(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096748
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】フィルタ装置及び洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/10 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
D06F39/10 B
D06F39/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212709
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲
(72)【発明者】
【氏名】吉田 由佳
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AA15
3B166AE02
3B166BA12
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3B166HA11
3B166HA32
3B166HA51
3B166JM01
3B166JM02
3B166JM03
(57)【要約】
【課題】メンテナンス性の向上を図れるフィルタ装置、及び、これを含む洗濯機を提供する。
【解決手段】フィルタ装置10は、洗濯槽に取り付けられる裏カバー21と、裏カバー21を覆った状態で洗濯槽内に露出される表カバー22と、裏カバー21と表カバー22とを連結する連結軸23と、掻取部34とを含む。フィルタ装置10は、洗濯槽内において表カバー22と裏カバー21との間に流入して表カバー22のフィルタ穴22Aから流出する水に含まれる異物を表カバー22の捕獲領域22Mにおいて捕獲する。裏カバー21には、捕獲領域22Mから離れる異物を受け止める受止領域21Eが設けられる。裏カバー21は、表カバー22に対して連結軸23まわりに相対回動可能である。掻取部34は、裏カバー21の相対回動に連動して受止領域21Eから異物Fを掻き取る。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯機における洗濯槽に設けられるフィルタ装置であって、
前記洗濯槽の内周部に取り付けられる裏カバーと、
前記裏カバーを覆った状態で前記洗濯槽内に露出される表カバーであって、前記裏カバーに対向する捕獲領域と、前記捕獲領域に分布する複数のフィルタ穴とが設けられた表カバーと、
前記裏カバーと前記表カバーとを連結する連結軸とを含み、
前記洗濯槽内において前記表カバーと前記裏カバーとの間に流入して前記フィルタ穴から流出する水に含まれる異物を前記捕獲領域において捕獲するフィルタ装置であって、
前記裏カバーには、前記捕獲領域から離れる異物を受け止める受止領域が設けられ、
前記裏カバーは、前記受止領域が前記捕獲領域に対向することによって前記フィルタ装置を完成させる完成位置と、前記フィルタ装置のメンテナンスのために前記受止領域が前記捕獲領域から離れるメンテナンス位置との間で、前記表カバーに対して前記連結軸まわりに相対回動可能であり、
前記完成位置と前記メンテナンス位置との間における前記裏カバーの相対回動に連動して前記受止領域から異物を掻き取る掻取部をさらに含む、フィルタ装置。
【請求項2】
前記フィルタ装置は、所定方向に長手であり、
前記連結軸は、前記フィルタ装置の長手方向に対する交差方向に延びて、前記長手方向における前記裏カバー及び前記表カバーの一端部同士を連結し、
前記裏カバーには、前記受止領域と平行に延びるガイド溝が設けられ、
前記フィルタ装置は、
前記長手方向における前記表カバーの他端部に連結されて前記交差方向に延びる回動軸と、
前記掻取部が設けられて前記交差方向に延び、前記ガイド溝によって前記受止領域に沿ってガイドされるガイド軸と、
前記裏カバーの外側に配置されて前記ガイド軸に固定され、前記裏カバーの相対回動のために使用者によって操作される操作部と、
前記回動軸と前記ガイド軸との間に架設され、前記ガイド軸と共に前記回動軸まわりに回動可能な支柱部とをさらに含む、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記裏カバーには、前記操作部を通す通し穴が、前記ガイド溝の端部に連続して設けられる、請求項2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記裏カバーには、前記ガイド溝の一部を前記表カバー側へ開放する切欠きが設けられ、
前記裏カバーを前記表カバー側へ付勢する付勢部をさらに含む、請求項2に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
洗濯物を収容して水が溜められる洗濯槽と、
前記洗濯槽の内周部に取り付けられた請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルタ装置とを含む、洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ装置、及び、これを含む洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の洗濯機は、水槽と、水槽内に配置された洗濯兼脱水槽と、洗濯兼脱水槽の側部に設けられて洗濯運転の洗い工程及びすすぎ工程において洗濯水を循環させる水路と、水路に取り付けられて洗濯水からリント類を捕集するフィルタユニットとを含む。フィルタユニットは、リント類を捕集するとともに洗濯水を通過させる濾過部材が設けられた前カバーと、前カバーに背面側から着脱可能に取り付けられた後カバーとを含む。濾過部材によって捕集されたリント類は、洗濯運転の脱水工程での洗濯兼脱水槽の回転による遠心力によって濾過部材から引き剥がされ、後カバーに押し付けられる。
【0003】
洗濯運転の後に、使用者は、フィルタユニットのメンテナンスのために、フィルタユニットを水路から取り外して前カバーと後カバーとに分離してから、前カバーの端部を後カバーに押し付けてスライドさせる。これにより、後カバーに固着したリント類が、前カバーの端部に設けられた掻き取り部によって引き剥がされる。その後、使用者が前カバーと後カバーとを組み合わせてフィルタユニットを完成させて水路に取り付けると、フィルタユニットのメンテナンスが完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のフィルタユニットの場合、使用者は、リント類に触れなくても、メンテナンスすることができる。しかし、メンテナンスのために、フィルタユニットを水路に対して着脱する作業の他に、使用者は、フィルタユニットを前カバーと後カバーとに分離する第1の作業と、前カバーの掻き取り部を後カバーに押し付けてスライドさせる第2の作業と、前カバーと後カバーとを元通りに組み合わせる第3の作業とを実施する必要がある。また、掻き取り部の向きを間違えると、後カバーに固着したリント類をきれいに引き剥がせないので、前カバーの掻き取り部のスライドの際には、使用者に対して慎重な操作が求められる。このように、フィルタユニットには、メンテナンス性に関して改善の余地がある。
【0006】
本発明は、かかる背景のもとにおいてなされたものであり、メンテナンス性の向上を図れるフィルタ装置、及び、これを含む洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、洗濯機における洗濯槽に設けられるフィルタ装置であって、前記洗濯槽の内周部に取り付けられる裏カバーと、前記裏カバーを覆った状態で前記洗濯槽内に露出される表カバーであって、前記裏カバーに対向する捕獲領域と、前記捕獲領域に分布する複数のフィルタ穴とが設けられた表カバーと、前記裏カバーと前記表カバーとを連結する連結軸とを含み、前記洗濯槽内において前記表カバーと前記裏カバーとの間に流入して前記フィルタ穴から流出する水に含まれる異物を前記捕獲領域において捕獲するフィルタ装置であって、前記裏カバーには、前記捕獲領域から離れる異物を受け止める受止領域が設けられ、前記裏カバーが、前記受止領域が前記捕獲領域に対向することによって前記フィルタ装置を完成させる完成位置と、前記フィルタ装置のメンテナンスのために前記受止領域が前記捕獲領域から離れるメンテナンス位置との間で、前記表カバーに対して前記連結軸まわりに相対回動可能であり、前記完成位置と前記メンテナンス位置との間における前記裏カバーの相対回動に連動して前記受止領域から異物を掻き取る掻取部をさらに含む、フィルタ装置である。
【0008】
また、本発明は、前記フィルタ装置が、所定方向に長手であり、前記連結軸が、前記フィルタ装置の長手方向に対する交差方向に延びて、前記長手方向における前記裏カバー及び前記表カバーの一端部同士を連結し、前記裏カバーには、前記受止領域と平行に延びるガイド溝が設けられ、前記フィルタ装置が、前記長手方向における前記表カバーの他端部に連結されて前記交差方向に延びる回動軸と、前記掻取部が設けられて前記交差方向に延び、前記ガイド溝によって前記受止領域に沿ってガイドされるガイド軸と、前記裏カバーの外側に配置されて前記ガイド軸に固定され、前記裏カバーの相対回動のために使用者によって操作される操作部と、前記回動軸と前記ガイド軸との間に架設され、前記ガイド軸と共に前記回動軸まわりに回動可能な支柱部とをさらに含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記裏カバーには、前記操作部を通す通し穴が、前記ガイド溝の端部に連続して設けられることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記裏カバーには、前記ガイド溝の一部を前記表カバー側へ開放する切欠きが設けられ、前記フィルタ装置が、前記裏カバーを前記表カバー側へ付勢する付勢部をさらに含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、洗濯物を収容して水が溜められる洗濯槽と、前記洗濯槽の内周部に取り付けられた前記フィルタ装置とを含む、洗濯機である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗濯機の洗濯槽の内周部に取り付けられた完成状態のフィルタ装置では、洗濯槽内の水が、完成位置にある裏カバーと、表カバーとの間に流入して、表カバーの捕獲領域のフィルタ穴から流出し、この水に含まれる異物が、捕獲領域において捕獲される。その後、洗濯槽が回転すると、捕獲領域に存在する異物が、遠心力によって捕獲領域から引き剥がされて、裏カバーの受止領域に受け止められる。
【0013】
裏カバーと表カバーとは、連結軸によって連結された状態にある。使用者は、メンテナンスのためにフィルタ装置を取り外して、裏カバーを完成位置とメンテナンス位置との間で表カバーに対して連結軸まわりに相対回動させると、裏カバーの相対回動に連動して掻取部が受止領域から異物を掻き取る。その後、使用者が、裏カバーを完成位置まで相対回動させてフィルタ装置を完成状態に戻して洗濯槽の内周部に取り付けると、フィルタ装置のメンテナンスが完了する。このように、メンテナンスのために、フィルタ装置を洗濯槽の内周部に対して着脱する作業の他に、使用者は、裏カバーを相対回動させる動作だけをすれば済む。また、裏カバーの相対回動に連動して掻取部が受止領域から異物を自動的に掻き取るので、使用者には、慎重な操作が求められない。以上により、フィルタ装置のメンテナンス性の向上を図れる。
【0014】
また、本発明によれば、使用者が、メンテナンスのためにフィルタ装置を取り外して、裏カバーの外側に配置された操作部を操作すると、裏カバーが、フィルタ装置の長手方向における一端部側の連結軸まわりに相対回動し、操作部が固定されたガイド軸が、フィルタ装置の長手方向における他端部側の回動軸まわりに回動する。その際、ガイド軸が、裏カバーに設けられたガイド溝によって受止領域に沿ってガイドされるので、ガイド軸に設けられた掻取部が、受止領域に沿って移動しながら、受止領域から異物を掻き取る。その後、使用者が、操作部を操作することによって裏カバーを完成位置まで相対回動させてフィルタ装置を完成状態に戻して洗濯槽の内周部に取り付けると、フィルタ装置のメンテナンスが完了する。このように、メンテナンスの際には、フィルタ装置を洗濯槽の内周部に対して着脱する作業の他に、使用者は、裏カバーを相対回動させるための操作部の操作だけをすれば、掻取部が受止領域から異物を自動的に掻き取るので、フィルタ装置のメンテナンス性の向上を図れる。
【0015】
また、本発明によれば、使用者は、裏カバーにおいてガイド溝の端部に連続して設けられた通し穴に操作部を通すことによって、操作部及びガイド軸を一緒に裏カバーに対して着脱することができる。これにより、操作部とガイド軸とを一体形成することができるので、部品点数の低減を図れる。
【0016】
また、本発明によれば、裏カバーにおいてガイド溝の一部を表カバー側へ開放する切欠きが、ガイド溝に入り込んだ異物をガイド溝の外に逃がすので、ガイド溝に異物が詰まることを防止できる。このような構成において、付勢部が裏カバーを表カバー側へ付勢することによってガイド溝の縁をガイド軸に押し付けるので、ガイド軸が切欠きを通ってガイド溝から不意に外れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る洗濯機の模式的な縦断面右側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るフィルタ装置の正面図である。
【
図5】メンテナンス状態におけるフィルタ装置の斜視図である。
【
図6】完成状態におけるフィルタ装置の斜視図である。
【
図8】メンテナンス状態における第1変形例に係るフィルタ装置の斜視図である。
【
図9】メンテナンス状態における第2変形例に係るフィルタ装置の斜視図である。
【
図10】第2変形例に係るフィルタ装置を
図9とは別の方向から見た斜視図である。
【
図11】完成状態における第2変形例に係るフィルタ装置の斜視図である。
【
図12】第2変形例に係るフィルタ装置の正面図である。
【
図14】メンテナンス状態におけるフィルタ装置について
図13に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下には、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る洗濯機1の模式的な縦断面右側面図である。
図1において紙面に直交する方向を洗濯機1の左右方向Xといい、
図1における左右方向を洗濯機1の前後方向Yといい、
図1における上下方向を洗濯機1の上下方向Zという。左右方向Xのうち、
図1の紙面の奥側を左方X1といい、
図1の紙面の手前側を右方X2という。前後方向Yのうち、左側を前方Y1といい、右側を後方Y2という。上下方向Zのうち、上側を上方Z1といい、下側を下方Z2という。
【0019】
洗濯機1は、その外殻をなす筐体2と、筐体2内に収容されて水が溜められる外槽3と、外槽3に給水する給水路4と、外槽3に溜まった水を排水する排水路5とを含む。洗濯機1は、外槽3内に収容された洗濯槽6と、洗濯槽6内に配置される回転翼7と、洗濯槽6及び回転翼7を回転させるトルクを発生するモータ8とをさらに含む。洗濯機1は、洗濯槽6内に配置されて水を循環させるためのガイドカバー9と、ガイドカバー9に装着されることによって洗濯槽6に設けられ、水から異物を捕獲するフィルタ装置10とをさらに含む。
【0020】
筐体2は、ボックス状に形成される。筐体2において上面2Aと後面2Bの上端部とを構成する部分は、例えば樹脂製の上面板2Cである。上面2Aには、筐体2の内外を連通させる出入口2Dが形成される。上面板2Cには、出入口2Dを縁取りつつ下方Z2へ延びる筒状の区画壁2Eが設けられる。区画壁2Eの内部空間は、出入口2Dの一部である。
【0021】
筐体2の上面2Aには、出入口2Dを開閉する蓋11が設けられる。上面2Aにおいて出入口2Dの周囲の領域には、例えば液晶操作パネルによって構成された表示操作部12が設けられる。洗濯機1の使用者は、表示操作部12を操作することによって、洗濯機1の運転条件を自由に選択したり、洗濯機1に対して運転開始や運転停止などを指示したりすることができる。表示操作部12には、洗濯機1の運転に関する情報が目視可能に表示される。
【0022】
外槽3は、例えば樹脂製であり、有底円筒状に形成される。外槽3は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁3Aと、円周壁3Aの中空部分を下方Z2から塞いだ底壁3Bと、円周壁3Aの上端縁を縁取りつつ円周壁3Aの円中心側へ張り出したリング状の環状壁3Cとを有する。環状壁3Cの内側には、円周壁3Aの中空部分に上方Z1から連通する出入口3Dが形成される。出入口3Dは、筐体2の出入口2Dに対して下方Z2から対向し、連通した状態にある。底壁3Bは、略水平に延びる円板状に形成され、底壁3Bの円中心位置には、底壁3Bを上下方向Zに貫通した貫通穴3Eが形成される。
【0023】
給水路4の一端(図示せず)は、筐体2の外に引き出されて、蛇口に接続される。給水路4の他端は、筐体2内に配置されて、給水口4Aとして、外槽3の出入口3Dから外槽3の内部に上方Z1から臨む。排水路5は、外槽3の底壁3Bに下方Z2から接続される。
【0024】
給水路4には、給水弁13が設けられ、排水路5には、排水弁14が設けられる。排水弁14が閉じた状態で給水弁13が開くと、蛇口からの水が給水路4を流れて給水口4Aから外槽3内に供給されて溜まる。排水弁14が開くと、外槽3内の水が排水路5から機外、つまり筐体2の外に排出される。
【0025】
洗濯槽6は、例えば金属製であり、外槽3よりも一回り小さい有底円筒状に形成され、内部に洗濯物Qを収容することができる。洗濯槽6は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁6Aと、洗濯槽6の下端に設けられて円周壁6Aの中空部分を下方Z2から塞いだ底壁6Bとを有する。円周壁6Aの内周面は、洗濯槽6の内周部6Cを構成する。
【0026】
洗濯槽6の上端には、円周壁6Aの内周面の上端によって縁取られた出入口6Dが形成される。出入口6Dは、円周壁6Aの中空部分を上方Z1に露出させ、外槽3の出入口3Dに下方Z2から連通した状態にある。使用者は、開放された出入口2D、出入口3D及び出入口6Dを介して、洗濯槽6に対して上方Z1から洗濯物Qを出し入れする。出入口2D、出入口3D及び出入口6Dは、蓋11によって一括開閉される。
【0027】
洗濯槽6の円周壁6A及び底壁6Bの少なくともいずれかには、貫通穴6Eが複数形成され、外槽3内の水は、貫通穴6Eを介して外槽3と洗濯槽6との間で行き来できる。これにより、洗濯槽6内にも水が溜められ、外槽3内の水位と洗濯槽6内の水位とは、一致する。
【0028】
洗濯槽6は、外槽3内に同軸上で収容される。外槽3内に収容された状態の洗濯槽6は、洗濯槽6の円中心を通って上下方向Zに延びる軸線Jまわりに回転可能である。洗濯機1は、縦型洗濯機であり、本実施形態における軸線Jは、厳密には垂直方向に延びるが、垂直方向に対する傾斜方向に延びてもよい。軸線Jは、外槽3の円中心も通る。洗濯槽6の回転方向は、軸線Jまわりの周方向Pと一致する。以下では、軸線Jを基準とする径方向を径方向Rといい、径方向Rのうち、軸線Jに近付く側を径方向内側R1といい、軸線Jから離れる側を径方向外側R2という。
【0029】
洗濯槽6の内周面の上端部には、周方向Pに沿う環状のバランサ15が取り付けられる。バランサ15は、回転時における洗濯槽6の振動を低減させるものであって、バランサ15の内部には、振動低減に寄与するための塩水などの液体が収容される。
【0030】
洗濯槽6の底壁6Bは、外槽3の底壁3Bに対して上方Z1に間隔を隔てて略平行に延びる円板状に形成される。底壁6Bにおいて軸線Jと一致する円中心位置には、底壁6Bを上下方向Zに貫通した貫通穴6Fが形成される。底壁6Bには、貫通穴6Fを取り囲みつつ軸線Jに沿って下方Z2へ延び出た管状の支持軸16が設けられる。支持軸16は、外槽3の底壁3Bの貫通穴3Eに挿通されて、支持軸16の下端部は、底壁3Bよりも下方Z2に位置する。
【0031】
回転翼7は、いわゆるパルセータであり、軸線Jを円中心とする円盤状に形成され、洗濯槽6内において底壁6B上に配置される。回転翼7において洗濯槽6の出入口6Dに臨む上面部には、上方Z1へ隆起しつつ軸線Jを円中心として放射状に配置された複数の隆起部7Aが設けられる。回転翼7の下面部には、軸線Jを円中心として放射状に配置された複数の裏羽根7Bが設けられる。洗濯槽6の内部空間において回転翼7の裏羽根7Bが配置された下端部を、スペースSという。
【0032】
回転翼7には、その中央部から軸線Jに沿って下方Z2へ延びる回転軸17が設けられる。回転軸17は、支持軸16の中空部分に挿通されて、回転軸17の下端部は、外槽3の底壁3Bよりも下方Z2に位置する。
【0033】
モータ8は、インバータモータなどの電動モータである。モータ8は、筐体2内において、外槽3の下方Z2に配置される。モータ8は、上方Z1へ突出して軸線Jを中心として回転する出力軸18を有し、トルクを発生して出力軸18から出力する。
【0034】
支持軸16及び回転軸17のそれぞれの下端部と、モータ8の出力軸18の上端部との間には、伝達機構19が介在される。伝達機構19として、公知のクラッチなどが用いられる。伝達機構19は、モータ8が出力軸18から出力するトルクを、支持軸16及び回転軸17の一方または両方に対して選択的に伝達する。モータ8からのトルクが支持軸16に伝達されると、洗濯槽6が、モータ8のトルクを受けて、軸線Jまわりに回転する。モータ8からのトルクが回転軸17に伝達されると、回転翼7が、モータ8のトルクを受けて軸線Jまわりに回転する。
【0035】
ガイドカバー9は、複数存在し、円周壁6Aの内周面において周方向Pに分散して並ぶ。これらのガイドカバー9は、周方向Pに等間隔で配置されることが好ましい。それぞれのガイドカバー9は、洗濯槽6の円周壁6Aの下端部から上方Z1へ延びる樋状であって例えば樹脂製であり、その平断面は、例えば径方向内側R1へ凸湾曲した円弧状に形成される(
図2も参照)。
【0036】
ガイドカバー9は、円周壁6Aの一部を径方向内側R1から覆うように円周壁6Aに固定されて、洗濯槽6の内周部6Cの一部を構成する。ガイドカバー9と円周壁6Aとの間には、洗濯槽6内において円周壁6Aの下端部から上方Z1へ延びる循環水路20が形成される。つまり、ガイドカバー9は、循環水路20を構成する。ガイドカバー9が複数存在する場合には、循環水路20も複数設けられる。
【0037】
循環水路20の下端部は、循環水路20の入口20Aとして、洗濯槽6の内部空間において回転翼7の裏羽根7Bが配置されたスペースSに対して径方向外側R2から接続される。つまり、入口20Aは、洗濯槽6の底壁6B側に配置される。ガイドカバー9には、ガイドカバー9を径方向Rに貫通した開口9Aが形成される。循環水路20において開口9Aから径方向内側R1に露出された部分は、出口20Bであり、出口20Bは、入口20Aよりも高い位置に配置されて洗濯槽6内に臨む。
【0038】
フィルタ装置10は、ガイドカバー9の開口9Aに嵌め込まれることによってガイドカバー9に取り付けられる(
図2も参照)。フィルタ装置10は、ガイドカバー9の開口9Aに収まる裏カバー21と、裏カバー21に取り付けられた表カバー22とを含む。表カバー22は、開口9Aを覆う。表カバー22には、複数のフィルタ穴22Aが設けられる。フィルタ装置10については、追って詳しく説明する。
【0039】
洗濯機1は、洗濯運転を実行する制御部100をさらに含む。制御部100は、マイコンによって構成され、筐体2内に配置される。洗濯運転は、洗い工程と、すすぎ工程と、脱水工程とを含む。
【0040】
制御部100は、洗い工程では、まず、排水弁14を閉じた状態で給水弁13を所定時間開いて、外槽3及び洗濯槽6内に所定水位まで給水する。給水の前に、使用者によって洗剤が洗濯槽6内に投入されてもよい。洗濯機1は、洗剤を洗濯槽6内に自動投入するための投入部(図示せず)を含んでもよい。外槽3及び洗濯槽6内には、洗剤が溶けた洗剤水が溜まる。
【0041】
給水後に、制御部100は、モータ8のトルクが回転翼7に伝達されるように必要に応じて伝達機構19を制御してから、モータ8を駆動させることによって回転翼7を回転させる。これにより、洗濯槽6内では、回転する回転翼7の隆起部7Aによって洗濯物Qから汚れが機械的に除去されたり、洗剤水に含まれる洗剤成分によって洗濯物Qの汚れが化学的に分解されたりする。
【0042】
また、洗濯槽6内における底壁6B側のスペースSの水が、回転する回転翼7の裏羽根7Bによって径方向外側R2へ押し出されて各循環水路20の入口20Aに送り込まれる。各循環水路20を上方Z1へ流れた水は、フィルタ装置10の裏カバー21と表カバー22との間に流入した後に、表カバー22のフィルタ穴22Aを通過して、循環水路20の出口20Bから径方向内側R1へ流出する(
図1の破線矢印を参照)。
【0043】
フィルタ装置10は、表カバー22のフィルタ穴22Aを通過する水から糸くずなどの異物を捕獲し、フィルタ装置10内に溜める。出口20Bから洗濯槽6内に戻った水は、洗濯槽6内の洗濯物Qに上方Z1から浴びせられた後に、スペースSに流れ落ち、再び循環水路20を通って洗濯物Qに浴びせられるように循環する。回転翼7が所定時間回転すると、洗い工程が終了する。
【0044】
次に、制御部100は、排水処理として、排水弁14を開いて、外槽3及び洗濯槽6内の水を機外に排出する。排水処理後の脱水処理として、制御部100は、引き続き排水弁14を開いた状態で、モータ8のトルクが洗濯槽6に伝達されるように伝達機構19を制御して、洗濯槽6を高速回転させる。この高速回転により生じた遠心力によって、洗濯槽6内の洗濯物Qが脱水される。脱水により洗濯物Qから染み出た水は、機外に排出される。
【0045】
次に、制御部100は、すすぎ工程を実行する。具体的には、制御部100は、洗い工程と同様に、外槽3及び洗濯槽6内に所定水位まで給水してから回転翼7を回転させる。ただし、すすぎ工程では、水道水が外槽3及び洗濯槽6内に溜められる。すすぎ工程では、洗濯槽6内では、回転翼7の回転に応じて攪拌される水や、循環水路20を通って循環する水によって、洗濯物Qがすすがれる。すすぎ工程は、複数回実行されてもよい。また、前述したように外槽3及び洗濯槽6内に水を溜めて洗濯物Qをすすぐ溜めすすぎでなく、低速回転させた洗濯槽6内に給水路4からシャワー状に水を浴びせるシャワーすすぎが実行されてもよい。
【0046】
最後に、制御部100は、脱水工程を実行する。脱水工程の内容は、前述した脱水処理の内容と、ほぼ同じである。脱水処理を中間脱水工程といって、脱水工程を最終脱水工程といってもよい。最終脱水工程と中間脱水工程とでは、洗濯槽6の回転数や回転時間などに違いがあってもよい。最終脱水工程の終了に伴い、洗濯運転自体が終了する。洗濯機1は、洗濯槽6内の洗濯物Qを乾燥させる乾燥機能を有してもよく、その場合には、洗濯槽6内に熱風を供給するための構成(図示せず)を含み、洗濯運転は、最終脱水工程後の乾燥工程を含む。
【0047】
次に、フィルタ装置10について詳しく説明する。
図3は、径方向内側R1から見たときのフィルタ装置10の正面図である。以下では、フィルタ装置10がガイドカバー9に取り付けられた状態を基準として、フィルタ装置10について説明する。さらに、
図3に示すように径方向内側R1から見たときのフィルタ装置10の姿勢を基準として、フィルタ装置10について説明する。そのため、
図3における左右方向をフィルタ装置10の左右方向Xといい、
図3における左側を左方X1といい、
図3における右側を右方X2という。左右方向Xは、前述した周方向Pと同じ、又は、周方向Pに対する接線方向である。
【0048】
フィルタ装置10は、所定方向に長手であって、本実施形態では縦長の全体形状を有し、その長手方向Lが上下方向Zと平行な状態で、洗濯槽6の内周部6Cに取り付けられる(
図2参照)。フィルタ装置10の左右方向Xは、長手方向Lに対する交差方向、厳密には直交方向であるとともに、フィルタ装置10の短手方向でもある。フィルタ装置10では、その全体及び細部が、左右対称に構成される。
【0049】
図4は、
図3のA-A矢視断面図である。フィルタ装置10は、前述した裏カバー21及び表カバー22の他に、これらのカバーを互いに連結する連結軸23と、表カバー22に連結された回動軸24と、裏カバー21に連結されたガイド軸25と、回動軸24とガイド軸25との間に架設された支柱部26とをさらに含む。以下では、まず、表カバー22及び裏カバー21について、この順に説明した後に、他の構成について説明する。
【0050】
図5は、メンテナンス状態におけるフィルタ装置10の斜視図である。
図5の状態における表カバー22は、縦長の板状であって、表カバー22では、表面部22Bが主に表れる。表カバー22の上端部は、上方Z1へ膨出する円弧状に形成される。表カバー22には、その上端から下方Z2へ窪んで表カバー22を板厚方向、つまり径方向Rに貫通した凹部22Cが形成される。
【0051】
表カバー22の裏面部22Dの上端部には、径方向外側R2へ突出した凸部22Eが設けられる(
図4参照)。凸部22Eは、横長の中空体である。凸部22Eの内部空間は、窪み22Fとして、表面部22Bにおける凹部22Cの下隣の領域で露出される。
【0052】
凸部22Eの上面の中央には、係合部31が設けられる。係合部31は、上方Z1へ延びて湾曲した後に、径方向内側R1へ略水平に延びて一部が凹部22C内に配置される。このような係合部31は、少なくとも上下方向Zに弾性変形可能である。係合部31の上面には、左右方向Xに延びる爪31Aが設けられる。
【0053】
表カバー22には、径方向外側R2へ突出して表カバー22の左縁を縁取りながら帯状に延びる左リブ22Gと、径方向外側R2へ突出して表カバー22の右縁を縁取りながら帯状に延びる右リブ22Hとが設けられる。左リブ22G及び右リブ22Hのそれぞれの上端部は、表カバー22の上端部の円弧形状に沿って湾曲する。
【0054】
左リブ22G及び右リブ22Hのそれぞれの上端部の一部は、下方Z2へ折れ曲がって凹部22C内に露出されて凸部22Eの上面に接続される。表カバー22の下端には、左リブ22G及び右リブ22Hの互いの下端によって挟まれて下方Z2へ開放された開口22Iが設けられる(
図4参照)。
【0055】
左リブ22G及び右リブ22Hのそれぞれには、U字状の切欠き22Jと、切欠き22Jの周辺に位置するロック穴22Kと、切欠き22Jよりも上方Z1に配置されたL字状の嵌合溝22Lとが形成される。
【0056】
切欠き22Jは、左リブ22G及び右リブ22Hのそれぞれにおいて上寄りの領域に配置され、径方向外側R2へ開放される。ロック穴22Kは、
図5では、切欠き22Jの下隣に位置するが、切欠き22Jの上隣に位置してもよい(
図8などを参照)。ロック穴22Kは、左リブ22G及び右リブ22Hのそれぞれを左右方向Xに沿って貫通する貫通穴であるが、左リブ22G及び右リブ22Hにそれぞれにおいて互いに対向する内側面に設けられた窪みであってもよい。
【0057】
嵌合溝22Lは、左リブ22G及び右リブ22Hのそれぞれにおいて径方向外側R2の縁から径方向内側R1かつ上方Z1へ斜めに延びた後に、折れ曲がって上方Z1へ延びる。嵌合溝22Lの上端部は、嵌合溝22Lの最深部である。
【0058】
表カバー22の裏面部22Dにおいて、凸部22Eよりも下方Z2、かつ、左リブ22G及び右リブ22Hによって左右方向Xから挟まれた領域を、捕獲領域22Mという(
図4参照)。捕獲領域22Mには、左右方向X及び上下方向Zのそれぞれにおいて等間隔で並ぶ複数の貫通穴22Nが設けられる。各貫通穴22Nの一例は、四隅が丸められた縦長の矩形状であって、表カバー22を径方向Rに貫通した状態にある。
【0059】
なお、表カバー22の表面部22Bにおいて、窪み22Fの下隣で左右方向Xに並ぶ4つの矩形状部分は、径方向内側R1へ僅かに突出した凸部22Oである。凸部22Oの代りに、貫通穴22Nを設けてもよい。また、左右方向Xにおける表面部22Bの両端部には、上下方向Zに延びる一対のリブ22Pが設けられてもよい。
【0060】
一対のリブ22Pの間に、貫通穴22N及び凸部22Oが配置される。また、表面部22Bにおいて貫通穴22N、凸部22O及びリブ22Pを避けた位置には、表カバー22を径方向Rに貫通した複数の小穴22Qが設けられてもよい。
【0061】
各貫通穴22Nには、メッシュシート32が貫通穴22Nを塞ぐように取り付けられる(
図3参照)。なお、
図3以外のほとんどの図では、メッシュシート32の図示が省略される。メッシュシート32には、微小な貫通穴が無数に形成され、これらの貫通穴が、前述したフィルタ穴22Aである。捕獲領域22Mの各貫通穴22Nに設けられたメッシュシート32は、捕獲領域22Mの一部である。そのため、捕獲領域22Mには、複数のフィルタ穴22Aが分布する。メッシュシート32の代りに、捕獲領域22Mに一体形成された格子を用いてもよく、この場合には、格子の隙間がフィルタ穴22Aとして機能する。
【0062】
裏カバー21は、表カバー22よりも一回り小さい。裏カバー21は、縦長で長方形の板状の平板部21Aと、平板部21Aの左縁を縁取りながら帯状に延びる左リブ21Bと、平板部21Aの右縁を縁取りながら帯状に延びる右リブ21Cと、左リブ21B及び右リブ21Cの上端部間に架設された架設部21D(
図4参照)とを含む。
【0063】
平板部21Aは、フィルタ装置10が完成状態にある場合には、上下方向Zに沿って配置される(
図4参照)。平板部21Aにおいて径方向内側R1に臨む表面部を、受止領域21Eという。受止領域21Eは、平坦面である。平板部21Aにおいて径方向外側R2に臨む部分は、裏面部21Fである(
図4参照)。平板部21Aにおいて受止領域21Eよりも下方Z2に位置する下端部は、径方向内側R1へ湾曲する。
【0064】
左リブ21Bは、平板部21Aの左縁から径方向Rの両外側、つまり径方向内側R1及び径方向外側R2の両方へ突出する。右リブ21Cは、平板部21Aの右縁から径方向Rの両外側へ突出する。左リブ21B及び右リブ21Cのそれぞれの上端部は、平板部21Aの上端よりも上方Z1にはみ出して配置される(
図4参照)。
【0065】
左リブ21B及び右リブ21Cのそれぞれにおいて、平板部21Aの受止領域21Eよりも径方向内側R1の領域には、受止領域21Eと平行に延びる直線状のガイド溝21Gが1つずつ設けられる。左リブ21Bのガイド溝21Gは、左リブ21Bを左右方向Xに貫通するスリット状であり、右リブ21Cのガイド溝21Gは、右リブ21Cを左右方向Xに貫通するスリット状である。
【0066】
左リブ21B及び右リブ21Cのそれぞれにおいてガイド溝21Gの下端よりも下方Z2の部分には、径方向内側R1へ開放されたU字状の切欠き21Hが形成される。左リブ21B及び右リブ21Cのそれぞれにおいて、平板部21Aの受止領域21Eよりも径方向外側R2の領域には、半球状のロック突起21Iが設けられる。左リブ21Bのロック突起21Iは、左リブ21Bの外側面である左面においてガイド溝21Gの上端部の近傍に設けられる(図示せず)。右リブ21Cのロック突起21Iは、右リブ21Cの外側面である右面においてガイド溝21Gの上端部の近傍に設けられる。
【0067】
架設部21Dは、平板部21Aの上端よりも上方Z1に配置されて、左リブ21Bと右リブ21Cとの間の空間を上方Z1から塞ぐ(
図4参照)。
【0068】
連結軸23は、左右方向Xに延びる円柱状であって、左リブ21B及び右リブ21Cのそれぞれの上端部において架設部21Dよりも上方Z1の部分に設けられる(
図4も参照)。左リブ21Bの連結軸23は、左リブ21Bの外側面の上端部から左方X1へ突出し、表カバー22の左リブ22Gの嵌合溝22Lの最深部に嵌った状態にある(図示せず)、右リブ21Cの連結軸23は、右リブ21Cの外側面の上端部から右方X2へ突出し、表カバー22の右リブ22Hの嵌合溝22Lの最深部に嵌った状態にある。これにより、裏カバー21及び表カバー22の上端部同士、つまり、長手方向Lにおける裏カバー21及び表カバー22の一端部同士が、連結軸23によって連結された状態にある。
【0069】
裏カバー21は、完成位置(
図4参照)と、
図5に示すメンテナンス位置との間で、表カバー22に対して連結軸23まわりに相対回動可能である。裏カバー21が完成位置に配置されると、裏カバー21の平板部21Aの受止領域21Eが、上下方向Zに沿った状態で表カバー22の裏面部22Dの捕獲領域22Mに径方向外側R2から対向することによって、フィルタ装置10が完成する(
図4参照)。
【0070】
裏カバー21が完成位置からメンテナンス位置まで相対回動すると、
図5に示すように、受止領域21Eが、捕獲領域22Mから径方向外側R2へ離れるように傾斜する。このときのフィルタ装置10は、メンテナンス状態にある。
【0071】
ただし、フィルタ装置10がガイドカバー9から取り外されて単品の状態にならなければ、裏カバー21を相対回動させることができない。また、裏カバー21でなく、表カバー22を実際に回動させることによっても、裏カバー21を表カバー22に対して相対回動させることができる。
【0072】
回動軸24は、左右方向Xに延びる円柱状であって、表カバー22の下端部、つまり、長手方向Lにおける表カバー22の他端部に連結される。具体的には、回動軸24は、表カバー22の左リブ22G及び右リブ22Hの下端部間に架設される。
【0073】
ガイド軸25は、左右方向Xに延びる円柱状であって、裏カバー21の左リブ21B及び右リブ21Cのそれぞれのガイド溝21Gに1つずつ嵌った状態にある。ガイド軸25は、ガイド溝21Gに沿ってスライド可能である。左右方向Xにおけるガイド軸25の両端部は、各ガイド溝21Gから左右方向Xにおける裏カバー21の外側へはみ出して配置された状態にある。ガイド軸25の両端部には、円盤状の操作部33が同軸上で固定される。ガイド軸25において両端部の間の部分を掻取部34という。
【0074】
支柱部26は、直線状に延びる棒状であって、例えば左右一対設けられ、各支柱部26は、回動軸24とガイド軸25との間に架設される。そのため、回動軸24、ガイド軸25及び一対の支柱部26のまとまりは、矩形状の枠を構成する。
【0075】
各支柱部26において回動軸24に接続された部分は、表カバー22の左リブ22Gと右リブ22Hとの間に配置される。各支柱部26においてガイド軸25に接続された部分は、裏カバー21の左リブ21Bと右リブ21Cとの間に配置される。支柱部26は、ガイド軸25と共に回動軸24まわりに回動可能である。
【0076】
フィルタ装置10が単品で存在する状態では、使用者は、操作部33を操作することによって裏カバー21を相対回動させることができる。
【0077】
例えば、
図5の状態において、使用者が、ガイド軸25の両端部に設けられた一対の操作部33を親指及び人差し指によって挟んだ状態で上方Z1へスライドさせる。すると、裏カバー21の各ガイド溝21Gの下端に位置するガイド軸25が、各ガイド溝21Gによって裏カバー21の平板部21Aの受止領域21Eに沿ってガイドされながら回動軸24まわりに回動することによって、上方Z1かつ表カバー22側へ移動する。
【0078】
これにより、裏カバー21が、表カバー22に接近するように相対回動し、最終的には、
図6に示す完成位置に配置される。このとき、ガイド軸25は、各ガイド溝21Gの上端に配置される(
図4参照)。また、一対の操作部33は、表カバー22の左リブ22G及び右リブ22Hにおいて対応する切欠き22Jに受け入れられる。また、裏カバー21の左リブ21B及び右リブ21Cにそれぞれに設けられたロック突起21Iが、左リブ22G及び右リブ22Hにおいて対応するロック穴22Kに嵌ることによって、裏カバー21が完成位置で位置決めされる。
【0079】
なお、ロック穴22Kは、前述したように切欠き22Jの周辺に位置することから、操作部33を切欠き22Jに嵌め込もうとする使用者の指の力が作用しやすい位置にある。そのため、使用者は、小さな力でもロック突起21Iをロック穴22Kに嵌めることができる。また、ロック突起21Iが表カバー22に設けられて、ロック穴22Kが裏カバー21に設けられてもよい。
【0080】
そして、
図3のB-B矢視断面図である
図7に示すように、完成位置に配置された裏カバー21では、左リブ21B及び右リブ21Cのそれぞれの下端部の切欠き21Hが、表カバー22側の回動軸24に嵌る。
【0081】
裏カバー21が完成位置に配置された状態で、使用者が、一対の操作部33を親指及び人差し指によって挟んで表カバー22の切欠き22Jから外すと、裏カバー21のロック突起21Iが表カバー22のロック穴22Kから外れる。この際も、使用者は、小さな力でロック突起21Iをロック穴22Kから外すことができる。
【0082】
その後、使用者が、一対の操作部33を引き続き挟んだ状態で、径方向外側R2へスライドさせる。すると、ガイド軸25が、各ガイド溝21Gによって裏カバー21の平板部21Aの受止領域21Eに沿ってガイドされながら回動軸24まわりに回動することによって、下方Z2かつ表カバー22側とは反対側へ移動する。これにより、裏カバー21が、表カバー22から離れるように相対回動するので、最終的には、メンテナンス位置(
図5参照)に配置される。
【0083】
完成状態のフィルタ装置10における裏カバー21及び表カバー22は、前述したように、ガイドカバー9の開口9Aに嵌め込まれることによってガイドカバー9に取り付けられる(
図1及び
図2も参照)。このとき、表カバー22の下端部と表カバー22の係合部31の爪31A(
図4参照)とがガイドカバー9に係合することによって、フィルタ装置10が開口9A内で位置決めされる。
【0084】
表カバー22は、裏カバー21を径方向内側R1から覆った状態で洗濯槽6内に露出される。洗濯運転の洗い工程やすすぎ工程において、洗濯槽6内の水は、前述したように、ガイドカバー9と洗濯槽6の円周壁6Aとの間の循環水路20を通って循環する。この水は、
図7の矢印W1で示すように、フィルタ装置10では、裏カバー21の平板部21Aの裏面部21Fに沿って上昇した後に、平板部21Aと架設部21Dとの間の隙間Vを通って、架設部21Dによって下向きかつ径方向内側R1へガイドされることによって、平板部21Aの受止領域21Eと表カバー22の捕獲領域22Mとの間のスペースKに流入する。
【0085】
スペースKに流入した水は、
図7の矢印W2で示すように、捕獲領域22Mにおけるフィルタ穴22Aから径方向内側R1へ流出して洗濯槽6内に戻る。フィルタ穴22Aから流出する水に含まれる糸くずや埃などの異物は、捕獲領域22Mにおいて捕獲される。
【0086】
洗濯運転の脱水工程において洗濯槽6が回転すると、捕獲領域22Mに存在する異物が、遠心力によって捕獲領域22Mから引き剥がされる。捕獲領域22Mから離れた異物は、裏カバー21の平板部21Aの受止領域21Eによって受け止められる(
図7の異物Fを参照)。
【0087】
洗濯運転後に、使用者は、蓋11を開けて洗濯槽6内にアクセスして、フィルタ装置10における表カバー22の下端部と表カバー22の係合部31の爪31A(
図4参照)とをガイドカバー9から外すと、メンテナンスのためにフィルタ装置10をガイドカバー9から取り外すことができる。この際、使用者は、表カバー22の窪み22F(
図6参照)に指を差し込んでもよい。
【0088】
前述したように受止領域21Eによって受け止められた異物Fは、受止領域21Eに張り付いた状態にあるので、フィルタ装置10を逆さにしただけでは、受止領域21Eから取り除けない。そこで、使用者は、取り外したフィルタ装置10をゴミ箱などの上に配置した状態で、前述したようにフィルタ装置10の操作部33を操作して、裏カバー21を完成位置からメンテナンス位置(
図5参照)まで相対回動させる。
【0089】
すると、操作部33に固定されたガイド軸25が、裏カバー21の平板部21Aの受止領域21Eに沿って移動するので、ガイド軸25に設けられた掻取部34が、受止領域21Eから異物Fを掻き取る。
【0090】
使用者は、ガイド軸25がガイド溝21G内で往復するように操作部33を操作することによって、裏カバー21を完成位置とメンテナンス位置との間で繰り返し相対回動させてもよい。これにより、掻取部34は、完成位置とメンテナンス位置との間における裏カバー21の相対回動に連動して受止領域21Eから何度も異物Fを掻き取る。なお、掻取部34が受止領域21Eから効果的に異物Fを掻き取れるように、ブラシやワイパなどによって掻取部34を構成してもよい。
【0091】
掻き取られた異物Fは、自重でゴミ箱に落下するので、使用者は、一度も異物Fに触ることなく、異物Fをゴミ箱に捨てることができる。なお、使用者は、連結軸23を表カバー22の嵌合溝22Lから外せば、表カバー22の捕獲領域22Mを露出させることができるので、ブラシなどの清掃用具によって、捕獲領域22Mなどに残った他の異物などを漏れなく除去することができる。そして、使用者が、裏カバー21を完成位置まで相対回動させてフィルタ装置10を完成状態に戻して洗濯槽6の内周部6Cに取り付けると、フィルタ装置10のメンテナンスが完了する。
【0092】
以上のように、メンテナンスの際に、裏カバー21と表カバー22とを分離する作業が不要であり、使用者は、フィルタ装置10を洗濯槽6の内周部6Cに対して着脱する作業の他に、裏カバー21を相対回動させるための操作部33の操作だけをすれば済む。また、裏カバー21の相対回動に連動して掻取部34が受止領域21Eから異物Fを自動的に掻き取るので、使用者には、慎重な操作が求められない。以上により、フィルタ装置10のメンテナンス性の向上を図れる。
【0093】
フィルタ装置10には、以下の第1及び第2変形例が挙げられる。
図8以降の各図は、対応する変形例を示すが、
図8以降の各図において、今まで説明した部分と同一の部分には同一符号を付して、当該部分についての説明は省略する。
【0094】
図8は、メンテナンス状態における第1変形例に係るフィルタ装置10の斜視図である。第1変形例に係るフィルタ装置10の裏カバー21の左リブ21B及び右リブ21Cのそれぞれでは、操作部33を通す通し穴21Jが、ガイド溝21Gの端部に連続して設けられる。通し穴21Jは、操作部33よりも大径の丸穴であり、操作部33及び通し穴21Jのそれぞれの直径は、ガイド溝21Gの溝幅Hよりも大きい。
【0095】
これにより、使用者は、裏カバー21においてガイド溝21Gの端部に連続して設けられた通し穴21Jに操作部33を通すことによって、操作部33及びガイド軸25を一緒に裏カバー21に対して着脱することができる。そのため、操作部33とガイド軸25とを別部品とせずに一体形成することができるので、部品点数の低減を図れる。
【0096】
通し穴21Jは、ガイド溝21Gにおいて裏カバー21の相対回動に応じたガイド軸25の移動範囲から離れた位置に配置されるとよい。これにより、完成位置とメンテナンス位置との間での裏カバー21の相対回動中に操作部33及びガイド軸25が通し穴21Jを通って裏カバー21から不意に外れることを防止できる。
【0097】
さらに、通し穴21Jは、ガイド溝21Gにおいて回動軸24側とは反対の上端部に連続して設けられるとよい。
【0098】
図9は、メンテナンス状態における第2変形例に係るフィルタ装置10の斜視図である。第2変形例に係るフィルタ装置10の裏カバー21の左リブ21B及び右リブ21Cのそれぞれには、ガイド溝21Gの一部を表カバー22側へ開放する切欠き21Kが設けられる。具体的には、切欠き21Kは、ガイド溝21Gにおいて上端部21GAと下端部21GBとの間の途中部21GCだけを表カバー22側へ開放する。
【0099】
このような切欠き21Kは、ガイド溝21Gに入り込んだ異物をガイド溝21Gの外に逃がすので、ガイド溝21Gに異物が詰まることを防止できる。また、切欠き21Kにガイド軸25を通すことによって、操作部33及びガイド軸25を一緒に裏カバー21に対して着脱することができるので、第1変形例と同様に、操作部33とガイド軸25とを一体形成することができる。
【0100】
なお、
図10では、表カバー22の捕獲領域22Mにおいて貫通穴22Nを避けた位置に設けられて径方向外側R2へ突出する位置決め突起22Rが図示される。位置決め突起22Rは、完成位置にあるときの裏カバー21に接触することによって、捕獲領域22Mと平板部21Aの裏カバー21の受止領域21Eとの間に、前述したスペースK(
図7参照)を確保する。位置決め突起22Rは、前述した他の構成のフィルタ装置10にも適用可能である。
【0101】
図11では、完成状態にあるフィルタ装置10が図示される。左右一対の支柱部26の外側面同士の間隔T1は、裏カバー21の左リブ21B及び右リブ21Cの内側面同士の間隔T2よりも小さい。裏カバー21の左リブ21B及び右リブ21Cの外側面同士の間隔T3は、表カバー22の左リブ22G及び右リブ22Hの内側面同士の間隔T4よりも小さい。
【0102】
そのため、裏カバー21を完成位置に配置してフィルタ装置10を完成状態にすると、左右一対の支柱部26が、左リブ21Bと右リブ21Cとの間に収まり、裏カバー21が左リブ22Gと右リブ22Hとの間に収まるので、完成状態のフィルタ装置10は、径方向Rに薄くなる。このことは、前述した他の構成のフィルタ装置10にも当てはまる。
【0103】
前述した切欠き21Kに関連して、第2変形例の裏カバー21の架設部21Dには、付勢部35が設けられる。付勢部35は、表カバー22から離れるように湾曲した後に折れ曲がって上方Z1へ延びる板ばね状であって、左右方向Xにおける架設部21Dの両端部に1つずつ設けられる。表カバー22の左リブ22G及び右リブ22Hのそれぞれの上端部には、前述した凹部22C内の係合部31側へ折れ曲がった板状の押圧部22Sが設けられる。
【0104】
裏カバー21を完成位置にある状態では、左右一対の付勢部35の上端部35Aは、表カバー22の左リブ22G及び右リブ22Hにおいて対応する押圧部22Sに対して隙間Mを隔てて対向した状態にある(
図12のC-C矢視断面図である
図13も参照)。前述したように使用者が裏カバー21を完成位置からメンテナンス位置へ向けて相対回動させると、上端部35Aが、対応する押圧部22Sに接近する。
【0105】
使用者が裏カバー21をさらに相対回動させると、
図14に示すように、上端部35Aが押圧部22Sを押圧することによって各付勢部35が弾性変形する。すると、各付勢部35は、元の形状に戻ろうとすることによって裏カバー21を表カバー22側へ付勢する。
【0106】
このように、裏カバー21を完成位置からメンテナンス位置へ向けて相対回動させると、付勢部35が裏カバー21を表カバー22側へ付勢することによってガイド溝21Gの縁21GDをガイド軸25に押し付ける。そのため、裏カバー21の回動中にガイド軸25が切欠き21Kを通ってガイド溝21Gから不意に外れることを防止できる。なお、
図14に示すように、表カバー22の左リブ22G及び右リブ22Hのそれぞれの内側面には、前述したロック突起21I(
図10参照)をロック穴22Kに導くための溝22Tが設けられてもよい。
【0107】
本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 洗濯機
6 洗濯槽
6C 内周部
10 フィルタ装置
21 裏カバー
21E 受止領域
21G ガイド溝
21J 通し穴
21K 切欠き
22 表カバー
22A フィルタ穴
22M 捕獲領域
23 連結軸
24 回動軸
25 ガイド軸
26 支柱部
33 操作部
34 掻取部
35 付勢部
F 異物
L 長手方向
Q 洗濯物
X 左右方向
Z 上下方向