(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096700
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】脂肪族アルコールとGABAとを含有する飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20230630BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20230630BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20230630BHJP
C12G 3/04 20190101ALI20230630BHJP
C12C 5/02 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/38 S
A23L2/52
C12G3/04
C12C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212627
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】飯見 勇哉
(72)【発明者】
【氏名】鴨川 俊
(72)【発明者】
【氏名】三浦 康資
(72)【発明者】
【氏名】河野 美香
【テーマコード(参考)】
4B115
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B115LH11
4B115LP02
4B117LC02
4B117LK07
4B117LK08
4B128CP16
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、低アルコール飲料又はノンアルコール飲料の酒感を増強する手段を提供することである。
【解決手段】炭素数4又は5の脂肪族アルコールと共に、γ-アミノ酪酸を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数4又は5の脂肪族アルコールとγ-アミノ酪酸とを含有し、当該脂肪族アルコールの合計含有量が1~300ppmである、アルコールの含有量が3v/v%未満の飲料。
【請求項2】
γ-アミノ酪酸の含有量が10ppm以上である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
当該脂肪族アルコールの合計含有量が1~200ppmであり、γ-アミノ酪酸の含有量が50~5000ppmである、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
炭素数4又は5の脂肪族アルコールが、2-メチル-1-プロパノール、3-メチル-1-ブタノール、及び2-メチル-1-ブタノールからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
アルコール含有量が0.00v/v%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
アルコールの含有量が3v/v未満である飲料の酒感を増強するための方法であって、
当該飲料における炭素数4又は5の脂肪族アルコールの合計含有量を1~300ppmに調整する工程、及び
当該飲料にγ-アミノ酪酸を配合する工程
を含む、前記方法。
【請求項7】
当該飲料におけるγ-アミノ酪酸の含有量が10ppm以上に調整される、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素数4又は5の脂肪族アルコールとγ-アミノ酪酸(GABA)とを含有する低アルコール飲料又はノンアルコール飲料、及びそれに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、消費者の健康志向の高まりに伴い、或いは道路交通法上の飲酒運転の罰則の強化により、様々なタイプのノンアルコール飲料に対する需要が高まっている。例えば、チューハイやカクテルに味を似せたノンアルコール飲料は、それぞれチューハイテイスト飲料、ノンアルコールカクテルと呼ばれ、或いは総称として、アルコールテイスト飲料とも呼ばれており、広く受け入れられている。
【0003】
これらのノンアルコール飲料には、モデルとなった酒類の風味が求められる。しかしながら、当該飲料にはアルコールが含まれないため、アルコールに由来する酒らしい味わいなどが不足している。これに関連して、非アルコール飲料又は低アルコール飲料にアルコール感や醸造酒感を付与するために特定の脂肪族アルコールを用いる発明が知られている(特許文献1、2)。
【0004】
GABAは、非発酵アルコールテイスト飲料の味の厚みを付与することや、リラックス効果に寄与することが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-60975号公報
【特許文献2】特開2016-185140号公報
【特許文献3】特開2017-184697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の発明者は、特許文献1や2に示されている技術が酒らしい味わいやアルコール感を付与することができるが、それは必ずしも十分ではないことを見出した。
したがって、本発明の課題は、低アルコール飲料又はノンアルコール飲料に特定の脂肪族アルコールによって付与された酒感を増強する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、炭素数4又は5の脂肪族アルコールを含有する低アルコール飲料又はノンアルコール飲料にGABAを添加すると、酒感を増強することができることを見出した。
【0008】
本発明は、以下のものに関するが、これらに限定されない。
1.炭素数4又は5の脂肪族アルコールとγ-アミノ酪酸とを含有し、当該脂肪族アルコールの合計含有量が1~300ppmである、アルコールの含有量が3v/v%未満の飲料。
2.γ-アミノ酪酸の含有量が10ppm以上である、1に記載の飲料。
3.当該脂肪族アルコールの合計含有量が1~200ppmであり、γ-アミノ酪酸の含有量が50~5000ppmである、1又は2に記載の飲料。
4.炭素数4又は5の脂肪族アルコールが、2-メチル-1-プロパノール、3-メチル-1-ブタノール、及び2-メチル-1-ブタノールからなる群から選択される、1~3のいずれか一項に記載の飲料。
5.アルコール含有量が0.00v/v%である、1~4のいずれか一項に記載の飲料。
6.アルコールの含有量が3v/v未満である飲料の酒感を増強するための方法であって、
当該飲料における炭素数4又は5の脂肪族アルコールの合計含有量を1~300ppmに調整する工程、及び
当該飲料にγ-アミノ酪酸を配合する工程
を含む、前記方法。
7.当該飲料におけるγ-アミノ酪酸の含有量が10ppm以上に調整される、6に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の飲料は、酒感を増強することができる。本発明に関連して用いられる「酒感」とは、酒らしい厚みと、醸造酒様の深み、ふくらみ及び余韻と、若干の苦味とが感じられることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の飲料及び方法について、以下に説明する。
なお、特に断りがない限り、本明細書において用いられる「ppm」は、重量/容量(w/v)のppmを意味し、これは「mg/L」と同義である。また、本明細書において単に「アルコール」と記載する場合、それは、特に断りがない限りエタノールを意味し、炭素数4又は5の脂肪族アルコールを意味しない。
【0011】
(炭素数4又は5の脂肪族アルコール)
本発明の飲料は、炭素数4又は5の脂肪族アルコールを含有する。当該飲料は、一種類の当該脂肪族アルコールを含有してもよいし、二種類以上の当該脂肪族アルコールを含有してもよい。当該飲料中の当該脂肪族アルコールの合計含有量は1~300ppm、好ましくは1~200ppm、より好ましくは3~80ppmである。この特徴により、アルコール含有量が少ないか、またはアルコールが入っていないにもかかわらず、酒らしい味わいを有する飲料を提供することができる。
【0012】
当該脂肪族アルコールの例は、2-メチル-1-プロパノール、1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノールであり、好ましくは、2-メチル-1-プロパノール、3-メチル-1-ブタノール、及び2-メチル-1-ブタノールからなる群から選択され、より好ましくは3-メチル-1-ブタノールである。
【0013】
本発明の飲料中の当該脂肪族アルコールの含有量は、GC-MS、HPLC法などの公知のいずれの方法で測定してもよいが、例えば、GC-MSを利用し、下記の条件で測定することができる。
【0014】
<3-メチル-1-ブタノールの測定条件>
・カラム: IC-for amine (30m×0.32mmi.d.)
・オーブン: 40℃(5min)~10℃/min~110℃(0min)~20℃/min~280℃(9.5min)
・カラム流量: 2.5ml/min (コンスタントフロー)
・スプリット比: 1:10:00
・注入口温度: 200℃
・トランスファーライン温度: 280℃
・イオン源温度: 230℃
・m/z=70
上記の分析条件は、他の脂肪族アルコールの分析にも利用することができる。具体的には、2-メチル-1-プロパノールは、3-メチル-1-ブタノールと同様の測定条件で、m/z=43を指標として測定することができ、2-メチル-1-ブタノールは、3-メチル-1-ブタノールと同様の測定条件で、m/z=70を指標として測定することができる。
【0015】
(GABA)
本発明の飲料は、γ-アミノ酪酸(GABA)を含有する。GABAは、前記脂肪族アルコールと組み合わさって、低アルコール飲料又はノンアルコール飲料の酒感を増強することができる。
【0016】
本発明の飲料におけるGABAの含有量は、好ましくは10ppm以上であり、より好ましくは10~5000ppm、より好ましくは25~5000ppm、より好ましくは50~5000ppm、より好ましくは60~5000ppm、より好ましくは60~500ppmである。
【0017】
本発明の飲料の好ましい態様においては、当該脂肪族アルコールの合計含有量が1~200ppmであり、GABAの含有量が50~5000ppmである。本発明の飲料の別の好ましい態様においては、当該脂肪族アルコールの合計含有量が1~200ppmであり、GABAの含有量が60~5000ppmである。本発明の飲料の別の好ましい態様においては、当該脂肪族アルコールの合計含有量が1~200ppmであり、GABAの含有量が60~500ppmである。
【0018】
GABAの含有量は、GC-MS、HPLC法などの公知のいずれの方法で測定してもよい。
(低アルコール飲料およびノンアルコール飲料)
本発明の飲料は低アルコール飲料又はノンアルコール飲料であり、アルコール含有量が低いか、又はアルコールを含有しない。具体的には、本発明の飲料におけるアルコール含有量は、3v/v%未満である。当該含有量は、2.0v/v%以下、1.0v/v%以下、又は0.00v/v%であってもよい。
【0019】
なお、本発明のノンアルコール飲料は、検出できない程度の極く微量のアルコールを含む飲料を除くものではない。好ましくは、本発明のノンアルコール飲料のアルコール含有量は0.00v/v%である。確認的に記載すると、「0.00v/v%」には、0.001v/v%のように四捨五入をすると0.00v/v%となる数値も含まれる。
【0020】
ノンアルコール飲料の例は、アルコール飲料に似た味を有するアルコールテイスト飲料である。アルコールテイスト飲料の例としては、ビールテイスト飲料、チューハイテイスト飲料、ノンアルコールカクテル、サワーテイスト飲料、ワインテイスト飲料、日本酒テイスト飲料などが例示されるが、これらに限定されない。チューハイテイスト飲料、ノンアルコールカクテル、サワーテイスト飲料を例にしてより詳しく説明すると、これらの飲料は、それぞれ、ノンアルコールでありながらモデルとなったチューハイ(本発明との関連では、蒸留酒を水、ジュース、茶などの別の飲料で希釈したアルコール炭酸飲料を意味する)、カクテル(本発明との関連では、スピリッツやリキュールと、柑橘類などの酸味のある果汁と、甘味成分と、必要に応じて炭酸とを含有する飲料を意味する)、サワー(本発明との関連では、スピリッツと、柑橘類などの酸味のある果汁と、甘味成分と、炭酸とを含有する飲料を意味する)のような味わいを実現させた飲料のことを指す。
【0021】
本発明の低アルコール飲料には、アルコールをどのような手段で含有させてもよいが、典型的には、当該飲料はアルコール原料を含有し、それによってアルコールを含有する。アルコール原料としては特に限定はないが、例えば、スピリッツ類(ラム、ウオッカ、ジン、テキーラ等)、リキュール類、ウイスキー、ブランデー又は焼酎などが挙げられ、さらにはビールやワインなどの醸造酒類でもよい。これらのアルコール原料は、それぞれ単独又は併用して用いることができる。
【0022】
本発明の低アルコール飲料の種類は特に限定されないが、好ましくは、チューハイ、カクテル、サワーなどである。
本明細書においては、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、飲料から濾過又は超音波によって必要に応じて炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を水蒸気蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めることができる。
【0023】
(炭酸ガス)
本発明の飲料は、炭酸ガスを含んでもよい。炭酸ガスは、当業者に通常知られる方法を用いて飲料に付与することができ、例えば、これらに限定されないが、二酸化炭素を加圧下で飲料に溶解させてもよいし、ツーヘンハーゲン社のカーボネーター等のミキサーを用いて配管中で二酸化炭素と飲料とを混合してもよいし、また、二酸化炭素が充満したタンク中に飲料を噴霧することにより二酸化炭素を飲料に吸収させてもよいし、飲料と炭酸水とを混合してもよい。これらの手段を適宜用いて炭酸ガス圧を調節する。
【0024】
本発明の飲料が炭酸ガスを含有する場合、その炭酸ガス圧は、特に限定されないが、好ましくは0.7~4.5kgf/cm2、より好ましくは0.8~2.8kgf/cm2である。本発明において、炭酸ガス圧は、京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500Aを用いて測定することができる。例えば、試料温度を20℃にし、前記ガスボリューム測定装置において容器内空気中のガス抜き(スニフト)、振とう後、炭酸ガス圧を測定する。本明細書においては、特に断りがない限り、炭酸ガス圧は、20℃における炭酸ガス圧を意味する。
【0025】
(果汁又は野菜汁)
本発明の飲料は、果汁及び/又は野菜汁を含有してもよい。果汁は、果実を搾汁して得られる果汁をそのまま使用するストレート果汁、あるいは濃縮した濃縮果汁のいずれの形態であってもよい。また、透明果汁、混濁果汁を使用することもでき、果実の外皮を含む全果を破砕し種子など特に粗剛な固形物のみを除いた全果果汁、果実を裏ごしした果実ピューレ、或いは、乾燥果実の果肉を破砕もしくは抽出した果汁を用いることもできる。野菜汁も、上記の果汁と同様の形態で用いることができる。
【0026】
果汁の種類は、特に限定されないが、例えば、柑橘類(オレンジ、うんしゅうみかん、グレープフルーツ、レモン、ライム、柚子、いよかん、なつみかん、はっさく、ポンカン、シイクワシャー、かぼす等)、仁果類(りんご、なし、など)、核果類(もも、梅、アンズ、スモモ、さくらんぼ、など)、しょうか類(ブドウ、カシス、ブルーベリー、など)、熱帯、亜熱帯性果実類(パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、ライチ、など)、果実的野菜(いちご、メロン、スイカ、など)の果汁が挙げられる。これらの果汁は、1種類を単独使用しても、2種類以上を併用してもよい。また、野菜汁の種類は、例えば、トマト汁、コーン汁、かぼちゃ汁、ニンジン汁等が挙げられ、野菜汁は、1種類を単独使用しても、2種類以上を併用してもよい。また、果汁と野菜汁を組み合わせてもよい。
【0027】
本発明の飲料における果汁の含有量は、特に限定されないが、典型的には、果汁率に換算して0~100w/w%、又は10w/w%未満である。
本発明では、飲料中の「果汁率」を、飲料100ml中に配合される果汁配合量(g)を用いて下記換算式によって計算することとする。また濃縮倍率を算出する際はJAS規格に準ずるものとし、果汁に加えられた糖質、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。
【0028】
果汁率(w/w%)=<果汁配合量(g)>×<濃縮倍率>/100mL/<飲料の密度>×100
本発明の飲料における野菜汁の含有量は、特に限定されないが、典型的には、0~100w/w%、又は10w/w%未満である。ここで、野菜汁の含有量は、上記の果汁率に換算した果汁の含有量に準じて求める。
【0029】
(他の成分)
本発明における飲料には、他にも、本発明の効果を損なわない限り、飲料に通常配合する添加剤、例えば、甘味料、酸味料、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等を配合することができる。
【0030】
(容器詰め飲料)
本発明の飲料は、容器詰めの形態で提供することができる。容器の形態には、缶等の金属容器、ペットボトル、紙パック、瓶、パウチなどが含まれるが、これらに限定されない。例えば、本発明の飲料を容器に充填した後にレトルト殺菌等の加熱殺菌を行う方法や、飲料を殺菌して容器に充填する方法を通じて、殺菌された容器詰め製品を製造することができる。
【0031】
(方法)
本発明は、別の側面では、低アルコール飲料又はノンアルコール飲料の酒感を増強するための方法である。当該方法は、当該飲料における炭素数4又は5の脂肪族アルコールの合計含有量を1~300ppmに調整する工程、及び当該飲料にγ-アミノ酪酸を配合する工程を含む。好ましくは、当該飲料におけるγ-アミノ酪酸の含有量が10ppm以上に調整される。
【0032】
飲料中の各成分の含有量を調整する方法は、当該飲料に関する上の記載から自明である。そのタイミングも限定されない。例えば、上記工程を同時に行ってもよいし、別々に行ってもよいし、工程の順番を入れ替えてもよい。最終的に得られた飲料が、上記の条件を満たせばよい。また、上記成分の含有量の好ましい範囲は、飲料に関して上記した通りである。さらに、追加的な他の成分の具体例や量も、飲料に関して上記した通りである。
【0033】
(数値範囲)
明確化のために記載すると、本明細書における数値範囲は、その端点、即ち下限値及び上限値を含む。
【実施例0034】
以下に実施例に基づいて本発明の説明をするが、本発明はこれらの実施例に限定される
ものではない。
(試験例1) 炭素数4又は5の脂肪族アルコールの影響
炭素数4又は5の脂肪族アルコールが有する酒感付与効果を検討した。
【0035】
アルコール含有量(Alc.)0v/v%の水溶液に、3-メチル-1-ブタノールを以下の表に示す含有量で添加して、各種サンプルを調製した。
具体的には、当該脂肪族アルコール含有量が1ppmのときであれば、3-メチル-1-ブタノール0.1mgを量り取り、50mlのイオン交換水に添加し、よくかき混ぜ、溶け残りがないことを目視で確認し、さらにイオン交換水を加え、全量をメスフラスコで100mlに調整し、これを飲料モデル溶液(サンプル飲料)とした。同様にして、以下の表に示した含有量となるよう、他の飲料モデル溶液を作成した。対照品として、イオン交換水を用いた(サンプルNo.1)。
【0036】
得られた各種サンプルの、酒感(酒らしい厚みと、醸造酒様の深み、ふくらみ及び余韻と、若干の苦味)の付与効果が感じられるかどうかについて、4名の専門パネラーにより、6点を「とてもよく感じられる」、1点を「感じられない」として、6点から1点までの6段階で、官能評価を行った。パネラー4名の評価結果を集計し、その平均値が1以上2未満の場合を「-」、2以上3未満の場合を「±」、3以上4未満の場合を「+」、4以上5未満の場合を「++」、5以上の場合を「+++」とした。
【0037】
なお、評価の個人差を少なくするために、パネラーは、事前に各スコアと味との関係の共通認識を確立してから評価試験を実施した。結果を以下の表に示す。
【0038】
【0039】
3-メチル-1-ブタノールの添加により酒感が付与され、特定の含有量範囲で好ましい結果が得られた。
(試験例2) GABAの影響
試験例1で調製した、3-メチル-1-ブタノールの含有量が10ppmであるサンプルNo.6の飲料モデル溶液に、種々の量のGABAを加えて飲料モデル溶液のサンプルを調製し、GABAの酒感増強作用を検討した。GABAの添加量は以下の表に示したとおりである。
【0040】
各サンプルについて官能評価を実施した。GABAを添加しなかったものをコントロール(Ctrl)とし、各サンプルにおいて酒感の増強効果が感じられるかどうかについて、4名の専門パネラーにより、6点を「とてもよく感じられる」、1点を「感じられない」として、6点から1点までの6段階で、官能評価を行った。パネラー4名の評価結果を集計し、その平均値が1以上2未満の場合を「-」、2以上3未満の場合を「±」、3以上4未満の場合を「+」、4以上5未満の場合を「++」、5以上の場合を「+++」とした。この場合にも、評価の個人差を少なくするために、パネラーは、事前に各スコアと味との関係の共通認識を確立してから評価試験を実施した。
【0041】
結果を以下の表に示す。GABAが酒感を増強することができることが確認された。
【0042】
【0043】
(試験例3) GABAと炭素数4又は5の脂肪族アルコールの影響
試験例1及び2に記載した方法に準じて種々の飲料モデル溶液のサンプルを調製した。脂肪族アルコール(3-メチル-1-ブタノール)とGABAの添加量は以下の表に示したとおりである。
【0044】
各サンプルについて、試験例2と同様に官能評価を実施し、酒感の増強効果を確認した。対照としたのは、3-メチル-1-ブタノール含有量が1又は200ppmであり、GABAを添加していないサンプルである。結果を以下の表に示す。特定の範囲で優れた酒感増強効果が見られた。
【0045】
【0046】
(試験例4) 炭素数4又は5の脂肪族アルコールの種類の影響
試験例1の、3-メチル-1-ブタノールの含有量が10ppmであるサンプルNo.6の飲料モデル溶液と同様にして、3-メチル-1-ブタノールの代わりに同量の2-メチル-1-ブタノール又は2-メチル-1-プロパノールを含有するサンプルを調製した。得られた二つのサンプルを、試験例1と同様に官能評価したところ、サンプルNo.6と同様の結果が得られた。したがって、幅広い種類の炭素数4又は5の脂肪族アルコールが、同様の酒感の付与効果をもたらすことが明らかとなった。
【0047】
次いで、それら二つのサンプルに種々の量のGABAを加えて、酒感の増強効果を検討した。試験例2と同様に官能評価を実施したところ、以下の表に示す結果が得られた。
【0048】
【0049】
3-メチル-1-ブタノールを2-メチル-1-ブタノール又は2-メチル-1-プロパノールに置き換えても、3-メチル-1-ブタノールを用いた場合と同様の傾向が認められた。