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  • 特開-杭打機の油圧駆動装置 図1
  • 特開-杭打機の油圧駆動装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096869
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】杭打機の油圧駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/20 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
E02D7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212894
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】中尾 徹
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050CB23
2D050EE14
(57)【要約】
【課題】油圧ポンプの機能の独立性を維持しつつ、エネルギー効率に優れたバッテリ式の油圧駆動装置を提供する。
【解決手段】杭打機に搭載される油圧駆動装置20は、バッテリ35に並列接続される複数のメイン電動モータM1,M2と、バッテリに並列接続され、メイン電動モータよりも小容量の複数のサブ電動モータM4,M5と、インバータ37及びコントローラ38からなる制御回路と、複数のメイン電動モータによりそれぞれ駆動される複数のメイン油圧ポンプP1,P2と、複数のサブ電動モータによりそれぞれ駆動され、メイン油圧ポンプよりも小容量の複数のサブ油圧ポンプP4,P5と、メイン油圧ポンプから圧油の供給を受ける可変容量型のオーガ回転駆動用油圧モータ32と、サブ油圧ポンプから圧油の供給を受けるジャッキ伸縮作動用油圧シリンダ36とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能なベースマシンと、該ベースマシンに立設されるリーダと、前記ベースマシンを安定させるジャッキと、前記リーダに装着され、前記ベースマシンの安定状態で回転駆動されるオーガとを備えた杭打機に搭載され、
電動モータと、
該電動モータによって駆動される油圧ポンプと、
該油圧ポンプから吐出された圧油によって作動する油圧アクチュエータと、
前記電動モータの回転数を制御するインバータ及び該インバータを制御するコントローラからなる制御回路と、を備えている油圧駆動装置において、
前記電動モータは、バッテリに並列接続される複数のメイン電動モータと、前記バッテリに並列接続され、前記メイン電動モータよりも小容量の複数のサブ電動モータとからなり、
前記油圧ポンプは、前記複数のメイン電動モータによりそれぞれ駆動される複数のメイン油圧ポンプと、前記複数のサブ電動モータによりそれぞれ駆動され、前記メイン油圧ポンプよりも小容量の複数のサブ油圧ポンプとからなり、
前記油圧アクチュエータは、前記メイン油圧ポンプから圧油の供給を受ける可変容量型のオーガ回転駆動用油圧モータと、前記サブ油圧ポンプから圧油の供給を受けるジャッキ伸縮作動用油圧シリンダとを含むことを特徴とする油圧駆動装置。
【請求項2】
前記制御回路は、1つの前記インバータと、前記電動モータの数に対応する数の開閉スイッチを個別に切り替えるスイッチ回路とを備えていることを特徴とする請求項1記載の油圧駆動装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記電動モータの数に対応する数の前記インバータを有し、各電動モータそれぞれの回転数を個別に制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の油圧駆動装置。
【請求項4】
前記複数のメイン油圧ポンプからの圧油を合流させて前記オーガ回転駆動用油圧モータに送る合流油路を備え、
前記コントローラは、前記複数のメイン電動モータを個別に駆動させるオーガ低回転制御と、同時に駆動させるオーガ高回転制御とを選択実行可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の油圧駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機の油圧駆動装置に関し、詳しくは、動力源として、電動モータで駆動される油圧ポンプを備えた杭打機の油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ポンプの駆動源としてディーゼルエンジンを使用した油圧ユニットがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この種の油圧ユニットは、作業装置を備えた各種建設機械に搭載され、エンジンの駆動軸に直結あるいは歯車機構を介して連結された複数の油圧ポンプを備えている。複数の油圧ポンプは、例えば、杭打機に搭載された油圧ユニットの場合、複数台の油圧ポンプ、すなわち、オーガ用、走行・旋回用などに用いられるメインポンプと、オイルクーラ用、ジャッキ用、パイロット用などに用いられるサブポンプとを備え、エンジンにより各ポンプが回転駆動され、発生する流体動力を各部の油圧アクチュエータに送ることで各種作業が可能となる。
【0004】
こうした杭打機では、施工の多様なニーズに適う多くの機能を組み合わせてシリーズ化(多機能展開)され、現場によっては駆動力が極めて大きなものとなる。また、使用態様においても、施工位置に移動した後は長時間その場に止まることから、特徴的な静と動のプロセスを採る。このような事情から、油圧ユニットを構成する複数の油圧ポンプは駆動対象の油圧アクチュエータごとに最適化され、その独立性が重視されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-140755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
環境問題の観点から、杭打機にあっても、ディーゼルエンジンに代えてバッテリを搭載し、油圧ポンプの駆動力をバッテリから得ようとする考え方がある。特許文献1に記載のエンジン式の油圧ユニットは、確かに、出力の大小に応じて各ポンプが設定されることで、効率のよい油圧駆動が行えるという効果を有している。もっとも、欠点に目を向けると、少なからず油圧ポンプが連れ回されることに伴うエネルギー損失が生じている。したがって、杭打機の電動化にあたり、そのメリットを十分に引き出すには、必要以上のエネルギー損失を生じさせない油圧駆動装置が求められる。
【0007】
そこで本発明は、油圧ポンプの機能の独立性を維持しつつ、エネルギー効率に優れたバッテリ式の油圧駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の油圧駆動装置は、自走可能なベースマシンと、該ベースマシンに立設されるリーダと、前記ベースマシンを安定させるジャッキと、前記リーダに装着され、前記ベースマシンの安定状態で回転駆動されるオーガとを備えた杭打機に搭載され、電動モータと、該電動モータによって駆動される油圧ポンプと、該油圧ポンプから吐出された圧油によって作動する油圧アクチュエータと、前記電動モータの回転数を制御するインバータ及び該インバータを制御するコントローラからなる制御回路と、を備えている油圧駆動装置において、前記電動モータは、バッテリに並列接続される複数のメイン電動モータと、前記バッテリに並列接続され、前記メイン電動モータよりも小容量の複数のサブ電動モータとからなり、前記油圧ポンプは、前記複数のメイン電動モータによりそれぞれ駆動される複数のメイン油圧ポンプと、前記複数のサブ電動モータによりそれぞれ駆動され、前記メイン油圧ポンプよりも小容量の複数のサブ油圧ポンプとからなり、前記油圧アクチュエータは、前記メイン油圧ポンプから圧油の供給を受ける可変容量型のオーガ回転駆動用油圧モータと、前記サブ油圧ポンプから圧油の供給を受けるジャッキ伸縮作動用油圧シリンダとを含むことを特徴としている。
【0009】
また、前記制御回路は、1つの前記インバータと、前記電動モータの数に対応する数の開閉スイッチを個別に切り替えるスイッチ回路とを備えていることを特徴としている。さらに、前記制御回路は、前記電動モータの数に対応する数の前記インバータを有し、各電動モータそれぞれの回転数を個別に制御可能に構成されていることを特徴としている。
【0010】
加えて、前記複数のメイン油圧ポンプからの圧油を合流させて前記オーガ回転駆動用油圧モータに送る合流油路を備え、前記コントローラは、前記複数のメイン電動モータを個別に駆動させるオーガ低回転制御と、同時に駆動させるオーガ高回転制御とを選択実行可能に構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油圧駆動装置によれば、油圧アクチュエータの負荷に応じた大小容量の異なる複数の油圧ポンプと、これらの容量に応じて設定された複数の電動モータとを備え、負荷の大きいオーガ回転駆動用油圧モータにはメイン電動モータで駆動されるメイン油圧ポンプから、負荷の比較的小さいジャッキ伸縮作動用油圧シリンダにはサブ電動モータで駆動されるサブ油圧ポンプからそれぞれ圧油の供給を受けるように構成しているので、杭打機の動力源たる油圧ポンプの機能の独立性を維持しつつ、杭打ち機能を発揮させるプロセスの最適時に必要な分だけ油圧エネルギーを使用することが可能となり、電源容量が適正に分配された高効率なバッテリ式の油圧駆動装置を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一形態例を示す油圧駆動装置が搭載される杭打機の側面図である。
図2】同じく油圧駆動装置の構成図である。
図3】油圧駆動装置の変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図3は、本発明の油圧駆動装置を杭打機に適用した図である。杭打機11は、図1に示すように、鋼管杭施工と地盤改良施工とを切り替えて行うことができる兼用機であって、左右のクローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン(機体)14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持する起伏シリンダ16とを備えている。
【0014】
上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート17が設けられ、上部旋回体13の前部上方には、配管を支持する配管支持部材18が設けられている。また、上部旋回体13の右側部には運転室19が、左側部には杭打機11の動力源となる油圧駆動装置20がそれぞれ搭載されている。さらに、上部旋回体13の前後左右の4箇所には、接地してベースマシン14を安定状態にするジャッキ21が設けられている。
【0015】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を互いに連結したもので、リーダサポート17に設けられた車幅方向の支軸に回動可能に取り付けられている。リーダ15の上端部には、吊上げ用ロープが巻掛けられるトップシーブ22が、下部前方には、鋼管杭23の振れを防止するための開閉可能な振止部材24がそれぞれ配置されている。リーダ15の前面中央には、ラックピニオン式昇降装置の構成部品としてラックギヤ25が、両側面前端部には左右一対のガイドパイプ26,26が、リーダ15の全長にわたってそれぞれ連続的に設けられ、回転駆動装置の一例である油圧オーガ27の装着部となる。
【0016】
各リーダ部材は、隣接する部分において、リーダ15の断面形状に対応した連結フランジ同士を当接させて形成され、複数のボルト及びナットを使用して安定的に結合されている。各フランジ結合部は、連結フランジの形状や、ボルト孔のサイズ、配置ピッチなどを共通にした同一構造であり、ボルト及びナットを外してフランジ結合を解除することにより、図示は省略するが、リーダ部材を多数で構成した長尺仕様と、リーダ部材を少数で構成した短尺仕様とに組み替え可能である。この場合、上部旋回体13とオーガ27との間を接続する複数本の油圧ホース28は、その長さがリーダ長に合わせて変更される。
【0017】
油圧ホース28は、上部旋回体13から立ち上がる配管支持部材18を経由して、リーダ15に沿った引き回しがなされており、配管支持部材18から先の部分がオーガ27の集中コネクタ29に無拘束で接続されている。この無拘束部分は、略U字状の弛み28aを有するとともに、オーガ27の昇降に追随して上下方向に移動可能であり、その長さは、オーガ27の高さ位置が最大となるときに合わせて設定されている(図1)。これにより、オーガ27が、リーダ15の上端部(上昇限界位置)又は下端部(下降限界位置)に到達したときに、弛み28aの形状が過度に変形することはない。
【0018】
オーガ27は、駆動シャフト30を回転可能に備えた装置本体27aを中心に構成され、リーダ15のガイドパイプ26,26に摺接する左右一対のガイドギブ27b,27bが後方に突出して設けられるとともに、ラックギヤ25に歯合する左右一対のピニオン(図示せず)をオーガ昇降駆動用油圧モータ31によって回転駆動することにより、リーダ15の前面に沿って昇降する。
【0019】
また、オーガ27は、装置本体27a内の減速機構に接続されるオーガ回転駆動用油圧モータ32と、これに付設される電磁比例減圧弁33と、駆動シャフト30のチャック用油圧シリンダ(図示せず)とを備えている。オーガ回転駆動用油圧モータ32は、斜板の傾転角を変更することで容量の変更が可能な斜板式の可変容量型油圧モータである。斜板の傾転角、すなわち、押しのけ容積(モータ1回転当たりの吐出流量)は、レギュレータによって調節される。このレギュレータは、電磁比例減圧弁33から出力される制御圧力によって制御される。
【0020】
電磁比例減圧弁33は、図2にも示すように、杭打機11に実装される施工管理装置34の制御指令に基づいて制御圧力を変化させる。具体的には、ソレノイドに入力される制御指令電流の増減に伴い減圧度を変更するように構成され、制御指令が入力されると、発生する指令パイロット圧(2次圧力)が大きくなっていき、レギュレータの作動によって押しのけ容積を漸次減少させてオーガ回転駆動用油圧モータ32を稼動する。一方、制御指令を最小に固定すると、押しのけ容積を最大に調節してオーガ回転駆動用油圧モータ32を稼動する。
【0021】
すなわち、電磁比例減圧弁33の制御指令電流と制御圧力とは比例関係にあるが、制御圧力と押しのけ容積とは反比例の関係にある。これにより、オーガ回転駆動用油圧モータ32は、流量一定ならば、押しのけ容積が小さいほどモータは高速回転し、押しのけ容積が大きいほど回転数は低くなるものの、多くの作動油を使用して回転することから、大きなトルクを発生させる。こうした油圧モータ32のトルク、回転数の無段階制御では、詳細は後述するが、油圧モータ32への供給流量を任意に調節することで、オーガ27の回転状態を低速から高速まで広範囲に変化させることができる。
【0022】
ところで、地球温暖化といった環境問題を背景に、杭打機の分野においても、施工に伴って排出する二酸化炭素を削減するために省エネルギー化が一層重要になってきている。そこで、ディーゼルエンジンに代えてバッテリを搭載することで、油圧源となる油圧ポンプの駆動力をバッテリから得る方法が考えられる。しかしながら、油圧ポンプの駆動源として電動モータを採用する場合に、電動モータは、オーガ回転駆動用油圧モータ32などの起動負荷に対応させるための大容量のものを用いる必要があるが、この大容量の電動モータを無負荷状態(アンロード状態)や油圧ジャッキ21を作動するだけの低負荷状態においても規定回転させるのでは、常時電流が流れることになって消費電力が大きくなり、その結果、バッテリに対して頻繁に充電を繰り返さなければならないという問題が起こる。
【0023】
そこで、杭打機11には、バッテリを動力源とした電動化のメリットを十分に引き出し、必要以上のエネルギー損失を生じさせないバッテリ式の油圧駆動装置20が搭載されている。
【0024】
油圧駆動装置20は、図2に示すように、バッテリ(直流電源)35と、電動モータM1,M2,M4,M5と、該電動モータによって駆動される油圧ポンプP1,P2,P4,P5と、該油圧ポンプから吐出された圧油によって作動する油圧モータ32や油圧シリンダ36などの各種油圧アクチュエータと、電動モータの回転数を制御するインバータ37及び駆動指令に基づいてインバータ37を制御するコントローラ38を主体に構成された制御回路と、油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間の油圧回路に組み込まれるバルブ39やセンサ40などの各種油圧機器とを備えている。
【0025】
電動モータM1,M2,M4,M5は、必要な力に合わせて出力、つまり、モータ容量が選定されており、バッテリ35に並列接続される2つのメイン電動モータM1,M2と、バッテリ35に並列接続され、メイン電動モータM1,M2よりも小容量の2つのサブ電動モータM4,M5との合計4つの交流電動モータからなる。なお、従来からのエンジン式油圧ユニットでは、作動油冷却用の油圧回路(オイルクーラやポンプM3相当)を設けていたが、本発明のバッテリ式のものでは、こうした冷却用回路を動力系配線経路(パワーライン)に設ける必要がなくなり、別途、ファン(図示せず)を設ける対応がとられている。
【0026】
各油圧ポンプP1,P2,P4,P5は、2つのメイン電動モータM1,M2によりそれぞれ駆動される2つのメイン油圧ポンプP1,P2と、2つのサブ電動モータM4,M5によりそれぞれ駆動され、メイン油圧ポンプP1,P2よりも小容量の2つのサブ油圧ポンプP4,P5との合計4つの油圧ポンプからなる。ここで、ポンプ容量は、ポンプ1回転当たりの吐出流量である。したがって、油圧ポンプの吐出流量は、ポンプ容量と電動モータの回転数との積で求められる。
【0027】
各メイン油圧ポンプP1,P2は、傾転角が変更可能な可変容量型の油圧ポンプ(例えば斜板ポンプ)が用いられており、同容量であって、制御バルブ39を介してそれぞれ対応付けられた各種油圧アクチュエータ、具体的には、主に高負荷で駆動される下部走行体12やオーガ27、ウインチのための各種油圧モータ(例えば、走行駆動用油圧モータやオーガ回転駆動用油圧モータ32)に油圧回路で接続されている。これらの油圧回路には、各メイン油圧ポンプP1,P2からの圧油を合流させてオーガ回転駆動用油圧モータ32に送る合流油路41と、その合流点41aの下流においてオーガ回転駆動用油圧モータ32の駆動圧力を測定する駆動圧センサ40とが設けられている。
【0028】
各サブ油圧ポンプP4,P5は、固定容量型の油圧ポンプ(例えばギヤポンプ)が用いられており、サブ油圧ポンプP4は、制御バルブ39を介して対応付けられた油圧アクチュエータ、具体的には、比較的低負荷で作動されるジャッキ21のためのジャッキ伸縮作動用油圧シリンダ36に油圧回路で接続されている。一方、サブ油圧ポンプP5は、サブ油圧ポンプP4よりも小容量であって、例えば、操作バルブや電磁比例減圧弁33などにパイロット圧を与えるための圧油を吐出するパイロットポンプである。
【0029】
コントローラ38は、オペレータの操作指令や杭打機11の状態に基づいて各種演算処理を行うCPUを中心に構成されており、施工管理装置34と連携してシステムの中核をなし、主に電源システムを統括的に制御する。
【0030】
各電動モータM1,M2,M4,M5には、バッテリ35から1つのインバータ37により制御された交流電力が供給されるようになっている。インバータ37は、バッテリ35から得た直流電力を交流電力に変換し、この交流電力によって各電動モータM1,M2,M4,M5を駆動させる。また、インバータ37と各電動モータM1,M2,M4,M5との間で並列接続される電源ライン(分岐ライン)42には、各電動モータそれぞれに対応する4つの開閉スイッチ43a,43b,43c,43dを個別に切り替え(オン/オフ)可能なスイッチ回路43が設けられている。
【0031】
コントローラ38は、各種運転操作に対応した操作検出信号(例えば走行操作指令)が入力されると、4つの開閉スイッチ43a,43b,43c,43dのうち、メイン電動モータM1,M2に対応する開閉スイッチ43a,43bを両方ともオンにする。そして、左右の走行駆動用油圧モータに対して、各メイン油圧ポンプP1,P2からの供給流量が最適状態になるように制御信号を生成し、該制御信号をインバータ37に送信する。
【0032】
一方、インバータ37では、メイン電動モータM1,M2を両方とも駆動させて目標回転数に制御し、各メイン油圧ポンプP1,P2から最適量の作動油を吐出させる。これにより、下部走行体12の直進走行(左右のクローラを同一速度で駆動させる走行)が行えるようになる。また、開閉スイッチ43a,43bの一方のみオンにすることで、これに対応するメイン油圧ポンプP1,P2の一方のみから最適量の作動油を吐出させる。これにより、ピボット旋回走行(片側のクローラを停止させた状態で反対側のクローラを駆動させて旋回させる走行)が行えるようになる。
【0033】
このように構成された油圧駆動装置20を稼働して、杭打機11を鋼管杭の埋設を目的として使用する場合には、施工部材に鋼管杭23が使用される(図1)。鋼管杭23は、駆動シャフト30の下端に設けられたアダプタ45を介して連結され、駆動シャフト30を回転させながらオーガ27を下降させることによって地中に圧入される。また、杭打機11を地盤改良の目的として使用する場合には、施工部材に中空ロッド(図示せず)が使用される。中空ロッドは、上端がオーガ27の上方でスイベルと連結されるとともに下端が掘削ヘッドと連結される。この中空ロッドを回転させながら、中空ロッドを通じて掘削ヘッドの先端から噴射したセメントミルクなどの地盤改良剤が地盤内に注入される。
【0034】
こうした杭の埋設や地盤改良などの各種工法を行うために、運転室19内には、走行や旋回、オーガ27の昇降・回転駆動などを行う操作レバーや操作ペダル、操作スイッチ、タッチパネル式のディスプレイなどの機器が操作性を考慮して運転席の近傍に集約的に配置されており、さらに、これらの機器に対応付けられた操作検出部44や杭打機11の動作センサなどと電気的に接続された施工管理装置34が設置されている。
【0035】
施工管理装置34は、各種工法制御のための施工管理プログラムを実行して、データ処理や判定などの演算処理を行うCPUを中心に構成されており、施工管理プログラムを記憶するFLASH ROMや処理中の各種データを一時的に記憶するRAM、さらには、施工現場における杭の埋設予定位置、目標深度などを設定した施工計画データ及び施工管理プログラムの実行により作成された実施工時の各種データを記憶する記憶部や、オペレータが施工管理プログラムの実行結果を表示画面で確認したり、タッチパネル操作でデータ入力を行ったりするディスプレイなどを備えている。
【0036】
オーガ27の動作センサを構成する複数のセンサには、トルクセンサや深度センサ、回転センサなどが挙げられる。例えば、トルクセンサは、オーガ27に把持された施工部材のトルクを測定するセンサであって、例えば、駆動圧センサ40が挙げられる。駆動圧センサ40は、オーガ27に設けられ、2つ1組でオーガ回転駆動用油圧モータ32の出入口の差圧(1次圧力と2次圧力の圧力差)を測定している。施工管理装置34では、測定した差圧に基づいてオーガ回転駆動用油圧モータ32の駆動圧力を決定し、この駆動圧力と制御圧力に対応する押しのけ容積とに基づき、施工負荷として施工トルクを算出する。また、深度や積算回転数、回転速度についても、各部に設けられたエンコーダや近接センサなどで測定した信号に基づいてそれぞれ算出する。
【0037】
以下では、杭施工(鋼管埋設)の具体的な手順を説明する。施工現場に搬入された杭打機11は、自走によって施工地点に移動した後、前後左右4箇所のジャッキ21を全て接地して機体を安定させる。この場合、油圧駆動装置20では、ジャッキ操作に対応した操作検出信号がコントローラ38に入力されると、コントローラ38は、サブ電動モータM4に対応する開閉スイッチ43cをオンにする。そして、4本のジャッキ伸縮作動用油圧シリンダ36に対して、サブ油圧ポンプP4からの供給流量が最適状態になるように制御信号を生成し、該制御信号をインバータ37に送信する。
【0038】
一方、インバータ37では、サブ電動モータM4を駆動させて目標回転数に制御し、サブ油圧ポンプP4から最適量の作動油を吐出させる。これにより、ジャッキ伸縮作動用油圧シリンダ36が4本とも伸び、付設の接地板がそれぞれ接地することで油圧回路が設定リリーフ圧まで高められ、ジャッキ21の接地状態、すなわち、ベースマシン14の静止安定状態が作られる。
【0039】
こうした静止安定状態で、施工管理装置34の表示を施工画面に切り替え、施工データを作成しながら目標深度に到達するまで計画通りに杭打ち作業が進められる。オペレータの運転操作は、例えば、レバーを傾動操作して、オーガ27の右回転操作と下降操作とを行い、運転操作を維持した状態のままで、掘削抵抗に合わせてトルク調整用のボリュームを操作する。ここで、掘削開始時はトルクを小さくし、回転数を上げて効率重視の施工が進められる。
【0040】
この場合、油圧駆動装置20では、オーガ操作に対応した操作検出信号がコントローラ38に入力されると、コントローラ38は、メイン電動モータM1,M2に対応する開閉スイッチ43a,43bを両方ともオンにする。そして、オーガ昇降駆動用油圧モータ31及びオーガ回転駆動用油圧モータ32に対して、各メイン油圧ポンプP1,P2からの供給流量が増加した最適状態になるように制御信号を生成し、該制御信号をインバータ37に送信する。
【0041】
一方、インバータ37では、メイン電動モータM1,M2を両方とも駆動させて目標回転数に制御し、各メイン油圧ポンプP1,P2から負荷条件(軽負荷)に見合う最適量の作動油を吐出させる。これにより、オーガ回転駆動用油圧モータ32への供給流量が増加するように調節され、オーガ高回転制御として、オーガ27の回転状態が高速(2速相当)に制御される。
【0042】
そして、目標深度に近づき、地盤が硬くなってくると、掘削抵抗が大きくなってオーガ27の回転数が低下してくるため、ボリュームを上げて徐々にトルクを大きくしていく。
【0043】
この場合、油圧駆動装置20では、オーガ操作に対応した操作検出信号がコントローラ38に入力される。そして、コントローラ38は、メイン電動モータM1,M2に対応する開閉スイッチ43a,43bを両方ともオンにした状態のまま、オーガ回転駆動用油圧モータ32に対して、メイン油圧ポンプP2からの供給流量が減少した最適状態になるように制御信号を生成し、該制御信号をインバータ37に送信する。
【0044】
一方、インバータ37では、メイン電動モータM1,M2を継続駆動させて目標回転数に制御し、各メイン油圧ポンプP1,P2から負荷条件(高負荷)に見合う最適量の作動油を吐出させる。これにより、オーガ回転駆動用油圧モータ32への供給流量が減少するように調節され、オーガ低回転制御として、オーガ27の回転状態が低速(1速相当)に制御される。
【0045】
このとき、オーガ27の回転に急激な負荷が作用するなど、状況に応じてオーガ27の下降を停止させた場合、コントローラ38は、例えば、操作検出信号あるいは状態検出信号の入力に基づいて、開閉スイッチ43bのみオフにして、メイン電動モータM2の駆動を停止させる。これにより、メイン油圧ポンプP2からの作動油の吐出、つまり、オーガ昇降駆動用油圧モータ31への油圧供給が停止され、メイン電動モータM1のみ個別に駆動した状態で、メイン油圧ポンプP1からの油圧供給によってオーガ27の回転状態が維持される。
【0046】
こうして、油圧駆動装置20では、メイン電動モータM1,M2の回転を制御することによって、オーガ回転駆動用油圧モータ32などへの供給流量を調節し、これにより、オーガ27の回転状態を地盤の状態に適した速度で維持させる。
【0047】
ここで、鋼管杭の継ぎ足しを行う際には、埋設した鋼管杭23と駆動シャフト30とを分離させ、振止部材24を開くとともに、ジャッキ21を縮小させた状態で、上部旋回体13をその場所のままで旋回させる。これにより、用意しておいた継ぎ足す鋼管杭は、機体側方領域において上端部がアダプタ45を介して駆動シャフト30に連結され、反対方向の旋回動作によって施工地点(杭芯)へと運び込まれる。こうして、所定の段取り作業を経た後、再びオーガ27を駆動して鋼管杭23に回転を与えながら押し進めることにより、地盤の深くまで鋼管杭23が埋め込まれる。
【0048】
杭施工の手順は、こうした一部の作業工程を繰り返しながら進められる。この場合、杭打機11は、油圧駆動装置20で発生させた流体動力を、順次駆動されるジャッキ21、上部旋回体13、オーガ27などの各部の油圧アクチュエータに対して適時、適切に送る。一方、施工管理装置34では、油圧駆動装置20と連携を図り、オーガ回転駆動用油圧モータ32の駆動圧力と、制御圧力に対応する押しのけ容積とに基づき、施工トルクを算出し、画面中に「杭番号」や「目標深度」などと共に「施工トルク」を表示させる。この表示は、例えば、縦軸を深度、横軸を施工トルクの大きさで示した二次元座標の折れ線グラフで表され、地盤の状況を知るための表示となる。こうしたリアルタイムの表示と同時に、深度毎の施工トルクと、対象の杭番号とが関連付けられて施工管理装置の記憶部に逐次記憶される。
【0049】
このように、本発明の油圧駆動装置20によれば、油圧アクチュエータの負荷に応じた大小容量の異なる複数の油圧ポンプP1,P2,P4,P5と、これらの容量に応じて設定された複数の電動モータM1,M2,M4,M5とを備え、負荷の大きいオーガ回転駆動用油圧モータ32にはメイン電動モータM1,M2で駆動されるメイン油圧ポンプP1,P2から、負荷の比較的小さいジャッキ伸縮作動用油圧シリンダ36にはサブ電動モータM4で駆動されるサブ油圧ポンプP4からそれぞれ圧油の供給を受けるように構成しているので、杭打機11の動力源たる油圧ポンプの機能の独立性を維持しつつ、杭打ち機能を発揮させるプロセスの最適時に必要な分だけ油圧エネルギーを使用することが可能となり、電源容量が適正に分配された高効率なバッテリ式の油圧駆動装置20を達成することができる。
【0050】
また、制御回路において、1つのインバータ37と、電動モータM1,M2,M4,M5の数に対応する数の開閉スイッチ43a,43b,43c,43dを個別に切り替えるスイッチ回路43とを備えているので、作業に必要のない電動モータを休止させてバッテリ35の消耗を防ぎ、合わせて油温の無駄な上昇を抑えることで作動油を冷却するためのエネルギー消費も削減できる。また、油圧ポンプを増設する場合でも回路構成が簡単となり、施工の多様なニーズに適う油圧駆動装置20を安価に製作することができる。
【0051】
さらに、油圧回路において、複数のメイン油圧ポンプP1,P2からの圧油を合流させてオーガ回転駆動用油圧モータ32に送る合流油路41を備え、コントローラ38が複数のメイン電動モータM1,M2を個別に駆動させるオーガ低回転制御と、同時に駆動させるオーガ高回転制御とを選択実行可能に構成しているので、作業の進行に従って電動モータの回転数やトルクが大きく変化する杭施工特有の運転において、低燃費(省エネ)対応として特に有益である。
【0052】
図3は、本発明の油圧駆動装置を搭載した杭打機の変形例を示している。なお、以下の説明において、前記形態例に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
油圧駆動装置51は、前記形態例の油圧回路をそのまま有し、前記スイッチ回路43に代えて、各電動モータM1,M2,M4,M5それぞれに対応する4つのインバータ52,53,54,55を制御回路に組み込むことで、各電動モータM1,M2,M4,M5それぞれの回転数を個別に制御可能に構成されている。各インバータ52,53,54,55は、バッテリ35と各電動モータM1,M2,M4,M5との間で並列接続される電源ライン(分岐ライン)56にそれぞれ設けられ、コントローラ38からの駆動指令を各インバータ52,53,54,55に個別に伝達することが可能である。
【0054】
コントローラ38は、各種運転操作に対応した操作検出信号(例えば走行操作指令)が入力されると、4つのインバータ52,53,54,55のうち、メイン電動モータM1,M2に対応するインバータ52,53を特定する。そして、左右の走行駆動用油圧モータに対して、各メイン油圧ポンプP1,P2からの供給流量が最適状態になるように制御信号を生成し、該制御信号をインバータ52,53に送信する。
【0055】
一方、インバータ52,53では、メイン電動モータM1,M2を両方とも駆動させて目標回転数に制御し、各メイン油圧ポンプP1,P2から最適量の作動油を吐出させる。これにより、下部走行体12の直進走行(左右のクローラを同一速度で駆動させる走行)が行えるようになる。また、メイン電動モータM1,M2同士の回転差を設けることで、これに対応するメイン油圧ポンプP1,P2からそれぞれ異なる最適量の作動油を吐出させる。これにより、スラローム旋回走行(左右のクローラを同一方向に異なる速度で駆動させて走行方向を変える走行)が行えるようになる。
【0056】
そして、このように構成された本変形例においても、上述のスイッチ回路43を用いた場合と同様の効果が発揮でき、さらに、本変形例の場合には、各電動モータM1,M2,M4,M5それぞれの回転数を個別に制御することが可能となる。これにより、油圧アクチュエータを連動させるような場合に油圧エネルギーの一部を熱に変えて捨ててしまう状況が改善され、より効率的な運転ができるようになる。
【0057】
なお、本発明は、前記各形態例に限定されるものではなく、油圧駆動装置の仕様は、杭打機に求められる機能に応じて適宜変更を加えることができる。また、搭載位置は、従来からのエンジンが搭載されていた上部旋回体の一側部(ハウス内)にユニット化して搭載することが考えられるが、これに限られず、バッテリの部分をカウンタウエイトのある機体後部のスペースに配置するなど、他の構造物や機器との位置関係を考慮して装置全体を構成することができる。また、実施例では、鋼管埋設を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、地盤改良にも適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…起伏シリンダ、17…リーダサポート、18…配管支持部材、19…運転室、20…油圧駆動装置、21…ジャッキ、22…トップシーブ、23…鋼管杭、24…振止部材、25…ラックギヤ、26…ガイドパイプ、27…オーガ、27a…装置本体、27b…ガイドギブ、28…油圧ホース、28a…弛み、29…集中コネクタ、30…駆動シャフト、31…オーガ昇降駆動用油圧モータ、32…オーガ回転駆動用油圧モータ、33…電磁比例減圧弁、34…施工管理装置、35…バッテリ、36…ジャッキ伸縮作動用油圧シリンダ、37…インバータ、38…コントローラ、39…制御バルブ、40…駆動圧センサ、41…合流油路、41a…合流点、42…電源ライン、43…スイッチ回路、43a,43b,43c,43d…開閉スイッチ、44…操作検出部、45…アダプタ、51…油圧駆動装置、52,53,54,55…インバータ、56…電源ライン
図1
図2
図3