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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096620
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】三重殻タンクの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 7/06 20060101AFI20230630BHJP
   B65D 88/06 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
E04H7/06 302
E04H7/06 301C
E04H7/06 301Z
B65D88/06 B
E04H7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212502
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】小松 豊孝
(72)【発明者】
【氏名】寺林 雅人
(72)【発明者】
【氏名】中山 亮
【テーマコード(参考)】
3E170
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170AA30
3E170AB29
3E170DA01
3E170DA03
3E170DA05
3E170JA01
3E170JA04
3E170JA05
3E170JA06
3E170JA07
3E170JA08
3E170KC01
3E170NA01
3E170NA04
3E170NA05
(57)【要約】
【課題】内槽、中間槽及び外槽を備えた三重殻タンクの建造にあたり、その工期を短縮する。
【解決手段】内槽屋根43の上に中間槽屋根33を中間槽屋根サポート61で仮固定し、さらに中間槽屋根33の上に外槽屋根23を外槽屋根中央サポート62及び外槽屋根周辺サポート63で仮固定することで、屋根連結体20を形成する。屋根連結体20の周囲に所定高さの外槽側板22を構築する。続いて、外槽屋根23の外周縁23Eと外槽側板22の内面との間にシール処理を施して密閉空間を形成すると共に、当該密閉空間にブロワー7でエアを供給して屋根連結体20をエアレージングする。その後、外槽屋根23外周縁23Eと外槽側板22の上端部とを固定する。そして、内槽側板42及び中間槽側板32を構築し、屋根連結体20の前記仮固定を解除して、内槽屋根43と内槽側板42とを固定すると共に中間槽屋根33と中間槽側板32とを固定する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ屋根と側板とを有する内槽、中間槽及び外槽を備えた三重殻タンクの施工方法であって、
内槽屋根の上に中間槽屋根を仮固定し、さらに当該中間槽屋根の上に外槽屋根を仮固定することで、屋根連結体を形成し、
前記屋根連結体の周囲に所定高さの外槽側板を構築し、
前記外槽屋根の外周縁と前記外槽側板の内面との間にシール処理を施して密閉空間を形成すると共に、当該密閉空間にエアを供給して前記屋根連結体をエアレージングし、
前記外槽屋根と前記外槽側板とを固定し、
内槽側板及び中間槽側板を構築し、前記屋根連結体の前記仮固定を解除して、前記内槽屋根と前記内槽側板とを固定すると共に前記中間槽屋根と前記中間槽側板とを固定する、
三重殻タンクの施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三重殻タンクの施工方法において、
前記外槽側板で囲まれる領域の底部を構成する外槽底板を、少なくとも前記エアレージングの前に形成する、三重殻タンクの施工方法。
【請求項3】
請求項2に記載の三重殻タンクの施工方法において、
前記外槽底板を形成後、当該外槽底板の上に屋根架台を設置し、
前記屋根架台の上に前記内槽屋根を据え付けると共に、当該内槽屋根の上に第1仮設サポートを設置し、
前記第1仮設サポートの上に前記中間槽屋根を据え付けると共に、当該中間槽屋根の上に第2仮設サポートを設置し、
前記第2仮設サポートの上に前記外槽屋根を据え付けることにより、前記屋根連結体を形成する、三重殻タンクの施工方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の三重殻タンクの施工方法において、
前記内槽側板及び前記中間槽側板は、複数の側板ピースを円環状に並べて形成した環状段を複数段積み上げることにより組み立てられ、且つ、
前記内槽側板の前記環状段と前記中間槽側板の前記環状段とを並行して積み上げる、三重殻タンクの施工方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の三重殻タンクの施工方法において、
前記内槽側板及び前記中間槽側板は、複数の側板ピースを円環状に並べて形成した環状段を複数段積み上げることにより組み立てられ、且つ、
前記内槽側板の前記環状段を最上段まで前記中間槽側板よりも先に組み立て、前記最上段の前記環状段と前記内槽屋根の外周縁とを固定する、三重殻タンクの施工方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の三重殻タンクの施工方法において、
前記外槽側板の構築時に、工事用の出入り口である第1工事口が前記外槽側板に開設され、
前記内槽側板の構築時に当該内槽側板に第2工事口が、前記中間槽側板の構築時に当該中間槽側板に第3工事口がそれぞれ開設され、
前記内槽の内側での作業完了後に前記第2工事口を封止し、次いで前記中間槽の内側での作業完了後に前記第3工事口を封止し、
しかる後、前記外槽の内側での作業完了後に前記第1工事口を封止する、三重殻タンクの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低温の液化ガスを貯留する三重殻タンクの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低温の液化ガスを貯留する施設として、多重殻構造を備えた平底タンクが知られている。この種の多重殻タンクの施工は、建造物自体が大掛かりであると共に断熱構造の施与などが求められるため、一般に長期間の工期を要する。例えば特許文献1及び2には、工期の短縮化を目的とした、内槽と外槽とを備えた二重殻構造のタンクの施工方法が開示されている。近年では、内槽と外槽との間に中間槽を備えた三重殻構造の平底タンクが、極低温の液化ガスの貯留施設として検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6127453号公報
【特許文献2】特許第5672787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三重殻タンクは、二重殻タンクに比べて自ずと構造が複雑化するため、その施工の工期がより長期化する傾向がある。
【0005】
本開示の目的は、内槽、中間槽及び外槽を備えた三重殻タンクの建造にあたり、その工期を短縮することができる施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に係る三重殻タンクの施工方法は、それぞれ屋根と側板とを有する内槽、中間槽及び外槽を備えた三重殻タンクの施工方法であって、内槽屋根の上に中間槽屋根を仮固定し、さらに当該中間槽屋根の上に外槽屋根を仮固定することで、屋根連結体を形成し、前記屋根連結体の周囲に所定高さの外槽側板を構築し、前記外槽屋根の外周縁と前記外槽側板の内面との間にシール処理を施して密閉空間を形成すると共に、当該密閉空間にエアを供給して前記屋根連結体をエアレージングし、前記外槽屋根と前記外槽側板とを固定し、内槽側板及び中間槽側板を構築し、前記屋根連結体の前記仮固定を解除して、前記内槽屋根と前記内槽側板とを固定すると共に前記中間槽屋根と前記中間槽側板とを固定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、内槽、中間槽及び外槽を備えた三重殻タンクの建造にあたり、その工期を短縮可能な施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の施工対象となる三重殻タンクの構造を示す縦断面図である。
図2図2は、本開示に係る三重殻タンクの施工方法の工程チャートである。
図3図3は、前記三重殻タンクの施工方法の一つの工程を、タンクの半分の断面で示す図である。
図4図4は、前記三重殻タンクの施工方法の一つの工程を示す図である。
図5図5は、前記三重殻タンクの施工方法の一つの工程を示す図である。
図6図6は、前記三重殻タンクの施工方法の一つの工程を示す図である。
図7図7は、前記三重殻タンクの施工方法の一つの工程を示す図である。
図8図8は、前記三重殻タンクの施工方法の一つの工程を示す図である。
図9図9は、前記三重殻タンクの施工方法の一つの工程を示す図である。
図10図10は、前記三重殻タンクの施工方法の一つの工程を示す図である。
図11図11は、前記三重殻タンクの施工方法の一つの工程を示す図である。
図12図12は、前記三重殻タンクの施工方法の一つの工程を示す図である。
図13図13は、前記三重殻タンクの施工方法の一つの工程を示す図である。
図14図14は、前記三重殻タンクの施工方法の一つの工程を示す図である。
図15図15は、前記三重殻タンクの施工方法の一つの工程を示す図である。
図16図16は、前記三重殻タンクの施工方法の一つの工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示に係る三重殻タンクの施工方法の実施形態を詳細に説明する。本開示の施工対象である三重殻タンクは、低温の液化ガスを貯留するタンクであって、地上据え置き式の三重殻構造を備えた平底タンクである。貯留される液化ガスは、例えば液化水素、液体ヘリウムである。
【0010】
[三重殻タンクの構造]
まず、本開示の施工対象となる三重殻タンク1の構造を、図1に示す縦断面図に基づいて説明する。図1では、液体水素LHを貯留する三重殻タンク1を例示している。三重殻タンク1は、タンク基礎10と、このタンク基礎10の上に立設された外槽2と、外槽2に内包された中間槽3と、中間槽3に内包された内槽4とを含む。外槽2、中間槽3及び内槽4は、いずれも上面視で円形の形状を有し、同心円状に配置されている。
【0011】
タンク基礎10は、三重殻タンク1の基礎部分を構成するコンクリート層である。タンク基礎10は、外槽2の外径よりも大きいサイズを有している。外槽2は、炭素鋼等の金属で構成された密閉体であり、外槽底板21、外槽側板22及び外槽屋根23を含む。外槽底板21は、タンク基礎10の直上に敷設され、円板型の形状を有している。外槽側板22は、外槽底板21の周縁から立設され、円筒状の形状を有している。外槽屋根23は、円筒状の外槽側板22の上面開口を塞ぐように当該外槽側板22の上端に取り付けられ、ドーム型の形状を有している。
【0012】
中間槽3は、SUS等の金属で構成された密閉体であり、外槽2の内部に配置されている。中間槽3は、中間槽底板31、中間槽側板32及び中間槽屋根33を含む。中間槽底板31は、外槽底板21よりも径の小さい円板型の形状を有している。中間槽側板32は、中間槽底板31の周縁から立設され、円筒状の形状を有している。中間槽屋根33は、中間槽側板32の上端に取り付けられ、ドーム型の形状を有している。
【0013】
外槽底板21と中間槽底板31との間には、第1レベルコンクリート層24、第1リング部25及び外側底部保冷層26が介在されている。第1レベルコンクリート層24は、外槽底板21の上に施工された平面出しのコンクリート層である。第1リング部25は、第1レベルコンクリート層24の周縁付近の上にリング状に配置された、強度の高いコンクリート層である。第1リング部25において中間槽側板32の荷重を直接受ける箇所には、強化コンクリート層251が配置されている。外側底部保冷層26は、第1レベルコンクリート層24の上であって、第1リング部25の内側に配置された、断熱性を有する層である。第1リング部25は、例えばパーライトコンクリートブロックのような、断熱コンクリートブロックの配列体により形成できる。外側底部保冷層26は、例えば泡ガラスのような、断熱性の無機ブロック材の配列体により形成できる。外側底部保冷層26の上に、例えば軽量気泡コンクリートの板材を敷設しても良い。
【0014】
内槽4は、実際に液体を貯留する槽であり、SUS等の金属で構成された密閉体であって、中間槽3の内部に配置されている。内槽4は、内槽底板41、内槽側板42及び内槽屋根43を含む。内槽底板41は、中間槽底板31よりも径の小さい円板型の形状を有している。内槽側板42は、内槽底板41の周縁から立設され、円筒状の形状を有している。内槽屋根43は、内槽側板42の上端に取り付けられ、ドーム型の形状を有している。内槽4の内部には液体水素LHが貯留されている。
【0015】
中間槽底板31と内槽底板41との間には、第2レベルコンクリート層34、第2リング部35及び内側底部保冷層36が介在されている。第2レベルコンクリート層34は、中間槽底板31の上に施工されている。第2リング部35は、第2レベルコンクリート層34の周縁付近の上にリング状に配置された、強度の高いコンクリート層である。第2リング部35において内槽側板42の荷重を直接受ける箇所には、強化コンクリート層351が配置されている。内側底部保冷層36は、第2レベルコンクリート層34の上であって、第2リング部35の内側に配置された、断熱性を有する層である。例えば、第2リング部35はパーライトコンクリートブロック、内側底部保冷層36は泡ガラスブロック等で形成できる。内側底部保冷層36の上に、例えば軽量気泡コンクリートの板材を敷設しても良い。
【0016】
内槽4と中間槽3との間、並びに中間槽3と外槽2との間には、各々所定幅の間隙が設けられている。内槽4と中間槽3との間隙である第1槽間11、及び、中間槽3と外槽2との間隙である第2槽間12には、断熱材が充填されている。前記断熱材としては、パーライトやグラスウールを用いることができる。第1槽間11には、内槽4に貯留されている液体水素LHと同等の低沸点ガス、例えば水素ガスが充填される。第2槽間12には、例えば窒素ガスが充填される。
【0017】
[三重殻タンクの施工方法]
続いて、図1に例示した三重殻タンク1の施工方法について説明する。図2は、本開示に係る三重殻タンク1の施工方法の一実施形態を示す工程チャートである。図2には、三重殻タンク1の建造工期中に行われる工程S1~S14と、三重殻タンク1の各部分の施工時期との関係が示されている。詳しくは、外槽2、中間槽3及び内槽4の底板21、31、41、屋根23、33、43及び側板22、32、42の各々について、主たる施工作業が実際に行われる施工期間が実線の矢印で、施工後の期間が点線で、各々図2に示されている。側板22、32、42については、工事用の出入り口である工事口の開口タイミングを「開」、工事口の封止タイミングを「閉」として付記されている。なお、工程S1~S14は、必ずしもタンク施工手順の一区切りとなる工程単位で区分されておらず、単に工事の進捗状況を「工程」として区分している場合もある。
【0018】
図2にも付記されているが、本実施形態の施工方法において特徴的な点は、外槽屋根23に中間槽屋根33及び内槽屋根43を仮固定してなる屋根連結体を地上作業にて形成し(工程S6)、当該屋根連結体をエアレージングにて浮上させる(工程S8)点にある。図3図16は、図2に示す工程S1~S14における三重殻タンク1の施工状態を、それぞれ模式的に示す図である。図3図16では、三重殻タンク1の径方向中心RCからの半分に相当する部分が断面で示されている。以下、図3図16を参照して、工程S1~S14の各々を説明する。
【0019】
<工程S1>
図3は、工程S1の施工状況を示す。工程S1では、タンク基礎10の上に外槽2の一部が据え付けられる。具体的には、タンク基礎10の周縁部付近の上に、外槽底板21の一部を構成する外槽アニュラ211と、外槽側板22の一部を構成する外槽側板ピース22P1とが据え付けられる。外槽アニュラ211は、円板形の外槽底板21の外周付近の環状部分を構成し、第1リング部25の下側に位置する部分となる。外槽アニュラ211は、耐荷重性を向上させるため、外槽底板21の他の部分より厚い板厚を有している。
【0020】
外槽側板22は、緩く円弧状に湾曲した矩形板からなる側板ピースを複数枚用いて組み立てられる。詳しくは、前記側板ピースを円環状に並べて、隣接する側板ピース間を溶接して一つの環状段を形成する。このような環状段を複数段積み上げることによって、外槽側板22は構築される。図3に示されている外槽側板ピース22P1は、外槽側板22の最下段の環状段を構成する側板ピースである。外槽側板ピース22P1は、外槽アニュラ211の径方向外側の周縁のやや内側から鉛直上方へ立設されている。
【0021】
<工程S2>
図4は、工程S2の施工状況を示している。工程S2では、外槽底板21及び外槽側板22の施工が行われる。外槽底板21については、外槽アニュラ211の径方向内側部分が敷設される。この内側部分は、外側底部保冷層26の直下に位置する部分である。図4では記載を省いているが、敷設後の外槽底板21の上には、図1で示した第1レベルコンクリート層24が打設される。先ず、外槽アニュラ211の上に第1レベルコンクリート層24の一部が打設される。その後、内槽屋根43及び中間槽屋根33が構築されて雨水の浸入の怖れが解消された後に、外槽アニュラ211の内側部分に第1レベルコンクリート層24の残部が打設される。
【0022】
外槽側板22については、最下段の環状段を構成する外槽側板ピース22P1の上に、二段目の環状段を構成する外槽側板ピース22P2が据え付けられる。なお、二段目の環状段の構築後に、最下段の環状段には、工事口となる第1開口OP1が設けられる。第1開口OP1は、最下段の環状段を構成している複数の外槽側板ピース22P1のうちの1枚又は複数枚を抜くことによって開設される。具体的には、複数の外槽側板ピース22P1を環状に並べて一旦環状段を形成した後、第1開口OP1の位置に対応する外槽側板ピース22P1だけは隣接ピースと溶接せず、これを当該環状段から抜き取る。
【0023】
外槽底板21の径方向中心RC付近には、中央屋根架台51が設置される。中央屋根架台51は、エアレージング前にドーム型の内槽屋根43を地上サイドで構築可能とするための架台である。
【0024】
<工程S3>
図5は、工程S3の施工状況を示している。工程S3では、外槽側板22の施工が継続されると共に、内槽屋根43の構築が開始される。外槽側板22については、二段目の環状段を構成する外槽側板ピース22P2の上に、三段目の環状段を構成する外槽側板ピース22P3が据え付けられる。上記と同様に、三段目の環状段の構築後に、二段目の環状段の中の一枚又は複数枚の外槽側板ピース22P2を抜くことで、工事口となる第1開口OP1が開設される。抜かれる外槽側板ピース22P2は、最下段の環状段において第1開口OP1の開設のために抜いた外槽側板ピース22P1の直上に位置するピースである。外槽側板22に環状段の二段分の高さで第1開口OP1を開設するのは、外槽側板22よりも高い位置から構築が開始される中間槽側板32及び内槽側板42に開設する工事口に開口高さを合わせるためである。
【0025】
内槽屋根43については、先の工程S2で設置した中央屋根架台51の上に、内槽屋根43の径方向中央付近を構成する内槽屋根ピース43Pが据え付けられる。一方、外槽底板21の径方向外周付近の上面には、外周屋根架台52が設置される。外周屋根架台52は、内槽屋根43及び中間槽屋根33の外周下縁を仮支持する架台である。外周屋根架台52の上面には、内槽ナックルプレート44が据え付けられる。内槽ナックルプレート44は、内槽側板42の上端と内槽屋根43の外周下縁とを繋ぐプレートである。
【0026】
<工程S4>
図6は、工程S4の施工状況を示している。工程S4では、内槽屋根43の構築が継続され、中間槽屋根33の構築が開始される。内槽屋根43については、工程S3で設置した径方向中央の内槽屋根ピース43Pと内槽ナックルプレート44との間を、地上作業で予め組み立てた内槽屋根ブロックで繋ぐことで、最終的にドーム型の内槽屋根43が形成される。前記内槽屋根ブロックは、支持フレームとなる屋根骨と、この屋根骨に取り付けられた複数枚の屋根プレートとからなる。内槽屋根43の外周縁43Eは、内槽ナックルプレート44の上端に固定される。この時点で、内槽屋根43が外周屋根架台52で支持されて自立した状態となるので、中央屋根架台51が撤去される。
【0027】
中間槽屋根33については、工程S3で完工した内槽屋根43の径方向中央部上に、中間槽屋根33の径方向中央付近を構成する中間槽屋根ピース33Pが据え付けられる。この据え付けに際しては、中間槽屋根サポート61(第1仮設サポート)が用いられる。中間槽屋根サポート61は、内槽屋根43と中間槽屋根33との間に介在され、両者を所定間隔を置いて仮固定する。中間槽屋根サポート61としては、H鋼などの剛性を有する部材を用いることができる。前記仮固定は、例えば、H鋼の下端部を内槽屋根43に所定の当て板を介して溶接して固定し、H鋼の上端部に中間槽屋根ピース33Pを載置すると共に固定する態様で実施することができる。
【0028】
外槽側板22の構築も適時継続される。図6では、四段目の環状段を構成する外槽側板ピース22P4が据え付けられた状態を示している。また、外周屋根架台52の上面には、中間槽ナックルプレート37が据え付けられる。中間槽ナックルプレート37は、中間槽側板32の上端と中間槽屋根33の外周下縁とを繋ぐプレートである。さらに、外槽底板21の径方向外周付近の上面に、第1リング部25を構成するブロックが敷設される。
【0029】
<工程S5>
図7は、工程S5の施工状況を示している。工程S5では、中間槽屋根33の構築が継続され、外槽屋根23の構築が開始される。また、中間槽底板31及び中間槽側板32の構築が開始される。中間槽屋根33については、工程S4で設置した径方向中央の中間槽屋根ピース33Pと中間槽ナックルプレート37との間を、地上作業で予め組み立てた中間槽屋根ブロックで繋ぐことで、最終的にドーム型の中間槽屋根33が形成される。前記中間槽屋根ブロックは、上述の内槽屋根ブロックと同様に、屋根骨と複数枚の屋根プレートとからなる。この中間槽屋根ブロックの設置の際、中間槽屋根サポート61が中間槽屋根33と内槽屋根43との間の適所に配設され、両者が仮固定される。中間槽屋根33の外周縁33Eは、中間槽ナックルプレート37の上端に固定される。
【0030】
外槽屋根23については、工程S4で完工した中間槽屋根33の径方向中央部上に、外槽屋根23の径方向中央付近を構成する外槽屋根ピース23Pが据え付けられる。この据え付けに際しては、外槽屋根中央サポート62(第2仮設サポート)が用いられる。外槽屋根中央サポート62は、中間槽屋根33と径方向中央の外槽屋根ピース23Pとの間に介在され、両者を所定間隔を置いて仮固定する。外槽屋根中央サポート62としては、H鋼や鋼材をトラス構造に組んだ架台などを用いることができる。前記仮固定は、H鋼等の下端部を中間槽屋根33に所定の当て板を介して溶接して固定し、H鋼等の上端部に外槽屋根ピース23Pを載置して固定する態様で実施することができる。
【0031】
先の工程S4で設置した第1リング部25の上には、中間槽底板31の一部を構成する中間槽アニュラ311と、中間槽側板32の一部を構成する中間槽側板ピース32P1(側板ピース)とが据え付けられる。中間槽アニュラ311は、円板形の中間槽底板31の外周付近の環状部分であって、中間槽底板31の他の部分より厚い板厚を有している。中間槽側板32も、複数の側板ピースを円環状に並べて形成した環状段を複数段積み上げることにより組み立てられる。図7に示されている中間槽側板ピース32P1は、中間槽側板32の最下段の環状段を構成する側板ピースである。中間槽側板ピース32P1は、中間槽アニュラ311の径方向外側の周縁から鉛直上方へ立設されている。中間槽側板ピース32P1は、中間槽側板32の二段目の環状段と、後に構築する内槽側板42の最下段の環状段との高さを合わせる側板ピースでもある。
【0032】
<工程S6>
図8は、工程S6の施工状況を示している。工程S6では、外槽屋根23の構築が継続され、最終的に3つの屋根が一体化された屋根連結体20が形成される。また、外槽側板22の所定高さまでの据え付けが行われる。外槽屋根23については、工程S5で設置した径方向中央の外槽屋根ピース23Pに対して、地上作業で予め組み立てた外槽屋根ブロックを繋ぐことで、最終的にドーム型の外槽屋根23が形成される。この延伸の際、H鋼等からなる外槽屋根周辺サポート63(第2仮設サポート)が、中間槽屋根33と外槽屋根23との間の適所に配設され、両者が仮固定される。
【0033】
外槽屋根23の構築が完了した時点で、屋根連結体20の形成が完了した状態となる。すなわち、屋根連結体20は、内槽屋根43の上に中間槽屋根33が中間槽屋根サポート61によって仮固定され、中間槽屋根33の上に外槽屋根23が外槽屋根中央サポート62及び外槽屋根周辺サポート63によって仮固定されることで形成されている。このような屋根連結体20の形成により、3つの屋根を一体的にエアレージングさせることが可能となる。上述のサポート61、62、63は、エアレージング完了までは上段の屋根の支持部材となるが、エアレージング後は下段の屋根の懸垂部材となる。
【0034】
なお、屋根連結体20の形成状態において、内槽屋根43と中間槽屋根33との間、並びに、中間槽屋根33と外槽屋根23との間隙は、完工後の三重殻タンク1における両者間の間隙よりもやや狭く設定されている。これは、エアレージング後に実行される内槽屋根43の内槽側板42への固定作業、並びに、中間槽屋根33の中間槽側板32への固定作業を容易化するためである。
【0035】
外槽側板22については、側板ピースで形成される環状段が所定の段数だけ積み上げられることで、構築が完工する。これにより、屋根連結体20の周囲に所定高さの外槽側板22が構築されたことになり、エアレージングの準備が可能な状態となる。外槽側板22の頂部22Tには、外周歩廊27が据え付けられる。また、中間槽アニュラ311の上には、ここでは図示を省いている第2レベルコンクリート層34の一部が打設され、さらに第2リング部35を構成するブロックが敷設される。
【0036】
<工程S7>
図9は、工程S7の施工状況を示している。工程S7では、主にエアレージングの準備作業が行われる。密封空間の形成のため、外槽屋根23の外周縁23Eには、シール材28を取り付けるシール処理が施される。シール材28は、外周縁23Eと外槽側板22の内面との間の隙間を封止する。外槽側板22の外側には、エアレージング用のエアを供給するブロワー7が準備される。ブロワー7のエア送り出し口に送風ダクトが接続され、この送風ダクトが第1開口OP1を通して外槽側板22の内側に引き込まれる。なお、第1開口OP1についても前記送風ダクトの周囲を封止するシール処理が施される。外槽底板21は工程S7の前にすでに完工しているので、底面部分のシール処理は特に不要である。従って、この時点で、外槽底板21、外槽側板22及び外槽屋根23で囲まれる空間が密閉化される。
【0037】
以上のエアレージング準備作業と並行して、第2リング部35の上面に内槽アニュラ411が据え付けられる。内槽アニュラ411は、円板形の内槽底板41の外周付近の環状部分である。
【0038】
<工程S8>
図10は、工程S8のエアレージングの実施後の状態を示している。エアレージングの実行に際しては、図9に示したブロワー7が稼働され、外槽底板21、外槽側板22及び外槽屋根23で囲まれる密閉空間にエアが供給される。エア供給により前記密閉空間内の空気圧が上昇し、その圧力で屋根連結体20が浮上する。この際、外槽側板22は浮上する屋根連結体20のガイドとしての役目を果たす。
【0039】
エアレージングにより直接的に浮上するのは外槽屋根23である。しかし、内槽屋根43及び中間槽屋根33は、仮設のサポート61、62、63にて予め外槽屋根23と一体化されている。従って、内槽屋根43及び中間槽屋根33も、外槽屋根23に吊り止めされた態様で、一体的に浮上する。つまり、事前に屋根連結体20が形成されているので、三重殻構造を形成する3つの屋根23、33、43を、1回のエアレージングで一気に浮上させることができる。なお、エアレージングの際、バランスワイヤーを用いて屋根連結体20の浮上姿勢が制御される。
【0040】
エアレージング後、外槽屋根23の外周縁23Eが外槽側板22の上端に固定される。この時点では屋根連結体20の仮止めは解除されず、内槽屋根43及び中間槽屋根33は、外槽屋根23に吊られた状態のままである。エアレージング用の設備は除去される。すなわち、外槽屋根23の外周縁23E付近に取り付けられたシール材28が取り外され、ブロワー7及び送風ダクトが撤去される。
【0041】
<工程S9>
図11は、工程S9の施工状況を示している。工程S9では、内槽側板42の構築が開始される。内槽側板42も、複数の側板ピースを円環状に並べて形成した環状段を複数段積み上げることにより組み立てられる。内槽アニュラ411の上に、内槽側板42の最下段の環状段を構成する内槽側板ピース42P1(側板ピース)が据え付けられる。内槽側板ピース42P1は、内槽アニュラ411の径方向外側の周縁から鉛直上方へ立設されている。図11では、最下段の内槽側板ピース42P1の上に、二段目の環状段を構成する内槽側板ピース42P2が据え付けられている状態を示している。
【0042】
内槽側板42の構築時に、工事口として第2開口OP2が設けられる。第2開口OP2は、最下段の環状段を構成している複数の内槽側板ピース42P1のうちの1枚又は複数枚を抜くことによって開設される。第2開口OP2の開設位置は、外槽側板22に開設される第1開口OP1に対応する位置である。詳しくは、第2開口OP2と第1開口OP1とは、三重殻タンク1の周方向の略同じ位置に開設され、且つ、高さ位置も略同一となるように開設される。本実施形態では、内槽側板ピース42P1と二段目の外槽側板ピース22P2とが略同じ高さ位置にある。外槽側板22において、最下段の外槽側板ピース22P1だけでなく二段目の外槽側板ピース22P2も抜き取ることで、第2開口OP2と第1開口OP1との高さ位置が合わされている。
【0043】
<工程S10>
図12は、工程S10の施工状況を示している。工程S10では、内槽側板42及び中間槽側板32が構築される。内槽側板42については、二段目の環状段を構成する内槽側板ピース42P2の上に、三段目の環状段を構成する内槽側板ピース42P3が据え付けられる。さらにその上に四段目の内槽側板ピース42P4が据え付けられるというように、側板高さが順次嵩上げされてゆく。
【0044】
同様に、中間槽側板32についても、据え付け済の最下段の中間槽側板ピース32P1の上に、二段目、三段目、四段目の環状段を構成する中間槽側板ピース32P2、32P3、32P4が順次積まれてゆく。本実施形態では、内槽側板ピース42Pnと中間槽側板ピース32Pn(高さ合わせのピース32P1は除く)とは、同じ高さ幅を有している。従って、図12に記載されている内槽側板ピース42P1、42P2、43P3と、中間槽側板ピース32P2、32P3、32P4とは、それぞれ同じ高さ位置にある。
【0045】
工程S10において、内槽側板42及び中間槽側板32のいずれか一方の環状段を先に積み上げた後、他方の環状段を積み上げるようにしても良いが、内槽側板42及び中間槽側板32の環状段を同時並行的に積み上げることが望ましい。例えば、内槽側板42の二段目の内槽側板ピース42P2を積んだ後に中間槽側板32の三段目の中間槽側板ピース32P3を積み、続いて内槽側板42の三段目の内槽側板ピース42P3を積む。このような構築手法を採用すれば、内槽側板42及び中間槽側板32の構築に際し、足場を共用できるなど、作業の効率化を図ることができる。また、側板ピースのクレーン吊り作業や組み付け作業の便宜上、径方向内側に位置する内槽側板ピース42Pnの積み上げを、中間槽側板ピース32Pnの積み上げよりも先行させることが望ましい。
【0046】
中間槽側板32の構築時にも、工事口として第3開口OP3が設けられる。第3開口OP3は、二段目の環状段を構成している中間槽側板ピース32P2のうちの1枚又は複数枚を抜くことによって開設される。図2のチャートに「開」と付記している通り、工程S10の時点で、内槽側板42には第2開口OP2が、中間槽側板32には第3開口OP3が開設される。
【0047】
第3開口OP3の開設位置は、内槽側板42の第2開口OP2に対応する位置である。詳しくは、第2開口OP2と第3開口OP3とは、周方向の略同じ位置に開設され、且つ、高さ位置も略同一となるように開設される。既述の通り、第2開口OP2は外槽側板22の第1開口OP1に対応した位置に開設される。従って、第1開口OP1、第2開口OP2及び第3開口OP3は、略同一の周方向位置及び高さ位置に開設されることになる。このため、建造中のタンク内外への作業者の通行、資材や工事機材の搬入・搬出を効率的に行わせることができる。
【0048】
工程S10では、さらに外槽底板21の上に、図12では図略の第1レベルコンクリート層24と、外側底部保冷層26とが順次敷設される。第1レベルコンクリート層24は、工程S2で外槽アニュラ211上の部分が施工済であるので、残部が施工される。既述の通り、外側底部保冷層26は、例えば泡ガラス等の断熱性ブロック材を、第1リング部25の内側に敷き詰めることで構築される。
【0049】
<工程S11>
図13は、工程S11の施工状況を示している。工程S11では、内槽側板42及び中間槽側板32の構築継続、内槽側板42と内槽屋根43との固定、並びに中間槽底板31の敷設が行われる。内槽側板42及び中間槽側板32については、各々の環状段の中段から上段の据え付けが行われる。図13では、内槽側板42は、中間槽側板32に一段だけ先んじて、最上段の環状段を構成する内槽側板ピース42PTが組み立てられた状態を示している。
【0050】
内槽側板42の環状段を最上段まで中間槽側板32よりも先に組み立てるのは、次の理由による。側板ピース32P、42Pの吊り上げの際、クレーンを側板の径方向外側に配置して前記吊り上げを行う「外側吊り上げ」が実施される。これは、内槽側板42及び中間槽側板32のいずれも内面側に足場を含む組立治具があり、また内面側は作業員のアクセスがあることを考慮している。中間槽側板32が先に組み立てられてしまうと、中間槽側板32の内面足場があるために、内槽側板ピース42Pの吊上げが難しくなる。このため先に内槽側板42を組み立て、中間槽側板32の内側に足場を作った後に、中間槽側板ピース32Pを外側から吊り上げることが望ましい。
【0051】
最上段の内槽側板ピース42PTの据え付け後、内槽屋根43の外周縁を内槽側板42の上端に固定する作業が実施される。この固定作業に先立ち、中間槽屋根33と内槽屋根43とを繋いでいる中間槽屋根サポート61を、第1ジャッキ64に置換する吊り換え作業が行われる。エアレージング後、屋根連結体20の仮固定が解除されずに外槽屋根23が外槽側板22に固定された状態では、内槽屋根43は正規の高さ位置よりも高い位置で、中間槽屋根サポート61にて中間槽屋根33に吊り止めされている。これは、内槽屋根43を内槽側板42に接続する際の調整空間を確保するためである。
【0052】
第1ジャッキ64は、中間槽屋根33と内槽屋根43との間の適所に配置され、前記吊り換え後は内槽屋根43を昇降可能に吊り支持している。前記下降調整空間の分だけ第1ジャッキ64で内槽屋根43をジャッキダウンさせながら、内槽ナックルプレート44の下端と最上段の内槽側板ピース42PTの上端との位置合わせが行われる。位置合わせ後、両者が固定され、内槽4が略完工する。
【0053】
さらに工程S11では、外側底部保冷層26の上に中間槽底板31の残部が敷設される。中間槽底板31については、外周部分を構成する中間槽アニュラ311を据え付け済みであるので、その内側部分の中間槽底板31が敷設される。
【0054】
<工程S12>
図14は、工程S12の施工状況を示している。工程S12では、中間槽側板32と中間槽屋根33との固定と、内側底部保冷層36の敷設とが行われる。内槽屋根43と同様に、中間槽屋根33の固定にもジャッキダウン方式が採用される。内槽屋根43が内槽側板42に固定された後、中間槽側板32の最上段の環状段を構成する中間槽側板ピース32PTが据え付けられる。一方、外槽屋根23と中間槽屋根33とを繋いでいる外槽屋根中央サポート62及び外槽屋根周辺サポート63を、第2ジャッキ65に置換する吊り換え作業が行われる。中間槽屋根33も、前記調整空間の分だけ正規の高さ位置よりも高い位置で外槽屋根23に吊り止めされている。
【0055】
第2ジャッキ65は、外槽屋根23と中間槽屋根33との間の適所に配置され、前記吊り換え後は中間槽屋根33を昇降可能に吊り支持している。前記調整空間の分だけ第2ジャッキ65で中間槽屋根33をジャッキダウンさせながら、中間槽ナックルプレート37の下端と最上段の中間槽屋根ピース33PTの上端との位置合わせが行われる。位置合わせ後、両者が固定され、中間槽3が略完工する。
【0056】
工程S12では、さらに中間槽底板31(第2レベルコンクリート層34)の上に内側底部保冷層36が敷設される。内側底部保冷層36は、例えば泡ガラス等の断熱性ブロック材を、第2リング部35の内側に敷き詰めることで構築される。
【0057】
<工程S13>
図15は、工程S13の施工状況を示している。工程S13では、内槽底板41の敷設、第2開口OP2の封止、デッキの据え付けなどが行われる。内槽底板41は、内側底部保冷層36の上に敷設される。内槽底板41については、外周部分を構成する内槽アニュラ411を据え付け済みであるので、その内側部分の内槽底板41が敷設される。
【0058】
内槽4の内側での作業が完了し、内槽4の内側に設置された足場などを撤去した後、内槽側板42の第2開口OP2が封止される。この封止作業は、工程S9において最下段の環状段から抜き出した内槽側板ピース42P1を第2開口OP2に嵌め込むと共に、当該内槽側板ピース42P1を周囲の側板ピースに溶接する作業である。図15では、第2開口OP2が封止された状態が示されている。
【0059】
外槽屋根23の上には、肩部デッキ231及び頂部デッキ232が据え付けられる。肩部デッキ231は、外槽屋根23の径方向外周部に配置される。頂部デッキ232は、外槽屋根23の径方向中央に配置される。なお、第1槽間11及び第2槽間12に断熱材を充填する作業や、各種の配管や付属品の取り付け等の作業も行われる。
【0060】
<工程S14>
図16は、工程S14の施工状況を示している。工程S14では、第3開口OP3及び第1開口OP1の封止が行われる。中間槽側板32の第3開口OP3は、中間槽3の内側での作業が完了し、中間槽3の内側に設置された足場などを撤去した後に封止される。この封止作業では、工程S10において抜き出した中間槽側板ピース32P2を第3開口OP3に嵌め込むと共に、当該中間槽側板ピース32P2を周囲の側板ピースに溶接する。
【0061】
続いて、外槽2の内側での作業が完了し、外槽2の内側に設置された足場などを撤去した後、外槽側板22の第1開口OP1が封止される。この封止作業では、工程S2、S3において抜き出した外槽側板ピース22P1、22P2を、第1開口OP1を塞ぐように嵌め込むと共に、これらを溶接する。以上の通り、工事口は、内側の第2開口OP2、中間の第3開口OP3及び外側の第1開口OP1の順に、各側板内での作業が完了したら順次封止される。
【0062】
[作用効果]
以上説明した本開示に係る三重殻タンクの施工方法によれば、エアレージングの前に、内槽屋根43、中間槽屋根33及び外槽屋根23が相互に仮固定された屋根連結体20が形成される。具体的には、内槽屋根43の上に中間槽屋根サポート61で中間槽屋根33を仮固定し、さらに当該中間槽屋根33の上に外槽屋根中央サポート62及び外槽屋根周辺サポート63で外槽屋根23を仮固定することで、屋根連結体20が作成される。この屋根連結体20の周囲に浮上のガイドとなる外槽側板22を形成した後、屋根連結体20をエアレージングする。
【0063】
ここで、直接的にエアレージングされるのは外槽屋根23であるが、内槽屋根43及び中間槽屋根33も外槽屋根23に保持された態様で、一体的に浮上する。換言すると、外槽屋根23に吊られた状態で、内槽屋根43及び中間槽屋根33も浮上する。つまり、三重殻の各屋根を地上ベースの作業で作成すると共にこれらを仮固定して一体化し、1回のエアレージングで一気に浮上させる。従って、三重殻の各屋根の構築作業の大部分を、側板の構築作業等と並行して低所作業で実行できるため、工期短縮に寄与する。また、外槽屋根23を外槽側板22に固定して外槽2を形成した後に、内槽側板42及び中間槽側板32を構築できる。つまり、外槽2で覆われた空間の中で内槽側板42及び中間槽側板32の構築作業が行える。従って、天候の影響を受けずに前記構築作業が行え、水分の介在による溶接品質の低下を回避できる利点もある。
【0064】
[変形実施形態]
以上、本開示に係る三重殻タンクの施工方法の実施形態を説明したが、本開示は上掲の実施形態に何ら限定されない。例えば、上述の三重殻タンクの施工方法について、次のような変形実施形態を取ることができる。
【0065】
(1)上述の三重殻タンク1の近傍に、所要の建造物や設備を付設しても良い。例えば、三重殻タンク1の周囲に、災害時等にタンク内の液体が漏液した際の拡散を抑止する防液堤を立設しても良い。防液堤は、例えばPC(プレストレストコンクリート)にて構築することができる。防液堤は、金属製の外槽2と一体的に構築されても良い。具体的には、外槽側板22の外周面に、防液堤を構成するPCが密接した状態で構築された態様としても良い。この場合、屋根連結体20のエアレージングの際にガイドとなる外槽側板22の強度を高めることができる。
【0066】
(2)三重殻タンク1の強度を補強する各種構造を追加しても良い。例えば、中間槽側板32及び/又は内槽側板42とタンク基礎10とを連結するアンカーストラップを具備させても良い。
【0067】
(3)内槽屋根43に、内槽4の内部空間と第1槽間11の空間とを連通させる連通管を取り付けるようにしても良い。この変形例によれば、内槽4に貯留されている液体水素LHから気化した水素ガスを、第1槽間11に流通させることができる。つまり、貯留する液体水素LHを利用して、保冷効果を高めることができる。
【0068】
(4)上記実施形態では、第1開口OP1、第2開口OP2及び第3開口OP3が、三重殻タンク1の周方向の同じ位置に略同じ高さで開設される例を示した。これら開口OP1、OP2、OP3は、三重殻タンク1の周方向の異なる位置に開設しても良いし、異なる高さで開設しても良い。
【0069】
[本開示のまとめ]
以上説明した具体的実施形態には、以下の構成を有する開示が含まれている。
【0070】
本開示に係る三重殻タンクの施工方法は、それぞれ屋根と側板とを有する内槽、中間槽及び外槽を備えた三重殻タンクの施工方法であって、内槽屋根の上に中間槽屋根を仮固定し、さらに当該中間槽屋根の上に外槽屋根を仮固定することで、屋根連結体を形成し、前記屋根連結体の周囲に所定高さの外槽側板を構築し、前記外槽屋根の外周縁と前記外槽側板の内面との間にシール処理を施して密閉空間を形成すると共に、当該密閉空間にエアを供給して前記屋根連結体をエアレージングし、前記外槽屋根と前記外槽側板とを固定し、内槽側板及び中間槽側板を構築し、前記屋根連結体の前記仮固定を解除して、前記内槽屋根と前記内槽側板とを固定すると共に前記中間槽屋根と前記中間槽側板とを固定する。
【0071】
この施工方法によれば、エアレージングの前に、内槽屋根、中間槽屋根及び外槽屋根が相互に仮固定された屋根連結体が形成される。続いて、屋根連結体の周囲に外槽側板を形成した後、前記屋根連結体をエアレージングする。直接的にエアレージングされるのは外槽屋根であるが、内槽屋根及び中間槽屋根も外槽屋根に保持された態様で、一体的に浮上する。つまり、三重殻の各屋根を地上作業で作成すると共にこれらを仮固定して一体化し、1回のエアレージングで一気に浮上させる。従って、三重殻の各屋根の構築作業の大部分を低所作業で実行できるため、工期短縮に寄与する。また、外槽屋根を外槽側板に固定して外槽を形成した後に、内槽側板及び中間槽側板を構築する。つまり、外槽で覆われた状態で内槽側板及び中間槽側板の構築作業が行えるので、天候の影響を受けない利点もある。
【0072】
上記の三重殻タンクの施工方法において、前記外槽側板で囲まれる領域の底部を構成する外槽底板を、少なくとも前記エアレージングの前に形成することが望ましい。
【0073】
この施工方法によれば、外槽底板を予め形成しておくことで、エアレージングの際に必要な密閉空間の形成を容易化することができる。
【0074】
上記の三重殻タンクの施工方法において、前記外槽底板を形成後、当該外槽底板の上に屋根架台を設置し、前記屋根架台の上に前記内槽屋根を据え付けると共に、当該内槽屋根の上に第1仮設サポートを設置し、前記第1仮設サポートの上に前記中間槽屋根を据え付けると共に、当該中間槽屋根の上に第2仮設サポートを設置し、前記第2仮設サポートの上に前記外槽屋根を据え付けることにより、前記屋根連結体を形成することが望ましい。
【0075】
この施工方法によれば、最内層の内槽屋根の上に順次、中間槽屋根及び外槽屋根を据え付けてゆくことで、屋根連結体が形成される。従って、前記屋根連結体を作業効率良く形成することができる。
【0076】
上記の三重殻タンクの施工方法において、前記内槽側板及び前記中間槽側板は、複数の側板ピースを円環状に並べて形成した環状段を複数段積み上げることにより組み立てられ、且つ、前記内槽側板の前記環状段と前記中間槽側板の前記環状段とを並行して積み上げることが望ましい。
【0077】
この施工方法によれば、内槽側板及び中間槽側板の構築に際し、例えば足場を共用できるなど、作業の効率化を図ることができ、ひいては工期の短縮化に寄与する。
【0078】
上記の三重殻タンクの施工方法において、前記内槽側板及び前記中間槽側板は、複数の側板ピースを円環状に並べて形成した環状段を複数段積み上げることにより組み立てられ、且つ、前記内槽側板の前記環状段を最上段まで前記中間槽側板よりも先に組み立て、前記最上段の前記環状段と前記内槽屋根の外周縁とを固定することが望ましい。
【0079】
この施工方法によれば、中間槽よりも内側に位置する内槽の屋根と側板とが先に固定されるので、中間槽の屋根と側板とを先行して固定する場合に比べて作業性を良好とすることができる。
【0080】
上記の三重殻タンクの施工方法において、前記外槽側板の構築時に、工事用の出入り口である第1工事口が前記外槽側板に開設され、前記内槽側板の構築時に当該内槽側板に第2工事口が、前記中間槽側板の構築時に当該中間槽側板に第3工事口がそれぞれ開設され、前記内槽の内側での作業完了後に前記第2工事口を封止し、次いで前記中間槽の内側での作業完了後に前記第3工事口を封止し、しかる後、前記外槽の内側での作業完了後に前記第1工事口を封止することが望ましい。
【0081】
この施工方法によれば、外槽側板、中間槽側板及び内槽側板の各々に、タイムリーに工事口を開口させて、各種工事をスムースに進行させることが可能となる。
【符号の説明】
【0082】
1 三重殻タンク
2 外槽
20 屋根連結体
21 外槽底板
22 外槽側板
23 外槽屋根
3 中間槽
31 中間槽底板
32 中間槽側板
33 中間槽屋根
4 内槽
41 内槽底板
42 内槽側板
43 内槽屋根
51 中央屋根架台(屋根架台)
52 外周屋根架台(屋根架台)
61 中間槽屋根サポート(第1仮設サポート)
62 外槽屋根中央サポート(第2仮設サポート)
63 外槽屋根周辺サポート(第2仮設サポート)
OP1、OP2、OP3 第1開口、第2開口、第3開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16