(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096603
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】音源解析装置および音源解析方法
(51)【国際特許分類】
G01H 3/00 20060101AFI20230630BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20230630BHJP
G10K 15/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
G01H3/00 Z
H04R3/00 320
G10K15/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212473
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】西浦 貴大
(72)【発明者】
【氏名】田中 八平
【テーマコード(参考)】
2G064
5D220
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064AB16
2G064AB18
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064CC43
2G064DD02
5D220BA06
5D220BC05
(57)【要約】
【課題】三次元音場の解析を高速かつ適切に行うことができる音源解析装置および音源解析方法を提供する。
【解決手段】音源解析装置は、解析対象である音源面の三次元モデルを記憶する記憶部と、複数のマイクロホンが一定のマイク間隔で並んだマイクロホンアレイにより測定された音信号を取得する取得部と、記憶部により記憶された三次元モデルを複数の部分領域に分割する分割部と、マイクロホンアレイのマイク間隔に基づいて、分割部により分割された部分領域に対して平面近似を行う近似部と、取得部により取得された音信号に基づいて、近似部により近似された平面を用いて音源情報を算出する算出部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析対象である音源面の三次元モデルを記憶する記憶部と、
複数のマイクロホンが一定のマイク間隔で並んだマイクロホンアレイにより測定された音信号を取得する取得部と、
前記記憶部により記憶された三次元モデルを複数の部分領域に分割する分割部と、
前記マイクロホンアレイのマイク間隔に基づいて、前記分割部により分割された前記部分領域に対して平面近似を行う近似部と、
前記取得部により取得された音信号に基づいて、前記近似部により近似された平面を用いて音源情報を算出する算出部と、を備えることを特徴とする音源解析装置。
【請求項2】
前記音源情報は、音圧および粒子速度の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の音源解析装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記複数の部分領域のうち、前記近似部により平面近似された部分領域を第一メッシュとし、近接場音響ホログラフィ演算を行うことで、当該第一メッシュの前記音源情報を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の音源解析装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記複数の部分領域のうち、前記近似部により平面近似された部分領域以外の部分領域を第二メッシュとし、逆境界要素法の演算を行うことで、当該第二メッシュの前記音源情報を算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の音源解析装置。
【請求項5】
前記近似部は、前記複数の部分領域のそれぞれについて、前記マイクロホンアレイの測定面に平行な検査面における短手方向の大きさが前記マイクロホンアレイのマイク間隔よりも小さい凹凸形状を除去することで、前記平面近似を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の音源解析装置。
【請求項6】
前記近似部は、前記凹凸形状が除去された部分領域のうち、前記マイクロホンアレイの測定面に平行な検査面の法線方向の座標が各頂点で等しい部分領域を平面部と定義し、複数の前記平面部が定義された場合、当該平面部の各頂点の座標に基づいて、複数の前記平面部を1つの新たな平面部として再定義することを特徴とする請求項5に記載の音源解析装置。
【請求項7】
前記近似部は、複数の前記平面部のうち最も大きな平面部を基準面とし、当該基準面以外の前記平面部のうち、各頂点の前記法線方向の座標が前記基準面の各頂点の前記法線方向の座標に対して所定範囲内にある前記平面部と、前記基準面とを、当該基準面と同一平面の前記新たな平面部として再定義することを特徴とする請求項6に記載の音源解析装置。
【請求項8】
前記近似部は、複数の前記平面部のうち、前記新たな平面部として再定義されていない平面部が存在する場合、再定義されていない前記平面部に対して、前記再定義を繰り返すことを特徴とする請求項7に記載の音源解析装置。
【請求項9】
前記算出部は、
前記取得部により取得された音信号に基づいて、前記音源情報を算出するための第1処理を行う第1の算出部と、
前記第1の算出部による算出結果を利用して、前記音源情報を算出するための第2処理を行う第2の算出部と、を備え、
複数の前記マイクロホンアレイのそれぞれに対応し、前記第1の算出部を備える複数のサブ演算部と、
前記複数のサブ演算部に接続され、前記第2の算出部を備えるメイン演算部と、を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の音源解析装置。
【請求項10】
前記第1の算出部は、前記第1処理として、周波数解析処理を含む処理を実行することを特徴とする請求項9に記載の音源解析装置。
【請求項11】
前記複数のサブ演算部間で、前記第1処理を並列的に行うことを特徴とする請求項9または10に記載の音源解析装置。
【請求項12】
表示部と、
請求項1から11のいずれか1項に記載の音源解析装置と、
前記算出部により算出された音源情報を前記表示部に表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とする音源可視化装置。
【請求項13】
解析対象である音源面の三次元モデルを取得するステップと、
複数のマイクロホンが一定のマイク間隔で並んだマイクロホンアレイにより測定された音信号を取得するステップと、
前記三次元モデルを複数の部分領域に分割するステップと、
前記マイクロホンアレイのマイク間隔に基づいて、分割された前記部分領域に対して平面近似を行うステップと、
取得された前記音信号に基づいて、前記平面近似された平面に用いて音源情報を算出するステップと、を含むことを特徴とする音源解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音源解析装置および音源解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元で任意形状の音源を可視化するアルゴリズムとして、逆境界要素法((inverse Boundary Element Method:iBEM)を用いた方法がある。iBEMは、音場のある点の音圧は、解析対象表面の微小面積からの影響の和で表せることを利用した音源解析方法である。音場の音圧をマイクロホン等で測定することで、逆演算により解析対象表面の粒子速度を求めることができる。
例えば特許文献1は、少なくとも1つの測定値に基づいて、波動関数の計算により音場を再構成する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元音源可視化の空間分解能を上げるためには、解析対象表面を細かい微小面積で分割する必要がある。しかしながら、BEMの演算では、表面の分割数の二乗のオーダーで演算量が増えていくため、高分解能で解析を行おうとするほど、演算時間が増加する。
そこで、本発明は、三次元音場の解析を高速かつ適切に行うことができる音源解析装置および音源解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様の音源解析装置は、解析対象である音源面の三次元モデルを記憶する記憶部と、複数のマイクロホンが一定のマイク間隔で並んだマイクロホンアレイにより測定された音信号を取得する取得部と、上記記憶部により記憶された三次元モデルを複数の部分領域に分割する分割部と、上記マイクロホンアレイのマイク間隔に基づいて、上記分割部により分割された上記部分領域に対して平面近似を行う近似部と、上記取得部により取得された音信号に基づいて、上記近似部により近似された平面を用いて音源情報を算出する算出部と、を備える。
また、本発明の一つの態様の音源可視化装置は、表示部と、上記の音源解析装置と、上記算出部により算出された音源情報を上記表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【0006】
さらに、本発明の一つの態様の音源解析方法は、解析対象である音源面の三次元モデルを取得するステップと、複数のマイクロホンが一定のマイク間隔で並んだマイクロホンアレイにより測定された音信号を取得するステップと、上記三次元モデルを複数の部分領域に分割するステップと、上記マイクロホンアレイのマイク間隔に基づいて、分割された上記部分領域に対して平面近似を行うステップと、取得された上記音信号に基づいて、上記平面近似された平面に用いて音源情報を算出するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、平面近似により演算量を減らすことができるため、三次元音場の解析を高速かつ適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第一の実施形態の音源可視化装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、メインコンピュータの構成例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、音源解析処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、平面選択処理手順を示すフローチャートである。
【
図5A】
図5Aは、BEMを利用した音源解析アルゴリズムを示す模式図である。
【
図5B】
図5Bは、BEMとNAHとを利用した音源解析アルゴリズムを示す模式図である。
【
図6】
図6は、音源可視化装置の別の構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、音源解析処理の概要を説明するためのフロー図である。
【
図8】
図8は、音源可視化処理のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態における音源解析装置を備える音源可視化装置100の構成例を示す図である。
本実施形態における音源可視化装置100は、トラクションモータおよび工作機械などの解析対象における三次元音源可視化を行う装置である。
図1に示すように、音源可視化装置100は、音源解析装置200と、表示装置300と、を備える。
【0011】
音源解析装置200は、音源から発せられる被測定音を解析し、解析結果を表示装置300に表示させる装置である。
音源解析装置200は、複数のマイクロホンアレイ10と、複数のサブコンピュータ20と、1つのメインコンピュータ30と、を備える。
マイクロホンアレイ10は、複数のマイクロホンが一定のマイク間隔で並んだ構成を有する。例えばマイクロホンアレイ10は、m×n個のマイクロホンがxy方向に一定のマイク間隔dで格子状に並んだ構成とすることができる。マイクロホンアレイ10は、解析対象である音源面から概ねマイク間隔dだけ離れた位置に、解析対象に対向して配置される。
【0012】
マイクロホンは、例えばMEMS(Micro-Electrical-Mechanical Systems)マイクロホンとすることができる。この場合、マイクロホンは、MEMS技術を用いた音響トランスデューサ(MEMSチップ)とアンプとを内蔵することができる。そして、マイクロホンは、音響トランスデューサによって音(音圧)を電気信号に変換し、変換した電気信号をアンプによって増幅して出力する。なお、マイクロホンがデジタルマイクロホンである場合、マイクロホンは、さらにA/Dコンバータを内蔵し、アンプによって増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換して出力することができる。
ただし、マイクロホンはMEMSマイクロホンに限定されるものではない。また、マイクロホンは、無指向性のマイクロホンであってもよいし、指向性のマイクロホンであってもよい。
【0013】
複数のサブコンピュータ20は、複数のマイクロホンアレイ10のそれぞれに対応して接続されている。1つのマイクロホンアレイ10と1つのサブコンピュータ20とで、1つのマイクロホンアレイモジュール40を構成する。サブコンピュータ20は、マイクロホンアレイ10が備えるマイクロホンの各々により測定された音信号を取得し、取得した音信号をメインコンピュータ30に転送する。
なお、マイクロホンアレイモジュール40の数は特に限定されない。マイクロホンアレイモジュール40の数は、被測定音を収音可能な数であればよい。
【0014】
メインコンピュータ30は、複数のサブコンピュータ20と、表示装置300とに接続されている。
メインコンピュータ30は、メイン演算部であるプロセッサ(CPU)31と、記憶装置(メモリ)32と、を備える。プロセッサ31は、サブコンピュータ20から転送される音信号を取得し、取得した音信号を、記憶装置32に記憶された各種データを用いて解析し、解析対象での音源面の音源情報を算出する。上記音源情報は、音の特徴を表す物理量であり、音圧および粒子速度の少なくとも一方を含む。また、プロセッサ31は、算出した音源情報を示す画像(音源画像)を表示装置300に表示させる表示制御を行う。記憶装置32は、解析対象である音源面の三次元モデル等を記憶する記憶部である。
表示装置300は、液晶ディスプレイ等のモニタからなる表示部を備え、メインコンピュータ30のプロセッサ31からの指示に従って音源画像等を表示する。
【0015】
なお、本実施形態では、音源解析装置200は、モジュール化したマイクロホンアレイ10を複数備える場合について説明する。しかしながら、マイクロホンアレイ10は、音源解析装置200とは別の構成であってもよい。つまり、音源解析装置200は、複数のマイクロホンアレイ10にそれぞれ接続された複数のサブコンピュータ20と、1つのメインコンピュータ30と、を備える構成であってもよい。
【0016】
図2は、メインコンピュータ30の構成例を示す機能ブロック図である。
メインコンピュータ30は、解析対象表面を平面部分(幾何学形状部分)と平面以外の複雑形状部分(非幾何学形状部分)とに分けて音源解析を行う。このとき、メインコンピュータ30は、解析対象表面に対して平面近似を行ったうえで、平面部分を選択する。
メインコンピュータ30は、取得部31aと、分割部31bと、近似部31cと、算出部31dと、表示制御部31eと、を備える。
取得部31aは、サブコンピュータ20から、マイクロホンアレイ10により測定された音信号を取得する。
分割部31bは、記憶装置32により記憶された三次元モデルを複数の部分領域(要素)に分割する。
近似部31cは、マイクロホンアレイ10のマイク間隔dに基づいて、分割部31bにより分割された部分領域に対して平面近似を行う。
算出部31dは、取得部31aにより取得された音信号に基づいて、近似部31cにより近似された平面を用いて音源情報を算出する。
表示制御部31eは、算出部31dにより算出された音源情報を表示装置300が備える表示部(モニタ)に表示させる。
【0017】
なお、本実施形態では、メインコンピュータ30が表示制御部31eを備える場合について説明するが、表示制御部31eは、音源解析装置200と表示装置300とに接続された別装置が備えていてもよい。この場合、別装置が備える表示制御部31eが、音源解析装置200により算出された音源情報を取得し、当該音源情報を示す画像(音源画像)を表示装置300に表示させる表示制御を行う。
【0018】
以下、メインコンピュータ30が実行する音源解析処理について具体的に説明する。
図3は、メインコンピュータ30が実行する音源解析処理手順を示すフローチャートである。メインコンピュータ30は、プロセッサ31が例えば記憶装置32から必要なプログラムを読み出して実行することにより、
図3に示す各処理を実現することができる。
【0019】
まずステップS1において、メインコンピュータ30は、測定点(観測点)の音圧を取得してステップS2に移行する。具体的には、メインコンピュータ30は、解析対象表面に対向して配置された複数のマイクロホンアレイ10により測定された音圧を、サブコンピュータ20を介して取得する。
ステップS2では、メインコンピュータ30は、記憶装置32に記憶された解析対象の三次元モデルを複数の部分領域に分割して離散化する。このとき、メインコンピュータ30は、三次元モデルを、例えば三角形、四角形などの幾何学形状の微小面積のメッシュに分割する。
【0020】
次にステップS3では、メインコンピュータ30は、三次元モデルの平面部分を選択する平面選択処理を実行する。このとき、メインコンピュータ30は、マイクロホンアレイ10のマイク間隔dに基づいて、ステップS2において分割された部分領域に対して平面近似を行ったうえで、平面部分を選択する。
【0021】
図4は、
図3のステップS3において実行される平面選択処理手順を示すフローチャーオである。
まずステップS31では、メインコンピュータ30は、検査面を設定する。具体的には、メインコンピュータ30は、各マイクロホンアレイ10の測定点をマイクロホンアレイ10の測定面の法線方向に解析対象表面まで移動させた場合に、測定点が作る平面内にある解析対象表面を検査面として設定する。検査面は、マイクロホンアレイ10の測定面に平行な面である。
【0022】
次にステップS32では、メインコンピュータ30は、検査面内に凹凸形状が存在するか否かを判定し、凹凸形状が存在すると判定した場合にはステップS33に移行し、凹凸形状が存在しないと判定した場合にはステップS35に移行する。ここで、上記凹凸形状は、突起、溝および孔を含む。
ステップS33では、メインコンピュータ30は、凹凸形状の大きさが、マイクロホンアレイ10のマイク間隔d未満であるか否かを判定する。具体的には、メインコンピュータ30は、検査面におけるx方向およびy方向のそれぞれについて凹凸形状の大きさを調べ、x方向およびy方向のいずれかの大きさがマイク間隔dよりも小さいか否かを判定する。
【0023】
そして、メインコンピュータ30は、ステップS33において凹凸形状の短手方向の大きさがマイク間隔d以上であると判定した場合にはステップS32に戻り、検査面内に他の凹凸形状が存在するか否かを判定する。
一方、メインコンピュータ30は、ステップS33において凹凸形状の短手方向の大きさがマイク間隔d未満であると判定した場合にはステップS34に移行し、マイク間隔d未満の大きさであると判定された凹凸形状を検査面から除去する。ここで、凹凸形状の除去には、3DCAD等の簡易化機能を用いてもよいし、ボクセルによるモルフォロジー演算を用いてもよい。
マイクロホンアレイを用いた音源解析において、解析の空間分解能はマイクロホンアレイのマイク間隔により制約を受ける。そこで、本実施形態では、検査面における短手方向の大きさがマイクロホンアレイ10のマイク間隔dよりも小さい凹凸形状は、解析を行ううえで無視してもよいとして、上記のように微小な凹凸形状を検査面から除去することで平面近似を行う。
【0024】
ステップS35では、メインコンピュータ30は、再定義されていない平面部が存在するか否かを判定し、再定義されていない平面部が存在する場合にはステップS36に移行し、再定義されていない平面部が存在しない場合には
図4の平面選択処理を終了する。
ここで、平面部の再定義とは、マイク間隔d以下の大きさの凹凸形状が除去された後の検査面において、平面部と定義された複数の部分領域を1つの新たな平面部として定義することをいう。メインコンピュータ30は、凹凸形状が除去された部分領域のうち、検査面の法線方向の座標(z軸座標)が各頂点で等しい部分領域を平面部と定義する。そして、メインコンピュータ30は、複数の平面部が定義された場合、平面部の各頂点の座標に基づいて、複数の平面部を1つの新たな平面部として再定義する。
【0025】
ステップS36では、メインコンピュータ30は、平面部の再定義に用いる基準面を設定する。具体的には、メインコンピュータ30は、検査面内に存在する再定義されていない複数の平面部のうち、最も大きい面積を有する平面部を基準面として設定する。
次にステップS37では、メインコンピュータ30は、ステップS36において設定された基準面を用いて平面部の再定義を行い、ステップS35に戻る。具体的には、メインコンピュータ30は、基準面から一定のz軸座標の範囲内に存在する平面部は、すべて基準面と同一平面に存在するとみなし、新たな平面部として再定義する。つまり、メインコンピュータ30は、基準面以外の平面部のうち、各頂点のz軸方向の座標が基準面の各頂点のz軸方向の座標に対して所定範囲内にある平面部と、基準面とを、当該基準面と同一平面の新たな平面部として再定義する。
【0026】
メインコンピュータ30は、検査面内で再定義されていない平面部がなくなるまで、ステップS35~ステップS37の処理を繰り返す。このとき、メインコンピュータ30は、再定義されていない残りの平面部のうち、最も大きな平面部を新たな基準面として再設定し、平面部の再定義を行う。このように、メインコンピュータ30は、複数の平面部のうち、新たな平面部として再定義されていない平面部が存在する場合、再定義されていない平面部に対して、再定義を繰り返す。
上記の平面選択処理により、本来の複雑な形状の解析対象表面を、多くの平面部分から形成される単純な形状に変換することができる。
【0027】
図3に戻って、ステップS4では、メインコンピュータ30は、ステップS3において選択された平面部分(平面近似された部分領域)を第一メッシュとし、近接場音響ホログラフィ(NAH)演算を行うことで、第一メッシュの音圧および粒子速度を算出する。このとき、平面部分を法線方向にマイクロホンアレイ10の測定面まで移動させた場合に、当該平面部分を覆うことができる最小限のマイクロホンを、当該平面部分のNAH処理に用いるマイクロホンとする。
NAHは、解析対象が幾何学形状に制限されるが、境界要素法(BEM)と比較して高速で解析を行うことができる。本実施形態では、ステップS3における平面選択処理においてマイク間隔d未満の大きさの凹凸形状の除去、平面部の再定義などの平面近似を行うことで、NAHによる高速解析が可能な領域を増やすことができる。
【0028】
ステップS5では、メインコンピュータ30は、ステップS4におけるNAH処理結果を、解析対象の平面部分の音圧および粒子速度として投影する。
ステップS6では、メインコンピュータ30は、ステップS4において平面部分として選択されなかった複雑形状部分(平面近似された部分領域以外の部分領域)を第二メッシュとし、逆境界要素法(iBEM)の演算を行うことで、第二メッシュの音圧および粒子速度を算出する。以下、iBEMによる解析方法について説明する。
【0029】
BEMを用いることで、任意の音場内の音圧は、波動方程式により下記(1)式で表せられる。
【0030】
【0031】
ここで、p(r)は任意の点における音圧、Γは解析対象表面、rΓは解析対象表面の任意の点、G(r,rΓ)はグリーン関数である。
このとき、平面部分に相当する第一メッシュにN個の部分領域が存在すると、NAH演算によりこれらN個の部分領域の音圧および粒子速度は既知となる。そのため、任意の音場内の音圧は、音源の未知領域部分からの影響と既知領域部分からの影響との和で表せられ、上記(1)式は下記(2)式のように展開できる。
【0032】
【0033】
ここで、rNは既知領域部分となる平面部分における任意の点を表す。上記(2)式において、右辺第1項が未知領域部分からの影響、右辺第2項が既知領域部分からの影響を表す。また、右辺第2項は、測定点と解析対象表面との幾何学的な関係と、上記のステップS5により投影された音圧および粒子速度との積分となり、定数となる。したがって、すべての測定点の音圧p(r)について上記(2)式を連立すると、下記(3)式のように表せられる。
【0034】
【0035】
また、未知領域部分の任意の点rについて上記(2)式を連立すると、下記(4)式が得られる。
【0036】
【0037】
ここで、pΓ、vΓは、解析対象の境界表面の音圧ベクトル、粒子速度ベクトルである。音圧ベクトルpΓ-N、粒子速度ベクトルvΓ-Nは、それぞれΓ-N個の未知数からなる。また、H、Gは、それぞれの係数行列である。
そして、上記(3)式および(4)式より、下記(5)式が得られる。
【0038】
【0039】
ここで、Aは、波動の伝搬特性を表す音響伝達行列である。音響伝達行列Aの逆行列A-1を求めることで、下記(6)式が得られる。
【0040】
【0041】
このように、測定した音場の音圧ベクトルpと、音響伝達行列Aの逆行列A-1とから、解析対象表面の粒子速度が求められる。ここで、粒子速度ベクトルvΓ-Nは、上述したようにΓ-N個の未知数からなる。つまり、iBEMによる解析においては、平面部分のN個の未知数が削減されることになる。
【0042】
図5Aは、BEMのみを利用した従来の音源解析アルゴリズムを示す模式図、
図5Bは、本実施形態におけるBEMとNAHとを利用した音源解析アルゴリズムを示す模式図である。
解析対象表面をΓ個の微小面積のメッシュに分割した場合、
図5Aに示す従来方法ではΓ個の微小面積についてBEM演算が必要となる。これに対して、
図5Bに示す本実施形態の音源解析アルゴリズムでは、平面部分のN個の微小面積のBEM演算が削減される。したがって、本実施形態の音源解析アルゴリズムでは、
図5Aに示す従来方法と比べて、Nの二乗の演算量の削減が可能となる。また、従来方法では、メッシュの要素分割数とマイクロホンによる測定点との差が大きくなるほど、演算精度の低下が大きくなるが、本実施形態における音源解析アルゴリズムでは、N個の微小面積が削減されるため、演算精度の低下を抑える効果も期待できる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態における音源解析装置200は、複数のマイクロホンが一定のマイク間隔dで並んだマイクロホンアレイ10により測定された音信号を取得する。また、音源解析装置200は、解析対象である音源面の三次元モデルを取得し、当該三次元モデルを複数の部分領域に分割し、マイクロホンアレイ10のマイク間隔dに基づいて、分割された部分領域に対して平面近似を行う。そして、音源解析装置200は、取得された音信号に基づいて、平面近似された平面に用いて音源情報を算出する。
【0044】
このように、音源解析装置200は、平面近似を行うことで演算量を減らし、演算時間を短縮することができるため、三次元音場の解析を高速かつ適切に行うことができる。ここで、上記音源情報は、音圧および粒子速度の少なくとも一方とすることができる。音圧、粒子速度などの音の特徴を表す物理量を算出することで、三次元音場の解析を適切に行うことができる。
また、本実施形態における音源可視化装置100は、音源解析装置200と、表示部を備える表示装置300と、を備え、音源解析装置200により算出された音源情報を表示装置300に表示する。そのため、音源可視化装置100は、解析対象の音源を高速に可視化することができる。
【0045】
本実施形態では、音源解析装置200は、解析対象表面を平面部分と平面以外の複雑形状部分とに分け、平面部分についてはNAHによる高速解析を行い、複雑形状部分についてはiBEMによる解析を行う。
BEMの演算では、表面の分割数の二乗のオーダーで演算量が増えていくため、高分解能で解析を行おうとするほど、演算時間が増加する。また、微小面積のサイズは波長の1/6以下が望ましく、高周波数帯まで解析する場合にも演算時間が増えることになる。演算時間の削減方法としては、高速多重極境界要素法を用いた方法があるが、数学的なアルゴリズムが複雑なうえ、大規模な解析対象かつ高周波数帯での解析に適応が限定される。
本実施形態では、平面部分についてはNAHにより解析を行うので、iBEMでのNの二乗の演算量を削減し、演算時間を短縮することができる。
【0046】
また、音源解析装置200は、平面部分の選択に際し、解析対象の検査面における短手方向の大きさが、マイクロホンアレイ10のマイク間隔dよりも小さい凹凸形状を除去することで、平面近似を行うことができる。このように、マイク間隔dよりも小さい凹凸を平面部分とみなすことで、NAHによる解析が可能な領域を増やし、演算量を効果的に減らすことができる。
さらに、音源解析装置200は、凹凸形状が除去された部分領域のうち、平面部と定義された部分領域が複数存在する場合、複数の平面部の各頂点の座標に基づいて、複数の平面部を1つの新たな平面部として再定義することができる。このように、複数の平面部を1つの平面部として再定義することで、演算量をより少なくすることができる。
【0047】
また、音源解析装置200は、平面部の再定義に際し、複数の平面部のうち最も大きな平面部を基準面として設定し、基準面から一定のz軸座標の範囲内にあるすべての平面部を、基準面と同一平面の新たな平面部として再定義することができる。これにより、平面部の定義を適切に行うことができる。
また、音源解析装置200は、上記の平面部の再定義を、検査面内で再定義されていない平面部がなくなるまで繰り返し行うので、可能な限り平面部の再定義を行い、NAHによる解析をより高速で行うことができる。
【0048】
(第一の実施形態の変形例)
上述した第一の実施形態においては、メインコンピュータ30が、BEM+NAHの音源解析アルゴリズムを用いた演算を実行する場合について説明したが、一部の演算処理をサブコンピュータ20が実行してもよい。
つまり、
図6に示す音源可視化装置100Aのように、各サブコンピュータ20がそれぞれサブ演算部であるプロセッサ21と記憶装置22とを備え、プロセッサ21において上記一部の演算処理を実行してもよい。なお、
図6において、
図1に示す音源可視化装置100と同一構成を有する部分には、
図1と同一符号を付している。
【0049】
図1に示す音源可視化装置100においては、各マイクロホンアレイ10により測定された測定面での音場の測定データは、サブコンピュータ20を通してメインコンピュータ30に転送され、メインコンピュータ30が上述した音源解析アルゴリズムにより測定データを解析する。この音源可視化装置100では、サブコンピュータ20はデータ転送のみに利用され、メインコンピュータ30にて全演算が行われる。そのため、メインコンピュータ30での演算量が多く、また、メインコンピュータ30が必要とする演算時間も長い。さらに、サブコンピュータ20からメインコンピュータ30へ全測定データが転送される構成であるため、データ転送量が多く、転送時間が長くかかる。
【0050】
そこで、解析演算を分散化し、各サブコンピュータ20において解析演算の一部を実行してもよい。これにより、メインコンピュータ30での演算量およびメインコンピュータ30が必要とする演算時間を削減することができる。また、各サブコンピュータ20における処理は、サブコンピュータ20間で並列的に行ってもよい。これにより、システム全体としての演算時間を短縮することができる。
具体的には、iBEM演算を前処理と後処理とに分割し、サブコンピュータ20において、平面部分(幾何学形状部分)についてのNAH演算と、複雑形状部分(非幾何形状部分)についてのiBEM演算の前処理とを実行する。ここで、NAH演算およびiBEM演算の前処理は、高速フーリエ変換(FFT)を含む。サブコンピュータ20においてFFT演算を行うことにより、窓関数のサンプリング数に反比例した転送データ量を削減し、メインコンピュータ30へのデータ転送時間を短縮することができる。
【0051】
以下、サブコンピュータ20およびメインコンピュータ30において実行される音源解析処理手順について具体的に説明する。
図7は、音源解析処理の概要を説明するためのフロー図である。また、
図8は、音源解析処理のシーケンス図である。
まず、メインコンピュータ30は、ステップS101において、上述した
図3のステップS2の解析対象の離散化およびステップS3の平面選択処理を行い、解析対象表面を平面部分と複雑形状部分とに分ける。このとき、メインコンピュータ30は、プロセッサ31が記憶装置32に記憶された解析対象の三次元モデルを取得し、上記の解析対象の離散化および平面選択処理を行う。
【0052】
また、メインコンピュータ30は、平面選択処理結果をもとに、各サブコンピュータ20においてNAH演算を行うかiBEM前処理演算を行うかを決定する。
具体的には、メインコンピュータ30は、平面部分を測定する位置に配置されたマイクロホンアレイ10に接続されたサブコンピュータ20はNAH演算を行い、複雑形状部分を測定する位置に配置されたマイクロホンアレイ10に接続されたサブコンピュータ20はiBEM前処理演算を行うと決定する。
そして、メインコンピュータ30は、各サブコンピュータ20に対して、それぞれ演算方法を指定する指令信号を送信する。このとき、メインコンピュータ30は、各サブコンピュータ20に対して、マイクロホンアレイ10による測定開始を指示する測定開始命令も送信する。
【0053】
各サブコンピュータ20は、メインコンピュータ30から演算方法指定信号および測定開始命令を受信すると、ステップS102またはステップS103において、マイクロホンアレイ10による測定を開始し、指定された演算方法に従って演算処理を行う。
具体的には、サブコンピュータ20において、プロセッサ21がマイクロホンアレイ10から測定データを受信し、記憶装置22に記憶する。そして、プロセッサ21は、一定サンプリングごとに演算方法に従った演算処理(NAH演算またはiBEM前処理演算)を実行し、演算済のデータをメインコンピュータ30へ転送する。
【0054】
図7に示すように、NAH演算の実行を指示されたサブコンピュータ20は、ステップS102において、まずマイクロホンアレイ10から取得した測定データに対してNAH演算を行うことで、音源面音圧
NAHを得る。音源面音圧
NAHは、平面部分の音圧データである。そして、サブコンピュータ20は、NAH演算により得られた音源面音圧
NAHをメインコンピュータ30に転送する。
iBEM前処理演算を指示されたサブコンピュータ20は、ステップS103において、マイクロホンアレイ10から取得した測定データに対して時間FFT演算を行い、その演算結果をメインコンピュータ30へ転送する。
このステップS102におけるNAH演算と、ステップS103におけるiBEM前処理演算とは、並列的に実行される。
【0055】
メインコンピュータ30は、各サブコンピュータ20から転送される転送データを受信すると、ステップS104において、iBEM後処理演算を行う。具体的には、
図8に示すように、各サブコンピュータ20から転送される転送データが、メインコンピュータ30の記憶装置32に記憶され、プロセッサ31が記憶装置32に記憶されたデータを用いてiBEM後処理演算を行う。
【0056】
このステップS104では、
図7に示すように、まず、メインコンピュータ30は、音源面音圧
NAHと記憶装置32に記憶された境界要素とに基づいて音響伝達行列Aを計算する。次に、メインコンピュータ30は、音響伝達行列Aの逆行列A
-1を導出し、iBEM前処理演算によって得られた演算データと音響伝達行列Aの逆行列A
-1とに基づいて、複雑形状部分の周波数領域音源面音圧
iBEMを得る。そして、メインコンピュータ30は、その周波数領域音源面音圧
iBEMに対して逆時間FFT演算を行うことで、複雑形状部分の音源面音圧
iBEMを算出する。
最後に、メインコンピュータ30は、音源面音圧
NAHと音源面音圧
iBEMとを加算し、測定対象の全音源面音圧を得る。なお、ここでは音源面音圧を算出する場合について説明したが、粒子速度を算出することもできる。
【0057】
メインコンピュータ30は、iBEM後処理演算が終了すると、
図8のステップS105において、各サブコンピュータ20に対してマイクロホンアレイ10による測定停止を指示する測定停止命令を送信する。なお、メインコンピュータ30は、各サブコンピュータ20から演算済データを正常に受信したタイミングで測定停止命令を送信してもよい。
次に、メインコンピュータ30は、ステップS106において、音源面音圧を表示装置300に表示させる表示制御を行う。このとき、メインコンピュータ30は、音源面音圧データを表示装置300へ送信してもよいし、表示装置300に表示すべき音源面音圧を示す画像を表示装置300へ送信してもよい。
【0058】
このように、NAH演算とiBEM演算の前処理部分とをサブコンピュータ20での並列演算に分散化してもよい。これにより、メインコンピュータ30での演算量を削減することができるとともに、システム全体としての演算時間も短縮することができる。また、サブコンピュータ20においてFFT演算を含むNAH演算およびiBEM演算を行うので、サブコンピュータ20からメインコンピュータ30へのデータ転送量を削減することができ、データ転送時間の短縮が図れる。
【0059】
マイクロホンアレイ10による測定データをサブコンピュータ20からそのままメインコンピュータ30へ転送する場合、サブコンピュータ20からメインコンピュータ30へのデータ転送量は、m×f×d[Byte/s]である。ここで、mは、システムが有するマイクロホンの数[ch]、fは、サンプリング周波数[Hz]、dは、マイクロホンが測定できるデータ量/sample[Byte]である。
例として、マイクロホン数m=4096[ch]、サンプリング周波数f=48[kHz]、データ量=2[Byte]とすると、1秒間にメインコンピュータ30へ転送される測定データ量は、375[MB/s]となる。
【0060】
一方、上述したように、サブコンピュータ20において時間FFT演算を含むNAH演算とiBEM前処理演算とを行った場合、窓関数でのデータ切り出しによりデータ量が削減され、メインコンピュータ30へのデータ転送量が短縮される。
信号に対してFFT演算などの周波数解析処理を行う場合、窓関数と呼ばれる区間外で0となる関数により信号の一定区間が切り取られるのが一般的である。
そのため、サブコンピュータ20内にて、測定データ量m*f*d[Byte/s]のデータがサンプル数f_windの窓関数で切り取られた場合、音源面音圧データ量は、m*f*d/f_wind[Byte/s]となり、メインコンピュータ30へのデータ転送量はf_wind分の1となる。したがって、メインコンピュータ30へのデータ転送時間もf_wind分の1となる。
例として、マイクロホン数m=4096[ch]、サンプリング周波数f=48[kHz]、データ量=2[Byte]、窓関数=512[サンプル]とすると、1秒間にメインコンピュータ30へ転送される測定データ量は、375/512=750[kB/s]となる。
【0061】
このように、音源解析装置200は、複数のマイクロホンアレイ10のそれぞれに対応して接続された複数のサブ演算部と、複数のサブ演算部に接続されたメイン演算部と、を備える。そして、音源情報を算出するための演算処理を、NAH演算およびiBEM前処理演算を含む第1処理と、iBEM後処理演算を含む第2処理とに分け、サブ演算部が、マイクロホンアレイ10により測定された音信号に基づいて、第1処理であるNAH演算またはiBEM前処理演算を行う。また、メイン演算部は、サブ演算部が備える第1の算出部による算出結果を利用して、第2処理であるiBEM後処理演算を行う。つまり、複数のサブ演算部は、それぞれ第1処理を行う第1の算出部を備え、メイン演算部は、第2処理を行う第2の算出部を備える。
これにより、演算処理の一部をサブ演算部に分散化することができ、メイン演算部での演算量および演算時間を効果的に削減することができる。
【0062】
さらに、サブ演算部は、第1処理として、周波数解析処理(FFT演算)を含む処理を実行することができるので、サブ演算部からメイン演算部へのデータ転送量を削減し、転送時間を短縮することができる。
また、複数のサブ演算部間で、第1処理を並列的に行うことで、装置全体としての演算時間を短縮することができる。
【0063】
なお、音源解析装置200の解析対象は特に限定されない。ただし、解析対象の規模によらず、トラクションモータ、工作機械などの平面形状で表せられる面が多い解析対象であるほど、より顕著に演算時間削減の効果が得られる。
【符号の説明】
【0064】
10…マイクロホンアレイ、20…サブコンピュータ、21…プロセッサ、22…記憶装置、30…メインコンピュータ、31…プロセッサ、32…記憶装置、40…マイクロホンアレイモジュール、100…音源可視化装置、200…音源解析装置、300…表示装置