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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009667
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】燃料電池冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04029 20160101AFI20230113BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230113BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20230113BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20230113BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20230113BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20230113BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20230113BHJP
   B60L 50/75 20190101ALI20230113BHJP
   B60L 58/33 20190101ALI20230113BHJP
【FI】
H01M8/04029
H01M8/04 J
H01M8/00 Z
H01M8/0432
H01M8/04746
B60L1/00 L
B60L3/00 H
B60L50/75
B60L58/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113121
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 大作
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BA09
5H125BD04
5H125CB03
5H125EE70
5H125FF26
5H127AB04
5H127AC05
5H127CC06
5H127DA01
5H127DB74
5H127DC75
5H127DC76
5H127DC80
(57)【要約】
【課題】 燃料電池に加わる熱的な負荷を低減する。
【解決手段】 車両に搭載された燃料電池冷却システムであって、冷媒の流路を有する。冷却器流路内の前記冷媒を冷却する冷却器と、燃料電池流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される燃料電池と、作動時に発熱するとともに発熱体流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される発熱体と、前記燃料電池流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第1ポンプと、前記発熱体流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第2ポンプと、制御回路と、をさらに有する。前記車両の起動時に前記制御回路が、前記第2ポンプが停止している状態で前記第1ポンプを作動させる第1工程と、前記第1工程中に前記燃料電池流路または前記冷却器流路内の前記冷媒の温度が第1基準値を超えると前記第1ポンプに加えて前記第2ポンプを作動させる第2工程を実施する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された燃料電池冷却システムであって、
内部に冷媒が流れる冷媒流路を備えており、
前記冷媒流路が、冷却器流路と、燃料電池流路と、発熱体流路を有しており、
前記燃料電池流路の上流端と前記発熱体流路の上流端が、前記冷却器流路の下流端に設けられた分岐部に接続されており、
前記燃料電池流路の下流端と前記発熱体流路の下流端が、前記冷却器流路の上流端に設けられた合流部に接続されており、
前記冷却器流路内の前記冷媒を冷却する冷却器と、
前記燃料電池流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される燃料電池と、
作動時に発熱し、前記発熱体流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される発熱体と、
前記燃料電池流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第1ポンプと、
前記発熱体流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第2ポンプと、
前記燃料電池、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプを制御する制御回路と、
をさらに有し、
前記制御回路が、前記車両の走行中に前記燃料電池と前記第1ポンプを作動させ、
前記制御回路が、前記発熱体の作動中に前記第2ポンプを作動させ、
前記車両の起動時に前記制御回路が、前記第2ポンプが停止している状態で前記第1ポンプを作動させる第1工程と、前記第1工程中に前記燃料電池流路または前記冷却器流路内の前記冷媒の温度が第1基準値を超えると前記第1ポンプに加えて前記第2ポンプを作動させる第2工程を実施する、燃料電池冷却システム。
【請求項2】
前記制御回路が、前記第2工程中に前記冷媒流路内の前記冷媒の温度が第2基準値を超えると前記第2ポンプを停止させる第3工程を実施する、請求項1に記載の燃料電池冷却システム。
【請求項3】
前記制御回路が、前記第2工程において前記第2ポンプを最低回転数で作動させる、請求項1または2に記載の燃料電池冷却システム。
【請求項4】
車両に搭載された燃料電池冷却システムであって、
内部に冷媒が流れる冷媒流路を備えており、
前記冷媒流路が、冷却器流路と、燃料電池流路と、発熱体流路を有しており、
前記燃料電池流路の上流端と前記発熱体流路の上流端が、前記冷却器流路の下流端に設けられた分岐部に接続されており、
前記燃料電池流路の下流端と前記発熱体流路の下流端が、前記冷却器流路の上流端に設けられた合流部に接続されており、
前記冷却器流路内の前記冷媒を冷却する冷却器と、
前記燃料電池流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される燃料電池と、
作動時に発熱し、前記発熱体流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される発熱体と、
前記燃料電池流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第1ポンプと、
前記発熱体流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第2ポンプと、
前記燃料電池、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプを制御する制御回路と、
をさらに有し、
前記制御回路が、前記車両の走行中に前記燃料電池と前記第1ポンプを作動させ、
前記制御回路が、前記発熱体の作動中に前記第2ポンプを作動させ、
前記車両の起動時に前記制御回路が、前記第1ポンプと前記第2ポンプを作動させる第1工程を実施する燃料電池冷却システム。
【請求項5】
前記制御回路が、前記第1工程中に前記冷媒流路内の前記冷媒の温度が基準値を超えると前記第2ポンプを停止させる第2工程を実施する、請求項4に記載の燃料電池冷却システム。
【請求項6】
前記制御回路が、前記第1工程において前記第2ポンプを最低回転数で作動させる、請求項4または5に記載の燃料電池冷却システム。
【請求項7】
車両に搭載された燃料電池冷却システムであって、
内部に冷媒が流れる冷媒流路を備えており、
前記冷媒流路が、冷却器流路と、燃料電池流路と、発熱体流路を有しており、
前記燃料電池流路の上流端と前記発熱体流路の上流端が、前記冷却器流路の下流端に設けられた分岐部に接続されており、
前記燃料電池流路の下流端と前記発熱体流路の下流端が、前記冷却器流路の上流端に設けられた合流部に接続されており、
前記冷却器流路内の前記冷媒を冷却する冷却器と、
前記燃料電池流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される燃料電池と、
作動時に発熱し、前記発熱体流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される発熱体と、
前記燃料電池流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第1ポンプと、
前記発熱体流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第2ポンプと、
前記燃料電池、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプを制御する制御回路と、
をさらに有し、
前記制御回路が、前記車両の走行中に前記燃料電池と前記第1ポンプを作動させ、
前記制御回路が、前記発熱体の作動中に前記第2ポンプを作動させ、
前記制御回路が、前記車両の走行中であって前記発熱体が作動していないときに、前記燃料電池流路内の前記冷媒の温度と前記発熱体流路内の前記冷媒の温度との差が第1基準値を超えると、前記第2ポンプを作動させる第1工程を実施する燃料電池冷却システム。
【請求項8】
前記制御回路が、前記第1工程中に前記燃料電池流路内の前記冷媒の前記温度と前記発熱体流路内の前記冷媒の前記温度との前記差が第2基準値を下回ると、前記第2ポンプを停止させる第2工程を実施する、請求項7に記載の燃料電池冷却システム。
【請求項9】
前記第1工程において、前記発熱体を作動させる、請求項7または8に記載の燃料電池冷却システム。
【請求項10】
前記制御回路が、前記第1工程において前記第2ポンプを最低回転数で作動させる、請求項7~9のいずれか一項に記載の燃料電池冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、燃料電池冷却システムに関する。
【0002】
特許文献1に開示の燃料電池冷却システムは、車両に搭載された燃料電池を冷却する。この燃料電池冷却システムは、内部に冷媒が流れる冷媒流路を備えている。冷媒流路には、冷媒流路内の冷媒を冷却する冷却器と、冷媒流路内の冷媒との熱交換によって冷却される燃料電池が設けられている。冷却器で冷却された冷媒が燃料電池に供給されることで、燃料電池が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-126911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池が設けられた流路と並列に、他の発熱体を冷却する流路が設けられる場合がある。以下では、燃料電池が設けられた流路を燃料電池流路といい、発熱体が設けられた流路を発熱体流路という。また、冷却器が設けられた流路を冷却器流路という。発熱体流路に冷媒を流さない状態で、燃料電池流路と冷却器流路に冷媒を循環させる場合がある。この状態では、燃料電池流路及び冷却器流路内の冷媒の温度が、発熱体流路内の冷媒の温度よりも高くなる。その後、発熱体流路に冷媒を流すと、発熱体流路内の低温の冷媒が、燃料電池流路内に流入する。これによって、燃料電池が急激に冷却され、燃料電池に熱的な負荷が加わる。本明細書では、燃料電池に加わる熱的な負荷を低減する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する第1の燃料電池冷却システムは、車両に搭載されている。この燃料電池冷却システムは、内部に冷媒が流れる冷媒流路を備えている。前記冷媒流路が、冷却器流路と、燃料電池流路と、発熱体流路を有している。前記燃料電池流路の上流端と前記発熱体流路の上流端が、前記冷却器流路の下流端に設けられた分岐部に接続されている。前記燃料電池流路の下流端と前記発熱体流路の下流端が、前記冷却器流路の上流端に設けられた合流部に接続されている。前記燃料電池システムは、前記冷却器流路内の前記冷媒を冷却する冷却器と、前記燃料電池流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される燃料電池と、作動時に発熱するとともに前記発熱体流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される発熱体と、前記燃料電池流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第1ポンプと、前記発熱体流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第2ポンプと、前記燃料電池、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプを制御する制御回路と、をさらに有する。前記制御回路が、前記車両の走行中に前記燃料電池と前記第1ポンプを作動させる。前記制御回路が、前記発熱体の作動中に前記第2ポンプを作動させる。前記車両の起動時に前記制御回路が、前記第2ポンプが停止している状態で前記第1ポンプを作動させる第1工程と、前記第1工程中に前記燃料電池流路または前記冷却器流路内の前記冷媒の温度が第1基準値を超えると前記第1ポンプに加えて前記第2ポンプを作動させる第2工程を実施する。
【0006】
第1の燃料電池冷却システムでは、車両の起動時に制御回路が、第2ポンプが停止している状態で第1ポンプを作動させる第1工程を実施する。したがって、第1工程では、燃料電池流路と冷却器流路に冷媒が循環する一方で、発熱体流路に冷媒が流れない。燃料電池流路と冷却器流路に循環する冷媒は、燃料電池で加熱されて昇温する。発熱体流路に冷媒を流すことなく燃料電池流路と冷却器流路に冷媒を循環させることで、循環する冷媒の温度をより速く上昇させることができる。これによって、燃料電池の温度をより速く上昇させることができる。したがって、車両起動後に燃料電池の発電効率が短時間で上昇する。また、制御回路は、第1工程中に燃料電池流路または冷却器流路内の冷媒の温度が第1基準値を超えると、第1ポンプに加えて第2ポンプを作動させる第2工程を実施する。第2工程では、燃料電池流路、発熱体流路及び冷却器流路によって構成される循環流路に冷媒が循環する。すなわち、発熱体流路内の冷媒が、燃料電池流路及び冷却器流路内の冷媒とともに循環する。したがって、発熱体流路内の冷媒の温度が上昇する。車両の起動が完了した後に、制御回路は、通常の制御を行う。通常の制御では、制御回路は、車両の走行中に燃料電池と第1ポンプを作動させ、発熱体の作動中に第2ポンプを作動させる。したがって、発熱体が作動すると、第2ポンプの作動によって発熱体流路内の冷媒が燃料電池流路内へ流れる。このとき、発熱体流路内の冷媒が事前に温められているので、燃料電池で急激な温度変化が生じ難い。したがって、燃料電池に加わる熱的な負荷が低減される。
【0007】
本明細書が開示する第2の燃料電池冷却システムは、車両に搭載されている。この燃料電池冷却システムは、内部に冷媒が流れる冷媒流路を備えている。前記冷媒流路が、冷却器流路と、燃料電池流路と、発熱体流路を有している。前記燃料電池流路の上流端と前記発熱体流路の上流端が、前記冷却器流路の下流端に設けられた分岐部に接続されている。前記燃料電池流路の下流端と前記発熱体流路の下流端が、前記冷却器流路の上流端に設けられた合流部に接続されている。前記燃料電池冷却システムは、前記冷却器流路内の前記冷媒を冷却する冷却器と、前記燃料電池流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される燃料電池と、作動時に発熱するとともに前記発熱体流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される発熱体と、前記燃料電池流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第1ポンプと、前記発熱体流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第2ポンプと、前記燃料電池、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプを制御する制御回路と、をさらに有する。前記制御回路が、前記車両の走行中に前記燃料電池と前記第1ポンプを作動させる。前記制御回路が、前記発熱体の作動中に前記第2ポンプを作動させる。前記制御回路が、前記車両の起動時に前記第1ポンプと前記第2ポンプを作動させる第1工程を実施する。
【0008】
第2の燃料電池冷却システムでは、制御回路が、車両の起動時に第1ポンプと第2ポンプを作動させる第1工程を実施する。したがって、第1工程では、燃料電池流路、発熱体流路及び冷却器流路によって構成される循環流路に冷媒が循環し、発熱体流路内の冷媒の温度が上昇する。車両の起動が完了した後に、制御回路は、通常の制御を行う。通常の制御では、制御回路は、車両の走行中に燃料電池と第1ポンプを作動させ、発熱体の作動中に第2ポンプを作動させる。したがって、発熱体が作動すると、第2ポンプの作動によって発熱体流路内の冷媒が燃料電池流路内へ流れる。このとき、発熱体流路内の冷媒が事前に温められているので、燃料電池で急激な温度変化が生じ難い。したがって、燃料電池に加わる熱的な負荷が低減される。
【0009】
本明細書が開示する第3の燃料電池冷却システムは、車両に搭載されている。この燃料電池冷却システムは、内部に冷媒が流れる冷媒流路を備えている。前記冷媒流路が、冷却器流路と、燃料電池流路と、発熱体流路を有している。前記燃料電池流路の上流端と前記発熱体流路の上流端が、前記冷却器流路の下流端に設けられた分岐部に接続されている。前記燃料電池流路の下流端と前記発熱体流路の下流端が、前記冷却器流路の上流端に設けられた合流部に接続されている。前記燃料電池冷却システムは、前記冷却器流路内の前記冷媒を冷却する冷却器と、前記燃料電池流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される燃料電池と、作動時に発熱するとともに前記発熱体流路内の前記冷媒との熱交換によって冷却される発熱体と、前記燃料電池流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第1ポンプと、前記発熱体流路内の前記冷媒を下流側へ送り出す第2ポンプと、前記燃料電池、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプを制御する制御回路と、をさらに有する。前記制御回路が、前記車両の走行中に前記燃料電池と前記第1ポンプを作動させる。前記制御回路が、前記発熱体の作動中に前記第2ポンプを作動させる。前記制御回路が、前記車両の走行中であって前記発熱体が作動していないときに、前記燃料電池流路内の前記冷媒の温度と前記発熱体流路内の前記冷媒の温度との差が第1基準値を超えると、前記第2ポンプを作動させる第1工程を実施する。
【0010】
この燃料電池システムでは、制御回路は、車両の走行中に燃料電池と第1ポンプを作動させ、発熱体の作動中に第2ポンプを作動させる。発熱体が作動しておらず第2ポンプが作動していない状態では、燃料電池流路と冷却流路に冷媒が循環し、発熱体流路内の冷媒は流れない。燃料電池での発熱量が大きいと、燃料電池流路と冷却流路に循環している冷媒の温度は上昇する。他方、発熱体流路内の冷媒は流れないので、発熱体流路内の冷媒の温度は上昇しない。制御回路は、車両の走行中であって発熱体が作動していないときに、燃料電池流路内の冷媒の温度と発熱体流路内の冷媒の温度との差が基準値を超えると、第2ポンプを作動させる第1工程を実施する。すなわち、第1工程では、第1ポンプと第2ポンプが両方作動する。したがって、燃料電池流路、発熱体流路、冷却流路によって構成される循環流路に冷媒が循環し、この循環流路内での冷媒の温度差が縮小される。これにより、燃料電池流路内の冷媒の温度と発熱体流路内の冷媒の温度との差が極端に大きくなることが抑制される。したがって、発熱体が作動するとともに第2ポンプが作動することによって発熱体流路内の冷媒が燃料電池流路内へ流れても、燃料電池で急激な温度変化が生じ難い。したがって、燃料電池に加わる熱的な負荷が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】燃料電池冷却システムの構成を示す冷媒回路図。
図2】実施例1の予備動作を示すフローチャート。
図3】実施例2の予備動作を示すフローチャート。
図4】実施例3の予備動作を示すフローチャート。
図5】実施例4の予備動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記第1の燃料電池冷却システムの一例では、前記制御回路が、前記第2工程中に前記冷媒流路内の前記冷媒の温度が第2基準値を超えると前記第2ポンプを停止させる第3工程を実施してもよい。
【0013】
この構成では、冷媒の温度差が縮小されたときに、第2ポンプを停止させて電力消費を抑制できる。
【0014】
上記第1の燃料電池冷却システムの一例では、前記制御回路が、前記第2工程において前記第2ポンプを最低回転数で作動させてもよい。
【0015】
なお、本明細書において、最低回転数とは、ポンプの仕様として定められた使用可能回転数の最小値である。
【0016】
第2工程では、発熱体流路内の冷媒を燃料電池流路及び冷却器流路内の冷媒と合流させるために第2ポンプを作動させる。第2ポンプを最低回転数で作動させることで、発熱体流路内の冷媒が燃料電池流路及び冷却器流路内の冷媒に対してゆっくり混ざる。したがって、第2工程において燃料電池が急激に温度変化することを抑制できる。
【0017】
上記第2の燃料電池冷却システムの一例では、前記制御回路が、前記第1工程中に前記冷媒流路内の前記冷媒の温度が基準値を超えると前記第2ポンプを停止させる第2工程を実施してもよい。
【0018】
この構成では、冷媒の温度差が縮小されたときに、第2ポンプを停止させて電力消費を抑制できる。
【0019】
上記第2の燃料電池冷却システムの一例では、前記制御回路が、前記第1工程において前記第2ポンプを最低回転数で作動させてもよい。
【0020】
上記第3の燃料電池冷却システムの一例では、前記制御回路が、前記第1工程中に前記燃料電池流路内の前記冷媒の前記温度と前記発熱体流路内の前記冷媒の前記温度との前記差が第2基準値を下回ると、前記第2ポンプを停止させる第2工程を実施してもよい。
【0021】
この構成では、冷媒の温度差が縮小されたときに、第2ポンプを停止させて電力消費を抑制できる。
【0022】
上記第3の燃料電池冷却システムの一例では、前記第1工程において、前記発熱体を作動させてもよい。
【0023】
この構成では、冷媒の温度差をより短時間で縮小することができる。
【0024】
上記第3の燃料電池冷却システムの一例では、前記制御回路が、前記第1工程において前記第2ポンプを最低回転数で作動させてもよい。
【実施例0025】
図1に示す実施例の燃料電池冷却システム10は、車両に搭載されている。燃料電池冷却システム10は、燃料電池12(FC:Fuel Cell)を有している。燃料電池12は、車両の走行用モータに電力を供給する。燃料電池冷却システム10は、燃料電池12を冷却する。
【0026】
燃料電池冷却システム10は、内部に冷媒が循環する冷媒流路50を有している。冷媒流路50は、冷却器流路52、燃料電池流路54、発熱体流路56、バイパス流路58を有している。
【0027】
冷却器流路52は、合流部60から分岐部62まで伸びている。冷却器流路52は、上流側流路52a、分岐流路52b、分岐流路52c、及び、下流側流路52dを有している。上流側流路52aの上流端は、冷却器流路52の上流端である合流部60に接続されている。分岐流路52b、52cは、上流側流路52aの下流側で2つに分岐した流路である。分岐流路52b、52cの下流端は、下流側流路52dの上流端に接続されている。下流側流路52dの下流端は、冷却器流路52の下流端である分岐部62に接続されている。冷却器流路52内の冷媒は、上流端である合流部60から、上流側流路52a、分岐流路52b、52c、下流側流路52dを経て下流端である分岐部62まで流れる。分岐流路52b、52cにおいては、冷媒が分岐流路52b、52cに分かれて流れる。分岐流路52bにはラジエータ14が設けられている。ラジエータ14は、外気との熱交換によって分岐流路52b内を流れる冷媒を冷却する。分岐流路52cには、ラジエータ16が設けられている。ラジエータ16は、外気との熱交換によって分岐流路52c内を流れる冷媒を冷却する。
【0028】
バイパス流路58の上流端は、冷却器流路52の上流側流路52aの途中に接続されている。バイパス流路58の下流端は、冷却器流路52の下流側流路52dの途中に接続されている。バイパス流路58と上流側流路52aとの接続部には、ロータリーバルブ20が設けられている。以下では、上流側流路52aのうち、ロータリーバルブ20よりも上流側の部分を第1部分52a-1といい、ロータリーバルブ20よりも下流側の部分を第2部分52a-2という。ロータリーバルブ20は、第1部分52a-1からバイパス流路58に流れる冷媒の流量と、第1部分52a-1から第2部分52a-2に流れる冷媒の流量を変更する。ロータリーバルブ20の開度Sが100%の場合には、第1部分52a-1内を流れる冷媒の全てが第2部分52a-2へ流れる。ロータリーバルブ20の開度Sが50%の場合には、第1部分52a-1内を流れる冷媒の半分が第2部分52a-2へ流れ、第1部分52a-1内を流れる冷媒の残りの半分がバイパス流路58へ流れる。ロータリーバルブ20の開度Sが0%の場合には、第1部分52a-1内を流れる冷媒の全てがバイパス流路58へ流れる。バイパス流路58には、イオン交換器18が設置されている。イオン交換器18は、バイパス流路58内を流れる冷媒中からイオンを除去する。冷媒には冷媒流路50を構成する配管等からイオンが溶出する。バイパス流路58(すなわち、イオン交換器18)に冷媒を流すことで、溶媒中のイオン濃度を低下させることができる。
【0029】
燃料電池流路54と発熱体流路56の上流端は、分岐部62において冷却器流路52の下流端に接続されている。燃料電池流路54と発熱体流路56の下流端は、合流部60において冷却器流路52の上流端に接続されている。
【0030】
燃料電池流路54には、ポンプ21が介装されている。ポンプ21は、燃料電池流路54内の冷媒を下流側へ送り出す。ポンプ21の下流側において、燃料電池流路54が分岐流路54aと分岐流路54bに分岐している。分岐流路54aに、燃料電池12と温度センサ42が設置されている。燃料電池12は、分岐流路54a内を流れる冷媒との熱交換によって冷却される。温度センサ42は、燃料電池12の下流側に配置されている。温度センサ42は、燃料電池12を通過後の冷媒の温度T1を検出する。分岐流路54bに、インタークーラー24が設置されている。インタークーラー24は、分岐流路54b内を流れる冷媒との熱交換によって冷却される。
【0031】
発熱体流路56には、ポンプ22、ブレーキレジスタ28(BR:Brake Resistor)、温度センサ44及び逆止弁30が設置されている。ポンプ22は、発熱体流路56内の冷媒を下流側へ送り出す。ブレーキレジスタ28は、ポンプ22の下流側に設置されている。ブレーキレジスタ28は、余剰電力ヒータまたは電気ヒータと呼ばれる場合がある。ブレーキレジスタ28は、バッテリの満充電状態において車両のモータが回生動作をしたときに、回生動作によって発生した余剰電力を熱エネルギーに変換して消費する。ブレーキレジスタ28は、発熱体流路56内の冷媒との熱交換によって冷却される。温度センサ44は、ブレーキレジスタ28の下流側に配置されている。温度センサ44は、ブレーキレジスタ28を通過後の冷媒の温度T2を検出する。逆止弁30は、温度センサ44の下流側に配置されている。逆止弁30は、発熱体流路56内で冷媒が逆流することを防止する。
【0032】
燃料電池冷却システム10は、制御回路として、統合ECU70(統合Electronic Control Unit)とEV-ECU72(Electric Vehicle-Electronic Control Unit)を有している。EV-ECU72は、ブレーキレジスタ28等を制御する。統合ECU70は、ポンプ21、22、燃料電池12等を制御する。
【0033】
次に、燃料電池冷却システム10の動作について説明する。統合ECU70は、燃料電池12を作動させることによって発電を行う。車両は、燃料電池12で生成された電力によって走行する。車両の走行中に、統合ECU70は燃料電池12を継続して動作させる。また、統合ECU70は、車両が起動すると、ポンプ21を作動させる。車両の走行中に、統合ECU70は、ポンプ21を作動した状態に維持する。ポンプ21が作動すると、燃料電池流路54と冷却器流路52によって構成される循環流路に冷媒が流れる。この循環流路内を流れる冷媒は、ラジエータ14、16によって冷却される。したがって、ラジエータ14、16によって冷却された冷媒が燃料電池流路54(特に、分岐流路54a)に流入し、燃料電池12が冷却される。したがって、燃料電池12が過度に高温になることが防止される。なお、ポンプ22が停止している状態でポンプ21が作動している場合には、逆止弁30が閉じることによって、燃料電池流路54の下流端から発熱体流路56へ冷媒が流入することが防止される。すなわち、逆止弁30が閉じることによって、発熱体流路56における冷媒の逆流が防止される。
【0034】
燃料電池流路54と冷却器流路52によって構成される循環流路に冷媒が循環しているときに、統合ECU70は、ロータリーバルブ20の開度Sを制御することによって、冷却器流路52の第1部分52a-1を通過した冷媒の一部または全部をバイパス流路58へ流す。これによって、統合ECU70は、イオン交換器18によって冷媒中のイオンを除去するイオン除去処理を実行する。統合ECU70は、冷媒中のイオン濃度が上昇したときに、イオン除去処理を実施する。
【0035】
バッテリの満充電状態において車両のモータが回生動作を実行すると、EV-ECU72はブレーキレジスタ28を作動させる。これによって、モータで生成される余剰電力がブレーキレジスタ28で消費される。ブレーキレジスタ28が作動すると、ブレーキレジスタ28が発熱する。EV-ECU72は、ブレーキレジスタ28を作動させると、その情報を統合ECU70へ送る。統合ECU70は、ブレーキレジスタ28が作動すると、ポンプ22を作動させる。ポンプ22が作動すると、逆止弁30が開き、発熱体流路56内の冷媒が下流側へ流れる。したがって、冷却器流路52を分岐部62まで流れた冷媒が、燃料電池流路54と発熱体流路56に分岐して流れるようになる。燃料電池流路54を通過した冷媒と発熱体流路56を通過した冷媒は、合流部60で合流して冷却器流路52へ流れる。発熱体流路56内に冷媒が流れると、発熱体流路56内の冷媒によってブレーキレジスタ28が冷却される。これによって、ブレーキレジスタ28が過度に高温になることが防止される。
【0036】
次に、統合ECU70が実施する予備動作について説明する。以下では、実施例1~4の予備動作について説明する。
【実施例0037】
図2は、実施例1の予備動作を示している。図2に示すように、実施例1の予備動作は、イグニッションオンまたはレディオン(すなわち、車両の起動)の直後に実施される。車両の起動前においては、燃料電池12の温度と冷媒流路50内の冷媒の温度は低い。イグニッションオンの直後に、統合ECU70は、ステップS2を実施する。ステップS2では、統合ECU70は、ポンプ22が停止している状態で燃料電池12とポンプ21を作動させる。燃料電池12が作動することで、発電が行われる。ポンプ21が作動することで、燃料電池流路54と冷却器流路52によって構成される循環流路に冷媒が循環する。また、ステップS2ではポンプ22が停止しているので、発熱体流路56内の冷媒は流れない。また、ステップS2では、ラジエータ14、16が作動する。このため、燃料電池流路54と冷却器流路52によって構成される循環流路内を循環している冷媒は、燃料電池12で加熱され、ラジエータ14、16で冷却される。統合ECU70は、ステップS2の実行中に繰り返しステップS4を実行する。ステップS4では、統合ECU70は、温度センサ42で検出される温度T1(すなわち、燃料電池12を通過した直後の冷媒の温度)が基準温度Ta(例えば、30℃)以上であるか否かを判定する。ステップS4で温度T1が基準温度Ta以上であると判定するまで、統合ECU70はステップS2を継続する。
【0038】
ステップS2の開始直後は、燃料電池12の温度が低いので、燃料電池12の発電効率が低い。燃料電池12の作動によって燃料電池12の温度が上昇する。但し、燃料電池流路54と冷却器流路52によって構成される循環流路内を循環している冷媒が燃料電池12を冷却するので、燃料電池12の温度が急激に上昇することが抑制される。燃料電池12の温度は、時間の経過に伴って安定的に上昇する。また、循環している冷媒の温度は、燃料電池12による加熱によって徐々に上昇する。このとき、発熱体流路56内の冷媒が流れていないので、循環している冷媒の量が比較的少ない。したがって、循環している冷媒の温度は比較的速く上昇する。したがって、燃料電池12の温度も比較的速く上昇する。このように、ステップS2では、発熱体流路56内の冷媒を停止させた状態で燃料電池流路54と冷却器流路52によって構成される循環流路内に冷媒を循環させることで、燃料電池12の温度を比較的速く上昇させることができる。したがって、ステップS2の実行中に、燃料電池12の発電効率を比較的速い速度で上昇させることができる。統合ECU70は、燃料電池流路54内の冷媒の温度T1が温度Taに達すると、ステップS6を実行する。
【0039】
なお、上述したステップS4では、循環している冷媒の温度が所定値まで上昇したか否かを判定するために実施している。したがって、ステップS4では、燃料電池流路54内の冷媒の温度が基準値に達したか否かの判定に変えて、冷却器流路52内の冷媒の温度が基準値に達したか否かの判定を実施してもよい。
【0040】
ステップS6では、統合ECU70は、ポンプ22を最低回転数で作動させる。すなわち、ステップS6では、統合ECU70は、燃料電池12とポンプ21が作動している状態を維持しながら、ポンプ22を最低回転数で作動させる。なお、ステップS6では、統合ECU70は、ブレーキレジスタ28が停止中であっても、ポンプ22を作動させる。統合ECU70は、ステップS6の実行中に繰り返しステップS8を実行する。ステップS8では、統合ECU70は、ポンプ22の停止条件が成立したか否かを判定する。統合ECU70は、ポンプ22の停止条件が成立するまで、ステップS6を継続する。統合ECU70は、ステップS8でYES(すなわち、ポンプ22の停止条件が成立した)と判定すると、ステップS9においてポンプ22を停止させる。
【0041】
ステップS6では、ポンプ22が作動するので、発熱体流路56内の冷媒が流れる。すなわち、ステップS6では、燃料電池流路54と発熱体流路56と冷却器流路52によって構成される循環流路内を冷媒が循環する。ステップS2の実行中は発熱体流路56内の冷媒の流れが停止しているので、ステップS6の開始時において発熱体流路56内の冷媒の温度は低い。他方、ステップS2の実行中に燃料電池流路54と冷却器流路52内の冷媒の温度は比較的高い温度まで上昇している。ステップS2の実施中に、燃料電池流路54と冷却器流路52及び発熱体流路56の間で冷媒が混ざるので、発熱体流路56内の冷媒の温度が上昇する。
【0042】
ステップS6においては、ポンプ22を最低回転数で回転させることで、燃料電池12に熱的な負荷が加わることが抑制される。例えば、ステップS6においてポンプ22を高い回転数で回転させると、発熱体流路56内の低温の冷媒が急速に冷却器流路52を介して燃料電池流路54内に流入する。すると、比較的高い温度まで温度上昇している燃料電池12内に低温の冷媒が急速に流入し、燃料電池12が急激に温度低下する。このため、燃料電池12に温度衝撃が加わり、燃料電池12に熱的な負荷が加わる。これに対し、実際のステップS6では、ポンプ22を最低回転数で回転させるので、発熱体流路56内の低温の冷媒は徐々に燃料電池流路54と冷却器流路52内の冷媒と合流する。したがって、燃料電池12の急激な温度低下が抑制される。また、循環している冷媒の温度が基準値に達したとき(すなわち、ステップS4でYESと判定されたとき)にステップS6が開始されるので、ステップS6の開始時点において循環している冷媒(すなわち、燃料電池流路54内と冷却器流路52内の冷媒)の温度と発熱体流路56内の冷媒の温度の差はそれほど大きくない。これによっても、ステップS6の実施時に燃料電池12の急激な温度低下が抑制される。このため、燃料電池12に熱的な負荷が加わることを抑制できる。また、ステップS6は、発熱体流路56内の冷媒を燃料電池流路54と冷却器流路52内の冷媒と合流させることを目的として実施されるので、ポンプ22を最低回転数で回転させても問題は生じない。また、ポンプ22を最低回転数で回転させることで、ポンプ22における電力消費を抑制することもできる。
【0043】
上述したように、統合ECU70は、ステップS8でポンプ22の停止条件が成立したと判定すると、ステップS9でポンプ22を停止させる。ポンプ22の停止条件としては、発熱体流路56内の冷媒の温度が十分に上昇したと判断できる条件を採用することができる。
【0044】
例えば、ステップS6を開始してから所定時間が経過したことをポンプ22の停止条件とすることができる。ステップS6を開始してから所定時間が経過していれば、発熱体流路56内の冷媒の温度が一定値以上まで上昇したと判断できる。したがって、ステップS6を開始してから所定時間が経過したときに、ステップS8でYESと判定し、ステップS9でポンプ22を停止させることができる。
【0045】
また、例えば、冷媒流路50内の冷媒の温度が基準温度以上であることをポンプ22の停止条件とすることができる。例えば、温度センサ42で検出される温度T1が基準温度Tb以上であることをポンプ22の停止条件とすることができる。なお、ステップS8で使用する基準温度Tbは、ステップS4で使用する基準温度Taよりも高い温度である。燃料電池12を通過した後の冷媒の温度T1は発熱体流路56内の冷媒の温度と相関を有するので、温度T1が基準温度Tb以上であれば、発熱体流路56内の冷媒の温度が一定値以上まで上昇したと判断できる。したがって、温度T1が基準温度Tb以上まで上昇したときに、ステップS8でYESと判定し、ステップS9でポンプ22を停止させることができる。また、例えば、温度センサ44で検出される温度T2が基準温度Tc以上であることをポンプ22の停止条件とすることができる。温度T2は発熱体流路56内の冷媒の温度である。したがって、この停止条件は、発熱体流路56内の冷媒の温度を直接的に判定していることになる。したがって、温度T2が基準温度Tc以上まで上昇したときに、ステップS8でYESと判定し、ステップS9でポンプ22を停止させることができる。また、冷却器流路52内の冷媒の温度が所定温度以上であることをポンプ22の停止条件としてもよい。
【0046】
ステップS9でポンプ22を停止させた後は、統合ECU70は、車両の走行中における通常の制御を実行する。通常の制御では、統合ECU70は、燃料電池12と第1ポンプ21を継続的に作動させる。また、統合ECU70は、ブレーキレジスタ28の停止中はポンプ22を停止させる。このため、ブレーキレジスタ28の停止中は、発熱体流路56内の冷媒は流れていない。また、統合ECU70は、ブレーキレジスタ28が作動すると、ポンプ22を作動させる。このとき、統合ECU70は、ブレーキレジスタ28の温度に応じた高い回転数でポンプ22を作動させる。したがって、発熱体流路56内で停滞していた冷媒が、急速に燃料電池流路54と冷却器流路52内の冷媒と合流する。発熱体流路56内の冷媒は事前に実施されたステップS6において温められているので、発熱体流路56内の冷媒が急速に燃料電池流路54と冷却器流路52内の冷媒と合流しても、燃料電池12で急激な温度変化は生じない。これによって、燃料電池12に熱的な負荷が加わることが抑制される。このように、車両起動直後に実施される予備動作で発熱体流路56内の冷媒が温められることで、その後にブレーキレジスタ28の作動によって発熱体流路56内の冷媒が燃料電池流路54内に急速に流入しても、燃料電池12に熱的な負荷が加わることを抑制できる。
【0047】
実施例1の基準温度Taは、第1の燃料電池冷却システムにおける第1基準値の一例である。実施例1の基準温度Tbは、第1の燃料電池冷却システムにおける第2基準値の一例である。
【実施例0048】
図3は、実施例2の予備動作を示している。図3に示すように、実施例2の予備動作は、イグニッションオンまたはレディオン(すなわち、車両の起動)の直後に実施される。イグニッションオンの直後に、統合ECU70は、ステップS16を実施する。ステップS16では、統合ECU70は、燃料電池12とポンプ21を作動させるとともに、ポンプ22を最低回転数で作動させる。すなわち、実施例2では、実施例1とは異なり、イグニッションオンの直後にポンプ21だけでなくポンプ22も作動させる。ポンプ21、22が作動することで、燃料電池流路54、発熱体流路56及び冷却器流路52によって構成される循環流路に冷媒が循環する。このため、燃料電池流路54、発熱体流路56及び冷却器流路52によって構成される循環流路内を循環している冷媒は、燃料電池12で加熱され、ラジエータ14、16で冷却される。ステップS16の実施中に、循環している冷媒の温度は、燃料電池12による加熱によって徐々に上昇する。したがって、ステップS16の実施中に、発熱体流路56内の冷媒の温度が徐々に上昇する。ステップS16では、発熱体流路56内の冷媒を燃料電池流路54と冷却器流路52内の冷媒と合流させることを目的としてポンプ22を作動させるので、ポンプ22を最低回転数で回転させても問題は生じない。また、ポンプ22を最低回転数で回転させることで、ポンプ22における電力消費を抑制することもできる。統合ECU70は、ステップS16の実施中にステップS18の判定(ポンプ22の停止条件が成立したか否かの判定)を繰り返し実施する。なお、ポンプ22の停止条件は、実施例1において説明したものと等しい。例えば、温度センサ42で検出される温度T1が基準温度Tb以上であることをポンプ22の停止条件とすることができる。統合ECU70は、ステップS18でYESと判定すると、ステップS19でポンプ22を停止させる。
【0049】
ステップS19でポンプ22を停止させた後は、統合ECU70は、車両の走行中における通常の制御を実行する。通常の制御では、統合ECU70は、燃料電池12と第1ポンプ21を継続的に作動させる。また、統合ECU70は、ブレーキレジスタ28の停止中はポンプ22を停止させ、ブレーキレジスタ28の作動中にポンプ22を作動させる。ブレーキレジスタ28の作動によってポンプ22を作動させると、発熱体流路56内で停滞していた冷媒が急速に燃料電池流路54と冷却器流路52内の冷媒と合流する。しかしながら、発熱体流路56内の冷媒は事前に実施されたステップS18において温められているので、燃料電池12で急激な温度変化は生じない。これによって、燃料電池12に熱的な負荷が加わることが抑制される。
【0050】
実施例2の基準温度Tbは、第2の燃料電池冷却システムにおける基準値の一例である。
【実施例0051】
図4は、実施例3の予備動作を示している。実施例3の予備動作は、車両の走行中であってブレーキレジスタ28が停止しているときに実行される。なお、車両の走行中にブレーキレジスタ28が動作すると、実施例3の予備動作よりもブレーキレジスタ28を冷却する動作が優先的に実施される。
【0052】
上述したように、図4の予備動作は、車両の走行中であってブレーキレジスタ28が停止しているときに実行される。したがって、図4の予備動作の開始時には、燃料電池12とポンプ21が作動しており、ポンプ22が停止している。ステップS24において、統合ECU70は、燃料電池流路54内の冷媒の温度T1と発熱体流路56内の冷媒の温度T2の差が基準値Tthよりも大きいか否かを判定する。統合ECU70は、T1-T2>Tth1が満たされない限り、ステップS24の判定を繰り返し実行する。
【0053】
図4の予備動作の開始時の状態(すなわち、燃料電池12とポンプ21が作動しており、ポンプ22が停止している状態)では、燃料電池流路54と冷却器流路52によって構成される循環流路に冷媒が循環している一方で、発熱体流路56内の冷媒は流れていない。循環している冷媒は燃料電池12によって加熱されるので、一定温度以上の温度を有している。他方、発熱体流路56内の冷媒は停滞しているので、発熱体流路56内の冷媒の温度は低い。燃料電池12の発熱によって燃料電池流路54内の冷媒の温度T1が上昇したり、時間の経過によって発熱体流路56内の冷媒の温度T2が低下すると、温度T1と温度T2の差が基準値Tth1よりも大きくなる。この場合、統合ECU70はステップS24でYESと判定し、ステップS26を実行する。
【0054】
ステップS26では、統合ECU70は、ポンプ22を作動させる。すなわち、統合ECU70は、燃料電池12とポンプ21を作動した状態に維持しながら、ポンプ22を作動させる。ステップS26では、統合ECU70は、ポンプ22を最低回転数で回転させる。ポンプ22が作動することで、発熱体流路56内の冷媒が流れる。すなわち、ステップS26では、燃料電池流路54と発熱体流路56と冷却器流路52によって構成される循環流路内を冷媒が循環する。すなわち、ステップS26では、燃料電池流路54内と冷却器流路52内の比較的温度が高い冷媒に対して発熱体流路56内の低温の冷媒を混ぜることで、発熱体流路56内の冷媒の温度を上昇させる。ステップS26においては、ポンプ22を最低回転数で回転させるので、発熱体流路56内の低温の冷媒は徐々に燃料電池流路54と冷却器流路52内の冷媒と合流する。したがって、燃料電池12の急激な温度低下が抑制される。このため、燃料電池12に熱的な負荷が加わることを抑制できる。また、ステップS26は、発熱体流路56内の冷媒を燃料電池流路54と冷却器流路52内の冷媒と合流させることを目的として実施されるので、ポンプ22を最低回転数で回転させても問題は生じない。また、ポンプ22を最低回転数で回転させることで、ポンプ22における電力消費を抑制することができる。
【0055】
上述したように、ステップS26では発熱体流路56内の冷媒と燃料電池流路54内の冷媒が混ざるので、ステップS26の間に燃料電池流路54内の冷媒の温度T1と発熱体流路56内の冷媒の温度T2の差が縮小する。統合ECU70は、ステップS26の実施中にステップS28の判定を繰り返し実施する。ステップS28では、統合ECU70は、温度T1と温度T2の差が基準値Tth2以下であるか否かを判定する。なお、基準値TTth2は基準値Tth1以下の値である。温度T1と温度T2の差が基準値Tth2以下である場合には、統合ECU70は、ステップS28でYESと判定し、ステップS29でポンプ22を停止させる。すなわち、統合ECU70は、ステップS26を実施することで温度T1と温度T2の温度差が基準値Tth2以下まで縮小されると、ステップS28でYESと判定し、ステップS29でポンプ22を停止させる。ステップS29でポンプ22を停止させた後は、統合ECU70は、車両の走行中における通常の制御を実行する。
【0056】
このように、実施例3では、車両の走行中にステップS24が繰り返されることで温度T1と温度T2の差が監視される。そして、温度T1と温度T2の差が基準値Tth1を超えると、ステップS26が実施されることで、温度T1と温度T2の差が基準値Tth2以下の値まで縮小される。このため、実施例3では、車両の走行中に温度T1と温度T2の差が極端に大きくなることが防止される。
【0057】
通常の制御では、統合ECU70は、燃料電池12と第1ポンプ21を継続的に作動させる。また、統合ECU70は、ブレーキレジスタ28の停止中はポンプ22を停止させ、ブレーキレジスタ28の作動中にポンプ22を作動させる。ブレーキレジスタ28の作動によってポンプ22を作動させると、発熱体流路56内で停滞していた冷媒が急速に燃料電池流路54と冷却器流路52内の冷媒と合流する。しかしながら、実施例3の予備動作によって車両の走行中に温度T1と温度T2の差が極端に大きくなることが防止されるので、ブレーキレジスタ28の作動によってポンプ22が作動しても(すなわち、発熱体流路56内の冷媒が燃料電池流路54と冷却器流路52内の冷媒と合流しても)、燃料電池12で急激な温度変化は生じない。これによって、燃料電池12に熱的な負荷が加わることが抑制される。
【0058】
実施例3の基準値Tth1は、第3の燃料電池冷却システムにおける第1基準値の一例である。実施例3の基準値Tth2は、第3の燃料電池冷却システムにおける第2基準値の一例である。
【実施例0059】
図5に示す実施例4の予備動作は、ステップS26でポンプ22とともにブレーキレジスタ28を作動させる点、及び、ステップS29でポンプ22とともにブレーキレジスタ28を停止させる点で実施例3の予備動作と異なる。実施例4の予備動作のその他の構成は、実施例3の予備動作と等しい。
【0060】
実施例4のステップS26では、統合ECU70は、ポンプ22とともにブレーキレジスタ28を作動させる。すなわち、ステップS26では、統合ECU70は、モータで余剰電力が発生していなくても、ブレーキレジスタ28を作動させる。実施例4のステップS26では、ブレーキレジスタ28を作動させるので、発熱体流路56内の冷媒がブレーキレジスタ28によって加熱される。このため、実施例4のステップS26では、実施例3のステップS26よりも速く温度T1と温度T2の差を縮小させることができる。実施例4のステップS29では、統合ECU70は、ポンプ22と共にブレーキレジスタ28を停止させることで、通常の制御に戻る。
【0061】
なお、上述した実施例では、発熱体流路56に設置されている発熱体がブレーキレジスタ28であったが、他の発熱体が発熱体流路56に設置されていてもよい。
【0062】
また、上述した実施例では、燃料電池流路54において、ポンプ21が燃料電池12の上流側に配置されていたが、ポンプ21が燃料電池12の下流側に配置されていてもよい。また、上述した実施例では、発熱体流路56において、上流側からポンプ22、ブレーキレジスタ28、逆止弁30の順にこれらの装置が配置されていたが、これらの装置の順序が異なっていてもよい。
【0063】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0064】
10:燃料電池冷却システム
12:燃料電池
14:ラジエータ
16:ラジエータ
18:イオン交換器
20:ロータリーバルブ
21:ポンプ
22:ポンプ
24:インタークーラー
28:ブレーキレジスタ
30:逆止弁
50:冷媒流路
52:冷却器流路
54:燃料電池流路
56:発熱体流路
58:イオン交換器流路
図1
図2
図3
図4
図5