(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096637
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】コネクタ、プリント基板、および電動モータモジュール
(51)【国際特許分類】
H01R 12/58 20110101AFI20230630BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H01R12/58
H01R13/11 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212528
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝幸
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB03
5E223AB17
5E223AB25
5E223AB76
5E223AC04
5E223AC23
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223BB12
5E223CB03
5E223CB22
5E223CB27
5E223CB31
5E223CB38
5E223CD01
5E223CD15
5E223DB01
5E223DB08
5E223DB13
(57)【要約】
【課題】位置や角度のズレを許容し、端子の変形や電気的接合部の破損の恐れを低減する。
【解決手段】回路が設けられたプリント基板上に設けられ、回路と相手端子を電気的に接続する導電性の板より形成されたコネクタ200を提供する。コネクタ200は、プリント基板に設けられた穴に挿入する複数の突起(211~213)を一端に有する基板取付部210と、基板取付部の他端の一部から、プリント基板から離れる方へ延在し、途中で屈曲してプリント基板に近づく方へ延在する立設部220と、立設部の端部からプリント基板と略平行に、基板取付部と対向するように延在する対向部230と、対向部の端部と下部で接続され、プリント基板の基板面に対して垂直方向から相手端子を受け入れて挟持し電気的に接続される端子部240と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路が設けられたプリント基板上に設けられ、前記回路と相手端子を電気的に接続する導電性の板より形成されたコネクタであって、
前記プリント基板に設けられた穴に挿入する複数の突起を一端に有する基板取付部と、
前記基板取付部の他端の一部から、前記プリント基板から離れる方へ延在し、途中で屈曲して前記プリント基板に近づく方へ延在する立設部と、
前記立設部の端部から前記プリント基板と略平行に、前記基板取付部と対向するように延在する対向部と、
前記対向部の端部と下部で接続され、前記プリント基板の基板面に対して垂直方向から前記相手端子を受け入れて挟持し電気的に接続される端子部と、
を備えるコネクタ。
【請求項2】
前記端子部の下面は、前記プリント基板の表面に当接していることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記対向部と前記立設部の接続部分の、前記立設部の端部から前記対向部が延在した側の隅に第1切欠き部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記一端に設けられた前記複数の突起は、
前記他端における前記立設部との接続部分から、一方側であって最も遠い位置に設けられた第1突起と、
前記他端における前記立設部との接続部分から、前記一方側であって前記第1突起より近い位置に設けられた第2突起と、
前記他端における前記立設部との接続部分から、他方側に設けられた少なくとも1つの第3突起と、
から構成され、
前記基板取付部と前記立設部の接続部分の、前記一方側の隅に第2切欠き部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のコネクタを搭載するプリント基板であって、
前記第1突起および前記第2突起に対応する位置に第1穴と、前記第3突起に対応する位置に第2穴を備え、
前記第1突起は、前記第1穴に挿入されはんだ付けされると共に前記回路に接続され、
前記第2突起は、前記第1穴に挿入されはんだ付けされ、前記回路には接続されず、
前記第3突起は、前記第2穴に挿入され嵌合し、はんだ付けされない、
ことを特徴とするプリント基板。
【請求項6】
電動モータと、
外部から電力を受け入れ、該電力を前記電動モータに供給する請求項5に記載のプリント基板と、
前記電動モータの動力を出力するギアと、
前記電動モータ、前記プリント基板、および前記ギアを収納する収納部と、
を備え、
前記端子部は、前記電動モータの端子に電気的に接続された、
電動モータモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ、当該コネクタを搭載するプリント基板、および、当該プリント基板を備える電動モータモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両における、パワーウィンドウ、スライドドア、サンルーフ、パワーシートなどを駆動する電動モータモジュールは、駆動源となる電動モータと、それを制御するための電子部品を搭載するプリント基板とが一体的に収容されたECU(Electronic Control Unit)として提供されることが多い。この場合、プリント基板を電動モータの端子に電気的に接続する、プリント基板上のコネクタに関する技術が従来から知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1は、回路基板に取り付けるためのコネクタを開示する。このコネクタは、回路基板に取り付けるためのベースと、ベースから斜め上向きに延びるキャリア領域と、キャリア領域と一方の自由端で接続され、電動モータの平板端子用に上向きに開いたU字型のレセプタクルと、を備える。特にこのキャリア領域により、プリント基板と電動モータとの組み付け時の位置誤差を許容することができる。
【0004】
また、特許文献2は、回路基板に取り付けるためのコネクタを開示する。このコネクタは、電動モータの端子と接続されるインサート本体と、インサート本体と並んで立っている支持部と、支持部とインサート本体の中央にあるU字型の曲がった部分と、支持部の底部から下向きに伸びる長ピンと、インサート本体の底部から下向きに伸びる短ピンと、を備える。長ピンは、プリント基板の穴に挿入されはんだ付けされ、短ピンは、挿入される。これにより、プリント基板と電動モータとの組み付け時の位置誤差を許容することができる。
【0005】
また、特許文献3は、電動モータと、回路基板と、これらが収容されたハウジングを含む電動モータモジュールを開示する。この電動モータモジュールは、電動モータの端子に接続される第1の接点と、回路基板に接続される第2の接点と、これらの接点の間で両者を繋げている中央部とを含む構成要素を備える。この中央部が電動モータに固定されることで、電動モータの組み付け時に負荷される力を第2の接点に及ばないようにできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ国特許明細書第10121430C1号公報
【特許文献2】中華人民共和国特許公開第105870682A号公報
【特許文献3】国際公開2014016093A2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、車載ECUは、電動モータとプリント基板を組み立てる際金属端子による電気的接合が必要となる。しかし、プリント基板は、モータハウジングに対して外観ケースを用いて位置決め固定を行うため、部品同士のバラツキが端子部分に累積して位置ずれを起こし、端子が変形したり、はんだなどの電気的接合部が破損したりする恐れがある。
【0008】
本発明は、電動モータの端子に対するプリント基板上のコネクタの位置や角度のズレを許容し、端子の変形や電気的接合部の破損の恐れを低減するコネクタ、このコネクタを搭載するプリント基板、このプリント基板を備える電動モータモジュールを提供するものである。また、本発明は、高い集積度を要求されるECUのプリント基板上のコネクタの占有面積を小さくする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、回路が設けられたプリント基板上に設けられ、その回路と相手端子を電気的に接続する導電性の板より形成されたコネクタであって、プリント基板に設けられた穴に挿入する複数の突起を一端に有する基板取付部と、基板取付部の他端の一部から、プリント基板から離れる方へ延在し、途中で屈曲してプリント基板に近づく方へ延在する立設部と、立設部の端部からプリント基板とほぼ平行に、基板取付部と対向するように延在する対向部と、対向部の端部と下部で接続され、プリント基板の基板面に対して垂直方向から相手端子を受け入れて挟持し電気的に接続される端子部と、を備えるコネクタが提供される。
これによれば、電動モータの端子が端子部に圧入される際の位置や角度のズレから生じうる力を対向部と立設部を介して基板取付部が受けることで、端子部の位置が電動モータ端子の位置に適合し易くなるとともに、応力が分散されて特定の箇所に負荷される力が小さくなり、よって、電動モータの端子に対するプリント基板上のコネクタの位置や角度のズレを許容し、端子の変形や電気的接合部の破損の恐れを低減するコネクタが提供される。また、応力を吸収できる機構として、プリント基板面方向だけでなく立体的な立設部を設けることで、高い集積度を要求されるECUのプリント基板上のコネクタの占有面積を小さくすることができる。
【0010】
さらに、端子部の下面は、プリント基板の表面に当接していることを特徴としてもよい。
これによれば、端子部の下面がプリント基板の表面に当接していることで、電動モータの端子の端子部への圧入方向の変位が最小化され、端子の変形や電気的接合部の破損の恐れをより低減することができる。
【0011】
さらに、対向部と立設部の接続部分の、立設部の端部から対向部が延在した側の隅に第1切欠き部を有することを特徴としてもよい。
これによれば、対向部において、立設部との接続部分の隅に切欠き部を有することで、応力を吸収する経路が長くなり、ズレを許容し、端子の変形や電気的接合部の破損の恐れをより低減することができる。
【0012】
さらに、一端に設けられた複数の突起は、他端における立設部との接続部分から、一方側であって最も遠い位置に設けられた第1突起と、他端における立設部との接続部分から、一方側であって第1突起より近い位置に設けられた第2突起と、他端における立設部との接続部分から、他方側に設けられた少なくとも1つの第3突起と、から構成され、基板取付部と立設部の接続部分の、一方側の隅に第2切欠き部を有することを特徴としてもよい。
これによれば、基板取付部において、立設部との接続部分の第1突起側の隅に切欠き部を有することで、応力を吸収する経路が長くなり、第1突起の電気的接合部に破損の恐れをより低減することができる。
【0013】
上記課題を解決するために、上記のコネクタを搭載するプリント基板であって、第1突起および第2突起に対応する位置に第1穴と、第3突起に対応する位置に第2穴を備え、第1突起は、第1穴に挿入されはんだ付けされると共に回路に接続され、第2突起は、第1穴に挿入されはんだ付けされ、回路には接続されず、第3突起は、第2穴に挿入され嵌合し、はんだ付けされないことを特徴とするプリント基板が提供される。
これによれば、プリント基板の回路と電気的に接続される第1突起に対して応力がかかり難くい構成とすることで、電動モータの端子に対するプリント基板上のコネクタの位置や角度のズレを許容し、端子の変形や電気的接合部の破損の恐れを低減するプリント基板が提供される。
【0014】
上記課題を解決するために、電動モータと、外部から電力を受け入れ、該電力を電動モータに供給する上記のプリント基板と、電動モータの動力を出力するギアと、電動モータ、プリント基板、およびギアを収納する収納部と、を備え、端子部は、電動モータの端子に電気的に接続された電動モータモジュールが提供される。
これによれば、上記プリント基板を含むことで、電動モータの端子に対するプリント基板上のコネクタの位置や角度のズレを許容し、端子の変形や電気的接合部の破損の恐れを低減する電動モータモジュールが提供される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、電動モータの端子に対するプリント基板上のコネクタの位置や角度のズレを許容し、端子の変形や電気的接合部の破損の恐れを低減するコネクタ、このコネクタを搭載するプリント基板、このプリント基板を備える電動モータモジュールを提供することができる。また、本発明によれば、高い集積度を要求されるECUのプリント基板上のコネクタの占有面積を小さくする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る第一実施例の電動モータモジュールの、(A)斜視図、(B)一部カバーを取り外した状態の斜視図。
【
図2】本発明に係る第一実施例の電動モータモジュール内の電動モータの電極と、プリント基板上のコネクタとの接続部分を含む、(A)電動モータ側から見た斜視図、(B)外部ケーブルコネクタ側から見た斜視図。
【
図3】本発明に係る第一実施例の電動モータモジュール内のプリント基板と、プリント基板上に搭載されたコネクタと、コネクタと接続された電動モータの電極とを示す、(A)外部ケーブルコネクタ側から見た斜視図、(B)電動モータ側から見た斜視図、(C)プリント基板の裏側から見た斜視図。
【
図4】本発明に係る第一実施例の電動モータモジュールのコネクタの、(A)正面図、(B)上面図、(C)底面図、(D)左側面図、(E)右側面図、(F)背面左上方から見た斜視図、(G)正面右上方から見た斜視図。
【
図5】本発明に係る第一実施例の電動モータモジュール内のプリント基板上に搭載されたコネクタを示す、(A)電動モータ側から見た斜視図、(B)外部ケーブルコネクタ側から見た斜視図、(C)プリント基板の裏側から見た斜視図。
【
図6】本発明に係る第一実施例の電動モータモジュール内のプリント基板上に搭載されたコネクタの、位置ズレや回転ズレが生じた電動モータの電極から受ける変形を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る実施例について説明する。
<第一実施例>
図1乃至
図6を参照し、本実施例における電動モータモジュール100、電動モータモジュール100に使用されるコネクタ200、コネクタ200を搭載するプリント基板20を説明する。電動モータモジュール100は、車両に搭載され、パワーウィンドウ、スライドドア、サンルーフ、パワーシートなどを駆動するために使用される。電動モータモジュール100は、これらを駆動する電動モータ10、最終出力軸31を有するギア30、プリント基板20等を内部に一体的に収納してモジュール化されている。電動モータモジュール100は、たとえばパワーウィンドウを駆動するためのものである場合には、ドアの内部に取り付けられ、ウィンドウレギュレータを介してウィンドウガラスを昇降させる。
【0018】
電動モータモジュール100は、駆動源となる電動モータ10と、電動モータ10の回転軸11の軸方向と直交する方向に最終出力軸31の軸方向を変換するギア30と、外部から電力を受け入れるための外部ケーブルコネクタ23およびその電力から電動モータ10を駆動するための電子部品24などを搭載するプリント基板20と、これらを収納する収納部40およびコネクタ収納部50と、を備える。なお、ギア30は、収納部40の内部に収納されており、本明細書における図面には図示されていない。
【0019】
電動モータ10は、回転軸11を有するDCモータであり、ブラシ付き/ブラシレスのいずれであってもよく、特に限定されない。回転軸11にはウォーム(図示せず)が取り付けられ、ギア30を駆動する。電動モータ10は、外部ケーブルからプリント基板20を介して電力の供給を受けるための2つの板状の電極12を有している。ギア30は、ウォームと噛合するウォームホイール(図示せず)と、ウォームホイールの中心に直結された最終出力軸31を有し、回転可能に収納部40に収容される。ウォームホイールは、回転軸11の回転を減速し、高いトルクを最終出力軸31に伝達し、最終出力軸31は、レギュレータを駆動する。
【0020】
収納部40は、電動モータ10とギア30を一体的に収納する。コネクタ収納部50は、プリント基板20に搭載された外部ケーブルコネクタ23の先端を外部ケーブルに接続できるように外部に露出させてプリント基板20を収納する(
図1)。
【0021】
プリント基板20は、外部から電力を受け入れるための外部ケーブルコネクタ23と、その電力から電動モータ10を駆動するための電子部品24と、電極12に接続され駆動電力を電動モータ10に供給するための2つのコネクタ200を搭載し(
図2)、これらを電気的に接続する回路(図示せず)が配線されている。外部ケーブルコネクタ23は、外部ケーブルから電源供給を受け、外部と信号の授受を行うための外部ケーブルと連結可能に構成されている。電子部品24は、コンデンサや半導体などの電気的な部品である。プリント基板20は、コネクタ200を配設するためのスルーホール21およびノンスルーホール22を備える(
図3)。詳細は後述する。
【0022】
コネクタ200は、プリント基板20に設けられた回路と相手端子となる電動モータ10の電極12とを電気的に接続する導電性の板を、打ち抜き加工や曲げ加工を行うことにより形成されている。コネクタ200は、概ね4つの部分から構成されており、基板取付部210、立設部220、対向部230、端子部240から構成される(
図4)。
【0023】
基板取付部210は、コネクタ200がプリント基板20に取り付けられた場合にはプリント基板20に対して平板面をほぼ垂直にして取り付けられる部分である。基板取付部210は、プリント基板20に近い平板面の一端21E1側に4つの突起、すなわち第1突起211、第2突起212、2つの第3突起213を有し、これらがプリント基板20に設けられた穴に挿入されてプリント基板20に取り付けられる。
【0024】
立設部220は、基板取付部210のプリント基板20から遠い方の平板面の他端21E2の中央辺りの一部から、プリント基板20に対してほぼ垂直方向に、すなわちプリント基板20から離れる方へ同じ幅で延在する。さらに、立設部220は、基板取付部210の他端21E2から垂直に延在した部分から途中で180度屈曲してプリント基板20にほぼ垂直に近づく方へ、側面視で基板取付部210の他端21E2とほぼ同じ位置となる端部22E1まで同じ幅で延在している。立設部220の幅は、プリント基板20の基板面と平行な平面における基板取付部210や対向部230の長さに比べて小さい。
【0025】
対向部230は、立設部220の端部22E1から両側にプリント基板20とほぼ平行に接することなく、基板取付部210と対向するように延在している。対向部230の平板面は、基板取付部210の平板面と同様、プリント基板20に対してほぼ垂直である。本実施例では、対向部230は、立設部220の端部22E1から両側に延在しているが、端子部240の方の片側のみに延在していてもよい。対向部230は、プリント基板20の基板面と平行な平面において、基板取付部210よりやや短いがほぼ同じ程度の長さを有し、端子部240の方の片側方向においては上面視や側面視などで第1突起211とほぼ同じ位置の端部23E1まで延在している。
【0026】
端子部240は、電動モータ10の板状の電極12を挟むように音叉形状に形成された挟持部241と挟持部241の下に形成された基部242から構成され、下部にある基部242で対向部230の端部23E1に接続されている。基部242は、対向部230の端部23E1から、対向部230に対して垂直方向にプリント基板20と平行に延在している。基部242の平板面は、プリント基板20に対してほぼ垂直である。挟持部241は、基部242と同じ平板面でプリント基板20から離れる方向に延在し、プリント基板20の基板面に対して垂直方向から電動モータ10の電極12を受け入れて挟持し電気的に接続される。挟持部241が受け入れる板状の電極12の平板面は、基板取付部210および対向部230の平板面とほぼ平行をなす。
【0027】
上記の構成を備えるコネクタ200を有するプリント基板20と電動モータ10を組み立てる際、部品同士のバラツキがコネクタ200と電極12の接合部分に累積して位置ズレや角度ズレを起こす場合がある。
図6は、このようなズレが生じた場合に、コネクタ200がこれらのズレにより発生する応力をどのように吸収して、電気的接合部の破損の恐れを低減するかを示す。矢印に示すように、平板の電極12が端子部240に対して図視での左右ズレ(基板取付部210および対向部230の平板面に対して垂直方向のズレ)や回転ズレ(端子部240の平板面の垂直方向からのズレ)が生じた場合、L字形の点線で示すように、端子部240は電極12のズレに追従して移動し、それに応じて端部23E1で接続された対向部230も移動しようとする。
【0028】
基板取付部210は複数の突起をプリント基板20の穴に挿入されて取り付けられているため移動はしないので、これらの移動を吸収するのは立設部220となる。対向部230は立設部220の端部22E1で支持されているため、端子部240と対向部230のこの移動は、端部22E1を中心とした基板面にほぼ平行な回転移動として現れる。これは、対向部230の端部23E1と立設部220との接続部分である端部22E1との間にある程度の距離があるので端部23E1でモーメントが生じ、立設部220の幅が対向部230の長さに比べて小さいことから、主に立設部220がねじられて生ずる。対向部230の立設部220との接続部分となる端部22E1から端部23E1までの長さ、立設部220の幅や基板取付部210との接続部分から端部22E1までの総延長は、コネクタ200の板厚や弾性などから適宜定められる。無論、コネクタ200は導電性の板から形成されているので、立設部220だけでなく、端子部240、対向部230、基板取付部210でも多少変形し応力が生じている。
【0029】
このように、電動モータ10の電極12が端子部240に圧入される際の位置や角度のズレから生じうる力を対向部230と立設部220を介して基板取付部210が受けることで、端子部240の位置が電動モータ10の電極12の位置に適合し易くなるとともに、応力が分散されて特定の箇所に負荷される力が小さくなる。これにより、電動モータ10の電極12に対するプリント基板20上のコネクタ200の位置や角度のズレを許容し、コネクタ200の変形やプリント基板20との電気的接合部の破損の恐れを低減するコネクタ200が提供される。また、応力を吸収できる機構として、プリント基板面方向だけでなく立体的な立設部220を設けることで、高い集積度を要求されるECUのプリント基板上のコネクタ200の基板面上の占有面積を小さくすることができる。
【0030】
基板取付部210は、平板面の一端21E1側に、プリント基板20の穴に挿入できる板厚と同程度の径を有する第1突起211、第2突起212、2つの第3突起213を備える。第1突起211と第2突起212は、立設部220との接続部分から、対向部230の端部23E1に近づく方すなわち端子部240に近づく方の側に存し、2つの第3突起213は、逆に端子部240から離れる方の側に存する。第1突起211は、立設部220との接続部分から最も遠い位置すなわち基板取付部210のほぼ端に存し、第2突起212は、第1突起211より立設部220との接続部分に近い位置すなわち第1突起211と当該接続部分の間に存する。
【0031】
第1突起211と第2突起212は、プリント基板20に設けられた対応する位置にあるスルーホール21に挿入されてはんだ付けされる(
図3、
図5)。しかし、プリント基板20に設けられた回路に電気的に接続されるのは第1突起211のみであり、第2突起212はスルーホール21にはんだ付けされて強固に固定されるが回路には接続されない。第3突起213は、対応する位置にあるノンスルーホール22に挿入され、緩く嵌るように嵌合し、はんだ付けされない。なお、本実施例では第3突起213は2つあるが、1つであってもよい。
【0032】
基板取付部210の立設部220との接続部分から一方側にある第1突起211と第2突起212はスルーホール21にはんだ付けされ(
図6の21H)、強固に固定されている。一方、当該接続部分から反対方向である他方側にある第3突起213ははんだ付けされず、ノンスルーホール22に緩く嵌った状態であり、立設部220との接続部分から力を受けた場合には多少移動できる状態である。これにより、基板取付部210は、第2突起212と第3突起213の間でわずかに変形できる。立設部220との接続部分から受ける力に対して、基板取付部210において当該接続部分と第2突起212の間に最も大きな応力が発生するが、第2突起212は強固に固定されているが回路には接続されていないため、仮に第2突起212とスルーホール21を固定するはんだが破損されたとしても、その影響はコネクタ200とプリント基板20の間の電気的接続に及ばない。第1突起211とスルーホール21との接合部分は、強固に固定された第2突起212よりもさらに当該接続部分から受ける力から遠い位置に強固に固定されているため破損が起きにくい。
【0033】
このように、プリント基板20の回路と電気的に接続される第1突起211に対して応力がかかり難くい構成とすることで、電動モータ10の電極12に対するプリント基板20上のコネクタ200の位置や角度のズレを許容し、コネクタ200の変形や電気的接合部の破損の恐れを低減するプリント基板20が提供される。
【0034】
なお、本実施例では、第1突起211と第2突起212は、立設部220との接続部分から端子部240に近づく方の側に存し、第3突起213はその逆側に存したが、逆に、第1突起と第2突起は、立設部との接続部分から端子部と反対側の方に存し、第3突起213は当該接続部分から近づく方に存してもよい。この場合でも、第1突起は、立設部との接続部分から最も遠い位置に存し、第2突起は、第1突起と当該接続部分との間に存して強固に固定される。
【0035】
また、基板取付部210は、立設部220との接続部分の近傍であって第1突起211の方へ延在した部分、すなわち当該接続部分の第1突起211側の隅に湾曲状に切り欠いた基板取付部切欠き部214を有することが好ましい。このように、基板取付部210において、立設部220との接続部分の隅に切欠き部214を有することで、電気的接続を有する第1突起211までの応力を吸収する経路が長くなり、ズレを許容し、コネクタ200の変形や電気的接合部の破損の恐れをより低減することができる。なお、第1突起と第2突起が立設部との接続部分から端子部と反対側の方に存する場合、基板取付部切欠き部は、本実施例の基板取付部切欠き部214とは逆の方向、すなわち当該接続部分の第1突起側の隅に形成される。これにより、電気的接続を有する第1突起までの応力を吸収する経路が長くなる。
【0036】
また、対向部230は、立設部220との接続部分の近傍であって端部23E1の方へ延在した部分、すなわち端部22E1から延在した側の隅に湾曲状に切り欠いた対向部切欠き部234を有することが好ましい。このように、対向部230において、立設部220との接続部分の隅に切欠き部234を有することで、応力を吸収する経路が長くなり、ズレを許容し、コネクタ200の変形や電気的接合部の破損の恐れをより低減することができる。
【0037】
また、端子部240の下面となる基部242の下面24E1は、取り付けられた際にはプリント基板20の表面に当接していることが好ましい。端子部240の下面がプリント基板20の表面に当接していることで、電動モータ10の電極12の端子部240への圧入方向の変位が最小化され、コネクタ200の変形や電気的接合部の破損の恐れを低減することができる。
【0038】
上述したように、コネクタ200を搭載したプリント基板20を含む電動モータモジュール100は、電動モータ10の端子(電極12)に対するプリント基板20上のコネクタ200の位置や角度のズレを許容し、コネクタ200の変形や電気的接合部の破損の恐れを低減することができる。
【0039】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0040】
100 電動モータモジュール
10 電動モータ
11 回転軸
12 電極(相手端子)
20 プリント基板
21 スルーホール(第1穴)
21H はんだ付け
22 ノンスルーホール(第2穴)
23 外部ケーブルコネクタ
24 電子部品
30 ギア
31 最終出力軸
40 収納部
50 コネクタ収納部
200 コネクタ
210 基板取付部
211 第1突起
212 第2突起
213 第3突起
214 基板取付部切欠き部(第2切欠き部)
21E1 一端
21E2 他端
220 立設部
22E1 端部
230 対向部
23E1 端部
234 対向部切欠き部(第1切欠き部)
240 端子部
241 挟持部
242 基部
24E1 下面