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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096730
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】アウトリガ装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/08 20060101AFI20230630BHJP
   B60S 9/10 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
E02F9/08 B
B60S9/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212670
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】高山 浩司
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026EA06
3D026EA16
3D026EA26
(57)【要約】
【課題】限られたスペースの中で構成しつつ、建設機械の使用状態に応じた張り出し幅に設定可能なアウトリガ装置を提供する。
【解決手段】機体幅方向両側部にアウトリガアーム32の回動軸35を備えたアウトリガボックス34は、上部旋回体の機体フレーム25の後端部下面に固設され、アウトリガジャッキ19R,19Rは、回動軌跡線L2上を円弧移動することで、機体前後方向の前方側から後方側に向かって順に、中心軸同士が旋回軌跡線L1の内側位置で上部旋回体の幅に合わせて配される張り幅縮小位置(MID)と、旋回軌跡線L1の外側位置で機体幅方向に最大に離間して配される張り幅拡大位置(MAX)と、旋回軌跡線L1の外側位置で上部旋回体の幅内に収めて配される格納位置(MIN)との3位置に設定・保持可能とされ、アウトリガ保持手段は、アウトリガジャッキを前記3位置のうちのいずれかの位置に選択的に保持可能なピン結合構造からなる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体に旋回軸受を介して旋回可能に搭載された上部旋回体の後部に設けられ、
カウンタウエイトが着脱可能に載置される機体幅方向のアウトリガボックスと、該アウトリガボックスの両側部に鉛直方向の回動軸を中心としてそれぞれ回動可能に設けられた一対のアウトリガアームと、該一対のアウトリガアームにそれぞれ設けられたジャッキシリンダ及び接地板からなるアウトリガジャッキと、該アウトリガジャッキを設定位置に保持するアウトリガ保持手段とを有し、
前記上部旋回体の旋回時に前記カウンタウエイトの後端が円弧移動して描く旋回軌跡線と、前記アウトリガアームの回動時に前記アウトリガジャッキの中心軸が円弧移動して描く回動軌跡線とを平面視で交差する位置関係となるように配備しているアウトリガ装置において、
前記アウトリガボックスは、前記旋回軸受の内外輪の一方が取り付けられる機体フレームの後端部下面に固設され、
前記一対のアウトリガジャッキは、前記回動軌跡線上を円弧移動することで、機体前後方向の前方側から後方側に向かって順に、前記中心軸同士が前記旋回軌跡線の内側位置で前記上部旋回体の幅に合わせて配される張り幅縮小位置と、前記旋回軌跡線の外側位置で機体幅方向に最大に離間して配される張り幅拡大位置と、前記旋回軌跡線の外側位置で前記上部旋回体の幅内に収めて配される格納位置との3位置に設定可能とされ、
前記アウトリガ保持手段は、前記アウトリガジャッキを前記3位置のうちのいずれかの位置に選択的に保持可能なピン結合構造からなることを特徴とするアウトリガ装置。
【請求項2】
前記ピン結合構造は、前記アウトリガアームと前記アウトリガボックスとの上下重なり合う部分を貫通するピン孔と、該ピン孔に挿抜される保持ピンと、前記カウンタウエイトの下面を前記ピン孔から上方に離間させて形成したピン挿抜作業空間とを備えていることを特徴とする請求項1記載のアウトリガ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトリガ装置に関し、詳しくは、建設機械の旋回体に備えられているアウトリガ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンやアースドリル、杭打機などの建設機械は、クローラを備えた走行体と、運転室を搭載した旋回体と、該旋回体の前部に設けられた作業装置と、旋回体の後部に設けられたカウンタウエイトとで概略構成されている。こうした各種建設機械のうち、杭打機には伸縮自在なジャッキシリンダを有するアウトリガ装置が備えられており、接地して安定性を高める用途の他に、クローラを地面から浮き上がらせることで、狭隘地において方向転換を図ることや(例えば、特許文献1参照。)、クローラを外した状態で機体を更に上昇させて、輸送トレーラの荷台を受け入れることが可能となる(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-188564号公報
【特許文献2】特開2018-2043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のアウトリガ装置は、走行や旋回時には無用であるから、特に建設機械を狭隘地で使用する場合、旋回体からの突出を抑えてコンパクトに構成したい。一方、近年では作業装置の高出力化といった機体重量増の要因も多く、輸送時に機体からクローラを取り外す条件が課されると、輸送トレーラの荷台幅に対応した広い張り出し幅が要求され、アウトリガ装置をコンパクトに構成することが難しくなる。
【0005】
そこで本発明は、限られたスペースの中で構成しつつ、建設機械の使用状態に応じた張り出し幅に設定可能なアウトリガ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のアウトリガ装置は、下部走行体に旋回軸受を介して旋回可能に搭載された上部旋回体の後部に設けられ、カウンタウエイトが着脱可能に載置される機体幅方向のアウトリガボックスと、該アウトリガボックスの両側部に鉛直方向の回動軸を中心としてそれぞれ回動可能に設けられた一対のアウトリガアームと、該一対のアウトリガアームにそれぞれ設けられたジャッキシリンダ及び接地板からなるアウトリガジャッキと、該アウトリガジャッキを設定位置に保持するアウトリガ保持手段とを有し、前記上部旋回体の旋回時に前記カウンタウエイトの後端が円弧移動して描く旋回軌跡線と、前記アウトリガアームの回動時に前記アウトリガジャッキの中心軸が円弧移動して描く回動軌跡線とを平面視で交差する位置関係となるように配備しているアウトリガ装置において、前記アウトリガボックスは、前記旋回軸受の内外輪の一方が取り付けられる機体フレームの後端部下面に固設され、前記一対のアウトリガジャッキは、前記回動軌跡線上を円弧移動することで、機体前後方向の前方側から後方側に向かって順に、前記中心軸同士が前記旋回軌跡線の内側位置で前記上部旋回体の幅に合わせて配される張り幅縮小位置と、前記旋回軌跡線の外側位置で機体幅方向に最大に離間して配される張り幅拡大位置と、前記旋回軌跡線の外側位置で前記上部旋回体の幅内に収めて配される格納位置との3位置に設定可能とされ、前記アウトリガ保持手段は、前記アウトリガジャッキを前記3位置のうちのいずれかの位置に選択的に保持可能なピン結合構造からなることを特徴としている。
【0007】
また、前記ピン結合構造は、前記アウトリガアームと前記アウトリガボックスとの上下重なり合う部分を貫通するピン孔と、該ピン孔に挿抜される保持ピンと、前記カウンタウエイトの下面を前記ピン孔から上方に離間させて形成したピン挿抜作業空間とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアウトリガ装置によれば、アウトリガアームの回動軸を備えたアウトリガボックスを機体フレームの後端部下面に設けているので、アウトリガアームを機体幅方向に延ばした位置からの前方回動域を増大させることが可能となり、機体幅と旋回半径とを限度いっぱいに大きくした建設機械でも、回動させる腕の長さを必要最小限に抑えたコンパクトなアウトリガ装置を配備して、旋回や走行の邪魔にならない張り幅縮小位置や、機体の分解輸送の目的に適う張り幅拡大位置、格納位置にそれぞれ設定することができる。
【0009】
また、アウトリガ保持手段としてピン結合構造を採用しているので、アウトリガ装置を軽量かつ安価に構成することができる。しかも、保持ピンを挿抜するだけの簡単な作業でアウトリガジャッキを所望の位置に保持できることから、迅速性が求められる現場のニーズにも合致したアウトリガ装置が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一形態例を示すアウトリガ装置が備えられる杭打機の側面図である。
図2】同じく要部側面図である。
図3】同じく要部後面図である。
図4】同じくリーダを倒伏させた輸送姿勢を示す平面図である。
図5】同じくアウトリガ装置の装着状態を示す要部側面図である。
図6】同じく要部平面図である。
図7】同じく要部後面図である。
図8】同じくアウトリガジャッキを伸長させてクローラを地面から浮かせた状態を示す図である。
図9】同じく機体の真下に輸送トレーラの荷台を受け入れた状態を示す図である。
図10】同じく輸送トレーラの荷台に機体を積載した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図10は、本発明を建設機械の一例である杭打機に適用したものである。杭打機11は、図1乃至図4に示すように、左右のクローラ装置12aを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回ベアリング(旋回軸受)13を介して旋回可能に設けられた上部旋回体14とで構成されたベースマシン(機体)15と、上部旋回体14の前部に立設したリーダ16と、該リーダ16を後方から支持する起伏シリンダ17とを備えている。
【0012】
上部旋回体14の前部には、リーダ16を起伏可能に支持するリーダサポート18が設けられている。また、上部旋回体14の前端部には、張り幅調整可能な安定用の左右一対のフロントジャッキ19F,19Fが設けられている。さらに、上部旋回体14の後端部には、張り幅調整可能な安定用の左右一対のアウトリガジャッキ19R,19Rを備えたアウトリガ装置が設けられるとともに、該アウトリガ装置本体の上面に杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト20が搭載されている。
【0013】
リーダ16は、前記リーダサポート18に軸支された回動可能な基本リーダ21と、該基本リーダ21の上部に連結される上部リーダ22と、基本リーダ21の下部に連結される下部リーダ23とに分割形成され、さらに、上部リーダ22は、複数のリーダ部材に分割形成され、上端部にはトップシーブ24が装着されている。また、リーダ16の前面には回転駆動装置(図示せず)が昇降可能に装着されている。
【0014】
各リーダ部材は、上下端に設けられたフランジ部材同士をボルト・ナットによって着脱可能に連結されている。このように形成されたリーダ16は、杭打機11を輸送する際には、輸送条件に従って上部リーダ22が取り外され、機体とは別々に輸送される。この場合、機体側は、必要に応じて回転駆動装置やカウンタウエイト20などの重量物が外され、図4図8にも示すように、基本リーダ21を下部リーダ23とは独立して後方に倒伏した輸送姿勢とされる。
【0015】
上部旋回体14は、下面に旋回ベアリング13が取り付けられる矩形箱状のメインフレーム25と、該メインフレーム25の幅方向両側部に枠組みされたフロアフレーム26(反対側は図示せず)とが一体に結合されている機体フレームを有している。右側のフロアフレーム上の前部には、オペレータが搭乗する運転室27が設置されている。また、右側のフロアフレーム上の後部には、油圧機器を収納する機器収納ハウス28が設けられている(図4)。一方、左側のフロアフレーム26上には、エンジンパワーユニットや、これに付属する排ガス浄化装置などの関連機器を収納するエンジン収納ハウス29が設けられている。
【0016】
各ハウス28,29は、矩形枠(コ字状断面)のフロアフレーム26と一体化したフレーム構造及び外装を担う板金構造によって箱状に形成され、収納空間を規定する架台フレームと、該架台フレームに取り付けられる扉を含む複数のカバー部材とを備えている。ハウス28,29は、通常、扉のある外側面の位置がフロアフレーム26の外側面に揃えられ、上部旋回体14の幅(輸送幅)に対応している。
【0017】
カウンタウエイト20は、偏平で幅広な複数のブロック体を高く積み上げてなり、幅方向両端側面が上部旋回体14の幅に対応して大きく形成されているが、前後方向は幅方向に比べてかなり小さく形成され、後端面の両側部に幅方向対称の面取りが施されている。このように形成されたカウンタウエイト20は、メインフレーム25の後端部をアウトリガ装置本体との間で上下挟み込む形で搭載され、ひとまとまりとなって長尺のボルト30で共締めされている(図7)。
【0018】
下部走行体12と上部旋回体14との間に配置された旋回ベアリング13は、図5図9にも示すように、下部走行体12のトラックフレーム12bの中央上面に固設される内輪側の旋回ベアリングケース13aと、メインフレーム25の中央下面に固設される外輪側の旋回ベアリングケース13bとが相対回転可能に組み付けられたものである。また、内輪側ケース13aの内周には内歯歯車が形成されており、上部旋回体14に搭載した旋回駆動モータ(図示せず)の歯車を内歯歯車に歯合させ、旋回駆動モータを回転させることで、上部旋回体14を下部走行体12に対して水平方向に旋回させる。
【0019】
上部旋回体14を旋回させる場合には、図4に示すように、施工部材(例えば鋼管杭)の存在する前方旋回領域FSと、運転席から目の届きにくい後方旋回領域RSとの各領域について、特に注意を向ける必要がある。
【0020】
そこで、安全運転の対応として、前方旋回領域FSに対しては、施工部材の外周面と上部旋回体14の旋回中心(旋回軸)との水平間距離を旋回半径とする旋回円(図示せず)を設定し、旋回する際には、リーダ16の前部に装着した振止装置(図示せず)を所定の手順で開放して旋回円の内側に位置させる。一方、後方旋回領域RSに対しては、旋回時にカウンタウエイト20の後端、すなわち、旋回中心から最も遠い部分が円弧移動して描く旋回軌跡線L1を設定するとともに、アウトリガ装置(アウトリガジャッキ19R)の張り出し幅を上部旋回体14の幅に合わせて設定することで、左右のアウトリガジャッキ19R,19Rを両方とも旋回軌跡線L1の内側に位置させる。張り幅調整手段についての詳細は後述するが、これにより、上部旋回体14からの無用な突出を抑えて、旋回や走行が安全に行えるようになる。
【0021】
フロントジャッキ19F及びアウトリガジャッキ19Rは、それぞれ3パターンの張り出し幅が得られるように構成されている。各ジャッキ19F,19Rは、水平回動が行える前後アウトリガアーム31,32の先端に着脱可能に設けられ、所定の伸縮長を有するジャッキシリンダ(油圧シリンダ)19aと、該ジャッキシリンダ19aの下端に付設される接地板19bとからなる。各ジャッキ19F,19Rは重量物であるため、部品状態で扱う際には、例えば、ジャッキシリンダ19aの上端に設けられた吊り部19cが使用される。
【0022】
アウトリガ装置の張り出し幅は、機体前後方向の前方側から後方側に向かって順に、各ジャッキ19F,19Rの中心軸同士が上部旋回体14の幅に合わせて配される張り幅縮小位置(MID,図4の想像線)と、機体幅方向に最大に離間して配される張り幅拡大位置(MAX,図4の実線)と、上部旋回体14の幅内に収めて配される格納位置(MIN,図4の想像線)との3位置に設定可能である。そして、杭打機11の使用状態に応じて、施工時には張り幅縮小位置(MID)に、クローラ装置12aの分解時には張り幅拡大位置(MAX)に、輸送時には格納位置(MIN)に、それぞれ選択的に設定される。
【0023】
ところで、近年では建設工事現場の多様化が進み、狭隘地で杭打機11を使用する機会も多くなっていることから、できる限りアウトリガ装置をコンパクトに構成したい。一方、高出力化のニーズや排ガス規制の強化を受けて機体重量が増加する傾向にあり、輸送時に機体からクローラ装置12aを取り外す条件が課されると、小型の機種でも輸送トレーラの荷台幅に対応した広い張り出し幅が要求され、アウトリガ装置をコンパクトに構成することが難しくなる。
【0024】
特に、メインフレーム25と一体をなすフロアフレーム26は、エンジンパワーユニットに加え、排ガス浄化装置など多くの機器が搭載されることから、その外形寸法が前後方向に大きくなる。そして、スペース的に厳しくなった機体後部の空間に対して、相当のカウンタウエイト20が占有することになれば、もはやアウトリガ装置を使用状態に見合う形で備えることができないという問題が生じてしまう。そこで、こうした事情から、上部旋回体14の後端部には、限られたスペースの中で構成しつつ、使用状態に応じた張り出し幅に設定可能なアウトリガ装置が備えられている。
【0025】
アウトリガ装置33は、図5乃至図7に示すように、カウンタウエイト20が着脱可能に載置される機体幅方向のアウトリガボックス34と、該アウトリガボックス34の両側部に鉛直方向の回動軸(回動ピン)35を中心としてそれぞれ回動可能に設けられた一対のアウトリガアーム32,32と、該一対のアウトリガアームにそれぞれ設けられたアウトリガジャッキ19R,19Rと、該アウトリガジャッキを各張り出し幅の位置(MIN,MID,MAX)に保持するためのアウトリガ保持手段とを有している。
【0026】
また、アウトリガ装置33の機体に対する高さ方向の位置は、図5などに示すように、必要な最低地上高を満足できる範囲内で低位置に設けられている。さらに、アウトリガ装置33の機体に対する水平方向の位置は、アウトリガアーム32の回動時にアウトリガジャッキ19Rの中心軸が円弧移動して描く回動軌跡線L2を設定して、図6の平面視からも分かるように、旋回軌跡線L1と回動軌跡線L2とが幅方向において機体中心線に対して対称の位置で交差する位置関係となるように設けられている。
【0027】
アウトリガボックス34は、メインフレーム25の後端部下面に固設されることで、装置全体の低重心化を図ったもので、カウンタウエイト20の平面形状に対応した上板及び下板と、これら上板と下板とを連結する立板とによって閉じた箱状に形成され、両側部には、上下板と立板とからなる略コ字状のアーム連結部が設けられるとともに、該アーム連結部に挿入したアウトリガアーム32の基端部が回動軸35によって支持されている。アウトリガボックス34の上面には組立時に使用される一対の耳片(吊り用)36,36が設けられており、メインフレーム25下面へのボルト締結を安定して行うことができる。また、アウトリガボックス34の前面には輸送時に使用される一対の耳片(固縛用)37,37が設けられており、輸送トレーラの荷台に治具などで固定することができる。
【0028】
アウトリガアーム32は、アーム連結部にてアウトリガボックス34の上下板間に整合する矩形断面の筒形状を有し、基端部に回動軸35の軸孔が設けられるとともに、先端部にはアウトリガジャッキ19Rを着脱するための上下一対の固定ピン38,38が設けられている。アウトリガアーム32の腕の長さは、アウトリガジャッキ19Rの回動半径、すなわち、アウトリガジャッキ19Rの中心軸とアウトリガアーム32の回動軸35との中心間距離を規定している。この規定された回動半径は、カウンタウエイト20の前後寸法の最大値、換言すれば、カウンタウエイト20を幅方向に投影した投影線の前後寸法と同程度に設定されている。
【0029】
そして、図6に示すように、回動軌跡線L2上を円弧移動するアウトリガジャッキ19Rは、アウトリガアーム32の一部をフロアフレーム26の下方領域に位置させた前方側(図6の上側)から、その下方領域から脱して後方側(図6の下側)に向かって、上部旋回体14の後端両側壁部をなすカウンタウエイト20やフロアフレーム26、ハウス28,29などの構造物から大きく離れずに、これらの壁面に沿って所定角度、小回りで回動される。
【0030】
こうして、一対のアウトリガジャッキ19R,19Rは、回動軌跡線L2上を円弧移動することで、機体前後方向の前方側から後方側に向かって順に、中心軸同士が旋回軌跡線L1の内側位置で上部旋回体14の幅に合わせて配される張り幅縮小位置(MID)と、旋回軌跡線L1の外側位置で機体幅方向に最大に離間して配される張り幅拡大位置(MAX)と、旋回軌跡線L1の外側位置で上部旋回体14の幅内に、具体的には、中心軸同士が回動軸同士と同距離(同スパン)になるように収めて配される格納位置(MIN)との3位置に設定される。
【0031】
アウトリガ保持手段は、アウトリガジャッキ19Rを各張り出し幅のうちのいずれかの位置に選択的に保持可能なピン結合構造からなる。このピン結合構造は、図2図3図6などに示すように、アウトリガアーム32の上板とアウトリガボックス34の上板との上下重なり合う部分を貫通するピン孔32a,34aと、該ピン孔に挿抜される保持ピン39と、カウンタウエイト20の下面をピン孔32a,34aから上方に離間させて形成したピン挿抜作業空間WSとを備えている。
【0032】
ピン孔32a,34aは、一対のアウトリガアーム32,32のそれぞれに1つずつ、アウトリガボックス34の両側(両アーム連結部)に、各張り出し幅の位置に対応して片側3つずつ設けている。アウトリガボックス34側の3つのピン孔34aは、それぞれ回動軸35と同心円上であって周方向に互いに離間して設けられている。保持ピン39は、片側3つのピン孔34aに対し、選択的に挿抜可能な1本を両側に合計2本設けている。
【0033】
ピン挿抜作業空間WSは、カウンタウエイト20の両側部とアーム連結部との上下間に設けられた隙間空間であって、カウンタウエイト20の下端角部を段差状に切除して形成され、その高さ寸法は、手を入れて保持ピン39の挿抜が可能な程度に低く抑えられている。これにより、カウンタウエイト20を取り外さない状態でも所望の張り出し幅に設定することが可能である。
【0034】
このようなアウトリガ装置33が備えられた杭打機11は、例えば、鋼管杭の埋設を目的として現場で使用する際には、フロントジャッキ19F及びアウトリガジャッキ19Rをそれぞれ張り幅縮小位置(MID)に保持した状態で、ジャッキシリンダ19aを伸長させて全て接地した杭打ち作業姿勢とする(図1)。
【0035】
ここで、鋼管杭は、上端部が回転駆動装置の駆動軸に連結された状態で、下端部が振止装置によって抱持される。連結状態の鋼管杭は、回転駆動装置から駆動力を得て回転され、回転状態のまま回転駆動装置を下降させることにより地中に圧入される。こうした杭打ち作業は、回転する杭の推進力を受けてリーダ16に軸方向(上下方向)の引張と捩りとの複合的な荷重が加わり、その荷重の一部はメインフレーム25を伝わって各アウトリガジャッキ19F,19Rに対しても作用する。
【0036】
鋼管杭の継ぎ足しを行う際には、埋設した鋼管杭と駆動軸とを分離させ、振止装置を開くとともに、ジャッキシリンダ19aを縮小させた状態で、上部旋回体14をその場所のままで旋回させる。このとき、振止装置を開いて旋回円の内側位置に退避した状態では、埋設した鋼管杭との間で干渉しない旋回動作が行えるようになる。また、機体後部側において、アウトリガジャッキ19Rは旋回軌跡線L1の内側位置に保持されており、周囲の構造物との間で干渉しない旋回動作が行えるようになる。こうして、用意しておいた継ぎ足す鋼管杭は、機体側方領域において上端部が駆動軸に連結され、反対方向の旋回動作によって施工位置(杭芯)へと運び込まれる。
【0037】
一方、現場から杭打機11を搬出する際には、上部リーダ22が取り外され、機体側においては、輸送制限の条件にもよるが、例えば、回転駆動装置やカウンタウエイト20などの重量物が取り外され、図8に示すように、基本リーダ21を後方に倒伏した輸送姿勢とされる。ここで、機体からクローラ装置12aを取り外す条件が課された場合、保持ピン39を差し替え、フロントジャッキ19F及びアウトリガジャッキ19Rを、それぞれ張り幅縮小位置(MID)から張り幅拡大位置(MAX)に設定変更し、輸送トレーラの荷台幅に対応した広い張り出し幅に保持する。
【0038】
次いで、接地板19bの真下(4箇所)に台座40を配置した後、ジャッキシリンダ19aを伸長させてクローラ装置12aを地面から浮かせた状態とし、所定の手順に従ってクローラ装置12aを分解する。すなわち、下部走行体12において、トラックフレーム12bと左右のクローラ装置12aとを互いに分離する。その後、ジャッキシリンダ19aを最大まで伸長させることで、図9に示すように、機体下に広いスペースが形成され、輸送トレーラの荷台41を受け入れることが可能となる。
【0039】
荷台41への積載後は、保持ピン39を差し替え、図10に示すように、フロントジャッキ19F及びアウトリガジャッキ19Rを、それぞれ張り幅拡大位置(MAX)から格納位置(MIN)に設定変更し、安全輸送が可能な荷台幅(輸送幅)内に収めて保持する。このとき、機体の嵩上げ量にもよるが、例えば、アウトリガアーム32の先端部において、上下一対の固定ピン38,38を両方抜いてアウトリガジャッキ19Rを取り外す措置や、固定ピン38,38の下側だけ抜いてアウトリガジャッキ19Rを傾ける措置(図示せず)などが講じられ、荷台41との間でアウトリガ装置33の接触防止が図られる。
【0040】
このように、本発明のアウトリガ装置33によれば、アウトリガアーム32の回動軸35を備えたアウトリガボックス34を機体フレーム(メインフレーム25)の後端部下面に設けているので、アウトリガアーム32を機体幅方向に延ばした位置からの前方回動域を増大させることが可能となり、機体幅と旋回半径とを限度いっぱいに大きくした建設機械でも、回動させる腕の長さを必要最小限に抑えたコンパクトなアウトリガ装置33を配備して、旋回や走行の邪魔にならない張り幅縮小位置(MID)や、機体の分解輸送の目的に適う張り幅拡大位置(MAX)、格納位置(MIN)にそれぞれ設定することができる。
【0041】
また、アウトリガ保持手段としてピン結合構造を採用しているので、アウトリガ装置33を軽量かつ安価に構成することができる。しかも、保持ピン39を挿抜するだけの簡単な作業でアウトリガジャッキ19Rを所望の位置に保持できることから、迅速性が求められる現場のニーズにも合致したアウトリガ装置33が達成される。
【0042】
さらに、ピン結合構造が、カウンタウエイト20の下面をピン孔32a,34aから上方に離間させて形成したピン挿抜作業空間WSを備えているので、カウンタウエイト20の有無にかかわらず、保持ピン39の挿抜を行える作業空間が確保できる。これにより、建設機械の様々な輸送態様に応じながら、重量のあるアウトリガジャッキ19Rを片持ち状に安定的に支持した状態で、アウトリガアーム32の一連の回動操作を手動によって迅速かつ的確に行うことができる。
【0043】
なお、本発明は、前記各形態例に限定されるものではなく、アウトリガボックスやアウトリガアーム、これらの連結部の形状や回動軸の配置、保持手段などは、アウトリガ装置が配備される建設機械やその仕様ごとに適宜変更を加えることができる。また、現場移動の際、ジャッキとアウトリガアームとの間にスペーサ部材(ピン式)などの治具を介在させれば、より広い張り出し幅が得られ、クローラ装置の分解から輸送荷台への積載に至る一連の安全作業に資するものとなる。さらに、建設機械として杭打機を例示したが、これに限られず、旋回体を備えた各種建設機械におけるアウトリガ装置に適用することができる。この場合、省スペースで配備することが可能なアウトリガ装置により、旋回体に搭載する機器などの配置を含めた設計の自由度が広がり、モデルチェンジや新型開発を円滑に進めることが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ装置、12b…トラックフレーム、13…旋回ベアリング、13a,13b…旋回ベアリングケース、14…上部旋回体、15…ベースマシン、16…リーダ、17…起伏シリンダ、18…リーダサポート、19F…フロントジャッキ、19R…アウトリガジャッキ、19a…ジャッキシリンダ、19b…接地板、19c…吊り部、20…カウンタウエイト、21…基本リーダ、22…上部リーダ、23…下部リーダ、24…トップシーブ、25…メインフレーム、26…フロアフレーム、27…運転室、28…機器収納ハウス、29…エンジン収納ハウス、30…ボルト、31,32…アウトリガアーム、32a…ピン孔、33…アウトリガ装置、34…アウトリガボックス、34a…ピン孔、35…回動軸、36,37…耳片、38…固定ピン、39…保持ピン、40…台座、41…荷台
図1
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