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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096798
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】防水の施工方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/71 20060101AFI20230630BHJP
   E01D 19/08 20060101ALI20230630BHJP
   E04B 1/66 20060101ALN20230630BHJP
【FI】
C04B41/71
E01D19/08
E04B1/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212799
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前原 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将充
(72)【発明者】
【氏名】早川 健司
【テーマコード(参考)】
2D059
2E001
4G028
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG02
2D059GG22
2E001DA01
2E001EA01
2E001FA18
2E001FA29
2E001FA30
2E001GA11
2E001HD11
4G028FA01
(57)【要約】
【課題】湿潤面に対しても剥離抵抗性の高い防水層を形成することができる防水の施工方法を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物の表面に防水層を形成する防水の施工方法である。
そして、表面の粗さを確認するステップS11,S12と、表面の粗さが所定の範囲内となる表面を水洗浄するステップS14と、表面の湿潤状態を確認するステップS15,S16と、湿潤状態が所定の範囲内となる場合に、付与する圧力を管理しながらプライマーを塗布するステップS17と、プライマーの上に防水層の主材を塗布するステップとを備えている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の表面に防水層を形成する防水の施工方法であって、
前記表面の粗さを確認するステップと、
前記表面の粗さが所定の範囲内となる前記表面を水洗浄するステップと、
前記表面の湿潤状態を確認するステップと、
前記湿潤状態が所定の範囲内となる場合に、付与する圧力を管理しながらプライマーを塗布するステップと、
前記プライマーの上に防水層の主材を塗布するステップとを備えたことを特徴とする防水の施工方法。
【請求項2】
前記表面の粗さを確認するステップの前又は後に、前記表面を研磨するステップが行われることを特徴とする請求項1に記載の防水の施工方法。
【請求項3】
前記湿潤状態の確認は、表面含水率を測定することによって行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の防水の施工方法。
【請求項4】
前記プライマーを塗布する際の圧力の管理は、塗布時に0.5MPa以上の圧力が付与されることが確認可能な塗布方法によって行われることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の防水の施工方法。
【請求項5】
前記主材の上には、仕上げ材が塗布されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の防水の施工方法。
【請求項6】
前記プライマーの上には、2回に分けて主材が塗布されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の防水の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の表面に防水層を形成する防水の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、橋梁の床版などのコンクリート構造物の表面に、防水層を形成する施工が行われている。特許文献1には、床版の表面の含水率の測定、塗布した材料の膜厚の測定、ピンホールテストなどを自動で行う床版防水層施工システムが開示されている。こうした防水層の形成は、コンクリート表面への付着が確保できるように、一般的には乾燥面に対して行われる。
【0003】
一方、特許文献2には、湿潤面に施工しても、付着が良好となるうえに膨れが防止できるように、水系エポキシ樹脂を用いて下塗り層を形成し、下塗り層の硬化後に、水系ウレタン樹脂からなる中塗り層を塗布する施工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-157448号公報
【特許文献2】特開2005-273147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、塗布面が乾燥していることが条件になる場合は、水洗浄後や降雨などによる滞水があるときには、乾燥させる工程が必要となり、工期を長引かせる要因となる。一方、特許文献2に開示されているように、湿潤面用の特殊な材料を用いる場合は、防水層としての性能が確保できているか、個別に確認する必要がある。すなわち、付着性の評価は、一般的には鉛直方向の引張試験(建研式接着試験)における付着強さによって行っているが、その付着強さと、その他の性能(すり減り抵抗性、膨れ抵抗性、剥離抵抗性)とは、一概に一致しないことがある。
【0006】
そこで本発明は、湿潤面に対しても剥離抵抗性の高い防水層を形成することができる防水の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の防水の施工方法は、コンクリート構造物の表面に防水層を形成する防水の施工方法であって、前記表面の粗さを確認するステップと、前記表面の粗さが所定の範囲内となる前記表面を水洗浄するステップと、前記表面の湿潤状態を確認するステップと、前記湿潤状態が所定の範囲内となる場合に、付与する圧力を管理しながらプライマーを塗布するステップと、前記プライマーの上に防水層の主材を塗布するステップとを備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、前記表面の粗さを確認するステップの前又は後に、前記表面を研磨するステップが行われる構成とすることもできる。また、前記湿潤状態の確認は、表面含水率を測定することによって行うことができる。
【0009】
さらに、前記プライマーを塗布する際の圧力の管理は、塗布時に0.5MPa以上の圧力が付与されることが確認可能な塗布方法によって行われることが好ましい。また、前記主材の上には、仕上げ材が塗布される構成とすることができる。さらに、前記プライマーの上には、2回に分けて主材が塗布される構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された本発明の防水の施工方法は、表面の粗さが所定の範囲内であることが確認されたコンクリート構造物を水洗浄し、表面が湿潤状態のままで、付与する圧力を管理しながらプライマーを塗布する。
【0011】
要するに、コンクリート構造物の表面が湿潤面であっても、乾燥を待たずに、速やかに防水層の施工を行うことができる。また、付与する圧力を管理しながらプライマーを塗布することで、剥離抵抗性の高い防水層を形成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態の防水の施工方法の処理の流れを説明するフローチャートである。
図2】下地処理方法の違いによる表面粗さの違いを説明するグラフである。
図3】コンクリートの表面状態の違いによるプライマーの作用を説明する図であって、(a)はコンクリートの表面が乾燥面であったときの説明図、(b)はコンクリートの表面が湿潤面であったときの説明図である。
図4】乾燥面と湿潤面にプライマーを塗布したときの付着強さを比較した説明図である。
図5】乾燥面と湿潤面にプライマーを塗布したときの見掛けの剥離抵抗性を比較した説明図である。
図6】プライマーを塗布するまでの処理の具体例を説明するフローチャートである。
図7】圧力測定フィルムを使用して、プライマーを塗布する圧力を管理する方法を説明するための説明図である。
図8】圧力測定フィルムを使用して管理可能な様々なプライマーの塗布方法を例示した説明図である。
図9】圧力センサーシートを使用して、プライマーを塗布する圧力を管理する方法を説明するための説明図である。
図10】圧力センサーシートを使用して管理可能な様々なプライマーの塗布方法を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の防水の施工方法の主な処理の流れを説明するフローチャートである。
【0014】
橋梁の床版や高欄、ボックスカルバートの床面や壁面、トンネルの覆工面など、コンクリート構造物の表面には、必要に応じて防水層が設けられる。防水層は、コンクリート構造物の建設時に設けられる場合もあるし、完成後の修繕時などに設けられる場合もある。本実施の形態の防水の施工方法は、乾燥工程を必要としないので、降雨や漏水などによる滞水がある箇所で、下地となるコンクリート表面を乾燥面とすることが難しい場合にも適用することができる。
【0015】
防水層を形成する際には、コンクリート構造物の表面に対して、下地処理が施される(ステップS1)。下地処理は、コンクリート構造物の表面の状態によって異なるが、修繕時などでは、防水層の密着性を高めるために、研磨処理が行われる。
【0016】
下地処理では、カップサンダー等を用いて、下地となるコンクリート構造物の表面をケレンして、脆弱部や不純物を除去する。下地コンクリートの表面の粗さ程度が、防水層の付着性や剥離抵抗性に影響を及ぼすことから、目標とする表面の粗さに応じて下地処理の方法を選択する。
【0017】
図2は、下地処理方法の違いによる表面粗さの違いを説明するグラフである。縦軸の表面粗さは(μm)は、算術平均粗さを示している。この図を見ると分かるように、表面を粗く仕上げたい場合は、粒子状の研磨材を吹き付けるブラストによる表面加工処理や、カップサンダーによる切削などの研磨処理を行うことになる。
【0018】
コンクリートの表面の算術平均粗さ(Ra)は、ハンディタイプの3Dスキャナ型測定機(例えば、Innovalia Metrology社製)等を用いて、測定することができる。通常は、コンクリートの表面は粗い方がよいので、研磨処理後に3Dスキャナ型測定機を使用して、コンクリート表面の算術平均粗さ(Ra)が、所定の値以上になっていることを確認する。
【0019】
研磨処理後は、コンクリート表面を水洗いして、研磨粉等を除去する清掃を行う(水洗浄)。そして、水洗浄後のコンクリート表面に対しては、掃除機、スポンジ、布等を用いて、浮き水の除去を行う(ステップS2)。
【0020】
図3は、コンクリートの表面状態の違いによるプライマーの作用を模式的に説明する図である。図3(a)は、コンクリートの表面が乾燥面であったときにプライマーを塗布した状態を示している。
【0021】
一般的な従来工法では、コンクリート表面を乾燥状態にした乾燥面に、プライマーが塗布されることになるので、骨材周辺やセメントペーストの凹凸部にプライマーが食い込む機械的結合によって、アンカー効果が期待できるようになる。
【0022】
これに対して、コンクリート表面から浮き水を除去しただけの湿潤面にプライマーが塗布されると、骨材周辺やセメントペーストの凹凸部には水が先に入り込んでいて、プライマーが入り込むことができない。
【0023】
そして、図3(b)に示すように、水分が蒸発しても、硬化後のプライマーが骨材周辺やセメントペーストの凹凸部に入り込むことはないので、コンクリート表面の分子間相互作用による物理的結合しか得ることができない。このため、通常の施工方法では、乾燥面より湿潤面にプライマーを塗布したときの方が、付着力が弱くなる。このことは、乾燥面と湿潤面のそれぞれに防水材を施工し、付着試験後の表面をSEM-EDX分析により観察した結果から確認できている。この観察によれば、プライマー由来の炭素の量が乾燥面では検出される量が多いのに対して、湿潤面ではそれが少なかったことから、図3(a),(b)の概念図で示したような状態になっていると考えられる。
【0024】
図4は、乾燥面と湿潤面にプライマーを塗布したときの付着強さを比較した説明図である。付着性の評価は、一般的に鉛直方向の引張試験(建研式接着試験)における付着強さ(N/mm2)によって評価されるので、まずはその結果を示した。
【0025】
ここで、引張試験は、乾燥面については、表面の算術平均粗さ(Ra)が8μm程度の供試体で行った。一方、浮き水を除去した直後の湿潤面(表面含水率5%程度)についても、表面の算術平均粗さ(Ra)が8μm程度の供試体で行った。いずれもプライマーは、刷毛で塗布し、プライマーの上には防水層の主材を塗布することで防水材を形成した。
【0026】
そして、乾燥面の付着強さと、湿潤面の「刷毛塗りのみ」の付着強さとを比較すると、湿潤面になることで、付着強さが2.12(N/mm2)から1.57(N/mm2)に低下していることが分かる。一方、付着強さと、剥離抵抗性、すり減り抵抗性、膨れ抵抗性などのその他の性能とは、一概に一致しない場合があると言われている。
【0027】
例えば、「コンクリート構造物に用いられる表面被覆工法の耐久性評価手法に関する研究」(山田卓司、京都大学博士論文、2014)では、塗布型防水の剥離抵抗性を、見掛けの剥離抵抗性試験によって評価している。
【0028】
そこで、図5に示すように、乾燥面と湿潤面にプライマーを塗布したときの見掛けの剥離抵抗性を比較する実験も行った。見掛けの剥離抵抗性(N/mm)は、剥離に要した仕事量(N・mm)を剥離面積(mm2)で割ることによって求めることができる。
【0029】
見掛けの剥離抵抗性の結果を見ても、湿潤面(刷毛塗りのみ)となることで、乾燥面と比べて、剥離抵抗性が26.3(N/mm)から1.9(N/mm)に著しく低下していることが分かる。すなわち、乾燥面と同じ刷毛塗りだけで湿潤面にプライマーを塗布しても、付着性が低下するだけでなく、剥離抵抗性については、著しく性能が低下することが明らかになった。
【0030】
そこで、湿潤面に対しては、乾燥面と異なるプライマーの塗布方法を適用することにする。すなわち、湿潤面に対しては、刷毛塗り後に、0.5MPa以上の圧力をコテで加えることで、付着性と剥離抵抗性がどのように変化するかを実験で確認した。
【0031】
コテで圧力を付与する実験(コテ圧力あり)については、表面の算術平均粗さ(Ra)が1~2μm程度と、2~4μm程度と、8μm程度という3種類の供試体を使い、湿潤面にして実験を行った。
【0032】
図4に示すように、付着強さについては、コテで圧力を付与した「コテ圧力あり」と「刷毛塗りのみ」とでは、大きな差はなく、同程度の結果となった。また、表面の算術平均粗さ(Ra)の差に関しても、ほぼ同程度の結果になり、コテで圧力を付与する場合は、表面の粗さは付着強さの試験結果にほとんど影響しないことが分かった。なお、「刷毛塗りのみ」の場合は、実験は行っていないが、上述したように表面の粗さが付着性に影響を与えることが知られているので、湿潤面では、コテで圧力を付与することによって、付着強さが高められると言える。
【0033】
これに対しては、剥離抵抗性については、湿潤面であっても、コンクリート表面の算術平均粗さ(Ra)が8.0μm程度の場合では、「刷毛塗りのみ」のケースと比べて、0.5MPa以上の圧力を加えた「コテ圧力あり」とすることで、剥離抵抗性が1.9(N/mm)から18.3(N/mm)と大幅に増加した。すなわち、湿潤面では、骨材周辺やセメントペーストの凹凸部に水が入り込んでいても、圧力を加えることでプライマーが入り込み、剥離抵抗性が向上すると考えられる。
【0034】
一方、コンクリート表面の算術平均粗さ(Ra)が、1~2μm程度と2~4μm程度という粗さが小さいケースでは、「コテ圧力あり」としても、見掛けの剥離抵抗性は、大幅には増加していない。しかしながら、コンクリート表面が粗くなる方が見掛けの剥離抵抗性が大きくなる傾向は確認でき、表面の算術平均粗さ(Ra)を4μmより大きくすることで、骨材周辺やセメントペーストの凹凸部の程度が大きくなり、一定以上の剥離抵抗性が得られるようになると考えられる。
【0035】
また、剥離抵抗性の試験の際に破壊形態を観察すると、コンクリート表面の算術平均粗さ(Ra)が8.0μm程度で「コテ圧力あり」のケースでは、乾燥面のように防水材が破断する状態で破壊していることが確認できた。
【0036】
他方、コンクリート表面の算術平均粗さ(Ra)が1~2μm程度のケースでは、コンクリートとプライマーとの間で剥離する破壊形態となったことから、破壊形態の違いからも、コンクリート表面を粗くして圧力を付与しながらプライマーを塗布することで、剥離抵抗性が向上することが明らかになった。
【0037】
そこで、本実施の形態の防水の施工方法では、コンクリート表面の粗さが所定の範囲内となるようにするとともに、所定値以上の圧力が付与されるように管理しながらプライマーを塗布することにする。
【0038】
図6は、図1のステップS1からステップS4までの工程について、具体的な処理の流れを説明するフローチャートである。
【0039】
まず、ステップS11では、脆弱部や不純物の除去や研磨処理などの下地処理後、又は研磨処理などを行う前の現状を確認するために、コンクリート表面の粗さの測定を行う。測定は、上述した3Dスキャナ型測定機などを使用して、コンクリート表面の算術平均粗さ(Ra)を測定する。
【0040】
ステップS12では、測定された算術平均粗さ(Ra)の測定値の確認を行う。算術平均粗さ(Ra)が5μm~100μmであれば、本実施の形態の防水の施工方法の適用範囲となり、ステップS14に移行することができる。
【0041】
他方、算術平均粗さ(Ra)が5μm~100μmの範囲外であれば、ステップS13に移行して、コンクリート表面のケレンなどの下地処理を行う。好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が8μm~50μmの最適範囲に入るように、下地処理を行う。
【0042】
コンクリート表面の粗さが所定の範囲内となっている状態で、コンクリート表面の清掃や水洗いなどの水洗浄を行う(ステップS14)。水洗浄後は、浮き水など水分除去を行い、表面含水率の測定を行う(ステップS15)。
【0043】
表面含水率は、表面含水率計や水分計によって測定することができる。例えば、表面が対象の場合、ケット社製のHI-100などの電気抵抗式の表面含水率計によって測定することができる。また、一定の厚みがあるものが対象の場合は、ケット社製のHI-520などの静電容量式の水分計によって測定することができる。
【0044】
ステップS16では、表面含水率計(HI-100)を用いて測定された読み値を確認し、1%~6%の範囲内であれば、本実施の形態の防水の施工方法の適用範囲となるので、ステップS17に移行する。ここで、より好ましい最適範囲は、2%~5%である。この表面含水率計による測定が、ステップS3のコンクリート表面の湿潤状態の確認になる。
【0045】
表面含水率が上限値以上の場合は、ステップS15に戻って、水分除去などの作業を続ける。これに対して、表面含水率が下限値以下となっている場合は、コンクリート表面が乾燥面となっていると言えるので、従来工法と同様に、筆、刷毛、ブラシ、ヘラ、コテ、ローラーなどによって、プライマーの塗布を行うだけでよい(ステップS18)。
【0046】
そして、コンクリート表面が湿潤面であると判定されてステップS17に移行した場合は、付与する圧力を管理しながら、コンクリート表面にプライマーを塗布する。プライマーを塗布する際の圧力の管理は、例えば上記実験結果に基づいて、塗布時に0.5MPa以上の圧力が付与されることが確認可能な塗布方法によって行われる。
【0047】
図7は、圧力測定フィルムを使用してプライマーを塗布する圧力を管理する方法を説明するための説明図である。圧力測定フィルムとは、一定以上の圧力が付与されると着色が起きる感圧紙である。
【0048】
プライマーは、例えば刷毛やローラーでコンクリート表面に塗布した後に、ゴムヘラやコテによって所定値以上の圧力が付与される。例えばゴムヘラの下面に圧力測定フィルムを貼り付け、プライマーの塗布中に着色が起きる状態にする。このゴムヘラの塗布時にたわみが生じる箇所には、ひずみゲージが取り付けられており、圧力測定フィルムが着色した時のひずみが測定できるようになっている。
【0049】
例えば0.5MPa以上の圧力が付与されたときに着色が起きる圧力測定フィルムをゴムヘラの下面に貼り付け、着色時のひずみを、ひずみゲージに接続したデータロガーを介してパーソナルコンピュータ(PC)に管理値として記憶させる。そして、実際の施工時には、ひずみゲージによって測定されるひずみの測定値を見て、管理値以上になっていることを確認しながら、ゴムヘラによる圧力の付与を行う。
【0050】
図8は、圧力測定フィルムを使用して管理可能な様々なプライマーの塗布方法を例示した説明図である。上述したゴムヘラによる圧力が管理された塗布は、コテ、ローラー、ヘラ、筆、刷毛、ブラシなど、別の道具を使用する場合にも適用することができる。
【0051】
図9は、圧力センサーシートを使用してプライマーを塗布する圧力を管理する方法を説明するための説明図である。圧力センサーシートは、面圧分布を電気的に測定可能なセンサで、データロガーを介してパーソナルコンピュータ(PC)に接続して使用する。
【0052】
例えば、プライマーを塗布する道具となるゴムヘラの下面に圧力センサーシートを貼り付け、プライマーの塗布中の圧力を測定する。例えば0.5MPa以上の圧力を付与しながらプライマーの塗布を行う場合は、圧力センサーシートによる測定値が、0.5MPa以上になっていることを確認しながら施工を行う。
【0053】
図10は、圧力センサーシートを使用して管理可能な様々なプライマーの塗布方法を例示した説明図である。上述したゴムヘラによる圧力が管理された塗布は、コテ、ローラー、ヘラなど、別の道具を使用する場合にも適用することができる。
【0054】
いずれの道具を使用する場合も、圧力センサーシートは、フィルムなどで覆って保護し、有線の配線が施工に影響を与える場合は、無線によって圧力センサーシートとデータロガーとを接続させることもできる。コテを使用する場合は、コテ塗布側面に圧力センサーシートを設置する。ローラーを使用する場合は、ローラー側面に圧力センサーシートを設置する。ヘラを使用する場合は、ヘラ塗布側面に圧力センサーシートを設置する。
【0055】
塗布するプライマーとしては、例えばA剤としてのポリオール及び水と、B剤としてのイソシアネートプレポリマーとを、A剤:B剤=105:145となるように混合した材料を使用することができる。上記した実験は、この材料を使用して行った。例えば、標準使用量は0.2~0.4 kg/m2とし、次工程との間隔を4時間から3日間程度設ける。
【0056】
適用可能なプライマーは、上記に限定されるものではなく、湿潤面での付着強さ(建研式接着試験)が1.0 N/mm2以上となる材料であればよい。例えば水中硬化型エポキシ樹脂(A剤 エポキシ樹脂:B剤 変形脂肪族ポリアミン三級アミンポリチオール=200:100)などを使用することができる。また、防錆用常温硬化の硬質1液型エポキシ樹脂系プライマーなどを使用することもできる。
【0057】
続いて、図1を参照しながら、プライマー塗布後の施工について説明する。
ステップS5では、プライマー層の上に、1回目の主材を塗布する。主材の塗布は、例えばステップS6に示したように、2回に分けて行うことが好ましい。
【0058】
使用する主材としては、例えばA剤としてのポリオール及び水と、B剤としてのイソシアネートプレポリマーとを、A剤:B剤=40:100となるように混合した材料を使用することができる。例えば、1回の標準使用量は0.4 kg/m2とし、次工程との間隔を4時間から3日間程度設ける。
【0059】
また別の種類の主材として、A剤としてのウレタン樹脂と、B剤としてのウレア樹脂とを、A剤:B剤=100:180となるように混合したウレタン・ウレア塗膜を使用することもできる。例えば、標準使用量は1.5 kg/m2とし、次工程との間隔を4時間から3日間程度設ける。
【0060】
そして、ステップS7では、仕上げ材を塗布する。仕上げ材としては、ポリウレタン樹脂系の材料を、標準使用量として0.2 kg/m2程度、塗布する。
【0061】
次に、本実施の形態の防水の施工方法の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の防水の施工方法は、表面の粗さが所定の範囲内であることが確認されたコンクリート構造物を水洗浄し、表面が湿潤状態のままで、付与する圧力を管理しながらプライマーを塗布する。
【0062】
要するに、コンクリート構造物の表面が湿潤面であっても、乾燥を待たずに、速やかに防水層の施工を行うことができる。このため、降雨や漏水などによる滞水がある箇所で、下地となるコンクリート表面を乾燥面とすることが難しい場合でも、工期を長引かせることなく防水層の施工を行うことができる。
【0063】
また、付与する圧力を管理しながらプライマーを塗布することで、剥離抵抗性の高い防水層を形成することができるようになる。また、コンクリート表面が湿潤面であっても、プライマーの塗布時に圧力を付与することで、防水層とコンクリート構造物の表面との付着性を高めることができる。
【0064】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0065】
例えば、前記実施の形態では、コンクリート構造物の表面を研磨処理する場合について主に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば新設のコンクリート構造物の表面に防水層を形成する場合は、研磨処理を行わずに、プライマーを塗布することもできる。すなわち、新設の表面の粗さが所定の範囲内となっていれば、そのままプライマーを塗布することもできるし、研磨処理の代わりにレイタンス除去による目荒らしをしてプライマーを塗布することもできる。
【0066】
また、前記実施の形態において、1回のプライマーの塗布ステップの中で、コンクリート構造物の同一面を複数回塗布することが考えられるが、その場合、当該ステップにおいて少なくとも1回以上、所定値以上(例えば0.5MPa以上)に圧力が管理されたプライマーの塗布が行われればよい。一方、プライマーを2層以上にして塗布することもできるが、その場合は、圧力が管理された塗布方法は、1回目の塗布時に行うことが好ましい。
【0067】
さらに、前記実施の形態では、主材の塗布回数は2回とする場合について主に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、防水性能が確保されるのであれば、工期短縮又は施工費用の削減などを目的に、1回で主材を塗布してもよい。また、下水道施設など、環境条件の厳しい部位に対して通常より膜厚を厚くして塗布する場合には、3回以上に分けて主材を塗布することもできる。
【0068】
また、前記実施の形態では、仕上げ材を塗布する場合について主に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、直射日光にさらされないことが明らかな地下構造物などに塗布する場合には、仕上げ材の塗布を省略することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10