ2a(図1において左側)の例えば外方側上端付近には、冷媒流入管8aが接続されており、外方側下端付近には、冷媒流出管8bが接続されている。
【0021】
また、ヘッダーパイプ2bの側壁には、図2に示すように、レシーバタンク5と連通するために、冷媒流出口21及び冷媒流入口22が上下の2箇所に穿設されており、これらの冷媒流出口21及び冷媒流入口22と連通するようにして、連結部材7を介してレシーバタンク5がヘッダーパイプ2bに一体的にろう付されている。
【0022】
ヘッダーパイプ2bの下部側には、冷媒流出口21側と、冷媒流入口22側とを区切る仕切板2dが設けられており、他方のヘッダーパイプ2aの下部側の仕切板2dと同位置に設けられる仕切板2eとで区画される下段側の熱交換チューブ3によって過冷却部1A(過冷却域)が形成されている。なお、ヘッダーパイプ2aには、冷媒流入管8a側と冷媒流出管8b側とを区切る仕切板2fが設けられている。また、ヘッダーパイプ2bには、冷媒流入管8aから供給された冷媒がヘッダーパイプ2aを介してヘッダーパイプ2bに流れた冷媒を仕切板2fで区切られたヘッダーパイプ2aの下部空間側に流す仕切板2gが設けられている。
【0023】
また、熱交換チューブ3は、アルミニウム製の押出形材にて例えば扁平な板状に形成されており、その内部には長手方向に向かって貫通する複数に区画された冷媒の流路(図示せず)が形成されている。このように形成される熱交換チューブ3の両端部は、両ヘッダーパイプ2a,2b側面の対向する側に、適宜間隔をおいて互いに平行に配列される複数のスリット(図示せず)に挿入固着されている。
【0024】
コルゲートフィン4は、図1に示すように、アルミニウム製の板材を屈曲することにより連続波形状に形成されており、各熱交換チューブ3の間に介設されてろう付されている。この場合、最上段及び最下段に配設された熱交換チューブ3の外方側にもコルゲートフィン4がろう付接合されており、これらの両コルゲートフィン4を保護するために、両コルゲートフィン4の更に外方側にはサイドプレート9がろう付接合されている。
【0025】
レシーバタンク5は、略円筒状に形成され、上側開口部がキャップ部材5aによって閉塞されたレシーバタンク本体5bと、レシーバタンク本体5bの下側開口部5cから挿入され、この下側開口部5cを閉塞するフィルターキャップ10と、フィルターキャップ10の上方に位置して冷媒中の水分を除去する乾燥剤6を具備している。なお、レシーバタンク本体5bの開口部側近傍の側壁には、フィルターキャップ10の挿入側後端に設けられた後述する突起12dの端部が確認できる窓孔5dが設けられている。窓孔5dはレシーバタンク本体5bの対向する側壁の周方向に沿って設けられる。
【0026】
また、レシーバタンク5は、図2に示すように、内部に封入された乾燥剤6の下部側が位置する側壁に、ヘッダーパイプ2bの冷媒流出口21に連通するタンク流入口51が形成され、また、フィルターキャップ10のフィルタ11が位置する側壁に、ヘッダーパイプ2bの冷媒流入口22に連通するタンク流出口52が形成されている。
【0027】
なお、連結部材7は、図2Aに示すように、ヘッダーパイプ2b側に向かって略凹円弧状に屈曲されたヘッダーパイプ接合部7aと、レシーバタンク本体5b側に向かって略凹円弧状に屈曲されたレシーバタンク接合部7bとを具備している。そして、レシーバタンク接合部7bには、図2及び図2Aに示すように、ヘッダーパイプ2bに設けられた冷媒流出口21とレシーバタンク5に設けられたタンク流入口51に連通可能な第1の連通口71と、ヘッダーパイプ2bに設けられた冷媒流入口22とレシーバタンク5に設けられたタンク流出口52に連通可能な第2の連通口72とが設けられている。
【0028】
この場合、第1の連通口71と第2の連通口72は、それぞれ円筒状に形成されており、第1の連通口71は冷媒流出口21内に挿入され、第2の連通口72は冷媒流入口22内に挿入されている。なお、レシーバタンク接合部7bにおける第1の連通口71と第2の連通口72との間には、連結部材7の長手方向に沿う長孔73が設けられている。この長孔73によって仕切板2dと連結部材7の干渉が回避される。
【0029】
フィルターキャップ10は、図2及び図3に示すように、レシーバタンク本体5bの下側開口部を閉塞する栓体12と、レシーバタンク5内に収容され冷媒中の不純物を除去するフィルタ11とが一体に形成されている。この場合、栓体12は、有底円筒状の基部12aと、基部12aの外周の2箇所に設けられた周溝12bに嵌装されるOリング12cと、基部12aの下端部すなわち挿入後端部から軸方向に延在する突起12dとを具備する。なお、突起12dは、フィルターキャップ10をレシーバタンク本体5b内に挿入する際のつまみを兼用している。また、フィルタ11は、栓体12の基部12aの上端から延在され、周方向に等間隔の側部開口部を形成すべく互いに交差する垂直仕切片11aと、垂直仕切片11aの上端から外方に向かって延在する鍔部11bと、側部開口に張設される合成樹脂製のフィルターメッシュ11cとを具備する。
【0030】
次に、レシーバタンク5にフィルターキャップ10を固定する手順及び構造について、図4を参照して説明する。予め、レシーバタンク本体5bの下側開口部5c側の内面に係止凸部31を形成する。係止凸部31は、例えば、かしめによってレシーバタンク本体5bの側壁を塑性変形させて形成することができる。係止凸部31はレシーバタンク本体5bの全周の4箇所に設けられている。なお、係止凸部31は少なくとも対向する2箇所に設けられていればよい。
【0031】
上記のようにして係止凸部31を形成した後、図4(a)に示すように、フィルターキャップ10をレシーバタンク本体5bの開口部側から挿入して、レシーバタンク本体5bの内周面に摺接するフィルターキャップ10の挿入先端部の鍔部11bを係止凸部31に係合させる。図4(b)に示すように、フィルターキャップ10の挿入先端の鍔部11bが係合した状態の確認は、窓孔5dからフィルターキャップ10の突起12dの端部の状態によって確認する。突起12dの端部の確認は目視や光センサー等を用いて行う。
【0032】
窓孔5dからフィルターキャップ10の突起12dの端部の確認によって、フィルターキャップ10の挿入先端の鍔部11bが係合した状態で、図4(b)に示すように、レシーバタンク本体5bに外方から力Fを加えるかしめにより塑性変形された変形凸部32によってフィルターキャップ10の挿入後端の栓体12の基部12aを固定する{図4(c)参照}。
【0033】
変形凸部32は、ヘッダーパイプ2bに取り付けられるレシーバタンク本体5bの取付位置を除く全周の3箇所に設けられる。具体的には、変形凸部32は、図5に示すように、レシーバタンク本体5bの取付位置を0°としたときの、取付位置を除く全周の3箇所つまり90°,180°,270°の位置に設けられる。
【0034】
上記実施形態のレシーバタンクのフィルターキャップ固定構造によれば、レシーバタンク本体5b内に挿入されるフィルターキャップ10の挿入先端部を、レシーバタンク本体5bに形成された係止凸部31に係合させた状態で、レシーバタンク本体5bに外方から力を加えるかしめにより塑性変形された変形凸部32によってフィルターキャップ10の挿入後端部を固定することができる。したがって、レシーバタンク本体5bに切削加工を施す必要がなく、フィルターキャップ10を固定するCリングの取付の手間を回避することができるので、フィルターキャップ10の固定の作業工数を削減して容易にすることができる。また、鉄系材料のCリングを使用しないため、異種金属同士の接触による腐食等のリスクを回避することができるなどの効果が得られる。
【符号の説明】
【0035】
5 レシーバタンク
5b レシーバタンク本体
5c 開口部
5d 窓孔
10 フィルターキャップ
11 フィルタ
11b 鍔部
12 栓体
12d 突起
31 係止凸部
32 変形凸部
図1
図2
図2A
図3
図4
図5