(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096808
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】光電センサ、及び、受光ユニット
(51)【国際特許分類】
G01V 8/12 20060101AFI20230630BHJP
H03K 17/78 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
G01V8/12 J
H03K17/78 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212817
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 文隆
(72)【発明者】
【氏名】神谷 二朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一平
(72)【発明者】
【氏名】内田 裕太
【テーマコード(参考)】
2G105
5J050
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB16
2G105BB17
2G105CC03
2G105DD03
2G105EE01
2G105FF02
2G105FF03
2G105FF12
2G105HH04
5J050AA13
5J050BB18
5J050BB20
5J050EE34
5J050EE35
5J050EE39
5J050EE40
5J050FF04
5J050FF10
(57)【要約】
【課題】光電センサにおいて、受光信号に含まれ得るノイズを考慮して物体の検知を精度良く行う。
【解決手段】光電センサは、パルス光を投光する投光ユニットと、投光ユニットから投光されたパルス光を受光する受光ユニットとを備え、受光ユニットは、パルス光を含む光を受光し、当該受光した光に基づく受光信号を出力する受光素子と、受光信号に所定のフィルタを施すフィルタ回路と、フィルタ回路から出力される受光信号の信号レベルのうち採用範囲内の信号レベルに基づいてオフセット値を決定し、オフセット値に基づいて閾値を決定するオフセット回路と、フィルタ回路から出力される受光信号の信号レベルと閾値とを所定の周期にて比較する比較回路とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光を投光する投光ユニットと、前記投光ユニットから投光された前記パルス光を受光する受光ユニットと、を備える光電センサであって、
前記受光ユニットは、
前記パルス光を含む光を受光し、当該受光した光に基づく受光信号を出力する受光素子と、
前記受光信号に所定のフィルタを施すフィルタ回路と、
前記フィルタ回路から出力される前記受光信号の信号レベルのうち採用範囲内の前記信号レベルに基づいてオフセット値を決定し、前記オフセット値に基づいて閾値を決定するオフセット回路と、
前記フィルタ回路から出力される前記受光信号の信号レベルと前記閾値とを所定の周期にて比較する比較回路と、を備える、
光電センサ。
【請求項2】
前記オフセット回路は、
前記所定の周期に対応する期間における前記採用範囲内の複数の前記信号レベルの平均値に基づいて前記オフセット値を決定する、
請求項1に記載の光電センサ。
【請求項3】
前記オフセット回路は、
前記周期に対応する期間における前記複数の信号レベルのうち前記採用範囲外の前記信号レベルを、前記周期に対応する期間における前記複数の信号レベルのうち前記採用範囲内の少なくとも1つの信号レベルに置換し、
置換後の前記複数の信号レベルの平均値に基づいて前記オフセット値を決定する、
請求項2に記載の光電センサ。
【請求項4】
前記オフセット回路は、
前記周期に対応する期間における前記複数の信号レベルのうち前記採用範囲外の信号レベルを除外し、
除外後の前記複数の信号レベルの平均値に基づいて前記オフセット値を決定する
請求項2に記載の光電センサ。
【請求項5】
前記オフセット回路は、
前記周期に対応する期間における前記採用範囲内の複数の信号レベルのうちの最大の信号レベルと最小の信号レベルの平均値に基づいて前記オフセット値を決定する、
請求項2に記載の光電センサ。
【請求項6】
前記オフセット回路は、
前記周期に対応する期間における前記採用範囲内の複数の信号レベルのうちの最大の信号レベルに基づいて前記オフセット値を決定する、
請求項1に記載の光電センサ。
【請求項7】
前記オフセット回路は、
前記周期に対応する期間における前記採用範囲内の複数の前記信号レベルのうちの最小の信号レベルに基づいて前記オフセット値を決定する、
請求項1に記載の光電センサ。
【請求項8】
前記オフセット回路は、
前記周期に対応する期間における前記採用範囲内の複数の信号レベルのうちの少なくとも2つの信号レベルの平均値に基づいて前記オフセット値を決定する、
請求項2に記載の光電センサ。
【請求項9】
前記オフセット回路は、
前記周期に対応する期間における前記採用範囲内の複数の信号レベルのうちの1つの信号レベルに基づいて前記オフセット値を決定する、
請求項1に記載の光電センサ。
【請求項10】
前記オフセット回路は、
前回の前記周期に対応する期間に基づいて決定した前回のオフセット値から所定の値を減算した値を前記採用範囲の下限値とし、前記前回のオフセット値に所定の値を加算した値を前記採用範囲の上限値とする、
請求項2から9のいずれか1項に記載の光電センサ。
【請求項11】
前記オフセット回路は、
前記前回のオフセット値が存在しない場合、予め定められた採用範囲内の少なくとも1つの信号レベルに基づいて前記前回のオフセット値を決定する、
請求項10に記載の光電センサ。
【請求項12】
前記オフセット回路は、
前記前回のオフセット値が存在しない場合、予め定められた値を前記前回のオフセット値とする、
請求項10に記載の光電センサ。
【請求項13】
投光されるパルス光を含む光を受光し、当該受光した光に基づく受光信号を出力する受光素子と、
前記受光信号に所定のフィルタを施すフィルタ回路と、
前記フィルタ回路から出力される前記受光信号の信号レベルのうち採用範囲内の前記信号レベルに基づいてオフセット値を決定し、前記オフセット値に基づいて閾値を決定するオフセット回路と、
前記フィルタ回路から出力される前記受光信号の信号レベルと前記閾値とを所定の周期にて比較する比較回路と、を備える、
受光ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光電センサ、及び、受光ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の検知区間を隔てて互いに対向して配置された投光ユニット及び受光ユニットを含み、投光ユニットから投光された光を受光ユニットが受光できなかった場合、検知区間に物体が存在すると判断する光電センサが知られる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、受光ユニットが受光した受光信号にはノイズが含まれ得るため、検知区間における物体の検知を精度良く行うためには、ノイズを考慮した制御が求められる。
【0005】
本開示の目的は、受光信号に含まれ得るノイズを考慮して物体の検知を精度良く行うことができる光電センサ及び受光ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る光電センサは、パルス光を投光する投光ユニットと、前記投光ユニットから投光された前記パルス光を受光する受光ユニットと、を備える光電センサであって、前記受光ユニットは、前記パルス光を含む光を受光し、当該受光した光に基づく受光信号を出力する受光素子と、前記受光信号に所定のフィルタを施すフィルタ回路と、前記フィルタ回路から出力される前記受光信号の信号レベルのうち採用範囲内の前記信号レベルに基づいてオフセット値を決定し、前記オフセット値に基づいて閾値を決定するオフセット回路と、前記フィルタ回路から出力される前記受光信号の信号レベルと前記閾値とを所定の周期にて比較する比較回路と、を備える。
【0007】
本開示の一態様に係る受光ユニットは、投光されるパルス光を含む光を受光し、当該受光した光に基づく受光信号を出力する受光素子と、前記受光信号に所定のフィルタを施すフィルタ回路と、前記フィルタ回路から出力される前記受光信号の信号レベルのうち採用範囲内の前記信号レベルに基づいてオフセット値を決定し、前記オフセット値に基づいて閾値を決定するオフセット回路と、前記フィルタ回路から出力される前記受光信号の信号レベルと前記閾値とを所定の周期にて比較する比較回路と、を備える。
【0008】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又は記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、受光信号に含まれ得るノイズを考慮して物体の検知を精度良く行うことができる光電センサ及び受光ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る光電センサの構成例を示すブロック図
【
図2】本実施の形態に係る受光ユニットにおける受光処理の一例を説明するための図
【
図3】本実施の形態に係るオフセット回路の処理の一例を示すフローチャート
【
図4】本実施の形態に係るオフセット取得タイミングにおいて取得される信号レベルとメモリに記憶される信号レベルとを説明するための模式図
【
図5】本実施の形態に係る前回のオフセット値が存在しない場合の処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
(本実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る光電センサ1の構成例を示すブロック図である。
図2は、本実施の形態に係る受光ユニット20における受光処理の一例を説明するための図である。
【0013】
光電センサ1は、投光ユニット10と、当該投光ユニット10に対向配置される受光ユニット20とを備える。すなわち、光電センサ1は、透過型の光電センサである。投光ユニット10及び受光ユニット20は、透過型非同期タイプであり、同期していない。光電センサ1は、投光ユニット10からパルス光を投光し、受光ユニット20にてパルス光を受光することにより、投光ユニット10と受光ユニット20との間の検知区間に物体が存在するか否かを検知する。
【0014】
投光ユニット10は、発振回路11、変調回路12、駆動回路13、及び、投光素子14を備える。なお、本実施の形態において回路と表現しているブロックの機能は、物理的なIC(例えばLSI(Large Scale Integrated Circuit))、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等)によって実現されてもよいし、汎用プロセッサがコンピュータプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0015】
発振回路11は、所定周波数のクロック信号を発生する。
【0016】
変調回路12は、投光素子14から投光されるパルス光が、例えば
図2(a)に示す受光パターンとなるように、発振回路11から出力されるクロック信号を変調してパルス信号を出力する。すなわち、変調回路12は、所定の数(例えば3つ)のパルス光の群が所定の周期T0にて投光素子14から投光されるように、クロック信号を変調してパルス信号を出力する。なお、パルス光の数は、複数個であってもよいし、1つであってもよい。
【0017】
駆動回路13は、変調回路12から出力されるパルス信号に応じたパルス電流を投光素子14へ供給する。
【0018】
投光素子14は、例えばLED(Light Emitting Diode)によって構成され、駆動回路13から出力されたパルス電流に応じて発光する。これにより、投光素子14から、
図2(a)に示すようなパルス光の群が周期T0にて投光される。
【0019】
受光ユニット20は、受光素子21、IV変換回路22、増幅回路23、AD変換回路24、デジタルフィルタ回路25、比較回路26、判定回路27、及び、オフセット回路28を備える。
【0020】
受光素子21は、例えばフォトダイオードによって構成される。受光素子21は、投光素子14から投光されたパルス光を受光し、受光した光の受光量に応じたレベルの電気信号(電流)を出力する。
【0021】
IV変換回路22は、
図2(b)に示すように、受光素子21から入力された電流を電圧に変換し、その変換した電圧信号(パルス信号)を出力する。
【0022】
増幅回路23は、
図2(b)に示すように、IV変換回路22から入力された電圧信号を増幅し、その増幅した増幅信号を出力する。以下、増幅回路23から出力される信号を、受光信号と称する場合がある。
【0023】
AD変換回路24は、増幅回路23から入力されたアナログの受光信号をデジタルの受光信号に変換し、その変換したデジタルの受光信号を出力する。
【0024】
デジタルフィルタ回路25は、AD変換回路24から入力されたデジタルの受光信号にデジタルフィルタを施し、
図2(c)に示すような受光信号を出力する。デジタルフィルタ回路25は、デジタルフィルタとして、例えばハイパスフィルタ、全波整流、及び、ローパスフィルタを順に施す。あるいは、デジタルフィルタ回路25は、デジタルフィルタとして、例えばローパスフィルタを施す。
【0025】
比較回路26は、
図2(f)に示すように、デジタルフィルタ回路25から出力された受光信号の信号レベルが閾値Th以上である場合にオン信号を出力し(例えば所定のレベルの信号を出力し)、受光信号の信号レベルが閾値Th未満である場合にオフ信号を出力する(例えば信号を出力しない)。なお、閾値Thは、後述するオフセット回路28によって設定される。
【0026】
判定回路27は、比較回路26からオン信号又はオフ信号のいずれが入力されたかを判定する。加えて、判定回路27は、オン信号が所定回数以上(例えば8回以上)連続して入力された場合、検知区間に物体が存在しないと判定し、オフ信号が所定回数以上(例えば8回以上)連続して入力された場合、検知区間に物体が存在すると判定してよい。判定回路27は、検知区間に物体が存在しないと判定した場合、オン信号を出力し(例えば所定の大きさの信号を出力し)、検知区間に物体が存在すると判定した場合、オフ信号を出力してよい(例えば信号を出力しない)。
【0027】
図2(b)に示すように、受光信号にノイズが含まれる場合、
図2(c)に示すように、デジタルフィルタ回路25から出力される受光信号の信号レベルは、ノイズが含まれない場合の信号レベルと比較して、全体的にずれが生じ得る。例えば、受光信号にノイズが含まれる場合、信号レベルが全体的に高くなり得る。そのため、比較回路26の閾値Thがもし固定値であるとすると、信号レベルに含まれるノイズが閾値Thを超え、比較回路26が誤ってオン信号を出力してしまう可能性がある。あるいは、本来オン信号を出力すべきにも関わらず、信号レベルが閾値Thを超えずに、比較回路26が誤ってオフ信号を出力してしまう可能性がある。つまり、比較回路26が出力するオン信号及びオフ信号の精度又は信頼性が低下し得る。そこで、本実施の形態では、
図1に示すように、信号レベルに含まれ得るノイズを考慮して比較回路26の閾値Thを補正するオフセット回路28を設ける。
【0028】
オフセット回路28は、
図2(d)に示すように、一定の時間間隔で繰り返されるオフセット取得タイミングに合わせて、信号レベルを取得する。オフセット回路28は、
図2(e)に示すように、その取得した信号レベルを用いて閾値Thを補正し、その補正した閾値Thを比較回路26に設定する。
【0029】
次に、
図3及び
図4を参照して、オフセット回路28の処理について詳細に説明する。
図3は、本実施の形態に係るオフセット回路28の処理の一例を示すフローチャートである。
図4は、本実施の形態に係るオフセット取得タイミングにおいて取得される信号レベルとメモリに記憶される信号レベルとを説明するための模式図である。なお、メモリは、
図1に図示していないが、受光ユニット20に設けられてよい。
【0030】
オフセット回路28は、前回のオフセット値に基づき採用範囲を決定する(S101)。オフセット値及び採用範囲の詳細については後述する。また、受光ユニット20の起動直後など、前回のオフセット値が存在しない場合の動作についても後述する。例えば、オフセット回路28は、次のように採用範囲を決定する。
(前回のオフセット値-α)≦採用範囲≦(前回のオフセット値+β)
ここで、α及びβは予め定められた値であってよい。また、αとβは、異なる値であってもよいし、同じ値であってもよい。また、(前回のオフセット値-α)は、採用範囲の下限値と、(前回のオフセット値+β)は、採用範囲の上限値と読み替えられてもよい。
【0031】
オフセット回路28は、
図2又は
図4に示すように、一定の時間間隔で到来するオフセット取得タイミングで、信号レベルを取得する(S102)。
【0032】
オフセット回路28は、ステップS102で取得した信号レベルが、ステップS101で決定した採用範囲内であるか否かを判定する(S103)。
【0033】
オフセット回路28は、信号レベルが採用範囲内である場合(S103:YES)、取得した信号レベルを、今回の信号レベルとしてメモリに記憶し(S104)、処理をステップS106に進める。
【0034】
例えば、
図4に示すように、1周期分の16回のオフセット取得タイミングのうち1回目のオフセット取得タイミングで取得した信号レベルが「34」であった場合、当該信号レベル「34」は採用範囲「10~50」に含まれるので、オフセット回路28は、1回目の信号レベルとして「34」をそのままメモリに記憶する。なお、オフセット回路28における当該1周期の期間は、受光ユニット20がパルス光の群を受光する1周期T1(投光の1周期T0と受光の1周期T1はT0=T1でもよい)の期間に対応して(例えば同じ又はほぼ同じであって)よい。ただし、オフセット回路28における周期と、投光ユニット10がパルス光の群を投光する周期T1とは同期していなくてよい。あるいは、オフセット回路28における当該1周期の期間は、予め定められた期間であってもよい。
【0035】
オフセット回路28は、信号レベルが採用範囲外である場合(S103:NO)、前回にメモリに記憶された信号レベルを複製して今回の信号レベルとしてメモリに記憶し(S105)、処理をステップS106に進める。すなわち、オフセット回路28は、1周期における複数の信号レベルのうち採用範囲外の信号レベルを、1周期における複数の信号レベルのうち採用範囲内の少なくとも1つの信号レベルに置換してメモリに記憶する。
【0036】
例えば、
図3に示すように、1周期分の16回のオフセット取得タイミングのうち6回目のオフセット取得タイミングで取得した信号レベルが「62」であった場合、当該信号レベル「62」は採用範囲「10~50」から外れているので、オフセット回路28は、5回目にメモリに記憶された信号レベル「41」を複製して6回目の信号レベルとしてメモリに記憶する。例えば、
図3に示すように、1周期分の16回のオフセット取得タイミングのうち7回目のオフセット取得タイミングで取得した信号レベルが「82」であった場合、当該信号レベル「82」は採用範囲「10~50」から外れているので、オフセット回路28は、上記の6回目に記憶された信号レベル「41」を複製して7回目の信号レベルとしてメモリに記憶する。これにより、メモリには、採用範囲内の信号レベルが記憶される。
【0037】
オフセット回路28は、1周期分の信号レベルを取得したか否かを判定する(S106)。例えば、16回分のオフセット取得タイミングを1周期とすると、オフセット回路28は、16回分の信号レベルを取得したか否か(つまり16回分の信号レベルがメモリに記憶されたか否か)を判定する。
【0038】
1周期分の信号レベルをまだ取得していない場合(S106:NO)、オフセット回路28は、処理をS102に戻す。
【0039】
1周期分の信号レベルを取得した場合(S106:YES)、オフセット回路28は、メモリに記憶されている1周期分(例えば16回分)の信号レベルの平均値を算出し、その算出した平均値をオフセット値としてメモリに記憶する(S107)。このメモリに記憶されたオフセット値は、次回のステップS101の処理において、「前回のオフセット値」となる。
【0040】
オフセット回路28は、オフセット値に基づいて閾値Th(つまり補正した閾値Th)を算出する(S108)。例えば、オフセット回路28は、次のように閾値Thを算出する。
閾値Th=基準値+(オフセット値×係数)
ここで、基準値及び係数は予め定められた値であってよい。
【0041】
オフセット回路28は、ステップS108で算出した閾値Thを比較回路26に設定し(S109)、処理をステップS101に戻す。
【0042】
上記の処理によれば、受光信号に含まれるノイズの大きさに応じて適切な閾値Thが設定されるので、比較回路26が誤ったオン信号又はオフ信号を出力することを抑止できる。すなわち、比較回路26が出力するオン信号及びオフ信号の精度又は信頼性が向上する。
【0043】
<オフセット値の算出方法の変形例>
オフセット値の算出方法は、上述した方法に限られない。例えば、オフセット値は、次の(A1)~(A6)のいずれかの方法によって算出されてもよい。
【0044】
(A1)
図3のステップS103において信号レベルが採用範囲外である場合(S103:NO)、オフセット回路28は、
図3のステップS105の処理に代えて、次の処理を行う。すなわち、オフセット回路28は、その採用範囲外である信号レベルをメモリに記憶しない。つまり、オフセット回路28は、採用範囲外である信号レベルを除外する。これにより、
図3のステップS107において、
図3に示す処理と同様、採用範囲内の信号レベルにて平均値が算出され、オフセット値としてメモリに記憶される。
【0045】
(A2)オフセット回路28は、
図3のステップS107の処理に代えて、次の処理を行う。すなわち、オフセット回路28は、メモリに記憶された1周期分の複数の信号レベルのうちの最大の信号レベルと最小の信号レベルとの平均値を算出し、その算出した平均値をオフセット値としてメモリに記憶する。
【0046】
(A3)オフセット回路28は、
図3のステップS107の処理に代えて、次の処理を行う。すなわち、オフセット回路28は、メモリに記憶された1周期分の複数の信号レベルのうちの最大の信号レベルを、オフセット値としてメモリに記憶する。
【0047】
(A4)オフセット回路28は、
図3のステップS107の処理に代えて、次の処理を行う。すなわち、オフセット回路28は、メモリに記憶された1周期分の信号レベルのうちの最小の信号レベルを、オフセット値としてメモリに記憶する。
【0048】
(A5)オフセット回路28は、
図3のステップS107の処理に代えて、次の処理を行う。すなわち、オフセット回路28は、メモリに記憶された1周期分の信号レベルのうちの2つ以上の信号レベルの平均値を算出し、その算出した平均値をオフセット値としてメモリに記憶する。
【0049】
(A6)オフセット回路28は、
図3のステップS107の処理に代えて、次の処理を行う。すなわち、オフセット回路28は、メモリに記憶された1周期分の信号レベルのうちの1つを、オフセット値としてメモリに記憶する。例えば、オフセット回路28は、メモリに記憶された1周期分の信号レベルのうちの所定回(例えば5回目)にメモリに記憶された信号レベルを、オフセット値としてメモリに記憶する。
【0050】
<前回のオフセット値が存在しない場合>
受光ユニット20の起動直後など、
図3のステップS101において、前回のオフセット値が存在しない場合、オフセット回路28は、次の(B1)又は(B2)の方法によって初回の採用範囲を決定してよい。
【0051】
(B1)初回のオフセット値を予め定めておき、オフセット回路28は、初回の採用範囲を次のように決定する。
(初回のオフセット値-α0)≦初回の採用範囲≦(初回のオフセット値+β0)
ここで、α0及びβ0は予め定められた値であってよい。α0とβ0は、異なる値であってもよいし、同じ値であってもよい。α0は上記のαと同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。β0は上記のβと同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。また、(初回のオフセット値-α0)を初回の採用範囲の下限値と、(初回のオフセット値+β0)を初回の採用範囲の上限値と読み替えられてもよい。
【0052】
(B2)オフセット回路28は、
図3のステップS101に代えて、次の
図5に示す処理を実行することにより、初回の採用範囲を決定する。
図5は、本実施の形態に係る初回の採用範囲を決定する処理の一例を示すフローチャートである。なお、オフセット回路28が当該
図5に示す処理を行っている間、比較回路26は、デジタルフィルタ回路25から出力される受光信号と閾値Thとを比較する処理を行わなくてよい。
【0053】
オフセット回路28は、オフセット取得タイミングで信号レベルを取得する(S201)。
【0054】
オフセット回路28は、ステップS201で取得した信号レベルが予め定められた上限値以上であるか否かを判定する(S202)。
【0055】
信号レベルが上限値以上である場合(S202:YES)、オフセット回路28は、上限値を信号レベルとしてメモリに記憶し(S203)、処理をステップS207に進める。
【0056】
信号レベルが上限値よりも小さい場合(S202:NO)、オフセット回路28は、ステップS201で取得した信号レベルが予め定められた下限値以下であるか否かを判定する(S204)。
【0057】
信号レベルが下限値以下である場合(S204:YES)、オフセット回路28は、下限値を信号レベルとしてメモリに記憶し(S205)、処理をステップS207に進める。
【0058】
信号レベルが下限値よりも大きい場合(S204:NO)、すなわち信号レベルが上限値よりも小さく下限値よりも大きい場合、オフセット回路28は、ステップS201で取得した信号レベルをメモリに記憶し(S206)、処理をステップS207に進める。
【0059】
オフセット回路28は、所定回数分の信号レベルを取得したか否か判定する(S207)。この所定回数は、
図3に示す1周期分の回数と同じであってもよいし、異なってもよい。
【0060】
オフセット回路28は、所定回数分の信号レベルをまだ取得していない場合(S207:NO)、処理をステップS201に戻す。
【0061】
オフセット回路28は、所定回数分の信号レベルを取得した場合(S207:YES)、メモリに記憶されている所定回数分の信号レベルの平均値を算出し、その算出した平均値を初回のオフセット値としてメモリに記憶する(S208)。
【0062】
オフセット回路28は、処理を
図3に示すステップS101に進める。当該ステップS101において、オフセット回路28は、ステップS208にてメモリに記憶された初回のオフセット値を、「前回のオフセット値」として採用範囲を決定する。
【0063】
以上の処理により、前回のオフセット値が存在ない場合にも、採用範囲を決定することができる。
【0064】
(本開示のまとめ)
本開示の内容は以下の付記のように表現することができる。
【0065】
<付記1>
本開示の一態様に係る光電センサ(1)は、パルス光を投光する投光ユニット(10)と、投光ユニットから投光されたパルス光を受光する受光ユニット(20)とを備える。受光ユニットは、パルス光を含む光を受光し、当該受光した光に基づく受光信号を出力する受光素子(21)と、受光信号に所定のフィルタを施すフィルタ回路(25)と、フィルタ回路から出力される受光信号の信号レベルのうち採用範囲内の信号レベルに基づいてオフセット値を決定し、オフセット値に基づいて閾値を決定するオフセット回路(28)と、フィルタ回路から出力される受光信号の信号レベルと閾値とを所定の周期にて比較する比較回路(26)と、を備える。
これにより、採用範囲内の信号レベルに含まれ得るノイズを考慮した適切な閾値が比較回路に設定されるので、一定の閾値が比較回路に設定される場合と比べて、物体の検知を精度良く行うことができる。
【0066】
<付記2>
付記1に記載の光電センサにおいて、オフセット回路は、上記周期に対応する期間における採用範囲内の複数の信号レベルの平均値に基づいてオフセット値を決定してよい。
これにより、パルス光が投光される周期に対応する期間おける採用範囲内の複数の信号レベルの平均値に基づいて、ノイズを考慮した適切な閾値を決定することができる。
【0067】
<付記3>
付記2に記載の光電センサにおいて、オフセット回路は、上記周期に対応する期間における複数の信号レベルのうち採用範囲外の信号レベルを、一周期における複数の信号レベルのうち採用範囲内の少なくとも1つの信号レベルに置換し、置換後の複数の信号レベルの平均値に基づいてオフセット値を決定してよい。
これにより、採用範囲外の信号レベルは採用範囲内の信号レベルに置換されるので、採用範囲内の複数の信号レベルの平均値に基づいて、ノイズを考慮した適切な閾値を決定することができる。
【0068】
<付記4>
付記2に記載の光電センサにおいて、オフセット回路は、上記周期に対応する期間における複数の信号レベルのうち採用範囲外の信号レベルを除外し、除外後の複数の信号レベルの平均値に基づいてオフセット値を決定してよい。
これにより、採用範囲外の信号レベルは除外されるので、採用範囲内の複数の信号レベルの平均値に基づいて、ノイズを考慮した適切な閾値を決定することができる。
【0069】
<付記5>
付記2に記載の光電センサにおいて、オフセット回路は、上記周期に対応する期間における採用範囲内の複数の信号レベルのうちの最大の信号レベルと最小の信号レベルの平均値に基づいてオフセット値を決定してよい。
これにより、採用範囲内で最大の信号レベルと最小の信号レベルの平均値に基づいて、ノイズを考慮した適切な閾値を決定することができる。
【0070】
<付記6>
付記1に記載の光電センサにおいて、オフセット回路は、上記周期に対応する期間における採用範囲内の複数の信号レベルのうちの最大の信号レベルに基づいてオフセット値を決定してよい。
これにより、採用範囲内で最大の信号レベルに基づいて、ノイズを考慮した適切な閾値を決定することができる。
【0071】
<付記7>
付記1に記載の光電センサにおいて、オフセット回路は、上記周期に対応する期間における採用範囲内の複数の信号レベルのうちの最小の信号レベルに基づいてオフセット値を決定してよい。
これにより、採用範囲内で最小の信号レベルに基づいて、ノイズを考慮した適切な閾値を決定することができる。
【0072】
<付記8>
付記2に記載の光電センサにおいて、オフセット回路は、上記周期に対応する期間における採用範囲内の複数の信号レベルのうちの少なくとも2つの信号レベルの平均値に基づいてオフセット値を決定してよい。
これにより、採用範囲内の少なくとも2つの信号レベルの平均値に基づいて、ノイズを考慮した適切な閾値を決定することができる。
【0073】
<付記9>
付記1に記載の光電センサにおいて、オフセット回路は、上記周期に対応する期間における採用範囲内の複数の信号レベルのうちの1つの信号レベルに基づいてオフセット値を決定してよい。
これにより、採用範囲内のある1つの信号レベルに基づいて、ノイズを考慮した適切な閾値を決定することができる。
【0074】
<付記10>
付記2から9のいずれか1項に記載の光電センサにおいて、オフセット回路は、前回の上記周期に対応する期間に基づいて決定した前回のオフセット値から所定の値(例えばα)を減算した値を採用範囲の下限値とし、前回のオフセット値に所定の値(例えばβ)を加算した値を採用範囲の上限値としてよい。
これにより、前回のオフセット値に基づいて今回の採用範囲が決定されるので、ノイズを考慮した適切な閾値を決定することができる。
【0075】
<付記11>
付記10に記載の光電センサにおいて、オフセット回路は、前回のオフセット値が存在しない場合、予め定められた採用範囲内の少なくとも1つの信号レベルに基づいて上記前回のオフセット値を決定してよい。
これにより、前回のオフセット値が存在しない場合、予め定められた採用範囲内の少なくとも1つの信号レベルに基づいて当該前回のオフセット値を決定することができる。よって、例えば、光電センサの起動直後のように、前回のオフセット値が存在しない場合であっても、適切に閾値を決定するこができる。
【0076】
<付記12>
付記10に記載の光電センサにおいて、オフセット回路は、前回のオフセット値が存在しない場合、予め定められた値を前回のオフセット値してよい。
これにより、前回のオフセット値が存在しない場合、予め定められた値を当該前回のオフセット値に決定することができる。よって、例えば、光電センサの起動直後のように、前回のオフセット値が存在しない場合であっても、適切に閾値を決定するこができる。
【0077】
<付記13>
本開示の一態様に係る受光ユニット(20)は、投光されるパルス光を含む光を受光し、当該受光した光に基づく受光信号を出力する受光素子(21)と、受光信号に所定のフィルタを施すフィルタ回路(25)と、フィルタ回路から出力される受光信号の信号レベルのうち採用範囲内の信号レベルに基づいてオフセット値を決定し、オフセット値に基づいて閾値を決定するオフセット回路(28)と、フィルタ回路から出力される受光信号の信号レベルと閾値とを所定の周期にて比較する比較回路(26)とを備える。
これにより、採用範囲内の信号レベルに含まれ得るノイズを考慮した適切な閾値が比較回路に設定されるので、一定の閾値が比較回路に設定される場合と比べて、物体の検知を精度良く行うことができる。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示の技術は、光を投光及び受光して物体を検知するセンサに有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 光電センサ
10 投光ユニット
11 発振回路
12 変調回路
13 駆動回路
14 投光素子
20 受光ユニット
21 受光素子
22 IV変換回路
23 増幅回路
24 AD変換回路
25 デジタルフィルタ回路
26 比較回路
27 判定回路
28 オフセット回路