(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096847
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】光導波路の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/132 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
G02B6/132
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212866
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】尾張 洋史
【テーマコード(参考)】
2H147
【Fターム(参考)】
2H147CC12
2H147CD02
2H147EA16A
2H147EA16B
2H147EA16D
2H147EA17A
2H147EA17B
2H147EA17D
2H147EA18A
2H147EA18B
2H147EA19A
2H147EA19B
2H147EA20A
2H147EA20B
2H147EA20D
2H147EA22D
2H147EA45A
2H147EA45B
2H147FA15
2H147FA16
2H147FA17
2H147FA25
2H147FB04
2H147FC07
2H147FD08
2H147FD13
2H147FD14
2H147FD15
2H147FD16
2H147FD18
2H147FE01
2H147FE02
2H147FE03
2H147FE06
2H147FE07
2H147FF05
2H147GA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コアフィルムとクラッドフィルムとを熱圧着するとき、クラッド形成用材料の成形性を短時間に高めつつ、接着界面の空気を効率よく掃き出すことができ、接着不良の少ない光導波路を製造することができる光導波路の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の光導波路の製造方法は、第1基材100とコア層13とを有するコアフィルム200、および、第2基材19とクラッド形成層170とを有するクラッドフィルム402、を用意する工程と、コア層13とクラッド形成層170とが接するように、コアフィルム200およびクラッドフィルム402を積層方向に重ねて、積層体180を得る工程と、積層体180に対し、加熱されている金属製ローラーを積層方向に押し付けながら走査し、コア層13とクラッド形成層170とを接着し、接着体を得る工程と、接着体を加熱することにより、クラッド形成層170からクラッド層を得る工程と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材と前記第1基材に積層されているコア層とを有するコアフィルム、および、第2基材と前記第2基材に積層されているクラッド形成層とを有するクラッドフィルム、を用意する工程と、
前記コア層と前記クラッド形成層とが接するように、前記コアフィルムおよび前記クラッドフィルムを積層方向に重ねて、積層体を得る工程と、
前記積層体に対し、加熱されている金属製ローラーを前記積層方向に押し付けながら走査方向に相対的に走査し、前記クラッド形成層を軟化させることにより、前記コア層と前記クラッド形成層とを接着し、接着体を得る工程と、
前記接着体を加熱することにより、前記クラッド形成層からクラッド層を得る工程と、
を有することを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記積層体の前記金属製ローラーとは反対側に、平板を配置し、
前記積層体を、前記金属製ローラーと前記平板とで挟んで、前記積層体を押圧する請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記平板は、金属板である請求項2に記載の光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記コア層と前記クラッド形成層とを接着する工程は、
前記金属製ローラーと対向ローラーとの間で前記積層体を前記積層方向に押し付けながら前記金属製ローラーを前記走査方向に相対的に走査し、前記クラッド形成層を軟化させる操作を含む請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項5】
前記金属製ローラーを前記積層体に押し付けるときの線圧は、5~20kN/mである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項6】
前記金属製ローラーの直径は、20~80mmである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項7】
前記コア層は、第1光入出射面および第2光入出射面と、これらを互いにつなぐ長尺状のコア部と、を含み、
前記走査方向は、前記第1光入出射面から前記第2光入出射面に向かう方向である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項8】
前記クラッド形成層は、140℃で1秒間加熱されたときの粘度が200~600Pa・sである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光導波路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コア層と、コア層を挟んで配置される2つのクラッド層と、を備える光導波路の製造方法が開示されている。この製造方法は、具体的には、コアフィルム支持基材上にコア形成用フィルムを作製する工程と、クラッドフィルム支持基材上にクラッド形成用材料を塗布してクラッドフィルムを作製する工程と、コア形成用フィルムに対し、選択的に光を照射する工程と、光が照射されたコア形成用フィルムを加熱し、コアフィルムを得る工程と、コアフィルムにクラッドフィルムを重ねて熱圧着する工程と、を有する。
【0003】
また、特許文献1には、自動ローラーを用いてコアフィルムとクラッドフィルムとを仮貼りした後、シリコンラバーによるラミネーターを用いて加熱および加圧し、コアフィルムとクラッドフィルムとを熱圧着することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/081375号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリコンラバーによるラミネーターを用いると、コアフィルムおよびクラッドフィルムが面内全体において、ほぼ同時に加熱および加圧が開始される。このため、特にフィルムの中央部において、接着界面に気泡が残留することが懸念される。
【0006】
また、減圧雰囲気下で圧着することにより、気泡の残留を減らすこともできるが、目標の圧力まで減圧するのに時間がかかるため、熱圧着する工程のスループットが低下するという課題が生じる。
【0007】
さらに、シリコンラバーを介してクラッドフィルムを加熱する必要があるため、目的とする温度に昇温するまで時間を要する。このため、加圧が完了する前にクラッド形成用材料の硬化反応が進行し、クラッド形成用材料の成形性(形状追従性)が低下する。そうすると、例えばコアフィルムの接着面に凹凸があった場合、クラッド形成用材料による凹凸の充填が不十分になる。その結果、接着不良が発生することが懸念される。
【0008】
本発明の目的は、コアフィルムとクラッドフィルムとを熱圧着するとき、クラッド形成用材料の成形性を短時間に高めつつ、接着界面の空気等を排出することができ、接着不良の少ない光導波路を効率よく製造することができる光導波路の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)~(8)の本発明により達成される。
(1) 第1基材と前記第1基材に積層されているコア層とを有するコアフィルム、および、第2基材と前記第2基材に積層されているクラッド形成層とを有するクラッドフィルム、を用意する工程と、
前記コア層と前記クラッド形成層とが接するように、前記コアフィルムおよび前記クラッドフィルムを積層方向に重ねて、積層体を得る工程と、
前記積層体に対し、加熱されている金属製ローラーを前記積層方向に押し付けながら走査方向に相対的に走査し、前記クラッド形成層を軟化させることにより、前記コア層と前記クラッド形成層とを接着し、接着体を得る工程と、
前記接着体を加熱することにより、前記クラッド形成層からクラッド層を得る工程と、
を有することを特徴とする光導波路の製造方法。
【0010】
(2) 前記積層体の前記金属製ローラーとは反対側に、平板を配置し、
前記積層体を、前記金属製ローラーと前記平板とで挟んで、前記積層体を押圧する上記(1)に記載の光導波路の製造方法。
【0011】
(3) 前記平板は、金属板である上記(2)に記載の光導波路の製造方法。
【0012】
(4) 前記コア層と前記クラッド形成層とを接着する工程は、
前記金属製ローラーと対向ローラーとの間で前記積層体を前記積層方向に押し付けながら前記金属製ローラーを前記走査方向に相対的に走査し、前記クラッド形成層を軟化させる操作を含む上記(1)に記載の光導波路の製造方法。
【0013】
(5) 前記金属製ローラーを前記積層体に押し付けるときの線圧は、5~20kN/mである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【0014】
(6) 前記金属製ローラーの直径は、20~80mmである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【0015】
(7) 前記コア層は、第1光入出射面および第2光入出射面と、これらを互いにつなぐ長尺状のコア部と、を含み、
前記走査方向は、前記第1光入出射面から前記第2光入出射面に向かう方向である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【0016】
(8) 前記クラッド形成層は、140℃で1秒間加熱されたときの粘度が200~600Pa・sである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コアフィルムとクラッドフィルムとを熱圧着するとき、クラッド形成用材料の成形性を短時間に高めつつ、接着界面の空気等を排出することができ、接着不良の少ない光導波路を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る光導波路の製造方法により製造される光導波路を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係る光導波路の製造方法について説明するための工程図である。
【
図4】
図3に示す光導波路の製造方法を説明するための図であって、
図2に示す光導波路の一部に相当する部位の拡大図である。
【
図5】
図3に示す光導波路の製造方法を説明するための図であって、
図2に示す光導波路の一部に相当する部位の拡大図である。
【
図6】
図3に示す光導波路の製造方法を説明するための図であって、
図2に示す光導波路の一部に相当する部位の拡大図である。
【
図7】
図3に示す光導波路の製造方法を説明するための図であって、
図2に示す光導波路の一部に相当する部位の拡大図である。
【
図8】
図1に示すコア層が含むコア部の延在方向D1、および、金属製ローラーの走査方向D2、の一例を示す図である。
【
図9】クラッド形成層を140℃で加熱した時間(加熱時間)と、軟化したクラッド形成層の粘度と、の関係の一例を示すグラフである。
【
図10】変形例に係る光導波路の製造方法を示す断面図である。
【
図11】変形例に係る光導波路の製造方法を示す断面図である。
【
図12】変形例に係る光導波路の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の光導波路の製造方法について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、実施形態に係る光導波路の製造方法により製造される光導波路を示す平面図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
【0021】
なお、本願の各図では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸およびZ軸を設定し、矢印で示している。また、矢印の先端側を「プラス側」といい、基端側を「マイナス側」という。さらに、説明の便宜のため、Z軸を表す矢印の先端側を「上」といい、基端側を「下」という。なお、以下の説明における「上」および「下」は、光導波路の製造時または使用時において、鉛直方向に対する姿勢を限定するものではない。
【0022】
1.光導波路
図1および
図2に示す光導波路1は、シート状をなしており、下側カバー層18、下側クラッド層11、コア層13、上側クラッド層12および上側カバー層19がこの順で積層されている積層構造を備える。光導波路1が備える各層は、X-Y面に沿って広がっている。光導波路1は、例えば、X軸に長軸を有する長尺状の樹脂フィルムであり、可撓性を有する。このため、光導波路1は、例えば、Y軸まわりの円周に沿って曲げた状態でも使用可能である。
【0023】
コア層13は、
図1に示すように、X軸に沿って延在する9本の長尺状のコア部14と、各コア部14の側面に隣接する側面クラッド部15と、を含む。したがって、コア部14のうち、Y軸方向の両側面には、いずれも側面クラッド部15が隣接している。また、
図2に示すように、コア部14の下面には下側クラッド層11が隣接し、コア部14の上面には上側クラッド層12が隣接している。これにより、コア部14とクラッド部(側面クラッド部15、下側クラッド層11および上側クラッド層12)との間には、十分に大きい屈折率差が安定的に維持され、コア部14の伝送効率が高くなる。なお、コア部14は、コア層13中において、途中で分岐していてもよいし、途中で他のコア部14と交差していてもよい。
【0024】
なお、コア層13中に設けられるコア部14の数は、特に限定されず、例えば1~100本程度とされる。また、光導波路1のX軸に沿った全長は、特に限定されないが、10~3000mm程度であるのが好ましい。さらに、光導波路1のY軸に沿った全幅は、特に限定されないが、2~200mm程度であるのがより好ましい。
【0025】
コア層13のZ軸に沿った膜厚は、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、5~100μm程度であるのがより好ましく、10~70μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、コア層13に必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。
【0026】
下側クラッド層11および上側クラッド層12のZ軸に沿った膜厚は、それぞれ1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~50μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、下側クラッド層11および上側クラッド層12に必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。また、下側クラッド層11および上側クラッド層12をクラッド形成層から形成するとき、クラッド形成層の良好な形状追従性を確保することができるので、コア層13に対する下側クラッド層11および上側クラッド層12の密着性を高めることができる。さらに、下側クラッド層11および上側クラッド層12をクラッド形成層から形成するとき、クラッド形成層の硬化収縮量が大きくなりすぎるのを抑制し、その影響がコア層13に及ぶのを抑制することができる。
【0027】
光導波路1は、X軸マイナス側の端部に位置する端面101(第1光入出射面)と、X軸プラス側の端部に位置する端面102(第2光入出射面)と、を有する。端面101、102は、それぞれ光入出射面として機能する。
【0028】
光導波路1の両端部の少なくとも一方には、図示しない光コネクターが装着されていてもよい。光コネクターを介して、光導波路1と他の光学部品とを固定するとともに、端面101、102と他の光学部品との間を光学的に接続することができる。また、光導波路1は、コア部14を通過する光の光路を変換するミラーを有していてもよい。ミラーを介して光路を変換することにより、コア部14と、光導波路1の外部に設けられた光学部品と、を光学的に接続することができる。
【0029】
下側カバー層18は、下側クラッド層11の下面に積層されている。上側カバー層19は、上側クラッド層12の上面に積層されている。これにより、光導波路1の機械的特性や耐久性を高めることができる。なお、下側カバー層18および上側カバー層19の少なくとも一方は、省略されていてもよい。
【0030】
光導波路1のZ軸に沿った膜厚は、50~300μmであるのが好ましく、60~200μmであるのがより好ましく、70~150μmであるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1の可撓性を高めつつ、光導波路1の機械的強度を十分に確保することができる。
【0031】
以下、光導波路1の各部についてさらに詳述する。
2.光導波路の製造方法
次に、実施形態に係る光導波路の製造方法について説明する。以下の説明では、
図1および
図2に示す光導波路1の製造方法を例にして説明する。
【0032】
図3は、実施形態に係る光導波路の製造方法について説明するための工程図である。
図4ないし
図7は、
図3に示す光導波路の製造方法を説明するための図であって、
図2に示す光導波路の一部に相当する部位の拡大図である。
【0033】
図3に示す光導波路1の製造方法は、準備工程S102と、上側クラッド積層工程S108と、上側クラッド接着工程S109と、上側クラッド形成工程S110と、剥離工程S112と、下側クラッド積層工程S114と、下側クラッド接着工程S115と、下側クラッド形成工程S116と、を有する。
【0034】
準備工程S102では、コア基材100(第1基材)とコア層13とを有するコアフィルム200、および、上側カバー層19(第2基材)とクラッド形成層170とを有するクラッドフィルム401、402を用意する。上側クラッド積層工程S108では、コア層13の上面とクラッドフィルム402とを積層し、積層体180を得る。上側クラッド接着工程S109では、コア層13とクラッド形成層170とを接着し、接着体182を得る。上側クラッド形成工程S110では、接着体182を加熱し、クラッド形成層170から上側クラッド層12を得る。剥離工程S112では、コア層13の下面からコア基材100を剥離する。下側クラッド積層工程S114では、コア層13の下面とクラッド形成層170とを積層し、積層体190を得る。下側クラッド接着工程S115では、コア層13とクラッド形成層170とを接着し、接着体192を得る。下側クラッド形成工程S116では、接着体192を加熱し、クラッド形成層170から下側クラッド層11を得る。以下、各工程について順次説明する。
【0035】
2.1.準備工程
本実施形態では、
図4(a)に示すように、コア基材100とコア層13とが積層されてなるコアフィルム200を用意する。Z軸マイナス側の方向を「積層方向」とするとき、コア層13およびコア基材100が、積層方向にこの順で積層されている。
【0036】
また、本実施形態では、
図4(b)に示すように、上側カバー層19と、上側カバー層19の下面に積層されたクラッド形成層170と、を有するクラッドフィルム402を準備する。同様に、
図6(h)に示すように、下側カバー層18と、下側カバー層18の上面に積層されたクラッド形成層170と、を有するクラッドフィルム401を準備する。
【0037】
2.1.1.コアフィルム
図4(a)に示すコアフィルム200は、コア基材100とコア層13とを有し、フィルム形状をなす。コアフィルム200は、枚葉状であっても、巻き取り可能なロール状であってもよい。
【0038】
コア層13は、いかなる方法で製造されたものであってもよい。コア層13の形成方法としては、例えば、コア形成用樹脂組成物を用いてコア形成層を形成した後、コア形成層に活性放射線を照射し、照射領域と非照射領域との間で屈折率差を形成する方法が好ましく用いられる。この方法では、エッチング処理が不要になるため、製造効率に優れる。
【0039】
なお、コア層13の形成方法は、フォトリソグラフィー法、複製法等であってもよい。フォトリソグラフィー法は、露光、現像技術とエッチング技術とを組み合わせて、互いに屈折率が異なる材料でコア部14および側面クラッド部15を形成する方法である。複製法は、例えばコアパターンを有する型を樹脂膜に押し付けてコア部14を形成し、その後、側面クラッド部15を形成する方法である。
【0040】
また、コア層13に対し、必要に応じて、表面処理を施すようにしてもよい。表面処理としては、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理等が挙げられる。
【0041】
なお、コアフィルム200は、最終的に複数の光導波路1を切り出すことができるように、光導波路1に対応する領域を複数含んでいてもよい。この場合、光導波路1を切り出す工程を追加することにより、光導波路1をより効率よく製造することができる。
【0042】
また、
図4(a)では、コアフィルム200を、中間フィルム120を介して金属板110で支持する。これにより、コアフィルム200の平坦性およびハンドリング性を高めることができる。
【0043】
2.1.1.1.コア基材
コア基材100には、例えば、樹脂フィルムが用いられる。コア基材100の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等が挙げられる。
【0044】
なお、コア基材100には、必要に応じて、コア層13とコア基材100との剥離を容易にする離型処理等が施されていてもよい。
【0045】
2.1.1.2.コア形成用樹脂組成物
コア形成層を形成するためのコア形成用樹脂組成物としては、例えば、ポリマー、モノマー、重合開始剤等を含む組成物が挙げられる。コア形成層は、コア形成用樹脂組成物をコア基材100に塗布し、乾燥させることにより形成される。
【0046】
2.1.1.2.1.ポリマー
ポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて、ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等として用いられる。
【0047】
これらの中でも、ポリマーには、アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、または、環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
【0048】
アクリル系樹脂としては、例えば、単官能アクリレート、多官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能メタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエステルアクリレート、および、尿素アクリレートからなる群から選択される1種以上を含むアクリル化合物の重合体が挙げられる。また、アクリル系樹脂は、ポリエステル骨格、ポリプロピレングリコール骨格、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、トリシクロデカン骨格、ジシクロペンタジエン骨格等を有していてもよい。
【0049】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物またはそれらの誘導体、およびビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物またはそれらの誘導体を共重合成分の構成単位として含むものが挙げられる。
【0050】
ポリマーの含有量は、例えば、コア形成用樹脂組成物の固形分全体の15質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、コア層13の機械的特性が向上する。また、コア形成用樹脂組成物に含まれるポリマーの含有量は、コア形成用樹脂組成物の固形分全体の95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。これにより、コア層13の光学的特性が向上する。
【0051】
コア形成用樹脂組成物の固形分全体とは、組成物中における不揮発分を指し、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。
【0052】
2.1.1.2.2.モノマー
モノマーとしては、分子構造中に重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ノルボルネン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー、光二量化モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0053】
これらの中でも、モノマーとしては、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、または、エポキシ系モノマーが好ましく用いられる。
【0054】
アクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、例えば、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、例えば、脂肪族(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、複素環式(メタ)アクリレート、またはこれらのエトキシ化体、プロポキシ化体、エトキシ化プロポキシ化体、カプロラクトン変性体等が挙げられる。また、分子内に、ビスフェノール骨格、ウレタン骨格等を有していてもよい。
【0055】
エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0056】
モノマーとしては、可視光、紫外線、赤外線、レーザー光、電子線、X線等の活性放射線の照射により、照射領域において反応して反応物を生成する光重合性モノマーを用いてもよい。また、モノマーは、活性放射線の照射時において、コア形成層中の膜厚と直交する面内方向に移動可能であり、その結果として得られるコア層13において、活性放射線の照射領域と非照射領域との間で屈折率差を生じさせるものであってもよい。
【0057】
モノマーの含有量は、ポリマー100質量部に対し、1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、10質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。これにより、上記の屈折率差の形成、すなわち屈折率変調をより確実に起こすことができる。
【0058】
2.1.1.2.3.重合開始剤
重合開始剤は、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。重合開始剤としては、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマー等のラジカル重合開始剤、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合開始剤を用いることができる。
【0059】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。具体的には、イルガキュア(Irgacure、登録商標)651、イルガキュア819、イルガキュア2959、イルガキュア184(以上、IGMジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0060】
カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型のもの、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型のもの等が挙げられる。具体的には、アデカオプトマーSP-170(株式会社ADEKA製)、サンエイドSI-100L(三新化学工業株式会社製)、Rhodorsil2074(ローディアジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0061】
重合開始剤の含有量は、ポリマー100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。これにより、コア層13の光学的特性や機械的特性を低下させることなく、モノマーを速やかに反応させることができる。
【0062】
2.1.1.2.4.その他
コア形成用樹脂組成物は、例えば、架橋剤、増感剤(光増感剤)、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等をさらに含んでいてもよい。
【0063】
2.1.1.2.5.溶剤
上述した成分を溶剤中に添加し、撹拌することにより、ワニス状のコア形成用樹脂組成物が得られる。得られた組成物は、例えば0.2μmの孔径を持つPTFEフィルターによるろ過処理に供されてもよい。また、得られた組成物は、各種混合機による混合処理に供されてもよい。
【0064】
コア形成用樹脂組成物に含まれる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、N-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0065】
2.1.2.金属板
図4(a)に示す金属板110は、中間フィルム120を介してコアフィルム200を支持する支持板である。このような金属板110を用いることにより、コアフィルム200のハンドリング性を高めることができる。これにより、コアフィルム200を搬送装置で搬送する操作が容易になる。
【0066】
金属板110は、樹脂板やガラス板等に比べて、剛性に優れる。このため、金属板110でコアフィルム200を支持することにより、コアフィルム200の平坦性を高めることができる。
【0067】
金属板110が含む金属材料としては、あらゆる金属材料が挙げられるが、例えば、アルミニウム、鉄、銅、銀、チタン、マグネシウム、亜鉛、スズ、ニッケル等の単体、またはこれらを含む合金もしくは金属間化合物等が挙げられる。このうち、金属材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であるのが好ましい。これらは、軽量であり、かつ、耐薬品性に優れる。このため、これらのアルミニウム系材料を含む金属板110は、搬送容易性および耐久性が高い。
【0068】
なお、金属板110は、金属材料以外の材料、例えば、セラミックス材料、ガラス材料、樹脂材料、ケイ素材料、炭素材料等を含んでいてもよい。
【0069】
2.1.3.中間フィルム
図4(a)に示す中間フィルム120は、コアフィルム200と金属板110との間に設けられ、これらを互いに固定するフィルムである。このような中間フィルム120を用いることにより、金属板110に対するコアフィルム200の固定や解除を容易に行うことができる。
【0070】
2.1.4.クラッドフィルム
クラッドフィルム401は、下側カバー層18とクラッド形成層170との積層体である。クラッドフィルム402は、上側カバー層19とクラッド形成層170との積層体である。これらのクラッドフィルム401、402は、フィルム形状であり、枚葉状であっても、巻き取り可能なロール状であってもよい。
【0071】
クラッド形成層170の形成方法としては、例えば、ワニス状のクラッド形成用樹脂組成物をカバー層上に塗布した後、乾燥させる方法、カバー層上に樹脂膜を積層する方法等が挙げられる。
【0072】
樹脂組成物を塗布する方法では、例えば、スピンコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター等の各種コーターを用いて塗布する方法、スクリーン印刷のような印刷方法等が用いられる。
【0073】
樹脂膜を積層する方法では、ワニス状のクラッド形成用樹脂組成物から作製したフィルム状の樹脂膜を、例えばロールラミネート、真空ロールラミネート、平板ラミネート、真空平板ラミネート、常圧プレス、真空プレス等を用いて積層する方法等が用いられる。
【0074】
2.1.4.1.カバー層
下側カバー層18および上側カバー層19の膜厚は、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~50μm程度であるのがさらに好ましい。各カバー層の膜厚が前記範囲内であれば、下側カバー層18および上側カバー層19によってコア層13等を保護する能力を確保しつつ、光導波路1が厚くなりすぎることの弊害、例えば光導波路1の可撓性が低下すること等を抑制することができる。
【0075】
下側カバー層18および上側カバー層19の膜厚は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであるのが好ましい。これにより、膜厚の違いに伴う光導波路1の反りを抑制することができる。なお、膜厚が同じとは、膜厚の差が5μm以下であることをいう。
【0076】
下側カバー層18および上側カバー層19の主材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等の各種樹脂を含む材料が挙げられる。
【0077】
下側カバー層18および上側カバー層19の主材料は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであるのが好ましい。これにより、主材料の違いに伴う光導波路1の反りを抑制することができる。
【0078】
下側カバー層18および上側カバー層19の弾性率は、1~12GPaであるのが好ましく、2~11GPaであるのがより好ましく、3~10GPaであるのがさらに好ましい。なお、上記弾性率は、JIS K 7161-1:2014に規定の方法に準じて測定された引張弾性率である。
【0079】
2.1.4.2.クラッド形成用樹脂組成物
上記のクラッド形成用樹脂組成物としては、例えば、ポリマー、モノマー、重合開始剤等を含む組成物が挙げられる。
【0080】
2.1.4.2.1.ポリマー
ポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて、ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等として用いられる。
【0081】
これらの中でも、ポリマーには、アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、または、環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
【0082】
アクリル系樹脂としては、例えば、単官能アクリレート、多官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能メタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエステルアクリレート、および、尿素アクリレートからなる群から選択される1種以上を含むアクリル化合物の重合体が挙げられる。また、アクリル系樹脂は、ポリエステル骨格、ポリプロピレングリコール骨格、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、トリシクロデカン骨格、ジシクロペンタジエン骨格等を有していてもよい。
【0083】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物またはそれらの誘導体、およびビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物またはそれらの誘導体を共重合成分の構成単位として含むものが挙げられる。
【0084】
また、ポリマーは、必要に応じて熱硬化性樹脂を含んでもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、シクロカーボネート化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0085】
ポリマーの含有量は、例えば、クラッド形成用樹脂組成物の固形分全体の15質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、下側クラッド層11および上側クラッド層12の機械的特性が向上する。また、クラッド形成用樹脂組成物に含まれるポリマーの含有量は、クラッド形成用樹脂組成物の固形分全体の95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。これにより、下側クラッド層11および上側クラッド層12の光学的特性が向上する。
【0086】
クラッド形成用樹脂組成物の固形分全体とは、組成物中における不揮発分を指し、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。
【0087】
2.1.4.2.2.モノマー
モノマーとしては、分子構造中に重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ノルボルネン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー、光二量化モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0088】
これらの中でも、モノマーとしては、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、または、エポキシ系モノマーが好ましく用いられる。
【0089】
アクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、例えば、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、例えば、脂肪族(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、複素環式(メタ)アクリレート、またはこれらのエトキシ化体、プロポキシ化体、エトキシ化プロポキシ化体、カプロラクトン変性体等が挙げられる。また、分子内に、ビスフェノール骨格、ウレタン骨格等を有していてもよい。
【0090】
エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0091】
モノマーの含有量は、ポリマー100質量部に対し、1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、10質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。
【0092】
2.1.4.2.3.重合開始剤
重合開始剤は、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。重合開始剤としては、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマー等のラジカル重合開始剤、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合開始剤を用いることができる。
【0093】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。具体的には、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア2959、イルガキュア184(以上、IGMジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0094】
カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型のもの、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型のもの等が挙げられる。具体的には、アデカオプトマーSP-170(株式会社ADEKA製)、サンエイドSI-100L(三新化学工業株式会社製)、Rhodorsil2074(ローディアジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0095】
重合開始剤の含有量は、ポリマー100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。これにより、下側クラッド層11および上側クラッド層12の光学的特性や機械的特性を低下させることなく、モノマーを速やかに反応させることができる。
【0096】
2.1.4.2.4.その他
クラッド形成用樹脂組成物は、例えば、架橋剤、増感剤(光増感剤)、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等をさらに含んでいてもよい。
【0097】
2.1.4.2.5.溶剤
上述した成分を溶剤中に添加し、撹拌することにより、ワニス状のクラッド形成用樹脂組成物が得られる。得られた組成物は、例えば0.2μmの孔径を持つPTFEフィルターによるろ過処理に供されてもよい。また、得られた組成物は、各種混合機による混合処理に供されてもよい。
【0098】
クラッド形成用樹脂組成物に含まれる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、N-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0099】
なお、下側クラッド層11を形成するためのクラッド形成用樹脂組成物と、上側クラッド層12を形成するためのクラッド形成用樹脂組成物とは、互いに同じであっても、互いに異なっていてもよい。
【0100】
2.1.5.コア層の形成
コア形成層の面内の一部に活性放射線を照射すると、照射領域と非照射領域との間で屈折率差が形成される。その後、コア形成層を加熱する。この加熱により、照射領域に存在する重合開始剤が活性化し、モノマーの反応が進行する。これにより、モノマーの濃度差が拡大または固定される。その結果、照射領域の屈折率は、モノマーの影響を受けて低くなり、非照射領域の屈折率は、ポリマーの影響を受けて高くなる。
【0101】
また、この加熱に伴って、モノマーが揮発したり、ポリマーの分子構造が変化したりすることによって屈折率が変化してもよい。
【0102】
以上のようにして、非照射領域に対応する複数のコア部14、および、照射領域に対応する側面クラッド部15、を含むコア層13が得られる。
【0103】
なお、照射領域では、モノマーが揮発することにより、体積が減少することがある。この場合、側面クラッド部15の上面は、
図4(a)に示すように、コア部14の上面よりも凹没し、凹部132が生じることがある。ただし、凹部132が生じるのは、側面クラッド部15の上面に限定されず、コア部14の上面であってもよい。また、凹部132は、上記以外の原因で生じたものであってもよい。
【0104】
2.4.上側クラッド積層工程
上側クラッド積層工程S108では、
図4(b)に示すように、コアフィルム200およびクラッドフィルム402を積層方向に重ねる。これにより、
図4(c)に示すように、コアフィルム200とクラッドフィルム402との積層体180を得る。具体的には、コア層13の上面にクラッド形成層170が接するように、クラッドフィルム402を重ねる操作を行う。
【0105】
2.5.上側クラッド接着工程
上側クラッド接着工程S109では、
図5(d)に示すように、金属製ローラー22を積層体180の上面に押し付けながら、例えばY軸プラス側に走査する。金属製ローラー22は、所定の温度に加熱しておく。これにより、金属製ローラー22からクラッドフィルム402に熱を伝達させ、クラッドフィルム402を加熱することができる。加熱されたクラッドフィルム402では、クラッド形成層170が軟化し、成形性および接着性が発現する。その結果、クラッド形成層170がコア層13の上面に存在する凹部132を埋めつつ、接着する。これにより、
図5(e)に示すように、コア層13とクラッド形成層170とが接着してなる接着体182が得られる。
【0106】
金属製ローラー22は、内部に熱源を有し、少なくとも表面が金属材料で構成されているローラーである。
図5(d)に示す金属製ローラー22は、一例として、X軸と平行な回転軸まわりに回転しながら、Y軸プラス側に移動可能になっている。また、金属製ローラー22は、Z軸マイナス側に向かってクラッドフィルム402を押圧する。つまり、金属製ローラー22は、クラッド形成層170を軟化させる機能と、クラッド形成層170をコア層13に向かって押し付けながら移動する機能と、を有する。
【0107】
金属材料は、熱伝達性に優れる。このため、金属製ローラー22から多くの熱を速やかにクラッド形成層170に伝達させることができる。これにより、金属製ローラー22の走査速度を高めても、クラッド形成層170を短時間で十分に軟化させることができる。その結果、本工程のスループットを高めることができる。
【0108】
金属材料としては、あらゆる金属材料が挙げられるが、例えば、アルミニウム、鉄、銅、銀、チタン、マグネシウム、亜鉛、スズ、ニッケル等の単体、またはこれらを含む合金もしくは金属間化合物等が挙げられる。このうち、金属材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であるのが好ましい。これらのアルミニウム系材料を含む金属製ローラー22は、熱伝達性が特に高いため、クラッド形成層170を目的とする温度に昇温するまでの時間を特に短縮することができる。
【0109】
また、金属製ローラー22を用いることで、クラッド形成層170に熱および圧力が伝達される領域、具体的には
図5(d)に示す熱圧着領域24を、回転軸に沿って延びる線状の領域に限定することができる。つまり、熱圧着領域24に隣接する領域(非熱圧着領域26)には、金属製ローラー22が接触していないため、熱や圧力が伝達されにくく、接着性および成形性が発現しにくい。したがって、金属製ローラー22を走査方向に走査することで、走査方向と直交する方向に延びる細長い熱圧着領域24が移動し、コアフィルム200とクラッドフィルム402との隙間や凹部132に残る空気を、非熱圧着領域26を介して走査方向に掃き出すことができる。その結果、最終的に、接着不良の少ない光導波路1を製造することができる。
【0110】
なお、凹部132等に空気が残ると、コア部14と側面クラッド部15との屈折率差にバラつきが生じたり、屈折率の勾配が緩くなったりする。そうすると、コア部14の伝送損失が増大したり、伝送損失のバラつきが生じたりするおそれがある。また、上側クラッド層12とコア層13の間に残された気泡の影響により、光導波路1の熱衝撃耐久性が低下するおそれがある。
【0111】
また、金属製ローラー22を加熱しない場合には、別の加熱手段によってクラッド形成層170を加熱する必要がある。この場合、局所的に加熱することは難しいため、熱圧着領域24だけでなく、非熱圧着領域26にも接着性や成形性が発現しやすくなる。そうすると、空気の排出経路を確保しにくくなり、空気を十分に掃き出すことができないおそれがある。
【0112】
また、局所的に加熱加圧するのではなく、積層体180の全面を加熱加圧する方法を採用した場合には、全面で接着性が同時に発現するため、空気の掃き出しが不十分になるおそれがある。
【0113】
金属製ローラー22の表面温度は、クラッド形成層170が軟化する温度であれば、特に限定されないが、100~200℃であるのが好ましく、140~180℃であるのがより好ましい。
【0114】
金属製ローラー22を積層体180に押し付けるときの線圧は、5~20kN/m(5~20kgf/cm)であるのが好ましく、7~15kN/m(7~15kgf/cm)であるのがより好ましい。線圧を前記範囲内に設定することにより、コア層13の上面に存在する凹部132に対し、軟化したクラッド形成層170を適切に充填することができる。これにより、コア層13とクラッド形成層170との接着不良をより確実に抑制することができる。
【0115】
なお、線圧が前記下限値を下回ると、コア層13の上面に存在する凹部132の深さやクラッド形成層170の軟化度によっては、クラッド形成層170の成形性が低下し、凹部132を十分に充填できないおそれがある。一方、線圧が前記上限値を上回ると、金属製ローラー22と積層体180との接触面積によっては、過剰な圧力によってコア層13の特性が低下するおそれがある。
【0116】
金属製ローラー22の直径は、特に限定されないが、20~80mmであるのが好ましく、40~60mmであるのがより好ましい。直径を前記範囲内に設定することにより、金属製ローラー22と積層体180との接触面積を最適化することができる。これにより、より接着不良の少ない光導波路1を製造することができる。
【0117】
なお、直径が前記下限値を下回ると、接触面積が小さくなりすぎるため、十分な熱量を伝達させることができず、上側カバー層19の熱伝導率や厚さ等によっては、クラッド形成層170の軟化が不十分になるおそれがある。一方、直径が前記上限値を上回ると、接触面積が大きくなりすぎるため、線圧を十分に高めることができないおそれがある。
【0118】
金属製ローラー22は、自動ローラーであっても、従動ローラーであってもよい。自動ローラーの場合、金属製ローラー22の回転により、積層体180を搬送することができる。従動ローラーの場合、別の搬送手段で積層体180を搬送するようにすればよい。また、金属製ローラー22が有する熱源の種類は、特に限定されず、表面を加熱可能な方式であれば、いかなる方式の熱源であってもよい。
【0119】
また、
図5(d)では、積層体180の金属製ローラー22とは反対側に、金属板110(平板)が配置されている。本工程では、積層体180を金属製ローラー22と金属板110とで挟んで、積層体180を押圧する。
【0120】
このような構成によれば、積層体180の下面を平坦に維持しやすいため、金属製ローラー22を押し付けたとき、積層体180にいわゆる曲がり癖が付きにくい。
【0121】
なお、金属板110および中間フィルム120に代えて、上面が平坦な台やテーブル等を用いるようにしてもよい。
【0122】
一方、平板として台やテーブル等ではなく、金属板110を用いることで、次のような効果も享受できる。金属板110は、板状をなしているので、適度な剛性を有するとともに、比較的軽量である。このため、金属板110は、コアフィルム200とともに搬送可能である。したがって、金属板110は、金属製ローラー22と対向する位置で、金属製ローラー22からの荷重を受け止めるとともに、コアフィルム200のハンドリング性および枚葉式での搬送性を高めることにも寄与する。
【0123】
また、金属板110は、熱伝導性に優れる。このため、金属製ローラー22からクラッド形成層170に伝達された熱が、コア層13に蓄熱されるのを抑制することができる。つまり、金属板110は、金属製ローラー22からクラッド形成層170を介してコア層13に伝達された熱を、速やかに拡散させることにより、コア層13が局所的に高温になるのを抑制する。これにより、コア層13が熱で劣化するのを抑制することができる。劣化としては、例えば、コア層13に含まれる未反応のモノマーに反応を生じさせ、コア層13中の屈折率分布が意図せず変化することが挙げられる。
【0124】
金属板110が含む金属材料の熱伝導率は、50[W/(m・K)]以上であるのが好ましく、100[W/(m・K)]以上であるのがより好ましい。金属材料の熱伝導率が前記範囲内であれば、金属板110の熱伝導性を特に高めることができる。これにより、コア層13に伝達された熱を、より速やかに拡散させることができる。その結果、コア層13が高温に曝されることによる不具合の発生をより確実に抑制することができる。
【0125】
また、好ましくは、金属板110の熱伝導率も、前記範囲内に設定される。これにより、金属板110が金属材料以外の材料を含んでいる場合も、上記の効果を享受することができる。
【0126】
ここで、コア層13におけるコア部14の延在方向と、金属製ローラー22の走査方向と、の関係について説明する。
【0127】
図8は、
図1に示すコア層13が含むコア部14の延在方向D1、および、金属製ローラー22の走査方向D2、の一例を示す図である。
【0128】
図8の例では、延在方向D1および走査方向D2が、それぞれX軸と平行である。なお、走査方向D2とは、コア層13に対する金属製ローラー22の相対的な変位の方向である。つまり、走査方向D2は、固定されたコア層13に対して変位する金属製ローラー22の変位方向、または、固定された金属製ローラー22に対して変位するコア層13の変位方向である。
【0129】
図8に示す例では、コア層13が、端面101(第1光入出射面)および端面102(第2光入出射面)と、これらを互いにつなぐ長尺状のコア部14と、を含んでいる。そして、走査方向D2は、端面101から端面102に向かう方向であるのが好ましい。つまり、金属製ローラー22は、コア層13の光入出射面同士をつなぐ方向に沿って相対的に走査されるのが好ましい。
【0130】
これにより、金属製ローラー22の走査によって、
図4(a)に示すような凹部132の空気を効率よく掃き出すことができる。つまり、端面101から端面102に向かう方向は、コア部14の延在方向D1とほぼ平行である場合が多い。したがって、凹部132がコア部14に沿って存在しているときでも、延在方向D1に沿って存在する凹部132の空気が、金属製ローラー22の走査に伴って順次排出されることになる。その結果、凹部132に対してクラッド形成層170を良好に充填することができる。
【0131】
なお、金属製ローラー22は、クラッド形成層170を短時間で十分に軟化させることができ、熱圧着領域24の面積を小さくしやすい。このため、小さな熱圧着領域24で空気を効率よく掃き出すことができ、延在方向D1と走査方向D2とが交差している場合でも、接着不良が発生しにくい。このような場合の例として、
図5(d)に示す状況が挙げられる。
【0132】
また、凹部132をクラッド形成層170で良好に充填するためには、クラッド形成層170の軟化時の粘度が最適化されていることが好ましい。
【0133】
図9は、クラッド形成層170を140℃で加熱した時間(加熱時間)と、軟化したクラッド形成層170の粘度と、の関係の一例を示すグラフである。
【0134】
図9に示す例では、約7秒未満のデータを省略しているものの、クラッド形成層170の加熱時間が1秒であるとき、クラッド形成層170の粘度は、約450Pa・sである。その後、加熱時間の増加に伴って、クラッド形成層170の硬化反応が進むため、粘度が上昇する。この傾向を踏まえると、クラッド形成層170の加熱時間が少ないときに、クラッド形成層170に対して熱圧着を行うのが望ましいことがわかる。
【0135】
具体的には、クラッド形成層170が140℃で1秒間加熱されたときの粘度は、200~600Pa・sであるのが好ましく、350~550Pa・sであるのがより好ましい。クラッド形成層170の粘度が前記範囲内であれば、コアフィルム200を金属製ローラー22で加熱するとき、短時間の加熱であっても、凹部132を充填可能な程度の粘度までクラッド形成層170を軟化させることができる。これにより、凹部132をクラッド形成層170で良好に充填することができ、接着不良の発生確率を十分に下げることができる。
【0136】
なお、上述した粘度とは、クラッド形成層170を140℃で加熱し、1秒後の複素粘性率η*を指す。
【0137】
複素粘性率η*は、動的粘弾性装置ARES(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いるとともに、上下部測定治具に直径23mmの平板のパラレルプレートを用い、上部と下部の治具間距離が0.8mmとなるようにクラッド形成層170をセット後、せん断モードで測定した数値である。
【0138】
また、クラッド形成層170と金属製ローラー22とを接触させてクラッド形成層170を加熱するとき、クラッド形成層170と金属製ローラー22との接触時間が短すぎる場合、十分な軟化に至らないことがあり、接触時間が長すぎる場合、硬化反応が進みやすくなるおそれがある。このため、クラッド形成層170の軟化や硬化反応の進度を踏まえると、金属製ローラー22の走査速度を最適化することが望ましい。具体的には、金属製ローラー22の走査速度は、0.5~10mm/秒であるのが好ましく、3~5mm/秒であるのがより好ましい。これにより、クラッド形成層170を適度に軟化させるとともに、硬化反応の著しい進行を抑えることができるので、クラッド形成層170に良好な成形性を付与することができる。また、本工程のスループットを高めることができる。
【0139】
2.6.上側クラッド形成工程
上側クラッド形成工程S110では、接着体182を加熱する。これにより、クラッドフィルム402が備えるクラッド形成層170が硬化する。その結果、クラッド形成層170から
図6(f)に示す上側クラッド層12が得られる。
【0140】
加熱条件としては、例えば、加熱温度:100~200℃、加熱時間:10~180分が挙げられる。
【0141】
2.7.剥離工程
剥離工程S112では、コア層13を支持するコア基材100を、コア層13から剥離する。これにより、
図6(g)に示すように、コア層13の下面を露出させる。
【0142】
コア基材100を剥離した後のコア層13に対し、必要に応じて、表面処理を施すようにしてもよい。表面処理としては、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理等が挙げられる。
【0143】
2.8.下側クラッド積層工程
下側クラッド積層工程S114では、クラッドフィルム401をコア層13の下面に積層する。これにより、
図6(h)に示すように、上側カバー層19、上側クラッド層12およびコア層13とクラッドフィルム401との積層体190を得る。具体的には、コア層13の下面にクラッド形成層170が接するように、クラッドフィルム401を重ねる操作を行う。
【0144】
2.9.下側クラッド接着工程
下側クラッド接着工程S115では、積層体190の下面に、例えば図示しない金属製ローラーを押し付けながら走査する。これにより、コア層13の下面にクラッド形成層170を接着し、
図7(i)に示す接着体192を得る。この操作は、前述した上側クラッド接着工程S109と同様の操作であってもよいし、他の加熱方法を用いる操作であってもよい。また、積層体190の上面に加熱されたローラーを押し付けながら走査することにより、コア層13の下面にクラッド形成層170を接着するようにしてもよい。
【0145】
2.10.下側クラッド形成工程
下側クラッド形成工程S116では、接着体192を加熱する。これにより、クラッドフィルム401が備えるクラッド形成層170が硬化する。その結果、クラッド形成層170から
図7(j)に示す下側クラッド層11が得られる。
【0146】
加熱条件としては、例えば、加熱温度:100~200℃、加熱時間:10~180分が挙げられるが、上側クラッド層12を形成するときの加熱条件よりも、高温または長時間に設定されるのが好ましい。
以上のようにして
図2に示す光導波路1が得られる。
【0147】
2.11.実施形態が奏する効果
以上のように、本実施形態に係る光導波路の製造方法は、準備工程S102と、上側クラッド積層工程S108と、上側クラッド接着工程S109と、上側クラッド形成工程S110と、を有する。準備工程S102では、コア基材100(第1基材)とコア基材100に積層されているコア層13とを有するコアフィルム200、および、上側カバー層19(第2基材)と上側カバー層19に積層されているクラッド形成層170とを有するクラッドフィルム402と、を用意する。上側クラッド積層工程S108では、コア層13とクラッド形成層170とが接するように、コアフィルム200およびクラッドフィルム402を積層方向に重ねて、積層体180を得る。上側クラッド接着工程S109では、積層体180に対し、加熱されている金属製ローラー22を積層方向に押し付けながら走査方向に相対的に走査し、クラッド形成層170を軟化させることにより、コア層13とクラッド形成層170とを接着し、接着体182を得る。上側クラッド形成工程S110では、接着体182を加熱することにより、クラッド形成層170から上側クラッド層12を得る。
【0148】
このような構成によれば、コアフィルム200とクラッドフィルム402とを熱圧着するとき、クラッド形成層170の成形性を短時間に高めつつ、接着界面の空気等を効率よく掃き出すことができる。これにより、接着不良の少ない光導波路1を製造することができる。また、金属製ローラー22は、熱伝達性に優れるため、金属製ローラー22の走査速度を高めても、クラッド形成層170を短時間で十分に軟化させることができる。さらに、金属製ローラー22であれば、細長い線状の熱圧着領域24を局所的に加熱することができるので、空気等の掃き出し効率がより高くなる。これにより、熱圧着のスループットを高めることができる。
【0149】
3.変形例
次に、変形例に係る光導波路の製造方法について説明する。
【0150】
図10ないし
図12は、変形例に係る光導波路の製造方法を示す断面図である。なお、
図10ないし
図12では、説明の便宜のため、各図の上側を「上」といい、下側を「下」というが、この表記は、鉛直方向に対する姿勢を限定するものではない。
【0151】
以下、変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図10ないし
図12において、前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0152】
前記実施形態は、いわゆる枚葉方式の製造方法である。枚葉方式とは、シート状の部材に対して各工程を行って光導波路を製造する方法である。したがって、複数の光導波路を製造する場合、複数の部材に対して順次、各工程を行う。
【0153】
これに対し、本変形例は、いわゆるロール・ツー・ロール方式の製造方法である。ロール・ツー・ロール方式とは、複数の光導波路を切り出す前提で、長尺シートを連続的または断続的に繰り出しながら各工程を行い、長尺シートに複数の光導波路を製造する方法である。これにより、
図2に示す光導波路1を効率よく製造することができる。
【0154】
図10ないし
図12は、それぞれ、
図3に示す上側クラッド積層工程S108および上側クラッド接着工程S109を行う製造装置50の一例を示している。
【0155】
図10に示す製造装置50は、上側積層ローラー52、下側積層ローラー54、金属製ローラー22、および、対向ローラー56を備える。
【0156】
図10に示すコアフィルム200は、長尺状をなしている。このコアフィルム200は、下方から供給され、下側積層ローラー54に巻き付いて、上側積層ローラー52と下側積層ローラー54との間に搬送される。
図10に示すクラッドフィルム402は、長尺状をなしている。このクラッドフィルム402は、上方から供給され、上側積層ローラー52に巻き付いて、上側積層ローラー52と下側積層ローラー54との間に搬送される。そして、上側積層ローラー52と下側積層ローラー54との間で、コアフィルム200とクラッドフィルム402とを合流させ、積層方向に積層する。これにより、積層体180を得る。したがって、上側積層ローラー52および下側積層ローラー54は、上側クラッド積層工程S108を行う。
【0157】
得られた積層体180は、金属製ローラー22と対向ローラー56との間に搬送される。金属製ローラー22は、積層体180の上面を積層方向(下方)に押し付けながら、積層体180を搬送する。金属製ローラー22は、所定の温度に加熱しておく。これにより、金属製ローラー22からクラッドフィルム402に熱を伝達させ、クラッドフィルム402を加熱することができる。
【0158】
一方、対向ローラー56は、積層体180の下面を支持しながら、積層体180を搬送する。したがって、金属製ローラー22と対向ローラー56との間で積層体180を挟持している。対向ローラー56も、所定の温度に加熱しておく。これにより、対向ローラー56からコアフィルム200を介してクラッドフィルム402に熱を伝達させ、クラッドフィルム402を加熱することができる。
【0159】
加熱されたクラッドフィルム402では、クラッド形成層170が軟化し、成形性および接着性が発現する。その結果、クラッド形成層170がコア層13の上面に存在する凹部132を埋めつつ、接着する。これにより、コア層13とクラッド形成層170とが接着してなる接着体182が得られる。したがって、金属製ローラー22および対向ローラー56は、上側クラッド接着工程S109を行う。
【0160】
以上のように、変形例に係る光導波路の製造方法では、上述した金属製ローラー22および対向ローラー56によって行う上側クラッド接着工程S109(コア層13とクラッド形成層170とを接着する工程)を有する。かかる上側クラッド接着工程S109は、金属製ローラー22と対向ローラー56との間で積層体180を積層方向に押し付けながら、金属製ローラー22を相対的に走査し、クラッド形成層170を軟化させる操作を含む。
【0161】
このような構成によれば、金属製ローラー22と対向ローラー56との間に積層体180を挟んで連続的に押圧することができる。つまり、長尺状をなす積層体180を搬送することで、上側クラッド接着工程S109を連続的に行うことができる。これにより、コアフィルム200とクラッドフィルム402とを連続的に接着することができる。その結果、ロール・ツー・ロール方式でも、上側クラッド接着工程S109を行うことができ、最終的に光導波路1をより効率よく製造することができる。
【0162】
なお、対向ローラー56は、加熱されていなくてもよい。また、対向ローラー56として加熱されている金属製ローラーを用いるようにしてもよい。これにより、対向ローラー56から積層体180への熱伝達性を高めることができる。
【0163】
図11に示す製造装置50およびそれを用いた製造方法では、上側クラッド接着工程S109で得られた接着体182から、上側カバー層19を剥離する以外、
図10に示す製造装置50および製造方法と同様である。この上側カバー層19の剥離は、例えば、上側カバー層19のみを巻き取る図示しない巻き取り装置により実現される。この巻き取り装置で上側カバー層19のみを巻き取ることにより、接着体182から上側カバー層19を剥離してなる接着体182Aが得られる。したがって、接着体182Aから最終的に製造される光導波路は、
図2に示す光導波路1から上側カバー層19を省略したものとなる。
【0164】
図12に示す製造装置50およびそれを用いた製造方法は、上側積層ローラー52を省略した以外、
図10に示す製造装置50および製造方法と同様である。
図12に示すコアフィルム200は、
図10と同様の経路で、下側積層ローラー54に巻き付いて、金属製ローラー22と対向ローラー56との間に搬送される。一方、
図12に示すクラッドフィルム402は、上方から供給され、金属製ローラー22に巻き付いて、金属製ローラー22と対向ローラー56との間に搬送される。そして、金属製ローラー22と対向ローラー56との間で、コアフィルム200とクラッドフィルム402とを合流させ、積層方向に積層する。これにより、積層体180を得る。したがって、
図12に示す製造方法では、金属製ローラー22および対向ローラー56が、上側クラッド積層工程S108を行う。
【0165】
得られた積層体180は、金属製ローラー22と対向ローラー56との間で加熱される。加熱されたクラッドフィルム402では、クラッド形成層170が軟化し、成形性および接着性が発現する。その結果、クラッド形成層170がコア層13の上面に存在する凹部132を埋めつつ、接着する。これにより、コア層13とクラッド形成層170とが接着してなる接着体182が得られる。したがって、金属製ローラー22および対向ローラー56は、上側クラッド接着工程S109を行う。
【0166】
したがって、
図12に示す製造方法では、金属製ローラー22および対向ローラー56により、上側クラッド積層工程S108および上側クラッド接着工程S109をほぼ同時に行うことになる。この方法でも、
図2に示す光導波路1が得られる。なお、
図12に示す製造方法では、金属製ローラー22とクラッドフィルム402とが接している時間が、
図10や
図11に示す製造方法よりも長い。これは、上側クラッド積層工程S108や上側クラッド接着工程S109に供するクラッドフィルム402が、長い接触時間を利用して予熱されることに相当する。これにより、クラッド形成層170に発現する成形性をより高めることができる。
【0167】
以上、本発明の光導波路の製造方法を、図示の実施形態や変形例に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0168】
例えば、本発明の光導波路の製造方法は、前記実施形態や前記変形例に任意の目的の工程を追加したものであってもよい。
【符号の説明】
【0169】
1 光導波路
11 下側クラッド層
12 上側クラッド層
13 コア層
14 コア部
15 側面クラッド部
18 下側カバー層
19 上側カバー層
22 金属製ローラー
24 熱圧着領域
26 非熱圧着領域
50 製造装置
52 上側積層ローラー
54 下側積層ローラー
56 対向ローラー
100 基材
101 端面
102 端面
110 金属板
120 中間フィルム
132 凹部
170 クラッド形成層
180 積層体
182 接着体
182A 接着体
190 積層体
192 接着体
200 コアフィルム
401 クラッドフィルム
402 クラッドフィルム
D1 延在方向
D2 走査方向
S102 準備工程
S108 上側クラッド積層工程
S109 上側クラッド接着工程
S110 上側クラッド形成工程
S112 剥離工程
S114 下側クラッド積層工程
S115 下側クラッド接着工程
S116 下側クラッド形成工程