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特開2023-96860ナノワイヤ製造治具、ナノワイヤ転写体、ナノワイヤ製造装置及びナノワイヤ製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096860
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】ナノワイヤ製造治具、ナノワイヤ転写体、ナノワイヤ製造装置及びナノワイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/83 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
D06M11/83
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212883
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】神原 信幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 清嘉
(72)【発明者】
【氏名】加茂 宗太
(72)【発明者】
【氏名】石川 直元
(72)【発明者】
【氏名】堀苑 英毅
(72)【発明者】
【氏名】高柳 俊幸
【テーマコード(参考)】
4L031
【Fターム(参考)】
4L031AB01
4L031BA04
4L031CB13
4L031CB14
4L031DA15
(57)【要約】
【課題】ナノワイヤの製造コストの低減を図る。
【解決手段】ナノワイヤの製造に用いられるナノワイヤ製造治具であって、ロール方向に巻回可能なフィルム基材と、前記フィルム基材から突出して設けられ、前記ロール方向に直交する幅方向に延在して設けられると共に、前記ロール方向に所定の間隔を空けて設けられる複数の突起部と、前記フィルム基材及び複数の前記突起部に設けられ、隣接する前記突起部同士の間に、前記ナノワイヤの芯材となるナノファイバを形成するための導電膜パターンと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノワイヤの製造に用いられるナノワイヤ製造治具であって、
ロール方向に巻回可能なフィルム基材と、
前記フィルム基材から突出して設けられ、前記ロール方向に直交する幅方向に延在して設けられると共に、前記ロール方向に所定の間隔を空けて設けられる複数の突起部と、
前記フィルム基材及び複数の前記突起部に設けられ、隣接する前記突起部同士の間に、前記ナノワイヤの芯材となるナノファイバを形成するための導電膜パターンと、を備えるナノワイヤ製造治具。
【請求項2】
前記突起部は、前記幅方向に直交する面で切った断面形状が、頂点を有する山形形状となっている請求項1に記載のナノワイヤ製造治具。
【請求項3】
前記突起部は、前記フィルム基材の一部を山折りして形成される部位であり、
前記フィルム基材は、製造された前記ナノワイヤを転写する転写フィルムとなっている請求項1または2に記載のナノワイヤ製造治具。
【請求項4】
前記フィルム基材に対向して設けられ、前記フィルム基材上に製造された前記ナノワイヤを転写する転写材を、さらに備える請求項1または2に記載のナノワイヤ製造治具。
【請求項5】
請求項3に記載のナノワイヤ製造治具を用いて製造された前記ナノワイヤが転写されたナノワイヤ転写体であって、
前記ナノワイヤ製造治具の前記フィルム基材を、前記ロール方向に引張して、山折りとなる前記突起部を、前記フィルム基材と面一となるように引張させ、隣接する前記突起部同士の間に形成された前記ナノワイヤが、前記フィルム基材に転写されてなるナノワイヤ転写体。
【請求項6】
請求項4に記載のナノワイヤ製造治具を用いて製造された前記ナノワイヤが転写されたナノワイヤ転写体であって、
前記フィルム基材から引き離すことで、転写された前記ナノワイヤを含む前記転写材であるナノワイヤ転写体。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載のナノワイヤ製造治具を用いて、前記ナノワイヤを製造するナノワイヤ製造装置であって、
前記ナノワイヤ製造治具は、前記ロール方向に巻回されており、
巻回された前記ナノワイヤ製造治具を前記ロール方向に供給する供給部と、
供給された前記ナノワイヤ製造治具に、前記ナノワイヤの芯材となるナノファイバを形成するファイバ形成部と、
前記ナノファイバに金属薄膜を形成して、前記ナノワイヤとする薄膜形成部と、
前記ナノワイヤが製造された後の前記ナノワイヤ製造治具をロール方向に巻回して回収する回収部と、を備えるナノワイヤ製造装置。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項に記載のナノワイヤ製造治具を用いて、前記ナノワイヤを製造するナノワイヤ製造方法であって、
前記ナノワイヤ製造治具は、前記ロール方向に巻回されており、
巻回された前記ナノワイヤ製造治具を前記ロール方向に供給するステップと、
供給された前記ナノワイヤ製造治具に、前記ナノワイヤの芯材となるナノファイバを形成するステップと、
前記ナノファイバに金属薄膜を形成して、前記ナノワイヤとするステップと、
前記ナノワイヤが製造された後の前記ナノワイヤ製造治具をロール方向に巻回して回収するステップと、を備えるナノワイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナノワイヤ製造治具、ナノワイヤ転写体、ナノワイヤ製造装置及びナノワイヤ製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナノワイヤを製造する製造方法として、ナノ粒子を含む電界紡糸合成溶液に電界紡糸法によってナノファイバーナノ粒子複合体を生成して乾燥させ、乾燥したナノファイバーナノ粒子複合体を、水熱合成法を用いてナノ粒子からナノワイヤを成長させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この製造方法では、電界紡糸合成溶液を、注射器ポンプを介してコレクタへ向けて放射することで、ナノファイバーナノ粒子複合体を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-505700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナノワイヤの製造に用いられるコレクタは、一般的に、面積が小さいものとなっていることから、ナノワイヤを効率よく製造することが難しく、ナノワイヤの低コスト化を阻む要因となっている。
【0005】
そこで、本開示は、ナノワイヤの製造コストの低減を図ることができるナノワイヤ製造治具、ナノワイヤ転写体、ナノワイヤ製造装置及びナノワイヤ製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のナノワイヤ製造治具は、ナノワイヤの製造に用いられるナノワイヤ製造治具であって、ロール方向に巻回可能なフィルム基材と、前記フィルム基材から突出して設けられ、前記ロール方向に直交する幅方向に延在して設けられると共に、前記ロール方向に所定の間隔を空けて設けられる複数の突起部と、前記フィルム基材及び複数の前記突起部に設けられ、隣接する前記突起部同士の間に、前記ナノワイヤの芯材となるナノファイバを形成するための導電膜パターンと、を備える。
【0007】
本開示のナノワイヤ転写体は、上記のナノワイヤ製造治具を用いて製造された前記ナノワイヤが転写されたナノワイヤ転写体であって、前記ナノワイヤ製造治具の前記フィルム基材を、前記ロール方向に引張して、山折りとなる前記突起部を、前記フィルム基材と面一となるように引張させ、隣接する前記突起部同士の間に形成された前記ナノワイヤが、前記フィルム基材に転写されてなる。
【0008】
本開示の他のナノワイヤ転写体は、上記のナノワイヤ製造治具を用いて製造された前記ナノワイヤが転写されたナノワイヤ転写体であって、前記フィルム基材から引き離すことで、転写された前記ナノワイヤを含む前記転写材である。
【0009】
本開示のナノワイヤ製造装置は、上記のナノワイヤ製造治具を用いて、前記ナノワイヤを製造するナノワイヤ製造装置であって、前記ナノワイヤ製造治具は、前記ロール方向に巻回されており、巻回された前記ナノワイヤ製造治具を前記ロール方向に供給する供給部と、供給された前記ナノワイヤ製造治具に、前記ナノワイヤの芯材となるナノファイバを形成するファイバ形成部と、前記ナノファイバに金属薄膜を形成して、前記ナノワイヤとする薄膜形成部と、前記ナノワイヤが製造された後の前記ナノワイヤ製造治具をロール方向に巻回して回収する回収部と、を備える。
【0010】
本開示のナノワイヤ製造方法は、上記のナノワイヤ製造治具を用いて、前記ナノワイヤを製造するナノワイヤ製造方法であって、前記ナノワイヤ製造治具は、前記ロール方向に巻回されており、巻回された前記ナノワイヤ製造治具を前記ロール方向に供給するステップと、供給された前記ナノワイヤ製造治具に、前記ナノワイヤの芯材となるナノファイバを形成するステップと、前記ナノファイバに金属薄膜を形成して、前記ナノワイヤとするステップと、前記ナノワイヤが製造された後の前記ナノワイヤ製造治具をロール方向に巻回して回収するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ナノワイヤの製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1に係るナノワイヤ製造装置を示す概略構成図である。
図2図2は、実施形態1に係るナノワイヤ製造治具を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係るナノワイヤ転写体に関する説明図である。
図4図4は、実施形態1に係るナノワイヤ製造方法に関する一例のフローチャートである。
図5図5は、実施形態2に係るナノワイヤ製造装置を示す概略構成図である。
図6図6は、実施形態2に係るナノワイヤ転写体に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0014】
[実施形態1]
実施形態1に係るナノワイヤ製造治具10は、ナノワイヤを製造するナノワイヤ製造装置1及びナノワイヤ製造方法に用いられ、製造されたナノワイヤNWは、ナノワイヤ転写体20として製品化され提供される。
【0015】
図1は、実施形態1に係るナノワイヤ製造装置を示す概略構成図である。図2は、実施形態1に係るナノワイヤ製造治具を模式的に示す斜視図である。図3は、実施形態1に係るナノワイヤ転写体に関する説明図である。図4は、実施形態1に係るナノワイヤ製造方法に関する一例のフローチャートである。先ず、図1及び図2を参照して、ナノワイヤ製造装置1について説明する。
【0016】
(ナノワイヤ製造装置)
ナノワイヤ製造装置1は、ナノワイヤ製造治具10を用いたロール・トゥ・ロール(Roll to Roll)方式によって、ナノワイヤNWを製造する装置となっている。図2に示すように、ナノワイヤNWは、ナノファイバNFを芯材として、ナノファイバNFに金属薄膜MFが形成されたものである。ナノワイヤ製造装置1は、供給部4と、ファイバ形成部5と、薄膜形成部6と、回収部7と、を備える。ここで、ナノワイヤ製造装置1に用いられるナノワイヤ製造治具10は、ロール方向に巻回されたロール体となっており、ロール体となるナノワイヤ製造治具10が供給部4にセットされている。
【0017】
供給部4は、ロール体となるナノワイヤ製造治具10をロール方向に繰り出すことで、回収部7へ向けて供給する。供給部4は、ナノワイヤ製造治具10のロール軸を保持すると共に、ロール軸を中心に回転することで、ナノワイヤ製造治具10をロール方向に繰り出している。
【0018】
ファイバ形成部5は、エレクトロスピニング法(電界紡糸法)を用いて、芯材となるナノファイバNWを、ナノワイヤ製造治具10上に形成する。ファイバ形成部5は、ロール方向に繰り出されたナノワイヤ製造治具10と対向して設けられる。ファイバ形成部5は、ナノワイヤ製造治具10をコレクタとして機能させる。ナノファイバNWは、その繊維方向がロール方向に沿うようにナノワイヤ製造治具10上に形成される。
【0019】
薄膜形成部6は、ナノワイヤ製造治具10上に形成されたナノファイバNWに対して、スパッタまたは蒸着等により金属薄膜MFを形成して、ナノワイヤNWをする。薄膜形成部6は、ロール方向に繰り出されたナノワイヤ製造治具10と対向して設けられ、ロール方向において、ファイバ形成部5の下流側に設けられる。
【0020】
回収部7は、ナノワイヤNWが製造された後のナノワイヤ製造治具10をロール方向に巻回して回収する。実施形態1において、回収部7は、製造されたナノワイヤNWと共にナノワイヤ製造治具10を回収している。回収部7は、回収後のナノワイヤ製造治具10を保持するロール軸を中心に回転することで、ナノワイヤ製造治具10をロール方向に巻き取ることで、ロール体とする。
【0021】
上記のようなナノワイヤ製造装置1は、供給部4からナノワイヤ製造治具10を繰り出すと、繰り出されたナノワイヤ製造治具10に対して、ファイバ形成部5が、エレクトロスピニング法によりナノファイバNFを形成する。この後、ナノワイヤ製造装置1は、ナノワイヤ製造治具10に形成されたナノファイバNFに対して、薄膜形成部6が、金属薄膜MFを形成することで、ナノワイヤNWを製造する。そして、ナノワイヤ製造装置1は、回収部7により、製造されたナノワイヤNWと共に、ナノワイヤ製造治具10を巻き取る。
【0022】
(ナノワイヤ製造治具)
次に、図2を参照して、ナノワイヤ製造治具10について説明する。ナノワイヤ製造治具10は、フィルム基材11と、複数の突起部12と、導電膜パターン13と、を備える。
【0023】
フィルム基材11は、ロール方向に巻回可能な可撓性を有する材料が用いられており、例えば、PET等の樹脂を用いた透明なフィルムとなっている。また、フィルム基材11は、ナノワイヤ製造治具10上に製造されたナノワイヤNWを転写する転写フィルムとしても機能している。つまり、フィルム基材11は、ナノワイヤNWが接触することで、ナノワイヤNWを保持可能なフィルムとなっている。フィルム基材11は、幅方向における長さL1が、例えば、250mm程度となっている。
【0024】
突起部12は、フィルム基材11から突出して設けられ、フィルム基材11の一部を山折りして形成される部位となっている。突起部12は、ロール方向に直交する幅方向に延在して設けられる。なお、突起部12は、幅方向において、フィルム基材11の幅方向端部から、所定の間隔を空けて配置されている。また、突起部12は、ロール方向に所定の間隔を空けて複数並べて設けられる。突起部12は、幅方向に直交する面で切った断面形状が、頂点を有する山形形状となっている。突起部12は、フィルム基材11からの高さが、例えば、1mm程度となっており、ナノファイバNFの形成に必要となる最小の高さとなっている。また、ロール方向に隣接する突起部12同士の間隔L2が、例えば、20mm程度となっている。
【0025】
導電膜パターン13は、ナノワイヤ製造治具10をコレクタとして機能させるため、つまり、ロール方向に隣接する突起部12同士の間にナノファイバNFを形成するために設けられている。導電膜パターン13は、フィルム基材11に設けられる第1パターン13aと、突起部12に設けられる第2パターン13bとを含んでいる。第1パターン13aは、フィルム基材11の幅方向の両側に一対設けられ、ロール方向に亘って設けられている。第2パターン13bは、各突起部12の頂部に設けられ、幅方向に亘って設けられる。第2パターン13bは、幅方向の両側が、一対の第1パターン13aにそれぞれ接続されている。
【0026】
上記のようなナノワイヤ製造治具10には、幅方向の両側に谷折り線15及び複数の切込み16が形成されている。谷折り線15は、フィルム基材11の幅方向の両側に一対設けられ、ロール方向に亘って設けられている。また、谷折り線15は、幅方向両端から所定の隙間を空けて形成されている。なお、幅方向において、フィルム基材11の端部から谷折り線15までの長さL3は、例えば、5mm程度となっている。複数の切込み16は、ロール方向において、複数の突起部12と同じ位置に設けられている。切込み16は、幅方向において、フィルム基材11の端部から突起部12まで形成されている。
【0027】
フィルム基材11は、ロール方向に隣接する切込み16同士の間において、谷折り線15に沿って谷折りされることで、ロール方向における剛性が高められる。これにより、谷折りされた部位は、ロール方向に隣接する突起部12同士の間隔を保持する。なお、形成されたナノワイヤNWをフィルム基材11に転写する際は、フィルム基材11の谷折りを元に戻す。
【0028】
(ナノワイヤ転写体)
次に、図3を参照して、ナノワイヤ転写体20を製造する動作について説明する。実施形態1では、ナノワイヤ製造治具10上に製造されたナノワイヤNWを、フィルム基材11に転写することで、ナノワイヤ転写体20を製造している。図3は、幅方向に直交する面で切ったナノワイヤ製造治具10の図である。
【0029】
先ず、図3に示すように、ナノワイヤ製造治具10には、ロール方向に隣接する突起部12同士の間に架け渡されるようにナノワイヤNWが形成される(ステップS11)。ステップS11の状態から、ナノワイヤ製造治具10が引張されると、山折りとなっている突起部12が引き延ばされる(ステップS12)。ステップS12から、ナノワイヤ製造治具10がさらに引張されると、突起部12が、フィルム基材11とほぼ面一となることで、ナノワイヤNWがフィルム基材11に接触する(ステップS13)。ステップS13において、フィルム基材11に接触したナノワイヤNWがフィルム基材11に保持されることで、フィルム基材11にナノワイヤNWが転写されたナノワイヤ転写体20となる。
【0030】
(ナノワイヤ製造方法)
次に、図4を参照して、ナノワイヤ製造装置1を用いて製造されるナノワイヤNWの製造方法の一例について説明する。
【0031】
ナノワイヤ製造方法では、上記のナノワイヤ製造治具10を用いて、ナノワイヤNWを製造する。ナノワイヤ製造治具10は、ロール体となっており、供給部4にセットされると共に、供給部4から繰り出されたナノワイヤ製造治具10の先端側が、回収部7にセットされている。この状態において、ナノワイヤ製造方法では、先ず、供給部4からナノワイヤ製造治具10をロール方向に繰り出して、巻回されたナノワイヤ製造治具10を供給する(ステップS1)。続いて、ナノワイヤ製造方法では、供給されたナノワイヤ製造治具10に対して、ファイバ形成部5によりナノファイバNFを形成する(ステップS2)。この後、ナノワイヤ製造方法では、ナノワイヤ製造治具10に形成されたナノファイバNFに対して、薄膜形成部6により金属薄膜MFを形成することで、ナノワイヤNWを製造する(ステップS3)。そして、ナノワイヤ製造方法では、ナノワイヤ製造治具10を引張させることで、製造されたナノワイヤNWをフィルム基材11に転写して、ナノワイヤ製造治具10をナノワイヤ転写体20とする(ステップS4)。この後、ナノワイヤ製造方法では、ナノワイヤNWが製造された後のナノワイヤ製造治具10、つまり、ナノワイヤ転写体20を、回収部7によりロール方向に巻き取って回収する(ステップS5)。ナノワイヤ製造方法では、ナノワイヤ製造治具10の供給が停止するまで、連続的にナノワイヤNWを製造し、ナノワイヤ製造治具10の供給停止とともに一連の処理を終了する。
【0032】
[実施形態2]
次に、図5及び図6を参照して、実施形態2について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。図5は、実施形態2に係るナノワイヤ製造装置を示す概略構成図である。図6は、実施形態2に係るナノワイヤ転写体に関する説明図である。
【0033】
実施形態1では、製造したナノワイヤNWを、ナノワイヤ製造治具10のフィルム基材11に転写して、ナノワイヤ転写体20としたが、実施形態2では、製造したナノワイヤNWを、ナノワイヤ製造治具10の転写材35に転写して、ナノワイヤ転写体40としている。
【0034】
(ナノワイヤ製造装置)
実施形態2のナノワイヤ製造装置31は、実施形態1のナノワイヤ製造治具10に加えて、転写部33をさらに備える。
【0035】
転写部33は、複数の転写ロール34を有しており、転写材35をナノワイヤ製造治具10と対向させて、転写材35をロール方向へ向けて供給する。転写部33は、ロール方向において、薄膜形成部6の下流側に設けられる。転写部33は、ナノワイヤ製造治具10とほぼ同じ供給速度で、転写材35を供給している。
【0036】
(ナノワイヤ製造治具)
実施形態2のナノワイヤ製造治具10は、実施形態1のナノワイヤ製造治具10に加えて、転写材35をさらに備える。転写材35は、ナノワイヤ製造治具10上に製造されたナノワイヤNWを転写する転写フィルムとなっている。なお、転写材は、転写フィルムに限らず、平板形状のものであってもよく、ナノワイヤNWを転写可能なものであれば、何れであってもよい。また、実施形態2の場合、図6に示すように、ナノワイヤ製造治具10の突起部12は、山折りによって形成する必要がなく、例えば、フィルム基材11上に別途形成したものであってもよい。
【0037】
(ナノワイヤ転写体)
次に、図6を参照して、ナノワイヤ転写体20を製造する動作について説明する。実施形態2では、ナノワイヤ製造治具10上に製造されたナノワイヤNWを、転写材35に転写することで、ナノワイヤ転写体40を製造している。図6は、幅方向に直交する面で切ったナノワイヤ製造治具10の図である。
【0038】
先ず、図6に示すように、ナノワイヤ製造治具10には、ロール方向に隣接する突起部12同士の間に架け渡されるようにナノワイヤNWが形成される(ステップS21)。ステップS21の状態から、ナノワイヤ製造治具10上に転写材35が接触すると、転写材35にナノワイヤNWが転写される(ステップS22)。ステップS22から、転写材35とフィルム基材11とが引き離されると、転写材35に接触したナノワイヤNWが転写材35に保持されることで、転写材35にナノワイヤNWが転写されたナノワイヤ転写体20となる。
【0039】
(ナノワイヤ製造方法)
実施形態2のナノワイヤ製造方法では、図4のステップS4において、ナノワイヤ製造治具10に転写材35を接触させた後、ナノワイヤ製造治具10から転写材35を引き離して、転写材35をナノワイヤ転写体20とする。
【0040】
以上のように、実施形態に記載のナノワイヤ製造治具10、ナノワイヤ転写体20,40、ナノワイヤ製造装置1,31及びナノワイヤ製造方法は、例えば、以下のように把握される。
【0041】
第1の態様に係るナノワイヤ製造治具10は、ナノワイヤNWの製造に用いられるナノワイヤ製造治具10であって、ロール方向に巻回可能なフィルム基材11と、前記フィルム基材11から突出して設けられ、前記ロール方向に直交する幅方向に延在して設けられると共に、前記ロール方向に所定の間隔を空けて設けられる複数の突起部12と、前記フィルム基材11及び複数の前記突起部12に設けられ、隣接する前記突起部12同士の間に、前記ナノワイヤNWの芯材となるナノファイバNFを形成するための導電膜パターン13と、を備える。
【0042】
この構成によれば、ナノワイヤ製造治具10にナノワイヤNWを連続的に製造することができるため、ナノワイヤNWの製造コストの低減を図ることができる。
【0043】
第2の態様として、前記突起部12は、前記幅方向に直交する面で切った断面形状が、頂点を有する山形形状となっている。
【0044】
この構成によれば、突起部12同士の間においてナノファイバNFを好適に形成することができる。
【0045】
第3の態様として、前記突起部12は、前記フィルム基材11の一部を山折りして形成される部位であり、前記フィルム基材11は、製造された前記ナノワイヤNWを転写する転写フィルムとなっている。
【0046】
この構成によれば、フィルム基材11を引張することで、ナノワイヤNWをフィルム基材11に転写させることができる。
【0047】
第4の態様として、前記フィルム基材11に対向して設けられ、前記フィルム基材11上に製造された前記ナノワイヤNWを転写する転写材35を、さらに備える。
【0048】
この構成によれば、ナノワイヤNWを転写材35に転写させることができる。
【0049】
第5の態様に係るナノワイヤ転写体は、上記のナノワイヤ製造治具10を用いて製造された前記ナノワイヤNWが転写されたナノワイヤ転写体20であって、前記ナノワイヤ製造治具10の前記フィルム基材11を、前記ロール方向に引張して、山折りとなる前記突起部12を、前記フィルム基材11と面一となるように引張させ、隣接する前記突起部12同士の間に形成された前記ナノワイヤNWが、前記フィルム基材11に転写されてなる。
【0050】
この構成によれば、ナノワイヤ製造治具10をナノワイヤ転写体20として兼用することができる。
【0051】
第6の態様に係るナノワイヤ転写体は、上記のナノワイヤ製造治具10を用いて製造された前記ナノワイヤNWが転写されたナノワイヤ転写体40であって、前記フィルム基材11から引き離すことで、転写された前記ナノワイヤNWを含む前記転写材35である。
【0052】
この構成によれば、ナノワイヤ製造治具10を別途回収して再利用することができる。
【0053】
第7の態様に係るナノワイヤ製造装置は、上記のナノワイヤ製造治具10を用いて、前記ナノワイヤNWを製造するナノワイヤ製造装置1,31であって、前記ナノワイヤ製造治具10は、前記ロール方向に巻回されており、巻回された前記ナノワイヤ製造治具10を前記ロール方向に供給する供給部4と、供給された前記ナノワイヤ製造治具10に、前記ナノワイヤNWの芯材となるナノファイバNFを形成するファイバ形成部5と、前記ナノファイバNFに金属薄膜MFを形成して、前記ナノワイヤNWとする薄膜形成部6と、前記ナノワイヤNWが製造された後の前記ナノワイヤ製造治具10をロール方向に巻回して回収する回収部7と、を備える。
【0054】
この構成によれば、ナノワイヤ製造治具10にナノワイヤNWを連続的に製造することができるため、ナノワイヤNWの製造コストの低減を図ることができる。
【0055】
第8の態様に係るナノワイヤ製造方法は、上記のナノワイヤ製造治具10を用いて、前記ナノワイヤNWを製造するナノワイヤ製造方法であって、前記ナノワイヤ製造治具10は、前記ロール方向に巻回されており、巻回された前記ナノワイヤ製造治具10を前記ロール方向に供給するステップS1と、供給された前記ナノワイヤ製造治具10に、前記ナノワイヤNWの芯材となるナノファイバNFを形成するステップS2と、前記ナノファイバNFに金属薄膜MFを形成して、前記ナノワイヤNWとするステップS3と、前記ナノワイヤNWが製造された後の前記ナノワイヤ製造治具10をロール方向に巻回して回収するステップS5と、を備える。
【0056】
この構成によれば、ナノワイヤ製造治具10にナノワイヤNWを連続的に製造することができるため、ナノワイヤNWの製造コストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 ナノワイヤ製造装置
4 供給部
5 ファイバ形成部
6 薄膜形成部
7 回収部
10 ナノワイヤ製造治具
11 フィルム基材
12 突起部
13 導電膜パターン
15 谷折り線
16 切込み
20 ナノワイヤ転写体
31 ナノワイヤ製造装置
33 転写部
34 転写ロール
35 転写材
40 ナノワイヤ転写体
NW ナノワイヤ
NF ナノファイバ
MF 金属薄膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6