(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096775
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】ボトルキャップ用再生材を製造する方法およびボトルキャップ用再生材
(51)【国際特許分類】
C08J 11/06 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
C08J11/06
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212757
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】594128522
【氏名又は名称】ウツミリサイクルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】内海 正顯
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AC11
4F401CA02
4F401CA22
4F401CA43
4F401CB03
4F401CB06
(57)【要約】
【課題】
本発明は、一旦市場に出回ったボトルキャップ(ボトルキャップのポストコンシューマ材料)から、安全性の高いボトルキャップ用再生材を製造する方法を提供する。
【解決手段】 ボトルキャップのポストコンシューマ材料からボトルキャップ用再生材を製造する方法であって、下記の工程(A)および(B)を備えるようにした。
(A)除染工程
(B)成分分離工程
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトルキャップのポストコンシューマ材料からボトルキャップ用再生材を製造する方法であって、下記の工程(A)および(B)を備えるボトルキャップ用再生材の製造方法。
(A)除染工程
(B)成分分離工程
【請求項2】
前記除染工程(A)が、下記の処理(a1)および(a2)を有する請求項1記載のボトルキャップ用再生材の製造方法。
(a1)洗浄処理
(a2)汚染物質除去処理
【請求項3】
前記汚染物質除去処理(a2)が、加熱処理を有する請求項1または2記載のボトルキャップ用再生材の製造方法。
【請求項4】
前記加熱処理が、赤外線加熱処理、真空加熱処理、窒素気流加熱処理からなる群から選ばれた少なくとも一つを有する請求項1~3のいずれか一項に記載のボトルキャップ用再生材の製造方法。
【請求項5】
前記成分分離工程(B)が、分光分析で得られたスペクトルに基づいて前記ポストコンシューマ材料を成分ごとに分離する処理を有するものである請求項1~4のいずれか一項に記載のボトルキャップ用再生材の製造方法。
【請求項6】
前記ボトルキャップのポストコンシューマ材料がポリエチレンまたはポリプロピレンからなり、前記成分ごとの分離がポリエチレンとポリプロピレンとに分離するものであって、ポリエチレンとして分離されたボトルキャップ用再生材におけるポリプロピレンの含有量が10質量%以下であり、ポリプロピレンとして分離されたボトルキャップ用再生材におけるポリエチレンの含有量が10質量%以下である請求項1~5のいずれか一項に記載のボトルキャップ用再生材の製造方法。
【請求項7】
さらに、(C)CCDカメラを用いた色選別工程を備える請求項1~6のいずれか一項に記載のボトルキャップ用再生材の製造方法。
【請求項8】
前記CCDカメラを用いた色選別工程(C)が、対象物を少なくとも白、青、その他の色に分離する工程を有するものである請求項1~7のいずれか一項に記載のボトルキャップ用再生材の製造方法。
【請求項9】
ボトルキャップのポストコンシューマ材料から得られたボトルキャップ用再生材であって、前記ボトルキャップ用再生材の主成分が、ポリエチレンまたはポリプロピレンであるボトルキャップ用再生材。
【請求項10】
ポリエチレンまたはポリプロピレンが、ボトルキャップ用再生材の90質量%以上含有される請求項9記載のボトルキャップ用再生材。
【請求項11】
前記ボトルキャップ用再生材の形状が、粉砕物またはペレットである請求項9または10記載のボトルキャップ用再生材。
【請求項12】
代理汚染試験による代理汚染物質の残留量がボトルキャップ用再生材質量の320ppb以下および/または代理汚染試験による代理汚染物質の溶出量がボトルキャップ用再生材質量の10ppb以下である請求項9~11のいずれか一項に記載のボトルキャップ用再生材。
【請求項13】
前記代理汚染試験による代理汚染物質として、以下のグループ(I)~(VI)に示す物質のうち、各グループから少なくとも一種用いる請求項12記載のボトルキャップ用再生材。
(I)クロロホルム、クロロベンゼン、トリクロロエタン、ジエチルケトン。
(II)トルエン。
(III)ベンゾフェノン、サリチル酸メチル。
(VI)テトラコサン、ステアリン酸メチル、フェニルシクロヘキサン、1-フェニルデカン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルキャップのポストコンシューマ材料からボトルキャップ用途に用いることが可能な再生材を製造する方法、および安全性が担保され、付加価値の高いボトルキャップ用再生材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、SDGsに代表される「循環型社会の実現」という考え方が主流となり、食品容器等についてもリサイクル化が進められている。例えば、飲料用に用いられるプラスチックボトルはポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とするものが主流であり、一旦市場に出回ったものの回収が比較的容易であることから、回収したプラスチックボトル(プラスチックボトルのポストコンシューマ材料)から、再度、プラスチックボトルを製造するという取り組みが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記プラスチックボトルの開口部を封するボトルキャップについては、その原料として、単一の成分ではなく、通常、ポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)という異なる成分が用いられていることから、これらを回収して、そのポストコンシューマ材料から再度、ボトルキャップを製造することは現実的ではなく、検討すら行われていない現状にある。特に、PPとPEは比重が類似しており、これらを簡便かつ高い精度で分離することは容易ではない。
【0004】
さらに、一旦市場に出回ったボトルキャップは、どのような経緯を経ているかわからないため、たとえ元の用途が飲料用のボトルキャップであっても、そのポストコンシューマ材料を用いたボトルキャップについては、人体に対する安全性が保障されるものではない、という問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、今後、拡大生産者責任制度(EPR)の考え方が主流になると予測され、また、市場のマインドもエコノミーよりもエコロジーを優先する考え方が浸透してきていることから、プラスチックボトルだけでなく、ボトルキャップに関してもポストコンシューマ材料からボトルキャップを製造することが強く望まれると考えられる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、一旦市場に出回ったボトルキャップ(以下「ボトルキャップのポストコンシューマ材料」とすることがある)から、人体に対する安全性が担保され、純度の高い成分からなるボトルキャップ用再生材を製造することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の[1]~[13]をその要旨とする。
[1]ボトルキャップのポストコンシューマ材料からボトルキャップ用再生材を製造する方法であって、下記の工程(A)および(B)を備えるボトルキャップ用再生材の製造方法。
(A)除染工程
(B)成分分離工程
[2]前記除染工程(A)が、下記の処理(a1)および(a2)を有する[1]記載のボトルキャップ用再生材の製造方法。
(a1)洗浄処理
(a2)汚染物質除去処理
[3]前記汚染物質除去処理(a2)が、加熱処理を有する[1]または[2]記載のボトルキャップ用再生材の製造方法。
[4]前記加熱処理が、赤外線加熱処理、真空加熱処理、窒素気流加熱処理からなる群から選ばれた少なくとも一つを有する[1]~[3]のいずれかに記載のボトルキャップ用再生材の製造方法。
[5]前記成分分離工程(B)が、分光分析で得られたスペクトルに基づいて前記ポストコンシューマ材料を成分ごとに分離する処理を有するものである[1]~[4]のいずれかに記載のボトルキャップ用再生材の製造方法。
[6]前記ボトルキャップのポストコンシューマ材料がポリエチレンまたはポリプロピレンからなり、前記成分ごとの分離がポリエチレンとポリプロピレンとに分離するものであって、ポリエチレンとして分離されたボトルキャップ用再生材におけるポリプロピレンの含有量が10質量%以下であり、ポリプロピレンとして分離されたボトルキャップ用再生材におけるポリエチレンの含有量が10質量%以下である[1]~[5]のいずれかに記載のボトルキャップ用再生材の製造方法。
[7]さらに、(C)CCDカメラを用いた色選別工程を備える[1]~[6]のいずれかに記載のボトルキャップ用再生材の製造方法。
[8]前記CCDカメラを用いた色選別工程(C)が、対象物を少なくとも白、青、その他の色に分離する工程を有するものである[1]~[7]のいずれかに記載のボトルキャップ用再生材の製造方法。
[9]ボトルキャップのポストコンシューマ材料から得られたボトルキャップ用再生材であって、前記ボトルキャップ用再生材の主成分が、ポリエチレンまたはポリプロピレンであるボトルキャップ用再生材。
[10]ポリエチレンまたはポリプロピレンが、ボトルキャップ用再生材の90質量%以上含有される[9]記載のボトルキャップ用再生材。
[11]前記ボトルキャップ用再生材の形状が、粉砕物またはペレットである[9]または[10]記載のボトルキャップ用再生材。
[12]代理汚染試験による代理汚染物質の残留量が、ボトルキャップ用再生材質量の320ppb以下および/または代理汚染試験による代理汚染物質の溶出量がボトルキャップ用再生材質量の10ppb以下である[9]~[11]のいずれかに記載のボトルキャップ用再生材。
[13]前記代理汚染試験による代理汚染物質として、以下のグループ(I)~(VI)に示す物質のうち、各グループから少なくとも一種用いる[12]記載のボトルキャップ用再生材。
(I)クロロホルム、クロロベンゼン、トリクロロエタン、ジエチルケトン。
(II)トルエン。
(III)ベンゾフェノン、サリチル酸メチル。
(VI)テトラコサン、ステアリン酸メチル、フェニルシクロヘキサン、1-フェニルデカン。
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、除染工程(A)および成分分離工程(B)を備える方法により、安全性が担保され、成分の純度が高いボトルキャップ用再生材を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0010】
本発明のボトルキャップ用再生材の製造方法によると、ボトルキャップのポストコンシューマ材料を、安全性を担保し、成分の純度が高く、例えば、元の用途である飲料用のボトルキャップに用いるボトルキャップ用再生材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態であるボトルキャップ用再生材の製造方法を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
なお、本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「Xおよび/またはY(X,Yは任意の構成)」とは、XおよびYの少なくとも一方を意味するものであって、Xのみ、Yのみ、XおよびY、の3通りを意味するものである。
そして、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)または「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」または「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
さらに、本発明において、「主成分」とは、その材料の特性に大きな影響を与える成分の意味であり、その成分の含有量は、通常、材料全体の50重量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、その成分のみからなる(100質量%)であってもよい。
【0013】
以下、本発明の実施形態の一例であるボトルキャップ用再生材の製造方法について説明する。
【0014】
本発明のボトルキャップ用再生材は、ボトルキャップのポストコンシューマ材料から得られるものである。上記ボトルキャップのポストコンシューマ材料とは、通常、プラスチックボトルの付属品としてプラスチックボトルと一緒に回収され、プラスチックボトルのリサイクル工程において、プラスチックボトルとは異なる異物として選別され、回収されるものである。しかし、本発明に用いるボトルキャップのポストコンシューマ材料としては、これに限らず、ボトルキャップそのものを目的として回収されたものであってもよい。
【0015】
上記ボトルキャップのポストコンシューマ材料の形状は、プラスチックボトルと一緒に回収されたものである場合、回収された後粉砕されるため、通常、粉砕された形状(粉砕物)であるが、粉砕されない状態のもの(ボトルキャップ形状そのもの)であってもよい。そして、上記のようにして回収されたボトルキャップ(ボトルキャップのポストコンシューマ材料)の粉砕物には、プラスチックボトル本体の破片、およびプラスチックボトル本体に取り付けられたラベルの破片等が混入していることがある。
【0016】
なお、品質のばらつきのより少ないボトルキャップ用再生材を得るために、原料となるボトルキャップのポストコンシューマ材料を、例えば、所定のメッシュを通過させたパス品とし、上記ボトルキャップのポストコンシューマ材料の径を所定の範囲内のものに設定することが好ましい。上記メッシュの径は、例えば、30mm以下にすることが好ましく、20mm以下とすることがより好ましく、10mm以下とすることがさらに好ましいく、とりわけ20メッシュのものが好ましく用いられる。
【0017】
本発明のボトルキャップ用再生材は、例えば、
図1にそのフロー図を示すように、以下の工程を経由させることにより製造できる。すなわち、まず、ボトルキャップのポストコンシューマ材料に対して、除染工程(A)を行う。前記除染工程(A)を経由させることにより、前記ポストコンシューマ材料に人体に対する悪影響を及ぼす汚染物質が付着していた場合であっても、その汚染物質を除去することが可能となる。ついで、成分分離工程(B)を経由させることにより、成分別(この例では、主成分がPPまたはPEの2種類)に分離することによって得ることができる。
以下に各工程を説明する。
【0018】
<除染工程(A)>
上記除染工程(A)は、ボトルキャップ粉砕品の表面に付着した揮発性の低い汚染物質を除去する洗浄処理(a1)と、ボトルキャップ粉砕品の内部に浸透している汚染物質を除去する汚染物質除去処理(a2)を有していることが好ましい。上記洗浄処理(a1)および汚染物質除去処理(a2)の両方を有すると、ボトルキャップに汚染物質が付着していたとしても、揮発性の有無によらず汚染物質全般を除去することが可能となる。
【0019】
[洗浄処理(a1)]
上記洗浄処理(a1)は、ボトルキャップ粉砕品の表面に付着した揮発性の低い汚染物質の除去を行う洗浄工程をいい、例えば、上記ポストコンシューマ材料を加熱アルカリ水や水等に浸漬したりして除去すること等があげられる。上記揮発性の低い汚染物質としては、例えば、ベンゾフェノン、サリチリ酸メチル、テトラコサン、ステアリン酸メチル、フェニルシクロヘキサン、1-フェニルデカン等があげられる。
【0020】
(浮遊選別)
上記ポストコンシューマ材料を水等に浸漬する際に、例えば、内部に水を収容する水槽を準備し、上記水槽に流水を導入し、上記水槽の一端側から上記回収されたボトルキャップの粉砕物を投入して水と接するようにし、所定時間経過後に上記水槽の他方側から浮遊する粉砕物を回収すると、比重の重いプラスチックボトル破砕物は水に沈むため、このような異物を容易に除去できる。
【0021】
上記浮遊選別において、ポストコンシューマ材料と水とが接する時間を3分間以上に設定することが好ましく、5~20分間の範囲に設定することがより好ましい。
【0022】
上記浮遊選別では、上記ポストコンシューマ材料における成分ごとの比重差を利用して、ボトルキャップの粉砕物の回収を行っているため、ボトルキャップのポストコンシューマ材料に混入した、ボトルキャップとは異なる比重の重い成分からなるものを除去することができる。
【0023】
すなわち、通常、ボトルキャップは、ポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)を主成分としており、その比重はいずれも約0.9であり水に浮遊する。
これに対し、プラスチックボトルは、通常、ポリエチレンテレフタレートPETを主成分としており、その比重は約1.38である。また、ラベルの成分としては、例えば、延伸ポリスチレン(OPS)、PET、ポリスチレン(PS)、塩化ビニル樹脂(PVC)が使用されており、これらの比重は順に、1.05、1.4、1.05、1.35であり、いずれも1を上回っている。
よって、理論上、ボトルキャップ以外の成分は、いずれも水に沈むことになるため、水に浮くものだけを回収することで、ボトルキャップのみを回収することができ、回収されたポストコンシューマ材料に混入した、ボトルキャップ以外の異物を除去することができる。特に、プラスチックボトル破砕物の除去に有用である。
【0024】
なお、成分の比重が1より大きい場合であっても、形状によっては空気を抱き込む等して水に沈まない場合がある。このため、上記浮遊選別の後に、さらにボトルキャップ以外の異物を除去する処理を行うことが好ましい。上記異物除去処理としては、例えば、風力を利用した選別(風力選別)を用いることが好ましい。
【0025】
(風力選別)
上記風力選別は、上記浮遊選別を経由し、濡れたボトルキャップの粉砕物を脱水した後、風を吹き付けることにより、その風力を利用して粉砕物に含まれるもののかさ比重差を利用して、上記浮遊選別で除去しきれなかった、かさ比重の比較的軽い異物を除去するものであり、特に、ラベル粉砕物の除去に有用である。
【0026】
上記風力選別は、例えば、浮遊選別を経由した粉砕物を脱水し、上記脱水後の粉砕物を振動フィーダー等で定量に送り込み、シロッコファン、アスピレーター等によって強い空気流の中に粉砕物を通過させて、かさ比重の軽いものと、かさ比重の重いものとを分離する事ができる。かさ比重の重いものはそのまま落下させる等することにより、上記ボトルキャップの粉砕物に混入している、ラベルあるいはフィルム系異物を有効に選別することができる。
【0027】
[汚染物質除去処理(a2)]
上記洗浄処理(a1)を経由したボトルキャップのポストコンシューマ材料は、ボトルキャップのポストコンシューマ材料以外の異物の混入が極めて少ないものとなっている。上記汚染物質除去処理(a2)は、このボトルキャップのポストコンシューマ材料に対する加熱処理を行うことにより、上記ポストコンシューマ材料の内部に浸透している汚染物質の除去を行うものである。これにより、ボトルキャップに汚染物質が付着していたとしても、物理化学的な性質を問わず汚染物質全般を除去することができる。
【0028】
上記内部に浸透している汚染物質としては、主に有機溶媒があげられ、具体的には農薬、殺虫剤に含まれる様々な化学物質、工業薬品類、クロロホルム、クロロベンゼン、トリクロロエタン、ジエチルケトン、トルエン等があげられる。
【0029】
上記加熱処理としては、例えば、赤外線加熱処理、真空加熱処理、窒素気流加熱処理等があげられる。上記真空加熱処理としては、例えば、真空下0.1~100mbrにおいて、好ましくは130℃以上、より好ましくは160℃以上の加熱を30分間以上行うことがあげられる。上記窒素気流加熱処理としては、例えば、ほぼ大気圧(1013mbr±5%)に調整した窒素気流下において、好ましくは窒素気流温度を130℃以上、より好ましくは160℃以上の加熱を行うことがあげられる。
【0030】
なかでも、上記粉砕物内部までの加熱が容易である点で赤外線加熱処理が好ましく、とりわけ波長が0.78~3μmの赤外線(近赤外線)を用いることが、短時間で各粉砕物内部まで均一性の高い加熱を行うことができるため好ましい。上記近赤外線を用いた加熱は大気圧下で行うことができるため、特別に強度を高くした装置が不要であるという利点も有する。上記赤外線処理としては、好ましくは130℃以上、より好ましくは160℃以上の加熱を0.3~3時間行うことが好ましく、0.4~0.8時間行うことがより好ましい。
【0031】
<成分分離工程(B)>
上記除染工程(A)を経由したボトルキャップのポストコンシューマ材料は、仮にどのような物性の汚染物質が付着していたとしても、それらはきれいに除去されており、しかも、ボトルキャップ以外の異物(例えば、プラスチックボトル、ラベル等)も高い精度で除去されている。成分分離工程(B)は、このように人体に対する安全性が担保され、ボトルキャップ以外の異物が除去されたボトルキャップのポストコンシューマ材料に対し、さらに、成分別の分離を行う工程である。
すなわち、ボトルキャップの成分は、通常、PPまたはPEを主成分とするものが用いられている。このため、上記ボトルキャップの粉砕物は、ボトルキャップ以外の異物を有しないものであっても、成分の異なるものが混在している可能性がある。よって、上記成分分離工程(B)は、上記除染工程(A)を経由したボトルキャップのポストコンシューマ材料を成分別に分離し、各成分の純度を高めるものである。
【0032】
従来、PPとPEは、比重が類似しているため、精度よく分離することは困難であるとされていた。しかし、上記除染工程(A)を経由させた後に、成分分離工程(B)を行うことで、たとえ比重が類似しているPPとPEであっても、高い精度で分離できることがわかった。分離されたボトルキャップの粉砕物は、ボトルキャップ用再生材として用いることができる。
【0033】
上記成分分離工程(B)は、例えば、分光分析で得られた物質のスペクトルに基づき成分を選別することができる。上記分光分析としては、例えば、ラマン分光法、近赤外線分光法等があげられる。なかでも、ボトルキャップのポストコンシューマ材料におけるPPとPEをより高い精度で選別できる点で、ラマン分光法が好ましく用いられる。一方、より簡便であるとの点からは近赤外線分光法も好ましく用いられる。
【0034】
このように、除染工程(A)および成分分離工程(B)を経由することにより、ボトルキャップのポストコンシューマ材料を用いたものであっても、人体に対する安全性が担保され、しかも、成分ごとに精度高く分離された、付加価値の高いボトルキャップ用再生材(粉砕物)を製造することができる。
【0035】
<CCDカメラを用いた色選別工程(C)>
上記で得られたボトルキャップ用再生材(粉砕物)は、このまま、ボトルキャップの製造に用いたり、これを加熱溶融してフレークまたはペレットに形成したりしてもよいが、付加価値をより高めるために、色ごとに分離することが好ましい。
一方で、ボトルキャップには多種多様な色のものが存在している。このため、正確に色ごとに分離することは困難である。そこで、色選別における手間と得られる再生材の質とのバランスに優れる点から、なかでも、対象物を少なくとも白、青、その他の色、の3つに分離することが好ましい。
【0036】
上記色選別工程(C)は、例えば、上記得られたボトルキャップ用再生材(粉砕物)をベルトコンベアの上に載せて搬送する間に、その上方に設置したCCDカメラにより対象物を撮影し、その撮影データから設定された基準に基づいて対象物の色を選別する。そして、例えば、色別に風の吹き出し量および方向を異なるようにし、飛ばされる向きおよび距離を変えて、設定された色ごとに対象物を分離することができる。上記選抜別される色調の範囲は、用いるボトルキャップのポストコンシューマ材料の色の混在状態により、適宜、設定することが好ましい。
【0037】
上記工程(A)~(C)を経由することにより、成分別および色別に分離されたボトルキャップ用再生材を得ることができる。さらに価値を高めるため、これらを加熱溶融により各々ペレットに形成してもよい。
【0038】
このように、本発明によって得られたボトルキャップ用再生材は、ボトルキャップのポストコンシューマ材料を原料とするにも関わらず、人体に悪影響を与える物質の残留のおそれが極めて低く、人体に対する安全性に優れている。また、成分および色ごとに純度高く選別されているため、再生材として使い勝手がよい。
【0039】
また、本発明によって得られたボトルキャップ用再生材は、ボトルキャップのポストコンシューマ材料以外のものをほとんど含有しないため、これを用いて製造されるボトルキャップは循環型社会を実現する一助となる。
【0040】
そして、本発明によって得られたボトルキャップ用再生材は、ポリエチレンまたはポリプロピレンに分離されており、通常、それぞれの純度が90質量%以上担保されているため使い勝手がよい。
【0041】
さらに、本発明によって得られたボトルキャップ用再生材の形状が、粉砕物である場合には低コスト化を実現できる傾向がみられ、ペレットである場合には溶融状態を均一にしやすく成形不良の発生を抑制できる傾向がみられる。
【0042】
また、代理汚染試験による代理汚染物質の残留量が、ボトルキャップ用再生材質量の320ppb以下および/または代理汚染試験による代理汚染物質の溶出量がボトルキャップ用再生材質量の10ppb以下であるものは、人体への安全性がより高められている。なかでも、代理汚染試験による代理汚染物質として、以下のグループ(I)~(VI)に示す物質のうち、各グループから少なくとも一種用いるものは、より確実な指標を得ることができ、安全性の判断が容易となる。
(I)クロロホルム、クロロベンゼン、トリクロロエタン、ジエチルケトン。
(II)トルエン。
(III)ベンゾフェノン、サリチル酸メチル。
(VI)テトラコサン、ステアリン酸メチル、フェニルシクロヘキサン、1-フェニルデカン。
【0043】
上記代理汚染試験は、通常、厚生労働省が作成した「食品用器具及び容器包装における再生プラスチック材料の使用に関する指針(ガイドライン)」に準じて行うことができる。
【実施例0044】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
まず、PPからなる青色のボトルキャップ(新品)を粉砕し、20メッシュの篩を通過した粉砕物を10kgと、PEからなる黄色のボトルキャップ(新品)を粉砕し、20メッシュの篩を通過した粉砕物を10kgとを準備し、これらを均一になるように混合して、20kgの2種の成分(PPとPE)および2種の色(青色、黄色)の混合粉砕物を準備した。
【0046】
上記混合粉砕物20kgに対し、下記の代理汚染物質による汚染を行って、疑似的にボトルキャップのポストコンシューマ材料を作製し、これを後記の工程を経由させて、ボトルキャップ用再生材を製造した。
【0047】
一方、代理汚染物質を用いた確認試験(以下「代理汚染試験」とすることがある)は、選択された代理汚染物質で意図的に汚染させたものをボトルキャップのポストコンシューマ材料として用い、このポストコンシューマ材料から得たボトルキャップ用再生材に含有される上記代理汚染物質の量を測定する。そして、その代理汚染物質の量が人体に無害であると考えられる値より下回ることを示すことで、仮に、原料となるポストコンシューマ材料に汚染物質が付着していた場合であっても、得られたボトルキャップ用再生材の安全性(食品への汚染物質の移行量が十分に低いこと)を担保するものである。
【0048】
[代理汚染物質による汚染]
代理汚染試験に用いる代理汚染物質として、クロロベンゼン、トルエン、ベンゾフェノン、フェニルシクロヘキサンを選択した。上記クロロベンゼンは揮発性の極性物質であり、上記トルエンは揮発性の非極性物質であり、上記ベンゾフェノンは不揮発性の極性物質であり、上記フェニルシクロヘキサンは不揮発性の非極性物質である。すなわち、上記代理汚染物質には、代表する各物理化学的性質を有する化学物質が選択されている。
【0049】
ついで、ステンレス鋼(SUS)製容器内にポリエチレン製の袋を入れ、その中に準備した混合粉砕物を投入し、その上へ予め混合しておいた上記代理汚染物質4種を上記混合粉砕物の質量に対して、それぞれ以下の量を滴下した。そして、ポリエチレン製の袋とSUS製容器を密閉し、期間中は1日3回撹拌し、40℃の温度下で2週間静置して上記混合粉砕物に上記代理汚染物質を下記の濃度となるよう含浸させた。
クロロベンゼン 1500ppm
トルエン 1000ppm
ベンゾフェノン 150ppm
フェニルシクロヘキサン 500ppm
【0050】
このようにして得られた代理汚染物質によって汚染された混合粉砕物を、疑似的に作製したボトルキャップのポストコンシューマ材料(以下「試料」とすることがある)として、下記の工程を順に実施した。
【0051】
<除染工程(A)>
まず、洗浄処理(a1)を行った。すなわち、内部に水が収容された水槽に、上記試料を上記水槽の一端側から流水とともに投入し、他端側から浮遊する試料を回収した(浮遊選別)。試料の投入から回収までの時間は平均して10分間であった。上記試料はボトルキャップのみからなるため、この処理によって沈殿する粉砕物はほとんどなかったが、プラスチックボトル等の粉砕物が混入していた場合は、この処理によりプラスチックボトル破砕物等の比重の重い異物が沈殿し除去される。
【0052】
ついで、上記回収した試料を脱水し、振動フィーダーによって風力選別機に送り込み、風力選別機に備えられたブロアーにより吹き上げ、試料表面に付着している水を乾燥させるとともに、比重の異なる成分が混入している場合には、比重に基づいて試料を分離する(風力選別)。上記試料はボトルキャップのみからなるため、この処理によって分離される粉砕物はほぼなかったが、ラベル等の粉砕物が混入していた場合は、この処理によりラベル等の異物が精度よく分離され除去される。
【0053】
ついで、汚染物質除去処理(a2)を行った。すなわち、上記得られた試料を、スクリューコンベアが内蔵され、一端側から投入した試料を他端側から取り出す間に加熱が可能な除染装置(近赤外線装置)に投入する。このとき、上記加熱は、近赤外線を用いて、大気圧下で加熱(160℃、0.5時間)とした。これにより、上記試料に含浸している揮発性の代理汚染物質(クロロベンゼン、トルエン)が外部に排出され、除去される。
【0054】
<成分分離工程(B)>
つぎに、上記試料を成分別に分離するため、分光法に基づく選別装置(Unisoft Flake SFP750,Steinert社製)を用いて成分の選別を行った。すなわち、コンベアベルトで運ばれる上記試料に、近赤外レーザー光等を照射し、上記試料により散乱される光を測定し、そのスペクトルに基づいて識別する。上記試料は、除染工程(A)を経由しているため、PPとPEであってもこれらを精度高く識別することができる。識別された試料は、圧搾空気の噴射によってPPまたはPEとして成分ごとに分離される。より精度高い分離を行うため、上記圧搾空気は上から下に向かう方向に噴射されることが好ましい。
【0055】
このようにして選別された試料は、PPとして選別されたものにおけるPPの含有率が99.18質量%であり、PEとして選別されたものにおけるPEの含有率が96.30質量%であり、極めて精度高く分離できていた。すなわち、本発明の製造方法によって得られる再生材は、成分の純度が高く高品質であることがわかった。
【0056】
<CCDカメラを用いた色選別工程(C)>
上記成分別に分離された各試料に対し、CCDカメラを利用して色(青色、黄色)の選別を行った。この選別において異なる色に分類されるものはほとんどなく、その色選別精度はいずれも99%以上であった。この実施例では成分別に色を変えたものを用いているため、成分分離工程(B)を経由させた試料は、この色選別工程(C)の前に色選別も終えている。しかし、実際に市場から回収されるポストコンシューマ材料には、多数の色が混在しているため、この色選別工程(C)を経由させることにより、使い勝手のよいボトルキャップ用再生材を得ることができる。
【0057】
上記色選別工程(C)を経由した試料(粉砕物)に対し、ペレット製造装置を用いて所定の粒径のペレットを製造した。その結果、ボトルキャップのポストコンシューマ材料からなり、質が高く使い勝手のよいボトルキャップ用再生材が得られた。
【0058】
一方、上記得られたボトルキャップ用再生材の安全性を確認するため、上記除染工程(A)および成分分離工程(B)を経由して得られた再生材(粉砕物)に対し、以下の条件で代理汚染試験を行った。
【0059】
<代理汚染試験:代理汚染物質の残留量測定>
代理汚染物質の残留量は、以下の測定条件でガスクロマトグラフィー分析を行い、得られたピーク面積から検量線を作成して算出した。その結果、PPまたはPEに選別された再生材のいずれにおいても、上記代理汚染物質の合計含有量(残留量)はボトルキャップ用再生材質量の220ppb以下であった。
(測定条件)
・装置 ヘッドスペースサンプラ- HP7694
ガスクロマトグラフィー/質量分析計(GC/MS) HP6890
・ヘッドスペースサンプラ-操作条件
加熱温度 オーブン125℃
サンプルループ 130℃
トランスファーライン 135℃
加熱時間 45分間
注入時間 0.5分間
ヘッドスペース導入量 1ml
・GC/MS測定条件
カラム DB-VRX(30mx内径0.25mm、膜厚1.4μm J&W Scientific社製)
カラム温度 40℃(4分間)→昇温20℃/分で240℃
注入温度 250℃
インレット温度 280℃
キャリア―ガス He、130kPa(0.5分)→50kPa
イオン化電圧 70eV イオン加速電圧
・測定法
試料(粉砕物)1.0gを10mlバイアル瓶に入れて密封後、ヘッドスペースサンプラ/GC/MSで測定をした。
【0060】
また、代理汚染物質の溶出量についても、上記指針に準じて測定を行い、いずれの再生材においても上記代理汚染物質の溶出量がボトルキャップ用再生材質量の10ppb以下であることを確認している。
【0061】
このように、本発明の製造方法により得られたボトルキャップ用再生材は、ボトルキャップのポストコンシューマ材料から得られるにも関わらず、成分の純度が高く、かつ安全性が十分に担保されることがわかった。
本発明は、ボトルキャップのポストコンシューマ材料から、安全性の高いボトルキャップ用再生材を製造することに利用できることから、食品包装用途にも幅広く利用することができる。