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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096644
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】中空形状樹脂成型品の固定構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/02 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
E04B5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212538
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】築田 幸祐
(72)【発明者】
【氏名】岡氏 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】北川 武
(72)【発明者】
【氏名】大條 正人
(57)【要約】
【課題】より施工性がよく、より大きな荷重に対応できる中空形状樹脂成型品の固定構造とする。
【解決手段】対向する頂面板11及び底面板14と、頂面板11と底面板14とを結ぶ壁部12,13とを備え、頂面板11、底面板14及び壁部12,13によって両端に開口を有する長手状の中空空間が形成された樹脂成型品10と、頂面板11の内面に当接する頂部23と、底面板14の内面に当接する底部21と、頂部23と底部21とを結ぶ連結部22,24とを備え中空空間に挿入される補強部材20と、底部21及び底面板14を貫通する係止手段とを備え、補強部材20及び係止手段によって、樹脂成型品10とそれを支持する支持部材1とを固定する中空形状樹脂成型品の固定構造とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する頂面板(11)及び底面板(14)と、前記頂面板(11)と前記底面板(14)とを結ぶ壁部(12,13)とを備え、前記頂面板(11)、前記底面板(14)及び前記壁部(12,13)によって両端に開口を有する長手状の中空空間が形成された樹脂成型品(10)と、
前記中空空間に挿入され、前記頂面板(11)の内面に対向する頂部(23)と、前記底面板(14)の内面に対向する底部(21)と、前記頂部(23)と前記底部(21)とを結ぶ連結部(22,24)とを備えた補強部材(20)と、
前記底部(21)及び前記底面板(14)を貫通する係止手段と、
を備え、
前記補強部材(20)及び前記係止手段によって、前記樹脂成型品(10)とそれを支持する支持部材(1)とを固定する中空形状樹脂成型品の固定構造。
【請求項2】
前記補強部材(20)は、前記中空空間の開口側へ向く前記連結部(24)に把持部(31)を備えている請求項1に記載の中空形状樹脂成型品の固定構造。
【請求項3】
前記補強部材(20)は、前記底部(21)に雌ねじ部を備え、前記係止手段は、前記支持部材(1)側から前記雌ねじ部にねじ込まれるボルト(4)である請求項1又は2に記載の中空形状樹脂成型品の固定構造。
【請求項4】
前記雌ねじ部は、前記底部(21)に溶接固定されたナット(25)であり、前記連結部(22,24)又は前記頂部(23)あるいはその両方に前記ナット(25)に臨む開口部(32)を備えている請求項3に記載の中空形状樹脂成型品の固定構造。
【請求項5】
対向する頂面板(11)及び底面板(14)と、前記頂面板(11)と前記底面板(14)とを結ぶ壁部(12,13)とを備え、前記頂面板(11)、前記底面板(14)及び前記壁部(12,13)によって両端に開口を有する長手状の中空空間が形成された樹脂成型品(10)を、それを支持する支持部材(1)に固定するために使用する補強部材(20)であって、
前記補強部材(20)は、前記中空空間に挿入され、前記頂面板(11)の内面に対向する頂部(23)と、前記底面板(14)の内面に対向する底部(21)と、前記頂部(23)と前記底部(21)とを結ぶ連結部(22,24)とを備え、
前記底部(21)は、前記底面板(14)を貫通する係止手段が挿通される孔(26)を備えている中空形状樹脂成型品用の補強部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物や構造物、その他各種設備の床構造を構築するために用いられる中空形状樹脂成型品の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物や構造物、その他各種設備の床構造を構築するために、中空形状樹脂成型品が用いられる場合がある。中空形状樹脂成型品として、両端に開口を有する長手状の中空部を、その長手方向に直交する方向(以下、幅方向と称する)に複数並列して備えたものが一般的である。中空形状樹脂成型品を用いることで、部材の軽量化を図ることができる。
【0003】
例えば、特許文献1では、中空形状樹脂成型品は、それを支持する躯体(梁材)の上に載置されるとともに、両者を貫通するボルト及びナットで締め付けられて、その躯体に固定されている。また、特許文献2では、中空形状樹脂成型品の端部にキャップを挿入して、部材の補強を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-325610号公報
【特許文献2】特開2014-152569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の中空形状樹脂成型品は、それを支持する躯体との固定方法が非効率であるという問題があった。また、ボルト及びナットの締め付けによる固定構造では、想定を超えるような大きな荷重が作用した場合に、樹脂成型品が変形して躯体から脱落する等の問題もあった。
【0006】
特許文献1では、平面視矩形を成す中空形状樹脂成型品の四隅において、隣り合う中空形状樹脂成型品の側面同士をボルトで締結して、躯体への固定を効率化している。しかし、締め付けるボルトの数が多くなると作業が煩雑になり、施工に要する時間も増加するという問題がある。また、より大きな荷重に対抗する措置は講じられていない。
【0007】
特許文献2では、中空形状樹脂成型品の端部の開口にキャップを取り付けることで、大きな荷重に対抗できるようにしている。しかし、特許文献2では、中空形状樹脂成型品の長手方向両端部を支持部に固定する手段を別途設ける必要がある。すなわち、キャップとは別に何らかの固定手段を設ける必要があるので、構造が複雑化するとともに、作業量の増加、コストの増加につながるという問題がある。
【0008】
そこで、この発明の課題は、構造が簡素でより施工性がよく、より大きな荷重に対応できる中空形状樹脂成型品の固定構造とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、対向する頂面板及び底面板と、前記頂面板と前記底面板とを結ぶ壁部とを備え、前記頂面板、前記底面板及び前記壁部によって両端に開口を有する長手状の中空空間が形成された樹脂成型品と、前記中空空間に挿入され、前記頂面板の内面に対向する頂部と、前記底面板の内面に対向する底部と、前記頂部と前記底部とを結ぶ連結部とを備えた補強部材と、前記底部及び前記底面板を貫通する係止手段とを備え、前記補強部材及び前記係止手段によって、前記樹脂成型品とそれを支持する支持部材とを固定する中空形状樹脂成型品の固定構造を採用した。
【0010】
ここで、前記補強部材は、前記中空空間の開口側へ向く前記連結部に把持部を備えている構成を採用することができる。
【0011】
また、前記補強部材は、前記底部に雌ねじ部を備え、前記係止手段は、前記支持部材側から前記雌ねじ部にねじ込まれるボルトである構成を採用することができる。
【0012】
前記雌ねじ部は、前記底部に溶接固定されたナットであり、前記連結部又は前記頂部あるいはその両方に前記ナットに臨む開口部を備えている構成を採用することができる。
【0013】
また、上記の課題を解決するために、この発明は、対向する頂面板及び底面板と、前記頂面板と前記底面板とを結ぶ壁部とを備え、前記頂面板、前記底面板及び前記壁部によって両端に開口を有する長手状の中空空間が形成された樹脂成型品を、それを支持する支持部材に固定するために使用する補強部材であって、前記補強部材は、前記中空空間に挿入され、前記頂面板の内面に対向する頂部と、前記底面板の内面に対向する底部と、前記頂部と前記底部とを結ぶ連結部とを備え、前記底部は、前記底面板を貫通する係止手段が挿通される孔を備えている中空形状樹脂成型品用の補強部材を採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、構造が簡素でより施工性がよい中空形状樹脂成型品の固定構造とでき、また、より大きな荷重に対応できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の第1の実施形態を示す斜視図
図2】第1の実施形態に用いられる補強部材の斜視図
図3】第1の実施形態に用いられる補強部材を示し、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は背面図、(f)は底面図
図4】第1の実施形態の縦断面図
図5】第1の実施形態の横断面図
図6】第1の実施形態の要部を拡大した分解斜視図
図7】この発明の第2の実施形態を示す斜視図
図8】第2の実施形態に用いられる補強部材の斜視図
図9】第2の実施形態に用いられる補強部材を示し、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は背面図、(f)は底面図
図10】第2の実施形態の要部を拡大した横断面図
図11】第2の実施形態の要部を拡大した縦断面図
図12】第2の実施形態の要部を拡大した分解斜視図
図13】補強部材の変形例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図
図14】補強部材の変形例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1図6に第1の実施形態を示し、図7図12に第2の実施形態を示す。また、図13及び図14にその変形例を示す。
【0017】
(第1の実施形態)
実施形態の中空形状樹脂成型品10(以下、樹脂成型品10と称する)は、平面視矩形を成す偏平な直方体状の部材である。両端に開口を有する長手状の中空部を、その長手方向に直交する方向(以下、幅方向と称する)に複数並列して備えている。樹脂成型品10の基本構成は、後述の実施形態でも同様である。
【0018】
樹脂成型品10は、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を材料としている。樹脂成型品10は、対向する頂面板11及び底面板14と、その頂面板11と底面板14とを結ぶ壁部12,13を備えている。壁部12,13のうち、幅方向両端に位置する壁部12を、以下、側壁部12と称する。また、幅方向両端以外に位置する壁部13を、以下、中壁部13と称する。頂面板11、底面板14、及び、側壁部12又は中壁部13によって囲まれた長手状の空間が、長手方向両端に開口を有する中空空間となっている。すなわち、樹脂成型品10は、長手方向両端で開口する中空空間(肉抜穴)を幅方向に並列して備え、その幅方向に隣り合う中空空間同士の間が、頂面板11と底面板14とを結ぶウェブ(中壁部13)となっている。側壁部12及び中壁部13は、長手方向全長に亘って連続的に設けられている。
【0019】
なお、底面板14の裏面(外面)に、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)等からなるシート状補強材を積層すれば、頂面板11側からの荷重に対して引張側である底面板14の弾性率を向上させ、引張強度を高めることができる。また、頂面板11の表面(外面)に、滑り止めを目的とする滑止層を積層することもできる。
【0020】
樹脂成型品10は、建築物や構造物、その他各種設備の床構造を構築するために、支持部材1,1間に掛け渡されて使用される。実施形態では、支持部材1として断面I型の鋼材からなる梁を想定している。梁は、上フランジ2及び下フランジと、その上フランジ2と下フランジを結ぶウェブで構成されている。支持部材1,1間に樹脂成型品10が敷設された状態で、その樹脂成型品10の上に、車両や人等が通行する。
【0021】
樹脂成型品10を支持部材1に対して固定する際に、補強部材20及び係止手段を使用する。
【0022】
補強部材20は、中空空間の両端に挿入される。補強部材20は、図2及び図3に示すように、樹脂成型品10の頂面板11の内面に対向する頂部23と、底面板14の内面に対向する底部21と、頂部23と底部21とを結ぶ対の連結部22,24を備えた断面四角形を成す部材で構成されている。対の連結部22,24は、図4図5及び図6に示すように、中空空間の開口側とは反対側を向く連結部22(以下、第1連結部22と称する)と、中空空間の開口側を向く連結部24(以下、第2連結部24と称する)とからなる。補強部材20は、2枚の板状の金属部材をそれぞれ曲げることで、頂部23と第1連結部22、底部21と第2連結部24が形成され、頂部23の縁と第2連結部24の縁、及び、底部21の縁と第1連結部22の縁がそれぞれ溶接により接続されている(図3(b)、図3(d)参照)。これにより、補強部材20は筒状に形成されて、その筒軸方向両側に開放部A,B(図2参照)を備えた形態となっている。開放部A,Bは、側壁部12又は中壁部13側を向くように配置される。開放部A,Bを中空空間の開口側へ向けないことで、中空空間内への異物の侵入(鳥等の生物の侵入や内部に巣が作られることを含む)を防ぐ効果がある。
【0023】
この実施形態では、中空空間の開口側を向く第2連結部24に、把持部31が設けられている。把持部31は、補強部材20の位置調整をする際に、作業者が補強部材20を手で動かすためのものである。この実施形態では、把持部31は、第2連結部24の両側の縁(開放部A,B側の縁)に設けられた切り欠きである。切り欠きの縁は円弧状であり、作業者の指が引っ掛かりやすい形状となっている。
【0024】
補強部材20は、底部21の中央に雌ねじ部を備えている。また、樹脂成型品10を支持部材1に固定するために使用する係止手段として、支持部材1側から雌ねじ部にねじ込まれるボルト4を採用している。この実施形態では、雌ねじ部は、底部21に溶接固定されたナット25で構成されている。ナット25は、底部21の中央に設けられた孔26の位置に合わせて固定されている。底部21へのナット25の溶接固定は、外部から開放部A又は開放部Bを通じて溶接棒を差し入れることで容易に行うことができる。なお、底部21の部材の肉厚がある程度以上確保されている場合は、底部21に設けられた孔26に直接雌ねじ部を形成してもよい。
【0025】
この補強部材20及び係止手段を用いて、樹脂成型品10を支持部材1に固定する方法について、その一例を説明する。
【0026】
まず、樹脂成型品10の長手方向両端において、中空空間内に補強部材20を挿入する。ここでより強度を高めるためには、全ての中空空間内に、また、中空空間の両端にそれぞれ補強部材20を挿入することが望ましい。中空空間に挿入された補強部材20は、頂部23が頂面板11の内面に対向し、底部21が底面板14の内面に対向する。このとき頂部23の表面と頂面板11の内面との間に隙間があることを排除するものではないが、望ましくは、頂部23が頂面板11の内面に当接し、底部21が底面板14に当接するとともに、第1連結部22及び第2連結部24が、頂面板11と底面板14との間で突っ張る構成が、強度を高める上で有利である。
【0027】
支持部材1の上フランジ2には、貫通孔3が設けられている(図6参照)。上フランジ2の下方から上方に向かってボルト4を挿通する。ボルト4の頭部のあご部は、上フランジ2の下面に当接している(図4及び図5参照)。ボルト4は、上フランジ2の貫通孔3を通過し、底面板14の貫通孔15を通過し、底部21の孔26を通過した後、ナット25によって形成された雌ねじ部にねじ込まれる。これにより、支持部材1、樹脂成型品10及び補強部材20が締め付けられて固定される。
【0028】
この敷設状態で、樹脂成型品10の上を車両や人が通過すると、樹脂成型品10の長手方向両端部から支持部材1側へ荷重が作用する。ここで、樹脂成型品10の長手方向両端部は、補強部材20によって局所的に補強されているので、充分な耐荷重性を発揮することができる。特に、ボルト4が、樹脂成型品10と補強部材20を貫通していることから、その固定部分(樹脂成型品10の長手方向両端部)に関して、高い強度が期待できる。また、その補強部材20が、前述のボルト4とともに支持部材1への係止手段の機能の一部を兼ねていることから、補強部材20は、樹脂成型品10の補強と樹脂成型品10の固定の二つの機能を同時に発揮できる。このため、構造を簡素化できるとともに、作業量の低減、コストの低減が期待できる。
【0029】
(第2の実施形態)
この発明の第2の実施形態を、図7図12に基づいて説明する。樹脂成型品10や支持部材1の主たる構成は同様であるので、以下その差異点である補強部材20を中心に説明する。
【0030】
この実施形態では、補強部材20として、同じく樹脂成型品10の頂面板11の内面に対向する頂部23と、底面板14の内面に対向する底部21と、頂部23と底部21とを結ぶ対の連結部22,24を備えた断面四角形を成す部材で構成されている。図7図8及び図9に示すように、第1の実施形態よりもやや扁平な形状とし、樹脂成型品10の中空空間の形状に合致させている。対の連結部22,24は、中空空間の開口側とは反対側を向く第2連結部24と、中空空間の開口側を向く第1連結部22とからなる(図10及び図11参照)。補強部材20は、長手形状の筒状部材(角パイプ)をその長手方向に沿って所定の長さ毎に切断し、その後、頂部23の一部及び第2連結部24の一部を切断して除去し、開口部32を形成している。これにより、補強部材20は、筒状の部材であって、その筒軸方向両側に開放部A,B(図8参照)を備えた形態となっている。開放部A,Bは、側壁部12又は中壁部13側を向くように配置される点は同様である。また、補強部材20は、底部21の中央に雌ねじ部を備えている点も同様である。
【0031】
第2連結部24及び頂部23には、ナット25に臨む開口部32が設けられている。開口部32を通じて内部へ溶接棒を差し入れることで、底部21へのナット25の溶接固定を容易に行うことができる。開放部A,Bが小さい場合に、このような開口部32を設けることが有効である。この実施形態の開口部32は、図8に示すように、底部21と第2連結部24との稜線部に一致する下縁32aと、底部21と頂部23とを結ぶ方向へ平行に伸びる直線状の側縁32b,32bと、その側縁32b,32bに連続して第2連結部24から第1連結部22側へ平行に伸びる直線状の上縁32c,32cと、上縁32c,32cの端部同士を結ぶ円弧状(半円状)の端縁32dで構成されている。ナット25の上部を大きく開口させながらも筒状の形態を維持しているので、補強部材20の強度を確保しつつナット25の溶接固定に便利である。なお、開口部32は、第2連結部24、頂部23、第1連結部22の少なくともいずれかに設けられていればよい。また、開口部32は、第2連結部24、頂部23、第1連結部22から選択される複数の部位に跨って設けられていてもよい。
【0032】
ここで、中空空間の開口側を向く第1連結部22に、把持部31を設けてもよい。把持部31は、前述の実施形態と同様に、補強部材20の位置調整をするためのものであり、例えば、第1連結部22の両側の縁(開放部A,B側の縁)に設けられた切り欠きとすることができる。なお、開口部32を備えた第2連結部24は、中空空間の開口側とは反対側を向くことが望ましい(図7及び図12参照)。開放部A,Bを中空空間の開口側へ向けない、及び、開口部32を中空空間の開口側へ向けないことで、異物の侵入(鳥等の生物の侵入や内部に巣が作られることを含む)を防ぐ効果がある点は、前述の実施形態と同様である。ただし、所定の強度が確保され、且つ、異物の侵入の危惧がないならばこれを逆にして、開口部32を備えた第2連結部24を中空空間の開口側に向けてもよい。開口部32を備えた第2連結部24を中空空間の開口側に向けた場合は、その開口部32が把持部31を兼ねることができる。
【0033】
この補強部材20及び係止手段を用いて、樹脂成型品10を支持部材1に固定する方法については、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する(図12参照)。
【0034】
図13に、補強部材20の変形例を示す。図13の補強部材20は、第1の実施形態の補強部材20から第1連結部22を省略したものである。補強部材20は、1枚の板状の金属部材を曲げることで、頂部23、第2連結部24、底部21が形成され、断面コ字状を成す部材となっている。図14に、補強部材20のさらなる変形例を示す。図14の補強部材20は、第1の実施形態の補強部材20における金属部材の折り曲げ箇所を、円弧状にしたものである。補強部材20を構成する部材の角が滑らかであることにより、樹脂成型品10に傷等が生じることを防止できる。
【0035】
上記の実施形態では、係止手段として、支持部材1側から雌ねじ部にねじ込まれるボルト4を採用して、これを補強部材20側の雌ねじ部にねじ込む構成としているが、係止手段は、補強部材20の底部21、及び、樹脂成型品10の底面板14を貫通するものであればよく、ボルト4以外にも、例えば、ビスやピン等であってもよい。
【0036】
係止手段としてビスやピンを採用する場合、そのビスやピンは、ボルト4の場合と同様に、支持部材1側から樹脂成型品10、補強部材20側へねじ込み、打ち込みを行ってもよいし、逆に、補強部材20側から、樹脂成型品10、支持部材1側へねじ込み、打ち込みを行ってもよい。また、実施形態に示したボルト4を、補強部材20側から、樹脂成型品10、支持部材1側へねじ込みしてもよい。このとき、支持部材1側には、ボルト4、ビス、ピン等に対応する受け部を設けるとよい。受け部は、例えば、ボルト4やビスに対しては、支持部材1の躯体にねじ込み、打ち込みされた雌ねじ部材とすることができ、ピンに対しては、支持部材1が木材や樹脂等の素材であればその木材や樹脂等の素材そのものを受け部とし、支持部材1が金属素材であれば、ピンの先が貫入することができる素材を支持部材1の該当箇所に埋め込むことで受け部とすることができる。
【0037】
上記の各実施形態では、把持部31として第1連結部22や第2連結部24の縁に設けられる切り欠きを採用したが、把持部31の位置や形状は、これらの実施形態には限定されない。例えば、第1連結部22や第2連結部24の縁以外の部分に、作業者が指を挿通できる大きさの孔を設けて、その孔を把持部31としてもよい。また、例えば、第1連結部22や第2連結部24に、作業者が指で掴むことができる突起を設けて、その突起を把持部31としてもよい。
【0038】
上記の各実施形態では、樹脂成型品10を、平面視矩形を成す偏平な直方体状の部材としたが、この平面視形状は適宜の変更が可能である。例えば、平面視平行四辺形を成す樹脂成型品10としてもよい。また、樹脂成型品10の素材は、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)に限定されず、所定の強度を有する各種の樹脂材料を採用できる。さらに、樹脂成型品10の内部の中空空間は、各実施形態のような正方形や長方形の断面形状に限定されず、他の断面形状であってもよい。また、補強部材20の素材はこの実施形態のような金属には限定されず、所定の強度と耐久性を有する限りにおいて、樹脂等の他の素材であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 支持部材
4 ボルト
10 樹脂成型品(中空形状樹脂成型品)
11 頂面板
12 壁部(側壁部)
13 壁部(中壁部)
14 底面板
20 補強部材
21 底部
22 連結部(第1連結部)
23 頂部
24 連結部(第2連結部)
25 ナット
26 孔
31 把持部
32 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14