(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096636
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】錠
(51)【国際特許分類】
E05C 3/04 20060101AFI20230630BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20230630BHJP
E05B 65/08 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
E05C3/04 C
E05C3/04 J
E05B47/00 J
E05B65/08 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212527
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼畠 浩史
(57)【要約】
【課題】一定の操作力で容易に操作できる錠を提供する。
【解決手段】固定部2と、固定部2に移動可能に支持され受け部材に引っ掛け可能なフック部4と、固定部2に回転軸線31回りに回転可能に支持される回転部5と、回転部5の回転軸線31回りの回転力が伝達され回転力をフック部4に伝達する回転力伝達部6とを有し、回転部5は回転力伝達部6に接触してフック部4が回転方向に回転するように回転力を伝達する回転カム曲線部531,532と、回転力伝達部6に接触してフック部4が横方向に移動するように回転力を伝達する直線移動カム曲線部533,534とを有し、回転部5が回転すると回転カム曲線部531,532および回転力伝達部6によってフック部4を回転方向に回転させる動作、および、直線移動カム曲線部533,534および回転力伝達部6によってフック部4を直線方向に移動させる動作のいずれか一方の動作を行った後に他方の動作を行う。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの部材の一方に設けられる固定部と、
前記固定部に移動可能に支持され前記2つの部材の他方に引っ掛け可能なフック部と、
前記固定部に回転軸線回りに回転可能に支持される回転部と、
前記回転部の前記回転軸線回りの回転力が伝達され、前記回転力を前記フック部に伝達する回転力伝達部と、を有し、
前記回転部は、
前記回転力伝達部に接触して前記フック部が回転方向に回転するように前記回転力を伝達する回転カム曲線部と、
前記回転力伝達部に接触して前記フック部が前記2つの部材が近接および離反する直線方向に移動するように前記回転力を伝達する直線移動カム曲線部と、を有し、
前記回転部が回転すると、前記回転カム曲線部および前記回転力伝達部によって前記フック部を前記回転方向に回転させる動作、および、前記直線移動カム曲線部および前記回転力伝達部によって前記フック部を前記直線方向に移動させる動作、のいずれか一方の動作を行った後に他方の動作を行う錠。
【請求項2】
前記回転部には、前記回転力伝達部が挿入されるカム溝部が形成され、
前記回転カム曲線部および前記直線移動カム曲線部は、前記カム溝部の縁部に設けられている請求項1に記載の錠。
【請求項3】
前記回転部は、
前記回転方向の一方側に回転するときに前記フック部が前記回転方向の一方側に回転するように前記回転力を前記回転力伝達部に伝達する第1回転カム曲線部と、
前記回転方向の他方側に回転するときに前記フック部が前記回転方向の他方側に回転するように前記回転力を前記回転力伝達部に伝達する第2回転カム曲線部と、
前記回転方向の一方側に回転するときに前記フック部が前記2つの部材が前記直線方向の一方側に移動するように前記回転力を前記回転力伝達部に伝達する第1直線移動カム曲線部と、
前記回転方向の他方側に回転するときに前記フック部が前記2つの部材が前記直線方向の他方側に移動するように前記回転力を前記回転力伝達部に伝達する第2直線移動カム曲線部と、
を有し、
前記第1回転カム曲線部、前記第1直線移動カム曲線部、前記第2回転カム曲線部および前記第2直線移動カム曲線部は、同一の前記カム溝部の縁部に設けられている請求項2に記載の錠。
【請求項4】
前記固定部に設けられ前記フック部の移動をガイドするガイド部と、
前記フック部に設けられ前記ガイド部にガイドされる被ガイド部と、を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の錠。
【請求項5】
前記ガイド部および前記被ガイド部のいずれか一方は、他方側に突出する凸部であり、
他方は、前記凸部が挿入されるガイド溝部である請求項4に記載の錠。
【請求項6】
前記回転力伝達部を複数有し、
前記回転部には、複数の前記回転力伝達部それぞれに対応する前記回転カム曲線部および前記直線移動カム曲線部を有する請求項1から5のいずれか一項に記載の錠。
【請求項7】
前記回転力伝達部は、前記固定部に移動可能に支持され、前記フック部に形成された孔部に挿入されている請求項1から6のいずれか一項に記載の錠。
【請求項8】
前記回転部には、前記回転方向の外力が伝達される歯部が設けられている請求項1から7のいずれか一項に記載の錠。
【請求項9】
前記回転部には、前記回転方向の外力を伝達する部材が挿入される孔部が設けられている請求項1から7のいずれか一項に記載の錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、錠に関する。
【背景技術】
【0002】
サッシに設けられるクレセント錠やグレモン錠など、サッシ枠および框の一方に取り付けられ他方を固定しつつ引き寄せる錠が知られている。このような錠には、固定と引き寄せとを同時に行う場合と、固定の後に引き寄せを行う場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固定と引き寄せとを同時に行う錠は、サッシの建付けによって固定および引き寄せに必要となる操作力にバラつきが生じることがある。特許文献1に開示された錠は、固定の後に引き寄せを行っているが、解錠を行う際に施錠状態を維持するための爪を押し下げるためのピンを操作する必要があり操作性が良くない。
【0005】
本開示は、一定の操作力で容易に操作できる錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る錠は、2つの部材の一方に設けられる固定部と、前記固定部に移動可能に支持され前記2つの部材の他方に引っ掛け可能なフック部と、前記固定部に回転軸線回りの回転方向に回転可能に支持される回転部と、前記回転部の前記回転軸線回りの回転力が伝達され、前記回転力を前記フック部に伝達する回転力伝達部と、を有し、前記回転部は、前記回転力伝達部に接触して前記フック部が前記回転方向に回転するように前記回転力を伝達する回転カム曲線部と、前記回転力伝達部に接触して前記フック部が前記2つの部材が近接および離反する直線方向に移動するように前記回転力を伝達する直線移動カム曲線部と、を有し、前記回転カム曲線部および前記直線移動カム曲線部のいずれか一方によって前記回転力伝達部に前記回転力を伝達した後に、他方によって前記回転力伝達部に前記回転力を伝達する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】サッシに取り付けられた錠の解錠状態の斜視図である。
【
図2】サッシに取り付けられた錠の施錠状態の斜視図である。
【
図3】サッシに取り付けられた錠の引き寄せ完了状態の斜視図である。
【
図15】サムターン錠に採用された錠の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1から
図3に示す錠1は、例えば、サッシに設けられるクレセント錠やグレモン錠などである。錠1は、障子の框12に取り付けられ、サッシ枠13に取り付けられた受け部材14に引っ掛けられることで障子の開閉を拘束する。錠1は、
図2に示す受け部材14に引っ掛けられた状態で、
図3に示すように、障子の框12とサッシ枠13とを引き寄せることが可能である。框12は、特許請求の範囲の2つの部材の一方に対応する。サッシ枠13は、特許請求の範囲の2つの部材の他方に対応する。
【0009】
錠1は、固定部2と、回転軸部3と、フック部4と、回転部5と、回転力伝達部6と、を有する。固定部2は、台座15を介して框12に固定される。回転軸部3は、固定部2に取り付けられる。フック部4は、固定部2に移動可能に支持され、受け部材14に引っ掛け可能である。回転部5は、固定部2に取り付けられた回転軸部3に回転軸線31回りに回転可能に支持される。回転力伝達部6は、回転部5の回転軸線31回りの回転力が伝達され、回転力をフック部4に伝達する。回転力伝達部6は、ピンである。
図4に示すように、回転部5は、モータ7の動力によって回転させてもよい。回転部5の外周部には、モータの回転を回転軸線31回りの回転に変換するラック部55が設けられている。ラック部55は、特許請求の範囲の歯部に対応する。
【0010】
図5、
図6に示すように、固定部2、フック部4および回転部5は、この順番に重なって配置される。固定部2、フック部4および回転部5が重なる方向を厚さ方向と表記する。回転軸部3および回転力伝達部6の軸線は、それぞれ厚さ方向に延びている。厚さ方向を軸線方向と表記することもある。閉鎖時の障子の框12とサッシ枠13とが対向する方向を横方向と表記する。横方向と厚さ方向とは直交している。横方向および厚さ方向に直交する方向を縦方向と表記する。障子が開口部を閉鎖した状態となると、
図1から
図3に示すサッシ枠13に取り付けられた受け部材14と、錠1とは、横方向に対向する。回転軸部3の回転軸線31回りの方向を回転方向と表記することがある。図面では、厚さ方向を矢印Z、縦方向を矢印Y、横方向を矢印X、回転方向を矢印Aで示す。
【0011】
図5-
図7に示すように、固定部2は、平板状である。固定部2は、厚さ方向Zを向く姿勢に配置される。固定部2の外形は、外周部分に2つの切り欠き部21が形成された円形である。固定部2の中央には、厚さ方向Zに板面を貫通する固定孔部22が形成されている。固定孔部22には、回転軸部3が挿通される。固定部2には、フック部4の移動をガイドする第1ガイド溝部23および第2ガイド溝部24が設けられている。第2ガイド溝部24は、特許請求の範囲のガイド部に対応する。第1ガイド溝部23および第2ガイド溝部24は、固定部2を厚さ方向Zに貫通している。
【0012】
図7に示すように、第1ガイド溝部23は、固定部2の中央を中心とする中心角が90°の円弧状の第1円弧部231と、第1円弧部231の一方の端部から固定部2の外周側に径方向に延びる第1直線部232と、を有する。第1ガイド溝部23における第1円弧部231の第1直線部232と接続される部分を切り替え位置23cと表記する。第1円弧部231における切り替え位置23cと反対側の端部を第1端部23aと表記する。第1直線部232における切り替え位置23cと反対側の端部を第2端部23bと表記する。
【0013】
第2ガイド溝部24は、固定部2の中央を中心とする中心角が90°の円弧状の第2円弧部241と、第2円弧部241の一方の端部から固定部2の中心側に径方向に延びる第2直線部242と、を有する。第2ガイド溝部24における第2円弧部241の第2直線部242と接続される部分を切り替え位置24cと表記する。第2円弧部241における切り替え位置24cと反対側の端部を第1端部24aと表記する。第2直線部242における切り替え位置24cと反対側の端部を第2端部24bと表記する。
【0014】
第1ガイド溝部23の第1端部23aと第2ガイド溝部24の第1端部24aとは、固定部2の中心を通り縦方向Yに延びる同一直線上に配置される。第1直線部232と第2直線部242とは、固定部2の中心を通り横方向Xに延びる同一直線上に配置される。第1ガイド溝部23の切り替え位置23c、第2端部23b、第2ガイド溝部24の切り替え位置24c、第2端部24bは、固定部2の中心を通り横方向Xに延びる同一直線上に配置される。第1ガイド溝部23には、回転力伝達部6が挿入される。第2ガイド溝部24には、フック部4の被ガイド部43が挿入される。
【0015】
図4、
図5、
図8および
図9に示すように、フック部4は、平板状のフック板部41と、フック板部41から突出し受け部材14(
図1から
図3参照)に引っ掛けられる引っ掛け部42と、フック板部41から突出し第2ガイド溝部24に導入される被ガイド部43と、を有する。フック部4は、フック板部41が厚さ方向Zを向く姿勢に配置される。引っ掛け部42は、フック板部41の外縁部の一部から厚さ方向Zの一方側で、回転部5と重なる側に突出している。被ガイド部43は、フック部4から厚さ方向Zの他方側で、固定部2と重なる側に突出している。被ガイド部43は、第2ガイド溝部24に挿入される。
【0016】
図6および
図9に示すように、フック板部41には、中央部に、長孔部44が形成されている。長孔部44には、回転軸部3が挿入される。長孔部44が延びる方向を長さ方向と表記し、長さ方向に直交する方向を幅方向と表記する。長孔部44の長さ方向の寸法は、回転軸部3の径よりも大きい。長孔部44の幅方向の寸法は、回転軸部3の径と略同じである。長孔部44に挿入された回転軸部3は、長孔部44の長さ方向に移動できる。
【0017】
フック板部41には、長孔部44の長さ方向の一方側の端部から外縁部側に離れた位置に、フック孔部45が形成されている。フック孔部45には、回転力伝達部6が挿入される。フック孔部45の径は、回転力伝達部6の径と略同じである。被ガイド部43は、長孔部44の長さ方向の他方側の端部から外縁部側に離れた位置に配置される。長孔部44、フック孔部45および被ガイド部43は、長孔部44の中心を通り長孔部44の長さ方向に延びる同一直線上に配置される。長孔部44は、フック孔部45とガイド部に挟まれた位置に配置されている、長孔部44のうちのフック孔部45側の端部を第1端部44aと表記し、被ガイド部43側の端部を第2端部44bと表記する。
【0018】
図5、
図6および
図10に示すように、回転部5は、平板状の部材である。回転部5の板面は、円から中心を含まない一部を切除した形状である。回転部5は、上記の円の中心となる位置に回転孔部51が形成されている。回転孔部51には、回転軸部3が挿入される。回転孔部51の径は、回転軸部3の径と略同じである。回転孔部51の中心は、回転軸線31が貫通する。回転部5は、上記の円の外周部となる部分にラック部55が設けられている。回転部5の説明では、回転軸線31から放射状に延びる方向を径方向と表記し、径方向のうち回転軸線31に向かう側を内側と表記し、回転軸線31から離れる側を外側と表記する。
【0019】
回転部5には、径方向の間に、回転部5の板面を貫通する溝部52が形成されている。溝部52は、回転孔部51を囲む方向に延びるに曲線状に延びている。溝部52は回転部5の外周部側に張り出すように湾曲している。溝部52には、回転力伝達部6が挿入される。溝部52は、回転軸線31を中心とする円弧とは異なる曲線状に延びるカム溝部53と、回転軸線31を中心とする円弧状に延びる円弧溝部54と、を有する。カム溝部53が回転軸線31を中心とする周方向の一方側に位置し、円弧溝部54が他方側に位置している。カム溝部53と、円弧溝部54とは接続されている。溝部52におけるカム溝部53と円弧溝部54とが接続されている部分を接続位置52cと表記する。溝部52におけるカム溝部53の接続位置52cと反対側の端部を第1端部52aと表記し、円弧溝部54の接続位置52cと反対側の端部を第2端部52bと表記する。
【0020】
カム溝部53は、接続位置52cから第1端部52aに向かって漸次径方向内側に向かう曲線状に延びている。カム溝部53の第1端部52aの内縁部52dは、回転力伝達部6の外形に相当する円弧状に形成されている。カム溝部53の第1端部52aの内縁部52dのうち、径方向外側の部分を第1回転カム曲線部531と表記し、径方向内側の部分を第2回転カム曲線部532と表記する。カム溝部53の内縁部うちの径方向内側で第2回転カム曲線部532と隣接しする部分を第1直線移動カム曲線部533と表記し、径方向外側で第1回転カム曲線部531と隣接する部分を第2直線移動カム曲線部534と表記する。第1回転カム曲線部531および第2回転カム曲線部532は、特許請求の範囲の回転カム曲線部に対応する。第1直線移動カム曲線部533および第2直線移動カム曲線部534は、特許請求の範囲の直線移動カム曲線部に対応する。
【0021】
固定部2、フック部4および回転部5が厚さ方向Zに重なって配置されると、固定孔部22、フック部4の長孔部44、回転孔部51が厚さ方向Zに重なり、これらの孔部に回転軸部3が挿入される。固定部2および回転軸部3は、それぞれ台座15に固定されている。固定部2は、回転軸線31回りに回転しない。フック部4は、回転軸部3の回転軸線31回りに回転可能であるとともに、回転軸部3に対して長孔部44の長さ範囲の移動が可能である。回転部5は、回転軸線31回りに回転可能である。
【0022】
固定部2、フック部4および回転部5が厚さ方向Zに重なって配置されると、第1ガイド溝部23、フック孔部45、カム溝部53が厚さ方向Zに重なり、これらの孔部に回転力伝達部6が挿入される。回転力伝達部6は、台座15に移動可能に支持されている。固定部2と回転力伝達部6とは、第1ガイド溝部23の長さ範囲で相対移動が可能である。フック部4は、回転力伝達部6の軸線回りに回転可能である。回転部5と回転力伝達部6とは、カム溝部53の内側の領域の範囲で相対移動が可能である。
【0023】
固定部2およびフック部4が厚さ方向Zに重なって配置されると、フック部4の被ガイド部43が固定部2の第2ガイド溝部24に挿入される。フック部4は、固定部2に対して第2ガイド溝部24の長さ範囲で移動可能である。
【0024】
図1および
図11に示すように、錠1が障子とサッシ枠13との拘束を解除した解錠状態では、フック部4の引っ掛け部42が縦方向Yの一方側に位置し、受け部材14とは離れている。
図11から
図14では、回転軸部3および回転力伝達部6をハッチングで示している。解錠状態では、回転力伝達部6が第1ガイド溝部23の第1端部23aに配置される。フック部4の被ガイド部43は、第2ガイド溝部24の第1端部24aに配置される。フック部4の長孔部44は、その長さ方向が縦方向Yとなっている。フック部4の長孔部44には、第1端部44aに回転軸部3が配置される。回転部5、ラック部55が縦方向Yの他方側に位置する。回転力伝達部6は、カム溝部53の第1端部52aに配置される。
【0025】
解錠状態から回転部5が回転方向の一方側(
図11の矢印A1の方向)に回転すると、解錠状態から回転部5が90°回転するまで、回転力伝達部6が回転部5のカム溝部53の第1回転カム曲線部531に押されて、回転部5とともに回転軸線31回りに回転する。回転力伝達部6は、第1ガイド溝部23の第1端部23aから切り替え位置23cまで移動する。
図2および
図12に示すように、回転力伝達部6の回転とともにフック部4も回転軸線31回りに90°回転する。フック部4が90°回転すると、フック部4の引っ掛け部42が受け部材14に引っ掛けられる。回転部5が施錠状態から90°回転してフック部4の引っ掛け部42が受け部材14に引っ掛けられた状態を施錠状態と表記する。フック部4が解錠状態から90°回転すると、フック部4の被ガイド部43も第2ガイド溝部24の第1端部24aから切り替え位置24cまで移動する。フック部4の長孔部44は、その長さ方向が横方向Xとなっている。フック部4の長孔部44には、第1端部44aに回転軸部3が配置される。
【0026】
施錠状態から回転部5が更に回転方向の一方側に回転すると、施錠状態から回転部5が45°回転するまで、回転力伝達部6が回転部5のカム溝部53の第1直線移動カム曲線部533に縦方向Yの一方側かつ横方向Xの一方側に押される。回転力伝達部6は、第1ガイド溝部23の切り替え位置に配置され、縦方向Yの一方側が第1ガイド溝部23の第1直線部232の縁部232aに接触しているため、この縁部232aに沿って横方向Xの一方側に移動する。回転力伝達部6が横方向Xの一方側に移動すると、フック部4も横方向Xの一方側に移動する。フック部4が横方向Xの一方側に移動すると、長孔部44が横方向Xの一方側に移動し、
図13に示すように、長孔部44の第2端部44bに回転軸部3が配置される。フック部4の被ガイド部43も横方向Xの一方側に移動し、第2ガイド溝部24の第2端部24bに配置される。回転力伝達部6は、カム溝部53を移動し、カム溝部53と円弧溝部54との接続位置52cに配置される。フック部4が横方向Xの一方側に移動することによって、引っ掛け部42が引っ掛けられた受け部材14と固定部2とが近づき、障子の框12とサッシ枠13とが引き寄せられる。施錠状態から回転部5が45°回転し障子の框12とサッシ枠13とが引き寄せられた状態を引き寄せ完了状態と表記する。
【0027】
回転部5は、引き寄せ完了状態から更に回転方向の一方側に45°回転可能である。回転力伝達部6は、カム溝部53と円弧溝部54との接続位置52cに配置されているため、回転部5が回転しても回転方向に延びる円弧溝部54に配置され、回転部5のみが回転する。回転力伝達部6は、回転部5とともに回転軸線31回りに回転せず、フック部4も移動しない。
図3および
図14に示すように、回転部5の溝部52の第2端部52bの位置に回転力伝達部6が配置されると、回転部5の回転が停止する。回転部5の回転が停止した状態を施錠完了状態と表記する。
【0028】
施錠完了状態から解錠する場合には、回転部5を施錠する場合と反対側(図の矢印A2の方向)に回転させる。
図14に示す回転部5が施錠完了状態から
図13に示す引き寄せ完了状態の位置まで回転する間は、回転力伝達部6が円弧溝部54に配置されているため、回転部5の回転力が回転力伝達部6に伝達しない。回転部5が引き寄せ完了状態となる位置まで回転すると、カム溝部53の接続位置52cに回転力伝達部6が配置される。
【0029】
更に回転部5を回転させると、回転力伝達部6はカム溝部53の第2直線移動カム曲線部534に横方向Xの他方側かつ縦方向Yの他方側に向かって押される。回転力伝達部6は、第1ガイド溝部23の第2端部23bに位置し、縦方向Yの他方側に第1直線部232の縁部232bが接触している。回転力伝達部6は、縦方向Yの他方側への移動が拘束され、縁部232bに沿って横方向Xの他方側に移動する。回転力伝達部6が横方向Xの他方側に移動することによって、
図12に示すように、フック部4が横方向Xの他方側に移動する。フック部4が横方向Xの他方側に移動することによって、フック部4による框12とサッシ枠13との引き寄せが解除される。回転力伝達部6は、カム溝部53の第1端部52aに配置される。
【0030】
更に回転部5を回転させると、回転力伝達部6はカム溝部53の第2回転カム曲線部532に押されて回転部5とともに回転軸線31回りに回転する。フック部4も回転し、引っ掛け部42が受け部材14から離れ解錠状態となる。
【0031】
錠1は、施錠を行う際には、第1回転カム曲線部531および回転力伝達部6によってフック部4を回転させて施錠を行い、その後に、第1直線移動カム曲線部533および回転力伝達部6によってフック部4を横方向Xに移動させて引き寄せを行う。錠1は、解錠を行う際には、第2直線移動カム曲線部534および回転力伝達部6によってフック部4を横方向Xに移動させて引き寄せを解除し、第2回転カム曲線部532および回転力伝達部6によってフック部4を回転させて解錠を行う。フック部4を回転させる動作およびフック部4を引き寄せる動作それぞれが時間差で別々に行われるため、各動作を確実に行うことができる。回転部5の回転力による一定の操作力でフック部4の回転および引き寄せを行うことができるため、回転部5を回転させる動力として電動モータ等の電力を採用しやすい。回転部5を回転させる動作のみでフック部4の回転および引き寄せを行うことができるため、操作が容易である。
【0032】
第1回転カム曲線部531、第1直線移動カム曲線部533、第2回転カム曲線部532および第2直線移動カム曲線部534は、回転力伝達部6が挿入される同一の溝部52の縁部に設けられている。これらのカム曲線部を回転部5の外周部に設けたり、異なる溝部52に設けたりする場合と比べて、回転部5の外形を小型化および単純化できる。
【0033】
固定部2には、第2ガイド溝部24が設けられている。フック部4には、第2ガイド溝部24にガイドされる被ガイド部43が設けられている。第2ガイド溝部24に沿って被ガイド部43が移動することによって、フック部4の移動がガイドされ、フック部4が正しい方向に確実に移動できる。
【0034】
被ガイド部43は、第2ガイド溝部24に挿入される凸部である。フック部4の移動をガイドする機構を簡便な構造で実現できる。
【0035】
回転力伝達部6は、固定部2に移動可能に支持され、フック部4に形成されたフック孔部45に挿入されたピンである。回転部5の回転力をフック部4に伝達する回転力伝達部6を簡便な構造で実現できる。
【0036】
回転部5には、回転方向の外力が伝達されるラック部55が設けられている。ラック部55と噛み合う螺子などをモータで回転させることによって、回転部5の回転を電動で行える。
【0037】
本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、第1回転カム曲線部531、第1直線移動カム曲線部533、第2回転カム曲線部532および第2直線移動カム曲線部534は、回転部5の外周部に設けられていてもよい。施錠時と解錠時で同一の回転カム曲線部および直線移動カム曲線部を使用してもよい。カム溝部53に接続する円弧溝部54は、設けられていなくてもよい。円弧溝部54の長さを調整して、引き寄せ完了状態となった後の回転部5の回転量を調整してもよい。解錠状態から施錠状態、施錠状態から引き寄せ完了状態とするための回転部5の回転角度は適宜設定されてよい。
【0038】
固定部2に第2ガイド溝部24が設けられ、フック部4に第2ガイド溝部24に挿入される凸部状の被ガイド部43が設けられている。固定部2に凸部状のガイド部が設けられ、フック部4にガイド部が挿入される被ガイド部43が設けられていてもよい。第1ガイド溝部23の第1円弧部231および第1直線部232の形状や長さ寸法は、適宜設定されてよい。第2ガイド溝部24の第2円弧部241および第2直線部242の形状や長さ寸法は、適宜設定されてよい。第1ガイド溝部23や第2ガイド溝部24の形状は、回転部5およびフック部4が回転する角度や、移動する移動量などに応じて適宜設定されてよい。回転部5およびフック部4が回転する角度や、移動する移動量は、適宜設定されてよい。第1ガイド溝部23および第2ガイド溝部24の配置は、適宜設定されてよい。フック部4の移動をガイドするためのガイド部および被ガイド部は、設けられていなくてもよいし、複数設けられていてもよい。
【0039】
回転力伝達部6が複数設けられ、回転部5に複数の回転力伝達部6それぞれに対応するカム溝部53が設けられ、固定部2に複数の回転力伝達部6それぞれに対応する第1ガイド溝部23が設けられ、フック部4に複数の回転力伝達部6それぞれが挿入されるフック孔部45が設けられていてもよい。このようにすることによって、回転部5の回転が複数の回転力伝達部を介して確実かつ安定してフック部4に伝達される。固定部2の第1ガイド溝部23および第2ガイド溝部24の両方に、それぞれ回転力伝達部6が挿入されるようにしてもよい。
【0040】
回転力伝達部6は、固定部2に移動可能に支持され、フック部4に形成されたフック孔部45に挿入されたピンである。回転力伝達部6は、円柱状や円筒状の部材であってもよいし、外周に段部が形成された円柱状や円筒状の部材であってもよいし、これら以外であってもよい。回転力伝達部6は、フック部4と一体に設けられていてもよい。
【0041】
回転部5には、ラック部55が設けられず、モータ以外の動力が人力で回転するようにしてもよい。
図15に示すように、サムターン錠16のつまみ17が回転部5に取り付けられていてもよい。回転部5に回転方向の外力を伝達する部材が挿入される孔部が設けられていてもよい。
【0042】
固定部2、フック部4および回転部5のそれぞれの形状や、互いの配置や、重なる順番は、上記以外であってもよく、適宜設定されてよい。固定部2は、回転軸部3が挿通される固定孔部22に代わって回転軸部3が挿入される凹部が形成されていてもよい。
【0043】
錠1は、サッシの框12や枠以外に採用されてもよい。サッシの内障子と外障子とを施解錠する錠1に採用されてもよい。サッシ以外に設けられる錠1に採用されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1錠 2固定部 4フック部 5回転部 6回転力伝達部 11錠 14部材 31回転軸線 43被ガイド部 52溝部 53カム溝部 55ラック部 531第1回転カム曲線部 532第2回転カム曲線部 533第1直線移動カム曲線部 534第2直線移動カム曲線部