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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096782
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】金属樹脂接合体
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212765
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】513045127
【氏名又は名称】株式会社大北製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大北 幸史
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】大北 浩司
(72)【発明者】
【氏名】濱本 匡也
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA28
4F206AA29
4F206AA34
4F206AA40
4F206AD03
4F206AD05
4F206AD08
4F206AD11
4F206AD18
4F206AD19
4F206AD20
4F206AD21
4F206AD23
4F206AD24
4F206AD28
4F206AD33
4F206AD34
4F206AE10
4F206AF16
4F206AG01
4F206AG02
4F206AG03
4F206AG22
4F206AG23
4F206AG25
4F206AG26
4F206AG27
4F206AG28
4F206AH17
4F206AH33
4F206AH81
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB22
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN11
4F206JN25
(57)【要約】
【課題】気密性に対する高い信頼性と低コストの両立及び高接合強度の実現が図られた金属樹脂接合体を提供する。
【解決手段】金属樹脂接合体1において、金属部材10の一部が樹脂部材20の第1の面21から第2の面22に亘って貫通している。両者の接合部は気密接合部30と強接合部40とを含む。気密接合部30は金属部材10と樹脂部材20とを互いに接合するとともに両者の間における気体の通過を防止する電着塗装被膜からなる。強接合部40は気密接合部30よりも高い接合強度で金属部材10と樹脂部材20とを互いに接合する。気密接合部30は金属部材10が樹脂部材20を貫通した領域の少なくとも一部において金属部材10の周方向全域に亘って形成され、強接合部40は気密接合部30の少なくとも一部よりも第1の面21側に位置する第1強接合部41と、気密接合部30の少なくとも一部よりも第2の面22側に位置する第2強接合部42とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材と、該金属部材の一部が第1の面から第2の面に亘って貫通している樹脂部材とが互いに接合されてなる金属樹脂接合体であって、
上記金属部材と上記樹脂部材との接合部は、上記金属部材と上記樹脂部材とを互いに接合するとともに上記金属部材と上記樹脂部材との間における気体の通過を防止する電着塗装被膜からなる気密接合部と、上記気密接合部における接合強度よりも高い接合強度で上記金属部材と上記樹脂部材とを互いに接合する強接合部とを含み、
上記気密接合部は、上記金属部材が上記樹脂部材を貫通した領域の少なくとも一部において、上記金属部材の周方向全域に亘って形成されており、
上記強接合部は、上記気密接合部の少なくとも一部よりも上記樹脂部材における上記第1の面側に位置する第1強接合部と、上記気密接合部の少なくとも一部よりも上記樹脂部材における上記第2の面側に位置する第2強接合部とを含む、金属樹脂接合体。
【請求項2】
上記樹脂部材は板状をなしており、該樹脂部材の一対の主面が上記第1の面と上記第2の面とを構成しており、
上記金属部材は、上記樹脂部材を貫通した領域において上記樹脂部材の厚さ方向に延びて上記気密接合部を介して上記樹脂部材と接合された厚さ方向延在領域と、該厚さ方向延在領域から上記第1の面側に延在するとともに上記第1の面に平行に屈曲して上記第1強接合部を介して上記第1の面と接合された第1接合領域とを有している、請求項1に記載の金属樹脂接合体。
【請求項3】
上記樹脂部材は板状をなしており、該樹脂部材の一対の主面が上記第1の面と上記第2の面とを構成しており、
上記金属部材は、上記樹脂部材を貫通した領域において上記樹脂部材の厚さ方向に延びて上記気密接合部を介して上記樹脂部材と接合された厚さ方向延在領域と、該厚さ方向延在領域から上記第1の面側に延在するとともに上記第1の面に平行に屈曲して上記樹脂部材に覆われて上記第1強接合部を介して上記樹脂部材と接合された第1接合領域とを有している、請求項1に記載の金属樹脂接合体。
【請求項4】
上記金属部材は、上記厚さ方向延在領域から上記第2の面側に延在するとともに上記第2の面に平行に屈曲して上記第2強接合部を介して上記樹脂部材の上記第2の面と接合された第2接合領域をさらに有している、請求項2又は3に記載の金属樹脂接合体。
【請求項5】
上記金属部材は、上記厚さ方向延在部から上記第2の面側に延在するとともに上記第2の面に平行に屈曲するとともに上記樹脂部材に覆われて上記第2強接合部を介して上記樹脂部材と接合された第2接合領域をさらに有している、請求項2又は3に記載の金属樹脂接合体。
【請求項6】
上記金属部材における上記第1接合領域と上記第2接合領域とは上記樹脂部材の一部を厚さ方向に挟持している、請求項4又は5に記載の金属樹脂接合体。
【請求項7】
上記第1強接合部及び上記第2強接合部の少なくとも一方は、上記金属部材の表面に粗面化処理して形成された凹凸形状に沿って上記樹脂部材が密着して形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属樹脂接合体。
【請求項8】
上記第1強接合部及び上記第2強接合部の少なくとも一方は、上記金属部材をレーザ加工、プレス加工又は機械加工して形成された凹凸形状又は貫通孔に沿って上記樹脂部材が密着して形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の金属樹脂接合体。
【請求項9】
上記樹脂部材は、上記電着塗装被膜が設けられた上記金属部材をインサート品とするインサート成形により形成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の金属樹脂接合体。
【請求項10】
上記樹脂部材は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックからなり、
上記電着塗装被膜は、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂からなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の金属樹脂接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属樹脂接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品、電気・電子製品、その他の工業製品など、主に軽量化及び部品数削減によるコストダウンの視点から金属素材から樹脂に置き換えが進んでいる。近年では単に樹脂への置き換えだけでなく、利用目的に合わせ金属材料の特性と樹脂部材の特徴を活かした金属樹脂接合体が使われるようになってきている。
【0003】
このような金属樹脂接合体では、金属と樹脂という異種材料同士の接合となるため、両者の接着性が十分には得られずに接合強度が低下するおそれがある。そこで、接着性を高める手法が種々検討されている。例えば、特許文献1に開示の構成では、金属部材における樹脂部材との接合面を薬剤でエッチングして粗面化し、当該接合面において金属部材と樹脂部材とを直接接合することにより、両者の接着性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-001271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、粗面化した接合面において金属部材と樹脂部材とを直接接合しているため、金属部材と樹脂部材との間には微細な空隙が残存する。これにより、金属部材と樹脂部材との気密性を確保することが困難となる。また、金属部材と樹脂部材との気密性を確保するために粗面化した接合面に対する濡れ性の高い接着剤により金属部材と樹脂部材とを接合して気密性を高めることも考えられる。しかしながら、樹脂部材を貫通する金属部材に、確実かつ均一に接着剤を塗布することは難易度が高く、高コストとなる。したがって、気密性に対する高い信頼性と低コストとを両立するには改善の余地がある。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、気密性に対する高い信頼性と低コストの両立及び高接合強度の実現が図られた金属樹脂接合体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様は、金属部材と、該金属部材の一部が第1の面から第2の面に亘って貫通している樹脂部材とが互いに接合されてなる金属樹脂接合体であって、
上記金属部材と上記樹脂部材との接合部は、上記金属部材と上記樹脂部材とを互いに接合するとともに上記金属部材と上記樹脂部材との間における気体の通過を防止する電着塗装被膜からなる気密接合部と、上記気密接合部における接合強度よりも高い接合強度で上記金属部材と上記樹脂部材とを互いに接合する強接合部とを含み、
上記気密接合部は、上記金属部材が上記樹脂部材を貫通した領域の少なくとも一部において、上記金属部材の周方向全域に亘って形成されており、
上記強接合部は、上記気密接合部の少なくとも一部よりも上記樹脂部材における上記第1の面側に位置する第1強接合部と、上記気密接合部の少なくとも一部よりも上記樹脂部材における上記第2の面側に位置する第2強接合部とを含む、金属樹脂接合体にある。
【発明の効果】
【0008】
上記金属樹脂接合体によれば、金属部材と樹脂部材との接合部が気体の通過を防止する電着塗装被膜からなる気密接合部を有しているため、金属部材と樹脂部材との間の気密性を十分に確保することができる。また、電着塗装被膜は確実かつ均一に形成しやすいため、接着剤を塗布する場合に比べて低コスト化を図ることができる。さらに、気密接合部よりも高い接合強度を有する強接合部として、気密接合部の少なくとも一部よりも樹脂部材における第1の面側に位置する第1強接合部と、樹脂部材における第2の面側に位置する第2強接合部とが設けられている。これにより、樹脂部材を貫通する金属部材の端部に力がかかっても第1強接合部と第2強接合部とによって金属部材と樹脂部材との接合状態を維持することができるとともに、第1強接合部41と第2強接合部42との間に位置する気密接合部の接合状態も維持される。これらにより、気密性に対する高い信頼性と低コストの両立及び高接合強度の実現を図ることができる。
【0009】
以上のごとく、本発明によれば、気密性に対する高い信頼性と低コストの両立及び高接合強度の実現が図られた金属樹脂接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における、(a)金属樹脂接合体の斜視図、(b)金属樹脂接合体の上面図。
図2】実施例1における、(a)図1(b)のII-II線位置断面図、(b)図2(a)のIIb-IIb線位置断面図。
図3】実施例1における、(a)図2(a)の第1強接合部の一部拡大図、(a)図2(a)の第2強接合部の一部拡大図。
図4】実施例1における、(a)~(c)金属樹脂接合体の製造工程を説明する図。
図5】実施例1における、電着塗装被膜が形成された金属部材の断面一部拡大図。
図6】実施例1における、(a)、(b)金属樹脂接合体の製造工程を説明する他の図。
図7】実施例2における、(a)図1(b)のII-II線相当の位置での断面図、(b)図7(a)の第1強接合部の一部拡大図。
図8】実施例3における、(a)図1(b)のII-II線相当の位置での断面図、(b)図8(a)の第1強接合部の一部拡大図、(c)図8(a)の第2強接合部の一部拡大図。
図9】実施例4における、(a)図1(b)のII-II線相当の位置での断面図、(b)図9(a)の第1強接合部の中央付近一部拡大図、(c)図9(a)の第2強接合部の中央付近一部拡大図。
図10】実施例5における、(a)金属樹脂接合体の上面図、(b)図10(a)のIXb-IXb線位置での断面図。
図11】実施例6における、(a)金属樹脂接合体の上面図、(b)図1(a)のXb-Xb線位置での断面図。
図12】実施例7における、(a)図1(b)のII-II線相当の位置での断面図、(b)図12(a)の第1強接合部の一部拡大図、(c)図12(a)の第2強接合部の一部拡大図。
図13】実施例8における、(a)図1(b)のII-II線相当の位置での断面図、(b)図13(a)の第1強接合部の一部拡大図、(c)図13(a)の第2強接合部の一部拡大図。
図14】実施例9における、(a)金属樹脂接合体の斜視図、(b)図1(b)のII-II線相当の位置での断面図。
図15】実施例9における、(a)、(b)金属樹脂接合体の製造工程を説明する図。
図16】実施例10における、図1(b)のII-II線相当の位置での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記樹脂部材は板状をなしており、該樹脂部材の一対の主面が上記第1の面と上記第2の面とを構成しており、
上記金属部材は、上記樹脂部材を貫通した領域において上記樹脂部材の厚さ方向に延びて上記気密接合部を介して上記樹脂部材と接合された厚さ方向延在領域と、該厚さ方向延在領域から上記第1の面側に延在するとともに上記第1の面に平行に屈曲して上記第1強接合部を介して上記第1の面と接合された第1接合領域とを有していることが好ましい。この場合は、金属部材に樹脂部材の第2の面側に引っ張る力がかかった場合に、金属部材の第1接合領域が樹脂部材に対するアンカーとして機能するため、第1強接合部における接合強度を高めることができる。
【0012】
上記樹脂部材は板状をなしており、該樹脂部材の一対の主面が上記第1の面と上記第2の面とを構成しており、
上記金属部材は、上記樹脂部材を貫通した領域において上記樹脂部材の厚さ方向に延びて上記気密接合部を介して上記樹脂部材と接合された厚さ方向延在領域と、該厚さ方向延在領域から上記第1の面側に延在するとともに上記第1の面に平行に屈曲して上記樹脂部材に覆われて上記第1強接合部を介して上記樹脂部材と接合された第1接合領域とを有していることが好ましい。この場合は、金属部材の第1接合領域が樹脂部材に埋まってアンカーとして機能するため、第1強接合部における接合強度を高めることができる。
【0013】
上記金属部材は、上記厚さ方向延在領域から上記第2の面側に延在するとともに上記第2の面に平行に屈曲して上記第2強接合部を介して上記樹脂部材の上記第2の面と接合された第2接合領域をさらに有していることが好ましい。この場合は、金属部材に樹脂部材の第1の面側に引っ張る力がかかった場合に、金属部材の第2接合領域が樹脂部材に対するアンカーとして機能するため、第2強接合部における接合強度を高めることができる。
【0014】
上記金属部材は、上記厚さ方向延在部から上記第2の面側に延在するとともに上記第2の面に平行に屈曲するとともに上記樹脂部材に覆われて上記第2強接合部を介して上記樹脂部材と接合された第2接合領域をさらに有していることが好ましい。この場合は、金属部材の第2接合領域が樹脂部材に埋まってアンカーとして機能するため、第2強接合部における接合強度を高めることができる。
【0015】
上記金属部材における上記第1接合領域と上記第2接合領域とは上記樹脂部材の一部を厚さ方向に挟持していることが好ましい。この場合は、第1強接合部及び第2強接合部において樹脂部材に対するアンカー効果が一層向上するため、第1強接合部及び第2強接合部における接合強度を一層高めることができる。さらに、金属部材は、第1接合領域、第2接合領域及び厚さ方向延在領域において断面形状が、厚さ方向延在領域を底部とする略U字形状となるため、厚さ方向延在領域に電着塗装被膜を形成する際に、厚さ方向延在領域のみを電着塗装用の浴槽に浸漬させやすい。それゆえ、気密接合部を形成したい領域に電着塗装被膜を形成することが容易となり、作業性が向上する。
【0016】
上記第1強接合部及び上記第2強接合部の少なくとも一方は、上記金属部材の表面に粗面化処理して形成された凹凸形状に沿って上記樹脂部材が密着して形成されていることが好ましい。この場合は、凹凸形状に沿って樹脂部材が密着することにより樹脂部材に対するアンカー効果が一層向上するため、第1強接合部又は第2強接合部における接合強度を一層高めることができる。
【0017】
上記第1強接合部及び上記第2強接合部の少なくとも一方は、上記金属部材をプレス加工又は機械加工して形成された凹凸形状又は貫通孔に沿って上記樹脂部材が密着して形成されていることが好ましい。この場合は、凹凸形状又は貫通孔に沿って密着することにより樹脂部材に対するアンカー効果が一層向上するため、第1強接合部又は第2強接合部における接合強度を一層高めることができる。
【0018】
上記樹脂部材は、上記電着塗装被膜が設けられた上記金属部材をインサート品とするインサート成形により形成されていることが好ましい。この場合には、金型内へインサート品である電着塗装被膜が設けられた金属部材をセットし、その周りへ樹脂材料の充填を行うことで、金属部材と樹脂部材とが一体化した立体的な成形品を高精度に成型することができる。
【0019】
上記樹脂部材は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックからなり、
上記電着塗装被膜は、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂からなることが好ましい。この場合は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックである樹脂部材により、絶縁性、耐熱性、耐薬品性、機械特性を向上できる。そして、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂からなる電着塗装被膜は、熱溶融されたエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックと濡れ性がよく互いになじみやすく、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックに対して親和性及び相溶性の高い表面特性を有する。また、これらの材料は耐熱性に優れるため、成型時に熱溶融したエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックによる熱劣化も生じにくい。従って、樹脂部材及び電着塗装被膜の形成材料を上述のごとく採用することにより、樹脂部材と金属部材との間に十分な密着性が得られる。また、樹脂部材と接着層とは樹脂同士のため互いに十分な密着性が得られる。その結果、樹脂部材と金属部材との間の気密性を一層向上させることができる。
【0020】
なお、本明細書では、エンジニアリングプラスチックとは、耐熱温度が100℃以上であって、いわゆる汎用プラスチックよりも引張強度及び弾性率が優れた樹脂部材を指す。また、スーパーエンジニアリングプラスチックとは、エンジニアリングプラスチックのうち耐熱温度が150℃以上の樹脂部材を指す。
【実施例0021】
(実施例1)
上記金属樹脂接合体の実施例について、図1~4を用いて以下に説明する。
本実施例1の金属樹脂接合体1は、図1(a)に示すように、金属部材10と、樹脂部材20を備える。図2(a)に示すように、金属部材10の一部が樹脂部材20の第1の面21から第2の面22に亘って貫通している。
そして、金属部材10と樹脂部材20との接合部は、気密接合部30と強接合部40とを含む。
気密接合部30は、金属部材10と樹脂部材20とを互いに接合するとともに金属部材10と樹脂部材20との間における気体の通過を防止する電着塗装被膜からなる。
強接合部40は、気密接合部30における接合強度よりも高い接合強度で金属部材10と樹脂部材20とを互いに接合する。
さらに、気密接合部30は、金属部材10が樹脂部材20を貫通した領域の少なくとも一部において、図2(b)に示すように、金属部材10の周方向全域に亘って形成されている。
そして、図2(a)に示すように、強接合部40は、気密接合部30の少なくとも一部よりも樹脂部材20における第1の面21側に位置する第1強接合部41と、気密接合部30の少なくとも一部よりも樹脂部材20における第2の面22側に位置する第2強接合部42とを含む。
【0022】
以下、実施例1の金属樹脂接合体1について詳述する。
図1(a)及び(b)に示すように、実施例1の金属樹脂接合体1では、金属部材10が樹脂部材20を貫通した状態となっている。なお、本実施例1では、樹脂部材20の主面方向の一つである横方向をX、樹脂部材20の主面方向の一つであって横方向Xに直交する縦方向をY、樹脂部材20の厚さ方向であって横方向Xと縦方向Yとに直交する高さ方向をZとする。
【0023】
金属部材10は、銅製、アルミニウム合金製などとすることができ、本実施例1では銅製である。また、本実施例1では金属部材10は板材を折り曲げて形成されているがこれに限定されず、丸棒材や角棒材を折り曲げたり、プレス加工や機械加工したりして形成してもよい。金属部材10は、図2(a)に示すように、樹脂部材20を貫通する領域10aと、樹脂部材20の第1の面21から外方に突出した領域10bと、樹脂部材20の第2の面22から外方に突出した領域10cとを有する。そして、本実施例1では、樹脂部材20を貫通する領域10aの一部であって、樹脂部材20の厚さ方向Zに延びる部分である厚さ方向延在領域13に後述の気密接合部30が形成されている。
【0024】
図2(a)に示すように、金属部材10は、第1接合領域11と第2接合領域12とを有する。第1接合領域11は、金属部材10の樹脂部材20の第1の面21から外方に突出した領域10bにおいて、厚さ方向延在領域13から第1の面21側に延在するとともに第1の面21に平行に屈曲して第1の面21に沿った状態となっている。本実施例1では、図3(a)に示すように、金属部材10における第1接合領域11の樹脂部材20側の表面には粗面化処理が施されて微細な凹凸形状が形成されている。当該粗面化処理の方法は限定されず、レーザ加工、エッチング、粗化メッキなどを採用することができる。当該粗面化された第1接合領域11の表面の粗化度は限定されない。金属部材10における第1接合領域11の樹脂部材20側と反対側の面は樹脂部材20から露出しており、例えば、端子等と接続されて通電可能とすることができる。
【0025】
一方、金属部材10における第2接合領域12は、図2(a)に示すように、樹脂部材20を貫通する領域10aにおいて、厚さ方向延在領域13から第2の面22側に延在して第2の面22側に平行なX方向に屈曲するとともに樹脂部材20に覆われた状態となっている。なお、樹脂部材20において、第2接合領域12を覆う領域は、その他の領域に比べて金属部材10の厚さ分だけ盛り上がって厚さが大きくなっている。本実施例1では、図3(b)に示すように、金属部材10における第2接合領域12の表面には第1接合領域11の表面と同様の粗面化処理が施されて微細な凹凸形状が形成されている。
【0026】
本実施例1では、上述のように金属部材10における第1接合領域11と第2接合領域12とが、図2(a)に示すように、厚さ方向延在領域13から互いに同じ側に折り曲げられており、金属部材10は、第1接合領域11、第2接合領域12及び厚さ方向延在領域13において断面形状が、厚さ方向延在領域13を底部とする略U字形状となっている。これにより、第1接合領域11と第2接合領域12とで樹脂部材20の一部を厚さ方向Zに挟持した状態となっている。
【0027】
図2(a)に示すように、金属部材10における端部のうち樹脂部材20の第1の面21側の端部14は樹脂部材20の内側に屈曲して樹脂部材20の内部に位置している。また、金属部材10における端部のうち樹脂部材20の第2の面22側の端部15は厚さ方向Zの下方側に延在している。金属部材10の端部15は、例えば、端子等と接続されて通電可能とすることができる。
【0028】
次に、本実施例1における樹脂部材20について、形状は限定されず、本実施例1では図1(a)及び図2(a)に示すように板状としているが樹脂部材20の外形は特定していない。樹脂部材20を構成する樹脂材料としては、後述するインサート成形が可能なように熱可塑性の樹脂部材であることが好ましく、インサート成形時に高温に曝されることに鑑みて、耐熱温度が150℃以上であることが好ましい。また、樹脂部材20の樹脂材料と後述の気密接合部30の形成材料との相溶性及び接着性を確保する観点から、両者の溶解性パラメータ(SP値)を近い値とすることが好ましい。例えば、気密接合部30の形成材料としてSP値11程度のエポキシ樹脂や、SP値13.6程度のポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂などを採用する場合を考慮して、樹脂部材20の樹脂材料として溶解性パラメータ(SP値)が9.5~15の範囲内のものを採用とすることができる。
【0029】
例えば、樹脂部材20を構成する樹脂材料としては、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂などのエンジニアリングプラスチックや、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリアミド・イミド(PAI)樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチックを採用することができ、本例では、PPS樹脂を採用している。
【0030】
図2(a)に示すように、金属部材10と樹脂部材20との接合部は、気密接合部30と、強接合部40とを含む。気密接合部30は、図2(b)に示すように、上述の厚さ方向延在領域13の周方向全域に形成されている。気密接合部30は電着塗装被膜30aからなる。気密接合部30の形成材料は、樹脂部材20を構成する樹脂材料よりも、金属部材10への密着性が高いものが採用される。例えば、気密接合部30の形成材料として、カチオン電着塗料である熱硬化性のエポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂を採用することができ、本例では、熱硬化性のエポキシ樹脂を採用している。図示しないが、樹脂部材20と気密接合部30との間には、両者の樹脂部材が互いに相溶してなる相溶層が形成される。なお、相溶層と樹脂部材20との境界は不明瞭となっている。当該相溶層により、気密接合部30は樹脂部材20と金属部材10との間における気体の通過を防止するように構成されている。
【0031】
金属部材10と樹脂部材20との接合部のうち、強接合部40は、図2(a)に示すように、第1強接合部41と第2強接合部42とを含む。図3(a)に示すように、第1強接合部41は、上述した粗面化された金属部材10の第1接合領域11の凹凸形状に沿って樹脂部材20が密着して形成される。また、図3(b)に示すように、第2強接合部42も同様に上述した粗面化された金属部材10の第2接合領域12の凹凸形状に沿って樹脂部材20が密着して形成される。第1強接合部41及び第2強接合部42は、粗面化された第1接合領域11及び第2接合領域12に樹脂部材20が密着して形成されるため、第1接合領域11及び第2接合領域12による金属部材10と樹脂部材20との接合強度は、気密接合部30における接合強度よりも高くなっている。
【0032】
以下に、本例の金属樹脂接合体1の製造方法について説明する。
まず、図4(a)に示すように、金属部材10を所定形状に成型する金属部材成形工程S1を行う。本実施例1では、金属部材成形工程S1では、長板状の金属板を折り曲げて図4(a)に示す形状に成型した。
【0033】
次いで、当該金属部材10に、図4(c)に示す電着塗装被膜30aを形成する被膜形成工程S2を行う。本実施例1では、被膜形成工程S2は以下のように行う。まず、金属部材10の表面に対して洗浄及び脱脂を行う。その後、図4(b)に示すように、20%の固形分濃度のカチオン型エポキシ樹脂系電着塗料102を満たした電着塗装用の浴槽101中に上記洗浄及び脱脂後の金属部材10における厚さ方向延在領域13を浸漬し、印加電圧200Vで3分間通電させる。なお、本実施例1では、カチオン型エポキシ樹脂系電着塗料102として、株式会社日本ペイント社製、型番インシュリード3030を用いた。その後、金属部材10を浴槽から取り出して水洗いし、130℃の乾燥炉で20分乾燥させる。これにより、図4(c)及び図5に示すように、半硬化状態のエポキシ樹脂被膜からなる電着塗装被膜30aを厚さ方向延在領域13の周方向全域に形成した。
【0034】
図5に示す電着塗装被膜30aの厚さTの平均値である平均厚さは、10~80μmの範囲内とすることができ、好ましくは20~50μmの範囲内であり、本例では平均厚さを50μmとしている。電着塗装被膜30aの平均厚さが10μm未満である場合は塗りむらや塗り残しが生じたりするため好ましくない。また、電着塗装被膜30aの平均厚さが80μmを超える場合は、被膜形成に過度の時間がかかるおそれがあり現実的でない。
【0035】
その後、図6(a)及び(b)に示すインサート成形工程S3を行う。インサート成形工程S3では、まず、図6(a)に示す上側金型51と下側金型52の2つに分割された金型を用意する。上側金型51は金属部材10の上側部分と樹脂部材20の第1の面21側の外形に沿った凹部51aを有しており、下側金型52は金属部材10の下側部分と樹脂部材20の第2の面22側の外形に沿った凹部52aを有している。そして、図6(a)に示すように、上側金型51と下側金型52との間に半硬化状態のエポキシ樹脂被膜からなる電着塗装被膜30aが設けられた金属部材10を、上側金型51と下側金型52との間にセットする。その後、330℃に加熱して溶融させたPPS樹脂を上側金型51と下側金型52との間に流し込んで、図6(b)に示すように、樹脂部材20を形成する。これにより、金属部材10と樹脂部材20との間に電着塗装被膜30aからなる気密接合部30が形成され、当該気密接合部30を介して金属部材10と樹脂部材20とが互いに接合されて、図2(a)に示す金属樹脂接合体1が形成される。
【0036】
次に、本実施例1の金属樹脂接合体1における作用効果について、詳述する。
本実施例1の金属樹脂接合体1では、金属部材10と樹脂部材20との接合部が気体の通過を防止する電着塗装被膜30aからなる気密接合部30を有しているため、金属部材10と樹脂部材20との間の気密性を十分に確保することができる。また、電着塗装被膜30aは確実かつ均一に形成しやすいため、接着剤を塗布する場合に比べて低コスト化を図ることができる。さらに、気密接合部30よりも高い接合強度を有する強接合部40として、気密接合部30の少なくとも一部よりも樹脂部材20における第1の面21側に位置する第1強接合部41と、樹脂部材20における第2の面22側に位置する第2強接合部42とが設けられている。これにより、樹脂部材20を貫通する金属部材10の端部14、15に力がかかっても第1強接合部41と第2強接合部42とによって金属部材10と樹脂部材20との接合状態を維持することができるとともに、第1強接合部41と第2強接合部42との間の気密接合部30の接合状態も維持される。これらにより、気密性に対する高い信頼性と低コストの両立及び高接合強度の実現を図ることができる。
【0037】
実施例1の金属樹脂接合体1は、例えば、収容容器の蓋として用いることができる。これにより、金属部材10が当該収容容器の気密性を低下させることが防止されるため、気密性に優れた収容容器を提供することができる。なお、当該収容容器は、二次電池やキャパシタなどの電気部品のケースとして使用することができ、金属部材10は当該二次電池やキャパシタにおける電極端子の一部として利用することができる。
【0038】
また、本実施例1では、樹脂部材20は板状をなしており、樹脂部材20の一対の主面が第1の面21と第2の面22とを構成している。そして、金属部材10は、樹脂部材20を貫通した領域10aにおいて樹脂部材20の厚さ方向Zに延びて気密接合部30を介して樹脂部材20と接合された厚さ方向延在領域13と、厚さ方向延在領域13から第1の面21側に延在するとともに第1の面21に平行に屈曲して第1強接合部41を介して第1の面21と接合された第1接合領域11とを有している。これにより、金属部材10に樹脂部材20の第2の面22側(すなわち、Z方向下側)に引っ張る力がかかった場合に、金属部材10の第1接合領域11が樹脂部材20に対するアンカーとして機能するため、第1強接合部41における接合強度を高めることができる。さらに、本実施例1では、金属部材10における端部のうち樹脂部材20の第1の面21側の端部14は屈曲して樹脂部材20の内部に位置している。これにより、第1強接合部41における接合強度を一層高めることができる。
【0039】
また、本実施例1では、金属部材10は、厚さ方向延在領域13から第2の面22側に延在するとともに第2の面22に平行に屈曲するとともに樹脂部材20に覆われて第2強接合部42を介して樹脂部材20と接合された第2接合領域12をさらに有している。これにより、金属部材10の第2接合領域12が樹脂部材20に埋まってアンカーとして機能するため、第2強接合部42における接合強度を高めることができる。
【0040】
また、本実施例1では、金属部材10における第1接合領域11と第2接合領域12とは樹脂部材20の一部を厚さ方向Zに挟持している。これにより、第1強接合部41及び第2強接合部42において樹脂部材20に対するアンカー効果が一層向上するため、第1強接合部41及び第2強接合部42における接合強度を一層高めることができる。さらに、金属部材10は、第1接合領域11、第2接合領域12及び厚さ方向延在領域13において断面形状が、厚さ方向延在領域13を底部とする略U字形状となるため、厚さ方向延在領域13に電着塗装被膜30aを形成する際に、厚さ方向延在領域13のみを電着塗装用の浴槽101に浸漬させやすい。それゆえ、気密接合部30を形成したい領域に電着塗装被膜30aを形成することが容易となり、作業性が向上する。
【0041】
また、本実施例1では、第1強接合部41及び第2強接合部42は、金属部材10の表面に粗面化処理して形成された凹凸形状に沿って樹脂部材20が密着して形成されている。これにより、凹凸形状に沿って樹脂部材20が密着することにより樹脂部材20に対するアンカー効果が一層向上するため、第1強接合部41及び第2強接合部42における接合強度を一層高めることができる。
【0042】
また、本実施例1では、樹脂部材20は、電着塗装被膜30aが設けられた金属部材10をインサート品とするインサート成形により形成されている。これにより、金型内へインサート品である電着塗装被膜30aが設けられた金属部材10をセットし、その周りへ樹脂材料の充填を行うことで、金属部材10と樹脂部材20とが一体化した立体的な成形品を高精度に成型することができる。
【0043】
また、本実施例1では、樹脂部材20は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックからなる。そして、電着塗装被膜30aは、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂からなる。これにより、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックである樹脂部材20により、絶縁性、耐熱性、耐薬品性、機械特性を向上できる。そして、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂からなる電着塗装被膜30aは、熱溶融されたエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックと濡れ性がよく互いになじみやすく、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックに対して親和性及び相溶性の高い表面特性を有する。また、これらの材料は耐熱性に優れるため、成型時に熱溶融したエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックによる熱劣化も生じにくい。従って、樹脂部材20及び電着塗装被膜30aの形成材料を上述のごとく採用することにより、金属部材10と樹脂部材20との間に十分な密着性が得られる。また、樹脂部材20と電着塗装被膜30aとは樹脂同士のため、電着塗装被膜30aからなる気密接合部30において十分な密着性が得られる。その結果、金属部材10と樹脂部材20との間の気密性を一層向上させることができる。さらに電着塗装により電着塗装被膜30aの形成材料の付き回り性が良いため、気密接合部30を形成しようとする所望の領域における塗り残しの発生が防止されるとともに、形成材料の垂れが生じにくいため均一な樹脂被膜を形成することができる。その結果、気密接合部30の形成の管理が容易となる。
【0044】
以上のごとく、本実施例1によれば、気密性に対する高い信頼性と低コストの両立及び高接合強度の実現が図られた金属樹脂接合体1を提供することができる。
【0045】
(実施例2)
上述の実施例1では、金属部材10の第1接合領域11は、図2(a)に示すように、樹脂部材20の第1の面21から露出しているとともに第1の面21に接合されていた。これに替えて、本実施例2では、図7(a)に示すように、金属部材10の第1接合領域11は、厚さ方向延在領域13から第1の面21側に延在するとともに第1の面21に平行に屈曲して樹脂部材20に覆われており、第1強接合部41を介して樹脂部材20と接合されている。そして、図7(b)に示すように、第1接合領域11の表面には、粗面化処理によって凹凸形状が形成されており、当該凹凸形状に沿って樹脂部材20が密着することにより第1強接合部41が形成されている。そして、図7(a)に示すように、金属部材10の端部14は第1接合領域11から厚さ方向Zの上方に屈曲して樹脂部材20の第1の面21から突出している。金属部材10の当該端部14は、例えば、端子等と接続して通電可能とすることができる。実施例2におけるその他の構成について、実施例1の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
実施例2における金属樹脂接合体1によれば、金属部材10の第1接合領域11が樹脂部材20に埋まってアンカーとして機能するため、第1強接合部41における接合強度を高めることができる。なお、実施例2においても実施例1と同様の作用効果を奏する。
【0047】
(実施例3)
上述の実施例1では、金属部材10の第2接合領域12は、図2(a)に示すように、樹脂部材20に埋まっていることとしたが、これに替えて、本実施例3では、図8(a)に示すように、金属部材10の第2接合領域12は、厚さ方向延在領域13から第2の面22側に延在するとともに第2の面22に平行に屈曲して第2強接合部42を介して樹脂部材20の第2の面22と接合されている。また、上述の実施例1における金属部材10の端部14は樹脂部材20に埋まっていることとしたが、本実施例3では、金属部材10の第1の面21上に露出している。
【0048】
本実施例3では、図8(b)に示すように、上述の実施例1の場合と同様に、金属部材10の第1接合領域11における樹脂部材20側の表面に粗面化されて形成された凹凸形状に沿って樹脂部材20が密着することにより第1強接合部41が形成されている。また、同様に、図8(c)に示すように金属部材10の第2接合領域12における樹脂部材20側の表面に粗面化されて形成された凹凸形状に沿って樹脂部材20が密着することにより第2強接合部42が形成されている。なお、本実施例3では、図8(a)に示すように、気密接合部30は厚さ方向延在領域13の全域にわたって全周方向に形成されていることとしたがこれに限らず、厚さ方向延在領域13の一部において全周方向に形成されていることとしてもよい。本実施例3におけるその他の構成について、実施例1の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
本実施例3では、上述のように金属部材10の第2接合領域12が第2の面22に平行に屈曲して第2強接合部42を介して樹脂部材20の第2の面22と接合されている。これにより、金属部材10に樹脂部材20の第1の面21側(すなわち、Z方向上側)に引っ張る力がかかった場合に、金属部材10の第2接合領域12が樹脂部材20に対するアンカーとして機能するため、第2強接合部42における接合強度を高めることができる。なお、実施例3においても実施例1と同様の作用効果を奏する。
【0050】
(実施例4)
本実施例4では、図9(a)に示すように、上述の実施例3の場合に替えて、気密接合部30(電着塗装被膜30a)は、金属部材10において厚さ方向延在領域13とともに、厚さ方向延在領域13から第1接合領域11におけるX方向の中央付近及び第2接合領域12におけるX方向の中央付近まで形成されている。
【0051】
電着塗装被膜30aは薄膜で均一に形成されるため、図9(b)に示すように、第1接合領域11に形成された電着塗装被膜30aの表面には、第1接合領域11において粗面化されて形成された凹凸形状が現れている。そして、第1接合領域11において電着塗装被膜30aが設けられた部分では、電着塗装被膜30aの表面に現れた凹凸形状に樹脂部材20の一部が入り込むことで第1強接合部41が形成されるとともに、当該電着塗装被膜30aと樹脂部材20の一部とが接合されて気密接合部30を形成している。この構成においても、気密接合部30は樹脂部材20を貫通する金属部材10の厚さ方向延在領域13にも必ず形成されているため、第1強接合部41は、気密接合部30のうち厚さ方向延在領域13に形成され部分よりも第1の面21側に位置しているということができる。
【0052】
また、同様に、図9(c)に示すように、第2接合領域12に形成された電着塗装被膜30aの表面にも、第2接合領域12において粗面化されて形成された凹凸形状が現れている。そして、第2接合領域12において電着塗装被膜30aが設けられた部分では、電着塗装被膜30aの表面に現れた凹凸形状に樹脂部材20の一部が入り込むことで第2強接合部42が形成されるとともに、当該電着塗装被膜30aと樹脂部材20の一部とが接合されて気密接合部30を形成している。この構成においても、当該第2強接合部42は、気密接合部30のうち厚さ方向延在領域13に形成された部分よりも第2の面22側に位置しているということができる。
【0053】
本実施例4におけるその他の構成について、実施例3の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。そして、本実施例4においても上述の実施例3の場合と同様の作用効果を奏する。
【0054】
(実施例5)
本実施例5では、図10(a)及び(b)に示すように、金属部材10は厚さ方向延在領域13が金属板60に設けられた貫通孔61内に位置するように設けられており、樹脂部材20は金属板60の貫通孔61と金属部材10の厚さ方向延在領域13との間の隙間をシールするように設けられている。そして、金属板60と樹脂部材20との接合部のうち、金属板60の貫通孔61の内周面及び貫通孔61の周囲の金属板60の表面には、電着塗装被膜からなる接着層62が形成されており、当該接着層62を介して金属板60と樹脂部材20と気密性が確保された状態で互いに接合されている。また、金属板60と樹脂部材20との接合部のうち接着層62を除く部分の金属板60の表面63、64には粗面化処理されて形成された凹凸形状に沿って樹脂部材20が密着している。これにより、金属板60の表面63、64において、金属板60と樹脂部材20とが接着層62における接合強度よりも高い接合強度で互いに接合されている。なお、接着層62を構成する電着塗装被膜は、上述の電着塗装被膜30aと同様の構成とすることができるとともに同様の方法で形成することができる。実施例5におけるその他の構成について、実施例3の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0055】
本実施例5においても、上述の実施例3の場合と同様に、金属部材10と樹脂部材20とが高い気密性と高い接合強度とを呈するように互いに接合されており、これとともに、金属板60と樹脂部材20とにおいても同様に高い気密性と高い接合強度とを呈するように互いに接合されている。そして、本実施例5の金属樹脂接合体1は、例えば、金属製の収容容器の蓋として用いることができる。なお、本実施例5においても実施例3と同様の作用効果を奏する。
【0056】
なお、本実施例5では、厚さ方向延在領域13の表面には粗面化処理を施していないが、これに替えて、第1接合領域11及び第2接合領域12における粗面化処理と連続して、厚さ方向延在領域13の表面にも粗面化処理を施してもよい。この場合も本実施例5と同等の作用効果を奏する。
【0057】
(実施例6)
上述の実施例3では、図8(b)及び(c)に示すように、金属部材10の第1強接合部41及び第2強接合部42は、第1接合領域11及び第2接合領域12に粗面化処理して形成された凹凸形状に樹脂部材20を密着させることにより形成した。これに替えて、本実施例6では、図11(a)及び(b)に示すように、第1強接合部41は、第1接合領域11にプレス加工又は機械加工により形成した2つの貫通孔11aに沿って樹脂部材20を密着させることにより、樹脂部材20の一部が第1接合領域11の下面側から当該貫通孔11aに入り込んで反対側の第1接合領域11の上面側まで回り込んだ状態で形成される。これにより、第1強接合部41がアンカーとして機能して、高い接合強度が得られる。なお、第1接合領域11の上面において、二か所の第1強接合部41は互いに所定距離離間しており、両者の間の領域に、例えば、端子等を接続して通電可能とすることができる。
【0058】
また、図11(a)及び(b)に示すように、第2強接合部42も同様に、第2接合領域12にプレス加工又は機械加工により形成した2つの貫通孔12aに沿って樹脂部材20を密着させることにより、樹脂部材20の一部が第2接合領域12の上面側から当該貫通孔12aに入り込んで反対側の第2接合領域12の下面側まで回り込んだ状態で形成される。これにより、第2強接合部42がアンカーとして機能して、高い接合強度が得られる。本実施例6におけるその他の構成について、実施例1~4の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。そして、本実施例6においても実施例1の場合と同様の作用効果を奏する。
【0059】
(実施例7)
上述の実施例6では、図11(a)及び(b)に示すように、第1強接合部41及び第2強接合部42は、第1接合領域11及び第2接合領域12に設けた貫通孔11a、12aに樹脂部材20の一部を入り込ませて反対側まで回り込ませることにより形成した。これに替えて、本実施例7では、図12(a)に示すように、第1接合領域11及び第2接合領域12に形成された溝からなる凹凸形状11b、12bに樹脂部材20の一部を入り込ませて第1強接合部41及び第2強接合部42を形成している。図12(b)に示すように第1接合領域11に形成された凹凸形状11bは断面形状が略T字の溝状となっている。また、図12(c)に示すように第2接合領域12に形成された凹凸形状12bは断面形状が上下逆向きの略T字の溝状となっている。凹凸形状11b、12bはレーザ加工、プレス加工又は機械加工により形成することができる。なお、凹凸形状11b、12bは当該凹凸形状11b、12bに入り込んだ樹脂部材20の一部がアンカーとして機能する形状であればよく、当該形状に替えて例えば、断面形状が台形の蟻ほぞ形状としてもよい。本実施例7におけるその他の構成について、実施例1~5の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0060】
本実施例7では、第1強接合部41及び第2強接合部42において、凹凸形状11b、12bに入りこんだ樹脂部材20の一部がアンカーとして機能して、高い接合強度が得られる。実施例7におけるその他の構成について、実施例1~5の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。そして、本実施例7においても実施例1の場合と同様の作用効果を奏する。
【0061】
(実施例8)
本実施例8では、図13(a)に示すように、上述の実施例7の場合に替えて、気密接合部30(電着塗装被膜30a)は、金属部材10において厚さ方向延在領域13とともに、4つの凹凸形状11bのうちの厚さ方向延在領域13に近い側の2つの凹凸形状11bと、4つの凹凸形状12bのうちの厚さ方向延在領域13に近い側の2つの凹凸形状12bを含む領域まで形成されている。
【0062】
したがって、第1接合領域11に形成された4つの凹凸形状11bのうち、厚さ方向延在領域13に近い側の2つの凹凸形状11bにおいては、図13(b)に示すように、凹凸形状11bの内側表面にも電着塗装被膜30aが形成されている。そして、当該凹凸形状11bに樹脂部材20の一部が入り込むことで第1強接合部41を形成するとともに、当該凹凸形状11b内の当該電着塗装被膜30aと当該凹凸形状11bに入り込んだ樹脂部材20の一部とが接合されて気密接合部30を形成している。この構成においても、気密接合部30は樹脂部材20を貫通する金属部材10の厚さ方向延在領域13にも必ず形成されているため、当該第1強接合部41は、気密接合部30のうち厚さ方向延在領域13に形成され部分よりも第1の面21側に位置しているということができる。
【0063】
また、第2接合領域12に形成された4つの凹凸形状12bのうち、厚さ方向延在領域13に近い側の2つの凹凸形状12bにおいても同様に、図13(c)に示すように、凹凸形状12bの内側表面にも電着塗装被膜30aが形成されている。そして、当該凹凸形状12bに樹脂部材20の一部が入り込むことで第2強接合部42を形成するとともに、当該凹凸形状12b内の当該電着塗装被膜30aと当該凹凸形状12bに入り込んだ樹脂部材20の一部とが接合されて気密接合部30を形成している。この構成においても、当該第2強接合部42は、気密接合部30のうち厚さ方向延在領域13に形成され部分よりも第2の面22側に位置しているということができる。
【0064】
本実施例8におけるその他の構成について、実施例7の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。そして、本実施例8においても上述の実施例7の場合と同様の作用効果を奏する。
【0065】
(実施例9)
上述の実施例6では、図11(a)及び(b)に示すように、金属部材10の第2接合領域12を、厚さ方向延在領域13から第2の面22側に延在させるとともに第2の面22に平行に屈曲して第2強接合部42を介して樹脂部材20の第2の面22に接合した。これに替えて、本実施例9では、図14(a)及び(b)に示すように、金属部材10の第2接合領域12を、厚さ方向延在領域13からZ方向下側に延在させるとともに、機械加工により形成した2つの貫通孔12aを樹脂部材20で覆うことにより、当該貫通孔12aに樹脂部材20の一部を入り込ませて第2強接合部42が形成されている。そして、第2強接合部42により金属部材10の第2接合領域12に樹脂部材20が密着している。
【0066】
本実施例9では、図14(b)に示すように、樹脂部材20の第2の面22に肉盛りしてなる肉盛り部22aを設けて、当該肉盛り部22aにおいて第2強接合部42を形成している。これにより当該肉盛り部22aの厚さ分だけ金属部材10と樹脂部材20との接合部が大きくなるため、第2強接合部42における接合強度の向上を図っている。
【0067】
本実施例9では、図15(a)に示すように、厚さ方向延在領域13を電着塗装用の浴槽101に浸漬することにより実施例1と同様の方法で、図15(b)に示すように、厚さ方向延在領域13に電着塗装被膜30aを形成することができる。本実施例9におけるその他の構成について、実施例6の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。そして、本実施例9においても、実施例6と同様の作用効果を奏することができる。
【0068】
(実施例10)
上述の実施例9では、図14(b)に示すように、機械加工により形成した貫通孔12aを樹脂部材20で覆うことにより、当該貫通孔12aに樹脂部材20の一部を入り込ませて第2強接合部42を形成した。これに替えて、本実施例10では、図16に示すように、金属部材10の第2接合領域12に機械加工により凹部12cを形成するとともに、第2接合領域12における凹部12cの反対側に凸部12dを形成している。そして、当該凹部12c及び凸部12dに肉盛り部22aの樹脂部材20を密着させて、凹部12cに樹脂部材20の一部を入り込ませるとともに凸部12dに樹脂部材20を沿わせることにより、第2強接合部42を形成している。本実施例10におけるその他の構成について、実施例9の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
図16に示すように本実施例10では、電着塗装被膜30aが形成された領域に第2強接合部42を形成している。この場合でも、当該第2強接合部42よりも樹脂部材20の内側の位置に気密接合部30の一部が位置しており、換言すれば、第2強接合部42は気密接合部30の一部よりも外側(第2の面22側)に形成されている。そして、当該構成を有する本実施例10においても、実施例9と同様の作用効果を奏することができる。なお、第1強接合部41において、電着塗装被膜30aが形成された領域に第1強接合部41を形成するとともに第1強接合部41よりも樹脂部材20の内側の位置に気密接合部30の一部が位置しているようにしてもよい。
【0070】
本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 金属樹脂接合体
10 金属部材
11 第1接合領域
12 第2接合領域
13 厚さ方向延在領域
11a、12a 貫通孔
11b、12b 凹凸形状
20 樹脂部材
21 第1の面
22 第2の面
30 気密接合部
30a 電着塗装被膜
40 強接合部
41 第1強接合部
42 第2強接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16