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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096747
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/29 20180101AFI20230630BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230630BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20230630BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230630BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J7/38
C09J7/24
C09J201/00
C09J133/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212708
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】390003562
【氏名又は名称】株式会社ニトムズ
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】山田 智弘
(72)【発明者】
【氏名】武田 安洋
(72)【発明者】
【氏名】手塚 洋登
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004CA01
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC03
4J004CD08
4J004CD09
4J004CE01
4J004DA02
4J004DA05
4J004DB02
4J040DF011
4J040DF041
4J040DF051
4J040DF061
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA26
4J040KA29
4J040KA35
4J040LA06
4J040MA06
4J040MB09
4J040NA12
4J040PA33
(57)【要約】
【課題】粗面に貼り付けられてその上から強い応力が度々加わるような態様においても、改善された使用寿命を示す粘着テープを提供する。
【解決手段】提供される粘着テープは、第1面および第2面を有する基材と、該基材の上記第1面上に配置された粘着剤層と、を含む。上記基材は、樹脂組成物(a)により構成された層であって上記第1面を構成するA層と、樹脂組成物(b)により構成された層であって上記A層よりも上記第2面側に配置されたB層と、を少なくとも含む。上記樹脂組成物(a)は、50重量%以上のフィラーを含む。上記粘着テープは、引張強さFが35N/15mm以上145N/15mm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および第2面を有する基材と、該基材の前記第1面上に配置された粘着剤層と、を含む粘着テープであって、
前記基材は、樹脂組成物(a)により構成された層であって前記第1面を構成するA層と、樹脂組成物(b)により構成された層であって前記A層よりも前記第2面側に配置されたB層と、を少なくとも含み、
前記樹脂組成物(a)は、50重量%以上のフィラーを含み、
前記粘着テープは、23℃、50%RHの環境下において、幅15mmの試験片を、引張試験機を用いてチャック間距離15mm、引張速度300mm/分の条件で破断するまで延伸したときの最大引張荷重[N/15mm]として測定される引張強さFが35N/15mm以上145N/15mm以下である、粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着テープは、以下の方法により測定されるたるみ性が55mm以上である、請求項1に記載の粘着テープ。
[たるみ性測定]
23℃、50%RHの環境下において、幅50mm、長さ300mmの試験片を、粘着剤層が設けられた側を下にして、該試験片の一端から長さ100mmまでの範囲が水平な保持台から外方に出るようにして前記保持台に片持ちで保持し、10分間静置した後、前記保持台の上面と前記試験片の一端との高さの差を測定する。
【請求項3】
前記樹脂組成物(a)は、ベース樹脂としてエラストマーを含む、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記樹脂組成物(b)は、ベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記B層の厚さT[μm]に対する前記A層の厚さT[μm]の比(T/T)が0.5以上10以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着テープの厚さが2000μm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着剤層の厚さT[μm]と前記A層の厚さT[μm]との合計厚さ(T+T)が150μm以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記粘着剤層はアクリル系粘着剤層である、請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項9】
屋外の舗装面に貼り付けて用いられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の粘着テープからなる、標示用粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。かかる性質を活かして、粘着剤は、様々な分野において、典型的には基材上に粘着剤層を有する粘着テープの形態で、接合や固定、表面保護、マスキング、標示等の目的で広く利用されている。一般に、標示用粘着テープは、例えば工場や体育館等の床面に区画、目印、情報等を標示するラインテープや、工事現場等において注意を喚起するためのトラ模様(黄色と黒の縞模様)を形成するためのテープ等として用いられる。標示用粘着テープに関する技術文献として特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-279202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の標示用粘着テープは、粗面に貼り付けられて該粘着テープの背面から強い応力が度々加わるような使用態様(具体的には、例えば屋外の舗装面に貼り付けられてその上を車両が度々通過するような過酷な使用態様)では、粘着テープの剥がれや該粘着テープ自体の損傷(破れ、欠けなど)が生じやすかった。上記粘着テープがその機能を適切に発揮することのできる期間(使用寿命)を改善することができれば、粘着テープが貼り付けられた箇所の外観をより長く良好に保ち、また新しい粘着テープへの貼り替え頻度を減らして作業負担の軽減や資源節約等を図る観点から有益である。
【0005】
そこで本発明は、粗面に貼り付けられてその上から強い応力が度々加わるような態様においても、改善された使用寿命を示す粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書により提供される粘着テープは、第1面および第2面を有する基材と、該基材の上記第1面上に配置された粘着剤層と、を含む。上記基材は、樹脂組成物(a)により構成された層であって上記第1面を構成するA層と、樹脂組成物(b)により構成された層であって上記A層よりも上記第2面側に配置されたB層と、を少なくとも含む。ここで、上記樹脂組成物(a)は、50重量%以上のフィラーを含む。上記粘着テープは、23℃、50%RHの環境下において、幅15mmの試験片を、引張試験機を用いてチャック間距離15mm、引張速度300mm/分の条件で破断するまで延伸したときの最大引張荷重[N/15mm]として測定される引張強さFが、35N/15mm以上145N/15mm以下である。
【0007】
上記構成の粘着テープにおいて、上記基材のうちA層(すなわち、粘着剤層側に配置される層)を構成する樹脂組成物(a)が50重量%以上のフィラーを含むことは、被着体表面に存在し得る凹凸(例えば、舗装面などの粗面の凹凸)に沿う形状への塑性変形性を高める観点から有利である。また、粘着テープの引張強さFが145N/15mm以下に制限されているので、上記A層の塑性変形性を利用して粘着テープ全体を被着体表面の凹凸に良好になじませる効果を適切に発揮することができる。被着体表面の凹凸へのなじみ性(密着性)のよい粘着テープは、該被着体からの浮きや剥がれを抑制しやすいので好ましい。そして、上記粘着テープは、35N/15mm以上の引張強さFを有することにより、該粘着テープ自体の強度不足に起因する破れや欠けの発生抑制に適している。したがって、上記構成の粘着テープによると、例えば粗面に貼り付けられてその上から強い応力が度々加わるような態様においても、上記粗面からの粘着テープの浮きや剥がれ、あるいは該粘着テープ自体の損傷を抑制することができ、上記粘着テープの使用寿命を改善することができる。
【0008】
ここに開示される粘着テープのいくつかの態様において、該粘着テープは、以下の方法により測定されるたるみ性が55mm以上であることが好ましい。たるみ性が55mm以上の粘着テープによると、上記A層の塑性変形性を利用して粘着テープ全体を被着体表面の凹凸に良好になじませる効果をよりよく発揮することができる。
[たるみ性測定]
23℃、50%RHの環境下において、幅50mm、長さ300mmの試験片を、粘着剤層が設けられた側を下にして、該試験片の一端から長さ100mmまでの範囲が水平な保持台から外方に出るようにして上記保持台に片持ちで保持し、10分間静置した後、上記保持台の上面と上記試験片の一端との高さの差を測定する。
【0009】
基材のA層を構成する樹脂組成物(a)は、ベース樹脂としてエラストマーを含む組成であることが好ましい。ここに開示される粘着テープは、ベース樹脂としてエラストマーを含みかつ50重量%以上のフィラーを含む樹脂組成物(a)により構成されたA層を有する基材を備える態様で、好適に実施することができる。
【0010】
いくつかの好ましい態様において、基材のB層を構成する樹脂組成物(b)は、ベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含む組成であり得る。例えば、基材の第2面が上記B層により構成され、該第2面が粘着テープの背面を兼ねる態様の粘着テープでは、樹脂組成物(b)がベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含む組成であることは、粘着テープ背面の防汚性の観点から有利となり得る。
【0011】
いくつかの態様において、上記基材は、上記B層の厚さT[μm]に対する上記A層の厚さT[μm]の比(T/T)が0.5以上10以下であることが好ましい。比(T/T)が上記範囲にある基材によると、粗面(例えば舗装面)へのなじみ性と、粘着テープの背面からの応力(例えば、車両の通過に伴う応力)に対する耐久性とを好適に両立する粘着テープを実現しやすい。
【0012】
いくつかの好ましい態様では、粘着テープの総厚が2000μm以下である。粘着テープの総厚が大きすぎないことは、該粘着テープの貼付けによって被着体(例えば舗装面)に生じる段差を小さくする観点から有利である。
【0013】
ここに開示される粘着テープのいくつかの態様では、上記粘着剤層の厚さT[μm]と上記A層の厚さT[μm]との合計厚さ(T+T)が150μm以上である。粘着剤層とA層との合計厚さ(T+T)が150μm以上である粘着テープは、被着体が舗装面等の粗面であっても、上記粘着剤層の易変形性および上記A層の塑性変形性を利用して該粗面に粘着テープを良好になじませやすいので好ましい。
【0014】
ここに開示される粘着テープのいくつかの態様において、該粘着テープの粘着剤層としては、アクリル系粘着剤層を好ましく採用し得る。屋外での使用(例えば、屋外の舗装面に貼り付けられる態様での使用)が想定される用途向けの粘着テープでは、耐候性や耐熱性などの観点から、粘着剤層がアクリル系粘着剤層であることが特に好ましい。
【0015】
ここに開示される粘着テープは、粗面へのなじみ性と、背面からの応力に対する耐久性とをバランスよく両立し得ることから、屋外の舗装面に貼り付けて用いられる粘着テープとして好適である。なかでも、屋外の舗装面に貼り付けられてその上を車両が度々通過するような使用態様において、ここに開示される技術の適用効果は好ましく発揮され得る。
【0016】
ここに開示される粘着テープは、例えば、標示用粘着テープとして好ましく用いられ得る。したがって、この明細書によると、ここに開示されるいずれかの粘着テープからなる標示用粘着テープが提供される。
【0017】
なお、本明細書に記載された各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る粘着テープを模式的に示す断面図である。
図2】たるみ性の測定方法を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0020】
<粘着テープの構造例>
ここに開示される粘着テープは、基材と、該基材の第1面上に配置された粘着剤層とを含む。この明細書における「粘着テープ」の概念には、「粘着シート」と称されるものが包含され得る。ここに開示される粘着テープは、典型的には、幅方向の寸法に比べて長手方向の寸法が大きい形状であり、好適には、幅方向の寸法に比べて長手方向の寸法が大きい帯状の形状に構成されている。樹脂フィルムを含む構成の基材を備えた粘着テープでは、一般的に、上記樹脂フィルムの流れ方向(MD;machine direction)が上記粘着テープの長手方向に相当する。
【0021】
一実施形態に係る粘着テープの構成例を図1に模式的に示す。この粘着テープ1は、第1面10Aおよび第2面10Bを有するシート状の基材10と、その第1面10A上に配置された粘着剤層20とを備える。基材10は、互いに組成の異なるA層およびB層を少なくとも含む積層構造(2層構造、または3層構造の多層構造。この実施形態では2層構造)を有している。上記A層は、基材10の第1面10Aを構成する層であって、50重量%以上のフィラーを含む樹脂組成物(a)により構成されている。上記B層は、上記A層よりも基材10の第2面10B側に配置された層であって、上記樹脂組成物(a)とは組成の異なる樹脂組成物(b)により構成されている。図1に示す例では、基材10は、第1面10Aを構成するA層12と、第2面10Bを構成するB層14とが直接接して積層された、2層構造の樹脂フィルムである。基材10の第2面10Bは、粘着テープ1の背面(粘着面20Aとは反対側の表面)を兼ねている。基材10は、任意の構成要素として、図示しない補助層をさらに含んでいてもよい。A層12は、ベース樹脂としてエラストマーを含み、かつ50重量%以上のフィラーを含む樹脂層であり得る。B層14は、ベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂および/またはエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む樹脂層であり得る。B層14は、フィラーを含んでいてもよく、フィラーを含んでいなくてもよい。
【0022】
使用前(すなわち、被着体への貼付け前)の粘着テープ1は、例えば、長手方向に巻回されることにより基材の第2面10B(粘着テープの背面を兼ねていてもよい。)に粘着剤層20が当接してその表面(粘着面)20Aが保護された粘着テープロールの形態であり得る。あるいは、使用前の粘着テープは、粘着剤層の表面が、粘着テープとは別体であって少なくとも粘着剤層に対向する側が剥離面となっている剥離ライナーによって保護された形態であってもよい。剥離ライナーとしては、公知ないし慣用のものを特に限定なく使用することができる。例えば、プラスチックフィルムや紙等の基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。
【0023】
<基材>
ここに開示される粘着テープの基材は、粘着剤層が配置される側の表面である第1面と、上記第1面とは反対側の面である第2面と、を有する。上記基材は、上記第1面を構成するA層と、上記A層よりも上記第2面側に配置されたB層と、を少なくとも含む。以下、被着体に貼り付けられた状態における相対的な位置関係に基づいて、上記A層を「内層」ということがあり、上記B層を「外層」ということがある。
【0024】
(A層(内層))
基材のA層は、フィラーを50重量%以上含む樹脂組成物(a)により構成された層である。上記フィラーとしては、有機フィラー、無機フィラー、有機無機複合フィラーのいずれも使用可能である。フィラーには、公知ないし慣用の表面処理が施されていてもよい。コストや入手性の観点から、無機フィラーが好ましく用いられる。
【0025】
無機フィラーの例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化モリブデン、ハイドロタルサイト、スメクタイト、ゼオライト、硼酸亜鉛、無水硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、赤燐、タルク、アルミナ、シリカ、ベーマイト、ベントナイト、珪酸ソーダ、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルク、アルミナ、シリカ、珪酸カルシウム、硫酸カルシウムが好ましく、炭酸カルシウムがより好ましい。
【0026】
フィラーの平均粒子径は特に限定されず、例えば0.1μm~100μm程度であり得る。いくつかの態様において、フィラーの平均粒子径は、取扱い性や分散性等の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上でもよく、3μm以上でもよい。また、いくつかの態様において、フィラーの平均粒子径は、A層に適切な塑性変形性を付与しやすくする観点から、70μm以下であることが適当であり、50μmであることが好ましく、30μm以下でもよく、20μm以下でもよく、15μm以下でもよく、10μm以下(例えば7μm以下)でもよい。
なお、本明細書中における「平均粒子径」とは、特記しない限り、レーザ回折散乱法に基づく粒度分布測定装置に基づいて測定した粒度分布における積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径)を意味するものとする。
【0027】
樹脂組成物(a)におけるフィラーの含有量(通常、A層のフィラー含有量と一致する。)は、特に限定されず、50重量%以上100重量%未満の範囲で適宜設定することができる。いくつかの態様において、A層のフィラーの含有量は、該A層の成形容易性や基材の製造容易性の観点から、例えば95重量%であってよく、90重量%以下であってもよく、90重量%未満でもよく、88重量%以下でもよく、85重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、75重量%以下でもよい。また、A層のフィラーの含有量は、該A層に適度な脆さ(塑性変形性、または靭性の低さとしても把握され得る。)を付与しやすくする観点から、例えば50重量%超であってよく、52重量%以上であってもよく、55重量%以上でもよく、60重量%以上でもよく、65重量%以上でもよい。
【0028】
樹脂組成物(a)のベース樹脂は、粘着テープの基材に用いられ得る各種の樹脂から適宜選択することができる。いくつかの好ましい態様では、上記ベース樹脂としてエラストマーを使用する。上記エラストマーの非限定的な例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンプロピレンゴム、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル酸エステル-ブタジエン-スチレン共重合体(例えば、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、その他の合成ゴム(イソプレンゴム、ブタジエンゴム等)、等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なかでも好ましいベース樹脂として、EVAが挙げられる。例えば、酢酸ビニル含量が5~50重量%程度(好ましくは10~47重量%程度、例えば15~45重量%程度)のEVAを用いることができる。EVAの市販品としては、東ソー製の商品名ウルトラセンシリーズ、三井・ダウ ポリケミカル製の商品名エバフレックスシリーズ、等が挙げられる。
なお、A層のベース樹脂とは、A層を構成する樹脂成分のことをいう。後述するB層のベース樹脂についても同様である。
【0029】
A層の厚さ(T)は、被着体表面に存在し得る凹凸(例えば、舗装面などの粗面の凹凸)への密着性の観点から、概ね50μm以上であることが適当であり、100μm以上であることが有利であり、150μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、300μm以上でもよく、400μm以上でもよく、500μm以上でもよく、600μm以上でもよく、700μm以上でもよい。また、粘着テープを貼り付けることで被着体上に生じる段差の高さを抑える観点から、A層の厚さは、概ね1800μm以下であることが適当であり、1600μm以下であることが好ましく、1400μm以下でもよく、1200μm以下でもよく、1000μm以下でもよく、900μm以下でもよい。
【0030】
(B層(外層))
基材のB層は、樹脂組成物(b)により構成された層である。樹脂組成物(b)のベース樹脂は、粘着テープの基材を構成する樹脂材料として用いられ得る各種の樹脂から適宜選択して用いることができる。耐久性と、路面等の粗面へのなじみ性とを両立する粘着テープを形成し得るベース樹脂の好適例として、ポリオレフィン系樹脂およびエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられる。樹脂組成物(b)のベース樹脂として用いられ得る材料の他の例として、樹脂組成物(a)に用いられ得るベース樹脂として例示した材料が挙げられる。樹脂組成物(b)のベース樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なかでもポリオレフィン系樹脂が好ましい。樹脂組成物(b)のベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いることは、粘着テープの防汚性等の観点から有利となり得る。このことは、例えばB層が基材の他方の表面を構成しており、該他方の表面が粘着テープの背面を兼ねる構成において、特に有意義である。
【0031】
ポリオレフィン系樹脂としては、1種のポリオレフィンを単独で、または2種以上のポリオレフィンを組み合わせて用いることができる。該ポリオレフィンは、例えばα-オレフィンのホモポリマー、二種以上のα-オレフィンの共重合体、1種または2種以上のα-オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体等であり得る。具体例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレンプロピレンゴム(EPR)等のエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。PEとしては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。PEの好適例として、LLDPEおよびLDPEが挙げられる。なかでもLLDPEが好ましい。
【0032】
いくつかの態様において、樹脂組成物(b)のベース樹脂としては、PEとα-オレフィン共重合体とを組み合わせて含むポリオレフィン系樹脂を好ましく採用し得る。具体例としては、LLDPEとα-オレフィン共重合体とを含むポリオレフィン系樹脂、LDPEとα-オレフィン共重合体とを含むポリオレフィン系樹脂、LLDPEとLDPEとα-オレフィン共重合体とを含むポリオレフィン系樹脂、等が挙げられる。PEとα-オレフィン共重合体との使用量比は、重量基準で、例えば5/95~95/5であってよく、好ましくは10/90~95/5であり、より好ましくは25/75~90/10であり、30/70~90/10であってもよく、30/70~85/20であってもよく、40/60~80/20でもよく、40/60~60/40でもよい。
【0033】
樹脂組成物(b)は、上記ベース樹脂に加えてフィラーを含んでいてもよい。フィラーの例としては、樹脂組成物(a)に用いられ得るフィラーとして上記で説明した材料と同様のものが挙げられる。樹脂組成物(b)に用いられるフィラーの平均粒子径は、樹脂組成物(a)に用いられるフィラーの平均粒子径と同様の範囲から適宜選択し得る。
【0034】
樹脂組成物(b)におけるフィラーの含有量(通常、B層のフィラー含有量と一致する。)を適切に設定することにより、後述するB層の引張強さ、粘着テープの引張強さ、粘着テープのたるみ性等を調整することができる。B層のフィラー含有量は、0重量%より大きい範囲で適宜設定することができ、例えば10重量%以上であってよく、15重量%以上でもよく、20重量%以上または20重量%超でもよく、25重量%以上でもよく、30重量%以上でもよく、40重量%以上でもよく、50重量%以上でもよく、60重量%以上でもよく、65重量%以上でもよい。また、B層のフィラー含有量は、該B層の強度や耐久性の観点から、95重量%以下であることが適当であり、90重量%以下であることが有利であり、90重量%未満であることが好ましく、88重量%以下であることがより好ましく、85重量%以下でもよく、85重量%未満でもよく、80重量%以下でもよく、75重量%以下でもよい。例えば、樹脂組成物(b)のベース樹脂がポリオレフィン系樹脂、EVA、またはこれらの混合物である態様において、上述したフィラーの含有量を好ましく採用し得る。また、樹脂組成物(b)のベース樹脂としてEVAを用いるいくつかの態様において、B層のフィラー含有量は、例えば60重量%以下であることが有利であり、50重量%以下または50重量%未満であることが好ましく、45重量%以下でもよく、40重量%以下でもよく、35重量%以下でもよい。
【0035】
B層の厚さ(T)は、B層の引張強さ、粘着テープの引張強さ、粘着テープのたるみ性等の1または2以上を適切な範囲としやすくする観点から、20μm以上であることが適当であり、50μm以上であることが有利であり、75μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上でもよく、200μm以上でもよく、300μm以上でもよく、350μm以上でもよく、380μm以上でもよい。また、粘着テープを貼り付けることで被着体上に生じる段差の高さを抑える観点から、B層の厚さは、概ね1600μm以下であることが適当であり、1400μm以下であることが好ましく、1200μm以下でもよく、1000μm以下でもよく、800μm以下でもよく、60μm以下でもよく、500μm以下でもよい。
【0036】
A層およびB層を含む基材全体の厚さは、特に限定されず、粘着テープの使用目的や使用態様等に応じて選択し得る。基材の厚さは、例えば凡そ70μm~凡そ1900μmの範囲から選択し得る。粘着テープの使用寿命を長くしやすくする観点から、いくつかの態様において、基材総厚は、100μm以上であることが適当であり、200μm以上であることが好ましく、250μm以上であることがより好ましく、例えば400μm以上であってよく、600μm以上でもよく、800μm以上でもよく、1000μm以上でもよく、1100μm以上でもよい。また、粘着テープを貼り付けることで被着体上に生じる段差の高さを抑える観点から、いくつかの態様において、基材の厚さは、例えば1980μm以下であってよく、1950μm以下であることが適当であり、1900μm以下であることが好ましく、1800μm以下でもよく、1600μm以下でもよく、1500μm以下でもよく、1400μm以下でもよく、1450μm以下でもよい。
【0037】
いくつかの態様において、B層の厚さT[μm]に対するA層の厚さT[μm]の厚さの比(T/T)は、例えば0.2~50程度であってよく、0.5~10程度であることが好ましい。被着体表面の凹凸への良好ななじみ性を発揮しやすくする観点から、いくつかの態様において、上記比(T/T)は、0.7以上であることが適当であり、1.0以上または1.0超であることが有利であり、1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、1.6以上でもよく、1.8以上でもよい。また、粘着テープの総厚が過度に大きくなることを避けつつ良好な耐久性を得やすくする観点から、上記比(T/T)は、8.0以下であることが適当であり、6.0以下であることが有利であり、4.0以下であることが好ましく、3.0以下でもよく、2.5以下でもよい。
【0038】
ここに開示される粘着テープの基材は、耐久性の観点から、少なくとも上記A層および上記B層がいずれも非多孔質の樹脂層である態様で好ましく実施することができる。ここで、非多孔質の樹脂層とは、典型的には実質的に気泡を含まない(ボイドレスの、例えば基材の見かけ体積のうち気泡の割合が3体積%未満、好ましくは1体積%未満の)樹脂層を意味する。基材の全体が非多孔質であることが好ましい。
【0039】
基材の各層を構成する樹脂材料には、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料等)、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の公知の添加剤を、必要に応じて配合することができる。添加剤の配合量は特に限定されず、適切な使用効果が発揮されるように適宜設定することができる。
【0040】
基材の製造方法は特に限定されず、例えば、各層を構成する樹脂材料の共押出成形や、各樹脂材料から個別に形成された樹脂フィルムの熱ラミネートや接着剤による積層、ある層を構成する樹脂フィルム上への他の樹脂材料の押出ラミネート、これらの組合せや繰り返し、等の公知の方法により製造することができる。上記樹脂フィルムは、例えば押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形、カレンダー加工等の、従来公知の一般的な樹脂フィルム成形方法により作製することができる。
【0041】
ここに開示される粘着テープの基材は、少なくともA層およびB層を含む構成であればよく、A層およびB層からなる2層構造の基材であってもよく、A層およびB層とは異なる層(以下、任意層ともいう。)を1層または2層以上、さらに含む構造の基材であってもよい。任意層を含む構造の基材を用いるいくつかの態様では、A層およびB層を含むことによる効果を好適に発揮しやすくする観点から、A層とB層の合計厚さが基材の総厚の80%以上であることが好ましく、90%以上または95%以上(例えば98%以上)であることがより好ましい。
【0042】
上記任意層は、例えば、光学特性調整層(例えば着色層、反射防止層)、基材に所望の外観を付与するための印刷層やラミネート層、帯電防止層、基材の耐久性(耐傷つき性、耐摩耗性、防汚性等)向上等の目的で設けられるハードコート層、粘着テープの背面(粘着面とは反対側の表面)に剥離性を付与するための剥離層、粘着剤層の基材への投錨性向上や基材とハードコート層との密着性向上等の目的で設けられる下塗り層(プライマー層)、等であり得る。
上記ハードコート層を形成するためのハードコート剤としては、例えばアクリル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、シリコーン系等の、公知の材料を適宜使用することができる。ハードコート層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適切に設定することができる。いくつかの態様において、ハードコート層の厚さは、例えば0.1μm~100μm程度であってよく、1μm~50μm程度であってもよい。
上記剥離層を形成するための剥離処理剤としては、例えばシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等、公知の材料を適宜使用することができる。剥離層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適切に設定することができる。いくつかの態様において、剥離層の厚さは、例えば0.01μm~5μm程度であってよく、0.05μm~3μm程度であってもよい。
上記下塗り層の形成に用いるプライマーの組成は特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。下塗り層の厚さは特に制限されず、目的に応じて適切に設定することができる。いくつかの態様において、下塗り層の厚さは、例えば0.01μm~1μm程度であってよく、0.1μm~1μm程度であってもよい。
【0043】
上記任意層は、A層の表面(A層と粘着剤層との間)に配置されていてもよく、基材の第二面(粘着テープの背面側の表面)を構成していてもよく、A層とB層の間に配置されていてもよい。また、上記任意層は、基材の全範囲にわたって設けられてもよく、部分的に設けられていてもよい。
【0044】
基材の第一面には、必要に応じて、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。上記表面処理は、単独でまたは組み合わせて適用することができる。
【0045】
<粘着剤層>
ここに開示される粘着テープの粘着剤層は、各種の粘着剤から適切に選択される1種または2種以上を用いて構成することができる。そのような粘着剤の例には、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、フッ素系粘着剤等が含まれるが、これらに限定されない。ここで、アクリル系粘着剤とは、アクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤をいう。同様に、ポリエステル系粘着剤とは、ポリエステルをベースポリマーとする粘着剤をいう。ゴム系粘着剤その他の粘着剤についても同様の意味である。また、粘着剤のベースポリマーとは、該粘着剤に含まれるゴム状のポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマーをいう。)のうちの主成分を指し、典型的にはポリマー成分の50重量%超(例えば70重量%以上であり得、90重量%以上であってもよい。)を占める成分をいう。ここに開示される粘着テープは、例えば、アクリル系粘着剤を用いて形成された粘着剤層(アクリル系粘着剤層)を有する態様で好ましく実施され得る。
【0046】
なお、この明細書において「アクリル系ポリマー」とは、(メタ)アクリル系モノマーに由来するモノマー単位をポリマー構造中に含む重合物をいい、典型的には(メタ)アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を50重量%を超える割合で含む重合物をいう。また、(メタ)アクリル系モノマーとは、一分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをいう。ここで、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。したがって、ここでいう(メタ)アクリル系モノマーの概念には、アクリロイル基を有するモノマー(アクリル系モノマー)とメタクリロイル基を有するモノマー(メタクリル系モノマー)との両方が包含され得る。同様に、この明細書において「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸およびメタクリル酸を、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0047】
(アクリル系ポリマー)
アクリル系粘着剤のベースポリマーであるアクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料における全モノマー成分の50重量%超を占める成分をいう。
【0048】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1~20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1-20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、RがC1-14(例えばC2-10、典型的にはC4-9)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、Rが水素原子でRがC4-9の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレートがより好ましい。
【0049】
がC1-20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n-ブチルアクリレート(BA)および2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が例示される。BAおよび2EHAは、いずれか一方を単独で、または両者を組み合わせて使用され得る。
【0050】
全モノマー成分中における主モノマーの配合割合は、凡そ70重量%以上(例えば凡そ85重量%以上、典型的には凡そ90重量%以上)であることが好ましく、また、通常は凡そ99.5重量%以下(例えば凡そ99重量%以下)とすることが好ましい。モノマー成分としてC4-9アルキルアクリレートを使用する場合、該モノマー成分中に含まれるアルキル(メタ)アクリレートのうちC4-9アルキルアクリレートの割合は、凡そ70重量%以上であることが好ましく、凡そ90重量%以上であることがより好ましく、凡そ95重量%以上(典型的には凡そ99重量%以上凡そ100重量%以下)であることがさらに好ましい。好ましい一態様では、上記モノマー成分がBAおよび2EHAの少なくとも一方を含む。ここに開示される技術は、例えば、BAおよび2EHAの合計量が全モノマー成分の凡そ50重量%以上(典型的には凡そ70重量%以上、例えば凡そ90重量%以上)を占める態様で好ましく実施され得る。
【0051】
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。副モノマーとしては、例えばカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等の官能基含有モノマーの1種または2種以上を使用することができる。凝集力向上等の観点から、副モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーおよび/または水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが好ましい。カルボキシ基含有モノマーの好適例としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。水酸基含有モノマーの好適例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0052】
副モノマーの量は、所望の凝集力が実現されるように適宜選択すればよく、特に限定されない。通常は、接着力と凝集力とをバランス良く両立させる観点から、副モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の凡そ0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ1重量%以上である。また、副モノマーの量は、通常、全モノマー成分中の凡そ30重量%以下とすることが適当であり、凡そ15重量%以下(例えば凡そ10重量%以下)とすることが好ましい。
【0053】
アクリル系ポリマーには、上記以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。上記その他モノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのガラス転移温度の調整、粘着性能(例えば剥離性)の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力を向上させ得るモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等)、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。上記その他モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記その他モノマーの含有量は、全モノマー成分中、凡そ30重量%以下(例えば凡そ10重量%以下)とすることが好ましく、また、例えば凡そ0.01重量%以上(典型的には凡そ0.1重量%以上)とすることができる。
【0054】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として一般的に用いられる各種の重合方法を適用して該ポリマーを得ることができる。また、上記アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体、グラフト共重合体等であってもよい。生産性等の観点から、通常はランダム共重合体が好ましい。
【0055】
(架橋剤)
粘着剤層(例えば、アクリル系粘着剤層)には、必要に応じて架橋剤が用いられ得る。 架橋剤としては、粘着剤の分野において公知の架橋剤を使用することができる。例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げられるが、これらに限定されない。架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの態様では、架橋剤としてエポキシ系架橋剤を好ましく採用し得る。エポキシ系架橋剤と他の架橋剤とを組み合わせて用いてもよい。
【0056】
架橋剤を使用する場合における使用量は特に限定されず、該架橋剤が配合される粘着剤(例えばアクリル系粘着剤)の固形分100重量部に対して0重量部を超える量であって、かつその使用効果が適切に発揮される量とすることができる。例えば、架橋剤の使用量は、固形分(不揮発分)基準で、粘着剤100重量部に対して凡そ0.005~15重量部(好ましくは1~5重量部)の範囲で適宜設定することができる。いくつかの態様において、架橋剤の使用量は、固形分(不揮発分)基準で、粘着剤100重量部に対して、例えば0.005重量部以上とすることができ、0.010重量部以上(例えば0.015重量部以上)とすることが好ましく、0.1重量部以上でもよく、0.5重量部超でもよく、0.7重量部以上でもよく、1.0重量部超でもよく、1.2重量部超でもよく、1.5重量部超でもよく、2.0重量部超でもよい。また、いくつかの態様において、架橋剤の使用量は、固形分(不揮発分)基準で、粘着剤100重量部に対して、例えば15重量部以下とすることが適当であり、10重量部以下としてもよく、5重量部以下としてもよく、3重量部以下、1重量部以下または0.5重量部以下でもよく、0.1重量部以下(例えば0.05重量部以下)でもよい。架橋剤の使用量が多過ぎないことは、例えば、粘着テープの被着体への密着性(表面に凹凸を有する被着体では、該凹凸への食い込み性としても把握され得る。)の観点から有利となり得る。
【0057】
(粘着付与剤)
粘着剤層は、必要に応じて粘着付与剤を含有していてもよい。粘着付与剤の使用により、被着体に対する接着性を向上させ得る。好ましく使用し得る粘着付与剤の例として、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、それらの水素添加物等の粘着付与樹脂が挙げられる。粘着付与剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。粘着付与剤を使用する場合における使用量は、所望の使用効果が得られるように設定することができ、特に限定されない。粘着付与剤の使用量は、例えば、粘着剤層全体の重量の5重量%以上、10重量%以上または15重量%以上とすることができる。また、粘着付与剤の使用量は、例えば、粘着剤層全体の重量の60重量%以下、40重量%以下または30重量%以下とすることができる。ここに開示される粘着テープは、粘着付与剤を実質的に使用しない態様でも好ましく実施され得る。
【0058】
粘着剤層には、当該粘着剤層への含有が許容される適宜の成分(添加剤)を必要に応じて配合することができる。かかる添加剤の例として、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料等を包含する意味である。)、充填材、酸化防止剤、光安定剤(ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤等を包含する意味である。)等が挙げられる。このような添加剤は、それぞれ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。各添加剤の配合量は、粘着テープの分野における通常の配合量と同程度とすることができる。
【0059】
(粘着剤層の形成)
ここに開示される技術における粘着剤層の形成に使用する粘着剤組成物の形態は特に限定されない。上記粘着剤層は、例えば、水分散型粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物または活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。粘着剤層の形成は、公知の粘着テープにおける粘着剤層形成方法に準じて行うことができる。例えば、粘着剤組成物を基材に直接付与(典型的には塗布)して乾燥させる方法(直接法)や、粘着剤組成物を剥離性のよい表面(例えば、剥離ライナーの表面、離型処理された基材背面等)に付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用することができる。
【0060】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、粘着テープの使用目的や使用態様等に応じて選択し得る。粘着剤層の厚さは、例えば10μm~800μmの範囲で適宜設定し得る。表面に凹凸を有する被着体(例えば舗装面)に貼り付けられることが想定される粘着テープでは、被着体への密着性(凹凸への食い込み性)の観点から、粘着剤層の厚さは、20μm以上であることが適当であり、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、70μm以上でもよく、80μm以上でもよく、90μm以上でもよい。また、粘着テープの生産性や、該粘着テープの端面(特に、長手方向に沿う端面)におけるブロッキング抑制の観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、500μm以下であることが適当であり、400μm以下であることが好ましく、300μm以下でもよく、200μm以下でもよく、150μm以下でもよい。
【0061】
<粘着テープ>
ここに開示される粘着テープの厚さは特に限定されず、粘着テープの使用目的や使用態様等に応じて選択し得る。路面等の粗面へのなじみ性と耐久性とを好適に両立しやすくする観点から、いくつかの態様において、粘着テープの厚さは、例えば80μm以上であってよく、120μm以上であることが適当であり、150μm以上であることが好ましく、250μm以上でもよく、450μm以上でもよく、650μm以上でもよく、850μm以上でもよく、1000μm以上でもよく、1100μm以上でもよい。粘着テープの厚さは、例えば2500μm以下であり得る。粘着テープを貼り付けることで被着体上に生じる段差の高さを抑える観点から、いくつかの態様において、粘着テープの厚さは、2000μm以下であることが適当であり、1800μm以下であることが好ましく、1600μm以下でもよく、1500μm以下でもよく、1400μm以下でもよい。上記段差の高さを抑えることは、被着体に貼り付けられた状態において粘着テープの端が欠けることを防ぐ観点からも有利である。例えば、粗面(舗装面等)に貼り付けられた粘着テープの上を横切って車両が通過する使用態様では、上記段差の高さを所定以下に抑えることで粘着テープの欠けを防止することが有益である。
【0062】
ここに開示される粘着テープのいくつかの態様において、粘着剤層の厚さT[μm]とA層の厚さT[μm]との合計厚さ(T+T)は、例えば60μm以上であってよく、100μm以上であることが有利であり、150μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがより好ましく、500μm以上でもよく、700μm以上でもよく、800μm以上でもよい。上記合計厚さ(T+T)の増大により、被着体が舗装面等の粗面であっても、上記粘着剤層の易変形性および上記A層の塑性変形性を利用して該粗面に粘着テープを良好になじませやすくなる傾向にある。また、粘着テープを貼り付けることで被着体上に生じる段差の高さを抑える観点から、いくつかの態様において、上記合計厚さ(T+T)は、1800μm以下であることが適当であり、1500μm以下であることが好ましく、1300μm以下でもよく、1100μm以下でもよく、1000μm以下でもよい。粘着テープのブロッキングを抑制しつつ粗面への良好ななじみ性を発揮する観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さT[μm]に対するA層の厚さT[μm]の比(T/T)は、1以上であることが好ましく、3以上であることが好ましく、5以上でもよく、6以上でもよく、7以上でもよい。また、粘着テープの90度剥離強度を高める観点から、上記比(T/T)は、30以下であることが適当であり、20以下であることが好ましく、15以下でもよく、12以下でもよく、10以下でもよい。
【0063】
(引張強さF
ここに開示される粘着テープは、該粘着テープの引張強さFが35N/15mm以上145N/15mm以下であり、例えば40N/15mm以上130N/15mm以下であり得る。粘着テープの耐久性(例えば、舗装面に貼り付けられた粘着テープを横切って車両が行き来するような過酷な使用態様における耐久性)をより高める観点から、いくつかの態様において、引張強さFは、40N/15mm以上であることが有利であり、45N/15mm以上であることが好ましく、50N/15mm以上であることがより好ましく、55N/15mm以上でもよく、60N/15mm以上でもよく、65N/15mm以上でもよく、70N/15mm以上でもよく、75N/15mm以上でもよい。また、いくつかの態様において、引張強さFは、110N/15mm以下であることが適当であり、100N/15mm以下または100N/15mm未満であることが好ましく、95N/15mm以下であってもよく、90N/15mm以下であってもよく、85N/15mm以下であってもよい。引張強さFが高すぎないことは、A層の塑性変形性を効果的に利用して粘着テープ全体としての粗面(例えば舗装面)へのなじみ性を高める観点から有利となり得る。引張強さFは、基材の構造や各層の組成、基材の製造方法等の選択によって調節することができる。
【0064】
粘着テープの引張強さFは、JIS K 7127:1999に基づいて測定される。具体的には、粘着テープの引張強さFは、23℃、50%RHの環境下において、幅15mmの試験片を、引張試験機を用いてチャック間距離15mm、引張速度300mm/分の条件で破断するまで延伸し、そのときの最大引張荷重[N/15mm]として測定される。上記試験片は、例えば、評価対象の粘着テープを適宜カットすることにより調製することができる。試験片は、引張強さFの測定時において該試験片を延伸する方向が、粘着テープの長手方向(典型的には流れ方向(MD))となるように調製することが望ましい。引張試験機としては、島津製作所社製の製品名「オートグラフ AGS-J」を用いることができる。試験片の長さは、チャック間距離15mmで引張試験機にセットできる長さであればよく、例えば50mm程度とすることが適当である。後述の実施例においても同様の測定方法が採用される。
【0065】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着テープにおいて、上記引張強さFの測定時に試験片を延伸する方向とは直交する方向(典型的には、粘着テープの幅方向(TD))に試験片を、該試験片が破断するまで延伸して測定される引張強さFは、例えば15N/15mm以上(有利には、20N/15mm以上)であり得る。引張強さFは、測定時における試験片の延伸方向を除いては、引張強さFの測定と同様にして測定される。粘着テープの耐久性向上の観点から、いくつかの態様では、引張強さFが25N/15mm以上であることが好ましく、30N/15mm以上であることがより好ましく、35N/15mm以上であってもよく、40N/15mm以上であってもよく、48N/15mm以上であってもよく、50N/15mm以上でもよく、55N/15mm以上でもよい。また、引張強さFは、例えば200N/15mm以下であってよく、なじみ性等の観点から150N/15mm以下であることが適当であり、140N/15mm以下であることが有利であり、120N/15mm以下であることが好ましく、110N/15mm以下であることがより好ましく、100N/15mm以下または100N/15mm未満であってもよく、95N/15mm以下であってもよく、90N/15mm以下であってもよく、85N/15mm以下であってもよく、80N/15mm以下でもよく、75N/15mm以下でもよい。引張強さFは、基材の構造や各層の組成、基材の製造方法等の選択により調節することができる。
【0066】
引張強さF[N/15mm]と引張強さF[N/15mm]との差の絶対値、すなわち|F-F|は、特に限定されないが、面方向の方向依存性を小さくして性能安定性を高める観点からは大きすぎないほうが有利である。いくつかの態様において、|F-F|は、20N/15mm以下であることが好ましく、15N/15mm以下であることがより好ましく、11N/15mm以下でもよく、9.0N/15mm以下でもよい。|F-F|の下限は、理論上、0.0N/15mmである。生産性やコスト等の実用上の観点から、いくつかの態様において、|F-F|は、例えば0.1N/15mm以上であってよく、0.2N/15mm以上でもよく、0.5N/15mm以上でもよく、1.0N/15mm以上でもよく、3.0N/15mm以上でもよく、5.0N/15mm以上でもよい。FとFとの相対的な大小関係は、F>Fであってもよく、F=Fであってもよく、F<Fであってもよい。いくつかの好ましい態様では、F≧F(典型的にはF>F)である。後述する実施例(実施例1~8)に係る粘着テープは、いずれもF-Fが5.0~15N/15mmの範囲内であった。
【0067】
(引張強さF
ここに開示される粘着テープのいくつかの態様では、該粘着テープの基材を構成するB層の引張強さFが15N/15mm以上であることが適当であり、18N/15mm以上であることが好ましく、20N/15mm以上であることがより好ましく、25N/15mm以上でもよく、28N/15mm以上でもよく、30N/mm以上でもよい。このような引張強さFを示すB層によると、耐久性の高い粘着テープを好適に実現しやすい。また、B層の引張強さFは、例えば75N/15mm以下であってよく、A層の塑性変形性が損なわれることを避ける観点から70N/15mm以下または70N/15mm未満であることが適当であり、65N/15mm以下であることが有利であり、60N/15mm以下であることが好ましく、58N/15mm以下であることがより好ましく、55N/15mm以下でもよく、50N/15mm以下でもよい。引張強さFは、B層の組成や厚さ、形成方法等の選択によって調節することができる。
【0068】
B層の引張強さFは、以下のようにして測定される。すなわち、基材のB層からなる単層の樹脂フィルムを用意する。例えば、基材のB層を構成する樹脂組成物(b)を用いて、該基材におけるB層と同じ厚さの単層の樹脂フィルムを作製する。この樹脂フィルムを評価対象とする他は粘着テープの引張強さFと同様にして、B層の引張強さFを測定することができる。後述の実施例においても同様の測定方法が採用される。
【0069】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着テープの基材を構成するB層において、上記引張強さFの測定時に試験片を延伸する方向とは直交する方向(典型的にはTD)に試験片を、該試験片が破断するまで延伸して測定される引張強さFは、例えば5.0N/15mm以上(有利には、8.0N/15mm以上)であり得る。引張強さFは、測定時における試験片の延伸方向を除いては、引張強さFの測定と同様にして測定される。粘着テープの耐久性向上の観点から、いくつかの態様では、引張強さFが10N/15mm以上であることが好ましく、15N/15mm以上であることがより好ましく、18N/15mm以上であってもよく、20N/15mm以上であってもよく、23N/15mm以上であってもよく、25N/15mm以上であってもよい。また、引張強さFは、例えば75N/15mm以下であってよく、70N/15mm以下であってもよく、なじみ性等の観点から65N/15mm以下であることが有利であり、60N/15mm以下または60N/15mm未満であることが好ましく、55N/15mm以下であることがより好ましく、50N/15mm以下でもよく、48N/15mm以下でもよく、46N/15mm以下でもよい。引張強さFは、B層の組成や厚さ、形成方法等の選択によって調節することができる。
【0070】
引張強さF[N/15mm]と引張強さF[N/15mm]との差の絶対値、すなわち|F-F|は、特に限定されない。面方向の方向依存性を小さくする観点から、いくつかの態様において、|F-F|は、10N/15mm以下であることが好ましく、8.0N/15mm以下であることがより好ましく、6.0N/15mm以下でもよく、5.0N/15mm以下でもよく、4.0N/15mm以下であってもよい。|F-F|の下限は、理論上、0N/15mmである。生産性やコスト等の実用上の観点から、いくつかの態様において、|F-F|は、例えば0.1N/15mm以上であってよく、0.5N/15mm以上でもよく、1.0N/15mm以上でもよく、1.5N/15mm以上でもよく、2.0N/15mm以上でもよく、2.5N/15mm以上であってもよく、3.0N/15mm以上であってもよい。FとFとの相対的な大小関係は、F>Fであってもよく、F=Fであってもよく、F<Fであってもよい。いくつかの好ましい態様では、F≧F(典型的にはF>F)である。後述する実施例(実施例1~8)に係る粘着テープの基材を構成するB層は、いずれもF-Fが2.0~5.0N/15mmの範囲内であった。
【0071】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着テープのいくつかの態様において、該粘着テープは以下の不等式(1):
(F/T)>(F/T) (1);
を満たすことが好ましい。上記不等式(1)において、TはB層の厚さ[μm]であり、Tは基材の厚さ[μm]である。すなわち、B層の引張強さF[N/15mm]をB層の厚さT[μm]で除した値が、粘着テープの引張強さF[N/15mm]を基材の厚さT[μm]で除した値よりも大きいことが好ましい。ここで、上記不等式(1)中のTは、B層の厚さをμmの単位で表したときの数値部分であって、T自体は単位を持たない無次元数である。上記不等式(1)中のF、T、Tも同様である。また、上記不等式(1)の右辺の分母を粘着テープの厚さではなく基材の厚さとするのは、一般に粘着剤層の引張強さは基材の引張強さに比べて著しく小さいため、粘着テープの引張強さを基材の引張強さの近似値として把握し得るためである。すなわち、上記不等式(1)は、基材の引張強さ(粘着テープの引張強さに近似)およびB層の引張強さをそれぞれ厚さ当たりの値に換算した場合に、B層の存在によって基材全体の引張強さが高められていることを示している。
【0072】
(たるみ性)
ここに開示される粘着テープのいくつかの態様において、該粘着テープは、そのたるみ性が55mm以上であることが好ましい。粘着テープのたるみ性がより高いことは、該粘着テープがより変形しやすいことを示している。そのため、たるみ性が55mm以上の粘着テープによると、基材のA層の塑性変形性を利用して粘着テープ全体を被着体表面の凹凸に効果的になじませることができる。上記たるみ性は、58mm以上であることがより好ましく、60mm以上または60mm超であることがさらに好ましく、62mm以上でもよく、64mm以上でもよい。一方、粘着テープの耐久性の観点からは、上記たるみ性が高すぎないほうが有利である。かかる観点から、いくつかの態様において、上記たるみ性は、80mm以下であることが適当であり、78mm以下または75mm以下であることが有利であり、75mm未満であることが好ましく、73mm以下でもよく、70mm以下でもよく、68mm以下でもよい。たるみ性は、基材の構造や各層の組成、基材の製造方法、粘着テープの厚さ等の選択により調節することができる。
【0073】
粘着テープのたるみ性は、以下のようにして測定される。すなわち、23℃、50%RHの環境下において、幅50mm、長さ300mmの試験片を、粘着剤層が設けられた側(粘着面)を下にして、該試験片の一端から長さ100mmまでの範囲が水平な保持台から外方に出るようにして上記保持台に片持ちで保持し、10分間静置した後、上記保持台の上面と上記試験片の一端との高さの差を測定する。上記試験片は、例えば、評価対象の粘着テープを適宜カットすることにより調製することができる。試験片の長手方向が粘着テープの長手方向となるように調製することが望ましい。より詳しくは、例えば図2に示すように、幅50mm、長さ300mmの試験片32を、該試験片32の一端32Aから長さ100mmまでの範囲が水平な保持台30の外縁と直交して該保持台30から外方に出るように、試験片32の他端32Bから長さ200mmまでの範囲を保持台30の上面に貼り付け、その上に重し34を載せることにより、試験片32を保持台30に片持ちで保持する。試験片32を10分間静置した後、保持台32の上面と試験片32の一端32Aとの高さの差(垂れ高さ)L1を測定し、その値をたるみ性[mm]の測定値とする。
【0074】
(90度剥離強度)
ここに開示される粘着テープのいくつかの態様において、該粘着テープは、ステンレス鋼板に対する90度剥離強度(以下、単に「90度剥離強度」ともいう。)が5.0N/20mm以上であることが適当であり、7.0N/20mm以上であることが有利であり、10.0N/20mm以上であることが好ましい。耐剥がれ性向上の観点から、いくつかの態様において、粘着テープの90度剥離強度は、13.0N/20mm以上でもよく、15.0N/20mm以上でもよく、18.0N/20mm以上でもよい。90度剥離強度の上限は特に限定されず、例えば80N/20mm以下であり得る。いくつかの態様では、被着体に貼り付けられている粘着テープを該被着体から剥がして新しい粘着テープに貼り替える際の剥離作業性の観点から、上記90度剥離強度は、例えば45N/20mm以下であってよく、30N/20mm以下でもよく、25N/20mm以下でもよい。
【0075】
粘着テープの90度剥離強度は、次のようにして測定される。すなわち、23℃、50%RHの環境下において、幅20mmの短冊状にカットした測定サンプルをステンレス鋼板(SUS 304BA板)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を使用して、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度90度の条件で剥離強度(N/20mm)を測定する。引張試験機としては、例えば島津製作所社製の製品名「オートグラフAGS-J」を用いることができる。後述の実施例においても同様の方法で測定される。
【0076】
<用途>
ここに開示される粘着テープは、粗面に貼り付けられてその上から強い応力が度々加わるような態様においても使用寿命を改善し得るという特長を活かして、舗装面(特に、屋外の舗装面)等の粗面に貼り付けられる態様で好ましく用いられ得る。上記舗装面は、例えばアスファルト舗装、コンクリート舗装、コンクリートブロック舗装などによる舗装面であり得る。上記舗装面に貼り付けられた粘着テープを横切って車両(例えば、乗用車、トラック、フォークリフト、リーチスタッカーなど)が行き来する使用態様において、ここに開示される技術の適用効果が好適に発揮され得る。
また、ここに開示される粘着テープは、上記の特長を活かして、例えば標示用粘着テープとして好ましく用いられ得る。例えば、工場の敷地内や道路などに貼り付けられて、立ち入り禁止区画やパレット置き場の区画を示す用途、車両の停止位置や駐車場の枠線などの目印を標示する用途、行き先表示などの情報を標示する用途、工事現場や駅構内等において注意を喚起するためのトラ模様を形成する用途などに好適である。
また、ここに開示される粘着テープは、舗装面に貼り付けられる用途に限らず、例えば屋内または屋外のモルタル塗装面、ブロック塀、レンガ塀、石垣、石畳路などに貼り付けられる用途にも有用である。
【0077】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り、重量基準である。
【0078】
<使用材料>
以下の実験において粘着テープの作製に使用した材料は、次のとおりである。
PET:日清化成から入手可能なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、商品名「ダイアホイル S100」。
EVA:東ソー製の商品名「ウルトラセン636」(エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有率19%)と三井・ダウ ポリケミカル製の商品名「エバフレックス EV40LX」(エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有率41%)とを1:1の重量比で使用。
ポリオレフィン系樹脂:ポリエチレン(東ソー社製の直鎖状低密度ポリエチレン、商品名「ニポロン-L F21」)とα-オレフィン共重合体(三井化学製のエチレン・α-オレフィンコポリマー、商品名「タフマーA 4070S」)とを1:1の重量比で使用。表1では略して「ポリオレフィン」と表示。
フィラー:炭酸カルシウム(竹原化学工業製、平均粒子径4.5μm)。
粘着剤組成物:トーヨーケム製の2液硬化型アクリル系溶剤型粘着剤。使用直前に、有機溶剤中にアクリル酸エステル系共重合体を40~50%および粘着付与樹脂5~15%を含む主剤100部に対して、硬化剤としてのエポキシ系架橋剤を0.02部配合(いずれも不揮発分基準)。
【0079】
<実施例1>
EVA50%およびフィラー50%を含むA層用原料と、ポリオレフィン系樹脂67%およびフィラーを含むB層用原料とを用いて、カレンダー加工により、厚さ800μmのA層および厚さ400μmのB層からなる2層構造の樹脂フィルム(基材)を作製した。
厚さ38μmのPETフィルムの片面がシリコーン系剥離剤による剥離面となっている剥離ライナーを用意した。この剥離ライナーの剥離面に上記粘着剤組成物を塗布し、100℃で2分間乾燥させて厚さ100μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層を上記樹脂フィルムの第1面(A層側の表面)に貼り合わせて、本例に係る粘着テープを得た。
【0080】
<実施例2~5、比較例1>
基材の作製に使用するA層用原料およびB層用原料の組成を表1に示すとおりとした他は実施例1と同様にして、各例に係る粘着テープを作製した。
【0081】
<比較例2、3>
Tダイフィルム成形機を用いて下記表1に示す組成のA層用原料を溶融混錬し、押出成形することにより、厚さ1200μmのA層からなる単層構造の樹脂フィルムを作製した。上記樹脂フィルムを基材として使用した他は実施例1と同様にして、各例に係る粘着テープを作製した。
【0082】
<比較例4>
厚さ205μmのPETフィルム(日清化成、商品名「ダイアホイル S100」)を基材として使用した他は実施例1と同様にして、本例に係る粘着テープを作製した。
【0083】
<比較例5>
表1に示す組成のA層用原料を溶融混錬し、B層としての厚さ38μmのPETフィルム(日清化成、商品名「ダイアホイル S100」)の片面に厚さ800μmのA層を押出ラミネートして、2層構造の樹脂フィルム(基材)を作製した。この樹脂フィルムを基材として使用した他は実施例1と同様にして、本例に係る粘着テープを作製した。
【0084】
<実施例6~8、比較例6>
基材の作製に使用するA層用原料の組成を表2に示すとおりとした他は実施例3と同様にして、各例に係る粘着テープを作製した。
【0085】
<測定および評価>
得られた粘着テープについて、上述の方法により、粘着テープの引張強さF[N/15mm]、たるみ性[mm]、およびB層の引張強さF[N/15mm]を測定した。結果を表1、2に示した。
【0086】
(路面なじみ性試験)
屋外のアスファルト舗装された路面(道路の表面)に、該路面が乾燥している状況で、各例に係る粘着テープを幅50mm、長さ3mのサイズで貼り付けた。具体的には、上記粘着テープを路面上に配置して手で軽く圧着した後、その上から(すなわち、粘着テープの背面から)ハンマーで叩き、さらに車両を走行(トヨタL&F社製、電動フォークリフト、型番8FBR15を、約2km/hで1往復)させて圧着させた。その後、路面の凹凸への粘着テープの食い込み(なじみ)の程度を観察し、以下の3水準で路面なじみ性を評価した。結果を表1、2に示した。
AA:粘着テープが路面の凹凸(起伏)になじんでいることが、粘着テープの背面からの目視でわかる(なじみ性に優れる)。
A:粘着テープの背面を手で撫でると路面の凹凸が感じられる(なじみ性良好)。
B:粘着テープの背面を手で撫でても路面の凹凸が感じられない(なじみ性不良)。
【0087】
(耐久性試験)
上記路面なじみ性試験と同様にして、屋外のアスファルト舗装された路面に、各例に係る粘着テープを幅50mm、長さ3mのサイズで貼り付けた。この粘着テープを横切って約20台/日のトラックが通過する環境で1か月放置した後、上記粘着テープの損傷の程度を観察し、以下の3水準で耐久性を評価した。結果を表1、2に示した。
AA:粘着テープの明らかな破れや欠けは認められない(耐久性に優れる)
A:粘着テープの側端に部分的な欠けが認められるが、十分な標示機能が維持されている(耐久性良好)。
B:粘着テープが破れ、標示機能が明らかに低下している(耐久性に乏しい)
【0088】
なお、実施例3の粘着テープの90度剥離強度は20.6N/20mmであり、他の実施例に係る粘着テープの90度剥離強度も概ね同程度であった。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
表1、2に示されるように、実施例1~8の粘着テープは、いずれも良好な路面なじみ性および良好な耐久性を示した。実施例2~4、7、8の粘着テープでは特に良好な結果が得られた。また、B層のベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いた実施例は、上記耐久性試験後の目視観察において、防汚性がより良好であった。一方、A層のフィラー含有量が低すぎる比較例1、6では、路面なじみ性が低かった。また、A層の組成および厚さが共通する実施例2、3と比較例5との対比から、B層の選択によってはA層の路面なじみ性が損なわれることがわかる。単層構造の基材を用いた比較例2~4の粘着テープでは、路面なじみ性および耐久性の一方または両方が不足していた。なお、実施例3の粘着テープの基材(2層構造の基材)に代えて、該実施例3のA層用原料から形成された厚さ1200μmの単層構造の基材を使用して作製した粘着テープにつき、上記と同様に耐久性を評価したところ、耐久性が不足することが確認された(評価結果:B)。
【0092】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1 粘着テープ
10 基材
10A 第1面
10B 第2面(背面)
12 A層
14 B層
20 粘着剤層
20A 表面(粘着面)
30 保持台
32 試験片
32A 一端
32B 他端
34 重し
L1 垂れ高さ
図1
図2