(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096609
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】ハイドロクロロフルオロオレフィンの製造方法及び回収方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/383 20060101AFI20230630BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C07C17/383
C07C21/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212483
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】牟田 健祐
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 章裕
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD11
4H006AD16
4H006BD84
4H006EA03
(57)【要約】
【課題】
有機ポリシロキサン成分とアルコールとがハイドロクロロフルオロオレフィンに溶解されている溶液組成物から、HCFOを製造及び回収する方法を提供する。
【解決手段】
有機ポリシロキサン成分とアルコールとがハイドロクロロフルオロオレフィンに溶解されている溶液組成物から、ハイドロクロロフルオロオレフィンとアルコールを気化させて蒸気とする第1気化工程と、
当該蒸気を凝縮して、凝縮液とする第1凝縮工程と、
当該凝縮液と水とを接触させ、有機層と当該アルコールを溶解した水層に分離した二層を形成させる第1二層形成工程と、
当該有機層を回収する第1回収工程と、を含むことを特徴とする、ハイドロクロロフルオロオレフィンの回収方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリシロキサン成分とアルコールとがハイドロクロロフルオロオレフィンに溶解されている溶液組成物から、ハイドロクロロフルオロオレフィンとアルコールを気化させて蒸気とする第1気化工程と、
当該蒸気を凝縮して、凝縮液とする第1凝縮工程と、
当該凝縮液と水とを接触させ、有機層と当該アルコールを溶解した水層に分離した二層を形成させる第1二層形成工程と、
当該有機層を回収する第1回収工程と、を含むことを特徴とする、ハイドロクロロフルオロオレフィンの回収方法。
【請求項2】
当該有機ポリシロキサン成分は、シリコーンオイルであり、当該ハイドロクロロフルオロオレフィンは、洗浄剤として用いられたものであり、当該アルコールは、メタノール、エタノール、2-プロパノールから選択される一種以上であることを特徴とする、請求項1記載の回収方法。
【請求項3】
当該ハイドロクロロフルオロオレフィン/シリコーンオイルの質量比が99/1~50/50であり、有機シロキサン成分とアルコールの含有量が、HCFOと有機シロキサン成分とアルコールの総量に対して50質量%以下であることを特徴とする、請求項1記載の回収方法。
【請求項4】
当該有機層に含まれるハイドロクロロフルオロオレフィンの純度が、GC%で95GC%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の回収方法。
【請求項5】
当該有機層に含まれるハイドロクロロフルオロオレフィンの純度が、GC%で95GC%未満である場合、
当該有機層を加熱して、ハイドロクロロフルオロオレフィンとアルコールを含む蒸気とする第2蒸気工程と、
当該蒸気を凝縮して、凝縮液とする第2凝縮工程と、
当該凝縮液と水とを接触させ、有機層と当該アルコール溶解した水層に分離した二層を形成させる第2二層形成工程と、
当該有機層を回収する第2回収工程と、をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の回収方法。
【請求項6】
前記第1回収工程で回収した有機層を乾燥して有機層中の水分を除去する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の回収方法。
【請求項7】
第1凝縮工程において、当該蒸気を10℃以下に冷却することを特徴とする、請求項1に記載の回収方法。
【請求項8】
前記ハイドロクロロフルオロオレフィンは、モノクロロトリフルオロプロペン及びジクロロトリフルオロプロペンの少なくとも一種であり、
前記アルコールは、メタノール、エタノール、2-プロパノール、及び1-プロパノールの少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1に記載の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイドロクロロフルオロオレフィンの製造方法及び回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロクロロフルオロオレフィン(以下、HCFOと記載することもある)は、大気中での寿命が短く、地球温暖化係数が小さいという優れた環境性能を有する化合物である。HCFOは、溶媒、洗浄剤、冷媒、ヒートポンプ用の熱媒体、高温作動流体などとして有用である。そのため、クロロフルオロカーボン(CFC)や、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)などに代わる化合物として、開発が進められている。
【0003】
HCFOは優れた溶媒や洗浄剤であり、HCFOを用いて溶解させることができる化合物としてシリコーン系潤滑剤が知られている。シリコーン系潤滑剤は、医療用機材、例えば注射器の注射針やシリンダ、医療用チューブ部品等に好適に用いられる。HCFOは、シリコーン系潤滑剤をこれらの製品に塗布する際の溶媒として、またはこれらの製品から除去する際の洗浄剤として用いることができる。
【0004】
例えば特許文献1には、HCFOをシリコーン系潤滑剤の溶媒とした潤滑剤溶液において、溶液100質量%のうち、潤滑剤の割合が、0.01~50質量%である潤滑剤溶液に、さらにアルコール類をHCFOとアルコール類の合計100質量%に対して1~50%含む潤滑剤溶液が開示されている。この時、アルコール類を潤滑剤とアルコールの合計100%に対して約0.99~99.98%含むことがわかる。また、特許文献2には、シリコーンオイルを含む様々な油に対する洗浄性、溶解性に優れる溶剤組成物として、HCFOと特定の溶剤を含む溶剤組成物が挙げられており、HCFOとしてZ-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(Z))や1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HCFO-1233yd)が開示されている。
【0005】
HCFO-1233zd(Z)は溶解・洗浄能力に優れた溶剤であるが、高価な溶剤であるため、溶剤や洗浄剤として用いられる場合、溶剤蒸気を凝縮して回収するなどの回収工程を実施し、HCFO-1233zd(Z)を再利用することが知られている(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許6507943号公報
【特許文献2】特許6945259号公報
【特許文献3】特開2020-138166号公報
【特許文献4】特開2021-155711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
HCFOを溶剤や洗浄剤として用いた場合、溶解させた化合物によってはHCFOとの分離が難しく、回収工程を経た使用済みの溶剤や洗浄剤にはHCFO以外の分離困難な化合物が含まれる場合がある。回収したHCFOを再利用する場合、溶解性能や洗浄性能の維持の観点から適切な純度のHCFOを回収することが好ましいため、分離困難な化合物が含まれるHCFOの回収工程には検討の余地があった。
特に、シリコーンオイルには、有機ポリシロキサン成分とともに、溶媒としてアルコールが溶解性向上や揮発速度の調節などのために含まれることがある。このような有機ポリシロキサン成分とアルコールが同時に含まれる混合物を、HCFOで溶解させた溶液組成物からHCFOを回収する場合は、上記のような課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、有機ポリシロキサン成分とアルコールとがHCFOに溶解されている溶液組成物からHCFOを高純度で回収する方法を検討したところ、HCFOから有機ポリシロキサン成分を分離することは可能だが、HCFOとアルコールは沸点が近く完全分離は難しいことを見出した。具体的には、炭素数が3~5で、塩素原子の数が1~3のHCFOと、炭素数が1~3のアルコールとは沸点が近く、特に炭素数が3で、塩素原子の数が1~2のHCFOであるモノクロロトリフルオロプロペンやジクロロトリフルオロプロペンと、メタノール、エタノール、2-プロパノール、又は1-プロパノールとは沸点が近く、完全分離が難しいことを見出した。
【0009】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施形態が含まれる。
[1]
有機ポリシロキサン成分とアルコールとがハイドロクロロフルオロオレフィンに溶解されている溶液組成物から、ハイドロクロロフルオロオレフィンとアルコールを気化させて蒸気とする第1気化工程と、
当該蒸気を凝縮して、凝縮液とする第1凝縮工程と、
当該凝縮液と水とを接触させ、有機層と当該アルコールを溶解した水層に分離した二層を形成させる第1二層形成工程と、
当該有機層を回収する第1回収工程と、を含むことを特徴とする、ハイドロクロロフルオロオレフィンの回収方法。
[2]
当該有機ポリシロキサン成分は、シリコーンオイルであり、当該ハイドロクロロフルオロオレフィンは、洗浄剤として用いられたものであり、当該アルコールは、メタノール、エタノール、2-プロパノールから選択される一種以上であることを特徴とする、[1]記載の回収方法。
[3]
当該ハイドロクロロフルオロオレフィン/シリコーンオイルの質量比が99/1~50/50であり、有機シロキサン成分とアルコールの含有量が、HCFOと有機シロキサン成分とアルコールの総量に対して50質量%以下であることを特徴とする、[1]記載の回収方法。
[4]
当該有機層に含まれるハイドロクロロフルオロオレフィンの純度が、GC%で95GC%以上であることを特徴とする、[1]に記載の回収方法。
[5]
当該有機層に含まれるハイドロクロロフルオロオレフィンの純度が、GC%で95GC%未満である場合、
当該有機層を加熱して、ハイドロクロロフルオロオレフィンとアルコールを含む蒸気とする第2蒸気工程と、
当該蒸気を凝縮して、凝縮液とする第2凝縮工程と、
当該凝縮液と水とを接触させ、有機層と当該アルコール溶解した水層に分離した二層を形成させる第2二層形成工程と、
当該有機層を回収する第2回収工程と、をさらに含むことを特徴とする、[1]に記載の回収方法。
[6]
前記第1回収工程で回収した有機層を乾燥して有機層中の水分を除去する工程を含むことを特徴とする、[1]に記載の回収方法。
[7]
第1凝縮工程において、当該蒸気を10℃以下に冷却することを特徴とする、[1]に記載の回収方法。
[8]
前記ハイドロクロロフルオロオレフィンは、モノクロロトリフルオロプロペン及びジクロロトリフルオロプロペンの少なくとも一種であり、
前記アルコールは、メタノール、エタノール、2-プロパノール、及び1-プロパノールの少なくとも一種であることを特徴とする、[1]に記載の精製方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態によれば、洗浄剤等として使用し、不純物を含むHCFOの溶液を蒸留法と水を使用する2段階の方法で処理することによってHCFOの純度を高めて回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態の各工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について説明する。ただし本開示は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、以下の実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本開示によりもたらされるものと解される。
【0013】
また、本開示では、ハロゲン化炭化水素について、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記し、必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。また、分子内に二重結合を有し、異性体としてトランス体(E体)とシス体(Z体)が存在する化合物については、E体とZ体をそれぞれ化合物の略称の末尾に(E)、(Z)と表記して示す。なお、化合物名の略称の末尾に(E)、(Z)の表記がないものは、E体および/またはZ体を示す。
【0014】
[回収方法の概要]
以下、本実施形態に係るHCFOと有機ポリシロキサン成分とアルコールとを含む溶液組成物からHCFOを高純度で回収する方法について
図1を参酌して説明する。
【0015】
本回収方法は、HCFOに有機ポリシロキサン成分とアルコールとが溶解された溶液組成物から、有機ポリシロキサン成分とアルコールを二段階工程によって分離する方法である。
【0016】
(溶液組成物)
本回収方法において、溶液組成物は、HCFO(A)と有機ポリシロキサン成分(B)とアルコール(C)とが含まれる。この溶液組成物は、均一な溶液であっても良く、不均一な溶液や懸濁液であっても良い。溶液組成物中の有機ポリシロキサン成分は、ハイドロクロロフルオロオレフィンに溶解、分散、固化、凝集又は析出している場合があるが、本回収方法における溶液組成物は、いずれの態様であっても良い。
【0017】
(HCFO(A))
HCFOは、炭素原子-炭素原子間に二重結合を持つため、大気中での寿命が短く、オゾン破壊係数(ODP)や地球温暖化係数(GWP)が小さい。本開示において、「オゾン破壊係数」とは、各化合物の1kgあたりの総オゾン破壊量をトリクロロフルオロメタンの1kgあたりの総オゾン破壊量で割って算出されるオゾン層破壊の強度を比較する際に用いられる値である。また、「地球温暖化係数」とは、個々の温室効果ガスの地球温暖化に対する効果について持続時間を加味したうえで、二酸化炭素の効果に対して相対的に表す指標のことである。
【0018】
本回収方法においてHCFOは、炭素数が3~5で、塩素原子の数が1~3であるものが好ましく、炭素数が3で、塩素原子の数が1~2のものが特に好ましい。具体的には、モノクロロトリフルオロプロペン、モノクロロテトラフルオロプロペン、ジクロロトリフルオロプロペン、トリクロロトリフルオロプロペン、モノクロロヘプタフルオロペンテンが好ましく、モノクロロトリフルオロプロペン、モノクロロテトラフルオロプロペン、ジクロロトリフルオロプロペンが特に好ましく、Z-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(Z))、Z-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HCFO-1233yd(Z))、E-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HCFO-1233yd(E))、Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223xd(Z))、E-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223xd(E))がさらに好ましい。これらのHCFOは、いずれも乾燥速度が非常に速い物質である。また、沸騰させて蒸気となっても同等の温度であるので、洗浄や塗布の対象とする製品に付随する樹脂部品等の熱による影響を受けやすい部品であっても悪影響を及ぼし難い。また、引火点を持たず、表面張力や粘度も低く、常温でも容易に蒸発する等、洗浄溶剤や塗布溶剤として優れた性能を有している。
【0019】
以下に、モノクロロトリフルオロプロペン、モノクロロテトラフルオロプロペン、ジクロロトリフルオロプロペン、トリクロロトリフルオロプロペン、モノクロロヘプタフルオロペンテンの具体例を示すが、本回収方法において用いることができるHCFOは、これらに限定されない。
モノクロロトリフルオロプロペン:Z-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(Z)。沸点は約39℃)、E-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(E)。沸点は約18℃。)、Z-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HCFO-1233yd(Z)。沸点は約54℃)、E-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HCFO-1233yd(E)。沸点は約48℃)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf。沸点は約15℃)。
モノクロロテトラフルオロプロペン:Z-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z)。沸点は約15℃)、E-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E)。沸点は約19℃)、Z-2-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224xe(Z)。沸点は約17℃)、E-2-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224xe(E)。沸点は約23℃)。
ジクロロトリフルオロプロペン:Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223xd(Z)。沸点は約53℃)、E-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223xd(E)。沸点は約60℃)、1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223za。沸点は約55℃)。
トリクロロトリフルオロプロペン:1,1,2-トリクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1213xa。沸点は約88℃)。
モノクロロヘプタフルオロペンテン:E-1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HCFO-1437dycc(E)。沸点は約93℃)、Z-1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HCFO-1437dycc(Z)。沸点は約89℃)。
【0020】
本開示において、HCFOの沸点は気化工程の効率を考慮すると、10℃以上95℃以下であることが好ましく、15℃以上65℃以下であることがより好ましい。
【0021】
なお、本開示において、化合物の沸点は特に断りのない限り常圧における沸点である。本開示において、常圧は1.013×105Paを、常温は25℃をそれぞれ意味する。
【0022】
HCFOは、上記のHCFOの何れか一つであっても良く、2つ以上のHCFOを含んでも良い。
【0023】
(有機ポリシロキサン成分(B))
本開示の有機ポリシロキサン成分とは、シロキサン結合を含む高分子化合物である。有機ポリシロキサン成分は、耐熱性や耐候性、化学的安定性などに優れ、構造により潤滑性を有する。
【0024】
本開示の有機ポリシロキサン成分は、シリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーンオリゴマー、シリコーンパウダーであってもよい。シリコーンオイルは、具体的にはストレートシリコーン、変性シリコーンであっても良い。シリコーンオイルはシリコーングリースであってもよい。本開示の有機ポリシロキサン成分は、シリコーン系潤滑剤に由来する成分であっても良い。特に変性シリコーンに由来する成分であっても良い。変性シリコーンはストレートシリコーンに有機基を導入して様々な特性を付与されたシリコーンオイルであり、潤滑性を付与された変性シリコーンは潤滑剤として用いられることが多い。
【0025】
シリコーン系潤滑剤とは、シリコーンを含む潤滑剤を指し、例えば、シリコーンオイルやシリコーングリースが挙げられる。シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーン、また、反応性シリコーン、非反応性シリコーン等の変性シリコーン等が挙げられる。
【0026】
より具体的には、ストレートシリコーンとしては、メチル基、フェニル基、水素原子を置換基として結合したジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、又はメチル水素シリコーン等が挙げられる。反応性シリコーンとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メタクリル変性、フェノール変性、又は異種官能基変性シリコーン等が挙げられる。非反応性シリコーンとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、又はフッ素変性シリコーン等が挙げられる。これらのシリコーンは一種類、又は2種類以上の混合物であってもよい。
【0027】
シリコーンオイルとしては、例えば、製品名「信越シリコーンKF-96」、「信越シリコーンKF-965」、「信越シリコーンKF-968」、「信越シリコーンKF-99」、「信越シリコーンKF-50」、「信越シリコーンKF-54」、「信越シリコーンHIVACF-4」、「信越シリコーンHIVACF-5」、「信越シリコーンKF-56A」、「信越シリコーンKF-995」(以上、信越化学工業株式会社製)、「SH200」(東レ・ダウコーニング株式会社製)、「MDX4-4159」(ダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0028】
シリコーングリースとしては、上記に挙げた種々のシリコーンオイルを基油として、金属石けん等の増ちょう剤、各種添加剤を配合した製品が好ましい。例えば、製品名「信越シリコーンG-30シリーズ」、「信越シリコーンG-40シリーズ」、「信越シリコーンFG-720シリーズ」、「信越シリコーンG-411」、「信越シリコーンG-501」、「信越シリコーンG-6500」、「信越シリコーンG-330」、「信越シリコーンG-340」、「信越シリコーンG-350」、「信越シリコーンG-630」(以上、信越化学工業株式会社製)、「モリコート(登録商標)SH33L」、「モリコート(登録商標)41」、「モリコート(登録商標)44」、「モリコート(登録商標)822M」、「モリコート(登録商標)111」、「モリコート(登録商標)高真空用グリース」、「モリコート(登録商標)熱拡散コンパウンド」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0029】
本開示の有機ポリシロキサン成分を含有するシリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーンオリゴマー、シリコーンパウダー、シリコーングリースは、一種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0030】
HCFOとシリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーンオリゴマー、シリコーンパウダー、シリコーングリースからなる群から選ばれる1種以上である成分の質量比は、99/1~50/50であることが好ましく、99/1~90/10であることがより好ましい。HCFOの質量比が大きくなるほど、本開示の回収方法により純度の高いHCFOを得られやすい。
【0031】
(アルコール(C))
直鎖、分岐鎖または環状構造の炭化水素にヒドロキシ基が結合した有機化合物のことをいう。水との接触によりアルコールを除去する場合、水溶性の観点から、炭素数が1~3のアルコールが溶解しやすいので好ましく、具体的にはメタノール(沸点は約64.5℃)、エタノール(沸点は約78.3℃)、2-プロパノール(沸点は約82.4℃)、又は1-プロパノール(沸点は約97℃)が好ましい。前記アルコールは共存する化合物の沸点や溶解性等の物理的性質によっては共沸様組成を形成することがあり蒸留による分離が難しいことがある。
【0032】
本開示の溶液組成物において、HCFOの含有量は、HCFOと有機シロキサン成分とアルコールの総量に対して約50質量%以上約99質量%以下であれば良く、約70質量%以上約99質量%以下であっても良く、約80質量%以上約99質量%以下であっても良い。HCFOの含有量が上記の数値の範囲内であるとき、本開示の回収方法により純度の高いHCFOを得ることができる。
本開示の溶液組成物において、有機シロキサン成分とアルコールの含有量は、HCFOと有機シロキサン成分とアルコールの総量に対して約50質量%以下が好ましく、約30質量%以下がより好ましく、約20質量%以下がさらに好ましく、約10質量%以下0%超が特に好ましい。
本開示の溶液組成物において、アルコールの含有量は有機シロキサン成分とアルコールの合計100%に対して99.9質量%以下が好ましく、約60質量%以下が好ましく、約30質量%以下~約10質量%がより好ましく、約10質量%未満0%超でもよい。潤滑剤溶液をHCFOで溶解した場合や、塗布直後の潤滑剤溶液を洗浄した場合は、有機シロキサン成分とアルコールの合計に対するアルコールの含有量は、潤滑剤溶液とほぼ同等である。潤滑剤を塗布した後、乾燥等のアルコールが揮発する工程や環境を経た後に、潤滑剤をHCFOで溶解した場合、本開示の溶液組成物における、有機シロキサン成分とアルコールの合計に対するアルコールの含有量は、潤滑剤溶液よりも小さくなることが推測される。有機シロキサン成分とアルコールの含有量が少ないほど、本開示の回収方法により純度の高いHCFOを得られやすい。
【0033】
(その他成分)
本開示の溶液組成物は、HCFO、有機ポリシロキサン成分、アルコール以外に、その他の成分を含むことができる。例えば、HCFO洗浄剤やシリコーン系潤滑剤に由来する安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、防錆剤、香料、有機溶媒、水分などが挙げられる。本開示の溶液組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、これらの他成分を含んでいても良い。
【0034】
前記溶液組成物は、HCFOと有機ポリシロキサン成分としてシリコーン系潤滑剤とを含む溶液であってもよい。HCFOはシリコーン系潤滑剤の溶剤として用いられることがあり、該シリコーン系潤滑剤には有機ポリシロキサン成分とアルコールとが含まれることがある。このような有機ポリシロキサン成分を含む溶液は、物品へのシリコーン系潤滑剤の塗布や、物品に付着したシリコーン潤滑剤汚れの除去において廃液として多量に生成することがある。このような廃液からHCFO等の有用な成分を、気化工程と凝縮工程及び二層形成工程と回収工程の二段階工程からなる操作によって高純度で回収することができることに、本開示の技術的な意義があると言える。
【0035】
本開示の溶液組成物の一実施形態として、Z-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、有機ポリシロキサン成分と、アルコールとしてメタノール、エタノール、2-プロパノール、及び1-プロパノールの少なくとも一種とを含む溶液組成物が挙げられる。Z-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、メタノール、エタノール又は2-プロパノールと共沸様組成を形成することが特開2018-048149号公報により開示されている。そのため前記溶剤組成物は、共沸様組成を形成するか又はZ-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンとアルコールの沸点が近いため、蒸留によりZ-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンとアルコールの分離は難しく、本開示の前記二段階工程の技術的意義があるといえる。
【0036】
本開示の溶液組成物の一実施形態として、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン、有機ポリシロキサン成分、及びアルコールとしてメタノール、エタノール、2-プロパノール、又は1-プロパノールの少なくとも一種を含む溶液組成物が挙げられる。
【0037】
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンは、エタノール又は2-プロパノールと共沸様組成を形成することがWO-A1-2017/122802により開示されている。そのため前記溶剤組成物は、共沸様組成を形成するか又は1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンとアルコールの沸点が近いため、蒸留により1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンとアルコールの分離は難しく、本開示の前記二段階工程の技術的意義があるといえる。
【0038】
本開示の溶液組成物の一実施形態として、1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、有機ポリシロキサン成分と、アルコールとしてメタノール、エタノール、2-プロパノール、又は1-プロパノールの少なくとも一種とを含む溶液組成物が挙げられる。1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは前記アルコールと沸点が近いため蒸留によりアルコールとの分離は難しく、本開示の前記二段階工程の技術的意義があるといえる。
【0039】
(回収方法)
本開示の回収方法は、ハイドロクロロフルオロオレフィンと有機ポリシロキサン成分とアルコールとを含む溶液組成物から、ハイドロクロロフルオロオレフィンとアルコールを気化させて蒸気とする第1気化工程と、当該蒸気を凝縮して、凝縮液とする第1凝縮工程と、当該凝縮液と水とを接触させ、有機層と当該アルコールを溶解した水層とに分離した二層を形成させる第1二層形成工程と、当該有機層を回収する第1回収工程を含む二段階工程を特徴とする。第1気化工程において、有機ポリシロキサン成分は蒸留残渣となり、ハイドロクロロフルオロオレフィンとアルコールが気化した蒸気と分離される。
【0040】
[第1実施形態]
本回収方法の一例として、Z-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(Z))とシリコーンオイルであるMDX4-4159(ダウコーニング社製)を含む溶液組成物を対象とする方法を説明する。このMDX4-4159には、ポリ有機シロキサン成分としてジメトキシシリルジメチルアミノエチルアミノプロピルシリコーンが約50質量%、アルコールとしてメタノール、及び2-プロパノールが約20質量%、その他の成分が約30質量%含まれる。その他成分としては、沸点の低い炭化水素などの不純物等が挙げられる。
【0041】
Z-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(Z))は、公知の方法で合成することができる。例えば、特開2020-203916号公報に記載されているように、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(以下、「HCFC-240fa」とも記す)を原料として、固体触媒および塩素の存在下で、フッ化水素と気相で反応させることにより合成することができる。
【0042】
(第1気化工程)
HCFO-1233zd(Z)とMDX4-4159とメタノール、及び2-プロパノールを含む溶液組成物を加熱容器に入れて60℃~80℃の温水で加熱することで、有機物を蒸気として発生させることができる。
【0043】
本開示の第1気化工程における、蒸気を発生させる方法としては特に制限はなく、溶媒を含む溶液組成物の通常の蒸発方法を用いることができる。例えば物品を静置して揮発成分を蒸発させる方法、風乾により蒸気を発生させる方法、加熱により蒸気を発生させる方法、減圧により沸点を降下させて蒸気を発生させる方法等が挙げられ、これらの蒸発方法を組み合わせて用いても良い。加熱により蒸気を発生させる方法の場合、加熱温度は、HCFOの気化という観点から、溶液組成物に含まれるHCFOの沸点以上であれば良く、10℃以上100℃以下(55±45℃の範囲)が好ましく、40℃以上90℃以下(65±25℃の範囲)がより好ましく、60℃以上80℃以下(70±10℃の範囲)がさらにより好ましい。
【0044】
(第1凝縮工程)
加熱により蒸気を発生させる方法の場合、第1気化工程で得られた蒸気を、加熱容器に接続したリービッヒ冷却管と氷水で冷却した受け器で、捕集し冷却することで、凝縮液を得ることができる。得られた凝縮液には、HCFO-1233zd(Z)、2-プロパノール、メタノール、及びその他の成分が含まれる。
【0045】
本開示の第1凝縮工程における、凝縮の方法としては特に制限は無く、蒸気を凝縮して液体を得る方法を用いることができる。例えば、蒸気を捕集して、その蒸気を冷却し液体を得る方法や、冷凍サイクルシステムに用いられているような圧縮機と凝縮器を用いて液体を得る方法等を用いることができる。なお、液体の形態は特に限定されず、湯気のような細かい水滴状の形態であっても良い。冷却温度は、HCFOの凝縮という観点から、溶液組成物に含まれるHCFOの沸点未満であれば良い。氷や冷却器を用いて簡便に冷却できる観点から、10℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。
【0046】
(第1二層形成工程)
攪拌用の容器に撹拌子、HCFO-1233zd(Z)、アルコールとして2-プロパノール、及びメタノールを含む第1凝縮工程で得られた凝縮液と水を入れて、攪拌し、その後静置することで有機層とアルコールを溶解した水層の二層に分離させることができる。
【0047】
本開示の第1二層形成工程における、凝縮液と水を接触させる方法としては凝縮液と水が接触可能な方法であれば良く、例えば、凝縮液と水を細かい水滴状の形態で空気中において接触させる方法でも良く、容器に凝縮液と水を入れて溶液の状態で接触させる方法でも良い。なお、接触効率向上の観点から、気流の調整、攪拌羽や撹拌子の使用又は容器の振盪等を行うこともできる。また、アルコールの溶解性を調整する観点から、前記接触は加熱などの温度調整を行いながら実施しても良い。好ましくは、20℃~25℃で30分間程度撹拌する。凝縮液と水を接触させることにより、凝縮液中に含まれるアルコールが水層へ溶解し、凝縮液中に含まれるアルコールを低減することができる。水はアルコールを溶解させることができれば良く、水道水や好ましくは超純水等を挙げることができる。
【0048】
本開示の第1二層形成工程における、有機層と水層とに分離した二層を形成させる方法としては、公知公用の手段を用いることができる。例えば有機層と水層の混合した状態の溶液を静置する方法が挙げられ、層分離を促進する観点から、さらに加熱等の静置温度の調整を行っても良い。
【0049】
(第1回収工程)
第1二層形成で水層と有機層に分離した二層の内の有機層を別容器に移すことで、2-プロパノール、及びメタノールが大きく低減されたHCFO-1233zd(Z)を含む有機層を回収することができる。
【0050】
本開示の第1回収工程における、有機層の回収方法としては特に制限は無く、水層と分離した有機層を、水層と分けて回収する方法を用いることができる。例えば、前記第1二層形成工程を行う槽に配管を有する槽を用いて、二層形成後に配管を用いて有機層を抜き出しても良い。この時、有機層を抜き出す配管を、物品の洗浄を行う洗浄槽へ接続し、回収した有機層を洗浄槽へ送液する機構を備える場合、回収した有機層の蒸発ロスを抑制することができる。
【0051】
本開示の第1回収工程は、回収した有機層に含まれるハイドロクロロフルオロオレフィンの純度を後述のFIDを検出器とするガスクロマトグラフィー(以下GCということがある)によって、95GC%以上であることを判定する第1A確認工程を含んでも良い。回収した有機層のハイドロクロロフルオロオレフィンの純度が95GC%以上であることを確認した場合は、有機層をハイドロクロロフルオロオレフィンとして再利用することができる。
【0052】
また、本開示の第1回収工程は、回収した有機層に含まれるハイドロクロロフルオロオレフィンの純度を後述のFIDを検出器とするGCによって、95GC%未満であることを確認する第1B確認工程を含んでも良い。ハイドロクロロフルオロオレフィンの純度が95GC%未満であることを確認した場合は、前記の純度確認後の有機層を気化させて、ハイドロクロロフルオロオレフィンとアルコールを含む蒸気とする第2気化工程と、当該蒸気を凝縮して、凝縮液とする第2凝縮工程と、当該凝縮液と水とを接触させ、有機層と水層とに分離した二層を形成させる第2二層形成工程と、当該二層の内の有機層を回収する第2回収工程を実施する。
【0053】
第2気化工程、第2凝縮工程、第2二層形成工程、第2回収工程に用いる方法は前述の第1気化工程、第1凝縮工程、第1二層形成工程、第1回収工程と同様である。
【0054】
ハイドロクロロフルオロオレフィンの純度をGCで確認し、純度に応じて前述の第2気化工程、第2凝縮工程、第2二層形成工程、第2回収工程を繰り返すことにより、溶媒や洗浄剤として再利用可能な純度の良好なハイドロクロロフルオロオレフィンを回収することができる。
【0055】
純度が95GC%未満のハイドロクロロフルオロオレフィンは不純物を含み、ハイドロクロロフルオロオレフィンに求められる溶解性や洗浄性能を満たすことが難しい可能性がある。純度が95GC%以上のハイドロクロロフルオロオレフィンのみを1回の精製操作で得ようとした場合、回収量が少なくなる可能性がある。ハイドロクロロフルオロオレフィンに求められる性能と回収効率を両立することができる純度が95GC%である。本開示の精製方法の産業上の利用可能性という観点から純度95GC%を判定基準とすることに本開示の回収工程の技術的意義があるといえる。
【0056】
本開示の第1回収工程と第2回収工程は、回収した有機層を乾燥する工程を含んでも良い。回収した有機層の乾燥を行うことで有機層中の水分を除去し、回収するハイドロクロロフルオロオレフィンの溶解や洗浄性能の安定化に寄与する。回収した有機層の乾燥方法は公知公用の手段を用いることができ、例えば乾燥剤としてゼオライト、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブス等を用いて回収した有機層を処理することが挙げられる。
【0057】
[第2実施形態]
本精製方法の一例として、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HCFO-1233yd(E/Z異性体の質量比:6.7/93.3))とシリコーンオイルであるMDX4-4159とアルコールとしてメタノール、及び2-プロパノールを含む溶液組成物の精製方法を説明する。
【0058】
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンは、公知の方法で合成することができる。例えば、再公表2019―208546号公報や再公表2018-101323号公報に記載されているように、1-クロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロパン(以下、「HCFC-244ca」とも記す)を原料として、水酸化カリウムを反応剤として、10~70℃の温度で脱フッ化水素反応により合成することができる。
【0059】
この反応で得られるHCFO-1233ydは、HCFO-1233yd(Z)がHCFO-1233yd(E)よりも多い割合で得られることがある。また、この反応で得られるHCFO-1233ydの粗精製物には、原料であるHCFC-244caや副生成物である1-クロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロピンが含まれることがある。
【0060】
(第1気化工程)
加熱により蒸気を発生させる方法の場合、HCFO-1233yd(E/Z異性体の質量比:6.7/93.3)とMDX4-4159とメタノール、及び2-プロパノールを含む溶液組成物を加熱容器に入れて60℃~80℃の温水で加熱することで、有機物を蒸気として発生させることができる。
【0061】
本開示第1気化工程における、蒸気を発生させる方法としては特に制限はなく、溶媒を含む溶液組成物の通常の蒸発方法を用いることができる。例えば物品を静置して揮発成分を蒸発させる方法、風乾により蒸気を発生させる方法、加熱により蒸気を発生させる方法、減圧により沸点を降下させて蒸気を発生させる方法等が挙げられ、これらの蒸発方法を組み合わせて用いても良い。加熱により蒸気を発生させる方法の場合、加熱温度は、HCFOの気化という観点から、溶液組成物に含まれるHCFOの沸点以上であれば良く、10℃以上100℃以下(55±45℃)が好ましく、40℃以上90℃以下(65±25℃)がより好ましく、60℃以上80℃以下(70±10℃)がさらにより好ましい。
【0062】
(第1凝縮工程)
第1気化工程で得られた蒸気を、加熱により蒸気を発生させる方法の場合、加熱容器に接続したリービッヒ冷却管と氷水で冷却した受け器で、捕集し冷却することで、凝縮液を得ることができる。得られた凝縮液には、HCFO-1233yd、2-プロパノール、メタノール、及びその他の成分が含まれる。その他成分としては、シリコーンオイルに由来する沸点の低い炭化水素などの不純物等が挙げられる。
【0063】
本開示の第1凝縮工程における、凝縮の方法としては特に制限は無く、蒸気を凝縮して液体を得る方法を用いることができる。例えば、蒸気を捕集して、その蒸気を冷却し液体を得る方法や、冷凍サイクルシステムに用いられているような圧縮機と凝縮器を用いて液体を得る方法等を用いることができる。なお、液体の形態は特に限定されず、湯気のような細かい水滴状の形態であっても良い。冷却温度は、HCFOの凝縮という観点から、溶液組成物に含まれるHCFOの沸点以下であれば良い。氷や冷却器を用いて簡便に冷却できる観点から、10℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。
【0064】
(第1二層形成工程)
容器に撹拌子、HCFO-1233yd(Z)、2-プロパノール、及びメタノールを含む第1凝縮工程で得られた凝縮液と水を入れて、攪拌し、静置することで有機層とアルコールが溶解した水層の二層に分離させることができる。
【0065】
本開示の第1二層形成工程における、凝縮液と水を接触させる方法としては凝縮液と水が接触可能な方法であれば良く、例えば、凝縮液と水を細かい水滴状の形態で空気中において接触させる方法でも良く、容器に凝縮液と水を入れて溶液の状態で接触させる方法でも良い。なお、接触効率向上の観点から、気流の調整、攪拌羽や撹拌子の使用又は容器の振盪等を行うこともできる。また、アルコールの溶解性を調整する観点から、前記接触は加熱などの温度調整を行いながら実施しても良い。好ましくは、20℃~25℃で30分間程度撹拌する。凝縮液と水を接触させることにより、凝縮液中に含まれるアルコールが水層へ溶解し、凝縮液中に含まれるアルコールを低減することができる。
【0066】
本開示の第1二層形成工程における、有機層と水層との二層を形成させる方法としては、公知公用の手段を用いることができる。例えば有機層と水層の混合した状態の溶液を静置する方法が挙げられ、分離を促進する観点から、さらに加熱等の静置温度の調整を行っても良い。
【0067】
(二層を分離し、有機層を回収する第1回収工程)
第1二層形成で分離した有機層を別容器に移すことで、2-プロパノール、及びメタノールが大きく低減されたHCFO-1233yd(Z)を含む有機層を回収することができる。
【0068】
本開示の第1回収工程における、有機層の回収方法としては特に制限は無く、水層と分離した有機層を、水層と分けて回収する方法を用いることができる。例えば、前記第1二層形成工程を行う槽に配管を有する槽を用いて、二層形成後に配管を用いて有機層を抜き出しても良い。この時、有機層を抜き出す配管を、物品の洗浄を行う洗浄槽へ接続し、回収した有機層を洗浄槽へ送液する機構を備える場合、回収した有機層の蒸発ロスを抑制することができる。
【0069】
炭素数が1~3のHCFOや炭素数が1~3のアルコールは、前記第1実施形態や第2実施形態のHCFOやアルコールと沸点や溶解性等の物理的性質が近く、本開示の回収方法が特に有用である。
【0070】
[製造方法の概要]
以下、本実施形態に係るHCFOと有機ポリシロキサン成分とアルコールとを含む組成物の製造方法について説明する。
【0071】
本製造方法は、HCFOと有機ポリシロキサン成分とアルコールとを含む組成物から、有機ポリシロキサン成分とアルコール成分を容易に分離して製造する製造方法である。
【0072】
(製造方法)
本開示の製造方法は、ハイドロクロロフルオロオレフィンと有機ポリシロキサン成分とアルコールとを含む溶液組成物から、ハイドロクロロフルオロオレフィンとアルコールを含む蒸気とする第1気化工程と、当該蒸気を凝縮して、凝縮液とする第1凝縮工程と、当該凝縮液と水とを接触させ、有機層と水層とに分離した二層を形成させる第1二層形成工程と、当該有機層を回収する第1回収工程を含むことを特徴とする。
【0073】
本開示の第1回収工程は、第1A確認工程や第1B確認工程を含んでも良い。
【0074】
本開示の製造方法は、第2気化工程、第2凝縮工程、第2二層形成工程、第2回収工程を含んでも良い。
【0075】
本開示の第1回収工程は、第1回収工程と第2回収工程は、回収した有機層を乾燥する工程を含んでも良い。
【0076】
本開示の製造方法における、第1気化工程、第1凝縮工程、第1二層形成工程、第1回収工程、第1A確認工程、第1B確認工程、第2気化工程、第2凝縮工程、第2二層形成工程、第2回収工程又は回収した有機層を乾燥する工程は、前記精製方法における各工程と同義である。
【実施例0077】
以下、実施例を挙げて本開示のHCFOの効率的な回収方法について、具体的に説明するが、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
ここで、原料や回収有機物の組成分析値の「GC%」は、原料や回収有機物をガスクロマトグラフィー(検出器:FID)で測定して得られた組成の「GC面積%」を表す。なお、表示桁数以下は四捨五入し、例えば、0.0GC%は0.05GC%未満であることを示す。
【0079】
[試験例1]
温度計を備えたガラス製温度計保護管、ガラス製リービッヒ冷却管を備えた分岐付きガラス製蒸留器具に、50mlガラス製ナスフラスコを接続した。このナスフラスコに、HCFOとして1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンを9.90g、有機ポリシロキサン成分およびアルコールとしてシリコーンオイルを0.10g(HCFO/シリコーンオイル=質量比99/1)をそれぞれ量りとった。ここで、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンは、表1に記載の原料(E/Z異性体の質量比:6.7/93.3)を使用し、シリコーンオイルはMDX4-4159(デュポン社製)を使用した。
【0080】
またリービッヒ冷却管の先には、受け器としてガラス製アダプタを使用し接続し、PTFE製の攪拌子を入れたガラス製ナスフラスコを備えた。受け器のナスフラスコは氷水で冷却し、留出液を冷却回収できるようにした。60℃~80℃の温水下、突沸に注意しながら気化工程及び冷却工程によって凝縮液として有機物を9.10g回収した(気化工程及び凝縮工程を、以下、前段ということがある)。
【0081】
得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン98.65%、2-プロパノール0.21%、メタノール0.01%、その他は1.13%だった。
【0082】
次に、12mlガラスバイアルにPTFE製の攪拌子を入れ、凝縮液として回収した前記有機物2.00g、超純水2.00gをそれぞれ量り取った。ガラスバイアルの蓋を閉め、室温下(20℃~25℃)で30分間攪拌し、凝縮液と水とを接触させた。その後、静置することで二層形成した後、二相分離した有機相を回収した(二層形成工程及び回収工程を、以下、後段ということがある)。
【0083】
得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン98.79%、2-プロパノール0.04%、メタノールは痕跡量、その他は1.17%だった。詳細な結果は表1に示す。
【0084】
[試験例2]
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンを9.50g、MDX4-4159を0.50g使用する(HCFO/シリコーンオイル=質量比95/5)こと以外は、試験例1前段と同様の操作を行い、有機物を8.70g蒸留回収した。
【0085】
蒸留回収後に得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン97.95%、2-プロパノール0.86%、メタノール0.06%、その他は1.13%だった。
【0086】
次に、蒸留回収した前記有機物2.00g、超純水2.00gを使用すること以外は、試験例1後段と同様の操作を行い、有機相を回収した。
【0087】
得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン98.62%、2-プロパノール0.17%、メタノールは痕跡量、その他は1.21%だった。詳細な結果は表1に示す。
【0088】
[試験例3]
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンを9.00g、MDX4-4159を1.00g使用する(HCFO/シリコーンオイル=質量比90/10)こと以外は、試験例1前段と同様の操作を行い、有機物を8.20g蒸留回収した。
【0089】
蒸留回収後に得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン96.73%、2-プロパノール1.78%、メタノール0.13%、その他は1.36%だった。
【0090】
次に、蒸留回収した前記有機物2.00g、超純水2.00gを使用すること以外は、試験例1後段と同様の操作を行い、有機相を回収した。
【0091】
得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン98.16%、2-プロパノール0.35%、メタノールは痕跡量、その他は1.49%だった。詳細な結果は表1に示す。
【0092】
[試験例4]
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンを7.50g、MDX4-4159を2.50g使用する(HCFO/シリコーンオイル=質量比75/25)こと以外は、試験例1前段と同様の操作を行い、有機物を6.61g蒸留回収した。
【0093】
蒸留回収後に得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン93.14%、2-プロパノール4.71%、メタノール0.45%、その他は1.70%だった。
【0094】
次に、蒸留回収した前記有機物2.00g、超純水2.00gを使用すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、有機相を回収した。
【0095】
得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン97.09%、2-プロパノール0.98%、メタノール0.01%、その他は1.92%だった。詳細な結果は表1に示す。
【0096】
[試験例5]
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンを5.00g、MDX4-4159を5.00g使用する(HCFO/シリコーンオイル=質量比50/50)こと以外は、試験例1前段と同様の操作を行い、有機物を3.76g蒸留回収した。
【0097】
蒸留回収後に得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン87.21%、2-プロパノール8.95%、メタノール1.51%、その他は2.33%だった。
【0098】
次に、蒸留回収した前記有機物1.50g、超純水1.50gを使用すること以外は、試験例1後段と同様の操作を行い、有機相を回収した。
【0099】
得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン95.41%、2-プロパノール1.84%、メタノール0.05%、その他は2.70%だった。詳細な結果は表1に示す。
【0100】
[試験例6]
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンの代わりにHCFO1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを9.90g使用し、MDX4-4159を0.10g使用する(HCFO/シリコーンオイル=質量比99/1)こと以外は、試験例1前段と同様の操作を行い、有機物を9.05g蒸留回収した。
【0101】
蒸留回収後に得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン99.72%、2-プロパノール0.20%、メタノール0.01%、その他は0.07%だった。
【0102】
次に、蒸留回収した前記有機物2.00g、超純水2.00gを使用すること以外は、試験例1後段と同様の操作を行い、有機相を回収した。
【0103】
得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン99.90%、2-プロパノール0.02%、メタノール未検出、その他は0.08%だった。詳細な結果は表1に示す。
【0104】
[試験例7]
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンの代わりにHCFO1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを9.50g使用し、MDX4-4159を0.50g使用する(HCFO/シリコーンオイル=質量比95/5)こと以外は、試験例1前段と同様の操作を行い、有機物を9.12g蒸留回収した。
【0105】
蒸留回収後に得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン99.34%、2-プロパノール0.44%、メタノール0.02%、その他は0.19%だった。
【0106】
次に、蒸留回収した前記有機物2.00g、超純水2.00gを使用すること以外は、試験例1後段と同様の操作を行い、有機相を回収した。
【0107】
得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン99.66%、2-プロパノール0.06%、メタノール未検出、その他は0.28%だった。詳細な結果は表1に示す。
【0108】
[試験例8]
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンの代わりにHCFO1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを9.00g使用し、MDX4-4159を1.01g使用する(HCFO/シリコーンオイル=質量比90/10)こと以外は、試験例1前段と同様の操作を行い、有機物を8.57g蒸留回収した。
【0109】
蒸留回収後に得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン97.53%、2-プロパノール1.67%、メタノール0.08%、その他は0.71%だった。
【0110】
次に、蒸留回収した前記有機物2.00g、超純水2.00gを使用すること以外は、試験例1後段と同様の操作を行い、有機相を回収した。
【0111】
得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン99.04%、2-プロパノール0.20%、メタノール痕跡量、その他は0.76%だった。詳細な結果は表1に示す。
【0112】
[試験例9]
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンの代わりにHCFO1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを7.50g使用し、MDX4-4159を2.50g使用する(HCFO/シリコーンオイル=質量比75/25)こと以外は、試験例1前段と同様の操作を行い、有機物を6.90g蒸留回収した。
【0113】
蒸留回収後に得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン95.55%、2-プロパノール3.42%、メタノール0.38%、その他は0.64%だった。
【0114】
次に、蒸留回収した前記有機物2.00g、超純水2.00gを使用すること以外は、試験例1後段と同様の操作を行い、有機相を回収した。
【0115】
得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン98.87%、2-プロパノール0.42%、メタノール痕跡量、その他は0.70%だった。詳細な結果は表1に示す。
【0116】
[試験例10]
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンの代わりにHCFO1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを5.00g使用し、MDX4-4159を5.00g使用する(HCFO/シリコーンオイル=質量比50/50)こと以外は、試験例1前段と同様の操作を行い、有機物を4.19g蒸留回収した。
【0117】
蒸留回収後に得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン92.83%、2-プロパノール5.43%、メタノール0.71%、その他は1.04%だった。
【0118】
次に、蒸留回収した前記有機物2.00g、超純水2.00gを使用すること以外は、試験例1後段と同様の操作を行い、有機相を回収した。
【0119】
得られた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン98.24%、2-プロパノール0.65%、メタノール0.01%、その他は1.10%だった。詳細な結果は表1に示す。
【0120】
【0121】
表1から明らかなように、組成物の蒸留操作(気化工程及び凝縮工程に該当する)のみを行った場合、HCFOと沸点の近いアルコール類の完全分離は難しいが、水を利用した二層形成工程という簡易的な方法でHCFOに含まれるアルコール類の低減が可能であることがわかる。
また、試験例5,10に示すようにHCFO/シリコーンオイル(質量比)が50/50のように、有機ポリシロキサン成分を高濃度に含む溶液組成物からでも高濃度のHCFOを回収できる。
【0122】
以上の結果から、本開示の製造方法及び回収方法により、HCFOとシロキサン成分とアルコールとを含む組成物から、蒸留方法と水を利用した簡易的な方法で2-プロパノールやメタノール等のアルコール類の含有量を低減することが可能であり、溶剤や洗浄剤として再利用可能な良好な純度のハイドロクロロフルオロオレフィンを効率的に得ることができることが分かる。