IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

特開2023-96659ホイールナット緩み予測装置、ホイールナット緩み予測方法、演算モデル生成システムおよび車両運用システム
<>
  • 特開-ホイールナット緩み予測装置、ホイールナット緩み予測方法、演算モデル生成システムおよび車両運用システム 図1
  • 特開-ホイールナット緩み予測装置、ホイールナット緩み予測方法、演算モデル生成システムおよび車両運用システム 図2
  • 特開-ホイールナット緩み予測装置、ホイールナット緩み予測方法、演算モデル生成システムおよび車両運用システム 図3
  • 特開-ホイールナット緩み予測装置、ホイールナット緩み予測方法、演算モデル生成システムおよび車両運用システム 図4
  • 特開-ホイールナット緩み予測装置、ホイールナット緩み予測方法、演算モデル生成システムおよび車両運用システム 図5
  • 特開-ホイールナット緩み予測装置、ホイールナット緩み予測方法、演算モデル生成システムおよび車両運用システム 図6
  • 特開-ホイールナット緩み予測装置、ホイールナット緩み予測方法、演算モデル生成システムおよび車両運用システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096659
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】ホイールナット緩み予測装置、ホイールナット緩み予測方法、演算モデル生成システムおよび車両運用システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
G01M17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212568
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 政弘
(72)【発明者】
【氏名】吉成 昭夫
(57)【要約】
【課題】安価で適切にホイールナットの緩みを予測することができるホイールナット緩み予測装置、ホイールナット緩み予測方法、演算モデル生成システムおよび車両運用システムを提供する。
【解決手段】ホイールナット緩み予測装置10は、車両情報取得部12、およびホイールナット緩み算出部13を備える。車両情報取得部12は、車両の走行距離、車両に装着されたタイヤ5の温度および空気圧を含む車両情報を取得する。ホイールナット緩み算出部13は、入力データに基づいてタイヤ5のホイールナット50の緩みを予測する演算モデル13bを有し、車両情報取得部12により取得した車両情報を演算モデル13bに入力してホイールナット50の緩みを予測する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行距離、前記車両に装着されたタイヤの温度および空気圧を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
入力データに基づいて前記タイヤのホイールナットの緩みを予測する演算モデルを有し、前記車両情報取得部により取得した車両情報を演算モデルに入力して前記ホイールナットの緩みを予測するホイールナット緩み算出部と、
を備えることを特徴とするホイールナット緩み予測装置。
【請求項2】
前記入力データは、ねじ規格を含む前記ホイールナットの情報を含むことを特徴とする請求項1に記載のホイールナット緩み予測装置。
【請求項3】
前記演算モデルは、前記ホイールナットが回転している確率を算出することを特徴とする請求項1または2に記載のホイールナット緩み予測装置。
【請求項4】
車両の走行距離、前記車両に装着されたタイヤの温度および空気圧を含む車両情報を取得する車両情報取得ステップと、
入力データに基づいて前記タイヤのホイールナットの緩みを予測する演算モデルに、前記車両情報取得ステップにより取得した車両情報を入力して前記ホイールナットの緩みを予測するホイールナット緩み算出ステップと、
を備えることを特徴とするホイールナット緩み予測方法。
【請求項5】
車両の走行距離、前記車両に装着されたタイヤの温度および空気圧を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
入力データに基づいて前記タイヤのホイールナットの緩みを予測する演算モデルを有し、前記車両情報取得部により取得した車両情報を演算モデルに入力して前記ホイールナットの緩みを予測するホイールナット緩み算出部と、
前記ホイールナット緩み算出部によって算出された前記ホイールナットの緩みと、前記ホイールナットの緩みを示すインジケータの変化とを比較して前記演算モデルを学習させる学習処理部と、
を備えることを特徴とする演算モデル生成システム。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載のホイールナット緩み予測装置と、
前記車両の運用計画を管理する運用計画管理装置と、
前記ホイールナットの緩みに対する増し締めを含むメンテナンスの作業計画を管理する作業計画管理装置と、を備え、
前記運用計画管理装置は、前記ホイールナット緩み予測装置により緩みが予測された場合に、前記作業計画管理装置が提示する作業計画の空き時間に対して、前記運用計画に増し締め作業を追加する計画案を提示することを特徴とする車両運用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装着されるタイヤのホイールナットの緩みを予測するホイールナット緩み予測装置、ホイールナット緩み予測方法、演算モデル生成システムおよび車両運用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装着されるタイヤは、例えばホイール部分において複数のホイールナットによって車軸に締結される。ホイールナットは、締め付け後の初期なじみ等によって締結力が低下することがあり、一定期間の車両走行後に増し締め実施が行われる。
【0003】
特許文献1にはホイールナットが緩んだ車輪を検出する技術が記載されている。この技術は、緩み車輪のような車輪異常を検出するために車輪速度信号を利用する。第1の検出信号および第2の検出信号を決定するための基礎として、車輪速度信号を使用する。また第1および第2の検出信号を決定するために、それぞれ第1および第2の基準信号を用いる。第1および第2の検出信号の少なくとも一方が閾値を超える場合に、例えば緩み車輪である異常を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2018-506470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の従来の検出技術は、ホイールナットが緩んだ車輪を検出するために車輪速度を計測する車輪速度センサが必要となる。また、従来の検出技術は、計測された車輪速度における欠陥信号を緩みの判定に用いており、例えば車両ごとに変わる機械的挙動および路面状態などの要因によって緩みの判定が影響を受けてしまう蓋然性があった。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安価で適切にホイールナットの緩みを予測することができるホイールナット緩み予測装置、ホイールナット緩み予測方法、演算モデル生成システムおよび車両運用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様のホイールナット緩み予測装置は、車両の走行距離、前記車両に装着されたタイヤの温度および空気圧を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、入力データに基づいて前記タイヤのホイールナットの緩みを予測する演算モデルを有し、前記車両情報取得部により取得した車両情報を演算モデルに入力して前記ホイールナットの緩みを予測するホイールナット緩み算出部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様はホイールナット緩み予測方法である。ホイールナット緩み予測方法は、車両の走行距離、前記車両に装着されたタイヤの温度および空気圧を含む車両情報を取得する車両情報取得ステップと、入力データに基づいて前記タイヤのホイールナットの緩みを予測する演算モデルに、前記車両情報取得ステップにより取得した車両情報を入力して前記ホイールナットの緩みを予測するホイールナット緩み算出ステップと、を備える。
【0009】
本発明の別の態様は演算モデル生成システムである。演算モデル生成システムは、車両の走行距離、前記車両に装着されたタイヤの温度および空気圧を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、入力データに基づいて前記タイヤのホイールナットの緩みを予測する演算モデルを有し、前記車両情報取得部により取得した車両情報を演算モデルに入力して前記ホイールナットの緩みを予測するホイールナット緩み算出部と、前記ホイールナット緩み算出部によって算出された前記ホイールナットの緩みと、前記ホイールナットの緩みを示すインジケータの変化とを比較して前記演算モデルを学習させる学習処理部と、を備える。
【0010】
本発明の別の態様は車両運用システムである。車両運用システムは、上述のホイールナット緩み予測装置と、前記車両の運用計画を管理する運用計画管理装置と、前記ホイールナットの緩みに対する増し締めを含むメンテナンスの作業計画を管理する作業計画管理装置と、を備え、前記運用計画管理装置は、前記ホイールナット緩み予測装置により緩みが予測された場合に、前記作業計画管理装置が提示する作業計画の空き時間に対して、前記運用計画に増し締め作業を追加する計画案を提示する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安価で適切にホイールナットの緩みを予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係るホイールナット緩み予測装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】車載計測装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】演算モデルでの算出および学習について説明するための模式図である。
図4】演算モデル生成システムの機能構成を示すブロック図である。
図5】タイヤのホイールナットを含む一部の側面図である。
図6】演算モデル生成システムによる演算モデル生成の手順を示すフローチャートである。
図7】実施形態2に係る車両運用システムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図7を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るホイールナット緩み予測装置10の機能構成を示すブロック図である。ホイールナット緩み予測装置10は、車両に搭載された車載計測装置70、気象情報サーバ装置80等と通信ネットワーク9を介して通信接続し、車両情報および気象情報等を取得する。ホイールナット緩み予測装置10は、取得した車両情報および気象情報等に基づいて、演算モデル13bによってホイールナット50の緩みを予測する。
【0015】
ホイールナット緩み予測装置10は、例えばインターネット等の通信ネットワーク9を介して車両に搭載された車載計測装置70から車両情報を取得する。車両情報は、車両の速度、加速度、荷重および位置情報等の車両計測情報、並びにタイヤ5で計測されるタイヤ計測情報を含む。またホイールナット緩み予測装置10は、気象情報サーバ装置80から気象情報を取得する。
【0016】
ホイールナット緩み予測装置10の演算モデル13bは、ホイールナット50に装着されるインジケータによって計測される緩みを教師データとして学習されており、出力として、例えばホイールナット50が緩んでいる確率を出力する。ホイールナット50の緩みを、「緩みが無い」から「緩んでいる」までを多段階で評価する尺度を定め、演算モデル13bは、ホイールナット50の緩みについて評価結果を出力してもよい。
【0017】
図2は、車載計測装置70の機能構成を示すブロック図である。車載計測装置70は、車両計測部71、タイヤ計測部72、情報取得部73および通信部74を備える。車載計測装置70における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0018】
車両計測部71は、車両に搭載された速度メータ71a、GPS受信機71bおよび加速度センサ71c等を有する。速度メータ71aは、車両の速度を計測する。GPS受信機71bは、車両の現在の位置情報(緯度、経度および高度)を計測する。加速度センサ71cは、車両の3軸方向の加速度を計測する。また、車両計測部71は、重量計(図示略)を有し、車両に搭載された積載物による荷重を計測するようにしてもよい。尚、車両に搭載された積載物による荷重は、予め車両で運搬する積載物の荷重が既知の情報として得られる場合には、当該既知の情報をホイールナット緩み予測装置10で取得し用いるとよい。
【0019】
タイヤ計測部72は、温度センサ72aおよび圧力センサ72bを有する。温度センサ72aおよび圧力センサ72bは、車両に装着されたタイヤ5のエアバルブ等に配設されていたり、あるいはベルト等でホイールに強固に巻き付け固定されており、タイヤ5の温度および空気圧を計測する。温度センサ72aは、タイヤ5のインナーライナー等に配設されていてもよい。尚、車両に搭載された加速度センサ71cとは別個の加速度センサがタイヤ5のインナーライナー等に配設されていてもよい。
【0020】
情報取得部73は、車両計測部71で計測された車両計測情報(速度、位置情報、加速度等)、タイヤ計測部72で計測されたタイヤ計測情報(タイヤの温度および空気圧等)および後述するタイヤ識別情報等を取得する。情報取得部73は、車両計測情報およびタイヤ計測情報に含まれる各計測データに対して、計測された時刻情報、または取得した時刻情報を対応付ける。情報取得部73は、車両計測情報およびタイヤ計測情報を各計測データに対応付けられた時刻情報とともに通信部74からホイールナット緩み予測装置10へ送信する。
【0021】
情報取得部73は、車両の電子制御装置または車両にデジタルタコメータ等の装置が搭載されている場合には、当該装置において収集した車両の速度、加速度および位置情報等を取得するようにしてもよい。通信部74は、例えばWiFi(登録商標)等の無線通信によって通信ネットワーク9に通信接続し、情報取得部73が取得した車両計測情報、タイヤ計測情報および時刻情報を通信ネットワーク9を介してホイールナット緩み予測装置10へ送信する。
【0022】
図1に戻り、気象情報サーバ装置80は各地における気象情報を提供する。気象情報サーバ装置80が提供する気象情報は、各地における降水量、積雪量、降雪量、気温および日照時間等を含む情報である。ホイールナット緩み予測装置10は、気象情報サーバ装置80から車両が走行している場所における気象情報を取得する。
【0023】
ホイールナット緩み予測装置10は、通信部11、車両情報取得部12、ホイールナット緩み算出部13および記憶部14を備える。ホイールナット緩み予測装置10における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0024】
通信部11は、無線または有線通信によって通信ネットワーク9に通信接続し、車載計測装置70の通信部74との間で通信する。また通信部11は、通信ネットワーク9を介して気象情報サーバ装置80との間で通信する。
【0025】
車両情報取得部12は、車両に搭載された車載計測装置70から送信された車両計測情報(速度、位置情報、加速度、荷重等)およびタイヤ計測情報(タイヤの温度および空気圧等)を含む車両情報を取得する。車両情報取得部12は、車両計測情報に基づいて車両の走行距離を算出して取得する。
【0026】
車両情報取得部12は、車両計測情報の位置情報に基づいて走行距離を算出して取得することができる。また、車両の走行距離は、車両計測情報における速度のデータと、当該データに対応付けられた時刻のデータに基づいて算出してもよい。即ち、時系列的に並んだ速度データに、次の時点までの時間差分を乗算することによって車両の走行距離を算出することができる。車両の速度は、時系列的に並んだ位置情報に基づく車両の走行距離と位置情報の取得間隔から算出したものを使用してもよい。
【0027】
車両情報取得部12は、車両の走行距離に関する情報が、車両または車両管理用の外部装置等から提供されていれば、自ら走行距離を算出する必要はなく、車両または外部装置から走行距離に関する情報を取得してもよい。また車両情報取得部12は、車両の積載物による荷重の情報を外部装置等から取得してもよい。
【0028】
車両情報取得部12は、取得した走行距離をホイールナット緩み算出部13へ出力する。車両情報取得部12は、取得したタイヤ計測情報(タイヤの温度および空気圧等)をホイールナット緩み算出部13へ出力する。
【0029】
車両情報取得部12は、ホイールナット緩み算出部13において車両の加速度を入力要素として用いる演算モデルに基づくホイールナット50の緩みの推定を行う場合、車両計測情報における加速度のデータをホイールナット緩み算出部13へ出力する。また、車両情報取得部12は、位置情報等に基づいて車両の旋回回数などを算出し、ホイールナット緩み算出部13へ出力するようにしてもよい。
【0030】
また車両情報取得部12は、車両仕様データ14a、タイヤ仕様データ14bおよびタイヤ位置データ14cのうちホイールナット50の緩みの推定に用いるデータを記憶部14から取得し、ホイールナット緩み算出部13へ出力する。記憶部14は、例えばSSD(Solid State Drive)、ハードディスク、CD-ROM、DVD等によって構成される記憶装置であり、予め各種の車両およびタイヤ5の仕様に関して提供されているデータを記憶している。
【0031】
車両仕様データ14aには、例えばメーカー、車両名、車両型式、車体重量、ドライブトレーン、全長、車幅、車高、最大積載荷重などの車両の性能等に関する情報が含まれる。タイヤ仕様データ14bには、例えばメーカー、商品名、タイヤサイズ、タイヤ幅、扁平率、耐摩耗性能、タイヤ強度、静的剛性、動的剛性、タイヤ外径、ロードインデックス、製造年月日など、タイヤ5の性能に関する情報が含まれる。また、タイヤ仕様データ14bには、製造年月日、アルミ・スチール等を含むホイールの情報、ねじ規格、アルミ・スチール等材質を含むホイールナット50の情報が含まれる。
【0032】
また、タイヤ位置データ14cには、タイヤの車両における位置、タイヤ識別情報や取り付けられている車軸に関する情報が含まれる。タイヤ識別情報は、各タイヤを特定するために各タイヤに付された例えば製造番号などの一連番号である。タイヤ識別情報、タイヤの配置位置および車軸に関する情報は、例えば車両へのタイヤ装着時などに作業者が入力操作することによって記憶部14に記憶させるようにするとよい。
【0033】
ホイールナット緩み算出部13は、前処理部13aおよび演算モデル13bを備える。前処理部13aは、車両情報取得部12から入力されたデータの集約や異常値の除去など行う。車両情報取得部12は、出発地から目的地までの1回の旅程ごとに、車両からデータを取得しており、例えば旅程中に10秒ごとにデータを取得し蓄積する。
【0034】
前処理部13aは、走行距離、速度、加速度、荷重および旋回回数等の車両計測情報、タイヤ5の温度および空気圧等のタイヤ計測情報、並びに気温および天候等の気象情報の各種データを、それぞれ1つの値に集約する。前処理部13aは、1回の旅程ごとに集約してもよいし、一定期間(1週間、1か月など)蓄積した各データを集約するようにしてもよい。
【0035】
前処理部13aは、例えば走行距離について、期間中に取得した走行距離のデータを加算して総走行距離を算出する。また、前処理部13aは、例えば1日の車両運行における気温データを平均して、1つの平均気温データを算出する。
【0036】
前処理部13aは、1日の運行における荷重データの中から最大値を抽出してもよく、更に1か月の全ての運行での荷重データの最大値を抽出してもよい。前処理部13aは、全ての運行における荷重データの最大値を平均して、1つの平均荷重データを算出するようにしてもよい。
【0037】
図3は、演算モデル13bでの算出および学習について説明するための模式図である。演算モデル13bへの入力データは、概ね車両計測情報、タイヤ計測情報およびその他情報の各系統に分類される。
【0038】
車両計測情報関連の入力データは、車両の速度、加速度、走行距離および荷重を含む。走行距離は、上述のように車両情報取得部12において取得される。タイヤ計測情報関連の入力データは、タイヤ5の温度および空気圧を含む。尚、車両の加速度は、適宜演算モデルへの入力データとして用いられるものとする。
【0039】
その他情報による入力データは、気象情報として気温、天候、更には気象情報に基づいて推定される路面状態等、車両仕様データ14aに含まれる車両の最大積載荷重等、並びにタイヤ仕様データ14bに含まれるタイヤ5の経過年数や耐摩耗性能、ホイールナット50の情報等である。タイヤ5の経過年数は、タイヤ5の製造時点から経過した年数である。タイヤ5の耐摩耗性能は、例えばランボーン摩耗試験に基づき標準配合を100として各種トレッド配合の耐摩耗性能を指標化したタイヤ摩耗指標値等を用いる。また、その他情報による入力データは、タイヤ位置データ14cに含まれるタイヤ5の位置、タイヤ識別情報や車軸に関する情報を含む。
【0040】
演算モデル13bは、例えばニューラルネットワーク等の学習型モデルを用いる。また演算モデル13bは、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン(SVM)、線形回帰、決定木、ランダムフォレストなどの手法によって構築されるものであってもよい。演算モデル13bは、これらに限定されるものではなく、教師あり学習が可能なアルゴリズムであればよい。
【0041】
図4は、演算モデル生成システム100の機能構成を示すブロック図である。演算モデル生成システム100は、ホイールナット検査装置60、および学習処理部21を有する演算モデル生成装置20を備える。
【0042】
ホイールナット検査装置60は、タイヤ5の側面を撮影するカメラ等で構成されており、ホイールナット50の緩みを検査する。図5はタイヤ5のホイールナット50を含む一部の側面図である。ホイールナット50には、緩みを検出するためのインジケータ51が設けられている。インジケータ51は、ホイールナット50が緩んで回転すると先端部51aの位置がずれて、ホイールナット50が緩んだことを示す。
【0043】
ホイールナット検査装置60は、撮影した画像データを画像解析して、インジケータ51の回転を自動的に検出してもよいし、作業者が画像を見てインジケータ51の回転を判定するようにしてもよい。ホイールナット検査装置60は、インジケータ51の回転の有無に基づくホイールナット50の緩み状態を、演算モデル生成装置20の学習処理部21へ出力する。
【0044】
演算モデル生成装置20におけるホイールナット緩み予測装置10の各構成に相当する部分は、ホイールナット緩み予測装置10のそれらと同等の機能を有するが、演算モデル13bは学習前または学習中のものとなる。
【0045】
学習処理部21は、ホイールナット検査装置60によるホイールナットの緩み状態を教師データとし、演算モデル13bを学習させる。図3を参照し、演算モデル13bの学習過程では、入力情報に基づいて演算モデル13bによってホイールナットの緩みを算出し、教師データと比較する。学習処理部21は、演算モデル13bによって推定するホイールナット50の緩みの演算過程における各種係数を演算モデル13bに新たに設定し、モデルの更新を繰り返すことで学習を実行する。
【0046】
学習処理部21は、勾配ブースティングなどの公知の学習方法を用いることができる。また演算モデル13bの検証には、ランダムデータサンプリングや交差検証などの公知の検証方法を用いることができる。
【0047】
次にホイールナット緩み予測装置10および演算モデル生成システム100の動作を説明する。図6は、演算モデル生成システム100による演算モデル生成の手順を示すフローチャートである。車両情報取得部12は、車両計測情報およびタイヤ計測情報の取得を開始する(S1)。また、演算モデル生成装置20の車両情報取得部12は、ステップS1において、その他情報として車両仕様、タイヤ仕様およびタイヤ位置など必要な情報を記憶部14から読み出す。車両情報取得部12は、走行距離の算出を開始する(S2)。
【0048】
ホイールナット緩み算出部13の前処理部13aは、車両情報取得部12から入力された各データについて、データを取得した期間において集約する(S3)。前処理部13aは、上述のように、総走行距離、平均気温および平均荷重などのデータを算出する。
【0049】
ホイールナット緩み算出部13は、車両情報取得部12からの入力データ、および前処理部13aで集約したデータを演算モデル13bへ入力し、演算モデル13bによってホイールナット50の緩みを算出して予測する(S4)。
【0050】
学習処理部21は、ホイールナット緩み算出部13によって予測したホイールナット50の緩みと、ホイールナット検査装置60による検査結果としてのホイールナット50の緩み状態とを比較する(S5)。学習処理部21は、ステップS6による比較結果に基づいて演算モデル13bを更新し(S6)、処理を終了する。演算モデル生成装置20は、これらの処理を繰り返すことによって、演算モデル13bを更新し、ホイールナット50の緩みの予測における精度の向上が図られる。
【0051】
ホイールナット緩み予測装置10は、演算モデル生成装置20によって生成された学習済みの演算モデル13bを利用して、ホイールナット50の緩みを予測する。ホイールナット緩み予測装置10は、図6に示したフローチャートにおけるステップS1からステップS4までの処理を実行することによりホイールナット50の緩みを予測する。
【0052】
ホイールナット緩み予測装置10は、車両の走行距離、タイヤ5の温度および空気圧を含む車両情報を入力データとする演算モデル13bによってホイールナット50の緩みを予測することで、安価で適切にホイールナット50の緩みを予測することができる。また、演算モデル生成システム100は、ホイールナット検査装置60による検査結果であるホイールナット50の緩み状態を教師データとして用い、安価で適切にホイールナット50の緩みを予測する演算モデル13bを生成することができる。
【0053】
従来のようにホイール装着からの走行距離のみで判断していたのに比べ、ホイールナット緩み予測装置10は、適切なタイミングでホイールナット50の緩みを予測することができる。ホイールナット緩み予測装置10は、演算モデル13bへの入力データによって車両の走り方などを踏まえた緩み予測が可能となっている。これにより、ホイールナット緩み予測装置10が予測するホイールナット50の緩みに基づいて、所定走行距離よりも早くホイールナット50の増し締め作業を完了させる必要があったり、また逆に所定走行距離よりも後に増し締め作業を完了させてもよいことが判定でき、車両の運用計画に応じて効率的な増し締めメンテナンスを行うことができる。
【0054】
ホイールナット緩み予測装置10は、アルミ・スチール等を含むホイールの情報、ねじ規格、アルミ・スチール等材質を含むホイールナット50の情報を演算モデル13bへの入力データとすることによって、種々のホイールナット50に適応して演算モデル13bを構築することができ、ホイールナット50の緩みの予測精度を高めることができる。
【0055】
ホイールナット緩み予測装置10は、厳密にはインジケータ51が位置ずれした瞬間を捉えて教師データとして演算モデル13bを学習させたものではない。このため、ホイールナット50の緩みを予測するタイミングは、ある程度の幅があると考えられる。ホイールナット緩み予測装置10は、演算モデル13bの出力をホイールナット50が回転している確率とすることで、ホイールナット50の予防的な増し締めタイミングを提供することができる。例えば、ホイールナット緩み予測装置10が予測するホイールナット50の回転している確率が7割以上となった場合に、車両の運用管理者は、予防的に増し締めする車両のメンテナンス計画を立てることができる。
【0056】
ホイールナット検査装置60は、例えば、車両を運用する運送会社の拠点の出入口両側に支柱を立て、その支柱に設置したカメラでタイヤ5を左右側面から撮影するようにしてもよい。ホイールナット検査装置60は、例えば車両が拠点に戻ってきて出入口を通過するとき、タイヤ側面、ホイール、及び個々のホイールナット50をカメラで自動的に撮影し、車両およびタイヤ5の装着位置に対応する画像データを作成し、インジケータ51が初期位置からどれだけ回転したかを判定する。ホイールナット検査装置60は、例えば自動運転のトラック等の車両において、車両の側面を撮影する車載カメラの映像に含まれるタイヤ側面および個々のホイールナット50の映像に基づいて、インジケータ51が初期位置からどれだけ回転したかを判定してもよい。演算モデル生成システム100は、ホイールナット検査装置60が判定したインジケータ51の回転角度と、演算モデル13bが出力するホイールナット50の緩みの予測結果とを比較し、演算モデル13bを更新するようにしてもよい。
【0057】
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係る車両運用システム110の機能構成を示すブロック図である。車両運用システム110は、実施形態1で説明したホイールナット緩み予測装置10、運用計画管理装置31および作業計画管理装置32を備える。運用計画管理装置31は、車両を運用する計画を管理しており、例えば、運送会社などにおいて数か月間のトラック車両による物品の輸送についての運用計画を管理する。運用計画管理装置31は、各車両による運用計画データを保有しており、新規の輸送依頼の日程や車両のメンテナンス日程などを運用計画データに反映させている。
【0058】
作業計画管理装置32は、例えば、メンテナンス作業を実施するメンテナンス会社などにおいて、各運送会社の車両に対する点検やメンテナンスなどの作業計画を管理している。車両に対するメンテナンスには、車両のホイールナット50を増し締めするメンテナンスも含まれる。作業計画管理装置32は、車両に対する点検作業やメンテナンス作業などの作業計画データを保有しており、新規の作業依頼の日程などを作業計画データに反映させている。
【0059】
ホイールナット緩み予測装置10は、運用計画管理装置31および作業計画管理装置32に対して、演算モデル13bによって予測したホイールナット50の緩み情報を提供する。運用計画管理装置31は、ホイールナット緩み予測装置10がホイールナット50の緩みを予測した場合に、作業計画管理装置32が保有している作業計画データを参照し、作業計画データの空き時間に対して、運用計画データにホイールナット50の増し締め作業を追加する計画案を提示する。これにより、車両運用システム110は、車両の運用計画において、適切にホイールナット50の増し締めメンテナンスを実行する計画を提供し、運用計画者の利便性を高めることができる。
【0060】
また、作業計画管理装置32は、ホイールナット緩み予測装置10がホイールナット50の緩みを予測した場合に、保有する作業計画データにおける空き時間を、運用計画管理装置31へ提供するようにしてもよい。運用計画管理装置31は、提供された作業計画データにおける空き時間と、車両の運用計画とを比較し、運用計画データにホイールナット50の増し締め作業を追加する計画案を提示することで、運用計画者の利便性を高めることができる。
【0061】
また、車両運用システム110は、提示された計画案に沿って、増し締め作業が完了しているかどうかを管理している。作業計画管理装置32で管理される増し締め作業の完了が確認できない場合、運用計画管理装置31は、当該車両を新規の輸送依頼などの運用計画に組み込まないようにしてもよい。
【0062】
次に各実施形態に係るホイールナット緩み予測装置10、ホイールナット緩み予測方法、演算モデル生成システム100および車両運用システム110の特徴について説明する。
ホイールナット緩み予測装置10は、車両情報取得部12、およびホイールナット緩み算出部13を備える。車両情報取得部12は、車両の走行距離、車両に装着されたタイヤ5の温度および空気圧を含む車両情報を取得する。ホイールナット緩み算出部13は、入力データに基づいてタイヤ5のホイールナット50の緩みを予測する演算モデル13bを有し、車両情報取得部12により取得した車両情報を演算モデル13bに入力してホイールナット50の緩みを予測する。これにより、ホイールナット緩み予測装置10は、安価で適切にホイールナット50の緩みを予測することができる。
【0063】
入力データは、ねじ規格を含むホイールナット50の情報を含む。これにより、ホイールナット緩み予測装置10は、種々のホイールナット50に適応して演算モデル13bを構築することができ、ホイールナット50の緩みの予測精度を高めることができる。
【0064】
また演算モデル13bは、ホイールナット50が回転している確率を算出する。これにより、ホイールナット緩み予測装置10は、ホイールナット50の予防的な増し締めタイミングを提供することができる。
【0065】
ホイールナット緩み予測方法は、車両情報取得ステップおよびホイールナット緩み算出ステップを備える。車両情報取得ステップは、車両の走行距離、車両に装着されたタイヤ5の温度および空気圧を含む車両情報を取得する。ホイールナット緩み算出ステップは、入力データに基づいてタイヤ5のホイールナット50の緩みを予測する演算モデル13bに、車両情報取得ステップにより取得した車両情報を入力してホイールナット50の緩みを予測する。このホイールナット緩み予測方法によれば、安価で適切にホイールナット50の緩みを予測することができる。
【0066】
演算モデル生成システム100は、車両情報取得部12、ホイールナット緩み算出部13および学習処理部21を備える。車両情報取得部12は、車両の走行距離、車両に装着されたタイヤ5の温度および空気圧を含む車両情報を取得する。ホイールナット緩み算出部13は、入力データに基づいてタイヤ5のホイールナット50の緩みを予測する演算モデル13bを有し、車両情報取得部12により取得した車両情報を演算モデル13bに入力してホイールナット50の緩みを予測する。学習処理部21は、ホイールナット緩み算出部13によって算出されたホイールナット50の緩みと、ホイールナット50の緩みを示すインジケータ51の変化とを比較して演算モデル13bを学習させる。これにより、演算モデル生成システム100は、安価で適切にホイールナット50の緩みを予測する演算モデル13bを生成することができる。
【0067】
車両運用システム110は、上述のホイールナット緩み予測装置10、運用計画管理装置31および作業計画管理装置32を備える。運用計画管理装置31は、車両の運用計画を管理する。作業計画管理装置32は、ホイールナット50の緩みに対する増し締めを含むメンテナンスの作業計画を管理する。運用計画管理装置31は、ホイールナット緩み予測装置10により緩みが予測された場合に、作業計画管理装置32が提示する作業計画の空き時間に対して、運用計画に増し締め作業を追加する計画案を提示する。これにより、車両運用システム110は、適切にホイールナット50の増し締めメンテナンスを実行する計画を提供し、運用計画者の利便性を高めることができる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0069】
10 ホイールナット緩み予測装置、 12 車両情報取得部、
13 ホイールナット緩み算出部、 13b 演算モデル、 21 学習処理部、
31 運用計画管理装置、 32 作業計画管理装置、
5 タイヤ、 50 ホイールナット、 51 インジケータ、
100 演算モデル生成システム、 110 車両運用システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7