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特開2023-96792ダム管理システム、放流操作装置、訓練装置、および情報伝達方法
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  • 特開-ダム管理システム、放流操作装置、訓練装置、および情報伝達方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096792
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】ダム管理システム、放流操作装置、訓練装置、および情報伝達方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20230630BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
E02B7/20 Z
G09B9/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212782
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】下里 康一
(72)【発明者】
【氏名】下平 興二
(72)【発明者】
【氏名】柴山 茜
(57)【要約】      (修正有)
【課題】関係機関への情報伝達に係わるサポート機能を充実させるダム管理システム、放流操作装置、訓練装置及び情報伝達方法を提供する。
【解決手段】ダム管理システムは、様式管理テーブルを格納するデータベース61と、データベース61にアクセス可能な放流操作装置(1)6と、放流操作装置(1)と通信可能な通信装置(情報入力・提供装置)と、を具備する。様式管理テーブルは、ダム管理に係わる情報の通知先毎に、複数の入力項目を含む様式フォーマットを登録したテーブルである。放流操作装置(1)は、データ収集部と、帳票ファイル作成部と、情報伝達部と、を備える。データ収集部は、ダム管理に係わるデータを収集する。帳票ファイル作成部は、収集されたデータに基づく情報を、指定された通知先への様式フォーマットの入力項目に挿入して帳票ファイルを作成する。情報伝達部は、帳票ファイルを通信装置から指定された通知先に宛てて送信させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダム管理に係わる情報の通知先ごとに、複数の入力項目を含む様式フォーマットを登録した様式管理テーブルを格納するデータベースと、
前記データベースにアクセス可能な放流操作装置と、
前記放流操作装置と通信可能な通信装置とを具備し、
放流操作装置は、
ダム管理に係わるデータを収集するデータ収集部と、
前記収集されたデータに基づく情報を、指定された通知先への前記様式フォーマットの前記入力項目に挿入して帳票ファイルを作成する帳票ファイル作成部と、
前記帳票ファイルを前記通信装置から前記指定された通知先に宛てて送信させる情報伝達部と
を備える、ダム管理システム。
【請求項2】
前記データベースは、前記ダム管理に係わる情報の通知条件を前記通知先ごとに登録した通知条件管理テーブルをさらに格納し、
前記放流操作装置は、
前記収集されたデータに基づいて、前記通知条件が成立したか否かを判定する条件成立判定部と、
前記通知条件が成立した場合に、前記帳票ファイルの作成を促すガイダンスメッセージを提示するガイダンス提示部とをさらに備え、
前記帳票ファイル作成部は、前記ガイダンスメッセージに応じて指定された通知先に対応する帳票ファイルを作成する、請求項1に記載のダム管理システム。
【請求項3】
前記放流操作装置は、操作員による前記帳票ファイルへのデータ入力を受け付けるデータ入力部をさらに備える、請求項1に記載のダム管理システム。
【請求項4】
前記送信された前記帳票ファイルを時系列で保存する帳票ファイル保存部をさらに具備する、請求項1に記載のダム管理システム。
【請求項5】
ダム管理に係わる情報の通知先ごとに、複数の入力項目を含む様式フォーマットを登録した様式管理テーブルを記憶する記憶部と、
ダム管理に係わるデータを収集するデータ収集部と、
前記収集されたデータに基づく情報を、指定された通知先への前記様式フォーマットの前記入力項目に挿入して帳票ファイルを作成する帳票ファイル作成部と
を具備する、放流操作装置。
【請求項6】
ダム管理に係わる情報の通知先ごとに、複数の入力項目を含む様式フォーマットを登録した様式管理テーブルと、前記ダム管理に係わる情報の通知条件を前記通知先ごとに登録した通知条件管理テーブルとを記憶する記憶部と、
ダム運用の訓練に係わるシミュレーションデータを作成するデータ作成部と、
前記作成されたシミュレーションデータに基づく情報を、指定された通知先への前記様式フォーマットの前記入力項目に挿入して帳票ファイルを作成する帳票ファイル作成部と、
前記作成されたシミュレーションデータに基づいて、前記通知条件が成立したか否かを判定する条件成立判定部と、
前記通知条件が成立した場合に、前記帳票ファイルの作成を促すガイダンスメッセージを提示するガイダンス提示部とを具備し、
前記帳票ファイル作成部は、前記ガイダンスメッセージに応じて指定された通知先に対応する帳票ファイルを作成する、訓練装置。
【請求項7】
コンピュータが、ダム管理に係わる情報の通知先ごとに、複数の入力項目を含む様式フォーマットを登録した様式管理テーブルを格納するデータベースにアクセスする過程と、
前記コンピュータが、ダム管理に係わるデータを収集する過程と、
前記コンピュータが、前記収集されたデータに基づく情報を、指定された通知先への前記様式フォーマットの前記入力項目に挿入して帳票ファイルを作成する過程と、
前記コンピュータが、前記帳票ファイルを前記指定された通知先に宛てて送信する過程と
を具備する、情報伝達方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ダム管理システム、放流操作装置、訓練装置、および情報伝達方法に関する。
【背景技術】
【0002】
治水としての洪水調節、上水道、農業用水(かんがい)、あるいは水力発電などを目的として、多数のダムが建設されている。多くのダムに、流入量に応じて放流量を調整するダム管理用制御処理システム(ダムコンとも称される)が設けられている。国土交通省発行の非特許文献1には、ダムコンの標準設計仕様が詳しく記載されており、これからのダムコンはこの仕様書に沿って設計されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-204074号公報
【特許文献2】特開2017-10113号公報
【特許文献3】特開2006-195806号公報
【特許文献4】特開2005-18144号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】国土交通省「ダム管理用制御処理設備 標準設計仕様書・同解説(平成28年8月)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に、『(1) 本仕様書での「ダムコン」とは、ダム管理において必要となる情報の収集入力、演算、表示・記録、放流設備の操作及び関係機関への情報伝達等の処理を行う設備全体を示すものとして定義する。』との記載がある。このなかの「関係機関への情報伝達」とは、例えば洪水が発生した時や予想されるとき、あるいはダム操作の訓練を行う際に、国の機関やダム所在地の自治体の各機関にダムの状況を通知したり、放流の事前通知を行うものである。ここで、通知の方法や様式は、ダムや自治体毎に規定されている。
【0006】
しかし非特許文献1には、この「関係機関への情報伝達」の具体的な機能や実現方法に関しては特に定められておらず、ダムコンの機能として実装されてきた例はほとんどない。このため従来は、それぞれのダムにおいて、必要な場面でダムコンから各種情報を読み取り、定められた様式に手書きまたは手入力で記入し、紙に出力してFAXなどで各関連機関に送信するという、煩雑な作業が必要であった。
そこで、目的は、関係機関への情報伝達に係わるサポート機能を充実させたダム管理システム、放流操作装置、訓練装置、および情報伝達方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ダム管理システムは、様式管理テーブルを格納するデータベースと、データベースにアクセス可能な放流操作装置と、放流操作装置と通信可能な通信装置とを具備する。様式管理テーブルは、ダム管理に係わる情報の通知先ごとに、複数の入力項目を含む様式フォーマットを登録したテーブルである。放流操作装置は、データ収集部と、帳票ファイル作成部と、情報伝達部とを備える。データ収集部は、ダム管理に係わるデータを収集する。帳票ファイル作成部は、収集されたデータに基づく情報を、指定された通知先への様式フォーマットの入力項目に挿入して帳票ファイルを作成する。情報伝達部は、帳票ファイルを通信装置から指定された通知先に宛てて送信させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係わるダム管理システムの一例を示すブロック図。
図2】放流操作装置6の一例を示す機能ブロック図。
図3】様式管理テーブル24bに格納される情報の一例を示す図。
図4】通知条件管理テーブル24cに格納される情報の一例を示す図。
図5】関係機関への情報の通知条件が成立した場合に提示されるガイダンスの一例を示す図。
図6】関連機関通知 帳票一覧画面の一例を示す図。
図7】作成された帳票ファイルの一例を示す図。
図8】送信先選択ウインドウの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。
(構成)
図1は、実施形態に係わるダム管理システムの一例を示すブロック図である。
このダム管理システムは、制御系LAN5および情報系LAN8と、これらに接続され、互いに二重化された放流操作装置6,7を具備する。例えば放流操作装置6が1系、放流操作装置7が2系である。放流操作装置6,7は、例えば産業用コンピュータ(Factory Automation PC:FA-PC)として実現される。
【0010】
放流操作装置6はデータベース61に、放流操作装置7はデータベース71に、それぞれアクセスすることが可能である。データベース61,71は、例えばリレーショナルデータベース(関係データベース)として構築され、ダム運用に係わる種々のテーブルと、問い合わせを受けたデータを目的のテーブルから取り出すデータベースマネジメントシステム(DBMS)とを含む。
【0011】
制御系LAN5には、機側操作盤1に接続された入出力装置2と、貯水位計測装置3および遠方手動操作装置4が接続される。入出力装置2、および遠方手動操作装置4は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)として実現される。
【0012】
放流操作装置6,7は、操作員やダム管理者の操作に応じて、起動指令、ゲートの開放指令、閉鎖指令、あるいは目標開度などを、制御系LAN5を介して入出力装置2に与える。入出力装置2は、放流操作装置6,7からの制御信号を、機側操作盤1を介してダムゲートに入力する。
【0013】
貯水位計測装置3は、ダム貯水位等のデータを計測する。ダム貯水位は、ダム管理に係わるデータの一例である。遠方手動操作装置4は、ダムの各種設備を遠隔から制御するための装置である。
【0014】
情報系LAN8には、情報入力・提供装置9と、訓練装置11とが接続される。
情報入力・提供装置9、訓練装置11は、例えばFA-PCとして実現される。情報入力・提供装置9は、ダム管理システムへの各種の情報の入力や、各種の情報を提供するために用いられる。各種の情報は、例えば放流操作装置6,7の表示モニタや、液晶パネルディスプレイ(表示装置)などに表示される。
【0015】
情報入力・提供装置9は、各種の観測装置10から、流入量、降雨量等の、ダム管理に係わるデータを取得する。また、情報入力・提供装置9は、ファイヤウォール(F/W)93を介してネットワーク100に接続される。
ネットワーク100には、ダム管理に係わる情報の伝達先としての河川事務局201、地方整備局202、本省203、あるいは報道機関204が接続される。つまり情報入力・提供装置9は、ネットワーク100経由で河川事務局201、地方整備局202、本省203、あるいは報道機関204に情報を伝達する、通信装置としても機能する。
【0016】
情報入力・提供装置9は、FAXサーバ91、メールサーバ92にも接続され、これらもファイヤウォール93を介してネットワーク100に接続される。つまり、ダム管理システムから各関係機関にファクシミリやメールでも情報を伝達することができる。
【0017】
図2は、放流操作装置6の一例を示す機能ブロック図である。放流操作装置7も同様の構成である。
放流操作装置6は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサ21、ROM(Read Only Memory)22、およびRAM(Random Access Memory)23を備えるコンピュータである。放流操作装置6は、さらに、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)などの記憶部24、表示部25、マウス26aとキーボード26bを含む操作部26、および、通信部27を備える。
【0018】
ROM22は、BIOS(Basic Input Output System)やUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)などの基本プログラム、および各種の設定データ等を記憶する。RAM23は、記憶部24からロードされたプログラムやデータを一時的に記憶する。放流操作装置6で実行される各種プログラムは、例えばDVD-ROMやCD-ROMに記録されて頒布される。この種の媒体に格納されたプログラムは光学メディアドライブ(図示しない)により読み取られ、記憶部24にインストールされる。
表示部25は、各の情報や設定ウインドウ等を表示し、操作部26のマウス26a、キーボード26bとともにGUI(Graphical User Interface)環境を形成する。
【0019】
通信部27は、制御系LAN5および情報系LAN8に接続され、各ネットワーク経由での通信を制御する。また、通信部27は、情報入力・提供装置9にデータを渡して、ネットワーク100経由で各種の宛先に情報を伝達する。
【0020】
記憶部24は、プロセッサ21により実行されるプログラム24aに加え、様式管理テーブル24b、通知条件管理テーブル24c、および、帳票ファイル24dを記憶する。記憶部24は、様式管理テーブル24bおよび通知条件管理テーブル24cを記憶・管理するデータベース61としての機能も有する。
【0021】
図3は、様式管理テーブル24bに格納される情報の一例を示す図である。
様式管理テーブル24bは、ダム管理に係わる情報の通知先ごとに、複数の入力項目を含む様式フォーマットを登録したテーブルである。
【0022】
ダム管理に係わる情報は、例えば、洪水警戒体制、洪水調節報告(記者発表)、および正常流量管理に分類される。このうち、洪水警戒体制には、ダム出水速報、関係機関通知及び情報、放流警報発令基準、および、常用洪水吐越流予測資料の種別がある。ここで、ダム出水速報には、様式-1が割り当てられる。
【0023】
関係機関通知及び情報は、例えば通知-1、情報-2(1)、…、情報-2(2)といった、それぞれ通知先の異なる情報を含む。異なる通知先に対しては、異なる様式が登録される。それぞれの様式は、情報の具体的な中身を示す帳票名称に対応付けられる。ここで、各様式は、後述するように、例えば時間雨量、累計雨量、日付などの複数の入力項目を含む、フォーマット形式のデータで管理される。
【0024】
なお、図3に示される様式管理テーブル24bは或る特定のダムについての例示であり、様式管理テーブル24bは、一般には、ダムごとに異なる。つまり、伝達すべき用法の種別、分類、使用すべき様式は、ダムの立地する条件や自治体などにより異なる。また、帳票名称や送信の方法(FAXかメールか等)などにおいても、ダムごとに固有の設定がある。つまり様式管理テーブル24bはダムごとに予め作成される。
【0025】
図4は、通知条件管理テーブル24cに格納される情報の一例を示す図である。
通知条件管理テーブル24cは、ダム管理に係わる情報の通知条件を、それぞれの通知先ごとに登録したテーブルである。例えば、様式の通知-1、帳票名称「〇〇ダム洪水警戒体制開始の通知」に対応する情報の通知条件は、「大雨・洪水警報発令、または大雨・洪水注意報発令且つ流域平均雨量がXXmmを超えた」という条件である。このような条件はそれぞれ数式で定式化することができ、ダム管理システムにより取得された各種のデータに基づいて、条件成立の有無を判定することができる。
【0026】
図2に戻って説明を続ける。図2おいて、プロセッサ21は、その機能としてデータ収集部21a、条件成立判定部21b、帳票ファイル作成部21c、情報伝達部21d、ガイダンス提示部21e、データ入力部21f、および、帳票ファイル保存部21gを備える。
【0027】
データ収集部21aは、情報入力・提供装置9を介して、ダム管理に係わるデータ(流入量、降雨量等)を収集する。
条件成立判定部21bは、データ収集部21aにより収集されたデータをモニタし、その結果に基づいて、通知条件管理テーブル24cに登録された情報の通知条件が成立したか否かを判定する。
帳票ファイル作成部21cは、操作員により指定された通知先に対応する様式フォーマットを様式管理テーブル24bから読み出し、上記収集されたデータに基づく情報を、当該様式フォーマットの入力項目に挿入して帳票ファイルを作成する。
情報伝達部21dは、作成された帳票ファイルを情報入力・提供装置9に渡し、情報入力・提供装置9から、指定された通知先に宛てて送信させる。
【0028】
ガイダンス提示部21eは、予め登録された何れかの情報の通知条件が成立したことが条件成立判定部21bにより判定された場合に、帳票ファイルの作成を促すガイダンスメッセージを作成して表示部25に表示して、操作員に提示する。このガイダンスに応じて、操作員が帳票ファイルの作成をシステムに指示すると、帳票ファイル作成部21cは、操作員により指定された通知先に対応する帳票ファイルを作成する。
【0029】
データ入力部21fは、作成された帳票ファイルに対する、操作員によるデータ入力、改変、加工を受け付ける。つまり帳票ファイルは、マウス26aやキーボード26bを用いて、人手により加工したり、修正したりすることができる。
帳票ファイル保存部21gは、情報伝達部21dから情報入力・提供装置9経由で送信された帳票ファイルを、時系列で記憶部24に保存する(帳票ファイル24d)。
【0030】
(作用)
次に、上記構成における作用を説明する。
図5は、関係機関への情報の通知条件が成立した場合に提示されるガイダンスの一例を示す図である。ダム運用において、放流操作装置6は、帳票を作成するのに必要となる各種のデータの収集、演算、および集計処理を繰り返し実行している。その際、例えば、各種観測装置10で観測されたダム貯水量が規定量を超えると、放流操作装置6は、例えば[情報伝達ガイダンス]とタイトルされたダイアログウインドウを表示部25に表示して操作員に警戒を促す。
【0031】
このウインドウには、例えば、[貯水位が警戒水位を超えました。様式〇〇〇を通知しますか?]といったメッセージが、[OK]ボタン、[キャンセル]ボタンとともに表示される。[OK]ボタンがクリックされると、帳票作成のためのメニューウインドウが開かれ、操作員は、メニューから[関連機関通知 帳票一覧]を選択する。そうすると、放流操作装置6は、予め登録された帳票様式(様式フォーマット)を一覧表示する画面[関連機関通知 帳票一覧画面]を表示部25に表示する。
【0032】
図6は、関連機関通知 帳票一覧画面の一例を示す図である。この画面は、通知すべき情報の種別ごとに、対応する様式を一覧で表示する。各様式は、例えば番号(No.)で区別できるようになっている。操作員が、任意の帳票をチェックして選択し、[表示]、[保存]、[印刷]、[送信]、または[ファイル送信]のいずれかのボタンをクリックすることで、対応する処理が実行される。
【0033】
例えば、No.001(様式-1)帳票が選択され、この状態で[表示]ボタンがクリックされたとする。そうすると放流操作装置6は、様式-1のフォーマットを様式管理テーブル24bから取得し、必要な情報を挿入して帳票ファイルを作成して表示部25に表示する。
【0034】
図7は、作成された帳票ファイルの一例を示す図である。この帳票ファイルは、例えば.docxや.pdfなどの形式で作成され、幾つかの入力項目(空白の四角で示す)が設けられている。放流操作装置6は、取得したデータに基づいて各項目に挿入すべきデータを作成し、データを埋め込んで帳票ファイルを作成する。操作員は、表示部25に表示された帳票ファイルのデータを修正したり、日付や日時などの、ダム管理システムで収集されない種類のデータを入力したりできる。
【0035】
図6に戻って説明を続ける。図6の[保存]ボタンがクリックされると、保存先のフォルダ・ファイル名を指定して帳票ファイルを保存することができる。帳票ファイルは、作成された時系列で記憶部24に保存される(帳票ファイル24d)。後に修正が必要になれば、保存後に該当ファイルを呼び出してエディタで編集することができる。
【0036】
図6の[印刷]ボタンがクリックされると、作成した帳票ファイルをプリンタで印刷することができる。
【0037】
図6の[送信]ボタンがクリックされると、作成した帳票ファイルが表示部25に表示され、必要な修正やデータの手入力を経てファイル保存したのち、送信先選択ウインドウが表示される。[ファイル送信]ボタンがクリックされると、ファイル選択画面で任意の帳票ファイルを選択したのち、同様に、送信先選択画面が表示される。
【0038】
図8は、送信先選択ウインドウの一例を示す図である。送信先選択ウインドウには、予め登録された送信先が列挙される。操作員は、チェックボタンをチェックして送信先(複数選択可)を選択し、図8の[送信]ボタンをクリックする。そうすると、放流操作装置6は、対象の帳票ファイルを情報入力・提供装置9に渡し、指定された通知先に宛てて送信させる。
【0039】
帳票ファイルは、FAX、あるいは電子メール等の形式で宛先に送信され、宛先別に時系列に保存される。必要に応じて、送信日時、帳票名、送信先を、送信履歴表示画面に配置して表示部25に表示することができる。
【0040】
(効果)
以上述べたように実施形態では、ダム管理システムに[関連機関通知機能]を導入した。これにより、洪水時のダム管理において、ダム管理者であるユーザがより迅速、かつ正確に状況判断し、関連機関への通知を行えるようなユーザ補助を促進することができる。
【0041】
既存の技術では、主に洪水発生時や訓練時に、国の機関やダムの所在する自治体の各機関に対するダムの状況の通知や放流の事前通知を行う際に、ダムコンから各種情報を操作員が読み取り、定められた様式に手書きまたは手入力で記入し、紙に出力してFAXなどで各関連機関に送信するという作業を行っていた。
【0042】
各種帳票を作成する際は、洪水発生時の切迫した状況であることが多く、ダムの管理や操作などの洪水調節操作に追われ、関連機関への通知が遅れてしまう場合がある。また、洪水調節操作と並行して帳票作成するため、迅速な作業が求められるが、作業が煩雑であることに加え、心理的な要因もあり転記ミスや誤記、誤送信などが起こりうる。
【0043】
昨今、大規模洪水の発生率が年々増加傾向にある中、ダム管理における洪水時対応の頻度は共に増加傾向にあるといえる。洪水時のダム管理において、関連機関への通知のミスや遅れは、下流の被害に甚大な影響を及ぼすことが危惧される。
【0044】
これに対し、実施形態によれば、各様式の関連機関への送信の条件となった場合に、操作員に対して様式毎に送信を促すガイダンスを行うことで、通知の遅れを防ぐことができる。
また、予め準備された様式の定められた欄に、ダム管理システムにより演算、判定した結果を埋め込んで提供することにより、転記ミスや誤記を防ぐことができる。
さらに、操作員が当該様式を確認表示、保存した後、必要な事項を手入力、データ修正を行い、所定の宛先にFAX送信を行うことで作業の効率化を実現することができる。
【0045】
このように、実施形態によれば、従来、手作業で行うことが多かったこれらの帳票を自動作成し、関連機関へ送信通知する機能を実現することができる。従って実施形態によれば、関係機関への情報伝達に係わるサポート機能を充実させたダム管理システム、放流操作装置、訓練装置、および情報伝達方法を提供することが可能となる。ひいては、標準仕様書の枠を超えて、ダムコンのユーザにとって新たなサービスを提供することが可能になる。
【0046】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
例えば、図1の訓練装置11に、放流操作装置6,7と同様の機能を実装しても良い。この場合、訓練装置11は図2のデータ収集部21aに代えて、ダム運用の訓練に係わるシミュレーションデータを作成するデータ作成部を備える。
帳票ファイル作成部21cは、データ作成部により作成されたシミュレーションデータに基づく情報を、指定された通知先への様式フォーマットの入力項目に挿入して、帳票ファイルを作成する。
条件成立判定部21bは、作成されたシミュレーションデータに基づいて、通知条件が成立したか否かを判定する。ガイダンス提示部21eは、通知条件が成立した場合に、帳票ファイルの作成を促すガイダンスメッセージを提示する。さらに、帳票ファイル作成部21cは、ガイダンスメッセージに応じて指定された通知先に対応する帳票ファイルを作成する。
【0047】
訓練装置11は、洪水時の業務を対象として、放流開始時における放流計画立案や放流方式移行時期の判断などを操作員が習得するための装置である。降雨量や流入量の増減を模擬し、操作員が今後放流する各時刻の目標放流量を入力したり、今後行う放流方式を選択して、この目標放流量や放流方式でダム操作を行った場合に、貯水池の挙動や流入量と放流量の対応状況等がどのように変化するかをシミュレーションする機能を有する。
【0048】
このように、訓練装置11に上記各機能を実装することで、洪水時の関連機関への通知も訓練することができる。なお、作成した帳票を実際に送信するか否かは、訓練機能開始時に選択できるようにすればよい。
【0049】
また、実施形態では、帳票ファイルの送信履歴を時系列で記憶し、管理できるようにした。このことを利用し、情報の通知条件が成立して図5のガイダンスメッセージが表示されたのち、一定期間以上経過しても送信が行われない場合に再度送信を促すガイダンス画面を表示するようにしてもよい。
【0050】
また、図2において、様式管理テーブル24b、通知条件管理テーブル24cを放流操作装置6,7に記憶させ、放流操作装置6,7がデータベース61,71を兼ねる形態を示した。これに限らず、ネットワーク100上のデータベースに様式管理テーブル24b、通知条件管理テーブル24cを格納し、ファイヤウォール93経由でアクセスできるようにしても良い。例えば、データセンタやクラウドコンピューティングシステムにデータベース61を設ける形態が考えられる。あるいは、図1の情報系LANにサーバを接続し、このサーバにデータベース61を記憶させても良い。要するに、放流操作装置6,7からアクセスすることが可能であれば、データベース61,71の形態や、様式管理テーブル24b、通知条件管理テーブル24cの格納場所はいずれでもよい。
【0051】
また、実施形態では放流操作装置6,7が表示部25を備える形態を示したが、このほか、放流操作装置6,7に無線アクセス可能なタブレットなどの端末に、ガイダンスメッセージや各種ウインドウを表示しても良い。
【0052】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…機側操作盤、2…入出力装置、3…貯水位計測装置、4…遠方手動操作装置、5…制御系LAN、6…放流操作装置、7…放流操作装置、8…情報系LAN、9…情報入力・提供装置、10…観測装置、11…訓練装置、21…プロセッサ、21a…データ収集部、21b…条件成立判定部、21c…帳票ファイル作成部、21d…情報伝達部、21e…ガイダンス提示部、21f…データ入力部、21g…帳票ファイル保存部、22…ROM、23…RAM、24…記憶部、24a…プログラム、24b…様式管理テーブル、24c…通知条件管理テーブル、24d…帳票ファイル、25…表示部、26…操作部、26a…マウス、26b…キーボード、27…通信部、61,71…データベース、91…FAXサーバ、92…メールサーバ、93…ファイヤウォール、100…ネットワーク、201…河川事務局、202…地方整備局、203…本省、204…報道機関。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8