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特開2023-96777巻取制御装置、巻取実績蓄積装置、巻取制御方法、巻取実績蓄積方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096777
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】巻取制御装置、巻取実績蓄積装置、巻取制御方法、巻取実績蓄積方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B21C 47/00 20060101AFI20230630BHJP
   B21C 47/02 20060101ALI20230630BHJP
   B21B 39/08 20060101ALI20230630BHJP
   B21C 47/34 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
B21C47/00 H
B21C47/02 E
B21B39/08 A
B21C47/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212760
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】野口 浩平
(72)【発明者】
【氏名】空尾 謙嗣
【テーマコード(参考)】
4E026
【Fターム(参考)】
4E026AA15
4E026BA16
4E026GA08
(57)【要約】
【課題】拘束装置による拘束から解放された後の帯状材の蛇行の抑制を大掛かりな設備を用いることなく実現する。
【解決手段】巻取制御装置200は、コイラー30で過去に巻き取られた鋼帯Mにおけるテレスコ量の値に基づいて定められた当該鋼帯Mにおける張力指標の実績値である処理用過去材張力指標実績値を取得し、取得した前記処理用過去材張力指標実績値を用いて、鋼帯Mが仕上圧延機10(圧延スタンドF7)による拘束から解放されるタイミングからピンチロール40を通過するまでの期間を含む後端側制御期間におけるピンチロール40の動作を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状材を拘束しながら搬送させる拘束装置と、前記拘束装置を通過した帯状材を巻き取る巻取装置と、の間の位置に設置されたピンチロールの動作を制御する巻取制御装置であって、
前記巻取装置で過去に巻き取られた帯状材の巻姿に関する指標である巻姿指標の値に基づいて定められた当該帯状材における張力指標の実績値である処理用過去材張力指標実績値の中から、前記拘束装置、前記巻取装置、および前記ピンチロールを備える処理ラインにおいて処理対象の帯状材に対応する処理用過去材張力指標実績値を取得する処理用過去材張力指標実績取得部と、
前記処理対象の帯状材が搬送路上で搬送されているときの前記ピンチロールの動作を制御するピンチロール制御部と、
を備え、
前記張力指標は、前記拘束装置と前記ピンチロールとの間の帯状材の張力、または、前記ピンチロールと前記拘束装置との間の帯状材の張力に影響を与える物理量であり、
前記ピンチロール制御部は、前記処理用過去材張力指標実績取得部により取得された前記処理用過去材張力指標実績値を用いて、前記処理対象の帯状材が前記拘束装置による拘束から解放されるタイミングから前記ピンチロールを通過するまでの期間を含む後端側制御期間における前記ピンチロールの動作を制御する、巻取制御装置。
【請求項2】
前記後端側制御期間は、前記搬送路上を搬送中の前記処理対象の帯状材の所定の領域が、前記搬送路上の所定の位置を通過するタイミングから開始され、
前記所定の位置は、複数の前記帯状材において共通の位置である、請求項1に記載の巻取制御装置。
【請求項3】
前記処理用過去材張力指標実績値は、前記後端側制御期間を含む期間における時系列のデータである、請求項1または2に記載の巻取制御装置。
【請求項4】
前記処理用過去材張力指標実績取得部は、前記巻取装置で巻き取られた帯状材に関する情報である帯状材情報と、当該帯状材における前記処理用過去材張力指標実績値と、の関係を示す処理用過去材実績情報を記憶する記憶部から、前記処理対象の帯状材の前記帯状材情報に対応する前記処理用過去材張力指標実績値を取得する、請求項1~3のいずれか1項に記載の巻取制御装置。
【請求項5】
前記帯状材情報は、前記巻取装置で巻き取られた帯状材の材質、板幅、板厚、および、当該帯状材の搬送中の搬送速度の値を含む、請求項4に記載の巻取制御装置。
【請求項6】
前記搬送路上を搬送中の前記処理対象の帯状材の張力指標の実績値である処理材張力指標実績値を取得する処理材張力指標実績取得部を備え、
前記ピンチロール制御部は、前記処理用過去材張力指標実績取得部により取得された前記処理用過去材張力指標実績値と、前記処理材張力指標実績取得部により取得された前記処理材張力指標実績値と、に基づいて、前記後端側制御期間における前記ピンチロールの動作を制御する、請求項1~5のいずれか1項に記載の巻取制御装置。
【請求項7】
前記張力指標は、前記ピンチロールを駆動するモータの定格電流に対する動作電流の比で定められる負荷率である、請求項1~6のいずれか1項に記載の巻取制御装置。
【請求項8】
前記張力指標は、前記ピンチロールと前記拘束装置との間の帯状材の張力であり、
前記ピンチロールと前記拘束装置との間の帯状材の張力は、前記ピンチロールを駆動するモータの動作電流に基づいて算出される、請求項1~6のいずれか1項に記載の巻取制御装置。
【請求項9】
前記拘束装置は、帯状材を圧延する圧延機を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の巻取制御装置。
【請求項10】
前記後端側制御期間は、前記搬送路上を搬送中の前記処理対象の帯状材の後端が、前記圧延機内の前記搬送路上の所定の位置または前記圧延機よりも上流側の前記搬送路上の所定の位置を通過したタイミングからの期間であり、
前記所定の位置は、複数の帯状材において共通の位置である、請求項9に記載の巻取制御装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の巻取制御装置で取得される前記処理用過去材張力指標実績値を求めて記憶する巻取実績蓄積装置であって、
帯状材における前記張力指標の実績値である蓄積用過去材張力指標実績値を取得する蓄積用過去材張力指標実績取得部と、
前記蓄積用過去材張力指標実績値を示す帯状材における前記巻姿指標の値を取得する巻姿指標取得部と、
前記蓄積用過去材張力指標実績取得部により取得された前記蓄積用過去材張力指標実績値と、当該蓄積用過去材張力指標実績値を示す帯状材における前記巻姿指標の値と、に基づいて、前記処理用過去材張力指標実績値を決定する処理用過去材張力指標実績決定部と、
前記処理用過去材張力指標実績決定部により決定された前記処理用過去材張力指標実績値と、当該処理用過去材張力指標実績値を示す帯状材に関する情報である帯状材情報と、の関係を示す処理用過去材実績情報を記憶する記憶部と、
を備える巻取実績蓄積装置。
【請求項12】
前記記憶部は、種類が相互に異なる複数の前記帯状材のそれぞれについて、前記処理用過去材実績情報を記憶する、請求項11に記載の巻取実績蓄積装置。
【請求項13】
帯状材を拘束しながら搬送させる拘束装置と、前記拘束装置を通過した帯状材を巻き取る巻取装置と、の間の位置に設置されたピンチロールの動作を制御する巻取制御方法であって、
前記巻取装置で過去に巻き取られた帯状材の巻姿に関する指標である巻姿指標の値に基づいて定められた当該帯状材における張力指標の実績値である処理用過去材張力指標実績値の中から、前記拘束装置、前記巻取装置、および前記ピンチロールを備える処理ラインにおいて処理対象の帯状材に対応する処理用過去材張力指標実績値を取得する処理用過去材張力指標実績取得工程と、
前記処理対象の帯状材が搬送路上で搬送されているときの前記ピンチロールの動作を制御するピンチロール制御工程と、
を備え、
前記張力指標は、前記拘束装置と前記ピンチロールとの間の帯状材の張力、または、前記ピンチロールと前記拘束装置との間の帯状材の張力に影響を与える物理量であり、
前記ピンチロール制御工程は、前記処理用過去材張力指標実績取得工程により取得された前記処理用過去材張力指標実績値を用いて、前記処理対象の帯状材が前記拘束装置による拘束から解放されるタイミングから前記ピンチロールを通過するまでの期間を含む後端側制御期間における前記ピンチロールの動作を制御する、巻取制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載の巻取制御方法で取得される前記処理用過去材張力指標実績値を求めて記憶する巻取実績蓄積方法であって、
帯状材における前記張力指標の実績値である蓄積用過去材張力指標実績値を取得する蓄積用過去材張力指標実績取得工程と、
前記蓄積用過去材張力指標実績値を示す帯状材における前記巻姿指標の値を取得する巻姿指標取得工程と、
前記蓄積用過去材張力指標実績取得工程により取得された前記蓄積用過去材張力指標実績値と、当該蓄積用過去材張力指標実績値を示す帯状材における前記巻姿指標の値と、に基づいて、前記処理用過去材張力指標実績値を決定する処理用過去材張力指標実績決定工程と、
前記処理用過去材張力指標実績決定工程により決定された前記処理用過去材張力指標実績値と、当該処理用過去材張力指標実績値を示す帯状材に関する情報である帯状材情報と、の関係を示す処理用過去材実績情報を記憶する記憶工程と、
を備える巻取実績蓄積方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか1項に記載の巻取制御装置の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項11または12に記載の巻取実績蓄積装置の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取制御装置、巻取実績蓄積装置、巻取制御方法、巻取実績蓄積方法、およびプログラムに関し、特に、帯状材を巻き取るために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
帯状材を処理するために、拘束装置により拘束された状態で帯状材を搬送し、当該拘束装置による拘束から解放された後に、当該帯状材を巻取装置で巻き取ることが行われる。例えば、熱延鋼帯などの鋼帯は、仕上圧延機などの圧延機で圧延された後、コイラー(マンドレル)にコイル状に巻き取られる(以下、コイル状に巻き取られた帯状材を、必要に応じてコイルとも呼ぶ)。このように帯状材をコイル状に巻き取るに際し、圧延機とコイラーとの間に設置されたピンチロールにより帯状材に張力が付与されるようにする。帯状材の後端が圧延機を通過すると、圧延機とコイラーとの間において帯状材には張力が付与されなくなり、帯状材は圧延機による拘束から解放される。したがって、帯状材が蛇行する虞がある。帯状材が蛇行すると、例えば、ピンチロールの手前に配置されたサイドガイドに帯状材が接触することにより、帯状材の搬送の停止などの通板トラブルが生じたり、コイルの端面が揃わずにコイルの巻姿の乱れ(いわゆるテレスコープ(テレスコ))や絞りが生じたりする虞がある。このため、圧延機による拘束から解放されている状態の帯状材を巻き取るに際し、ピンチロールを適切に制御することが求められる。
【0003】
特許文献1には、金属帯の後端が仕上圧延機を抜けた後、ピンチロールを駆動するモータの電流の実績値をピンチロールから金属帯に付与される張力に換算し、換算した張力と張力指令値との差に基づいてピンチロールのギャップを調整することが開示されている。
特許文献2には、ピンチロールの入側にルーパを設置すると共にルーパに張力検出器を設置し、張力検出器で測定した鋼帯の張力の所定値からの偏差に基づくピンチロールの速度指令を算出し、ピンチロールの速度指令と実績速度との偏差に基づいてピンチロールを駆動するモータの電流指令を算出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4622488号公報
【特許文献2】特許第5838534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、帯状材を搬送しているときのピンチロールを駆動するモータの電流の実績値に基づいて、当該帯状材の張力を制御する。したがって、圧延機による拘束から解放されている帯状材の張力の推定精度が低くなる虞がある。また、特許文献2に記載の技術では、圧延機による拘束から解放されている状態の帯状材を巻き取るに際し、圧延機より下流側(ピンチロールの入側)に張力検出用のルーパなどの設備の追加が必要になる。
以上のように特許文献1~2に記載の技術では、拘束装置による拘束から解放された後の帯状材の蛇行の抑制を大掛かりな設備を用いることなく実現することができない。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、拘束装置による拘束から解放された後の帯状材の蛇行の抑制を大掛かりな設備を用いることなく実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の巻取制御装置は、帯状材を拘束しながら搬送させる拘束装置と、前記拘束装置を通過した帯状材を巻き取る巻取装置と、の間の位置に設置されたピンチロールの動作を制御する巻取制御装置であって、前記巻取装置で過去に巻き取られた帯状材の巻姿に関する指標である巻姿指標の値に基づいて定められた当該帯状材における張力指標の実績値である処理用過去材張力指標実績値の中から、前記拘束装置、前記巻取装置、および前記ピンチロールを備える処理ラインにおいて処理対象の帯状材に対応する処理用過去材張力指標実績値を取得する処理用過去材張力指標実績取得部と、前記処理対象の帯状材が搬送路上で搬送されているときの前記ピンチロールの動作を制御するピンチロール制御部と、を備え、前記張力指標は、前記拘束装置と前記ピンチロールとの間の帯状材の張力、または、前記ピンチロールと前記拘束装置との間の帯状材の張力に影響を与える物理量であり、前記ピンチロール制御部は、前記処理用過去材張力指標実績取得部により取得された前記処理用過去材張力指標実績値を用いて、前記処理対象の帯状材が前記拘束装置による拘束から解放されるタイミングから前記ピンチロールを通過するまでの期間を含む後端側制御期間における前記ピンチロールの動作を制御する。
本発明の巻取実績蓄積装置は、前記巻取制御装置で取得される前記処理用過去材張力指標実績値を求めて記憶する巻取実績蓄積装置であって、帯状材における前記張力指標の実績値である蓄積用過去材張力指標実績値を取得する蓄積用過去材張力指標実績取得部と、前記蓄積用過去材張力指標実績値を示す帯状材における前記巻姿指標の値を取得する巻姿指標取得部と、前記蓄積用過去材張力指標実績取得部により取得された前記蓄積用過去材張力指標実績値と、当該蓄積用過去材張力指標実績値を示す帯状材における前記巻姿指標の値と、に基づいて、前記処理用過去材張力指標実績値を決定する処理用過去材張力指標実績決定部と、前記処理用過去材張力指標実績決定部により決定された前記処理用過去材張力指標実績値と、当該処理用過去材張力指標実績値を示す帯状材に関する情報である帯状材情報と、の関係を示す処理用過去材実績情報を記憶する記憶部と、を備える。
【0008】
本発明の巻取制御方法は、帯状材を拘束しながら搬送させる拘束装置と、前記拘束装置を通過した帯状材を巻き取る巻取装置と、の間の位置に設置されたピンチロールの動作を制御する巻取制御方法であって、前記巻取装置で過去に巻き取られた帯状材の巻姿に関する指標である巻姿指標の値に基づいて定められた当該帯状材における張力指標の実績値である処理用過去材張力指標実績値の中から、前記拘束装置、前記巻取装置、および前記ピンチロールを備える処理ラインにおいて処理対象の帯状材に対応する処理用過去材張力指標実績値を取得する処理用過去材張力指標実績取得工程と、前記処理対象の帯状材が搬送路上で搬送されているときの前記ピンチロールの動作を制御するピンチロール制御工程と、を備え、前記張力指標は、前記拘束装置と前記ピンチロールとの間の帯状材の張力、または、前記ピンチロールと前記拘束装置との間の帯状材の張力に影響を与える物理量であり、前記ピンチロール制御工程は、前記処理用過去材張力指標実績取得工程により取得された前記処理用過去材張力指標実績値を用いて、前記処理対象の帯状材が前記拘束装置による拘束から解放されるタイミングから前記ピンチロールを通過するまでの期間を含む後端側制御期間における前記ピンチロールの動作を制御する。
本発明の巻取実績蓄積方法は、前記巻取制御方法で取得される前記処理用過去材張力指標実績値を求めて記憶する巻取実績蓄積方法であって、帯状材における前記張力指標の実績値である蓄積用過去材張力指標実績値を取得する蓄積用過去材張力指標実績取得工程と、前記蓄積用過去材張力指標実績値を示す帯状材における前記巻姿指標の値を取得する巻姿指標取得工程と、前記蓄積用過去材張力指標実績取得工程により取得された前記蓄積用過去材張力指標実績値と、当該蓄積用過去材張力指標実績値を示す帯状材における前記巻姿指標の値と、に基づいて、前記処理用過去材張力指標実績値を決定する処理用過去材張力指標実績決定工程と、前記処理用過去材張力指標実績決定工程により決定された前記処理用過去材張力指標実績値と、当該処理用過去材張力指標実績値を示す帯状材に関する情報である帯状材情報と、の関係を示す処理用過去材実績情報を記憶する記憶工程と、を備える。
【0009】
本発明のプログラムの第1の例は、前記巻取制御装置の各部としてコンピュータを機能させる。
本発明のプログラムの第2の例は、前記巻取実績蓄積装置の各部としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、拘束装置による拘束から解放された後の帯状材の蛇行の抑制を大掛かりな設備を用いることなく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】熱間圧延ラインの概略構成の一例を示す図である。
図2】巻取実績蓄積装置の機能的な構成の一例を示す図である。
図3】巻取実績蓄積装置が行う処理の一例を説明する図である。
図4】ピンチロールモータ負荷率と時間との関係の一例を示す図である。
図5】巻取制御装置の機能的な構成の一例を示す図である。
図6】処理用過去材実績情報を蓄積する方法の一例を説明するフローチャートである。
図7】処理用過去材実績情報を更新する方法の一例を説明するフローチャートである。
図8】巻取制御方法の一例を説明するフローチャートである。
図9】ピンチロール張力と時間との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。本発明が以下の実施形態に限定されないことは、本実施形態の説明において随時説明する変形例および後述する[変形例]の欄などで説明する通りである。
なお、長さ、位置、大きさ、間隔など、比較対象が同じであることは、厳密に同じである場合の他、発明の主旨を逸脱しない範囲で異なるもの(例えば、設計時に定められる公差の範囲内で異なるもの)も含むものとする。また、各図において、説明および表記の都合上、構成の一部を省略および簡略化している。
【0013】
[熱間圧延ラインの概要]
図1は、熱間圧延ラインの概略構成の一例を示す図である。なお、図1に示すx-y-z座標は、方向を説明するために示すものである。x-y-z座標のx軸を示す記号(白丸(〇)の中に黒丸(●)が付された記号)は、紙面の奥側から手前側に向かう方向であることを示し、この方向がx軸の正の方向であることを示す。
【0014】
図1において、仕上圧延機10は、不図示の粗圧延機で粗圧延され、不図示の搬送ローラを用いて搬送路R上を搬送中の鋼帯Mを、複数の圧延スタンド(図1に示す例では7台の圧延スタンドF1~F7)により連続的に仕上げ圧延するタンデム圧延機である。なお、図1では、y軸の正の方向(紙面に向かって左から右)に鋼帯Mが搬送される場合を例示する。すなわち、図1に示す熱間圧延ラインでは、下流側がy軸の正の方向側であり、上流側がy軸の負の方向側である場合を例示する。また、図1において、鋼帯Mが存在する位置においては鋼帯Mと搬送路Rとは一致している(一点鎖線で示す搬送路Rは実線で示す鋼帯Mと重なる)。
【0015】
タンデム圧延機を構成する各圧延スタンドF1~F7には、圧下装置11a~11gと、ロードセル12a~12gとが設置されている。
圧下装置11a~11gは、圧延スタンドF1~F7により仕上げ圧延される際の鋼帯Mの圧下位置を調整する。
ロードセル12a~12gは、鋼帯Mが圧延スタンドF1~F7の上下のワークロールの間を通過して圧延されるときに生じる圧延荷重を測定する。
【0016】
なお、図1では、圧延スタンドF1~F7が7台である場合を例示するが、圧延スタンドの数は7台に限定されない。また、図1では、各圧延スタンドF1~F7の上側に圧下装置11a~11gおよびロードセル12a~12gが設置されている場合を例示する。しかしながら、圧下装置11a~11gおよびロードセル12a~12gの配置は図1に示す配置に限定されない。例えば、各圧延スタンドF1~F7の下側に圧下装置11a~11gおよびロードセル12a~12gが設置されてもよい。また、圧延スタンドF1~F7の上側と下側の双方にロードセル12a~12gが設置されていてもよい。
【0017】
図1において、鋼帯Mの後端が圧延スタンドF1~F7を通過するまでは、当該鋼帯Mは、当該圧延スタンドF1~F7の上下のワークロールにより拘束される(自由に動かなくなる)。本実施形態では、鋼帯Mが帯状材の一例であり、仕上圧延機10が帯状材の動きを拘束する拘束装置の一例である場合を例示する。
【0018】
HMD(Hot Metal Detector)20は、不図示の粗圧延機と仕上圧延機10との間の位置に設置される。HMD20は、赤外線の受光器を備える。HMD20は、高温の鋼帯Mから発せられる赤外線の受光器における受光状態に基づいて、鋼帯Mの先端および後端を検知する。例えば、HMD20は、赤外線の受光を検知していない状態から検知した状態に変化すると、鋼帯Mの先端を検知したと判定して、鋼帯Mの先端がHMD20を通過したことを示す検知信号を出力する。また、HMD20は、赤外線の受光を検知している状態から検知した状態に変化していない状態に変化すると、鋼帯Mの後端を検知したと判定して、鋼帯Mの後端がHMD20を通過した(抜けた)ことを示す検知信号を出力する。なお、HMD20は、赤外線による信号強度が閾値を上回っている場合に、赤外線の受光を検知しているとし、赤外線による信号強度が閾値を下回っている場合に、赤外線の受光を検知していないものとしてもよい。鋼帯Mの先端や後端が或る設備(HMD20など)を通過する(抜ける)とは、鋼帯Mの先端や後端が当該設備の搬送方向(搬送路Rに沿う方向)における設置位置を通過する(抜ける)ことを指し、図1に示す例では、鋼帯Mの先端や後端が当該設備のy座標を通過することを指す。また、設備の設置位置とは、当該設備が鋼帯Mに対する処理(例えば、先端および尾端の検知や圧延)を実行する位置を指すものとする。
【0019】
コイラー30は、熱間圧延ラインの最下流の位置に設置される。コイラー30は、マンドレル31を備える。仕上圧延機10で仕上げ圧延された鋼帯Mは、マンドレル31に巻き付けられてコイル状に巻き取られる。以下の説明では、コイル状に巻き取られた鋼帯Mを、必要に応じてコイルと呼ぶ。本実施形態では、コイラー30が帯状材を巻き取る巻取装置の一例である場合を例示する。
【0020】
ピンチロール40は、仕上圧延機10と、コイラー30との間の位置に設置される。ピンチロール40は、一対の上ロール41および下ロール42を備える。ピンチロール40は、上ロール41および下ロール42の間の間隔(ギャップ)を調整し、搬送路R上を搬送中の鋼帯Mに対して張力を付与する。
【0021】
ピンチロール40の上ロール41には上ピンチロールモータ43が取り付けられている。ピンチロール40の下ロール42には下ピンチロールモータ44が取り付けられている。上ピンチロールモータ43は、上ロール41を回転させるためのモータである。下ピンチロールモータ44は下ロール42を回転させるためのモータである。
【0022】
上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44の動作は、不図示の制御装置により制御される。当該制御装置は、例えば、上ロール41および下ロール42の回転速度を制御する速度制御を実行する。例えば、当該制御装置は、上ロール41および下ロール42の回転速度が、仕上圧延機10を通過した鋼帯Mの搬送速度の実績値に1を上回るリード率を乗算した値に対応する速度になるように、上ロール41および下ロール42の回転速度を制御する。当該制御装置による上ロール41および下ロール42の制御は、公知の技術で実現され、このような制御に限定されない。
【0023】
また、ピンチロール40には、圧下装置45と、ロードセル46とが設置されている。
圧下装置45は、ピンチロール40(上ロール41および下ロール42の間)を通過する際の鋼帯Mの圧下位置(ギャップ)を調整する。
ロードセル46は、ピンチロール40(上ロール41および下ロール42の間)を通過している鋼帯Mに付与している荷重を測定する。
【0024】
なお、図1では、仕上圧延機10とコイラー30との間の位置に設置されるピンチロール40が1台である場合を例示する。しかしながら、仕上圧延機10とコイラー30との間の位置に設置されるピンチロールの数は1台に限定されず、2台以上であってもよい。また、図1では、ピンチロール40の上側に圧下装置45およびロードセル46が設置されている場合を例示する。しかしながら、圧下装置45およびロードセル46の配置は図1に示すものに限定されない。
【0025】
サイドガイド50は、仕上圧延機10と、ピンチロール40との間に設置される。サイドガイド50は、搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの幅方向(x軸方向)の位置を調整するためのものである。
以上のように本実施形態では、拘束装置、巻取装置、およびピンチロールを備える処理ラインが熱間圧延ラインである場合を例示する。なお、熱間圧延ライン自体は、公知の技術で実現され、図1に示す構成に限定されない。
【0026】
本実施形態では、以上の熱間圧延ラインにおいて、鋼帯Mが仕上圧延機10による拘束から解放されることにより蛇行することを抑制するために、巻取実績蓄積装置100および巻取制御装置200を用いる場合を例示する。本実施形態では、巻取実績蓄積装置100が、過去の鋼帯Mの圧延実績から得られる張力指標の実績値を記憶する場合を例示する。また、巻取制御装置200が、圧延対象の鋼帯Mにおける張力指標が、巻取実績蓄積装置100に記憶された張力指標の実績値に合うようにピンチロール40の動作を制御する場合を例示する。ここで、張力指標は、帯状材を拘束する拘束装置とピンチロールとの間の帯状材の張力、または、拘束装置とピンチロールとの間の帯状材の張力に影響を与える物理量である。以下に、巻取実績蓄積装置100および巻取制御装置200の一例を説明する。
【0027】
[巻取実績蓄積装置100]
図2は、巻取実績蓄積装置100の機能的な構成の一例を示す図である。巻取実績蓄積装置100は、巻取装置で巻き取られた帯状材に関する情報である帯状材情報と、当該帯状材の巻姿に関する指標である巻姿指標の値に基づいて定められた当該帯状材における張力指標の実績値である処理用過去材張力指標実績値と、の関係を示す過去材実績情報を求めて記憶する装置である。
【0028】
前述したように本実施形態では、帯状材が、鋼帯Mであり、巻取装置がコイラー30である場合を例示する。この場合、巻取装置で巻き取られた帯状材は、コイル(コイル状に巻き取られた帯状材)である。本実施形態では、必要に応じて帯状材情報をコイル情報とも呼ぶ。
【0029】
また、前述したように張力指標は、拘束装置とピンチロールとの間の帯状材の張力、または、拘束装置とピンチロールとの間の帯状材の張力に影響を与える物理量であり、本実施形態では、拘束装置が仕上圧延機10である場合を例示する。したがって、張力指標は、仕上圧延機10とピンチロール40との間の搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの張力、または、仕上圧延機10とピンチロール40との間の搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの張力に影響を与える物理量である。
【0030】
そして、本実施形態では、張力指標が、仕上圧延機10とピンチロール40との間の搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの張力に影響を与える物理量である場合を例示する。より具体的には、張力指標が、ピンチロール40を駆動するモータ(上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44)の負荷率である場合を例示する。負荷率は、モータの定格電流に対する、モータの動作電流の比(モータの動作電流/モータの定格電流)で表される。なお、負荷率は、百分率で表記されてもよい。モータの動作電流は、例えば、モータのステータコイルに流れる電流の各時刻における実効値である。
【0031】
本実施形態では、或る時刻における上ピンチロールモータ43の負荷率と、当該時刻における下ピンチロールモータ44の負荷率との算術平均値が、ピンチロール40を駆動するモータ(上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44)の当該時刻における負荷率である場合を例示する。以下の説明では、ピンチロール40を駆動するモータ(上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44)の負荷率を、必要に応じて、ピンチロールモータ負荷率とも呼ぶ。
【0032】
ピンチロールモータ負荷率が大きいことは、上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44の動作電流が大きいことに対応する。上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44の動作電流が大きいことは、上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44の回転速度が速いことに対応する。上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44の回転速度が仕上圧延機10(圧延スタンドF1~F7のワークロール)の回転速度よりも速いほど、仕上圧延機10とピンチロール40との間の搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの張力は大きくなる。したがって、ピンチロールモータ負荷率は、仕上圧延機10とピンチロール40との間の搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの張力に影響を与える。
【0033】
巻取実績蓄積装置100のハードウェアは、例えば、プロセッサ、主記憶装置、外部記憶装置、および入出力装置を備える情報処理装置、PLC(Programmable Logic Controller)、または専用のハードウェアを用いることにより実現される。図3は、巻取実績蓄積装置100が行う処理の一例を説明する図である。以下に、図2および図3を参照しながら、巻取実績蓄積装置100が備える機能の一例を説明する。
【0034】
<蓄積時帯状材情報取得部110>
蓄積時帯状材情報取得部110は、巻取装置で巻き取られた帯状材に関する情報である帯状材情報を取得する。前述したように本実施形態では帯状材情報をコイル情報とも呼ぶ。以下の説明では、後述する巻取制御装置200の処理時帯状材情報取得部210が取得するコイル情報(処理時コイル情報)と区別するために、蓄積時帯状材情報取得部110が取得するコイル情報を、必要に応じて、蓄積時コイル情報とも呼ぶ。
【0035】
蓄積時コイル情報には、巻取装置で巻き取られた鋼帯M(コイル)の属性を示す属性情報が含まれる。また、蓄積時コイル情報には、搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの状態を示す搬送中帯状材状態情報が含まれてもよい。本実施形態では、コイルの板幅、板厚、および材質を示す情報が、属性情報に含まれ、鋼帯Mの搬送速度が、圧延時状態情報に含まれる場合を例示する。すなわち、本実施形態では、蓄積時コイル情報には、コイルの板幅、板厚、および材質と、鋼帯Mの搬送速度とが含まれる場合を例示する。鋼帯Mの搬送速度には、例えば、先端がHMD20を通過してから後端がコイラー30で巻き取られるまでの鋼材Mの搬送速度が含まれる。また、鋼帯Mの搬送速度は、目標値であっても測定値であっても良い。また、蓄積時コイル情報には、コイルの識別情報が付加されているものとする。
【0036】
本実施形態では、蓄積時帯状材情報取得部110が、熱間圧延ラインの操業を管理する上位のコンピュータから蓄積時コイル情報を受信する場合を例示する。しかしながら、蓄積時コイル情報の取得形態は、外部装置からの受信に限定されない。例えば、蓄積時帯状材情報取得部110は、巻取実績蓄積装置100のユーザインターフェースに対する蓄積時コイル情報の入力操作により蓄積時コイル情報を取得しても良い。また、蓄積時帯状材情報取得部110は、可搬型の記憶媒体に記憶された蓄積時コイル情報を読み出すことにより蓄積時コイル情報を取得しても良い。
【0037】
蓄積時帯状材情報取得部110は、図3に示す全コイル実績記憶テーブル310のコイル情報の欄に、蓄積時コイル情報を記憶する。図3において、全コイル実績記憶テーブル310の傍らに示す「コイル情報A~N」は、相互に異なる複数の蓄積時コイル情報として複数種類(N種類)のコイル情報が記憶されていることを示す。ここで、蓄積時コイル情報が異なるとは、蓄積時コイル情報の項目(板厚、板幅、材質、搬送速度)の少なくとも1つが異なることを指す。なお、A~Nは、蓄積時コイル情報として複数種類の情報があることを示すために便宜的に付したものであり、全コイル実績記憶テーブル310に記憶される蓄積時コイル情報は14種に限定されない。蓄積時帯状材情報取得部110は、熱間圧延ラインで圧延される鋼帯Mとして想定される全ての種類の鋼帯Mについての蓄積時コイル情報を取得するのが好ましい。
【0038】
<蓄積用過去材張力指標実績取得部120>
蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、帯状材における張力指標の実績値である蓄積用過去材張力指標実績値を取得する。前述したように本実施形態では、張力指標がピンチロールモータ負荷率である場合を例示する。したがって、本実施形態では、蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、ピンチロールモータ負荷率の実績値を取得する場合を例示する。
【0039】
前述したようにピンチロールモータ負荷率を算出するために、ピンチロール40を駆動するモータ(上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44)の動作電流および定格電流が必要である。
蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、ピンチロール40を駆動するモータ(上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44)の動作電流の実効値を取得する。また、蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、ピンチロール40を駆動するモータ(上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44)の定格電流を予め記憶している。蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、ピンチロール40を駆動するモータ(上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44)の動作電流の実効値および定格電流を用いて、前述したようにしてピンチロールモータ負荷率を算出する。蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、後端側制御期間において、ピンチロール40を駆動するモータ(上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44)の動作電流の実効値を時々刻々と(例えば所定の周期で)取得する。
【0040】
図4は、ピンチロールモータ負荷率と時間との関係の一例を示す図である。図4において、HMD抜けは、鋼帯Mの後端がHMD20を通過するタイミングであることを示す。F7抜けは、鋼帯Mの後端が仕上圧延機10(圧延スタンドF7)を通過するタイミングであることを示す。P/R抜けは、鋼帯Mの後端がピンチロール40を通過するタイミングであることを示す。
【0041】
後端側制御期間は、後述する巻取制御装置200において、帯状材が拘束装置による拘束から解放されることにより帯状材が蛇行することを抑制するための制御が実行される期間である。後端側制御期間は、帯状材が拘束装置による拘束から解放されるタイミングから、当該帯状体の後端がピンチロール40を通過するまでの期間を含む期間である。本実施形態では、帯状材が拘束装置による拘束から解放されるタイミングは、鋼帯Mの後端が仕上圧延機10(圧延スタンドF7)を通過するタイミングである。
【0042】
後端側制御期間の開始タイミングは、帯状材の巻取装置による巻き取りが開始された後のタイミングであって、帯状材が拘束装置による拘束から解放されるタイミングよりも前であれば良い。図4において本実施形態では、鋼帯Mの後端がHMD20を通過するタイミングtsが、後端側制御期間の開始タイミングである場合を例示する。しかしながら、後端側制御期間の開始タイミングは、鋼帯Mの後端がHMD20を通過するタイミングtsに限定されない。後端側制御期間の開始タイミングは、例えば、鋼帯Mの後端が仕上圧延機10内の所定の位置(例えば、圧延スタンドF1またはF2)を通過するタイミングであっても良い。なお、鋼帯Mの後端が圧延スタンドF1~F7を通過したか否かは、例えば、ロードセル12a~12gで測定される圧延荷重が閾値未満になったか否かによって判定される。
【0043】
また、後端側制御期間の終了のタイミングは、帯状材の巻取装置による巻き取りが終了するタイミングよりも前であれば良い。図4において本実施形態では、鋼帯Mの後端がピンチロール40を通過するタイミングteが、後端側制御期間の終了タイミングである場合を例示する。しかしながら、後端側制御期間の終了タイミングは、鋼帯Mの後端がピンチロール40を通過するタイミングteに限定されない。後端側制御期間の終了タイミングは、例えば、鋼帯Mの後端がピンチロール40を通過するタイミングteから所定時間が経過したタイミングであっても良い。所定時間として、例えば、鋼帯Mの後端がピンチロール40を通過した後、ピンチロールモータ負荷率が閾値未満になるまでの時間として想定される時間が挙げられる。
【0044】
蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、ピンチロール40を駆動するモータ(上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44)の動作電流の実効値および定格電流に基づいて、当該実効値を取得した各時刻におけるピンチロールモータ負荷率を算出する。このようにすることで、後端側制御期間の各時刻におけるピンチロールモータ負荷率の実績値が、時系列データとして算出される。以下の説明では、このようにして算出される、後端側制御期間の各時刻におけるピンチロールモータ負荷率の実績値を、必要に応じて、蓄積用過去材負荷率実績値とも呼ぶ。
【0045】
また、蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、前述した上位のコンピュータから、コイルの操業スケジュールを取得する。操業スケジュールには、例えば、コイルの識別情報と、当該コイルの製造予定時刻または製造順を示す情報と、が含まれる。
【0046】
蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、操業スケジュールに基づいて、蓄積用過去材負荷率実績値を算出した際に搬送路R上を搬送中の鋼帯Mから得られるコイルの識別情報を特定する。そして、蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、特定した識別情報と同一の識別情報が付加されている蓄積時コイル情報に関連付けて、当該蓄積用過去材負荷率実績値を、全コイル実績記憶テーブル310の負荷率実績値の欄に記憶する。
【0047】
蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、以上のようにして蓄積用過去材負荷率実績値を算出して蓄積時コイル情報と関連付けて記憶することを、蓄積時帯状材情報取得部110で取得される複数種類(図3のA~N種)の蓄積時コイル情報のそれぞれについて実行する。さらに、蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、以上のようにして蓄積時コイル情報を算出して蓄積用過去材負荷率実績値と関連付けて記憶することを、同じ種類の複数の蓄積時コイル情報のそれぞれについて実行する。これにより複数種類(A~N種)の複数の蓄積時コイル情報のそれぞれに対応する蓄積用過去材負荷率実績値が全コイル実績記憶テーブル310の負荷率実績値の欄に記憶される。
【0048】
<巻姿指標取得部130>
巻姿指標取得部130は、巻取装置で巻き取られた帯状材の巻姿に関する指標である巻姿指標の値を取得する。本実施形態では、巻姿指標がテレスコ量である場合を例示する。テレスコとは、コイルの板幅方向における端面の段差であり、テレスコ量とは、その段差の量である。本実施形態では、巻姿指標取得部130が、テレスコ計により測定されたテレスコ量を取得する場合を例示する。
【0049】
テレスコ計は、例えば、光学式の距離計(例えばレーザ距離計)を備える。このようなテレスコ計による測定を実行する場合には、例えば、以下のようにする。まず、距離計と、コイルの板幅方向における一端面とが間隔を有して相互に対向するように、距離計とコイルとを配置する。そして、テレスコ計は、距離計からコイル(コイルの板幅方向における一端面)までの距離を、コイルの径方向に沿う複数の位置において測定する。そして、テレスコ計は、このようにして測定される距離から、コイルの板幅方向における一端面の凹凸量を算出する。このようにする場合、当該凹凸量がテレスコ量になる。テレスコ量は、例えば、複数の位置のそれぞれにおける当該凹凸量であっても、複数の位置の凹凸量の代表値(最小値、最大値、または中央値)であっても良い。
【0050】
また、テレスコ計は、コイルの直径よりも長い間隔を有して対向する位置に設置された投光器および受光器を備えるものであっても良い。このようなテレスコ計による測定を実行する場合には、例えば、以下のようにする。まず、投光器から出力され受光器に入力される光の方向が、コイルの径方向と平行になるように(言い換えると、投光器から出力され受光器に入力される光の方向が、コイルの幅方向と垂直になるように)投光器と受光器とを相互に間隔を有して配置する。この際、投光器と受光器との間隔を、コイルの幅方向の長さよりも長くする。そして、このようにして配置された投光器および受光器の間の領域にコイルを一定速度で通過させる。
【0051】
このようにすると、受光器は、投光器および受光器の間の領域にコイルが存在しているときには、投光器から出力される光を入力しない。テレスコ計は、受光器が、投光器から出力される光を入力していない時間と、コイルの移動速度(前述した一定速度)との積を算出する。この積の値は、コイルの板幅方向における端面に段差がある場合の方が、ない場合よりも大きくなる。したがって、この積の値がテレスコ量になる。
【0052】
テレスコ計自体は、公知の技術で実現され、これらのものに限定されない。また、テレスコ量は、テレスコ計を用いずに測定されてもよい。例えば、オペレータが、メジャーなどの測定器具を用いてテレスコ量を測定しても良い。なお、テレスコ量は、コイラー30からコイルが取り外された後に測定されるが、コイラー30に取り付けられた状態で測定されても良い。
【0053】
本実施形態では、巻姿指標取得部130が、巻取実績蓄積装置100のユーザインターフェースに対するテレスコ量の入力操作により、テレスコ量と、当該テレスコ量を示すコイルの識別情報と、を取得する場合を例示する。しかしながら、テレスコ量の取得形態は、このような入力操作によるものに限定されない。例えば、巻姿指標取得部130は、テレスコ計または外部装置から、テレスコ量を受信することにより、テレスコ量を取得しても良い。このようにする場合、巻姿指標取得部130は、テレスコ量と共に当該テレスコ量を示すコイルの識別情報を取得しても良いし、取得したテレスコ量を示すコイルの識別情報を、前述した操業スケジュールに基づいて特定しても良い。
【0054】
巻姿指標取得部130は、以上のようにして取得したテレスコ量を示すコイルの識別情報と同一の識別情報が付加されている蓄積時コイル情報に関連付けて、当該テレスコ量の値を、全コイル実績記憶テーブル310のテレスコ量の欄に記憶する。前述したように、全コイル実績記憶テーブル310では、蓄積用過去材負荷率実績値も、蓄積時コイル情報に関連付けて記憶される。したがって、全コイル実績記憶テーブル310において、蓄積時コイル情報、蓄積用過去材負荷率実績値、およびテレスコ量の値が相互に関連付けられて同一のレコード(行)に記憶される。
【0055】
巻姿指標取得部130は、以上のようにしてテレスコ量を取得して蓄積時コイル情報と関連付けて記憶することを、蓄積時帯状材情報取得部110で取得される複数種類(図3のA~N種)の蓄積時コイル情報のそれぞれについて実行する。さらに、巻姿指標取得部130は、以上のようにしてテレスコ量を取得して蓄積時コイル情報と関連付けて記憶することを、同じ種類の複数の蓄積時コイル情報のそれぞれについて実行する。これにより複数種類(A~N種)の複数の蓄積時コイル情報のそれぞれに対応するテレスコ量の値が全コイル実績記憶テーブル310のテレスコ量の欄に記憶される。
【0056】
<処理用過去材張力指標実績決定部140、記憶部150>
処理用過去材張力指標実績決定部140は、蓄積用過去材張力指標実績値と、当該蓄積用過去材張力指標実績値を示す帯状材における巻姿指標の値とに基づいて、処理用過去材張力指標実績値を決定する。本実施形態では、処理用過去材張力指標実績決定部140が、全コイル実績記憶テーブル310に相互に関連付けられて記憶された、蓄積用過去材負荷率実績値およびテレスコ量に基づいて、処理用過去材負荷率実績値を決定する場合を例示する。処理用過去材負荷率実績値は、蓄積用過去材負荷率実績値に基づいて定められる、ピンチロールモータの負荷率の実績値である。処理用過去材張力指標実績決定部140における処理の具体例を以下に説明する。
【0057】
まず、処理用過去材張力指標実績決定部140は、全コイル実績記憶テーブル310から、同一の蓄積時コイル情報に関連付けられて記憶されている蓄積用過去材負荷率実績値およびテレスコ量を読み出し、コイル毎実績記憶テーブル320(320a、320n)に記憶する。図3に示す例では、処理用過去材張力指標実績決定部140は、A~N種の複数種類の蓄積時コイル情報のそれぞれについて、当該蓄積時コイル情報に関連付けられて記憶されている蓄積用過去材負荷率実績値およびテレスコ量を読み出し、当該蓄積時コイル情報と共に、当該蓄積時コイル情報に対応するコイル毎実績記憶テーブル320に記憶する。
【0058】
図3において、コイル毎実績記憶テーブル320aの傍らに示す「コイル情報A」は、コイル毎実績記憶テーブル320aが、全コイル実績記憶テーブル310において、A種の蓄積時コイル情報と、A種の蓄積時コイル情報に関連付けられて記憶されている蓄積用過去材負荷率実績値およびテレスコ量の値とが記憶されるテーブルであることを示す。同様に、コイル毎実績記憶テーブル320nの傍らに示す「コイル情報N」は、コイル毎実績記憶テーブル320nが、全コイル実績記憶テーブル310において、N種の蓄積時コイル情報と、N種の蓄積時コイル情報に関連付けられて記憶されている蓄積用過去材負荷率実績値およびテレスコ量とが記憶されるテーブルであることを示す。なお、図3では、表記の都合上、その他の種類の蓄積時コイル情報についてのコイル毎実績記憶テーブル320の図示を省略する。
【0059】
そして、処理用過去材張力指標実績決定部140は、1つのコイル毎実績記憶テーブル320(320a、320n)に記憶された、蓄積用過去材負荷率実績値およびテレスコ量の値に基づいて、処理用過去材負荷率実績値を、蓄積時コイル情報ごとに決定する。具体的に本実施形態では、処理用過去材張力指標実績決定部140が、1つのコイル毎実績記憶テーブル320(320a、320n)に記憶されたテレスコ量の最小値に関連付けて記憶されている蓄積用過去材負荷率実績値を、処理用過去材負荷率実績値として決定する場合を例示する。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、処理用過去材張力指標実績決定部140は、テレスコ計による測定誤差を考慮して定められた基準値以上の値の中から、テレスコ量の最小値を選択しても良い。
【0060】
また、処理用過去材張力指標実績決定部140は、1つのコイル毎実績記憶テーブル320(320a、320n)に記憶された、蓄積用過去材負荷率実績値およびテレスコ量の値を示す情報と、当該蓄積用過去材負荷率実績値を選択するためのGUI(Graphical User Interface)とを含む情報を、コンピュータディスプレイに表示させても良い。このようにする場合、オペレータは、コンピュータディスプレイに表示された蓄積用過去材負荷率実績値の中から所望の蓄積用過去材負荷率実績値を選択する。処理用過去材張力指標実績決定部140は、このようにして選択された蓄積用過去材負荷率実績値を処理用過去材負荷率実績値として決定しても良い。
【0061】
処理用過去材張力指標実績決定部140は、以上のようにして決定した処理用過去材負荷率実績値と、当該処理用過去材負荷率実績値(蓄積用過去材負荷率実績値)に関連付けれてコイル毎実績記憶テーブル320(320a、320n)に記憶されている蓄積時コイル情報およびテレスコ量の値を、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330(330a、330n)に記憶する。本実施形態では、処理用過去材張力指標実績決定部140が、同じ内容(同じ種類)の蓄積時コイル情報に対して、処理用過去材負荷率実績値(蓄積用過去材負荷率実績値)を1つだけ決定する場合を例示する。したがって、図3に示すように、1つのコイル毎実績記憶テーブル320(320a、320n)には、蓄積時コイル情報、処理用過去材負荷率実績値(蓄積用過去材負荷率実績値)、およびテレスコ量の値が1つずつ記憶される(すなわち、1つのコイル毎実績記憶テーブル320(320a、320n)のレコード(行)の数は1である)。
【0062】
処理用過去材張力指標実績決定部140は、以上のようにして処理用過去材負荷率実績値を決定し、当該処理用過去材負荷率実績値(蓄積用過去材負荷率実績値)と、当該処理用過去材負荷率実績値に関連付けれてコイル毎実績記憶テーブル320(320a、320n)に記憶されている蓄積時コイル情報およびテレスコ量の値とを、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330(330a、330n)に記憶することを、A~N種の複数種類の蓄積時コイル情報のそれぞれについて実行する。コイル毎処理用実績値記憶テーブル330(330a、330n)は、例えば、記憶部150に記憶される。なお、コイル毎実績記憶テーブル320(320a、320n)は、記憶部150に記憶されても、その他の記憶領域に記憶されても良い。このことは、全コイル実績記憶テーブル310についても同じである。
【0063】
図3において、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330aの傍らに示す「コイル情報A」は、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330aが、A種の蓄積時コイル情報における処理用過去材負荷率実績値を記憶するテーブルであることを示す。同様に、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330nの傍らに示す「コイル情報N」は、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330aが、N種の蓄積時コイル情報における処理用過去材負荷率実績値を記憶するテーブルであることを示す。なお、図3では、表記の都合上、その他の種類の蓄積時コイル情報についてのコイル毎処理用実績値記憶テーブル330の図示を省略する。
【0064】
以上のようにして、複数種類のコイル情報のそれぞれについて処理用過去材負荷率実績値が決定される。本実施形態では、コイル情報と処理用過去材負荷率実績値との関係を示す処理用過去材実績情報を、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330(330a、330n))に記憶する場合を例示する。しかしながら、コイル情報と処理用過去材負荷率実績値との関係を示す処理用過去材実績情報の形態は、このような形態に限定されない。例えば、処理用過去材実績情報は、コイル情報と処理用過去材負荷率実績値との関係式を含んでいても良い。
【0065】
<更新部160>
更新部160は、以上のようにしてコイル毎処理用実績値記憶テーブル330(330a、330n)が作成された後、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330(330a、330n)を更新する。
【0066】
更新部160は、例えば、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330(330a、330n)が作成された後に蓄積時帯状材情報取得部110により新たに取得された1つの蓄積時コイル情報について、蓄積用過去材張力指標実績取得部120による蓄積用過去材負荷率実績値による取得と、巻姿指標取得部130によるテレスコ量の値の取得とが実行されると起動する。更新部160は、新たに取得された1つの蓄積時コイル情報についてのテレスコ量の値が、当該蓄積時コイル情報に対応するコイル毎処理用実績値記憶テーブル330に格納されているテレスコ量の値よりも小さいか否かを判定する。この判定の結果、新たに取得された1つの蓄積時コイル情報についてのテレスコ量の値が、当該蓄積時コイル情報に対応するコイル毎処理用実績値記憶テーブル330に格納されているテレスコ量の値よりも小さい場合、更新部160は、当該コイル毎処理用実績値記憶テーブル330に記憶されている蓄積用過去材負荷率実績値およびテレスコ量の値を、当該新たに取得された蓄積用過去材負荷率実績値およびテレスコ量の値に更新する。
【0067】
<出力部170>
出力部170は、記憶部150(コイル毎処理用実績値記憶テーブル330(330a、330n))に記憶された処理用過去材負荷率実績値を出力する。本実施形態では、出力部170が、処理用過去材負荷率実績値を巻取制御装置200に送信する場合を例示する。しかしながら、処理用過去材負荷率実績値の出力形態は、このような形態に限定されない。例えば、出力部170は、処理用過去材負荷率実績値を示す情報をコンピュータディスプレイに表示させることにより出力しても良い。また、出力部170は、処理用過去材負荷率実績値を示す情報を可搬型の記憶媒体に記憶することにより出力しても良い。また、出力部170は、処理用過去材負荷率実績値を巻取制御装置200以外の外部装置に送信しても良い。すなわち、出力部170は、巻取制御装置200を直接の出力先として処理用過去材負荷率実績値を出力しなくても良い。
【0068】
本実施形態では、出力部170が、巻取制御装置200からの要求に応じて、処理用過去材負荷率実績値を出力する場合を例示する。この要求には、コイル情報を特定する情報が含まれているものとする。出力部170は、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330(330a、330n)のうち、巻取制御装置200から要求されたコイル情報についてのコイル毎処理用実績値記憶テーブル330に記憶されている処理用過去材負荷率実績値を出力する。ただし、出力部170は、巻取制御装置200からの要求の有無に関わらず、処理用過去材負荷率実績値を出力しても良い。
【0069】
[巻取制御装置200]
図5は、巻取制御装置200の機能的な構成の一例を示す図である。巻取制御装置200は、帯状材が搬送されているときのピンチロール40の動作を制御する。本実施形態では、巻取制御装置200が、ピンチロール40(上ロール41および下ロール42の間)のギャップ量を制御する場合を例示する。巻取制御装置200のハードウェアは、例えば、プロセッサ、主記憶装置、外部記憶装置、および入出力装置を備える情報処理装置、PLC(Programmable Logic Controller)、または専用のハードウェアを用いることにより実現される。以下に、巻取制御装置200が備える機能の一例を説明する。
【0070】
<処理時帯状材情報取得部210>
処理時帯状材情報取得部210は、処理対象の帯状材に関する情報である帯状材情報(コイル情報)を取得する。本実施形態では、前述した蓄積時帯状材情報取得部110で取得されるコイル情報(蓄積時コイル情報)と区別するために、処理時帯状材情報取得部210が取得するコイル情報を、必要に応じて、処理時コイル情報とも呼ぶ。処理時帯状材情報取得部210で取得される処理時コイル情報は、圧延対象の鋼帯Mに関する情報である。一方、蓄積時帯状材情報取得部110で取得される蓄積時コイル情報は、当該圧延対象の鋼帯Mよりも前に圧延された過去の鋼帯Mに関する情報である。蓄積時コイル情報および処理時コイル情報はこの点のみが異なる。すなわち、処理時コイル情報および蓄積時コイル情報の項目は同じである。<蓄積時帯状材情報取得部110>の欄で説明した例では、処理時コイル情報には、コイルの板幅、板厚、および材質と、鋼帯Mの搬送速度とが含まれる。また、処理時コイル情報には、圧延対象の鋼帯Mから製造されるコイルの識別情報が付加されているものとする。
【0071】
本実施形態では、処理時帯状材情報取得部210が、熱間圧延ラインの操業を管理する上位のコンピュータから処理時コイル情報を受信する場合を例示する。しかしながら、処理時コイル情報の取得形態は、外部装置からの受信に限定されない。例えば、処理時帯状材情報取得部210は、巻取制御装置200のユーザインターフェースに対する処理時コイル情報の入力操作により処理時コイル情報を取得しても良い。また、処理時帯状材情報取得部210は、可搬型の記憶媒体に記憶された処理時コイル情報を読み出すことにより処理時コイル情報を取得しても良い。
【0072】
<処理用過去材張力指標実績取得部220>
処理用過去材張力指標実績取得部220は、巻取装置で過去に巻き取られた帯状材における巻姿指標の値に基づいて定められた当該帯状材における張力指標の実績値である処理用過去材張力指標実績値の中から、処理ラインにおいて処理対象の帯状材に対応する処理用過去材張力指標実績値を取得する。前述したように本実施形態では、処理ラインが熱間圧延ラインであり、帯状材が鋼帯Mである場合を例示する。したがって本実施形態では、処理対象の帯状材は圧延対象の鋼帯Mになる。
【0073】
本実施形態では、処理用過去材張力指標実績取得部220が、巻取実績蓄積装置100(記憶部150)に記憶されているコイル毎処理用実績値記憶テーブル330(330a、330n)のうち、処理時帯状材情報取得部210により取得された処理時コイル情報により特定されるコイル情報(コイルの板幅、板厚、および材質と、鋼帯Mの搬送速度)に対応するコイル毎処理用実績値記憶テーブル330に記憶されている処理用過去材負荷率実績値を取得する場合を例示する。
【0074】
本実施形態では、処理時帯状材情報取得部210により取得された処理時コイル情報により特定されるコイル情報(処理時コイル情報)と、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330に記憶されているコイル情報(蓄積時コイル情報)とが同じである場合を例示する。しかしながら、処理時帯状材情報取得部210により取得された処理時コイル情報により特定されるコイル情報(処理時コイル情報)と、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330に記憶されているコイル情報(蓄積時コイル情報)とは異なっていても良い。
【0075】
例えば、コイル情報が相互に異なる鋼帯Mについて、同一の処理用過去材負荷率実績値を用いて後述するピンチロール制御部240による制御を実行しても、仕上圧延機10(圧延スタンドF7)を鋼帯Mの後端が通過した後の鋼帯Mの蛇行を抑制できるという知見が、過去の操業実績などから得られている場合、処理用過去材張力指標実績取得部220は、当該鋼帯Mに対して同一の処理用過去材負荷率実績値を取得しても良い。
【0076】
また、前述したように本実施形態では、処理用過去材張力指標実績取得部220が、処理用過去材負荷率実績値の取得を巻取実績蓄積装置100に要求する場合を例示する。このようにする場合、処理用過去材張力指標実績取得部220は、例えば、処理時帯状材情報取得部210により取得された処理時コイル情報を含めて、処理用過去材負荷率実績値の取得を巻取実績蓄積装置100に要求する。前述したように巻取実績蓄積装置100(出力部170)は、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330(330a、330n)のうち、巻取制御装置200から要求されたコイル情報(処理時コイル情報)のコイル毎処理用実績値記憶テーブル330に記憶されている処理用過去材負荷率実績値を出力する。
【0077】
しかしながら、処理用過去材負荷率実績値の取得形態は、このような形態に限定されない。処理用過去材張力指標実績取得部220は、例えば、全てのコイル情報についてのコイル毎処理用実績値記憶テーブル330(330a、330n)の情報を事前に取得しても良い。このようにする場合、処理用過去材張力指標実績取得部220は、処理時帯状材情報取得部210により取得された処理時コイル情報により特定されるコイル情報に対応する処理用過去材張力指標実績値を、事前に取得した情報から抽出しても良い。また、処理用過去材張力指標実績取得部220は、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330が更新される度に、更新されたコイル毎処理用実績値記憶テーブル330の情報を取得しても良い。
【0078】
<処理材張力指標実績取得部230>
処理材張力指標実績取得部230は、処理対象の帯状材の搬送中における張力指標の実績値である処理材張力指標実績値を取得する。前述したように本実施形態では、張力指標がピンチロールモータ負荷率である場合を例示する。したがって、本実施形態では、処理材張力指標実績取得部230は、圧延対象の鋼帯Mについて、少なくとも後端側制御期間の各時刻におけるピンチロールモータ負荷率の実績値を取得する。ピンチロールモータ負荷率の実績値の算出方法の具体例は、<蓄積用過去材張力指標実績取得部120>で説明した通りであるので、ここではその詳細な説明を省略する。以下の説明では、このようにして算出される、後端側制御期間の各時刻におけるピンチロールモータ負荷率の実績値を、必要に応じて、処理材負荷率実績値とも呼ぶ。処理材張力指標実績取得部230が、巻取制御装置200におけるピンチロール40の制御周期で処理材負荷率実績値を取得する場合を例示する。
【0079】
<ピンチロール制御部240>
ピンチロール制御部240は、帯状材が搬送されているときのピンチロール40の動作を制御する。前述したように本実施形態では、ピンチロール制御部240が、ピンチロール40(上ロール41および下ロール42の間)のギャップ量を制御する場合を例示する。より具体的に本実施形態では、ピンチロール制御部240が、PI制御を実行して、ピンチロールモータ負荷率の実績値が目標値に近づく(好ましくは一致)するようなピンチロール40の鋼帯Mに対する押力を算出してピンチロール40に設置されている圧下装置45に出力する場合を例示する。
【0080】
ピンチロール制御部240は、後端側制御期間以外の期間におけるピンチロール40(上ロール41および下ロール42の間)の制御の方法は特に限定されない。例えば、ピンチロール制御部240は、圧延対象の鋼帯Mの後端がHMD20を通過するまでは、ピンチロールモータ負荷率の目標値として、セットアップ計算により設定された目標値を用いたPI制御を実行することにより、ピンチロール40(上ロール41および下ロール42の間)のギャップ量を制御する。また、例えば、ピンチロール制御部240は、圧延対象の鋼帯Mの後端がピンチロール40を通過すると、ピンチロール40(上ロール41および下ロール42)を待機位置、または、次に圧延される鋼帯Mに対するセットアップ計算により設定された位置にする。ただし、後端側制御期間以外の期間におけるピンチロール40の制御方法は、公知の方法で実現して良く、これらの方法に限定されない。
【0081】
次に、後端側制御期間におけるピンチロール40の制御方法の一例を説明する。
ピンチロール制御部240は、処理用過去材張力指標実績値のうち、後端側制御期間における実績値を、張力指標の目標値としてピンチロールの動作を制御する。具体的に本実施形態では、ピンチロール制御部240が、処理用過去材負荷率実績値のうち、後端側制御期間における実績値を、ピンチロール負荷率の目標値としてピンチロール40の動作を制御する。処理用過去材負荷率実績値のうち、後端側制御期間における実績値は、例えば、図4において、ts~teの期間におけるピンチロールモータ負荷率である。前述したように本実施形態では、ピンチロール制御部240は、PI制御を実行して、ピンチロールモータ負荷率の実績値が目標値に近づく(好ましくは一致)するようなピンチロール40の鋼帯Mに対する押力を算出する。
【0082】
このような制御を実行するためにピンチロール制御部240は、後端側制御期間の開始タイミングtsになったか否かを判定する。本実施形態では、鋼帯Mの後端がHMD20を通過したことを示す検知信号をHMD20から受信すると、ピンチロール制御部240は、後端側制御期間の開始タイミングtsになった判定する。また、ピンチロール制御部240は、後端側制御期間の終了タイミングteになったか否かを判定する。本実施形態では、ロードセル46により測定されている荷重が閾値未満になると、ピンチロール制御部240は、後端側制御期間の終了タイミングteになった判定する。
【0083】
ピンチロール制御部240が、後端側制御期間(開始タイミングtsから終了タイミングteまでの期間)の、巻取制御装置200におけるピンチロール40の制御周期で定まる各時刻において以下の処理を実行する場合を例示する。
【0084】
ピンチロール制御部240は、処理用過去材張力指標実績取得部220により取得された処理用過去材負荷率実績値のうち、現在時刻における処理用過去材負荷率実績値(図4におけるピンチロールモータ負荷率の値)を、現在時刻における目標値とする。ピンチロール制御部240は、PI制御を実行して、処理材張力指標実績取得部230により取得された現在時刻における処理材負荷率実績値が、現在時刻における処理用過去材負荷率実績値(目標値)に近づく(好ましくは一致)するようなピンチロール40の鋼帯Mに対する押力を算出してピンチロール40に設置されている圧下装置45に出力する。
なお、ピンチロール制御部240は、PI制御に限定されない。例えば、ピンチロール制御部240は、PID制御を実行しても良いし、その他の制御方法で制御しても良い。
【0085】
圧下装置45は、巻取制御装置200(ピンチロール制御部240)から出力された押力を、ピンチロール40の圧下量(上ロール41および下ロール42のギャップ量)に変換し、ピンチロール40の圧下量だけピンチロール40を圧下する。
【0086】
<出力部250>
出力部250は、処理用過去材張力指標実績取得部220により取得された処理用過去材負荷率実績値のうち、少なくとも後端側制御期間における実績値の情報と、処理材張力指標実績取得部230により取得された処理材負荷率実績値のうち、少なくとも後端側制御期間における実績値の情報と、を含む張力指標情報を出力する。本実施形態では、出力部250が、張力指標情報をコンピュータディスプレイに表示する場合を例示する。処理用過去材負荷率実績値は、ピンチロール制御部240におけるピンチロール40の制御の目標値である。処理材負荷率実績値は、ピンチロール制御部240におけるピンチロール40の制御の実測値である。
【0087】
本実施形態では、出力部250が、処理材張力指標実績取得部230により処理材負荷率実績値が取得される度に、処理用過去材張力指標実績取得部220により取得された処理用過去材負荷率実績値のうち、当該処理材負荷率実績値が取得された時刻に対応する処理用過去材負荷率実績値と、当該処理材負荷率実績値とを、含む張力指標情報を出力する場合を例示する。
【0088】
したがって、出力部250が張力指標情報をコンピュータディスプレイに表示させることにより、オペレータは、巻取制御装置200におけるピンチロール40の制御周期で到来する各時刻において、処理材張力指標実績取得部230により取得された処理材負荷率実績値が、処理用過去材負荷率実績値(目標値)と乖離していないかどうかを把握することができる。よって、例えば、オペレータは、当該乖離が大きい場合、ピンチロール40(上ロール41および下ロール42の間)のギャップ量を調整するための操作を実行することができる。また、オペレータは、コイルを製造した際のピンチロールモータ負荷率の目標値と実績値との差として、少なくとも後端側制御期間における差を把握することができる。
【0089】
なお、張力指標情報の出力形態は、コンピュータディスプレイへの表示に限定されない。例えば、出力部250は、コンピュータディスプレイへの表示に代えてまたは加えて、外部装置への送信と、巻取制御装置200の内部または外部の記憶媒体への記憶とのうちの少なくともいずれか1つを実行することにより、張力指標情報を出力しても良い。
【0090】
[フローチャート]
次に、図6のフローチャートを参照しながら、巻取実績蓄積装置100により実行される巻取実績蓄積方法の一例として、処理用過去材実績情報を蓄積する方法の一例を説明する。
ステップS601において、蓄積時帯状材情報取得部110は、蓄積時コイル情報を取得して、全コイル実績記憶テーブル310のコイル情報の欄に記憶する。
次に、ステップS602において、蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44の動作電流の実効値として、少なくとも後端側制御期間の複数の時刻における実効値を取得する。
【0091】
次に、ステップS603において、蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44の動作電流の実効値および定格電流に基づいて、ステップS601で取得された蓄積時コイル情報を示すコイルについての蓄積用過去材負荷率実績値として、少なくとも後端側制御期間の複数の時刻における蓄積用過去材負荷率実績値を算出する。そして、蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、全コイル実績記憶テーブル310におけるレコード(行)のうち、ステップS601で蓄積時コイル情報が記憶されたレコード(行)と同一のレコードに当該蓄積用過去材負荷率実績値を記憶する。
【0092】
次に、ステップS604において、巻姿指標取得部130は、ステップS601で取得された蓄積時コイル情報を示すコイルのテレスコ量の値を取得する。そして、巻姿指標取得部130は、全コイル実績記憶テーブル310におけるレコード(行)のうち、ステップS601で蓄積時コイル情報が記憶されたレコード(行)と同一のレコードに当該テレスコ量の値を記憶する。
【0093】
次に、ステップS605において、巻取実績蓄積装置100は、全コイル実績記憶テーブル310に記憶すべき情報が全て記憶されたか否かを判定する。巻取実績蓄積装置100は、例えば、熱間圧延ラインで圧延される鋼帯Mとして想定される全ての種類の鋼帯Mについて、蓄積時コイル情報、蓄積用過去材負荷率実績値、およびテレスコ量の値が、それぞれ所定数以上取得されて全コイル実績記憶テーブル310に記憶された場合に、全コイル実績記憶テーブル310に記憶すべき情報が全て記憶されたと判定する。
【0094】
ステップS605の判定の結果、全コイル実績記憶テーブル310に記憶すべき情報が全て記憶されていない場合(ステップS605でNOの場合)、ステップS601の処理が再び実行される。そして、ステップS601において、全コイル実績記憶テーブル310に記憶されている蓄積時コイル情報とは別の蓄積時コイル情報が取得され、前述したようにしてステップS602~S605の処理が実行される。
【0095】
ステップS605の判定の結果、全コイル実績記憶テーブル310に記憶すべき情報が全て記憶された場合(ステップS605でYESの場合)、ステップS606の処理が実行される。ステップS606において、処理用過去材張力指標実績決定部140は、全コイル実績記憶テーブル310に記憶されている蓄積時コイル情報を1つ選択する。
【0096】
次に、ステップS607において、処理用過去材張力指標実績決定部140は、ステップS606で選択した蓄積時コイル情報に関連付けられて全コイル実績記憶テーブル310に記憶されている蓄積用過去材負荷率実績値およびテレスコ量の値を読み出し、当該蓄積時コイル情報と共に、当該蓄積時コイル情報に対応するコイル毎実績記憶テーブル320に記憶する。
【0097】
次に、ステップS608において、処理用過去材張力指標実績決定部140は、ステップS607でコイル毎実績記憶テーブル320に記憶されたテレスコ量の値に基づいて、ステップS606で選択した蓄積時コイル情報における処理用過去材負荷率実績値を決定する。本実施形態では、処理用過去材張力指標実績決定部140は、ステップS607でコイル毎実績記憶テーブル320に記憶されたテレスコ量の最小値に関連付けて記憶されている蓄積用過去材負荷率実績値を、処理用過去材負荷率実績値として決定する。
【0098】
次に、ステップS609において、処理用過去材張力指標実績決定部140は、ステップS606で選択した蓄積時コイル情報と、ステップS608で決定した処理用過去材負荷率実績値と、当該蓄積時コイル情報および当該処理用過去材負荷率実績値(蓄積用過去材負荷率実績値)に関連付けられてコイル毎実績記憶テーブル320に記憶されているテレスコ量の値と、を、当該蓄積時コイル情報に対応するコイル毎処理用実績値記憶テーブル330に記憶する。
【0099】
次に、ステップS610において、処理用過去材張力指標実績決定部140は、全コイル実績記憶テーブル310に記憶されている全ての種類の蓄積時コイル情報についてステップS606~S609の処理を実行したか否かを判定する。ステップS610の判定の結果、全ての種類の蓄積時コイル情報についてステップS606~S609の処理を実行していない場合(ステップS610でNOの場合)、ステップS606の処理が再び実行される。そして、ステップS606において、これまでのステップS606で選択した蓄積時コイル情報とは別の蓄積時コイル情報が選択され、前述したようにしてステップS607~S609の処理が実行される。そして、ステップS610の判定の結果、全ての種類の蓄積時コイル情報についてステップS606~S609の処理を実行した場合(ステップS610でYESの場合)、図6のフローチャートによる処理は終了する。
【0100】
次に、図7のフローチャートを参照しながら、巻取実績蓄積装置100により実行される巻取実績蓄積方法の一例として、処理用過去材実績情報を更新する方法の一例を説明する。図7のフローチャートは、図6のフローチャートによる処理が終了した後に開始する。また、図7のフローチャートは、例えば、図6のフローチャートによる処理が終了した後、熱間圧延ラインでの鋼帯Mの圧延が実行される度に実行される。
【0101】
ステップS701において、蓄積時帯状材情報取得部110は、蓄積時コイル情報を取得する。
次に、ステップS702において、蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44の動作電流の実効値として、少なくとも後端側制御期間の複数の時刻における実績値を取得する。
【0102】
次に、ステップS703において、蓄積用過去材張力指標実績取得部120は、上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44の動作電流の実効値および定格電流に基づいて、ステップS701で取得された蓄積時コイル情報を示すコイルについての蓄積用過去材負荷率実績値として、少なくとも後端側制御期間の複数の時刻における蓄積用過去材負荷率実績値を算出する。
【0103】
次に、ステップS704において、巻姿指標取得部130は、ステップS701で取得された蓄積時コイル情報を示すコイルのテレスコ量の値を取得する。
次に、ステップS705において、更新部160は、ステップS704で取得されたテレスコ量の値が、ステップS701で取得された蓄積時コイル情報に対応するコイル毎処理用実績値記憶テーブル330に記憶されているテレスコ量の値よりも小さいか否かを判定する。ステップS705の判定の結果、ステップS704で取得されたテレスコ量の値が、ステップS701で取得された蓄積時コイル情報に対応するコイル毎処理用実績値記憶テーブル330に記憶されているテレスコ量の値よりも小さくない場合(ステップS705でNOの場合)、当該コイル毎処理用実績値記憶テーブル330は更新されない。したがって、図7のフローチャートによる処理は終了する。
【0104】
一方、ステップS705の判定の結果、ステップS704で取得されたテレスコ量の値が、ステップS701で取得された蓄積時コイル情報に対応するコイル毎処理用実績値記憶テーブル330に記憶されているテレスコ量の値よりも小さい場合(ステップS705でYESの場合)、ステップS706の処理が実行される。
【0105】
ステップS706において、更新部160は、ステップS701で取得された蓄積時コイル情報に対応するコイル毎処理用実績値記憶テーブル330に記憶されている処理用過去材負荷率実績値を、ステップS703で取得された蓄積用過去材負荷率実績値として、処理用過去材負荷率実績値を更新する。また、更新部160は、ステップS701で取得された蓄積時コイル情報に対応するコイル毎処理用実績値記憶テーブル330に記憶されているテレスコ量の値を、ステップS704で取得されたテレスコ量の値に更新する。ステップS706の処理が終了すると、図7のフローチャートによる処理は終了する。
【0106】
次に、図8のフローチャートを参照しながら、巻取制御装置200による巻取制御方法の一例を説明する。
ステップS801において、処理時帯状材情報取得部210は、処理時コイル情報を取得する。
次に、ステップS802において、処理用過去材張力指標実績取得部220は、ステップS801で取得された処理時コイル情報に対応するコイル毎処理用実績値記憶テーブル330に記憶されている処理用過去材負荷率実績値を取得する。
【0107】
次に、ステップS803において、ピンチロール制御部240は、圧延対象の鋼帯Mの後端がHMD20を通過したか否かを判定する。ステップS803の判定の結果、圧延対象の鋼帯Mの後端がHMD20を通過していない場合(ステップS803でNOの場合)、ステップS804の処理が実行される。ステップS804において、ピンチロール制御部240は、圧延対象の鋼帯Mの後端がHMD20を通過するまでの制御(定常時ピンチロール制御)を実行する。そして、ステップS803の処理が再び実行される。
【0108】
ステップS803の判定の結果、圧延対象の鋼帯Mの後端がHMD20を通過した場合(ステップS803でYESの場合)、ステップS805の処理が実行される。ステップS805において、処理材張力指標実績取得部230は、上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44の動作電流の実効値として、現在時刻における実効値を取得する。
次に、ステップS806において、処理材張力指標実績取得部230は、ステップS805で取得した上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44の動作電流の実効値と、上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44の定格電流と、に基づいて、現在時刻における処理材負荷率実績値を算出する。
【0109】
次に、ステップS807において、ピンチロール制御部240は、ステップS802で取得された処理用過去材負荷率実績値のうち、現在時刻に対応する処理用過去材負荷率実績値を目標値としてPI制御を実行することにより、ステップS806で算出された現在時刻における処理材負荷率実績値が当該目標値に近づく(好ましくは一致)するようなピンチロール40の鋼帯Mに対する押力を算出して圧下装置45に出力する。
【0110】
次に、ステップS808において、出力部250は、ステップS802で取得された処理用過去材負荷率実績値のうち、現在時刻に対応する処理用過去材負荷率実績値の情報と、ステップS806で算出された現在時刻における処理材負荷率実績値と、を含む張力指標情報をコンピュータディスプレイに表示させる。
【0111】
次に、ステップS809において、ピンチロール制御部240は、圧延対象の鋼帯Mの後端がピンチロール40を通過したか否かを判定する。ステップS809の判定の結果、圧延対象の鋼帯Mの後端がピンチロール40を通過していない場合(ステップS808でNOの場合)、ステップS805の処理が実行される。そして、次の制御周期におけるステップS805~S809の処理が再び実行される。
【0112】
ステップS809の判定の結果、圧延対象の鋼帯Mの後端がピンチロール40を通過した場合(ステップS809でYESの場合)、ステップS810の処理が実行される。ステップS810において、ピンチロール制御部240は、圧延対象の鋼帯Mの後端がピンチロール40を通過した後の制御(終了時ピンチロール制御)を実行する。ステップS810の処理が終了すると、図8のフローチャートによる処理は終了する。
【0113】
[まとめ]
以上のように本実施形態では、巻取制御装置200は、コイラー30で過去に巻き取られた鋼帯Mにおけるテレスコ量の値に基づいて定められた当該鋼帯Mにおける張力指標の実績値である処理用過去材張力指標実績値を取得し、取得した前記処理用過去材張力指標実績値を用いて、鋼帯Mが仕上圧延機10(圧延スタンドF7)による拘束から解放されるタイミングからピンチロール40を通過するまでの期間を含む後端側制御期間におけるピンチロール40の動作を制御する。したがって、仕上圧延機10より下流側(ピンチロール40の入側)に張力検出用のルーパといった大掛かりな設備を用いなくても、過去の実績に基づいて、仕上圧延機10(圧延スタンドF7)による拘束から解放された後の鋼帯Mの蛇行を抑制するための制御を実行することができる。よって、仕上圧延機10(圧延スタンドF7)による拘束から解放された後の鋼帯Mの蛇行を抑制して巻取後の鋼帯Mの巻姿の乱れを抑制することを大掛かりな設備を用いることなく実現することができる。
【0114】
また、本実施形態では、鋼帯Mの所定の領域(例えば尾端)が搬送路R上の所定の位置(例えばHMD20)を通過したタイミングから開始する期間を後端側制御期間とし、当該所定の位置を、複数の鋼帯Mにおいて共通の位置とする。したがって、後端側制御期間においてピンチロール40の動作の制御を適用する鋼帯Mの長さを、複数の鋼帯Mにおいて同じ長さとすることができる。よって、後端側制御期間におけるピンチロール40の動作の制御の内容を、複数の鋼帯Mの長さ毎に変更する必要がなくなる。
【0115】
また、本実施形態では、処理用過去材張力指標実績値を、後端側制御期間を含む期間における時系列のデータとする。したがって、処理用過去材張力指標実績値を用いたピンチロール40の動作の制御をより正確に実行することができる。
【0116】
また、本実施形態では、巻取制御装置200は、鋼帯Mに関する情報であるコイル情報と、当該鋼帯Mにおける処理用過去材張力指標実績値と、の関係を示す処理用過去材実績情報を記憶する記憶部150から、処理対象の鋼帯Mのコイル情報に対応する処理用過去材張力指標実績値を取得する。したがって、処理対象の鋼帯Mに合わせた処理用過去材張力指標実績値を用いて、後端側制御期間におけるピンチロール40の動作の制御を実行することができる。よって、処理対象の鋼帯Mの種類が複数ある場合でも、ピンチロール40の動作の制御を高精度に実行することができる。
【0117】
また、本実施形態では、巻取制御装置200は、搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの張力指標の実績値である処理材張力指標実績値を取得し、処理材張力指標実績値と処理用過去材張力指標実績値とに基づいて、後端側制御期間におけるピンチロール40の動作を制御する。したがって、処理材張力指標実績値が処理用過去材張力指標実績値に近づくように(好ましくは一致するように)ピンチロール40の動作を制御することができる。よって、ピンチロール40の動作の制御をより高精度に実行することができる。
【0118】
また、本実施形態では、ピンチロール40を駆動するモータ(上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44)の定格電流に対する動作電流の比で定められる負荷率を張力指標とする。したがって、ピンチロール40と仕上圧延機10との間の鋼帯Mの張力に影響を与える物理量を既設の設備を用いて取得することができる。
【0119】
また、本実施形態では、圧延対象の鋼帯Mの後端が、仕上圧延機10内の所定の位置(例えば、圧延スタンドF1またはF2の搬送方向(搬送路Rに沿う方向(y軸方向))における設置位置)または仕上圧延機10よりも上流側の搬送路R上の所定の位置(例えば、HMD20の搬送方向における設置位置)を通過したタイミングからの期間を、後端側制御期間とし、当該所定の位置を、複数の鋼帯Mにおいて共通の位置とする。したがって、後端側制御期間において圧延ラインのピンチロール40の動作の制御を適用する鋼帯Mの長さを、複数の鋼帯Mにおいて同じ長さとすることを、既存の設備を用いて実現することができる。
【0120】
また、本実施形態では、巻取実績蓄積装置100は、鋼帯Mにおける張力指標の実績値である蓄積用過去材張力指標実績値と、当該蓄積用過去材張力指標実績値を示す鋼帯Mにおける巻姿指標の値と、を取得し、これらに基づいて、処理用過去材張力指標実績値を決定し、決定した処理用過去材張力指標実績値と、当該処理用過去材張力指標実績値に対応する鋼帯Mのコイル情報と、の関係を示す処理用過去材実績情報を記憶する。したがって、鋼帯Mに対応する処理用過去材実績情報を取得することができる。
【0121】
また、本実施形態では、巻取実績蓄積装置100は、種類が相互に異なる複数の鋼帯Mのそれぞれについて処理用過去材実績情報を記憶する。したがって、鋼帯Mの種類が複数ある場合でも、それぞれの鋼帯Mに適した処理用過去材実績情報を取得することができる。
【0122】
[変形例]
<変形例1>
本実施形態では、張力指標が、仕上圧延機10とピンチロール40との間の搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの張力に影響を与える物理量であり、当該物理量が、ピンチロールモータ負荷率である場合を例示した。しかしながら、仕上圧延機10とピンチロール40との間の搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの張力に影響を与える物理量は、ピンチロールモータ負荷率に限定されない。例えば、ロードセル46で測定される荷重(ピンチロール40が鋼帯Mに与える荷重)であっても良い。ロードセル46で測定される荷重が大きいほど、仕上圧延機10とピンチロール40との間の搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの張力は大きくなる。
【0123】
<変形例2>
本実施形態では、張力指標が、仕上圧延機10とピンチロール40との間の搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの張力に影響を与える物理量である場合を例示した。しかしながら、張力指標は、仕上圧延機10とピンチロール40との間の搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの張力であっても良い。以下の説明では、仕上圧延機10とピンチロール40との間の搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの張力を、必要に応じてピンチロール張力と称する。ピンチロール張力の実績値は、測定値であっても計算値であっても良い。ピンチロール張力の計算は、例えば、以下のようにして実行される。まず、上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44の動作電流をトルクに換算して上ピンチロールモータ43および下ピンチロールモータ44のトルクを算出する。そして、上ピンチロールモータ43のトルクを上ロール41の半径で割った値と、下ピンチロールモータ44のトルクを下ロール42の半径で割った値と、の算術平均値を、ピンチロール張力の実績値(計算値)として算出する。ピンチロール張力の実績値を測定値とする場合には、仕上圧延機10とピンチロール40との間に張力計を設置する。図9は、ピンチロール張力と時間との関係の一例を示す図である。図9は、図4に対応する図である。
【0124】
このようにピンチロール負荷率に代えてピンチロール張力を用いる場合、本実施形態の説明において、ピンチロール負荷率をピンチロール張力に置き替えれば良い。したがって、ここでは、ピンチロール張力を用いる場合の詳細な説明を省略する。張力指標を、ピンチロール張力とすることにより、仕上圧延機10とピンチロール40との間の搬送路R上を搬送中の鋼帯Mの張力を直接的に評価することができる。また、ピンチロール張力の実績値を計算値とすることにより、張力計を用いずに既設の設備を用いてピンチロール張力の実績値を取得することができる。
【0125】
<変形例3>
前述したように仕上圧延機10とコイラー30との間の位置に設置されるピンチロール40の数は1台に限定されず、複数台であっても良い。このようにする場合、例えば、巻取実績蓄積装置100は、蓄積時帯状材情報取得部110、蓄積用過去材張力指標実績取得部120、巻姿指標取得部130、処理用過去材張力指標実績決定部140、記憶部150、更新部160、および出力部170を、ピンチロール40毎に個別に備え、コイル毎処理用実績値記憶テーブル330(330a、330n)をピンチロール40毎に作成して記憶する。また、例えば、巻取制御装置200は、処理時帯状材情報取得部210、処理用過去材張力指標実績取得部220、処理材張力指標実績取得部230、ピンチロール制御部240、および出力部250を、ピンチロール40毎に個別に備え、各ピンチロール40の動作を個別に制御する。
【0126】
<変形例4>
本実施形態では、熱間圧延ラインにおけるピンチロール40の動作を制御する場合を例示し、拘束装置が仕上圧延機10である場合を例示した。しかしながら、制御対象のピンチロールは、熱間圧延ラインにおけるピンチロール40に限定されない。例えば、冷間圧延ラインにおいて冷間圧延機と、コイラーとの間の位置に設置されたピンチロールの動作を制御しても良い。この場合、拘束装置は冷間圧延機になる。また、連続焼鈍ラインなどの連続処理ラインにおいて、例えば、ブライドルロールと、コイラーとの間の位置に設置されたピンチロールの動作を制御しても良い。この場合、ブライドルロールが拘束装置になる。また、この場合、拘束装置と、ピンチロールとの間の位置には、鋼帯を幅方向に切断するシャーが配置される。この場合、シャーにより鋼帯が切断されたタイミングが、帯状材が拘束装置による拘束から解放されるタイミングに対応する。
【0127】
<変形例5>
本実施形態では、巻取実績蓄積装置100と巻取制御装置200とが別々の装置である場合を例示したが、巻取実績蓄積装置100と巻取制御装置200とを1つの装置で実現しても良い。
【0128】
<その他の変形例>
なお、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラムなどのコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、本発明の実施形態は、PLC(Programmable Logic Controller)により実現されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアにより実現されてもよい。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0129】
10 仕上圧延機
11a~11g 圧下装置
12a~12g ロードセル
20 HMD
30 コイラー
31 マンドレル
40 ピンチロール
41 上ロール
42 下ロール
43 上ピンチロールモータ
44 下ピンチロールモータ
45 圧下装置
46 ロードセル
100 巻取実績蓄積装置
110 蓄積時帯状材情報取得部
120 蓄積用過去材張力指標実績取得部
130 巻姿指標取得部
140 処理用過去材負荷率実績決定部
150 記憶部
160 更新部
170 出力部
200 巻取制御装置
210 処理時帯状材情報取得部
220 処理用過去材量力指標実績取得部
230 処理材張力指標実績取得部
240 ピンチロール制御部
250 出力部
M 鋼帯
R 搬送路
図1
図2
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図9