(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096877
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】脱落防止具
(51)【国際特許分類】
F16B 39/20 20060101AFI20230630BHJP
F16B 41/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
F16B39/20 A
F16B41/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212910
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】503154813
【氏名又は名称】有限会社SIT
(71)【出願人】
【識別番号】593078958
【氏名又は名称】株式会社染野製作所
(71)【出願人】
【識別番号】714001375
【氏名又は名称】株式会社ティ・エフ・プランニング
(71)【出願人】
【識別番号】521568443
【氏名又は名称】株式会社セイユウ
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】添田 真弓
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 記彦
(72)【発明者】
【氏名】多持 壽悦
(72)【発明者】
【氏名】新谷 和人
(57)【要約】
【課題】端部及び側面どちらからでもボルトに装着できる脱落防止具を提供する。
【解決手段】脱落防止具10は、コイルバネ部20と、第1の引掛部30と、第1のアーム部40と、ナット対応部50と、第2の引掛部60と、第2のアーム部70とを備える。第2のアーム部70を第1のアーム部40に近づけると、第1の引掛部30の第1の湾曲領域31Aと第2の引掛部60の第2の湾曲領域61Aとが立体交差して、第1の湾曲領域31Aと第2の湾曲領域61Aとに囲まれた空間が形成される。このとき、第2の湾曲領域61Aのボルト用開口部62と、第4のコイル素線51の一端51Bと他端51Cとの間の空間であるナット用開口部52とが、第1の仮想曲率中心軸線31Cまたは第2の仮想曲率中心軸線61Cを境にしてどちらも同じ側へ向き、ボルトの長手方向を境にして第2の引掛部60とナット対応部50がどちらも同じ側に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直線状に延びた第1の直線状領域と、同第1の直線状領域から略円形状に略同一径で複数回巻回された巻回領域と、同巻回領域から略直線状に延びると共に同第1の直線状領域と立体交差して配置された第2の直線状領域とを含む第1のコイル素線を有する、コイルバネ部と、
前記第1のコイル素線の前記第1の直線状領域と接続されており、同第1のコイル素線との接続箇所から同第1のコイル素線の前記巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ凸状に湾曲した第1の湾曲領域を含む第2のコイル素線を有する、第1の引掛部と、
前記第2のコイル素線と接続されており、同第2のコイル素線との接続箇所から前記第1のコイル素線の前記巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ延びた第3のコイル素線を有する、第1のアーム部と、
前記第3のコイル素線と接続されており、同第3のコイル素線との接続箇所から、前記巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ拡がった仮想平面において少なくとも一つの頂部を前記第1の湾曲領域の湾曲方向とは反対側に形成しながら延びており、かつ、同第3のコイル素線と接続された一端と該一端とは反対側の他端とが互いに所定の距離ほど離れて配置された第4のコイル素線を有する、ナット対応部と、
前記第2の直線状領域と接続されており、同第2の直線状領域との接続箇所から前記第1の引掛部の曲率半径と略同じ曲率半径で同第1の引掛部と立体交差する方向へ、凸状に湾曲した第2の湾曲領域を含む第5のコイル素線を有し、かつ、前記巻回領域の巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向において同第1の引掛部と同ナット対応部との間に配置された第2の引掛部と、
前記第5のコイル素線と接続されており、同第5のコイル素線との接続箇所から前記巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ延びた第6のコイル素線を有する、第2のアーム部とを備える
脱落防止具。
【請求項2】
前記コイルバネ部の前記第1の直線状領域と前記第2の直線状領域との間の立体交差角度は180度未満である
請求項1に記載の脱落防止具。
【請求項3】
前記ナット対応部の前記第4のコイル素線が折れ曲がって、六角形の一部が欠けた形状であると共に4つの辺を有する形状が形成された
請求項1または請求項2に記載の脱落防止具。
【請求項4】
前記第1のアーム部の前記第3のコイル素線は、前記第2のコイル素線と接続されていると共に同第2のコイル素線との接続箇所から前記巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ延びた一の主領域と、該一の主領域から前記巻回領域の巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向へ延びた連結領域と、該連結領域から前記一の主領域に対して略平行に延びていると共に前記第4のコイル素線と接続された他の主領域とを含み、
前記第2のアーム部の前記第6のコイル素線は、前記第5のコイル素線と接続された箇所とは反対側の箇所から、前記巻回領域の巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向であると共に前記ナット対応部の前記第4のコイル素線が配置された前記仮想平面へ向けて延びた端部領域を含む
請求項1、請求項2または請求項3に記載の脱落防止具。
【請求項5】
前記第6のコイル素線の前記端部領域はさらに、前記巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ延びた同第6のコイル素線の領域である主領域へ向けて延びた
請求項4に記載の脱落防止具。
【請求項6】
前記第3のコイル素線の前記連結領域は、同第3のコイル素線の前記第2のコイル素線との接続箇所から同接続箇所とは反対側へ向かう方向へ凸状に湾曲して延びており、
前記第6のコイル素線の前記端部領域は、同第6のコイル素線の前記第5のコイル素線との接続箇所から同接続箇所とは反対側へ向かう方向へ凸状に湾曲して延びた
請求項4または請求項5に記載の脱落防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脱落防止具に関する。詳しくは、例えば天井下地の吊りボルトから被固定物やナットが脱落することを防止する脱落防止具に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築構造物を構成する二つの部材を固定するための方法として、溶接によって固定する方法や、ボルトとナットによって締結する方法が用いられている。
【0003】
また、溶接による固定は、溶接設備が必要となり、施工に手間と時間がかかり、また、固定を解除する場合も設備が必要となり、固定解除に手間と時間がかかるので、ボルトとナットによって締結する方法が多く採用されている。
【0004】
しかし、ボルトとナットによって締結する方法において、ボルトやナットが振動等を受けることにより、締結後にボルトやナットが緩むことがあるため、ボルトやナットが緩んで、ボルトから被固定物やナットが脱落しないようにする発明が幾つか提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、
図6(b)に示すような緩み止め具100が記載されている。
すなわち、緩み止め具100は、ボルト101に螺合されたナット102の緩みを防止するものである。
【0006】
また、緩み止め具100は、
図6(a)に示すコイルバネ104と、
図6(b)に示すリング材106とを備える。
また、コイルバネ104は、ボルト101の外径よりわずかに小さく、弾性変形することによって、半径方向に拡張しながらネジ溝に係止し得る内径で渦巻き状の環状に形成されている。
【0007】
また、コイルバネ104の素線107の先端部105は、
図6(b)に示すように斜めに加工されている。その結果、先端部105がボルト101とナット102の隙間に入り込みつつ螺合することにより、先端部105がストッパーとなってナット102が戻り方向に回転できなくなる。
【0008】
また、リング材106は、
図6(b)に示すように上面すなわちナット102に向いた面とは反対側の面の直径と、下面すなわちナット102に向いた面の直径が互いに異なり、外面が傾斜した円筒状で形成されている。
【0009】
また、リング材106の内径は、ボルト101のネジ溝に装着したコイルバネ104の外径と略同じである。
また、
図6(b)に示すように、ネジ溝に装着したコイルバネ104の外周を覆うようにリング材106を取付けることで、緩み止め具100の装着はより確実になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献1に記載の緩み止め具は、端部からボルトに装着されることのみを想定した構成となっており、側面からボルトに装着されることを想定した構成とはなっていない。
【0012】
ボルトの中でも六角ボルトは、ネジ部と一体となった頭部を一端に備えており、頭部と六角ナットとによって部材を挟み込んで締結できるボルトである。
また、部材を境にして頭部とは反対側に六角ナットと六角ボルトの他端が位置しており、また、他端は露出しているので、締結後でも緩み止め具を六角ボルトの他端から装着できる。
【0013】
一方、吊りボルトは、六角ボルトのような頭部を備えておらず、長手方向へ延びたネジ部を備え、2つの六角ナットによって部材を挟み込んで締結できるボルトである。
しかも、吊りボルトは、その両端近くにおいてそれぞれ2つの六角ナットによって部材を挟み込むようにして締結するか、あるいは、一端は建材などに接続され、他端近くにおいて六角ナットによって部材を締結するために使用される。
【0014】
従って、どうしても一端近くの部材と他端近くの部材との間のネジ部、あるいは一端が接続された建材と他端近くの部材との間のネジ部に装着された六角ナットが存在し、その六角ナットに緩み止め具を装着するためには吊りボルトの側面から緩み止め具を装着しなければならなかった。
【0015】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、端部及び側面どちらからでもボルトに装着できる脱落防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の脱落防止具は、略直線状に延びた第1の直線状領域と、同第1の直線状領域から略円形状に略同一径で複数回巻回された巻回領域と、同巻回領域から略直線状に延びると共に同第1の直線状領域と立体交差して配置された第2の直線状領域とを含む第1のコイル素線を有する、コイルバネ部と、前記第1のコイル素線の前記第1の直線状領域と接続されており、同第1のコイル素線との接続箇所から同第1のコイル素線の前記巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ凸状に湾曲した第1の湾曲領域を含む第2のコイル素線を有する、第1の引掛部と、前記第2のコイル素線と接続されており、同第2のコイル素線との接続箇所から前記第1のコイル素線の前記巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ延びた第3のコイル素線を有する、第1のアーム部と、前記第3のコイル素線と接続されており、同第3のコイル素線との接続箇所から、前記巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ拡がった仮想平面において少なくとも一つの頂部を前記第1の湾曲領域の湾曲方向とは反対側に形成しながら延びており、かつ、同第3のコイル素線と接続された一端と該一端とは反対側の他端とが互いに所定の距離ほど離れて配置された第4のコイル素線を有する、ナット対応部と、前記第2の直線状領域と接続されており、同第2の直線状領域との接続箇所から前記第1の引掛部の曲率半径と略同じ曲率半径で同第1の引掛部と立体交差する方向へ、凸状に湾曲した第2の湾曲領域を含む第5のコイル素線を有し、かつ、前記巻回領域の巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向において同第1の引掛部と同ナット対応部との間に配置された第2の引掛部と、前記第5のコイル素線と接続されており、同第5のコイル素線との接続箇所から前記巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ延びた第6のコイル素線を有する、第2のアーム部とを備える。
【0017】
ここで、略直線状に延びた第1の直線状領域と、第1の直線状領域から略円形状に略同一径で複数回巻回された巻回領域と、巻回領域から略直線状に延びると共に第1の直線状領域と立体交差して配置された第2の直線状領域とを含む第1のコイル素線を有する、コイルバネ部によって、巻回領域の巻回中心を回動中心として第2の直線状領域を回動させることができると共に、第2の直線状領域を回動させて第1の直線状領域に近づけたときに、第2の直線状領域に第1の直線状領域から離れる方向への付勢力を発生させることができる。
【0018】
また、第1のコイル素線の第1の直線状領域と接続されており、第1のコイル素線との接続箇所から第1のコイル素線の巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ凸状に湾曲した第1の湾曲領域を含む第2のコイル素線を有する、第1の引掛部と、第2の直線状領域と接続されており、第2の直線状領域との接続箇所から第1の引掛部の曲率半径と略同じ曲率半径で第1の引掛部と立体交差する方向へ、凸状に湾曲した第2の湾曲領域を含む第5のコイル素線を有する、第2の引掛部とによって、第2の直線状領域を第1の直線状領域に近づけたときに、第1の引掛部の第1の湾曲領域と第2の引掛部の第2の湾曲領域とが立体交差して、第1の湾曲領域と第2の湾曲領域とに囲まれた空間を形成することができる。
【0019】
また、このようなコイルバネ部と、このような第1の引掛部と、このような第2の引掛部とによって、発生した付勢力が第2の引掛部の第2の湾曲領域へ伝わり、第1の湾曲領域と第2の湾曲領域とに囲まれた空間に配置されたボルトを緊縮することができる。
すなわち、この空間を形成しているときに第1の湾曲領域と第2の湾曲領域には、互いに近づく方向へバネ応力が発生している。
ここで、第1の引掛部の曲率半径及び第2の引掛部の曲率半径は、本発明の脱落防止具が装着されるボルトの曲面の曲率半径と略同じであるものとする。
従って、第1の引掛部の第2のコイル素線と第2の引掛部の第5のコイル素線が、ボルトのネジ溝に嵌合する。
【0020】
また、第2のコイル素線と接続されており、第2のコイル素線との接続箇所から第1のコイル素線の巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ延びた第3のコイル素線を有する、第1のアーム部と、第5のコイル素線と接続されており、第5のコイル素線との接続箇所から巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ延びた第6のコイル素線を有する、第2のアーム部とによって、第1のアーム部は第1の引掛部を介して第1の直線状領域と接続されており、また、第2のアーム部は第2の引掛部を介して第2の直線状領域と接続されているので、第2のアーム部を第1のアーム部に近づけることで、第2の直線状領域を第1の直線状領域に近づけることができ、また、第1の湾曲領域と第2の湾曲領域とに囲まれた空間を形成することができる。
【0021】
また、第3のコイル素線と接続されており、第3のコイル素線との接続箇所から、巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ拡がった仮想平面において少なくとも一つの頂部を第1の湾曲領域の湾曲方向とは反対側に形成しながら延びており、かつ、第3のコイル素線と接続された一端と該一端とは反対側の他端とが互いに所定の距離ほど離れて配置された第4のコイル素線を有する、ナット対応部と、第2の直線状領域と接続されており、第2の直線状領域との接続箇所から第1の引掛部の曲率半径と略同じ曲率半径で第1の引掛部と立体交差する方向へ、凸状に湾曲した第2の湾曲領域を含む第5のコイル素線を有し、かつ、巻回領域の巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向において第1の引掛部とナット対応部との間に配置された第2の引掛部とによって、第2の直線状領域を第1の直線状領域に近づけて第1の湾曲領域と第2の湾曲領域とに囲まれた空間を形成したときに、第2の湾曲領域の湾曲凸部と第4のコイル素線の少なくとも一つの頂部とが、第1の仮想曲率中心軸線または第2の仮想曲率中心軸線を境にしてどちらも同じ側に位置する、すなわち、第2の湾曲領域のボルト用開口部と、第4のコイル素線の一端と他端との間の空間とが、第1の仮想曲率中心軸線または第2の仮想曲率中心軸線を境にしてどちらも同じ側へ向き、さらに、ボルトの長手方向を境にして第2の引掛部とナット対応部をどちらも同じ側に配置できる。
従って、第2の引掛部とナット対応部を一緒にボルトの側面からボルトに近づけて、第2の引掛部内すなわち第2の湾曲領域内とナット対応部内すなわち第4のコイル素線に囲まれた領域内に、ボルトを配置できる。
【0022】
ここで、「第1の仮想曲率中心軸線」は、第1の湾曲領域の曲率中心を通り、巻回領域の巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向へ延びた、実体のない軸線とする。
また、「第2の仮想曲率中心軸線」は、第2の湾曲領域の曲率中心を通り、巻回領域の巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向へ延びた、実体のない軸線とする。
また、「所定の距離」は、ボルトの外径よりも長い距離を意味する。
また、「ボルト用開口部」は、第2の引掛部の第5のコイル素線の、第1のコイル素線の第2の直線状領域と接続された一端と、この一端とは反対側の他端との間の空間とする。
【0023】
また、第3のコイル素線と接続されており、第3のコイル素線との接続箇所から、巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ拡がった仮想平面において少なくとも一つの頂部を第1の湾曲領域の湾曲方向とは反対側に形成しながら延びた第4のコイル素線を有する、ナット対応部によって、ナットが回転しようとしてもナットの角部がナット対応部の頂部と頂部との間の辺に当たってナットの回転を抑制できる。
【0024】
また、本発明の脱落防止具において、コイルバネ部の第1の直線状領域と第2の直線状領域との間の立体交差角度は180度未満である構成とすることができる。
【0025】
この場合、第1のアーム部と第2のアーム部とを指などで挟み易い。
【0026】
また、本発明の脱落防止具において、ナット対応部の第4のコイル素線が折れ曲がって、六角形の一部が欠けた形状であると共に4つの辺を有する形状が形成された構成とすることができる。
【0027】
この場合、ナット対応部の形状が、ナットの外形にさらに対応し易くなるので、ナットの回転をさらに抑制できる。
【0028】
また、本発明の脱落防止具において、第1のアーム部の第3のコイル素線は、第2のコイル素線と接続されていると共に第2のコイル素線との接続箇所から巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ延びた一の主領域と、一の主領域から巻回領域の巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向へ延びた連結領域と、連結領域から一の主領域に対して略平行に延びていると共に第4のコイル素線と接続された他の主領域とを含み、第2のアーム部の第6のコイル素線は、第5のコイル素線と接続された箇所とは反対側の箇所から、巻回領域の巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向であると共にナット対応部の第4のコイル素線が配置された仮想平面へ向けて延びた端部領域を含む構成とすることができる。
【0029】
この場合、第1のアーム部が押される範囲と第2のアーム部が押される範囲とが拡大するので、第1のアーム部と第2のアーム部を指などで押し易い。
【0030】
また、本発明の脱落防止具において、第6のコイル素線の端部領域はさらに、巻回領域の巻回半径方向と同じ方向へ延びた第6のコイル素線の領域である主領域へ向けて延びた構成とすることができる。
【0031】
この場合、第2のアーム部が押される範囲がさらに拡大するので、第2のアーム部を指などでさらに押し易い。
【0032】
また、本発明の脱落防止具において、第3のコイル素線の連結領域は、第3のコイル素線の第2のコイル素線との接続箇所から接続箇所とは反対側へ向かう方向へ凸状に湾曲して延びており、第6のコイル素線の端部領域は、第6のコイル素線の第5のコイル素線との接続箇所から接続箇所とは反対側へ向かう方向へ凸状に湾曲して延びた構成とすることができる。
【0033】
この場合、連結領域や端部領域が湾曲せずに略直線状に延びた構成よりも、第1のアーム部が押される範囲と第2のアーム部が押される範囲とが拡大するので、第1のアーム部と第2のアーム部を指などで押し易い。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る脱落防止具は、端部及び側面どちらからでもボルトに装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明を適用した脱落防止具の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明を適用した脱落防止具の一例を示す概略側面図である。
【
図3】本発明を適用した脱落防止具の第1の引掛部と第2の引掛部が立体交差したときの状態の一例を示す概略平面図である。
【
図4-1】本発明を適用した脱落防止具を側面からボルトに装着するときの第1工程の一例を示す概略図である。
【
図4-2】本発明を適用した脱落防止具を側面からボルトに装着するときの第2工程の一例を示す概略図である。
【
図4-3】本発明を適用した脱落防止具を側面からボルトに装着するときの第3工程の一例を示す概略図である。
【
図4-4】本発明を適用した脱落防止具を側面からボルトに装着するときの第4工程の一例を示す概略図である。
【
図5】本発明を適用した脱落防止具を吊りボルトに装着したときの状態の一例を示す概略図である。
【
図6】従来の緩み止め具を構成するコイルバネを示す概略図(a)と、従来の緩み止め具をボルトに装着したときの様子を示す概略図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0037】
図1は、本発明を適用した脱落防止具の一例を示す概略斜視図である。
また、
図2は、本発明を適用した脱落防止具の一例を示す概略側面図である。
また、
図3は、本発明を適用した脱落防止具の第1の引掛部と第2の引掛部が立体交差したときの状態の一例を示す概略平面図である。
【0038】
図1に示す本発明の脱落防止具10は、コイルバネ部20を備える。
ここで、コイルバネ部20は、第1のコイル素線21を有する。
【0039】
また、第1のコイル素線21は、略直線状に延びた第1の直線状領域21Aを含む。
また、第1のコイル素線21は巻回領域21Bを含む。
ここで、巻回領域21Bは、第1の直線状領域21Aから略円形状に略同一径で4回巻回された領域である。
なお、巻回数は4回に限定されないことは勿論であり、巻回数が5回以上とすることもできる。
【0040】
また、巻回領域21Bの巻回半径方向に対して略直交する方向へ延びており、かつ、巻回領域21Bの巻回中心を通る実体のない軸線を、仮想巻回中心軸線21Dとする。
【0041】
また、第1のコイル素線21は第2の直線状領域21Cを含む。
ここで、第2の直線状領域21Cは、巻回領域21Bから略直線状に延びると共に第1の直線状領域21Aと立体交差して配置された領域である。
【0042】
また、コイルバネ部20の第1の直線状領域21Aと第2の直線状領域21Cとの間の立体交差角度Qは180度未満であり、具体的には例えば130度~150度である。
【0043】
また、本発明の脱落防止具10は、第1の引掛部30を備える。
ここで、第1の引掛部30は、第2のコイル素線31を有する。
また、第1の引掛部30の第2のコイル素線31は、第1のコイル素線21の第1の直線状領域21Aと接続されている。
【0044】
また、第1の引掛部30の第2のコイル素線31は、第1の湾曲領域31Aを含む。
ここで、第1の湾曲領域31Aは、第1のコイル素線21との接続箇所から第1のコイル素線21の巻回領域21Bの巻回半径方向と同じ方向へ凸状に湾曲した領域である。
【0045】
また、巻回領域21Bの巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向すなわち仮想巻回中心軸線21Dが延びた方向と同じ方向へ延びており、かつ、第1の湾曲領域31Aの曲率中心である第1の曲率中心31Bを通る実体のない軸線を、第1の仮想曲率中心軸線31Cとする。
【0046】
また、本発明の脱落防止具10は、第1のアーム部40を備える。
ここで、第1のアーム部40は、第3のコイル素線41を有する。
【0047】
また、第1のアーム部40の第3のコイル素線41は、一の主領域41Aを含む。
ここで、一の主領域41Aは、第2のコイル素線31と接続されていると共に第2のコイル素線31との接続箇所から巻回領域21Bの巻回半径方向と同じ方向であってコイルバネ部20とは反対方向へ延びた領域である。
【0048】
また、第1のアーム部40の第3のコイル素線41は、連結領域41Cを含む。
ここで、連結領域41Cは、一の主領域41Aから巻回領域21Bの巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向、すなわち仮想巻回中心軸線21Dや第1の仮想曲率中心軸線31Cが延びた方向と同じ方向へ延びた領域である。
また、第3のコイル素線41の連結領域41Cは、第3のコイル素線41の第2のコイル素線31との接続箇所から、この接続箇所とは反対側へ向かう方向へ凸状に湾曲して延びている。
【0049】
また、第1のアーム部40の第3のコイル素線41は、他の主領域41Bを含む。
ここで、他の主領域41Bは、連結領域41Cから一の主領域41Aに対して略平行に延びた領域である。
【0050】
また、本発明の脱落防止具10は、ナット対応部50を備える。
ここで、ナット対応部50は、第4のコイル素線51を有する。
また、ナット対応部50の第4のコイル素線51は、第3のコイル素線41の他の主領域41Bと接続されている。
【0051】
また、ナット対応部50の第4のコイル素線51は、第3のコイル素線41との接続箇所から、コイルバネ部20の巻回領域21Bの巻回半径方向と同じ方向へ拡がった仮想平面において少なくとも一つの頂部51Aを第1の湾曲領域31Aの湾曲方向とは反対側に形成しながら延びている。
すなわち、ナット対応部50の第4のコイル素線51が折れ曲がって、六角形の一部が欠けた形状であると共に4つの辺と3つの頂部51Aを有する形状が形成されており、一つの頂部51Aが、第1の湾曲領域31Aの湾曲方向とは反対側に形成されている。
【0052】
また、ナット対応部50の第4のコイル素線51の、第3のコイル素線41の他の主領域41Bと接続された一端51Bと、一端51Bとは反対側の他端51Cとが互いに所定の距離例えばボルトの外径よりも長い距離ほど離れて配置されている。
第4のコイル素線51の一端51Bと他端51Cとの間の空間がナット用開口部52である。
【0053】
また、本発明の脱落防止具10の、第1の引掛部30と、第1のアーム部40と、ナット対応部50とに囲まれた空間に、受容空間72が形成されている。
受容空間72は、本発明の脱落防止具10をボルトの側面からボルトに装着する際に、ボルトの一部を入れるための空間である。
【0054】
また、本発明の脱落防止具10は、第2の引掛部60を備える。
ここで、第2の引掛部60は、第5のコイル素線61を有する。
また、第2の引掛部60の第5のコイル素線61は、第1のコイル素線21の第2の直線状領域21Cと接続されている。
【0055】
また、第2の引掛部60の第5のコイル素線61は、第2の湾曲領域61Aを含む。
ここで、第2の湾曲領域61Aは、第1のコイル素線21の第2の直線状領域21Cとの接続箇所から第1の引掛部30の曲率半径と略同じ曲率半径で第1の引掛部30と立体交差する方向へ、凸状に湾曲した領域である。
すなわち、第2の湾曲領域61Aは、第1のコイル素線21の第2の直線状領域21Cとの接続箇所から第1のコイル素線21の巻回領域21Bの巻回半径方向と同じ方向であると共に第1の湾曲領域31A側へ凸状に湾曲した領域である。
【0056】
また、第1の引掛部30の第1の湾曲領域31Aと、第2の引掛部60の第2の湾曲領域61Aはそれぞれ、共通の仮想平面へ向けて凸状に湾曲した領域である。
ここで、「共通の仮想平面」は、仮想巻回中心軸線21Dが延びた方向と同じ方向へ拡がっており、巻回領域21Bの巻回中心を通るが、第1の直線状領域21Aと第2の直線状領域21Cを通らない、実体のない平面である。
【0057】
また、第2の引掛部60の第5のコイル素線61の、第1のコイル素線21の第2の直線状領域21Cと接続された一端61Dと、一端61Dとは反対側の他端61Eとの間の空間がボルト用開口部62である。
【0058】
また、
図2に示すように、第2の引掛部60は、巻回領域21Bの巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向、すなわち仮想巻回中心軸線21Dが延びた方向と同じ方向において第1の引掛部30とナット対応部50との間に配置されている。
【0059】
また、本発明の脱落防止具10は、第2のアーム部70を備える。
ここで、第2のアーム部70は、第6のコイル素線71を有する。
また、第2のアーム部70の第6のコイル素線71は、第5のコイル素線61の他端61Eと接続されている。
【0060】
また、第2のアーム部70の第6のコイル素線71は、主領域71Aを含む。
ここで、主領域71Aは、第5のコイル素線61との接続箇所から巻回領域21Bの巻回半径方向と同じ方向であってコイルバネ部20とは反対方向へ延びた領域である。
【0061】
また、第2のアーム部70の第6のコイル素線71は、端部領域71Bを含む。
ここで、端部領域71Bは、第5のコイル素線61と接続された箇所とは反対側の箇所から、巻回領域21Bの巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向、すなわち仮想巻回中心軸線21Dが延びた方向と同じ方向であると共にナット対応部50の第4のコイル素線51が配置された仮想平面へ向けて延びた領域である。
【0062】
また、第6のコイル素線71の端部領域71Bはさらに、主領域71Aへ向けて延びている。
【0063】
また、第6のコイル素線71の端部領域71Bは、第6のコイル素線71の第5のコイル素線61との接続箇所から、この接続箇所とは反対側へ向かう方向へ凸状に湾曲して延びている。
【0064】
また、本発明の脱落防止具10の第1のアーム部40と第2のアーム部70とを、例えば指で摘むようにして第1のアーム部40と第2のアーム部70とを押圧することで、
図3に示すように第2のアーム部70を第1のアーム部40に近づけることができる。
【0065】
このとき、第1の引掛部30の第1の湾曲領域31Aと第2の引掛部60の第2の湾曲領域61Aとが立体交差して、第1の湾曲領域31Aと第2の湾曲領域61Aとに囲まれた空間を形成できる。
そして、この空間にボルトを配置できる。
【0066】
また、第1の湾曲領域31Aと第2の湾曲領域61Aとに囲まれた空間を形成したときに、第2の湾曲領域61Aの湾曲凸部と第4のコイル素線51の少なくとも一つの頂部51Aとが、第1の仮想曲率中心軸線31Cまたは第2の仮想曲率中心軸線61Cを境にしてどちらも同じ側に位置する、すなわち、第2の湾曲領域61Aのボルト用開口部62と、第4のコイル素線51の一端51Bと他端51Cとの間の空間であるナット用開口部52とが、第1の仮想曲率中心軸線31Cまたは第2の仮想曲率中心軸線61Cを境にしてどちらも同じ側へ向き、さらに、ボルトの長手方向を境にして第2の引掛部60とナット対応部50をどちらも同じ側に配置できる。
【0067】
従って、第2の引掛部60とナット対応部50を一緒にボルトの側面からボルトに近づけて、第2の引掛部60内すなわち第2の湾曲領域61A内とナット対応部50内すなわち第4のコイル素線51に囲まれた領域内に、ボルトを配置できる。
【0068】
また、このように第2の引掛部60は、ナット対応部50と一緒にボルトの側面からボルトに近づくことができるので、本発明の脱落防止具10をボルトに装着し終えたときのナット対応部50の位置を、装着途中の第2の引掛部60の位置によっても把握できる。
そして、第2のアーム部70の第6のコイル素線71は、第2の引掛部60の第5のコイル素線61と接続されているので、本発明の脱落防止具10をボルトに装着し終えたときのナット対応部50の位置を、装着途中の第2のアーム部70の位置によっても把握できる。
【0069】
すなわち、装着途中に第2のアーム部70が向いている方に、最終的にナット対応部50が配置されることになり、装着途中に第2のアーム部70が下方を向いていれば、最終的にナット対応部50が下方を向いた状態で本発明の脱落防止具10のボルトへの装着が完了する。
この場合、ナットは本発明の脱落防止具10よりも下方に配置されているので、ナットの上面に本発明の脱落防止具10が配置されることになる。
【0070】
一方、装着途中に第2のアーム部70が上方を向いていれば、最終的にナット対応部50が上方を向いた状態で本発明の脱落防止具10のボルトへの装着が完了する。
この場合、ナットは本発明の脱落防止具10よりも上方に配置されているので、ナットの下面に本発明の脱落防止具10が配置されることになる。
【0071】
また、第1のアーム部40の第3のコイル素線41は、一の主領域41Aと、連結領域41Cと、他の主領域41Bとを含んでおり、一方、第2のアーム部70の第6のコイル素線71は、主領域71Aと、端部領域71Bとを含んでいることから、
図1から明らかなように第1のアーム部40の形状と第2のアーム部70の形状は互いに異なる。
従って、第1のアーム部40と第2のアーム部70を互いに区別し易くなり、装着途中で両者を混同するおそれはない。
【0072】
また、第2のアーム部70の端部領域71Bは、第5のコイル素線61と接続された箇所とは反対側の箇所から、ナット対応部50の第4のコイル素線51が配置された仮想平面へ向けて延びた領域であるので、装着完了時の第2のアーム部70の端部領域71Bの向きによって、装着完了時のナット対応部50の位置を把握でき、さらにはナットの位置を把握できる。
また、第1のアーム部40と第2のアーム部70を互いに区別し易いので、装着完了時のナット対応部50の位置を把握し易く、さらにはナットの位置を把握し易い。
【0073】
すなわち、本発明の脱落防止具10のボルトへの装着が完了した時に、第2のアーム部70の端部領域71Bが下方を向いていればナット対応部50も下方を向いた状態で配置されている。
この場合、ナットは本発明の脱落防止具10よりも下方に配置されているので、ナットの上面に本発明の脱落防止具10が配置されることになる。
【0074】
一方、本発明の脱落防止具10のボルトへの装着が完了した時に、第2のアーム部70の端部領域71Bが上方を向いていればナット対応部50も上方を向いた状態で配置されている。
この場合、ナットは本発明の脱落防止具10よりも上方に配置されているので、ナットの下面に本発明の脱落防止具10が配置されることになる。
【0075】
本発明の脱落防止具において、コイルバネ部の前記第1の直線状領域と前記第2の直線状領域との間の立体交差角度は必ずしも180度未満でなくてもよく、例えば180度とすることもできる。
しかし、立体交差角度が180度未満であれば、第1のアーム部と第2のアーム部を指で挟み易いので好ましい。
【0076】
また、本発明の脱落防止具において、ナット対応部の第4のコイル素線は折れ曲がって、必ずしも六角形の一部が欠けた形状であると共に4つの辺を有する形状が形成されていなくてもよい。
しかし、ナット対応部の第4のコイル素線がこのような形状であれば、ナットの回転をさらに抑制できるので好ましい。
【0077】
また、本発明の脱落防止具において、第1のアーム部の第3のコイル素線は、必ずしも一の主領域と、連結領域と、他の主領域とを含んでいなくてもよい。
また、本発明の脱落防止具において、第2のアーム部の第6のコイル素線は、必ずしも端部領域を含んでいなくてもよい。
【0078】
しかし、第1のアーム部の第3のコイル素線が、一の主領域と、連結領域と、他の主領域とを含み、第2のアーム部の第6のコイル素線が、端部領域を含んでいれば、第1のアーム部と第2のアーム部を指で押し易いので好ましい。
【0079】
また、本発明の脱落防止具において、第6のコイル素線の端部領域は、必ずしもさらに第6のコイル素線の主領域へ向けて延びていなくてもよい。
しかし、第6のコイル素線の端部領域がさらに、第6のコイル素線の主領域へ向けて延びていれば、第2のアーム部を指でさらに押し易いので好ましい。
【0080】
また、本発明の脱落防止具において、第3のコイル素線の連結領域と第6のコイル素線の端部領域は、必ずしも凸状に湾曲して延びていなくてもよい。
しかし、第3のコイル素線の連結領域と第6のコイル素線の端部領域が凸状に湾曲して延びていれば、湾曲せずに略直線状に延びた構成よりも、第1のアーム部と第2のアーム部とを指で押し易いので好ましい。
【0081】
また、第1のコイル素線21、第2のコイル素線31、第3のコイル素線41、第4のコイル素線51、第5のコイル素線61及び第6のコイル素線71で一本のコイル素線を構成しており、コイルバネ部20、第1の引掛部30、第1のアーム部40、ナット対応部50、第2の引掛部60及び第2のアーム部70は一本のコイル素線で構成されているが、この態様に限定されないことは勿論である。
【0082】
次に、本発明の脱落防止具をボルトの側面から、すなわちボルトの短手方向と同じ方向からボルトに装着する手順を説明する。
ここで、ボルトの短手方向とは、ボルトの長手方向に対して略直交する方向である。
【0083】
図4-1は、本発明を適用した脱落防止具を側面からボルトに装着するときの第1工程の一例を示す概略図である。
また、
図4-2は、本発明を適用した脱落防止具を側面からボルトに装着するときの第2工程の一例を示す概略図である。
また、
図4-3は、本発明を適用した脱落防止具を側面からボルトに装着するときの第3工程の一例を示す概略図である。
また、
図4-4は、本発明を適用した脱落防止具を側面からボルトに装着するときの第4工程の一例を示す概略図である。
【0084】
図4-1に示すように、本発明の脱落防止具10のコイルバネ部20を吊りボルト80へ向けた状態で、吊りボルト80の短手方向と同じ方向へ本発明の脱落防止具10を移動させて、ナット81が装着された吊りボルト80に近づける。
【0085】
このとき、仮想巻回中心軸線21Dなどが延びた方向が、吊りボルト80の長手方向に対して略直交する方向と同じ方向となるようにする。
また、このとき、本発明の脱落防止具10の第2のアーム部70を、ナット81が位置する側へ向くようにする。
【0086】
次に、
図4-2に示すように、本発明の脱落防止具10の受容空間72内に吊りボルト80の一部が入るように、本発明の脱落防止具10を吊りボルト80に接触させる。
【0087】
このときも、仮想巻回中心軸線21Dなどが延びた方向は、吊りボルト80の長手方向に対して略直交する方向と同じ方向であり、第2のアーム部70は、ナット81が位置する側へ向いている。
【0088】
またこのとき、第2の引掛部60は、吊りボルト80の長手方向を境にして第1の引掛部30と同じ側に位置している。なお、吊りボルト80の長手方向へ延びた中心軸線についての図示を省略する。
すなわち、
図4-2において、第1の引掛部30と第2の引掛部60は、吊りボルト80よりも奥側に位置している。
【0089】
また、本発明の脱落防止具10の受容空間72は、第1の引掛部30と、ナット対応部50との間の空間であるので、ナット対応部50は、吊りボルト80の長手方向を境にして第1の引掛部30とは反対側に位置している。
すなわち、
図4-2において、ナット対応部50は、吊りボルト80よりも手前側に位置している。
【0090】
そして、
図4-3に示すように、第2の引掛部60を吊りボルト80よりも手前側に位置するように移動させる。
このとき、本発明の脱落防止具10を傾けて、第2のアーム部70が、吊りボルト80の長手方向を境にして第1のアーム部40とは反対側に位置するようにしてから、第2の引掛部60を吊りボルト80よりも手前側へ移動させる。
【0091】
さらに、指などで第1のアーム部40と第2のアーム部70を摘むようにして、
図4-4に示すように、第1のアーム部40と第2のアーム部70を押圧方向Aへ押す。
こうすることで、第1のアーム部40と第2のアーム部70が互いに近づき、第2の引掛部60の第2の湾曲領域61Aのボルト用開口部62と、ナット対応部50のナット用開口部52とが、第1の仮想曲率中心軸線31Cまたは第2の仮想曲率中心軸線61Cを境にしてどちらも同じ側へ向くようになる。
【0092】
そして、この状態で、仮想巻回中心軸線21Dなどが延びた方向に対して略直交する方向、すなわち巻回半径方向と同じ方向であると共に第1のアーム部40と第2のアーム部70の間を通る方向を回転中心として、ボルト用開口部62及びナット用開口部52に吊りボルト80を通すよう、本発明の脱落防止具10を約90度回転させる。
【0093】
回転させた後、指などを第1のアーム部40と第2のアーム部70から離して押圧を解除すると、第1の引掛部30の第2のコイル素線31と第2の引掛部60の第5のコイル素線61が、吊りボルト80のネジ山80B間に形成されたネジ溝80Aに嵌合する。
またこのとき、本発明の脱落防止具10のナット対応部50は、吊りボルト80に装着されたナット81へ向けられた状態となる。
【0094】
そして、同じく
図4-4に示すように、吊りボルト80に装着されたナット81に本発明の脱落防止具10を近づけて、ナット対応部50をナット81に装着する。
【0095】
また、第1の引掛部30の第1の湾曲領域31Aと第2の引掛部60の第2の湾曲領域61Aとに囲まれた空間に吊りボルト80が挿通されている状態で、吊りボルト80の長手方向へ本発明の脱落防止具10を移動させるときには、例えば指などで第1のアーム部40と第2のアーム部70を摘みながら、巻回半径方向と同じ方向であると共に第1のアーム部40と第2のアーム部70の間を通る方向を中心として、本発明の脱落防止具10全体を少し傾けて移動させるようにすると移動が容易である。
【0096】
また、ボルトの端部から本発明の脱落防止具10をボルトに装着する場合は、
図3に示すように第2のアーム部70を第1のアーム部40に近づけ、第1の湾曲領域31Aと第2の湾曲領域61Aとに囲まれた空間を形成した状態にして、この空間にボルトの端部を挿通させる。
【0097】
すなわち、ボルトの側面から本発明の脱落防止具10をボルトに装着するときは、仮想巻回中心軸線21Dなどが延びた方向が、ボルトの長手方向に対して略直交する方向と同じ方向となるように本発明の脱落防止具10をボルトと接触させ、ボルトの端部から本発明の脱落防止具10をボルトに装着するときは、仮想巻回中心軸線21Dなどが延びた方向が、ボルトの長手方向と同じ方向となるように本発明の脱落防止具10をボルトと接触させる。
【0098】
図5は、本発明を適用した脱落防止具を吊りボルトに装着したときの状態の一例を示す概略図である。
【0099】
建物では、梁であるH形鋼82に、H形鋼82が延びた方向に対して略直交する方向へ延びたC形鋼83が取付けられており、このC形鋼83に、天井下地が取付けられている。
【0100】
天井下地は、吊りボルト用ハンガー84を介してC形鋼83に垂下装着された吊りボルト80の下端部に野縁受け用ハンガー85が取付けられており、野縁受け用ハンガー85に野縁受け86が取付けられ、この野縁受け86に、天井板を取付けるための野縁87が取付けられた周知構造のものである。
【0101】
C形鋼83は、ウエブ83Aと、上部フランジ83Bと、下部フランジ83Cと、上部リップ83Dと、下部リップ83Eとで構成された、断面形状が略C字形状の鋼材である。
また、吊りボルト用ハンガー84は、堅板片84Aと、この堅板片84Aの下端部から水平に延びた横板片84Bとで構成されている。
また、堅板片84Aの上端部には、C形鋼83の下部リップ83Eに係嵌する下向き略U字形状の係嵌部84Cが形成されており、横板片84Bには吊りボルト80が螺合するネジ孔が形成されている。
【0102】
また、横板片84Bのネジ孔に吊りボルト80の上端がねじ込まれている。
ここで、横板片84Bを2つのナットで挟み込んで締結するが、横板片84Bよりも上側のナットの図示を省略し、横板片84Bよりも下側のナット81のみを図示している。
また、堅板片84Aの係嵌部84CがC形鋼83の下部リップ83Eに係嵌している。
【0103】
野縁受け用ハンガー85は、堅板片85Aと、この堅板片85Aの上端部から水平に延びた横板片85Bとで構成されている。
また、堅板片85Aの下端部には、上向き略U字形状の係嵌部85Cが形成されており、横板片85Bには吊りボルト80が螺合するネジ孔が形成されている。
野縁受け86は、ウエブ86Aと、上部フランジ86Bと、下部フランジ86Cと、野縁受け用ハンガー85の係嵌部85Cが係嵌する上部リップ86Dと、下部リップ86Eとで構成された、断面形状が略C字形状の建材である。
【0104】
また、横板片85Bのネジ孔に吊りボルト80の下端がねじ込まれている。
ここで、横板片85Bを2つのナットで挟み込んで締結するが、横板片85Bよりも下側のナットの図示を省略し、横板片85Bよりも上側のナット81のみを図示している。
また、堅板片85Aの係嵌部85Cが野縁受け86の上部リップ86Dに係嵌している。
【0105】
このような構造の天井下地を施行した後に、吊りボルト80に装着されたナット81に緩み止め具を装着しなければならなくなった場合、従来の緩み止め具は吊りボルト80の端部からしか装着できないため、吊りボルト用ハンガー84の横板片84Bよりも下側のナット81と、野縁受け用ハンガー85の横板片85Bよりも上側のナット81に、従来の緩み止め具を装着できない。
【0106】
一方、本発明の脱落防止具10は、吊りボルト80の側面からでも吊りボルト80に装着できるので、吊りボルト用ハンガー84の横板片84Bよりも下側のナット81と、野縁受け用ハンガー85の横板片85Bよりも上側のナット81に、本発明の脱落防止具10を装着できる。
すなわち、本発明の脱落防止具10は、「後施行」が可能である。
【0107】
以上のように、本発明の脱落防止具は、コイルバネ部を備えているので、第2の直線状領域を回動させて第1の直線状領域に近づけたときに、第2の直線状領域に第1の直線状領域から離れる方向への付勢力を発生させることができる。
【0108】
また、本発明の脱落防止具は、第1の引掛部と第2の引掛部を備えているので、第2の直線状領域を第1の直線状領域に近づけたときに、第1の引掛部の第1の湾曲領域と第2の引掛部の第2の湾曲領域とが立体交差して、第1の湾曲領域と第2の湾曲領域とに囲まれた空間を形成することができる。
【0109】
また、本発明の脱落防止具は、ナット対応部と第2の引掛部を備えているので、第2の直線状領域を第1の直線状領域に近づけて第1の湾曲領域と第2の湾曲領域とに囲まれた空間を形成したときに、第2の湾曲領域のボルト用開口部と、第4のコイル素線の一端と他端との間の空間とが、第1の仮想曲率中心軸線または第2の仮想曲率中心軸線を境にしてどちらも同じ側へ向き、さらに、ボルトの長手方向を境にして第2の引掛け部とナット対応部どちらも同じ側に配置できる。
その結果、コイルバネ部の巻回半径方向と同じ方向であると共に第1のアーム部と第2のアーム部の間を通る方向を回転中心として本発明の脱落防止具を約90度回転させると、第2の引掛部とナット対応部を一緒にボルトの側面からボルトに近づけて、第2の引掛部内すなわち第2の湾曲領域内とナット対応部内すなわち第4のコイル素線に囲まれた領域内にボルトを配置できる。
【0110】
従って、本発明の脱落防止具は、端部及び側面どちらからでもボルトに装着できる。
【符号の説明】
【0111】
10 脱落防止具
20 コイルバネ部
21 第1のコイル素線
21A 第1の直線状領域
21B 巻回領域
21C 第2の直線状領域
21D 仮想巻回中心軸線
30 第1の引掛部
31 第2のコイル素線
31A 第1の湾曲領域
31B 第1の曲率中心
31C 第1の仮想曲率中心軸線
40 第1のアーム部
41 第3のコイル素線
41A 一の主領域
41B 他の主領域
41C 連結領域
50 ナット対応部
51 第4のコイル素線
51A 頂部
51B 一端
51C 他端
52 ナット用開口部
60 第2の引掛部
61 第5のコイル素線
61A 第2の湾曲領域
61B 第2の曲率中心
61C 第2の仮想曲率中心軸線
61D 一端
61E 他端
62 ボルト用開口部
70 第2のアーム部
71 第6のコイル素線
71A 主領域
71B 端部領域
72 受容空間
80 吊りボルト
80A ネジ溝
80B ネジ山
81 ナット
82 H形鋼
83 C形鋼
83A ウエブ
83B 上部フランジ
83C 下部フランジ
83D 上部リップ
83E 下部リップ
84 吊りボルト用ハンガー
84A 堅板片
84B 横板片
84C 係嵌部
85 野縁受け用ハンガー
85A 堅板片
85B 横板片
85C 係嵌部
86 野縁受け
86A ウエブ
86B 上部フランジ
86C 下部フランジ
86D 上部リップ
86E 下部リップ
87 野縁
A 押圧方向
Q 立体交差角度