(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096794
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】ソーダガラス板用合紙及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 27/00 20060101AFI20230630BHJP
B65D 85/48 20060101ALI20230630BHJP
B65D 81/05 20060101ALI20230630BHJP
C03B 40/02 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
D21H27/00 Z
B65D85/48
B65D81/05 200
C03B40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212793
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】田村 篤
(72)【発明者】
【氏名】東 和宏
【テーマコード(参考)】
3E066
3E096
4G015
4L055
【Fターム(参考)】
3E066AA21
3E066CA03
3E066KA20
3E066NA30
3E096BA24
3E096BB05
3E096FA10
3E096GA11
4G015HA00
4L055AA03
4L055AC06
4L055AF09
4L055AG16
4L055CD01
4L055EA04
4L055EA06
4L055EA13
4L055EA31
4L055FA20
4L055GA04
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】
ヤケの生じ難いソーダガラス板用合紙を提供すること。
【解決手段】
木材パルプを主成分とするソーダガラス板用合紙であって、JIS P-8133に準拠して測定した熱水抽出pHが6.5~9.5であり、β線地合計で測定した地合指数が0.6以下であることを特徴とするソーダガラス板用合紙。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプを主成分とするソーダガラス板用合紙であって、JIS P-8133に準拠して測定した熱水抽出pHが6.5~9.5であり、β線地合計で測定した地合指数が0.6以下であることを特徴とするソーダガラス板用合紙。
【請求項2】
前記木材パルプの50質量%以上が広葉樹晒しクラフトパルプであることを特徴とする請求項1に記載のソーダガラス板用合紙。
【請求項3】
灰分が1%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のソーダガラス板用合紙。
【請求項4】
ソーダガラス板用合紙の製造方法であって、
木材パルプを含む原料スラリーを調製するステップと、
前記原料スラリーを、パルプ濃度が0.7質量%以下、pHが6.5~9.5の条件で長網式単層抄紙機に供給し、抄紙を行うステップとを有し、
前記木材パルプの50質量%以上が広葉樹晒しクラフトパルプであることを特徴とするソーダガラス板用合紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーダガラス板用合紙及びその製造方法に関する。具体的にはソーダガラス製のガラス板にヤケが生じ難いガラス板用合紙及びガラス板用合紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築用ガラス板、自動車用ガラス板、ディスプレイ用のガラス板などには安価であることからソーダガラスが幅広く使用されているが、これらのソーダガラス製のガラス板は、保管中やトラック等での搬送中にその表面が汚染されて、製品欠陥が生じることがある。
【0003】
このような汚染が生じるのは、ガラス表面に吸着した水分に溶け出したアルカリ性成分と、空気中の酸性成分やガラス板用合紙中の酸性成分とが反応して炭酸ナトリウムや炭酸カルシウムが析出することによるもので、その結果として、ガラス板表面が汚染されて見た目にも白濁し、本来のガラス特有の透明感が失われてしまうことがある。これは「ヤケ」といわれる現象であり、電子機器の基板に用いられることの多い無アルカリガラス板や石英ガラス板などの比較的高価でアルカリ成分を殆ど含まないガラス板では生じ難いとされているが、ソーダガラス製のガラス板においては一般的に生じやすい現象であるといわれている。
【0004】
ガラス板用の合紙に関しては、ガラス板表面の傷防止や汚染防止を目的とする提案がなされている。例えば、特許文献1には、粘着ピッチ異物の含有密度が0.07個/m2以下である合紙を用いたガラス板梱包体が提案されている。また、特許文献2には、熱水抽出pHが3.5~6.0であるガラス板用合紙が提案されている。また、特許文献3には、ガラス合紙の地合を不均一にすることでクッション性が得られ、傷付きが抑制されるという提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-143542号公報
【特許文献2】特開2017-218718号公報
【特許文献3】特開2016-14205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの合紙では前述したヤケが生じることを完全に防ぐことはできなかった。特に特許文献2に記載の合紙では、ソーダガラスに対して酸性物質が接することとなりヤケの発生を促進してしまうおそれがある。また特許文献3の提案は凸部がよりガラスに強く当たることとなるためヤケ防止の観点からは逆効果となり、使用には適さないと考えられる。
【0007】
本発明はこれらの問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、ヤケの生じ難いソーダガラス板用合紙を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的並びに作用効果については、以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のソーダガラス板用合紙は、木材パルプを主成分とするソーダガラス板用合紙であって、JIS P-8133に準拠して測定した熱水抽出pHが6.5~9.5であり、β線地合計で測定した地合指数が0.6以下であることを特徴とする。このような構成によれば、ヤケの生じ難いソーダガラス板用合紙とすることができる。
【0010】
また、本発明のソーダガラス板用合紙は、前記木材パルプの50質量%以上が広葉樹晒しクラフトパルプであることが好ましい。このような構成によれば、更にヤケの生じ難いソーダガラス板用合紙とすることができる。
【0011】
また、本発明のソーダガラス板用合紙は、灰分が1%以下であることが好ましい。このような構成によれば、更にヤケの生じ難いソーダガラス板用合紙とすることができる。
【0012】
また、本発明はソーダガラス板用合紙の製造方法としても捉えることができる。
【0013】
本発明に係るソーダガラス板用合紙の製造方法は、木材パルプを含む原料スラリーを調製するステップと、前記原料スラリーを、パルプ濃度が0.7質量%以下、pHが6.5~9.5の条件で長網式単層抄紙機に供給し、抄紙を行うステップとを有し、前記木材パルプの50質量%以上が広葉樹晒しクラフトパルプであることを特徴とする。このような構成であれば、ヤケの生じ難いソーダガラス板用合紙を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ソーダガラス製のガラス板の合紙として用いたときにソーダガラス板にヤケが生じ難いソーダガラス板用合紙及びソーダガラス板用合紙の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例及び比較例により得られたソーダガラス板用合紙の組成及び物性を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定
して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0017】
本発明のソーダガラス板用合紙は、JIS P-8133に準拠して測定した熱水抽出pHを6.5~9.5とする。熱水抽出pHをこの範囲とすることにより、ソーダガラス製のガラス板におけるヤケを発生し難くすることができる。熱水抽出pHが6.7~9.0であれば好ましく、7.0~8.5であればより好ましい。熱水抽出pHが6.5未満であるとヤケが生じやすく、ガラス合紙の密度も高くなりやすいことからクッション性が低くなりガラス板にキズが入りやすくなる。熱水抽出pHが9.5を超えると、水酸化ナトリウム等のアルカリ物質がガラス合紙中に残ってしまい、結果としてガラス板に付着してその潮解性により水分を吸収し、ガラスを腐食させてヤケが生じるおそれがある。
【0018】
本発明においてソーダガラス板用合紙の熱水抽出pHを6.5~9.5とする方法に特に制限はないが、一例として、各種アルカリ性物質を使用することで実現できる。このようなアルカリ性物質としては、例えば、水溶性ナトリウムや炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどの弱酸強塩基の塩が挙げられる。また、このようなアルカリ性物質の使用方法としては、例えば抄紙前にアルカリ性物質若しくはその水溶液をパルプスラリーに添加し抄紙することなどが挙げられる。
【0019】
本発明において硫酸バンドは添加しないことが好ましいが、必要に応じて少量添加してもよい。硫酸バンドを使用すると抄紙pHが低下し、結果として熱水抽出pHも下がるため所望する範囲に入らないおそれがある。また、硫酸バンドを大量に添加した上で所望する熱水抽出pHに入れるために水酸化ナトリウムなどのアルカリ分を過剰添加した場合には、結果として塩の発生が多くなりガラス板用合紙ガラス板用合紙中への残留量も増加し、傷の発生につながるおそれがある。このため、硫酸バンドを抄紙前に各種薬品の定着剤として、若しくは抄紙機上での歩留まり向上を目的として添加する場合であってもが、使用量は対パルプで0.5重量部以下であることが好ましく、0.3重量部以下であればより好ましく、硫酸バンドを無添加とすることが最も好ましい。
【0020】
本発明におけるソーダガラス板用合紙は、木材パルプを主成分とする。ここで使用するパルプとしては、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ又はケナフ、バガス、竹、コットンなどの非木材パルプである。これらは、単独で使用するか、又は2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。さらに、合成繊維を品質に支障がでない範囲において使用してもよい。また、環境保全の観点から、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、TCF(Total Chlorine Free)パルプ、古紙パルプ、植林木から得られるパルプを用いることがより好ましい。
【0021】
これらのパルプの中でも、繊維長が短く地合を良くするのに好適であるという理由からLBKPが好ましい。本発明においては、LBKPをパルプ全質量に対して50質量%以上の割合で含むことが好ましく、90質量部%以上であればより好ましく、LBKP100質量部%であれば最も好ましい。NBKPはLBKPと同様に繊維自体が柔らかいため、配合することは好ましいが、反面LBKPよりも繊維長が長いため高配合するとその絡み合いにより地合いが悪くなりガラス板用合紙ガラス板用合紙表面の凸凹が大きくなることで凸部分がガラス表面に強く当たり、結果としてキズが付きやすくなる。パルプ全質量に対してNBKPは50質量%以下が好ましく、30質量%がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。パルプはLBKPとNBKPのみで構成することが好ましく、両者の配合割合がLBKP:NBKP=100:0~50:50がより好ましい。
【0022】
パルプのJIS P 8121:1995年「パルプのろ水度試験方法」に従って測定したカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)は、パルプ全量がLBKPである場合には、200~550mlの範囲であることが好ましく、200~350mlであればより好ましい。フリーネスが200ml未満では、抄紙機上での水切れが悪化するという理由から生産性が下がるおそれがある。逆にフリーネスが550mlを超えると、紙層強度が低下して、ガラス板用合紙ガラス板用合紙として使用する際に紙やぶれが発生するおそれがある。NBKPを配合する場合はフリーネスを400~600mlの範囲とすることが好ましい。
【0023】
本発明においては、発明の効果に影響を及ぼさない範囲で填料を使用しても良い。このような填料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミニウムなどが挙げられ、1種で用いてもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。但し、無機鉱物である填料の使用はガラス板を傷つける可能性があるため、未使用が好ましい。
【0024】
本発明においては、パルプと填料の他に、紙力増強剤、サイズ剤、嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、硫酸バンド、湿潤紙力増強剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、ピッチコントロール剤などを各製品に合わせて配合してもよい。但し、パルプ以外の成分はガラスへの溶出や付着などが考えられるため、未使用が好ましい。先に記したように熱水抽出pHを所望の範囲とするために水酸化ナトリウムを代表とするアルカリ性物質を使用しても良い。硫酸バンドを代表とする酸性物質は使用しない方が好ましく、硫酸バンドは対パルプ0.5重量部以下が好ましく、より好ましくは0.3重量部以下であり、無添加が最も好ましい。
【0025】
本発明においては、適切な叩解度に調整したパルプスラリーを原料スラリーとし、抄紙機で抄紙してソーダガラス板用合紙を形成する。抄紙機としては、長網式抄紙機、円網式抄紙機、ハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマー等の公知の抄紙機を用いて抄紙することができる。ソーダガラス板用合紙の構成は単層でも2層以上の多層としてもよく、例えば、3層とすることができる。ここで適切なガラス板用合紙を得るためには単層抄きが好ましい。ソーダガラス板用合紙の坪量は20~60g/m2と比較的小さい事だけでなく、単層抄きの方が比較的低密度となるためクッション性を持たせることができ衝撃を抑えることができる。密度は0.5~0.7g/cm3が好ましい。
【0026】
本発明によるソーダガラス板用合紙は、表面強度向上のために、サイズプレスなどで澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの公知の水溶性高分子を含むサイズ液を発明の効果に影響を及ぼさない範囲で塗布しても良いが、サイズ液成分のガラス面への溶出などのおそれもあるため、未使用であることが望ましい。
【0027】
本発明によるソーダガラス板用合紙は、抄紙後の乾燥方法を特に限定するものではなく、熱風乾燥、赤外乾燥、ドラム乾燥などの公知の乾燥方法を用いることができ、乾燥後は、必要に応じてカレンダー装置で平滑化処理を行うことができる。但し、本発明にかかるソーダガラス板用合紙は低密度が望ましいため、キャレンダー処理は行わない方が好ましい。
【0028】
本発明によるソーダガラス板用合紙はβ線地合計で測定した地合指数を0.6以下とし、0.3以下であればより好ましい。地合指数は紙の局所的な米坪の隔たりを示し、数値が小さいほど局所的な米坪の隔たりが小さくいわゆる地合の良い紙となる。ここで使用するβ線地合計はβ線放射線源を使用した地合計であり、坪量(米坪量と呼ばれることもある。)の分布を示すものである。広く使用される地合計には光透過によるものがあるが、パルプ成分、填料の種類及び量、色相、白色度、パルプの叩解度合なども変動要素となり局所的な米坪変動を評価するには適していない。従って、本発明においては地合の指標としてβ線地合計で測定した地合指数を用いる。
【0029】
地合指数を0.6以下とするためには、抄紙機入り口における原料スラリーの濃度を0.7質量%以下とすることが好ましく、0.6質量%以下とすればより好ましい。原料スラリー濃度は、水分量で調製することができる。また長網抄紙機の場合、シェーキング装置を使用することが好ましい。地合を良くする傾向にあることから地合指数を0.6以下としやすくなる。尚、地合指数を0.1以下とするにはパルプの叩解をより進める必要があるが、過大な使用電力や抄紙機上の濾水悪化による生産性低下につながるため、地合指数0.1が実質の下限である。β線地合計で測定した地合指数が0.6以下である紙は、局所的な米坪の隔たりが小さいことから局所的な紙の硬さ(クッション性)の隔たりも小さくなりやすい。これによりガラスと圧接された際の圧力が均一に分散されやすくなることでガラス表面への汚染が生じ難く、また傷もつけにくくなる。また、紙の局所的な米坪の隔たりが小さいと、紙の局所的な含有水分の隔たりも小さくなる。紙の局所的な含有水分の隔たりが大きいと、ガラスと圧接した際に含有水分の多い箇所でガラスへ移行する水分量が多くなりやすく、そこに酸性成分が作用することで「ヤケ」が生じやすくなる。しかし、本発明のソーダガラス板用合紙は、β線地合計で測定した地合指数が0.6以下であり且つ熱水抽出pHを6.5~9.5とすることにより含有水分の隔たりが小さいことに加えて酸性成分が作用しにくい構造となっているため「ヤケ」が生じ難い。
【0030】
本発明によるソーダガラス板用合紙は、ナトリウム含有量が150ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であればより好ましい。ナトリウムは「ヤケ」の原因の一つと考えられるため、ナトリウム含有量はより低減することが好ましい。ナトリウムは添加されるナトリウム化合物のみではなくパルプにも含まれるため、ソーダガラス板用合紙のナトリウム含有量はパルプ中のナトリウム含有量の影響も受ける。このため、ナトリウム含有量を低減させるためには、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム等のナトリウム化合物を極力使用しないことだけではなく使用するパルプの選定も重要となる。使用するパルプについてもナトリウム含有量150ppm以下が好ましく、より好ましくは100ppm以下である。
【0031】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【実施例0032】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0033】
(1)熱水抽出pHの測定
各実施例及び比較例にかかるソーダガラス板用合紙の熱水抽出pHをJIS P-8133(1998年)に準拠して測定した。
【0034】
(2)ガラスへの転写試験
各実施例及び比較例にかかるソーダガラス板用合紙(240mm×240mm)6枚をタブレット用カバーガラス(240mm×240mm、厚さ1.1mm、ソーダガラス)7枚の間に1枚ずつ挟み込み、恒温恒室器(温度60℃、湿度95%)に入れ、96時間後のガラス板表面の状態を観察した。くもりや欠点はヤケが生じていることを表す。
◎:ガラス面にくもり、欠点は全く見られない
○:ガラス面にくもり、欠点は殆ど見られない
△:ガラス面にくもり若しくは欠点がわずかに確認できる。(実用下限)
×:ガラス面にくもり、欠点が確認できる。(実用不可)
【0035】
(3)地合指数
各実施例及び比較例にかかるソーダガラス板用合紙の単位坪量をAMBERTEC社製ベータフォーメーションテスターを用いて下記の測定ピッチで測定し、下記の計算式に従い坪量規格化標準偏差(n.s.d=normalized standard deviation)を指標とし地合指数とした。
坪量規格化標準偏差(g/m)1/2=坪量の標準偏差(g/m2)/坪量(g/m2)1/2
測定条件:測定面積20mm×20mm、測定ピッチ3.5mm×3.5mm
【0036】
(4)灰分
各実施例及び比較例にかかるソーダガラス板用合紙の灰分をJIS P-8251(2003年)に準拠して測定した。
【0037】
[実施例1]
フリーネスが250mlCSF(カナダ標準ろ水度)となるように叩解した広葉樹晒しクラフトパルプ100部のパルプスラリーに、熱水抽出pHが7.2となるように水酸化ナトリウムを添加して長網単層抄紙機にて抄紙、乾燥して坪量45g/m2のソーダガラス板用合紙を得た。この時の抄紙機入口のパルプスラリー濃度は0.4%であった。
【0038】
[実施例2]
パルプスラリーの熱水抽出pHが6.6となるように水酸化ナトリウムの添加量を変更した以外は実施例1と同様とし、実施例2にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0039】
[実施例3]
パルプスラリーの熱水抽出pHが6.9となるように水酸化ナトリウムの添加量を変更した以外は実施例1と同様とし、実施例3にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0040】
[実施例4]
パルプスラリーの熱水抽出pHが7.1となるように水酸化ナトリウムの添加量を変更した以外は実施例1と同様とし、実施例4にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0041】
[実施例5]
パルプスラリーの熱水抽出pHが8.0となるように水酸化ナトリウムの添加量を変更した以外は実施例1と同様とし、実施例5にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0042】
[実施例6]
パルプスラリーの熱水抽出pHが8.4となるように水酸化ナトリウムの添加量を変更した以外は実施例1と同様とし、実施例6にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0043】
[実施例7]
パルプスラリーの熱水抽出pHが9.1となるように水酸化ナトリウムの添加量を変更した以外は実施例1と同様とし、実施例7にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0044】
[実施例8]
広葉樹晒しクラフトパルプ100部を、広葉樹晒しクラフトパルプ90部とフリーネス500mlCSFに叩解した針葉樹晒しクラフトパルプ10部に変更した以外は実施例1と同様とし、実施例8にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0045】
[実施例9]
広葉樹晒しクラフトパルプ100部を、広葉樹晒クラフトパルプ70部とフリーネス500mlCSFに叩解した針葉樹晒クラフトパルプ30部に変更した以外は実施例1と同様とし、実施例9にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0046】
[実施例10]
広葉樹晒しクラフトパルプ100部を、広葉樹晒クラフトパルプ50部とフリーネス500mlCSFに叩解した針葉樹晒クラフトパルプ50部に変更した以外は実施例1と同様とし、実施例10にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0047】
[実施例11]
抄紙機入口のパルプスラリー濃度が0.4%から0.6%に変更した以外は実施例1と同様とし、実施例11にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0048】
[実施例12]
広葉樹晒しクラフトパルプ100部を、広葉樹晒クラフトパルプ20部とフリーネス500mlCSFに叩解した針葉樹晒クラフトパルプ80部に変更した以外は実施例1と同様とし、実施例12にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0049】
[実施例13]
抄紙機入口のパルプスラリー濃度が0.4%から0.8%に変更した以外は実施例1と同様とし、実施例13にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0050】
[実施例14]
パルプスラリーに灰分が0.9%となるように湿式粉砕重質炭酸カルシウム(カービタル60、イメリスミネラルズジャパン社製)を添加したこと以外は実施例1と同様とし、実施例14にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0051】
[比較例1]
水酸化ナトリウムを添加せずに硫酸バンドを使用してパルプスラリーの熱水抽出pHを6.1に調整した以外は実施例1と同様とし、比較例1にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0052】
[比較例2]
パルプスラリーの熱水抽出pHが9.7となるように水酸化ナトリウムの添加量を変更した以外は実施例1と同様とし、比較例2にかかるソーダガラス板用合紙を得た。
【0053】
各実施例及び比較例で得られたガラス板用合紙の組成及び物性が
図1に示されている。各実施例および比較例で得られたガラス板用合紙の転写試験を行った結果、実施例1~14のガラス板用合紙を用いたガラス板の表面にはくもりや欠点はほとんど見られなかった。一方で、比較例1はソーダガラス板用合紙中の酸性物質の影響でソーダガラス板の表面にヤケ(白濁)がみられた。また比較例2はソーダガラス板用合紙中に水酸化ナトリウムが残留していたためかガラス板表面にヤケがみられた。