(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096626
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びその製造方法、樹脂組成物の強度向上方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/20 20060101AFI20230630BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20230630BHJP
C08L 3/02 20060101ALI20230630BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CEP
C08L1/02
C08L3/02
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212510
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇紀
(72)【発明者】
【氏名】安倍 義人
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070AA03
4F070AA15
4F070AA66
4F070AC72
4F070AD02
4F070FA17
4F070FB07
4F070FC03
4F070FC05
4J002AA01W
4J002AB01X
4J002AB04Y
4J002BB03W
4J002BB12W
4J002BC03W
4J002BD04W
4J002BE02W
4J002BE03W
4J002CF03W
4J002CF05W
4J002CF18W
4J002CF19W
4J002GG01
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】強度を高めた樹脂組成物を提供することにあり、さらには、植物由来繊維を配合した樹脂組成物の製造方法において、植物由来繊維の水分を蒸発させる工程をなくすことができる樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂組成物は、植物抽出残渣と、植物由来繊維と、熱可塑性樹脂とを含有することを特徴とする。また、樹脂組成物の製造方法は、植物抽出残渣と、植物由来繊維と、熱可塑性樹脂とを混合し、得られた混合物を乾燥し、その乾燥物を成形して成形物を得ることを特徴とし、植物抽出残渣は含水状態であるのが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物抽出残渣と、植物由来繊維と、熱可塑性樹脂とを混合し、得られた混合物を乾燥し、その乾燥物を成形して成形物を得る、樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記混合をしながら前記乾燥を行う、請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記混合は、前記植物抽出残渣2~20質量%、前記植物由来繊維5~20質量%、前記熱可塑性樹脂60~93質量%を配合して行う請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記植物抽出残渣が含水状態である、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記植物抽出残渣の含水率が50~85質量%である、請求項4に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記植物抽出残渣がでんぷん質を含む、請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記植物抽出残渣のでんぷん質の含有割合が乾燥固形分量で2~50質量%である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記植物抽出残渣が緑茶殻又は麦茶殻である、請求項1~7のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記植物由来繊維が不溶性食物繊維である、請求項1~8のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記不溶性食物繊維が、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン及びキトサンからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項9に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記植物由来繊維の含水率が20質量%以下である、請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂が、230℃以下で成型可能な樹脂である、請求項1~11のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂が、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂、EVA樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、PVA樹脂、PBAT樹脂、PBS樹脂、PLA樹脂、PHBH樹脂、PHA樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項12に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
さらに、分散向上剤を含有する請求項1~13のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
植物抽出残渣と、植物由来繊維と、熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物。
【請求項16】
植物抽出残渣と、植物由来繊維と、熱可塑性樹脂とを混合し、得られた混合物を乾燥し、その乾燥物を成形して成形物を得る、樹脂組成物の強度向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の抽出残渣を配合して高強度とした樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂組成物(プラスチック)は成形しやすいという利点があるが、強度的に脆いという欠点がある。そこで、樹脂組成物の機械的強度を向上させるために樹脂中にセルロースナノファイバーなどのセルロース繊維を配合させることが行われている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、樹脂中にセルロース繊維を分散してなるセルロース繊維分散樹脂複合材からなり、かつ肉厚が0.1mm以上である樹脂成形体であって、前記セルロース繊維の含有量が1質量%以上70質量%未満であり、所定の測定条件により測定される前記セルロース繊維の長さ加重平均繊維長をLL、数平均繊維長をLNとしたとき、LLとLNが所定の式を満たす、樹脂成形体の発明が開示され、この樹脂成形体は薄肉部を有しながらも優れた機械的物性を実現できるものである。
【0004】
また、下記特許文献2には、植物体または微生物に由来するセルロース繊維含有材料を、平均繊維径が4~3000nmとなるよう解繊してなるナノ化セルロース繊維の発明が開示され、さらに、このナノ化セルロース繊維を樹脂に含有させ、その組成物を成形して樹脂含有成形体にすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020―193263号公報
【特許文献2】特開2020-116817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セルロースナノファイバーは、パルプなどの植物由来繊維を水中で粉砕することにより製造されるものであるが、水分量が95wt%以上と多く含むため、水分を一度蒸発させてから樹脂に配合する必要があり、製造上の負担となる。
水分を蒸発させる点を解消するため、植物由来繊維を溶融樹脂中で粉砕しようとすると、植物由来繊維の繊維同士が絡みつき、そこに樹脂が吸着してフレーク状の異物が形成されてしまうことがあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、強度を高めた樹脂組成物を提供することにあり、さらには、植物由来繊維を配合した樹脂組成物の製造方法において、植物由来繊維の水分を蒸発させる工程をなくすことができる樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態の樹脂組成物の製造方法は、植物抽出残渣と、植物由来繊維と、熱可塑性樹脂とを混合し、得られた混合物を乾燥し、その乾燥物を成形して成形物を得ることを特徴とする。
【0009】
上記形態において、各成分を混合しながら乾燥を行うのが好ましく、また、各成分の混合を、植物抽出残渣2~20質量%、前記植物由来繊維5~20質量%、前記熱可塑性樹脂60~93質量%の配合割合で行うのが好ましい。
【0010】
上記形態において、植物抽出残渣が含水状態であるのが好ましく、具体的には、含水率が50~85質量%であるのがよい。
【0011】
上記形態において、植物抽出残渣がでんぷん質を含むのが好ましく、具体的には、でんぷん質の含有割合が2~50質量%であるのがよい。
【0012】
上記形態において、植物抽出残渣が緑茶殻又は麦茶殻であるのが好ましい。
【0013】
上記形態において、植物由来繊維が不溶性食物繊維であるのが好ましく、具体的には、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン及びキトサンからなる群から選ばれる1種又は2種以上であるのがよい。
【0014】
上記形態において、植物由来繊維の含水率が20質量%以下であるのが好ましい。
【0015】
上記形態において、熱可塑性樹脂が230℃以下で成型可能な樹脂であるのが好ましく、具体的には、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂、EVA樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、PVA樹脂、PBAT樹脂、PBS樹脂、PLA樹脂、PHBH樹脂、PHA樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上であるのがよい。
【0016】
上記形態において、さらに、分散向上剤を含有するのが好ましい。
【0017】
本発明は、植物抽出残渣と、植物由来繊維と、熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物を対象とする。
【0018】
本発明は、植物抽出残渣と、植物由来繊維と、熱可塑性樹脂とを混合し、得られた混合物を乾燥し、その乾燥物を成形して成形物を得ることにより、樹脂組成物の強度向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態としての樹脂組成物(以下、本樹脂組成物という。)を説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本樹脂組成物は、植物抽出残渣と、植物由来繊維と、熱可塑性樹脂とを含有するものである。
【0021】
(植物抽出残渣)
植物抽出残渣は、植物体の葉や茎などから水、アルコールなどを溶媒として抽出あるいは搾汁した後の残渣であり、飲料などを製造するにあたり廃棄される抽出残渣を用いるのが好ましい。より具体的には、例えば、緑茶、ウーロン茶、紅茶などの茶葉残渣(いわゆる茶殻)、コーヒーなどのコーヒー豆残渣(いわゆるコーヒー粕)、麦茶などの麦残渣(いわゆる麦茶殻)、玄米茶などの玄米残渣(いわゆる玄米茶殻)、そば茶などのそばの実残渣、ビールなどの麦芽残渣(いわゆるビール粕)、リンゴの搾汁粕、馬鈴薯の搾り粕、葡萄の搾り粕等が挙げられる。
【0022】
植物抽出残渣は、水を含む含水状態であるのが好ましく、具体的には、含水率が50~85質量%、特に60~85質量%、さらに65~80質量%であるのが好ましい。飲料などを製造するにあたり廃棄される抽出残渣は含水率が85質量%以上と多くの水分を含有していることが多いので、熱風乾燥・脱水などで上記範囲にするのが好ましい。植物抽出残渣の含水率を予め調整しておくことにより、後述する製造方法において、製造が容易になり製造時間を短縮できる、植物抽出残渣の保存や扱いがしやすくなる、成型体の品質が均一になるなどの利点がある。
また、植物抽出残渣は、でんぷん質を含むのが好ましく、でんぷん質の含有割合が乾燥固形分量で2~50質量%、特に4~45質量%、さらに10~40質量%であるのが好ましい。樹脂組成物中に含まれるでんぷん質の含有割合においては、乾燥固形分量で0.2~15質量%、特に0.5~10質量%、さらに1~5質量%であるのが好ましい。
なお、でんぷん質とは多糖類、例えば、糖の数が10個以上のものをいう。
でんぷん質の含有割合は、例えば、でんぷんの添加や植物抽出残渣の種類・部位の変更により調整することができる。また、でんぷん質の含有割合は公知の方法で測定することができ、例えば、酵素法により測定することができる。検体をα-アミラーゼとグルコアミラーゼ処理により、グルコースにまで分解して定量するものである。
【0023】
でんぷん質を含有する植物抽出残渣としては、含水率及びでんぷん質含量の観点から、麦茶殻、玄米茶殻、そばの実残渣、ビール粕及び馬鈴薯の搾り粕が好ましい。
【0024】
(植物由来繊維)
植物由来繊維は、野菜や樹木など植物体に含まれる、植物体に由来する繊維であり、例えば、穀類、野菜、豆類、キノコ類、果実、海藻、木材、藁、竹、麻、ケナフ、ツル性植物などに含まれている。
植物由来繊維としては、不溶性食物繊維が好ましく、不溶性食物繊維には、木材、藁、竹、麻等と、そこから得られるパルプ又は再生パルプなども含まれる。
不溶性食物繊維としては、より具体的には、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン及びキトサンなどがあり、これらから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0025】
植物由来繊維は、水分量が少ないのが好ましく、具体的には、含水率が20質量%以下、特に19質量%以下、さらに18質量%以下であるのが好ましい。下限値は、特に限定するものではないが、5質量%以上が好ましい。また、前記植物抽出残渣と植物由来繊維との含水率の差が30~90質量%であるのが好ましく、特に40~85質量%、さらに45~80質量%であることが好ましい。
【0026】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、熱を加えることにより溶融して成型できる樹脂であり、例えば、230℃以下、特に220℃以下、さらに210℃以下で成型可能な樹脂であるのが好ましい。具体的には、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂、EVA樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、PVA樹脂、PBAT樹脂、PBS樹脂、PLA樹脂、PHBH樹脂、PHA樹脂、熱可塑性エラストマーなどがあり、これらから選ばれる1種又は2種以上であるのが好ましい。
【0027】
(その他の成分)
本樹脂組成物において、植物抽出残渣、植物由来繊維、熱可塑性樹脂以外の成分を任意に配合してもよく、例えば、分散向上剤、可塑剤、相溶化剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤等の添加剤の1種又は2種以上を配合してもよい。また、染料・顔料等の着色剤を配合してもよい。
【0028】
これらの配合割合は、特に限定するものではなく、用途に応じて適宜配合することができる。
ここでの分散向上剤は、熱可塑性樹脂中の植物抽出残渣及び植物由来繊維の分散性を向上させ、樹脂の強度を高めるものであり、例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウムなどを用いることができる。
【0029】
(配合割合)
各成分の配合割合は、絶乾状態で植物抽出残渣2~20質量%、植物由来繊維5~20質量%、熱可塑性樹脂60~93質量%の割合で行うのが好ましく、植物抽出残渣2~15質量%、植物由来繊維6~17質量%、熱可塑性樹脂65~92質量%の割合で行うのがより好ましく、植物抽出残渣2~10質量%、植物由来繊維7~15質量%、熱可塑性樹脂70~91質量%の割合で行うのが特に好ましい。
【0030】
<樹脂組成物の製造方法>
樹脂組成物の製造方法(以下、本製造方法という。)は、植物抽出残渣と、植物由来繊維と、熱可塑性樹脂とを混合し、得られた混合物を乾燥し、その乾燥物を成形して成形物を得る、ことを特徴とする製造方法である。
【0031】
(混合工程)
本製造方法は、まず、上記各成分を混合して混合物を得る。
この混合は、植物抽出残渣、植物由来繊維及び熱可塑性樹脂、必要に応じてその他成分を適宜割合で配合して混合すればよく、特に限定するものではないが、機械的混練法により行うことができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ブラベンダー、カレンダーロール等を用いて行うことができる。混合する際に各成分を粉砕しながら行うのが好ましい。
【0032】
この混合における各成分の好適な配合割合は、上記した本樹脂組成物の配合割合と同様である。
【0033】
(乾燥工程)
次に、混合物を乾燥させて乾燥物を得る。
この乾燥は、混合物から水分を蒸発させることができればよく、上記混合をしながら乾燥を行う、つまり混合工程と乾燥工程とを同時に行うのが好ましい。
混合しながら乾燥を行うには、例えば、バンバリーミキサーを用いてミキサー内部を100℃以上、好ましくは100~180℃の範囲に設定し、ミキサーを作動させることにより、各成分が粉砕されながら乾燥し、混合されていく。
乾燥させた後、乾燥物を練り上げて粘土質、つまり、もち状にしながら、含水率が、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下になるまで練り上げる。
【0034】
(成形工程)
最後に、粘土質を成形する。
例えば、粘土質を押し出し機に投入し、混練しながらノズルから針金状に押し出し、適宜長さで切断してペレット状にすることができる。
その他、成形するには、公知の方法が使用でき、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ成形、インフレーション成形、圧縮成形、パイプ押出成形、および真空成形などにより行うことができる。これらの成型は、粘土質自体でも粘土質を粉砕したもの、ペレット状に成型したものを使用してもよい。
【0035】
(用途)
本樹脂組成物は、植物抽出残渣、植物由来繊維及び熱可塑性樹脂を含有するため、強度が高められた高強度樹脂となり、強度を必要とする用途に好適に用いることができる。さらに、植物抽出残渣にでんぷん質が含まれていればでんぷん質の影響により強度が一層高められることになる。
本製造方法は、植物抽出残渣が含水状態であれば、植物由来繊維及び熱可塑性樹脂と混合する際に、植物抽出残渣に含まれる水分が植物由来繊維を適度にほぐしながら混合することになり、植物由来繊維を予め水中で粉砕する必要がなくなり、水中で粉砕する製造工程をなくすことができるため製造工程が簡易になる。
【0036】
本樹脂組成物を、例えば、ペレット状に成形し、これを溶融して型に流し込み、樹脂成型体にすることができる。
樹脂成型体は、例えば、運搬材料用途、建築・家具材料用途、筐体用途などに好適に用いることができる。
運搬材料用途としては、例えば、パレット、コンテナ、台車、トレー等の搬送材などを挙げることができる。
建築・家具材料用途としては、例えば、内・外壁材、屋根材、タイル、ドア等の住宅用建材や、机や椅子等の家具を挙げることができる。筐体用途としては、例えば、電子機器・家電などの電気製品の筐体、食料品や雑貨等の容器・包装材などを挙げることができる。
【0037】
なお、本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
【実施例0038】
以下、本発明の実施例を説明する。但し、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0039】
(強度評価試験)
以下の各成分を表1に示す適宜割合で配合し、下記の製造方法により実施例1~4、比較例1及び2の樹脂組成物を作製した。
【0040】
<植物抽出残渣>
植物抽出残渣として、商品名「健康ミネラルむぎ茶」(株式会社伊藤園製)の製造における抽出残渣である麦茶殻を用いた。この麦茶殻の含水率は75質量%、でんぷん質割合は乾燥固形分量で30質量%であった。含水率は、赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所)で測定し、でんぷん質割合は、総澱粉量分析キット(AA/AMG)(メガザイム社製)で測定した。
【0041】
<植物由来繊維>
植物由来繊維として、パルプ(株式会社PT TEL製)をミキサーで7mm以下に粉砕したパルプ粉砕物を用いた。このパルプの含水率は7.5質量%であった。含水率は、赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所)で測定した。
【0042】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン樹脂(サンアロマー株式会社製)を用いた。
【0043】
<製造方法>
植物抽出残渣、植物由来樹脂及び熱可塑性樹脂を表1に示された配合割合にし、これを、内部を120℃に設定したニーダーミキサー(株式会社トーシン製)に投入して混合しながら粉砕乾燥させた後、混合時の熱により熱可塑性樹脂を溶融させてもち状にして練り上げた。
練り上げたものを二軸押出機のホッパーに投入し、練りながらノズルから針金状に押し出し、切断してペレット状の樹脂組成物を製造した。
この樹脂組成物を180℃で溶融して型に流し込み、ダンベルの形状の試験片を作製した。
なお、比較例1は成型できなかった。
【0044】
<曲げ弾性率測定>
実施例1~4、比較例2の樹脂組成物の試験片を用いて、JISK7171に準拠し、曲げ弾性率を測定した。
曲げ弾性率の測定結果から以下の5段階の指標にて強度の評価を行った。その結果を表1に示す。なお、参考例1は熱可塑性樹脂のみの場合の曲げ弾性率を示す。
1:曲げ弾性率が929以下、または測定不可
2:曲げ弾性率が930~939
3:曲げ弾性率が940~949
4:曲げ弾性率が950~959
5:曲げ弾性率が960以上
【0045】
【0046】
(強度評価試験の結果)
強度評価試験の結果から、実施例1~4は、強度の評価が3以上であり良好になることが見出せた。これらは植物抽出残渣の配合割合が2~20質量%、植物由来繊維の配合割合が5~20質量%であり、この範囲の配合割合が好適であることが分かった。強度評価試験で、評価が高かったのは、実施例2,3であった。
【0047】
(総合評価試験)
実施例2における各成分の配合割合を固定して、含水率、樹脂組成物中のでんぷん質割合、植物抽出残渣の種類を変化させて実施例5~15を作製し、樹脂組成物の総合評価試験を行った。
【0048】
(含水率変更)
実施例2で用いた麦茶殻の含水率を表2に示す割合に変更し、実施例5~9を作製した。麦茶殻の含水率は、赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所)で測定し、また、熱風乾燥機により、水分を蒸発させて含水率を変更させた。
【0049】
(でんぷん質割合変更)
樹脂組成物中のでんぷん質が表2に示す割合になるように、実施例2で用いた麦茶殻のでんぷん質割合を変更し、実施例10~13を作製した。麦茶殻のでんぷん質割合は、総澱粉量分析キット(AA/AMG)(メガザイム社製)を用いて測定した。また、麦茶殻の部位の変更や「でんぷん,とうもろこし由来」(富士フイルム和光純薬株式会社製)の添加によりでんぷん質割合を変更させた。
【0050】
(植物抽出残渣変更)
実施例2で用いた麦茶殻を、商品名「お~いお茶 緑茶」(株式会社伊藤園製)の製造における抽出残渣である緑茶殻に変更して、実施例14,15を作製した。この緑茶殻の含水率は75質量%であった。また、樹脂組成物中のでんぷん質割合は表2に示すとおりである。なお、でんぷん質割合は「でんぷん,とうもろこし由来」(富士フイルム和光純薬株式会社製)の添加により変更させた。
【0051】
(総合評価)
実施例5~15の総合評価として「成型性」、「樹脂組成物の均一性」、「耐光性(色抜け)」を評価した。
【0052】
<成型性>
成型性は、樹脂組成物を厚さ5mmの平板状の型に流し込み、10cm四方にカットした断片に生じたダマの数を目視にて確認し、以下の指標で評価をした。
1:参考例1よりも非常に悪い(10個以上)
2:参考例1よりも悪い(5~9個)
3:参考例1よりもやや悪い(1~4個)
4:参考例1と同等または良い(ダマが形成しない)
【0053】
<樹脂組成物の均一性>
樹脂組成物の均一性は、樹脂組成物を厚さ5mmの平板状の型に流し込み、10cm四方にカットした断片に生じたムラの数を目視にて確認し、以下の指標で評価をした。
1:参考例1よりも非常に悪い(10個以上)
2:参考例1よりも悪い(5~9個)
3:参考例1よりもやや悪い(1~4個)
4:参考例1と同等または良い(ムラが形成しない)
【0054】
<耐光性(色抜け)>
耐光性(色抜け)は、10000ルクス連続照射下にて14日間保管後に、目視にて、以下の指標で評価をした。
1:製造直後と比較して非常に色が抜け落ちている
2:製造直後と比較して色が抜け落ちている
3:製造直後と比較してやや色が抜けている
4:製造直後と同等または色抜けしていない
【0055】
【0056】
(総合評価試験の結果)
強度の点数に、成型性、樹脂組成物の均一性、耐光性の各評価結果の点数を合算して、合計を算出した。
実施例5~15は、いずれも強度はあり、実用上は問題ないものであるが、含水率の低い実施例5又は含水率の高い実施例9は、成型性が他よりも劣るものであった。この観点から、植物抽出残渣の含水率は50~85質量%が好ましいといえる。
また、でんぷん質割合の低い実施例10又はでんぷん質割合の高い実施例13は、樹脂組成物の均一性が他よりも劣るものであった。この観点から、樹脂組成物中のでんぷん質割合が0.2~15質量%であるのが好ましいといえる。
緑茶殻を使用した実施例14,15は、耐光性が麦茶殻よりも劣るものであった。
【0057】
(分散向上剤の添加)
実施例2における熱可塑性樹脂の配合割合を75質量%に変更し、分散向上剤である炭酸カルシウム(株式会社カルファイン製)を10質量%になるように添加した。
【0058】
(分散向上剤の添加の結果)
樹脂の配合割合の変更・分散向上剤の添加の結果、強度が960以上であり、分散向上剤を添加した場合においても強度は良好であった。