(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009687
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】トレーニングラック用フック
(51)【国際特許分類】
A63B 23/035 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
A63B23/035 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113155
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】521245614
【氏名又は名称】小林 修平
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 修平
(57)【要約】
【課題】トレーニングラックの支柱Pに対する取外し・取付け作業を行わずとも、フック部3の高さ位置を容易に調節することができるトレーニングラック用フック10を提供すること。
【解決手段】トレーニングラックの支柱に着脱自在に取付け可能な取付部1と、トレーニング器具を支持するフック部3とを備えたトレーニングラック用フック10において、取付部1とフック部3との間に、取付部1に対するフック部3の上下位置を調節する調節部2を設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーニングラックの支柱に着脱自在に取付け可能な取付部と、トレーニング器具を支持するフック部とを備えたトレーニングラック用フックであって、
前記取付部と前記フック部との間に前記取付部に対する前記フック部の上下位置を調節する調節部を設けたことを特徴とするトレーニングラック用フック。
【請求項2】
前記調節部が、
前記支柱に当接するウェブ部と、前記ウェブ部の両側縁に設けられた一対のフランジ部と、前記各フランジ部の側縁に設けられたリップ部とを有する断面リップ溝形状のレールと、
前記レールの前記リップ部に対向する前壁部と、前記レールの前記フランジ部に対向する側壁部とを有し、前記前壁部に前記フック部が固定され、前記レールの溝内を上下移動するスライダと、
前記レールの前記フランジ部に上下方向に等間隔に並んで列を成して開設された複数の調節孔と前記スライダの前記側壁部に開設された挿入孔とに挿入可能な固定ピンと、
を備え、
前記調節部の前記スライダを前記レールに沿って上下移動させ、前記レールの何れか一つの前記調節孔と前記スライダの前記挿入孔とを位置合わせして前記固定ピンを挿入することによって、前記取付部に対する前記フック部の上下位置を調節することを特徴とした請求項1に記載のトレーニングラック用フック。
【請求項3】
前記調節孔が複数列、開設されており、一の列を成す前記調節孔の開設位置と他の列を成す前記調節孔の開設位置とが上下方向に位置ずれしており、
前記挿入孔が、前記調節孔の各列の水平方向位置に対応して複数、開設されており、前記各挿入孔の上下方向の開設位置が一致していることを特徴とした請求項2に記載のトレーニングラック用フック。
【請求項4】
前記調節部の前記レールに前記取付部が設けられており、
前記レールにおける前記取付部の上下方向の配設位置と異なる位置に前記調節孔が開設されていることを特徴とした請求項2または請求項3に記載のトレーニングラック用フック。
【請求項5】
前記レールの上端部側の前記リップ部の内面及び前記レールの下端部側の前記リップ部の内面のうち、前記レールの上端部側の前記リップ部の内面にのみ、前記スライダの前記前壁部の外面と当接するスペーサが設けられていることを特徴とした請求項2~請求項4の何れかに記載のトレーニングラック用フック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーニングラック用フック、より詳しくは、既設のトレーニングラックの支柱に着脱自在に取り付けてバーベル等のトレーニング器具を所要の高さ位置で支持するフックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、例えばスクワット、チンニング、ディップス等の各種の筋力トレーニングを省スペースで効率的に行うために、各トレーニングに応じたアタッチメントを適宜、着脱自在に取付け可能なトレーニングラックが利用されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
例えば、バーベルを用いたスクワットトレーニングを行う場合には、従来、アタッチメントとして、
図11に示すようなフック100が使用されている。このフック100を、トレーニングラックの左右の支柱Pにそれぞれ取り付けておき、左右一対のフック100でバーベルを水平に支えた状態で、使用者がその両肩にバーベルを当てがってスクワットトレーニングを行い、トレーニング終了時に、バーベルをフック100に戻すようにしている。
【0004】
ところで、このような筋力トレーニングを安全かつ効率的に行うためには、バーベル等のトレーニング器具の高さ位置を使用者の身長等の体格に合わせて適切に調節することが重要である。
【0005】
しかしながら、従来のフック100は、その背板部110に突設されたシャフト120をトレーニングラックの支柱Pに開設された多数の貫通孔h・h…の何れかに挿入することによって取り付ける構成であったため、フック100の高さ調節は、支柱Pの貫通孔h同士の間隔(通常、孔芯間隔2.5~5cm)に従うより仕方がなく、フック100を使用者の体格に合わせて最適な高さ位置に微調節することができない難点があった。
【0006】
しかも、従来のフック100は、これを支柱Pに取り付ける際には、
図12に示すように、まず、フック100全体を横向き姿勢に保ちながらシャフト120を支柱Pの貫通孔hに挿入し、その後、挿入したシャフト120を中心にしてフック100全体を縦向きに回転させてL型ストッパ130を支柱Pの背面に係合させる必要があり、また、フック100を支柱Pから取り外す際には、この逆の操作を行う必要があった。したがって、フック100の高さ調節を行う際には、その都度、支柱Pに対するフック100全体の取外し・取付け作業を行わなければならず、高さ調節操作に手間がかかる難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来のトレーニングラック用フックに上記のような難点があったことに鑑みて為されたもので、トレーニングラックの支柱に対する取外し・取付け作業を行わずとも、フック部の高さ位置を容易に調節することができるトレーニングラック用フックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、トレーニングラックの支柱に着脱自在に取付け可能な取付部と、トレーニング器具を支持するフック部とを備えたトレーニングラック用フックであって、
前記取付部と前記フック部との間に前記取付部に対する前記フック部の上下位置を調節する調節部を設けたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、前記調節部が、前記支柱に当接するウェブ部と前記ウェブ部の両側縁に設けられた一対のフランジ部と前記各フランジ部の側縁に設けられたリップ部とを有する断面リップ溝形状のレールと、前記レールの前記リップ部に対向する前壁部と前記レールの前記フランジ部に対向する側壁部とを有し、前記前壁部に前記フック部が固定され、前記レールの溝内を上下移動するスライダと、前記レールの前記フランジ部に上下方向に等間隔に並んで列を成して開設された複数の調節孔と前記スライダの前記側壁部に開設された挿入孔とに挿入可能な固定ピンと、を備え、
前記調節部の前記スライダを前記レールに沿って上下移動させ、前記レールの何れか一つの前記調節孔と前記スライダの前記挿入孔とを位置合わせして前記固定ピンを挿入することによって、前記取付部に対する前記フック部の上下位置を調節することを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、前記調節孔が複数列、開設されており、一の列を成す前記調節孔の開設位置と他の列を成す前記調節孔の開設位置とが上下方向に位置ずれしており、前記挿入孔が、前記調節孔の各列の水平方向位置に対応して複数、開設されており、前記各挿入孔の上下方向の開設位置が一致していることを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、前記調節部の前記レールに前記取付部が設けられており、前記レールにおける前記取付部の上下方向の配設位置と異なる位置に前記調節孔が開設されていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、前記レールの上端部側の前記リップ部の内面及び前記レールの下端部側の前記リップ部の内面のうち、前記レールの上端部側の前記リップ部の内面にのみ、前記スライダの前記前壁部の外面と当接するスペーサが設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るトレーニングラック用フックによれば、トレーニングラックの支柱に取付け可能な取付部とバーベル等のトレーニング器具を支持するフック部との間に、調節部を設けているので、従来品のようにトレーニングラックの支柱に対する取外し・取付け作業を行わずとも、調節部を操作するだけでフック部の高さ位置を容易に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態のトレーニングラック用フックの全体斜視図である。
【
図2】本実施形態のトレーニングラック用フックの分解状態の斜視図である。
【
図3】本実施形態のトレーニングラック用フックの(a)調節部のスライダ及びフック部の平面図、(b)調節部のレール及び取付部の平面図である。
【
図4】本実施形態のトレーニングラック用フックをトレーニングラックの支柱に取り付けた状態を示す全体斜視図である。
【
図5】本実施形態のトレーニングラック用フックをトレーニングラックの支柱に取り付けた状態を示す側面図である。
【
図7】本実施形態のトレーニングラック用フックのフック部を上昇させた状態を示す側面図である。
【
図8】本実施形態のトレーニングラック用フックのフック部にトレーニング器具の荷重が加わった状態を示す部分断面図である。
【
図9】本実施形態のトレーニングラック用フックのフック部の上下動時の部分断面図である。
【
図10】本発明に係る他の実施形態のトレーニングラック用フックをトレーニングラックの支柱に取り付けた状態を示す側面図である。
【
図11】従来のトレーニングラック用フックをトレーニングラックの支柱に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図12】従来のトレーニングラック用フックをトレーニングラックの支柱に取り付ける操作を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように本実施形態のトレーニングラック用フック10は、トレーニングラックの支柱に着脱自在に取付け可能な取付部1と、バーベル等のトレーニング器具を支持するフック部3と、取付部1に対するフック部3の上下位置を調節する調節部2と、から構成されている。
【0017】
取付部1は、従来公知のフック(
図11参照)と同様、トレーニングラックの支柱Pの貫通孔hに挿入可能なシャフト11と、支柱Pの背面に係合可能なL型ストッパ12とから構成されている。
【0018】
フック部3もまた、従来公知のフック(
図11参照)と同様、略長方形状の背板部31と、背板部31の下端に設けられた略正方形状の底板部32と、底板部32の前端に設けられた略正方形状の前板部33と、これら背板部31と前板部33との間に軸支された支持ローラ34と、から構成されている。
【0019】
調節部2は、
図2及び
図3に示すように、断面リップ溝形状の縦型のレール21と、このレール21の溝内を上下移動する縦型のスライダ22と、レール21に対するスライダ22の上下位置を固定する固定ピン23と、から構成されている。
【0020】
レール21は、トレーニングラックの支柱に面接触状態で当接可能なウェブ部211と、ウェブ部211の両側縁に設けられた一対のフランジ部212と、各フランジ部212の側縁に設けられたリップ部213とから構成されている。本実施形態では、レール21の下端部側において、一対のリップ部213同士が連結部214により連結されており、レール21の下端部側は角管形状を成している。
【0021】
また、レール21の上下方向の中央部において、各フランジ部212には、上下方向に等間隔に並んで列を成す、計2列の調節孔(41・42)が多数、開設されており、一の列を成す調節孔(41・41…)の開設位置と、他の列を成す調節孔(42・42…)の開設位置とが互いに上下方向に位置ずれしている(
図7参照)。本実施形態では、各列における調節孔(41・42)同士の間隔(孔芯間隔)を2cmとしており、各列の調節孔(41・42)の開設位置が、調節孔同士の孔芯間隔を二等分した1cm分、位置ずれしている。これら計2列の調節孔(41・42)が、互いに対向する一対のフランジ部212にそれぞれ開設されている。
【0022】
また、レール21の上端部において、各リップ部213の内面には、レール21とスライダ22との隙間を小さくするためのスペーサ61が設けられている。これに対し、レール21の下端部側の各リップ部213の内面には、スペーサは設けられていない。本実施形態では、レール21の上端部における各フランジ部212の内面及びウェブ部211の内面にもそれぞれ、レール21とスライダ22との隙間を小さくするためのスペーサ(62・63)が設けられている。
【0023】
このレール21の上端部側のウェブ部211の外面に、上述した取付部1のシャフト11が水平方向に突設され、レール21の下端部側の片方のフランジ部212の外面に、取付部1のL型ストッパ12が固定されている。
【0024】
一方、スライダ22は、上記レール21のリップ部213に対向する前壁部221と、前壁部221の両側縁に設けられ、レール21のフランジ部212に対向する一対の側壁部222と、各側壁部222の側縁に設けられ、レール21のウェブ部211に対向する後壁部223とから構成されており、角管形状を成している。
【0025】
スライダ22の下端部側の各側壁部222には、計2つの挿入孔(51・52)が開設されている。一方の挿入孔51は、レール21の調節孔41の水平方向位置に対応して開設され、他方の挿入孔52は、レール21の調節孔42の水平方向位置に対応して開設されている。そして、これら挿入孔(51・52)の上下方向の開設位置は一致している。これら計2つの挿入孔(51・52)が、互いに対向する一対の側壁部222にそれぞれ開設されている。
【0026】
また、本実施形態では、スライダ22の下端部において、後壁部223の外面及び各側壁部222の外面にはそれぞれ、レール21とスライダ22との隙間を小さくするためのスペーサ(71・72)が設けられている。これに対し、スライダ22の下端部側の前壁部221の外面には、スペーサは設けられていない。
【0027】
このスライダ22の前壁部221の外面に、上述したフック部3が固定されている。即ち、
図2及び
図3(a)に示すように、フック部3の背板部31と、スライダ22の前壁部221とが、上下二か所でそれぞれ、ボルト35及びナット(36・37)により締結固定されており、これら背板部31と前壁部221との間にナット36を介在させることによって、上記レール21のリップ部213を受け入れるための隙間38が形成されている。このことで、フック部3の上下動に伴って調節部2のスライダ22がレール21の溝内を嵌合状態で上下移動する。
【0028】
固定ピン23は、
図2に示すように、レール21の調節孔(41・42)及びスライダ22の挿入孔(51・52)に挿入可能な軸部231と、軸部231の基端に設けられ、軸部231よりも大径の頭部232とから構成されている。この固定ピン23を、調節部2のレール21の何れか一つの調節孔(41・42)とスライダ22の何れか一つの挿入孔(51・52)とに同時に挿入することによって、レール21に対するスライダ22の上下位置が固定される(
図6参照)。
【0029】
次に、
図4~
図9を参照しながら本実施形態のトレーニングラック用フック10の使用手順について説明する。
【0030】
まず、
図4~
図6に示すように、本実施形態のトレーニングラック用フック10を、既設のトレーニングラックRの支柱Pの所定の高さ位置に取り付ける。即ち、従来のフック(
図11参照)と同様に、トレーニングラック用フック10全体を横向き姿勢に保ちながら、取付部1のシャフト11を支柱Pに開設された多数の貫通孔h・h…の何れかに挿入し、その後、挿入したシャフト11を中心にしてトレーニングラック用フック10全体を縦向きに回転させて取付部1のL型ストッパ12を支柱Pの背面に係合させることで、トレーニングラック用フック10を支柱Pに取り付ける。こうして左右の支柱Pにそれぞれ取り付けた左右一対のトレーニングラック用フック10の各フック部3で、バーベル等のトレーニング器具を所定の高さ位置で支持する。
【0031】
そして、フック部3の高さ調節をする場合は、
図7に示すように、トレーニングラック用フック10を支柱Pに取り付けた状態のまま、フック部3を手で支えながら、固定ピン23を抜き、フック部3を適宜、上下動させることによって、調節部2のスライダ22をレール21に沿って上下移動させ、レール21の何れか一つの調節孔(41・42)とスライダ22の何れか一つの挿入孔(51・52)とを位置合わせして両孔に固定ピン23を挿入する。こうして、調節部2のレール21に対するスライダ22の上下位置を、レール21の多数の調節孔(41・42)の上下間隔S(1cm)に従って調節し、取付部1に対するフック部3の上下位置、即ち、フック部3で支えるバーベル等のトレーニング器具の高さ位置を調節するのである。
【0032】
このように本実施形態のトレーニングラック用フック10は、トレーニングラックの支柱Pに取付け可能な取付部1と、バーベル等のトレーニング器具を支持するフック部3との間に調節部2を設けているので、従来品のようにトレーニングラックの支柱Pに対する取外し・取付け作業を行わずとも、調節部2を操作するだけでフック部3の高さ位置を容易に調節することができる。
【0033】
また、本実施形態のトレーニングラック用フック10をトレーニングラックの支柱Pに取り付けたとき、
図7に示すように、調節部2のレール21のウェブ部211が支柱Pの側面に面接触状態で当接するので、支柱P自体が有する剛性を利用して、その分、調節部2のレール21やスライダ22の薄肉軽量化を図ることができ、フック部3の上下動操作をより軽く行うことができる。
【0034】
また、このように支柱Pの剛性を利用することができるので、レール21の必要強度を確保しながら、そのフランジ部212に、支柱Pの貫通孔h同士の上下間隔Tよりも小さい上下間隔Sで多数の調節孔(41・42)を開設することができ、フック部3の高さ位置を、より広い上下範囲でより細かく微調節することができる。
【0035】
さらに、本実施形態のトレーニングラック用フック10は、調節部2のレール21の上端部側に、取付部1のシャフト11を設け、レール21の下端部側に、取付部1のL型ストッパ12を設け、そして、レール21の上下方向の中央部にのみ、多数の調節孔(41・42)を開設している。即ち、レール21における取付部1の上下方向の配設位置とは異なる位置に多数の調節孔(41・42)を開設している。このことで、フック部3に加わるバーベル等のトレーニング器具の荷重を、スライダ22を介して、このレール21の調節孔(41・42)が開設されていない部位で支えることができ、レール21の上下方向中央部に、より多くの調節孔(41・42)をより小間隔に開設しても、トレーニング器具を支えるのに必要なレール21の強度を確保することができ、トレーニング器具を確実かつ安定に支えることができる。
【0036】
さらに、本実施形態のトレーニングラック用フック10は、レール21の上端部の各リップ部213の内面に、スペーサ61を設けている一方、レール21の下端部側の各リップ部213の内面には、スペーサを設けていない。このことで、
図8に示すように、スライダ22の下端部の前壁部221とレール21の下端部のリップ部213との間に、フック部3の上下動時のスライダ22の下端部の前後移動を許容する隙間Gを形成することができ、フック部3によるトレーニング器具のガタつきの少ない安定支持と、フック部3の円滑な高さ調節操作とを両立させることができる。
【0037】
つまり、フック部3でトレーニング器具を支えたとき、
図8に示すように、フック部3に加わるトレーニング器具の荷重Fによって、レール21内のスライダ22には、フック部3側へ前傾する方向の力fが作用することになり、スライダ22の上端部の前壁部221がレール21の上端部のスペーサ61を押圧すると同時に、スライダ22の下端部の後壁部223がスペーサ71を介してレール21の下端部を押圧する。したがって、フック部3でトレーニング器具を支持しているときは、上記隙間Gがあっても、スライダ22のガタツキを抑えて安定にトレーニング器具を支えることができる。
【0038】
一方、フック部3の高さ調節をする際には、フック部3を手で支えてこれを上下動させるので、
図9に示すように、フック部3に加わる上向きの力Mによって、レール21内のスライダ22には、フック部3とは反対側へ後傾する方向の力が作用することになる。このとき、上記隙間Gによりスライダ22の下端部の前後移動mが許容されるので、スライダ22をよりスムーズに上下移動させることが可能となり、より円滑なフック部3の高さ調節操作を行うことができるのである。なお、
図8及び
図9においては、図面の輻輳を避けるため、調節部2のレール21とスライダ22との隙間やスペーサの厚み等を誇張して図示している。
【0039】
以上、本実施形態のトレーニングラック用フック10について説明したが、本発明は他の実施形態でも実施することができる。
【0040】
例えば、上記実施形態では、調節部2のレール21とスライダ22の上下方向の長さを同じにしているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、
図10に示すトレーニングラック用フック20のように、調節部2のレール21をスライダ22よりも長く形成し、より広い上下範囲に調節孔(41・42)を開設するようにしてもよい。このことで、より広い上下範囲でフック部3の高さ調節をすることが可能となる。また、調節部2のレール21に、調節孔を一列または三列以上、開設してもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、取付部1を、トレーニングラックの支柱Pの貫通孔hに挿入可能なシャフト11と、支柱Pの背面に係合可能なL型ストッパ12とから構成しているが、本発明は勿論これに限定されるものではなく、例えば、
図10に示すトレーニングラック用フック20のように、取付部4として、トレーニングラックの支柱Pの貫通孔hに挿入可能なシャフト13を調節部2のレール21の上下二か所にそれぞれ突設し、各シャフト13の先端部側に設けた雄ネジ部14にナット15を螺合することによって、トレーニングラック用フック20を支柱Pに取り付けるようにしてもよい。また、必ずしも支柱Pの貫通孔hにシャフトを挿入して取り付ける構成である必要もなく、例えば、取付部として、支柱Pを両側から挟んで固定するクランプ機構等を採用してもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、フック部3として、支持ローラ34を備えたものを採用しているが、支持ローラ34を備えていないフック部を採用してもよいことは勿論である。
【0043】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10、20 トレーニングラック用フック
1、4 取付部
2 調節部
21 レール
211 ウェブ部
212 フランジ部
213 リップ部
22 スライダ
221 前壁部
222 側壁部
23 固定ピン
3 フック部
41、42 調節孔
51、52 挿入孔
61 スペーサ
R トレーニングラック
P 支柱