IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-空気入りタイヤ 図1
  • 特開-空気入りタイヤ 図2
  • 特開-空気入りタイヤ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096612
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20230630BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
B60C19/00 B
B60C5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212487
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】荻本 裕基
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC36
3D131BC44
3D131LA20
(57)【要約】
【課題】ゴム層のセパレーションを回避できつつ、電子部品の剥離や破損を抑制できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ内面501に、タイヤ周方向に延びる複数条の接合材である第1の接着剤71を介して吸音材90が接合され、吸音材90のタイヤ内腔に面する内周面91に、貼着材である第2の接着剤72を介して電子部品であるRFIDタグ60が貼着されている。吸音材90に対する第1の接着剤71の面積割合が、タイヤ幅方向で10%以上30%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内面に、タイヤ周方向に延びる複数条の接合材を介して吸音材が接合され、
前記吸音材のタイヤ内腔に面する内周面に、貼着材を介して電子部品が貼着されている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記吸音材に対する前記接合材の面積割合が、タイヤ幅方向で10%以上30%以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記接合材は、2条以上10条以下である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記吸音材に対する前記電子部品の貼着力が、前記タイヤ内面に対する前記吸音材の接合力よりも高い、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品としてのRFIDタグを設けたタイヤが知られている。このようなタイヤは、RFIDタグと、RFIDタグに収容されている情報を読み取るリーダとが通信を行うことにより、例えばタイヤの製造管理や使用履歴管理等を行うことができる。ところで、RFIDタグ等の電子部品をタイヤに配置するにあたっては、タイヤを構成するゴム層の間に埋設すると、電子部品を起点としてゴム層が剥離するいわゆるセパレーションが生じるおそれがある。そこで、特許文献1に示されるように、タイヤ内面に電子部品を貼り付ければ、電子部品によるセパレーションを回避することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-99108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらタイヤ内面に電子部品を貼り付けると、その電子部品は、タイヤ内面の変形やタイヤに生じる熱の影響を受けてタイヤ内面から剥離したり破損したりする可能性があるため、改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、ゴム層のセパレーションを回避できつつ、電子部品の剥離や破損を抑制できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、タイヤ内面に、タイヤ周方向に延びる複数条の接合材を介して吸音材が接合され、前記吸音材のタイヤ内腔に面する内周面に、貼着材を介して電子部品が貼着されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ゴム層のセパレーションを回避できつつ、電子部品の剥離や破損を抑制できる空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの内面の一部を示す展開図である。
図3】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤが備えるRFIDタグを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ1のタイヤ幅方向断面を示す図である。図2は、タイヤ1の内面の一部を示す展開図である。
【0010】
タイヤ1は、例えば乗用車用のタイヤである。タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっている。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
【0011】
なお、図1の断面図は、タイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態のタイヤ幅方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。なお、規定リムとは、タイヤサイズに対応してJATMAに定められた標準となるリムを指す。また、規定内圧とは、例えばタイヤが乗用車用である場合には180kPaである。
【0012】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1の断面図における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては、紙面中央側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては、紙面左側及び右側である。
【0013】
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては、紙面下側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては、紙面上側である。
【0014】
図1に示すように、タイヤ1は、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード10と、一対のビード10の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、一対のビード10の間に配置されたカーカスプライ40と、カーカスプライ40のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー50と、吸音材90と、電子部品としてのRFIDタグ60と、を備えている。
【0015】
ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11のタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、チェーハー13と、リムストリップゴム14と、を備えている。
【0016】
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状の部材であり、空気が充填されたタイヤ1をリムに固定する役目を果たす部材である。
【0017】
ビードフィラー12は、タイヤ径方向外側に延びるにしたがって先細り形状となっているゴム部材である。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性及び安定性を確保するために設けられている部材である。ビードフィラー12は、例えば周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。
【0018】
チェーハー13は、ビードコア11周りに設けられたカーカスプライ40のタイヤ径方向内側に設けられている。
【0019】
リムストリップゴム14は、チェーハー13及びカーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14は、タイヤ1が装着されるリムと接触する部材である。
【0020】
サイドウォール20は、カーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム21を含む。サイドウォールゴム21は、タイヤ1の外壁面を構成する。サイドウォールゴム21は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0021】
トレッド30は、無端状のベルト31及びキャッププライ32と、トレッドゴム33と、を備えている。
【0022】
ベルト31は、カーカスプライ40のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ32は、ベルト31のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0023】
ベルト31は、トレッド30を補強する部材である。本実施形態のベルト31は、内側のベルト311と外側のベルト312とを備えた2層構造である。内側のベルト311及び外側のベルト312は、いずれも複数のスチールコード等のコードがゴムで覆われた構造を有している。なお、ベルト31は2層構造に限らず、1層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0024】
キャッププライ32は、ベルト31とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ32は、例えばポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有している。キャッププライ32を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0025】
トレッドゴム33は、キャッププライ32のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム33は、走行時に路面と接地する踏面331を構成する部材である。トレッドゴム33の踏面331には、例えば複数の溝で構成されるトレッドパターン34が設けられている。トレッドパターン34は、タイヤ幅方向に並ぶ複数の主溝341を有している。複数の主溝341のそれぞれは、タイヤ周方向に沿って延びている。
【0026】
カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。カーカスプライ40は、一対のビード10間を、一対のサイドウォール20及びトレッド30を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となる不図示の複数のカーカスコードを含んでいる。複数のカーカスコードは、例えばタイヤ幅方向に延びており、タイヤ周方向に並んで配列されている。そのカーカスコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のカーカスコードがゴムにより被覆されて、カーカスプライ40が構成されている。
【0027】
カーカスプライ40は、一方のビードコア11から他方のビードコア11に延び、トレッド30とビード10との間に延在するプライ本体部401と、プライ本体部401からビードコア11で折り返される一対の屈曲部402と、屈曲部402のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対の折り返し部403と、を有する。プライ本体部401、屈曲部402及び折り返し部403は、ビードフィラー12及びビードコア11を囲んでいる。ビードフィラー12よりもタイヤ径方向外側の部分の折り返し部403は、プライ本体部401に重ね合わされている。
【0028】
本実施形態のカーカスプライ40は1層構造であるが、カーカスプライ40は1層構造に限らず、2層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0029】
上述したビード10のチェーハー13は、屈曲部402を含むカーカスプライ40のタイヤ径方向内側の端部を取り囲むように設けられている。また、リムストリップゴム14は、チェーハー13及びカーカスプライ40の折り返し部403の、タイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側の端部は、上述したサイドウォールゴム21で覆われている。
【0030】
インナーライナー50は、カーカスプライ40のプライ本体部401の内面及び一対のビード10のチェーハー13の内面を覆っている。インナーライナー50は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。インナーライナー50の内面は、一対のビード10間のタイヤ内面501を構成する。
【0031】
吸音材90は、タイヤ内面501に接合されている。実施形態の吸音材90は、発泡材料で形成された多数の気孔を備えたスポンジであり、例えばポリウレタンフォーム等の発泡樹脂が好ましく用いられる。吸音材90は、トレッド30におけるタイヤ内面501に、接合材である第1の接着剤71によって貼り付けられている。実施形態の吸音材90は、タイヤ赤道面S1を対称中心面として左右対称の状態に配置されている。
【0032】
吸音材90は、少なくとも1つの部材でタイヤ内面501に環状に設けられる。吸音材90は、タイヤ周方向に分割するか、もしくはタイヤ幅方向に分割する2つ以上の部材で環状に構成してもよく、さらには、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向のそれぞれに分割する複数の部材で環状に構成してもよい。吸音材90は、走行中においてタイヤ1の内腔に生じる各種の音を吸収してノイズを低減する。
【0033】
吸音材90は、タイヤ1における重量バランスの観点から、密度50kg/m程度であり、比重0.025程度のものが好ましい。また、吸音材90は、耐久性の観点から、引張り強さが80kPa程度であり、硬さが40%硬さで160N程度のものが好ましい。また、吸音材90の寸法は、タイヤ1の寸法等に応じて選択されるが、例えば、幅すなわちタイヤ内面501に貼り付けられた状態でのタイヤ幅方向の長さは、80mm以上110mm以下、厚みすなわちタイヤ径方向の寸法は、20mm程度が好適とされる。
【0034】
吸音材90をタイヤ内面501に接着させる第1の接着剤71は、タイヤ周方向の全周にわたって延在する複数条の態様となっている。実施形態では、第1の接着剤71は4条である。4条の第1の接着剤71は、タイヤ赤道面S1を中心として左右に2つずつ、均等に配置されてタイヤ内面501に塗布される。なお、接着剤の条数は4つに限定されず、吸音材90の幅や求められる接着強度等によって適宜な条数とされるが、例えば、2条以上10条以下程度が好ましい。また、1条の接着剤70は、吸音材90が接着された硬化後の状態で、その幅(タイヤ幅方向の寸法)は、3mm以上10mm以下程度が好ましく、その高さ(タイヤ径方向の寸法)は、同様に3mm以上10mm以下程度が好ましいが、これらに限定されない。
【0035】
接着剤70としては、吸音材90をタイヤ内面501に接着できれば特に限定されないが、ゴム用、あるいはタイヤ用の接着剤が好適に用いられる。吸音材90をタイヤ内面501に接着する接着剤70は、接着強度や耐久性の観点から、塗布後養生6分以内のせん断強度が0.1MPa以上のものが好ましい。この場合のせん断強度は、「JIS K 6854-1:1999」に基づく試験方法により測定した。
【0036】
なお、第1の接着剤71は、タイヤ1が加硫成形された状態でタイヤ内面501に残るタイヤ内面用離型剤を除去してから、タイヤ内面501に塗布される。図2の符号80で示す左右2本の二点鎖線の間が、タイヤ内面用離型剤を除去した領域である。この離型剤除去領域80は、左右両端の第1の接着剤71よりもタイヤ幅方向やや外側の位置の間であって、タイヤ内面501の全周にわたって設けられる。この離型剤除去領域80は、タイヤ幅方向で100mm以上120mm以下程度である。
【0037】
本実施形態においては、図2に示すように、吸音材90の幅をW1(mm)、1条の第1の接着剤71の幅をW2(mm)とした場合、吸音材90の幅W1に対する4条の第1の接着剤71のそれぞれの幅W2を合わせた全幅(W2×4)の割合である(W2×4)/W1は、10%以上30%以上であることが好ましい。すなわち、吸音材90に対する第1の接着剤71の面積割合は、タイヤ幅方向で10%以上30%以下であることが好ましい。1条の第1の接着剤71の幅W2は、上述したように3mm以上10mm以下程度が好ましい。
【0038】
また、吸音材90の幅W1に対する第1の接着剤71の条数の割合(本実施形態では4/W1)は、0.02以上0.07以下であることが好ましい。
【0039】
なお、吸音材90をタイヤ内面501に接合する接合材としては、第1の接着剤71を用いる代わりに、両面粘着テープを用いてもよい。
【0040】
RFIDタグ60は、吸音材90のタイヤ内腔に面する内周面91に、貼着材である第2の接着剤72によって貼り付けられている。実施形態のRFIDタグ60は、タイヤ幅方向の中央に配置されて吸音材90の内周面91に貼り付けられている。
【0041】
RFIDタグ60は、短い帯状の形状を有する薄いフィルム状に形成されている。図3は、RFIDタグ60を示す平面図である。図3に示すように、実施形態のRFIDタグ60は、可撓性を有するフィルムからなる基材61内に、RFIDチップ62と、外部機器と通信を行うための複数のアンテナ63とが収容されたパッシブ型のトランスポンダである。RFIDチップが備える記憶部には、タイヤ1に関する情報として、製造番号、部品番号等の情報が収容される。図3はRFIDタグ60の構造の一例を示すものであり、RFIDタグ60はこの構造に限定されない。また、RFIDタグ60の形状や寸法も限定はされないが、例えば帯状の場合、長さが20mm以上60mm以下程度、幅が5mm以上20mm以下程度、厚みが1mm程度のものが用いられる。
【0042】
図2に示すように、RFIDタグ60は、長さ方向がタイヤ幅方向に沿った状態で、第2の接着剤72を介して吸音材90の内周面91に貼り付けられている。実施形態の第2の接着剤72は、RFIDタグ60の吸音材90への貼着面の全面に塗布されているが、必要な接着強度が得られれば、全面に塗布されなくてもよい。RFIDタグ60のタイヤ周方向の位置は特に制限されない。
【0043】
第2の接着剤72としては、RFIDタグ60を吸音材90に接着できれば特に限定されない。
【0044】
また、吸音材90の内周面91は、気孔が微細で第2の接着剤72が浸透しにくい表面状態であることが好ましい。上述したように40%硬さで160N程度の硬さを有していると、そのような表面の状態を得ることができる。
【0045】
第2の接着剤72によるRFIDタグ60の吸音材90に対する接着力と、第1の接着剤71による吸音材90のタイヤ内面501に対する接着力とは、同等でもよく、異なっていてもよい。例えば、第2の接着剤72によるRFIDタグ60の吸音材90に対する接着力が、第1の接着剤71による吸音材90のタイヤ内面501に対する接着力よりも高い場合には、RFIDタグ60が吸音材90に強固に貼着されて剥離が抑制される可能性を高めることができる。
【0046】
実施形態の吸音材90及びRFIDタグ60は、次のような手順で設けられる。吸音材90及びRFIDタグ60を除くタイヤ1が加硫成形された後、離型剤除去領域80を被覆している離型剤を除去し、4条の第1の接着剤71をタイヤ内面501に塗布する。次いで、第1の接着剤71を介して吸音材90をタイヤ内面501に環状に貼り付ける。次いで、吸音材90の内周面91に、第2の接着剤72によってRFIDタグ60を貼着する。第2の接着剤72は、吸音材90に塗布してもよく、RFIDタグ60に塗布してもよい。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0048】
(1)実施形態に係るタイヤ1は、タイヤ内面501に、タイヤ周方向に延びる複数条の接合材である第1の接着剤71を介して吸音材90が接合され、吸音材90のタイヤ内腔に面する内周面91に、貼着材である第2の接着剤72を介して電子部品であるRFIDタグ60が貼着されている。
【0049】
RFIDタグ60はタイヤ1のゴムの中に埋設されておらず、吸音材90の内周面91に貼着されている。このため、RFIDタグ60を起点としたゴム層のセパレーションは生じない。RFIDタグ60とタイヤ内面501との間に吸音材90が介在しているので、RFIDタグ60はタイヤ内面501から離間している。このため、タイヤ1の撓みや、タイヤ1に生じる熱がRFIDタグ60に伝わりにくく、RFIDタグ60の剥離や破損を抑制できる。これらの結果、ゴム層のセパレーションを回避できつつ、RFIDタグ60の剥離や破損を抑制できる。
【0050】
(2)実施形態に係るタイヤ1においては、吸音材90に対する第1の接着剤71の面積割合が、タイヤ幅方向で10%以上30%以下であることが好ましい。
【0051】
これにより、第1の接着剤71の量が抑えられるのでタイヤ重量の増大が抑えられつつ、吸音材90をタイヤ内面501に接着する強度を確保できる。また、第1の接着剤71を介してRFIDタグ60に熱が伝わる度合いを低くすることができるため、タイヤ1の熱影響によるRFIDタグ60の損傷を抑制できる。
【0052】
(3)実施形態に係るタイヤ1においては、吸音材90の幅W1(mm)に対する第1の接着剤71の条数の割合が、0.02以上0.07以下であることが好ましい。
【0053】
これにより、第1の接着剤71の量が抑えられるのでタイヤ重量の増大が抑えられつつ、吸音材90をタイヤ内面501に接着する強度を確保できる。
【0054】
(4)実施形態に係るタイヤ1においては、吸音材90に対するRFIDタグ60の貼着力が、タイヤ内面501に対する吸音材90の接合力よりも高いことが好ましい。
【0055】
これにより、RFIDタグ60が吸音材90に強固に貼着されて剥離が抑制される可能性を高めることができる。
【0056】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【0057】
例えば、タイヤ内面501に吸音材90を接合する接合材としては、接着剤に限定されず、タイヤ内面501に必要な接合強度で接合され、それにより吸音材90の剥離が抑えられるものであればよい。同様に、吸音材90にRFIDタグ60を貼着する貼着材としては、接着剤に限定されず、吸音材90に必要な接合強度で接合され、それによりRFIDタグ60の剥離が抑えられるものであればよい。
【0058】
[試験例]
次に、吸音材90の幅及び厚みと、第1の接着剤71の幅及び条数との関係を検証した試験の結果を示す。
【0059】
表1の「接着剤」は、実施形態における第1の接着剤71のことである。表1に示すように、吸音材の寸法(幅と厚み)と、接着剤の条数との組み合わせを異ならせた試験例1~8のタイヤを用意し、各試験例について耐久性(熱影響と撓み)を評価した。なお、接着剤の1条の幅は5mmと一定にした。
【0060】
熱影響の評価はECE30により評価し、撓みの評価はFMVSSにより評価した。いずれの場合も、試験例1が最も良好な結果であった。したがってこの試験例1を◎と評価し、他の試験例については試験例1に対する相対評価を行い、試験例1と同等の場合を同じく◎、やや下回る場合を〇、さらに下回る場合を△とした。その結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1によれば、タイヤの撓みの影響を受けてRFIDタグが剥離したり破損したりすることは、いずれの試験例のタイヤでも発生しなかった。しかしながら、試験例4~試験例8のタイヤは、タイヤの熱影響を受けて、性能が低下するなどの症状が発生した。
【0063】
接着剤の条数、及び吸音材に対する接着剤の面積割合や条数の割合が多いと、RFIDタグに対するタイヤからの熱影響が増大する。これは、タイヤ内面の熱が接着剤を介して吸音材及びRFIDタグに伝わるため、接着剤の面積が大きいほど、熱影響が大きいことを示す。熱影響及び撓みの影響の双方を受けにくくして耐久性を持たせるには、吸音材に対する接合材の面積割合が、タイヤ幅方向で10%以上30%以下、接着剤の条数が4条以上6条、吸音材の幅W1(mm)に対する接着剤の条数の割合が、0.02以上0.07以下であるとよい。
【符号の説明】
【0064】
1 タイヤ(空気入りタイヤ)
60 RFIDタグ(電子部品)
71 第1の接着剤(接合材)
72 第2の接着剤(貼着材)
90 吸音材
91 吸音材の内周面
501 タイヤ内面
図1
図2
図3