(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096710
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212642
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 通昌
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英之
(72)【発明者】
【氏名】石川 清大
(72)【発明者】
【氏名】大野 彩美
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA22
5E316AA43
5E316AA55
5E316CC02
5E316CC04
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC12
5E316CC13
5E316CC14
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5E316CC37
5E316DD25
5E316DD33
5E316EE08
5E316EE33
5E316EE44
5E316FF15
5E316HH40
(57)【要約】
【課題】配線基板の特性向上。
【解決手段】実施形態の配線基板100は、積層されている導体層11a、11b及び絶縁層12a、12bによって構成されていて互いに隣接する第1領域1a及び第2領域1bを有している第1積層体1と、積層されている導体層21a、21b及び絶縁層22a、22bを含んでいて第1領域1aと重なっている第2積層体2と、を含んでいる。第1積層体1は可撓性を有し、配線基板100は、第1積層体1の第2領域1bからなるフレキシブル部100Fと、第1積層体1の第1領域1a及び第2積層体2を含むリジッド部100Rとを有し、第2積層体2は、アンテナ5を構成する放射素子51、52を含む導体層21bを含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層されている導体層及び絶縁層によって構成されていて互いに隣接する第1領域及び第2領域を有している第1積層体と、
積層されている導体層及び絶縁層を含んでいて前記第1領域と重なっている第2積層体と、
を含む配線基板であって、
前記第1積層体は可撓性を有し、
前記配線基板は、前記第1積層体の前記第2領域からなるフレキシブル部と、前記第1積層体の前記第1領域及び前記第2積層体を含むリジッド部とを有し、
前記第2積層体は、アンテナを構成する放射素子を含む導体層を含んでいる。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1積層体を構成する絶縁層は、熱硬化性樹脂を含む第1層と、前記第1層における前記第2積層体側と反対側の表面に積層されている第2層とを含む2層構造を有し、
前記第2層は熱可塑性樹脂を含んでいる。
【請求項3】
請求項2記載の配線基板であって、
前記第1積層体は、複数の絶縁層を含んでおり、
前記第1積層体に含まれる前記複数の絶縁層の全てが前記2層構造を有している。
【請求項4】
請求項3記載の配線基板であって、
前記第1積層体に含まれる前記複数の絶縁層のうち最も前記第2積層体側に形成されている第1絶縁層は、前記第2領域において前記第1層を有さずに前記第2層を有している。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1積層体を構成する絶縁層は補強材を含まず、前記第2積層体を構成する絶縁層は補強材を含んでいる。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1積層体を構成する導体層と、前記第2積層体を構成する導体層とが電気的に接続されている。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2積層体は、前記第1領域において前記配線基板の積層構造の中心に位置するコア基板を含んでいる。
【請求項8】
第1面及び前記第1面の反対面である第2面を有していて前記第1面に第1金属層を備える出発基板を用意することと、
前記第1金属層を介して前記第1面の上に部分的に剥離膜を設けることと、
前記剥離膜の上、及び前記剥離膜に覆われていない前記第1面の上に、第2金属層を前記出発基板と反対側の表面に備える第1絶縁層を形成することと、
前記出発基板の第2面から前記第1金属層に達する第1溝を前記剥離膜の縁部に沿って前記出発基板に形成することと、
前記第1絶縁層の上に、所定の数の第2絶縁層及び第1導体層を交互に積層することによって、前記第1絶縁層を含む第1積層体を形成することと、
前記出発基板の前記第2面側に、所定の数の第3絶縁層及び第2導体層を交互に積層することによって、アンテナを構成する放射素子、及び前記出発基板を含む第2積層体を形成することと、
前記第2積層体及び前記第1絶縁層を貫通して前記第2金属層に達する第2溝を前記剥離膜の縁部に沿うように形成することと、
前記第2積層体のうちの前記剥離膜と平面視で重なる所定部分を除去することによって、前記第1積層体のうちの前記第2積層体と重ならない部分を可撓な状態にすることと、
を含む、配線基板の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の配線基板の製造方法であって、前記所定の数の第2絶縁層それぞれを積層することは、熱硬化性の樹脂を含む第1層を形成することと、熱可塑性樹脂を含む第2層を前記第1層の上に積層することと、を含んでいる。
【請求項10】
請求項8記載の配線基板の製造方法であって、さらに、前記第1金属層のうちの前記第1溝に重なる部分を除去することを含んでいる。
【請求項11】
請求項8記載の配線基板の製造方法であって、前記第3絶縁層を形成することは、補強材を含む樹脂シートを前記出発基板の前記第2面側に積層することを含んでいる。
【請求項12】
請求項8記載の配線基板の製造方法であって、
前記所定の数の第3絶縁層のうちの1つである最下層の絶縁層は、前記第1溝の形成の前に前記出発基板の前記第2面上に積層され、
前記第1溝を形成することは、前記第1溝で前記最下層の絶縁層を貫通することを含んでいる。
【請求項13】
請求項8記載の配線基板の製造方法であって、
前記第1絶縁層を形成することは、前記剥離膜に覆われていない前記出発基板の第1面の上に熱硬化性樹脂を含む樹脂シートを配置することを含んでいる。
【請求項14】
請求項8記載の配線基板の製造方法であって、前記第2積層体の前記所定部分を除去することは、前記剥離膜を前記所定部分と共に除去することを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、放射素子を含むフレキシブルな誘電体積層体の上にリジッドな誘電体基板が接合されているアンテナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のアンテナでは、フレキシブルな誘電体積層体の全面にリジッドな誘電体基板が接合されている。そのため、アンテナ全体の柔軟性が低下し、フレキシブルな誘電体積層体を用いているにも拘わらず、アンテナの実装形態に関して十分な自由度が得られないことがある。また、誘電体基板は導体層を含んでいないので、放射素子の周囲の回路を構成する導体パターンが配置され得ないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、積層されている導体層及び絶縁層によって構成されていて互いに隣接する第1領域及び第2領域を有している第1積層体と、積層されている導体層及び絶縁層を含んでいて前記第1領域と重なっている第2積層体と、を含んでいる。そして、前記第1積層体は可撓性を有し、前記配線基板は、前記第1積層体の前記第2領域からなるフレキシブル部と、前記第1積層体の前記第1領域及び前記第2積層体を含むリジッド部とを有し、前記第2積層体は、アンテナを構成する放射素子を含む導体層を含んでいる。
【0006】
本発明の配線基板の製造方法は、第1面及び前記第1面の反対面である第2面を有していて前記第1面に第1金属層を備える出発基板を用意することと、前記第1金属層を介して前記第1面の上に部分的に剥離膜を設けることと、前記剥離膜の上、及び前記剥離膜に覆われていない前記第1面の上に、第2金属層を前記出発基板と反対側の表面に備える第1絶縁層を形成することと、前記出発基板の第2面から前記第1金属層に達する第1溝を前記剥離膜の縁部に沿って前記出発基板に形成することと、前記第1絶縁層の上に、所定の数の第2絶縁層及び第1導体層を交互に積層することによって、前記第1絶縁層を含む第1積層体を形成することと、前記出発基板の前記第2面側に、所定の数の第3絶縁層及び第2導体層を交互に積層することによって、アンテナを構成する放射素子、及び前記出発基板を含む第2積層体を形成することと、前記第2積層体及び前記第1絶縁層を貫通して前記第2金属層に達する第2溝を前記剥離膜の縁部に沿うように形成することと、前記第2積層体のうちの前記剥離膜と平面視で重なる所定部分を除去することによって、前記第1積層体のうちの前記第2積層体と重ならない部分を可撓な状態にすることと、を含んでいる。
【0007】
本発明の実施形態によれば、実装形態に関する自由度が高く、アンテナ及びその周辺回路について良好な特性を有する配線基板が提供されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3A】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図3B】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図3C】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図3D】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図3E】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図3F】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図3G】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図3H】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図4】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施形態の配線基板及び配線基板の製造方法が図面を参照しながら説明される。
図1には、一実施形態の配線基板の一例である配線基板100の断面図が示されている。
図2Aは配線基板100を概略的に示す斜視図であり、
図2Bは
図1のIIB部の拡大図である。なお、配線基板100は本実施形態の配線基板の一例に過ぎない。例えば、実施形態の配線基板に含まれる導体層及び絶縁層それぞれの数は、
図1の配線基板100に含まれる導体層及び絶縁層それぞれの数に限定されない。
【0010】
図1に示されるように、配線基板100は、積層されている導体層及び絶縁層によって構成されている第1積層体1と、積層されている導体層及び絶縁層を含んでいる第2積層体2と、を含んでいる。
図1の例の第2積層体2は、配線基板100の厚さ方向と直交し、且つ互いに対向する2つの主面(第1面2a及び第2面2b)を有する絶縁層22aと、第1面2a上及び第2面2b上それぞれに形成されている導体層21aとを含んでいる。第2積層体2は、さらに、絶縁層22aの第2面2bの上に積層されている、複数の絶縁層22bと複数の導体層21bとを含んでいる。複数の絶縁層22bのそれぞれと複数の導体層21bのそれぞれとが交互に積層されている。
【0011】
一方、
図1の例の第1積層体1は、絶縁層22aの第1面2aの上に積層されている、絶縁層12a(第1絶縁層)及び絶縁層12a上に形成されている導体層11bを含んでいる。第1積層体1は、さらに、絶縁層12a及び導体層11bの上に積層されている複数の絶縁層12b(第2絶縁層)と複数の導体層11a(第1導体層)とを含んでいる。複数の絶縁層12bのそれぞれと複数の導体層11aのそれぞれとが交互に積層されている。
【0012】
第1積層体1は、
図1及び
図2Aに示されるように、互いに隣接する第1領域1a及び第2領域1bを有している。第2積層体2は、第1積層体1の第1領域1aと平面視で重なっている。しかし、第2積層体2は、第1積層体1の第2領域1bと重なる部分を有しておらず、第2領域1bと平面視で重なっていない。なお、「平面視」は、配線基板100を、その厚さ方向に平行な視線で見ることを意味する。
【0013】
実施形態の説明では、配線基板100の厚さ方向において絶縁層22aから遠い側は、「外側」、「上側」若しくは「上方」、又は単に「上」とも称され、絶縁層22aに近い側は、「内側」、「下側」若しくは「下方」、又は単に「下」とも称される。さらに、各導体層及び各導体層に含まれる導体パターン、並びに各絶縁層において、絶縁層22aと反対側を向く表面は「上面」とも称され、絶縁層22a側を向く表面は「下面」とも称される。なお配線基板100の厚さ方向は「Z方向」とも称される。
【0014】
図1の例の配線基板100では、絶縁層22aは配線基板100が含む絶縁層のうちで最も厚い。第1領域1aにおいて、絶縁層22aの第1面2aの上に形成されている絶縁層12a、12b及び導体層11a、11bの数と、絶縁層22aの第2面2bの上に形成されている絶縁層22b及び導体層21bの数とは同じである。絶縁層22aは、第1領域1aにおいて配線基板100の積層構造の中心に位置している。絶縁層22a、及びその両側の導体層21aは、第1領域1aにおいて配線基板100のコア基板20を構成している。すなわち第2積層体2は、第1積層体1の第1領域1aにおいて配線基板100の積層構造の中心に位置するコア基板20を含んでいる。
【0015】
図1の配線基板100は、絶縁層22aの第1面2a上及び第2面2b上それぞれに形成されている導体層21a同士を接続するスルーホール導体31を含んでいる。スルーホール導体31は2つの導体層21aと一体的に形成されている。スルーホール導体31は、絶縁層22aを貫く貫通孔の内壁に沿って形成されていて筒状の形体を有している。筒状のスルーホール導体31の内部は、例えば、エポキシ樹脂などの任意の樹脂を含む樹脂体31aで充填されている。
【0016】
図1の配線基板100は、さらに、絶縁層12a、各絶縁層12b、及び各絶縁層22bそれぞれを貫通して各絶縁層の両側の導体層同士を接続するビア導体32を含んでいる。絶縁層12aを貫通するビア導体32は、絶縁層22aの第1面2a上の導体層21aと導体層11bとを接続している。各絶縁層12bを貫通するビア導体32は、各絶縁層12bを挟み込む導体層11bと導体層11aとを接続するか、各絶縁層12bを挟み込む導体層11a同士を接続している。各絶縁層22bを貫通するビア導体32は、各絶縁層22bを挟み込む導体層21aと導体層21bとを接続するか、各絶縁層22bを挟み込む導体層21b同士を接続している。
【0017】
図1の配線基板100は、さらに、第1積層体1における第2積層体2と反対側の表面を覆う被覆層41、及び、第2積層体2における第1積層体1と反対側の表面を覆う被覆層42を含んでいる。被覆層41には、被覆層41の直ぐ下の導体層11aの一部を露出させる開口41aが設けられており、被覆層42には、被覆層42の直ぐ下の導体層21bを露出させる開口42aが設けられている。
【0018】
本実施形態の配線基板100において第1積層体1は可撓性を有している。すなわち、第1積層体1を構成する導体層11a、11b、及び絶縁層12a、12bそれぞれは、損傷せずに曲がり得る柔軟性を有している。例えば、第1積層体1を構成するこれら導体層及び絶縁層それぞれは、そのような柔軟性を有し得る材料で形成されていて柔軟性を阻害しない厚さを有している。第1積層体1は、積極的に曲げることを意図して形成されていてもよい。例えば、第1積層体1を構成する各絶縁層及び各導体層は、一般的なフレキシブルプリント配線基板(FPC)を構成する絶縁層及び導体層に用いられる材料を用いて、FPCを構成する絶縁層及び導体層が有する厚さと同様の厚さを有するように形成されていてもよい。絶縁層12a及び各絶縁層12bそれぞれの厚さは、例えば、10μm~100μm程度である。第1積層体1の厚さは、例えば、50μm~500μm程度である。なお、実施形態の説明において「可撓性」及び「可撓」は、いずれも、対象物(例えば第1積層体1)が、その内部に損傷を生じることなく20°以上の角度で1回以上いずれかの位置で曲がり得る程度の柔軟性を意味する。
【0019】
一方、第2積層体2は、第1積層体1よりも高い剛性を有している。第2積層体2は、少なくとも、実使用において想定され得る外力で顕著且つ容易に変形しない程度の剛性を有している。第2積層体2全体でそのような剛性を有し得るように、第2積層体2を構成する絶縁層22a、22b及び導体層21a、21bのいずれか又は全部が形成されている。例えば、第2積層体2を構成する各絶縁層及び各導体層は、一般的なリジッド配線基板を構成する絶縁層及び導体層に用いられる材料を用いて、リジッド配線基板を構成する絶縁層及び導体層が有する厚さと同様の厚さを有するように形成されていてもよい。各絶縁層22bの厚さは、例えば、10μm~100μm程度である。また、絶縁層22aの厚さは、例えば、100μm~1000μm程度である。第2積層体2の厚さは、例えば、150μm~1200μm程度である。なお、第2積層体2が有する「剛性」は、第2積層体2の内部の導体層及び絶縁層に損傷を生じさせずに5°以上の角度で曲がり得ない程度の非変形容易性(曲がり難さ)を意味する。
【0020】
前述したように、第2積層体2は、第1積層体1の第1領域1aとだけ重なっており、第2領域1bには重なっていない。すなわち、第1積層体1は、第2領域1bにおいて単独で配線基板100を構成している。従って、配線基板100は、第1積層体1の第2領域1bにおいて第1積層体1が有する柔軟性を有し得る。一方、配線基板100は、第1積層体1の第1領域1aにおいて、少なくとも第2積層体2が有する剛性以上の剛性を有し得る。すなわち、配線基板100は、第1積層体1の第2領域1bからなるフレキシブル部100Fと、第1積層体1の第1領域1a及び第2積層体2を含むリジッド部100Rを有している。そのため、損傷するようなダメージを与えることなく、フレキシブル部100Fにおいて配線基板100を必要に応じて折り曲げることができる。そのため、曲がっている箇所を有する設置面などへの配線基板100の配置などが容易であり、実装形態の自由度が高いと考えられる。
【0021】
特に配線基板100では、
図2Aに示されるように、平面視でリジッド部100Rとフレキシブル部100Fとの境界線Bは、Z方向と直交する平面に沿う1つの方向(
図2Aの例ではX方向)に沿って、配線基板100を横切っている。従って、平面視でリジッド部100Rとフレキシブル部100Fとの境界線Bと交わらない任意の直線、例えば境界線Bと平行な直線に沿って、容易に配線基板100を折り曲げることができる。
【0022】
第1積層体1又は第2積層体2を構成する各導体層(導体層11a、11b、21a、21b)は、任意の導体パターンを含み得る。特に実施形態の配線基板100は、アンテナ5を形成する導体パターンを第2積層体2に含んでいる。
図1の例では、第2積層体2を構成する複数の導体層21bのうち、最も外側の2つの導体層21bが、アンテナ5の放射素子として機能する導体パッド(第1放射素子51及び第2放射素子52)を含んでいる。最も外側の導体層21bは第2放射素子52を含み、その導体層21bと隣接する下層側の導体層21bが第1放射素子51を含んでいる。第1放射素子51と第2放射素子52とによってアンテナ5が構成されている。このように本実施形態では、第2積層体2は、アンテナ5を構成する放射素子51を含む導体層21bを含んでいる。
【0023】
第1放射素子51と第2放射素子52との間には絶縁層22bが介在しており、第1放射素子51と第2放射素子52とは、絶縁層22bを介して対向している。第1放射素子51及び第2放射素子52は、互いに電磁的に結合することによって、アンテナ5から放射される高周波信号の周波数帯域を拡大し得ることがある。
図1の例では、第2放射素子52は被覆層42に覆われている。
【0024】
第1放射素子51には、アンテナ5から送信されるべき信号が配線基板100の他の導体パターンから伝えられる。また、アンテナ5によって受信された外来の信号は、第1放射素子51を介して、配線基板100内の他の導体パターンに伝えられる。すなわち、
図1の例の第1放射素子51は、アンテナ5において電気信号が供給されるべき、又は外来電波に基づく電気信号を誘起させるべき給電素子である。一方、
図1の例において、第2放射素子52は、第2放射素子52以外の導体から絶縁されており、他の導体からの通電が行われない無給電素子である。
【0025】
図1の例のように、第1放射素子51は、ビア導体32を介して第2積層体2内の導体層21b及び導体層21aに接続され得る。配線基板100では、第2積層体2が導体層を含んでいるので、例えばアンテナ5の近傍への配置が好ましい回路素子を導体層21bの導体パターンを用いて配置し得ることがある。例えば、導体層21aの導体パターンでコンデンサやコイルなどの受動素子を形成することによって、これらの受動素子をアンテナ5の近傍に配置し得ることがある。そうすることで、アンテナ5を含む送信/受信回路の好ましい特性が得られることがある。本実施形態によれば、このようにアンテナ及びその周辺回路について良好な特性を有する配線基板が得られることがある。
【0026】
また、本実施形態では、実使用において想定され得る外力で容易に変形しない程度の剛性を有する第2積層体2内でアンテナ5が構成されているので、第1放射素子51と第2放射素子52との間隔が変化し難い。従って、FPCなどでアンテナが構成される場合と比べて、アンテナ5の特性が安定すると考えられる。また、可撓性を有すべく薄く形成されがちな導体層及び絶縁層で構成されるFPC内にアンテナが形成される場合と比べて、利得帯域幅などの、アンテナ5に備えさせる特性の自由度が高いと考えられる。
【0027】
さらに、
図1の例では、第1積層体1を構成する導体層11a及び導体層11bと、第2積層体2を構成する導体層21a及び導体層21bとが、スルーホール導体31を介して電気的に接続されている。従って、第1放射素子51も、スルーホール導体31を介して短い経路で、第1積層体1内の導体層11a、11bと電気的に接続され得る。第1放射素子51へと、又は第1放射素子51から、送られる電気信号が第1積層体1内の導体層11a、11bを伝播する。アンテナ5を構成する第1放射素子51には、例えば数GHz以上の周波数を有する高周波信号が印加され得る。
図1の例では、スルーホール導体31を介して短い経路で第1積層体1内の導体層11a、11bと第2積層体2内の導体層21a、21bとが接続されるので、反射や減衰などの少ない高周波信号の伝送特性が得られることがある。例えば、アンテナを備えるFPCの配線と、そのFPCと別個に形成されたリジッド配線基板の配線とがはんだなどで接続された伝送路と比べて、
図1の例の第1積層体1と第2積層体2との間では、良好な高周波信号の伝送特性を有する伝送路が得られると考えられる。
【0028】
なお、配線基板100では、アンテナ5が、複数の導体層21bのうちの最も外側の2つの導体層21bに設けられた第1放射素子51及び第2放射素子52によって構成されているが、第1放射素子51及び第2放射素子52は、第2積層体2内の任意の導体層に設けられ得る。また、第1放射素子51と第2放射素子52との間には、
図1の例のように1層の絶縁層22bだけが介在していてもよく、任意の複数の絶縁層22bが介在していてもよい。さらに、アンテナ5は、第2放射素子52(無給電素子)を有さずに第1放射素子51(給電素子)だけで構成される、所謂単層の平面アンテナであってもよい。
【0029】
第2積層体2に含まれる絶縁層22a及び絶縁層22bは、主に、適切な絶縁性を有する任意の樹脂によって形成されている。絶縁層22a、22bを形成する樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、及びフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂が例示される。
図1に示される例では、第2積層体を構成する絶縁層22a及び絶縁層22bは、それぞれ、補強材221を含んでいる。補強材221としては、ガラス繊維やアラミド繊維などが例示されるが、補強材221はこれらに限定されない。絶縁層22a、22bが補強材221を含んでいると、第2積層体2が十分な剛性を有し易い。絶縁層22a、22bは、例えば二酸化ケイ素やアルミナなどの粒体からなるフィラー(図示せず)を含んでいてもよい。図示されないフィラーの材料の選択や含有量の調整によって、絶縁層22a、22bの熱膨張率や誘電率などの物性が調整されていてもよい。
【0030】
第1積層体1に含まれる絶縁層12a及び絶縁層12bも、主に、適切な絶縁性を有する任意の樹脂によって形成されている。絶縁層12a、12bは、例えば、エポキシ樹脂
や、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などの熱硬化性樹脂を含み得る。絶縁層12a、12bは、さらに、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フッ化エチレン(PTFE)樹脂、ポリエステル(PE)樹脂、及び変性ポリイミド(MPI)樹脂のような熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
【0031】
図1に示される例では、第1積層体1を構成する絶縁層12a及び絶縁層12bは補強材を含んでいない。例えばガラス繊維などからなる補強材を絶縁層12a及び絶縁層12bが含んでいないので、第1積層体1に適度な可撓性が備えられる。絶縁層12a、12bは、例えば二酸化ケイ素やアルミナなどの粒体からなるフィラー(図示せず)を含んでいてもよい。図示されないフィラーの材料の選択や含有量の調整によって、絶縁層12a、12bの熱膨張率や誘電率などが調整されていてもよい。
【0032】
被覆層41及び被覆層42も、絶縁性を有する任意の樹脂によって形成され得る。被覆層41は、例えばPI樹脂やPET樹脂などで形成され、一般的なFPCにおいて導体層を保護すべく設けられる所謂カバーレイの機能を有していてもよい。被覆層42は、例えば感光性を有するエポキシ樹脂やPI樹脂などで形成される。被覆層42は、配線基板100における第2積層体2側の表面のソルダーレジストとして機能し得る。
【0033】
導体層11a、11b、導体層21a、21b、スルーホール導体31、及びビア導体32は、例えば銅やニッケルなどの任意の金属で形成されている。各導体層は、
図1では簡略化されて単一の層で構成されるように示されているが、具体的には、
図2Bに示される導体層11a、11b、21aのように、2以上の層を含む多層構造を有し得る。
図2Bの例では、導体層21aは、金属箔210、金属膜211、及び金属膜212によって構成されている。導体層11bは、金属箔110、金属膜111、及び金属膜112によって構成されている。一方、導体層11aは、金属膜111及び金属膜112によって構成されている。また、金属膜111と金属膜112とによって各絶縁層12bを貫通するビア導体32が形成されている。
図2Bには示されていないが、導体層21b(
図1参照)も、導体層11bと同様の3層構造又は導体層11aと同様の2層構造を有している。
【0034】
各絶縁層22b(
図1参照)を貫通するビア導体32は、導体層11aを構成する第1及び第2の金属膜111、112のような導電体で形成されている。スルーホール導体31(
図1参照)は、導体層21aを形成する金属膜211及び金属膜212によって形成されている。金属膜111、211は、例えば無電解めっき膜やスパッタリング膜などであり、金属膜112、212は、例えば金属膜111又は金属膜211を給電層として用いる電解めっきによって形成される電解めっき膜である。
【0035】
図2Bを参照して、
図1の例の配線基板100において第1積層体1を構成する絶縁層12a及び絶縁層12bの構造が詳述される。
図2Bに示されるように、絶縁層12a及び絶縁層12bは、第1層121と、第2層122とを含む2層構造を有している。絶縁層12a及び各絶縁層12bそれぞれにおいて、第1層121は、第2層122の下側に、すなわち、第2層122に関して第2積層体2側に配置されている。従って、第1層121は、絶縁層12a及び各絶縁層12bそれぞれに関して第2積層体2側の導体層(例えば絶縁層12aに対する導体層21a)と接している。
【0036】
一方、絶縁層122は、絶縁層12a及び各絶縁層12bそれぞれにおいて第1層121の上側に、すなわち、第1層121に関して第2積層体2側と反対側に配置されている。第2層122は、絶縁層12a及び各絶縁層12bそれぞれにおいて、第1層121における第2積層体2側と反対側の表面に積層されている。従って、第2層122は、絶縁層12a及び各絶縁層12bそれぞれに関する第2積層体2側と反対側の導体層(例えば絶縁層12aに対する導体層11b)と接している。
【0037】
そして、2層構造を有する絶縁層12a及び各絶縁層12bそれぞれにおいて、第1層121は熱硬化性樹脂を含み、第2層122は熱可塑性樹脂を含んでいる。第1層121に含まれる熱硬化性樹脂は、例えば、前述した、エポキシ樹脂、PI樹脂、又は、PET樹脂などである。第2層122に含まれる熱可塑性樹脂は、例えば、前述した、フッ素樹脂、LCP、PTFE樹脂、PE樹脂、及びMPI樹脂などである。
【0038】
上記フッ素樹脂、LCP、PTFE樹脂、PE樹脂、及びMPI樹脂などの熱可塑性樹脂は、例えば2~3程度の比較的低い比誘電率、及び1×10-4~1×10-3程度の低い誘電正接を有し得る。そのため、第1積層体1の中を伝播する高周波信号に関する誘電損失が小さく、高いシグナルインティグリティ(信号品質)で高周波信号が伝送されると考えられる。
【0039】
一方、LCPなどの熱可塑性樹脂は、PI樹脂などの熱硬化性樹脂との比較において、金属に対する密着性が低いことがある。そのため、熱可塑性樹脂を主に含む第2層122で導体層11a、11b、又は導体層21aを覆って絶縁層12a、12bを形成すると、導体層11a、11b、又は導体層21aと、絶縁層12a、12bとの間で界面剥離が生じることがある。
【0040】
しかし、本実施形態では、絶縁層12a及び各絶縁層12bにおいて、熱硬化性樹脂を主に含む第1層121が、導体層11a、11b、又は導体層21aを覆っている。そのため、導体層11a、11b、又は導体層21aと、絶縁層12a、12bとの間の剥離は生じ難いと考えられる。なお、主に樹脂同士が接合する第1層121と第2層122との界面での剥離は、金属と樹脂との界面剥離に比べて生じ難いと考えられる。また、第2層122と、その上側の導体層(例えば絶縁層12aを構成する第2層122上に形成されている導体層11b)との密着性は、第2層122の表面の粗化によって向上され得る。従って、第2層122と、その上側の導体層との間の界面剥離は、例えばそのような粗化処理によって抑制され得ると考えられる。
【0041】
このように、
図2に示される例によれば、第1積層体1において、高周波信号の良好な伝送を実現することができ、しかも各導体層と各絶縁層との界面剥離が抑制された良好な品質が得られると考えられる。特に、
図2Bの例では、第1積層体1が含む複数の絶縁層(絶縁層12a、12b)の全てが、第1層121及び第2層122からなる2層構造を有している。従って、第1積層体1全体に渡って、高周波信号の良好な伝送特性と、界面剥離の少ない良好な品質とが得られると考えられる。なお、第1積層体1を構成する全ての絶縁層が、
図2Bの例のように2層構造を有していなくてもよく、一部の絶縁層だけが、第1層121と第2層122とを含む2層構造を有していてもよい。
【0042】
図2Bの例では、第1積層体1に含まれる複数の絶縁層(絶縁層12a及び絶縁層12b)のうち最も第2積層体2側に形成されている絶縁層12a(第1絶縁層)は、第2領域1bにおいて、第1層121を有さずに第2層122を有している。しかし、第2領域1bにおいて第1積層体1は第2積層体2と重なっておらず、そのため、絶縁層12aの第2層122は、いずれの導体層とも接していない。従って、第2領域1bでは、絶縁層12aと導体層21aとの界面剥離は生じ得ない。
【0043】
また、
図2Bの例では、絶縁層12aにおける第1層121の厚さと第2層122の厚さとの比率は、絶縁層12bにおける第1層121の厚さと第2層122の厚さとの比率と異なっている。このように本実施形態では、第1積層体1を構成する2層構造の複数の絶縁層(絶縁層12a及び絶縁層12b)それぞれにおける第1層121の厚さと第2層122の厚さとの比率は互いに異なっていてもよい。例えば、第1層121及び第2層122それぞれの厚さは、第1積層体1に求められる信号伝送品質に応じて選択され得る。例えば、第2層122の厚さは、絶縁層12a又は絶縁層12bそれぞれの厚さの20%以上、80%以下であってもよく、60%以上、80%以下であってもよい。第2層122を厚くすることによって、高周波信号の伝送損失が小さくなることがある。なお、絶縁層12a又は絶縁層12bの厚さと第2層122の厚さとの差が第1層121の厚さであり得る。
【0044】
図1に例示される配線基板100が製造される場合を例に、一実施形態の配線基板の製造方法が、
図3A~
図3Hを参照しながら説明される。なお、以下に説明される製造方法において形成される各構成要素は、特に異なる記載が無い限り、
図1の配線基板100の説明において対応する構成要素の材料として例示された材料を用いて形成され得る。
【0045】
図3Aに示されるように、一実施形態の配線基板の製造方法は、第1面2a及び第1面2aの反対面である第2面2bを有している出発基板200を用意することを含んでいる。出発基板200は、第1面2a及び第2面2bを有する絶縁層22aを含み、第1面2aに金属層2aa(第1金属層)を備えると共に、第2面2bに金属層2bbを備えている。金属層2aa及び金属層2bbの一部又は全部は、完成状態の配線基板100において導体層21a(
図1参照)として機能する。絶縁層22aは、例えばエポキシ樹脂、BT樹脂、又はフェノール樹脂などの任意の絶縁性樹脂で構成されている。
図3Aの例では、絶縁層22aは例えばガラス繊維からなる補強材221を含んでいる。
【0046】
金属層2aa、2bbを構成する金属は、例えば銅やニッケルなどである。金属層2aa、2bbは、単層であってもよく、多層構造を有していてもよい。金属層2aa、2bbは、それぞれ任意の金属パターンを有し得る。金属層2aaは金属パッド2abを含んでいる。金属パッド2abは、平面視で、完成状態の配線基板100のフレキシブル部100F(
図1参照)となる領域に設けられる(なお、完成状態の配線基板100のフレキシブル部100Fとなる領域、及びリジッド部100Rとなる領域は、それぞれ、以下では単に「フレキシブル部100F」、「リジッド部100R」と称され、
図3A~
図3Hにおいて符号「100F」、「100R」で、それぞれ示される)。
【0047】
金属パッド2abは、金属パッド2abの外縁の一部が、平面視におけるフレキシブル部100Fとリジッド部100Rとの境界線B(
図2参照)よりもリジッド部100R側で境界線Bに沿うように設けられる(境界線Bは、
図3A~
図3Hでは、符号Bが付された黒丸(ドット)で示される)。金属パッド2abは、絶縁層22aが矩形の平面形状を有している場合、好ましくは、絶縁層22aの3辺に沿う外縁を有するように形成される。そうすることで、完成状態の配線基板100において曲げられ易いフレキシブル部100Fが得られることがある。
【0048】
出発基板200の用意では、例えば、絶縁層22を有する両面銅張積層板が用意され、貫通孔311が例えばドリル加工によって形成される。貫通孔331の内壁及び両面銅張積層板の表面に、金属膜2aa、2bbそれぞれの一部を構成する例えば無電解めっき膜が形成され、この無電解めっき膜の上に、この無電解めっき膜を給電層として用いて電解めっき膜が形成される。その後、適切なマスクを用いるウェットエッチングなどによって電解めっき膜などがパターニングされ、所定の金属パターンを有する金属層2aa、2bbが形成される。貫通孔331の内壁にスルーホール導体31が形成される。
図3Aの例では、スルーホール導体31の内側に例えばエポキシ樹脂を注入することによって、スルーホール導体31の内部が樹脂体31aで充填されている。例えばこのようにして、金属層2aa、2bbを備える出発基板200が用意される。出発基板200は、完成状態の配線基板100においてコア基板20(
図1参照)として機能する。
【0049】
図3Bに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、金属層2aaを介して絶縁層22aの第1面2aの上に剥離膜6を設けることを含んでいる。剥離膜6は、絶縁層22aの第1面2aの上に部分的に設けられる。具体的には、剥離膜6は、平面視で、フレキシブル部100Fに、すなわち、
図3Bの例では、金属パッド2ab上に設けられる。例えば、金属パッド2abと平面視で略同じ形状で略同じ大きさの剥離膜6が形成される。好ましくは、剥離膜6は、境界線Bに沿う金属パッド2abの縁部からはみ出ないように形成される。一方、剥離膜6は、絶縁層22aの外縁に沿う金属パッド2abの縁部からは、はみ出るように形成されてもよい。絶縁層22aの外縁部が金属パッド2abに覆われずに露出している場合は、好ましくはその露出している部分を覆うように、剥離膜6が形成される。後工程での出発基板200の部分的な除去が容易になることがある。
【0050】
図3Bの例において、剥離膜6は、金属層2aa側に向けられる接着層61と、接着層61に積層された剥離層62とを有している。接着層61は、金属層2aaを形成する銅などの金属や、エポキシ樹脂などに対して十分な接着性を発現し得る材料で形成される。一方、剥離層62は、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、又はLCPなどの、後工程で剥離膜6が覆われる樹脂と強固に接着しない材料を用いて形成される。このような剥離膜6を設けることによって、後述される出発基板200の部分的な除去が容易になり得る。接着層61の材料としてはPI樹脂が例示される。剥離層62の材料としてはアクリル樹脂が例示される。剥離膜6は、例えば、絶縁層22aの第1面2a及び金属層2aaの全面に、接着層61及び剥離層62それぞれの材料からなる2層の樹脂層を順次形成し、不要部分を除去することによって形成され得る。
【0051】
図3B及び
図3Cに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、剥離膜6の上、及び剥離膜6に覆われていない出発基板200の第1面2aの上に、絶縁層12a(第1絶縁層)を形成することを含んでいる。まず、
図3Bに示されるように、樹脂シート121aが、剥離膜6に覆われていない出発基板200の第1面2aの上に配置される。剥離膜6に覆われていない第1面2aの全面を覆う大きさの樹脂シート121aが用意され、第1面2a及び金属層2aaの上に配置される。樹脂シート121aは、平面視で、リジッド部100Rに設けられる。樹脂シート121aは、フレキシブル部100Fとリジッド部100Rとの境界部において、樹脂シート121aの縁部が剥離膜6に上に重なるように配置されてもよい。樹脂シート121aは、Bステージ状態の絶縁性樹脂の成形品であり、その材料としては、例えば、エポキシ樹脂、PI樹脂、PET樹脂などが例示される。樹脂シート121aは、これら例示される樹脂のような熱硬化性樹脂を含み得る。
【0052】
さらに、フィルム状に成形された樹脂からなる樹脂フィルム122aが、剥離膜6及び樹脂シート121aの上に積層される。樹脂フィルム122aにおける出発基板200と反対側の表面に、さらに、例えば銅やニッケルなどからなる金属箔110が積層される。樹脂フィルム122aを形成する樹脂としては、フッ素樹脂、LCP、PTFE樹脂、PE樹脂、及びMPI樹脂などの熱可塑性樹脂が例示される。なお、
図3Bの例のように予め金属箔110が表面に接合されたフィルム状の樹脂が、樹脂フィルム122aとして、樹脂シート121a及び剥離膜6の上に積層されてもよい。
【0053】
図3Bの例では、出発基板200の第2面2bに、樹脂シート220が積層される。樹脂シート220はBステージ状態の絶縁性樹脂の成形品であり、その材料としては、例えば、エポキシ樹脂、BT樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が例示される。樹脂シート220は、
図3Bの例のように、例えばガラス繊維からなる補強材221を含み得る。樹脂シート220における出発基板200と反対側の表面に、さらに、例えば銅やニッケルなどからなる金属箔210が積層される。なお、
図3Bの例のように予め金属箔210が表面に接合されたシート状の樹脂が、樹脂シート220として、出発基板200の第2面2bに積層されてもよい。
【0054】
出発基板200、及び、その第1面2a又は第2面2bに積層された、剥離膜6、樹脂シート121a、樹脂フィルム122a、及び樹脂シート220が、金属箔110、210と共に加熱及び加圧される。その加熱及び加熱によって、樹脂シート220及び樹脂シート121aと出発基板200とが接合され、樹脂シート121aと樹脂フィルム122aとが接合される。金属箔110及び金属箔210も、それぞれ、樹脂フィルム122a及び樹脂シート220と接合される。一方、樹脂フィルム122aと剥離膜6(具体的には、その剥離層62)とは、好ましくは隙間なく互いに付着する。
【0055】
その結果、
図3Cに示されるように、出発基板200の第1面2a上に絶縁層12aが形成される。絶縁層12aは、Cステージ状態の樹脂シート121aからなる第1層121と、軟化後再硬化した樹脂フィルム122aからなる第2層122とを含んでいる。出発基板200の第2面2b上に、Cステージ状態の樹脂シート220からなる絶縁層22b(第3絶縁層)が形成される。
【0056】
図3Cの例では、絶縁層12a及び金属箔110を貫く貫通孔32a、並びに、絶縁層22b及び金属箔210を貫く貫通孔32aが形成される。貫通孔32aは、絶縁層12a又は絶縁層22bを貫通するビア導体32(
図3D参照)の形成個所に形成される。貫通孔32aは、例えば、炭酸ガスレーザーやエキシマレーザーなどによるレーザー光の照射によって形成される。さらに、金属膜111が、例えば無電解めっき又はスパッタリングなどによって、金属箔110上、及び絶縁層12aを貫く貫通孔32aの内壁に形成される。同様の方法で、金属膜211が、金属箔210上、及び絶縁層22bを貫く貫通孔32aの内壁に形成される。
【0057】
図3Dに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、出発基板200の第2面2bから金属層2aaに達する溝G1(第1溝)を出発基板200に形成することを含んでいる。溝G1は、平面視で剥離膜6の縁部に沿って形成される。溝G1は、例えば、溝G1が平面視で剥離膜6の外縁と重なるように形成される。溝G1の形成によって、金属層2aaの一部が、溝G1内に露出する。溝G1は、例えば炭酸ガスレーザーやYAGレーザーなどのレーザー光の照射によって形成される。この場合、金属層2aa(具体的には金属パッド2ab)がレーザー光のストッパとして機能する。
【0058】
図3Dの例では、溝G1の形成の前に出発基板200の第2面2b上に、絶縁層22bが形成されている。そのため、絶縁層22bも貫く溝G1が形成されている。このように溝G1を形成することは、溝G1で絶縁層22bを貫通することを含み得る。溝G1の形成によって、出発基板200及び絶縁層22bが、フレキシブル部100Bとリジッド部100Rとに分離される。
【0059】
図3Dの例では、溝G1の形成の前に、金属膜111上の所定の領域に金属膜112が形成され、金属膜211上の所定の領域に金属膜212が形成される。貫通孔32aの内部には、ビア導体32が形成される。金属膜112は、導体層11b(
図3E参照)に含まれる導体パターンの形成領域に形成される。絶縁層12aにおける出発基板200と反対側の表面に、金属箔110、金属膜111、金属膜112からなる3層構造の金属層113(第2金属層)が備えられる。金属層113を構成する金属膜112は、好ましくは、溝G1と平面視で重なる領域を含む所定の領域に形成される。溝G1と重なる領域に形成された金属膜113を含む金属パターンは、後述する溝G2(
図3G参照)の形成に用いられるレーザー光のストッパとして機能することがある。一方、金属膜212は、好ましくは、溝G1が形成されるべき領域には形成されない。
【0060】
金属膜112、212は、それぞれ金属膜111、211を給電層として用いる電解めっきによって形成される。金属膜112、212は、例えば、適切な開口を有するめっきレジスト(図示せず)を用いるパターンめっきによって形成される。その後、金属膜111及び金属箔110のうちの金属膜112に覆われていない部分が、例えばクイックエッチングによって除去される。同様に、金属膜211及び金属箔210のうち金属膜212に覆われていない部分が除去される。その結果、金属膜111及び金属箔110の一部が除去された後の金属層113からなる導体層11b(
図3E参照)が得られる。同様に、金属膜212などからなる導体層21b(
図3E参照)が得られる。その後、溝G1が形成される。
【0061】
なお、
図3C及び
図3Dに示される金属膜111、112、211、212の形成は省略されてもよい。すなわち、絶縁層12aが備える金属層113は、
図3Dの例のような3層構造であってもよいが、一つの層(例えば金属箔110)だけを含んでいてもよい。金属箔110のみからなる金属層113は、例えばエッチングで除去されてもよいが、その場合でも、金属層113における平面視で溝G1と重なる領域には、好ましくは、前述したような後工程でレーザー光のストッパとなり得る金属パターンが残される。一方、金属膜211、212が形成されない場合、金属箔210が、例えば溝G1の形成前にエッチングなどによって全面的に除去されてもよい。
【0062】
図3Eに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、金属層2aaのうちの一部であって溝G1に重なる部分を除去することを含んでいてもよい。
図3Eの例では、具体的には金属パッド2abの一部が除去される。例えば、エッチングによって金属層2aaのこの一部が除去される。金属層2aaの一部の除去の間、導体層11b及び導体層21bがマスキングされてもよい。金属層2aaのうちの溝G1に重なる部分の除去によって、金属パッド2abが、フレキシブル部100B側の部分とリジッド部100R側の部分とに分離され得る。また、剥離膜6の縁部が溝G1内に露出する。なお、導体層11bには、溝G1と重なる位置に導体パターン11bbが備わっている。導体パターン11bbは、後工程で溝G2(
図3G参照)の形成に用いられるレーザー光のストッパとして機能し得る。
【0063】
図3Fに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、絶縁層12aの上に、所定の数の絶縁層12b(第2絶縁層)及び導体層11a(第1導体層)を交互に積層することによって、絶縁層12aを含む第1積層体1を形成することを含んでいる。さらに、本実施形態の配線基板の製造方法は、出発基板200の第2面2a側に、所定の数の絶縁層22b(第3絶縁層)及び導体層21b(第2導体層)を、さらに交互に積層することによって、出発基板200を含む第2積層体2を形成することを含んでいる。なお、前述したように、所定の数の絶縁層22bのうちの最下層の絶縁層22bは、既に、溝G1の形成の前に形成されている(
図3C参照)。第1積層体1の形成と第2積層体2の形成は、同時に行われてもよく、いずれかが先に行われてもよい。
【0064】
図3Fの例では、絶縁層12a及び導体層11bの上に、5組の絶縁層12b及び導体層11aを積層することによって、第1積層体1が形成されている。しかし、第1積層体1の形成のために積層される絶縁層12b及び導体層11aの数は、
図3Fの例に限定されない。また、
図3Fの例では、
図3Eを参照して説明された工程までの工程で既に形成されている絶縁層22b及び導体層21bの上に、さらに5組の絶縁層22b及び導体層21bを積層することによって、第2積層体2が形成されている。しかし、第2積層体2の形成のために積層される絶縁層22b及び導体層21bの数は、
図3Fの例に限定されない。
【0065】
図3Fの例では、絶縁層12aと同様に、第1層121と、第1層121に積層された第2層122とを含む絶縁層12bが形成されている。第1層121は、例えば、絶縁層12a及び導体層11b上に、又は、既に形成されている絶縁層12b及び導体層11a上に、樹脂フィルムを熱圧着することによって形成される。第2層122は、例えば第1層121の上に樹脂フィルムを熱圧着することによって形成される。
【0066】
第1層121の形成に用いられる樹脂フィルムの材料としては、エポキシ樹脂、PI樹脂、PET樹脂などの熱硬化樹脂が例示される。第2層122の形成に用いられる樹脂フィルムの材料としては、フッ素樹脂、LCP、PTFE樹脂、PE樹脂、及びMPI樹脂などの熱可塑性樹脂が例示される。このように、所定の数の絶縁層12bそれぞれを積層することは、熱硬化性の樹脂を含む第1層121を形成することと、熱可塑性樹脂を含む第2層122を第1層121の上に積層することを含んでいる。熱可塑性樹脂を含む第2層122を形成することによって、導体層11aにおいて高周波信号の良好な伝送特性が得られることがある。また、熱硬化性樹脂を含む第1層121を第2層122の下地として形成することによって、導体層11b又は導体層11aと絶縁層12bとの良好な密着性が得られることがある。
【0067】
各絶縁層12bには、ビア導体32の形成位置に貫通孔が形成され、例えば、金属箔を用いないセミアディティブ法によって、所望の導体パターンを有する各導体層11aが形成される。各絶縁層12bに形成された貫通孔には、各導体層11aの形成と共に、ビア導体32が形成される。このような絶縁層12aの形成と導体層11aの形成を交互に繰り返すことによって第1積層体1が形成される。
【0068】
本実施形態では、可撓性を有する第1積層体1が形成される。すなわち、第1積層体1が可撓性を有するように決定された材料及び厚さで、絶縁層12a、各絶縁層12b、各導体層11a、及び導体層11bが形成される。なお、
図3Fに示される状態では、第1積層体1の全体が第2積層体2と重なっているため、第1積層体1は容易に曲がり得ないが、第1積層体1単独では、前述した「可撓性」を有している。
【0069】
図3Fに示される工程でさらに形成される第2積層体2の各絶縁層22bは、既に形成されている絶縁層22b及び導体層21bの上に、例えば
図3B及び
図3Cを参照して説明された工程と同様に樹脂シート220(
図3B参照)を熱圧着することによって形成される。
図3Fに示される例では、
図3Fに示される工程でさらに形成される絶縁層22bは補強材221を含んでいる。すなわち、絶縁層22bを形成することは、補強材221を含む樹脂シートを出発基板200の第2面2b側に積層することを含み得る。
【0070】
図3Fに示される例では、第2積層体2を構成する複数の絶縁層22bのうち、溝G1の形成後に形成される絶縁層22b、すなわち、
図3Fの例において、出発基板200側から2つめの絶縁層22bを構成する樹脂によって、溝G1が充填されている。すなわちこの絶縁層22bの形成のための熱圧着時に軟化した樹脂が溝G1内に流れ込んで溝G1が充填されている。第2積層体2が空洞を有しないので、温度変化時のクラックや層間剥離などが生じ難いと考えられる。
【0071】
形成された各絶縁層22bには、ビア導体32の形成位置に貫通孔が形成される。そして、例えば、金属箔を用いないセミアディティブ法によって、所望の導体パターンを有する各導体層21bが形成され、各絶縁層22bに形成された貫通孔にはビア導体32が形成される。このような絶縁層22bの形成と導体層21bの形成とを交互に繰り返すことによって第2積層体2が形成される。
【0072】
本実施形態では、アンテナ5を構成する放射素子を含む第2積層体2が形成される。
図3Fの例では、第2積層体2を構成する複数の導体層21bのうち、最も外側の2つの導体層21bに、アンテナ5の放射素子として機能する導体パッド(第1放射素子51及び第2放射素子52)が形成されている。最も外側の導体層21bには、無給電素子である第2放射素子52が形成され、第2放射素子52を含む導体層21bの下層側で、その導体層21bに隣接する導体層21bに、第1放射素子51が形成されている。
【0073】
第1放射素子51及び第2放射素子52は、アンテナ5として、所望の周波数帯域の電波を放射及び/又は取り込むことができる適切な形状及び大きさを有するように形成される。例えば、各導体層21bがパターンめっきを用いるセミアディティブ法で形成されるときに用いられる各めっきレジスト(図示せず)に、第1放射素子51又は第2放射素子52の形状及び大きさに対応する形状及び大きさを有する開口が設けられる。
【0074】
図1の例の配線基板100が製造される場合、さらに被覆層41、及び被覆層42が形成される。被覆層41は、例えば、PI樹脂やPET樹脂からなるフィルムを第1積層体1における第2積層体2側と反対の表面に貼り付けることによって形成される。被覆層42として、例えば、エポキシ樹脂やPI樹脂などからなる樹脂膜が、スプレーコーティングやカーテンコーティング、又は印刷塗布などで形成される。被覆層41、42には、例えばフォトリソグラフィ技術によって開口が設けられる。
【0075】
図3Gに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、第2積層体2及び絶縁層12aを貫通する溝G2(第2溝)を形成することを含んでいる。金属層113(
図3D参照)からなる導体層11bに達する溝G2が形成される。溝G2は、平面視で剥離膜6の縁部に沿うように形成される。溝G2は、第2積層体2内の絶縁層22bで充填された溝G1(
図3F参照)をなぞるように形成されてもよい。溝G2は、溝G1を埋める樹脂を除去するように形成されてもよい。溝G2の形成によって、第2積層体2がフレキシブル部100Fとリジッド部100Rとに分離される。また、剥離膜6と絶縁層12aの第1層121とが分離される。導体層11bのうちの溝G2と重なる部分(
図3Gでは、導体パターン11bb)が溝G2内に露出する。溝G2は、例えば、炭酸ガスレーザーやYAGレーザーを用いたレーザー光の照射によって形成され得る。導体層11bの導体パターン11bbが、レーザー光のストッパとして機能し得る。
【0076】
図3Hに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、第2積層体2のうちの剥離膜6と平面視で重なる所定部分(被除去部R)を除去することを含んでいる。そして、本実施形態の配線基板の製造方法は、被除去部Rの除去によって、第1積層体1のうちの第2積層体2と重ならない部分を可撓状態にすることを含んでいる。すなわち、前述したように、第1積層体1は、単独では可撓性を有するように形成されているので、被除去部Rの除去によって、第1積層体1のうちの第2積層体2と重ならなくなった部分は、容易に曲がり得る状態となる。すなわち、第1積層体1のうちの第2積層体2と重ならなくなった部分は、第2積層体2の拘束から解放され、本来の可撓性を呈する状態となる。第1積層体1のうちの第2積層体2と重ならない部分からなる、配線基板100のフレキシブル部100F、並びに、第1積層体1のうちの第2積層体2と重なる部分と第2積層体2からなる、配線基板100のリジッド部100Rが得られる。
【0077】
被除去部Rは、任意の方法で除去され得る。例えば、吸着治具(図示せず)などに被除去部Rが吸着されて第1積層体1から引き離される。また、超音波を加えることによって被除去部Rと第1積層体1との密着性が弱められ、両者が互いから分離されてもよい。
【0078】
図3Hの例では、被除去部Rと共に、剥離膜6が除去されている。前述したように、剥離膜6の接着層61は金属やエポキシ樹脂などに対して十分な接着性有する材料で形成され、一方、剥離層62は、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、又はLCPなどの樹脂と強固に接着しない材料を用いて形成される。そのため、被除去部Rを第1積層体1から引き離すことによって、剥離膜6も除去され得る。このように所定の被除去部Rを除去することは、剥離膜6を被除去部Rと共に除去することを含み得る。なお、剥離膜6は、被除去部Rの除去とは別に、例えば、被除去部の除去に続いて除去されてもよい。
【0079】
なお、
図3Hの例では、被除去部R及び剥離膜6の除去の前に、導体層11b(具体的には、導体パターン11bb)のうちの溝G2に露出している部分が、例えばエッチングによって除去されている。このエッチングの間、例えばPET樹脂などからなる適切な保護フィルムを被覆層41、42の表面に貼り付けることによって、開口41a、42a内の導体層11a、21bが保護され得る。溝G2に露出している導体層11bの一部を除去することによって、酸化した導体層11bの表面の露呈による美観の低下を少なくし得ることがある。
図3Hの例では、溝G2と重なっている導体パターン11bbは部分的に除去されているが、導体パターン11bb全体が除去されていてもよい。導体層11bのうちの溝G2に露出している部分は、除去されずにそのまま残されてもよい。以上の工程を経ることによって、
図1の配線基板100が完成する。
【0080】
図4には、本実施形態の配線基板の製造方法の他の例が示されている。
図4に示される例では、溝G2は、第1積層体1の最も外側の導体層11a、及び、第2積層体2の最も外側の導体層21bの形成が完了するまでに形成されている。すなわち、これら導体層11a及び導体層21bそれぞれのパターンめっきによる形成における、金属膜111及び金属膜211それぞれの露出部の除去の前に、溝G2が形成されている。溝G2の底面には、先に参照された
図3Gと同様に、導体層11bの一部が露出している。そして、
図4に示される状態から、例えばエッチングによって、導体層11bのうちの溝G2内への露出部分が除去される。この導体層11bの露出部分は、金属膜111及び金属膜211それぞれの露出部分と共にエッチングによって除去されてもよい。その後、溝G2をマスキングした状態で、被覆層41、42が形成される。そして、
図3Hを参照して説明された方法と同様の方法で、被除去部Rが除去される。
【0081】
本実施形態の配線基板及びその製造方法によれば、可撓性を有する第1積層体1と、剛性を有する第2積層体2とが、部分的に剥離膜6を介して積層され、コア基板を備える1つのビルドアップ配線基板のように配線基板100が形成される。そのため、第1積層体1及び第2積層体2は、それぞれの導体層からなる任意の電気回路を含み得る。また、第2積層体2に形成されるアンテナ5は、ビア導体32及びスルーボール導体31を介して、短い経路で第1積層体1内の各導体層に電気的に接続され得る。そして、第2積層体2のうちの剥離膜6と重なっている部分を除去することによって、可撓性を有する部分(フレキシブル部100F)が備えられる。可撓性を有する部分以外の、アンテナ5を含む部分(リジッド部100R)は、剛性を有する。従って、実装形態に関する自由度が高く、アンテナ及びその周辺回路について良好な特性を有する配線基板が提供されると考えられる。
【0082】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。実施形態の配線基板は、第1積層体及び第2積層体を含む任意の積層構造を有し得る。第1積層体を構成する各絶縁層は、必ずしも2層構造を有しない。第2積層体を構成する絶縁層は、LCPなどの熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。第2積層体を構成する絶縁層は補強材を含んでいなくてもよい。
【0083】
実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば、各導体層は任意の方法で形成され得る。実施形態の配線基板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
100 配線基板
100F フレキシブル部
100R リジッド部
1 第1積層体
1a 第1領域
1b 第2領域
11a 導体層(第1導体層)
11b 導体層
113 金属層(第2金属層)
12a 絶縁層(第1絶縁層)
12b 絶縁層(第2絶縁層)
121 第1層
121a 樹脂シート
122 第2層
200 出発基板
2 第2積層体
20 コア基板
21b 導体層(第2導体層)
22a 絶縁層
2a 第1面
2aa 金属層(第1金属層)
2b 第2面
22b 絶縁層(第3絶縁層)
220 樹脂シート
221 補強材
5 アンテナ
51 第1放射素子
52 第2放射素子
6 剥離膜
G1 溝(第1溝)
G2 溝(第2溝)
R 被除去部(所定部分)