(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096902
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】塗工紙、及び該塗工紙を用いた包装体又は容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/10 20060101AFI20230630BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230630BHJP
B65D 65/42 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/30 A
B32B27/30 B
B65D65/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212945
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】田中 克則
(72)【発明者】
【氏名】菊池 浩
(72)【発明者】
【氏名】榎本 肇
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
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3E086AD05
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3E086CA40
4F100AJ11C
4F100AK12C
4F100AK25C
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4F100AT00C
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4F100GB15
4F100GB23
4F100HB31B
4F100HB31C
(57)【要約】
【課題】紙リサイクル効率を低下させない、ポリエチレンフィルム代替品となる塗工紙であって、耐油性、耐水性、及び安全性の全てに優れた塗工紙の提供。
【解決手段】紙基材の一方の面に、印刷層、オーバーコーティング塗工層がこの順で積層され、前記印刷層が、食品と接触可能なインキで形成されており、前記オーバーコーティング塗工層が、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体からなるスチレンアクリル共重合体を含有する、塗工紙。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の一方の面に、印刷層、オーバーコーティング塗工層がこの順で積層され、
前記印刷層が、食品と接触可能なインキで形成されており、
前記オーバーコーティング塗工層が、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体からなるスチレンアクリル共重合体を含有する、塗工紙。
【請求項2】
前記オーバーコーティング塗工層が含有するスチレンアクリル共重合体が、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体である、請求項1に記載の塗工紙。
【請求項3】
前記オーバーコーティング塗工層が含有するスチレンアクリル共重合体が、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体と、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体とからなるスチレンアクリル共重合体である、請求項2に記載の塗工紙。
【請求項4】
前記オーバーコーティング塗工層に含有されるスチレンアクリル共重合体が、コアシェル構造を有するスチレンアクリル共重合体である、請求項1~3のいずれかに記載の塗工紙。
【請求項5】
前記オーバーコーティング塗工層が、さらにワックスを含有する、請求項1~4のいずれかに記載の塗工紙。
【請求項6】
前記ワックスが、前記スチレンアクリル共重合体のコアシェル構造内に存在する、請求項5に記載の塗工紙。
【請求項7】
前記食品と接触可能なインキは、食品成分又は食品接触成分として認可されている原料から構成されているインキである、請求項1~6のいずれかに記載の塗工紙。
【請求項8】
前記印刷層と前記オーバーコーティング層がインラインで印刷、塗工されてなる、請求項1~7のいずれかに記載の塗工紙
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の塗工紙を用いた、包装体又は容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工紙、及び該塗工紙を用いた包装体又は容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装において、紙や板紙を食品と直接接触する材料として使う場合、食品に応じて耐油性や耐水性といった機能を有すると共に、高い安全性を満たす必要がある。そのため、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等をフィルム状に押し出したポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等を紙基材に貼り合わせて得た材料が多用されている。印刷インキを設けた(印刷層を有する)紙の上にこれらのフィルムをラミネートした紙を用いることにより、意匠性を高めることもできる。
【0003】
しかしながら貼り合わされたポリエチレンフィルムは、紙リサイクル時に紙リサイクル処理で使用するアルカリ溶液に溶解しないため物理的に除去する必要があり、リサイクル効率の低下につながる。またプラスチックごみの海洋への流出による海洋汚染が世界的に問題となっている。持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットとして「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」という目標が掲げられ、サミット(主要国首脳会議)でも取り組み強化が合意されるなど世界的な重要テーマとなっている。そのため、耐油性、耐水性、人体及び環境安全性を実現可能な、プラスチックフィルムを使用しない紙製材料が求められている。
【0004】
一方、高い安全性を満たすために、食品と直接接触可能な印刷インキの開発が行われている。例えば、特許文献1には、食品添加物として認められた成分で構成された食品接触可能な印刷インキが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、長期間食品と直接接触する用途においては、印刷インキの成分が食品に移行(マイグレーション)する懸念があるため、より高い安全性が求められている。例えば、チョコレートの板紙は、チョコレートと同色で印刷されることが多いが、包装体内で比較的長期間保存されることが多いことから、より高い安全性が求められている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、紙リサイクル効率を低下させない、ポリエチレンフィルム代替品となる塗工紙であって、耐油性、耐水性、及び安全性の全てに優れた塗工紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、食品と接触可能なインキを用いて印刷層を形成し、この印刷層上に耐油性、耐水性に優れたスチレンアクリル共重合体を含有するオーバーコーティング塗工層を設ければ、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1]紙基材の一方の面に、印刷層、オーバーコーティング塗工層がこの順で積層され、
前記印刷層が、食品と接触可能なインキで形成されており、
前記オーバーコーティング塗工層が、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体からなるスチレンアクリル共重合体を含有する、塗工紙。
[2]前記オーバーコーティング塗工層が含有するスチレンアクリル共重合体が、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体である、[1]に記載の塗工紙。
[3]前記オーバーコーティング塗工層が含有するスチレンアクリル共重合体が、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体と、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体とからなるスチレンアクリル共重合体である、[2]に記載の塗工紙。
[4]前記オーバーコーティング塗工層に含有されるスチレンアクリル共重合体が、コアシェル構造を有するスチレンアクリル共重合体である、[1]~[3]のいずれかに記載の塗工紙。
[5]前記オーバーコーティング塗工層が、さらにワックスを含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の塗工紙。
[6]前記ワックスが、前記スチレンアクリル共重合体のコアシェル構造内に存在する、[5]に記載の塗工紙。
[7]前記食品と接触可能なインキは、食品成分又は食品接触成分として認可されている原料から構成されているインキである、[1]~[6]のいずれかに記載の塗工紙。
[8]前記印刷層と前記オーバーコーティング層がインラインで印刷、塗工されてなる、[1]~[7]のいずれかに記載の塗工紙
[9][1]~[8]のいずれかに記載の塗工紙を用いた、包装体又は容器。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、紙リサイクル効率を低下させない、ポリエチレンフィルム代替品となる塗工紙であって、耐油性、耐水性、及び安全性の全てに優れた塗工紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0011】
[塗工紙]
本発明の塗工紙は、紙基材の一方の面に、印刷層、オーバーコーティング塗工層がこの順番で積層されている。
上記印刷層は、食品と接触可能なインキで形成されている。
上記オーバーコーティング塗工層は、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体からなるスチレンアクリル共重合体を含有する。
【0012】
(層構成)
本発明の塗工紙の層構成としては、以下の態様が挙げられる。具体的には、紙基材の一方の面に印刷層が設けられ、その上にオーバーコーティング塗工層が設けられる。
・紙基材-印刷層-オーバーコーティング塗工層
【0013】
また、発明の塗工紙は、オーバーコーティング塗工層が2層以上設けられていてもよい。
オーバーコーティング層が2層以上設けられている場合、本発明の塗工紙の好ましい態様としては、例えば、以下の層構成の塗工紙が挙げられる。
・オーバーコーティング塗工層-紙基材-印刷層-オーバーコーティング塗工層
【0014】
発明の塗工紙は、印刷層の密着性を高める等のために、印刷層と隣接してプライマー層(アンカー層)が設けられていると好ましい。
プライマー層(アンカー層)を有する場合、本発明の塗工紙の好ましい態様としては、例えば、以下の層構成の塗工紙が挙げられる。
・紙基材-プライマー層(アンカー層)-印刷層-オーバーコーティング塗工層
・オーバーコーティング塗工層-紙基材-プライマー層(アンカー層)-印刷層-オーバーコーティング塗工層
【0015】
また、本発明の塗工紙の好ましい実施態様として、さらにヒートシール層が積層されている塗工紙が挙げられる。
ヒートシール層は、紙基材の他方の面(紙基材に対し印刷層が設けられている面とは反対面)に設けられていることが好ましい。
ヒートシール層を有する場合、本発明の塗工紙の好ましい態様としては、例えば、以下の層構成の塗工紙が挙げられる。
・ヒートシール層-紙基材-プライマー層(アンカー層)-印刷層-オーバーコーティング塗工層
・ヒートシール層-オーバーコーティング塗工層-紙基材-プライマー層(アンカー層)-印刷層-オーバーコーティング塗工層
【0016】
本発明の塗工紙は、食品と接触可能なインキにより印刷層が形成されている。これにより本発明の塗工紙は、安全性に優れている。また、本発明に係るオーバーコーティング塗工層は、スチレンアクリル共重合体を含有し、耐油性及び耐水性が高い。これにより本発明の塗工紙は、紙リサイクル効率を低下させない、ポリエチレンフィルム代替品となる塗工紙であって、耐油性及び耐水性に優れている。
すなわち、本発明の塗工紙は、紙リサイクル効率を低下させない、ポリエチレンフィルム代替品となる塗工紙であって、耐油性、耐水性、及び安全性の全てに優れた塗工紙である。
以下、本発明の塗工紙を構成する各層について、詳しく説明する。
【0017】
(印刷層)
印刷層は、インキを印刷して形成された層である。印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者等の表示、その他等の表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様等の所望の任意の印刷模様を形成する層である。
印刷層は、紙基材よりも外面側に位置する態様が好ましく、上述したように、紙基材の一方の面に、印刷層、オーバーコーティング塗工層がこの順番で積層されていることが好ましい。また、印刷層は、全面に設けてもよく、あるいは一部に設けてもよい。
【0018】
印刷層数は1層であってもよく、複数層であってもよい。印刷を複数色にして意匠性を向上させるためには、複数層からなる印刷層があると好ましい。
印刷層は、従来公知の方法を用いて形成することができ、その形成方法は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
<インキ>
印刷層を形成するインキは、食品と接触可能なインキである。これにより、長期間食品と直接接触する用途等において安全性が高い。食品と接触可能なインキとしては、例えば、食品成分又は食品接触成分として認可されている原料から構成されているインキが挙げられる。
【0020】
<<食品成分から構成されているインキ>>
食品成分から構成されているインキとしては、特に限定されず、公知の可食性インキを用いることができる。可食性インキとしては、例えば、特開2010-248356号公報に記載の可食インキ組成物、特開2010-185030に記載のインキジェット印刷用可食性インキ、特開2008-285533号公報に記載のエマルジョンインキ、特開2007-177132に記載のインキ組成物、特開2005-320528に記載の可食性インキ、特表2000-507820号公報に記載の食品用ジェットインク等に用いられる原材料や組成を適宜用いることができる。
また、市販の可食性インキ(例えば、東洋インキ製造株式会社製のリオフレッシュ1377等)を用いてもよい。
以下に、食品成分から構成されているインキの組成の一例を示す。
【0021】
インキは、樹脂として、例えば可食性樹脂を含んでいてもよい。可食性樹脂としては、シェラック、ダンマル、コーパル、ミスチック、ロジンや大豆蛋白のようなバインダー成分等が挙げられる。これらは単独ないし併用して用いることができる。
【0022】
インキは、色材として、例えば可食性着色材を含んでいてもよい。可食性着色材としては、合成着色料及び/又は天然着色料が用いることができる。合成着色料の例として、有機合成着色料としてはアゾ系染料の黄色5号、赤色505号等、キサンテン系染料の赤色213号、赤色230号等、キノリン系染料の黄色204号等、トリフェニルメテン系染料の青色1号等、アンスラキノン系染料の緑色201号等、インジゴ系染料等があり、その他に有機性着色料(タール色素)のリソールルビンBCA、レーキレッドCBA、リソールレッド、リソールレッドCA、リソールレッドBA、リソールレッドSR、テトラクロルテトラブロムフルオレセイン、ブリリアントレーキレッドR、ディープマルーン、トルイジンレッド、テトラブロムフルオレセイン、スダンIII、ヘリンドンピンクCN、パーマトンレッド、ジブロムフルオレセイン、パーマネントオレンジ、ベンチジンオレンジG、ジヨードフルオレセイン、キノリンエローSS、ベンチジンエローG、キニザリングリーンSS、インジゴ、カルバンスレンブルー、アリズリンパープルSS、ブリリアントファストスカーレット、パーマネントレッドF5R、薬用スカーレット、オイルレッドXO、ハンサオレンジ、オレンジSS、ハンサエロー、エローAB、エローOB、スダンブルーB、フタロシアニンブルーなどが挙げられる。天然着色料としては、パプリカ色素、カロチン色素、ニンジンカロチン色素、シタン色素(サンダルウッド色素)、グアイアズレン、赤キャベツ色素,赤米色素,アナトー色素,イカスミ色素,ウコン色素,エンジュ色素,オキアミ色素,柿色素,カラメル色素、コーン色素,タマネギ色素,タマリンド色素,スピルリナ色素,紅花黄色素、紅花赤色素、クチナシ黄色素、クチナシ青色素、クチナシ赤色素、ソバ全草色素,チェリー色素,海苔色素,ハイビスカス色素,ブドウ果汁色素,マリーゴールド色素,紫イモ色素,紫ヤマイモ色素,ラック色素,ルチン、蝶豆青色素、カルミン酸、ラッカイン酸、ブラジリン、クロシン、カロチン、コチニール、リナブルー(登録商標)等があげられる。これらは単独ないし併用して用いることができる。
【0023】
インキは、溶剤として、例えば可食性溶剤を含んでいてもよい。可食性溶剤は、水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。これらは単独ないし併用して用いることができる。
【0024】
インキは、添加剤として、例えば可食性分散剤を含んでいてもよい。可食性分散剤としてはグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。これらは単独ないし併用して用いることができる。
【0025】
<<食品接触成分として認可されている原料から構成されているインキ>>
次に、食品接触成分として認可されている原料から構成されているインキ(以下、「直接接触食品インキ」ともいう)について説明する。
【0026】
食品接触成分として認可されている原料は、例えば、下記に示す規制又は基準のポジティブリスト制度又はネガティブリスト制度において認可されている原料であればよい。
・欧州連合における、「欧州規制(EC)No.1935/2004(2011年10月公布、12月施行)」
・欧州連合における、「欧州規制(EC)No.10/2011(2011年1月公布、5月施行))
・スイス連邦における、「RS 817.023.21 材料及び製品に関する連邦内務省令 2005年11月23日付法令」
・ドイツ連邦共和国における、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)の「食品と接触する物質についてのBfR勧告」
・日本における、「食品衛生法(厚生省告示第370号)」
・日本における、上記「食品衛生法(厚生省告示第370号)」の一部改正により掲載された食品容器・容器包装のポジティブリスト(改正食品衛生法)
・米国における、「連邦規則の第21条(CFR21条) Part170~190」
・中華人民共和国における、「強制国家標準GB 9685-2016 「食品容器および包装材料における添加物の使用に関する衛生基準」及び「強制国家標準GB 4806.1-2016 食品接触材料および製品の一般安全要求事項」
【0027】
本発明に係る直接接触食品インキは、上記の規則又は基準を満たす原材料から構成されていれば良いが、なかでも、国際公開第2021/007422号に記載の直接食品接触インキを用いるのが好ましい。
また、市販の直接接触食品インキ(例えば、Sun Chemical社製のSunPak Organic DFC、Sun Chemical社製のSunVistro Aquasafe Food Contact Ink等)を用いてもよい。
【0028】
食品と接触可能なインキは、上述したインキ又は上述した原材料で構成されたインキであれば良いが、より高い安全性の観点から、インキを構成する全ての原材料が食品成分として認可されていることが特に好ましい。また、より高い安全性の観点から、インキを構成する原材料が、植物由来のものであり、ミネラルオイル及びビスフェノールAを含有しないことが特に好ましい。さらに、酸化によって乾燥しない観点から、インキを構成する原材料が、例えばコバルト、マンガン等の重金属をベースとした乾燥触媒を含まないことが特に好ましい。
【0029】
インキとしては、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等に使用されるインキが挙げられる。これらの印刷を利用する場合、画像形成のための食品と接触可能なインキの紙等への印刷と印刷後の紙等へのインキの固着は、エタノールのような流動性のあるインキ構成成分によって紙等への印刷を行い、被印刷体でエタノールが乾燥蒸発して食用樹脂と色素成分が印刷された紙等の表面や内部で固着乾燥することによるのが好ましい。
印刷に際しては通常の印刷物の製造方法と同じ方法なので、インキが食品と接触可能なインキであること以外は通常の印刷と変わらない。
本発明に係る印刷層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、以下に記載する従来のオフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等に使用される原材料を含有させることができる。これらの原材料においても、食品接触成分として認可されている原料から構成され、無毒性な原材料から選択され、構成されていることが好ましい。
以下、従来のオフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等に使用される印刷インキ組成物について説明する。
【0030】
[オフセット印刷]
オフセット印刷は水と油の反発を利用した印刷方式であり、印刷版は水を受容してインキを反発する部分と、水を反発しインキを受容する部分からなり、前者が非画線で、後者が画線部である。
オフセット印刷用インキは、酸化重合型オフセット印刷用インキ、熱硬化型オフセット印刷用インキ、活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキがあり、例えばオフセット印刷で使用される一般的な酸化重合型オフセット印刷インキは顔料、ワニス、植物油、有機溶剤、体質顔料、乾燥促進剤等を含む組成物からなる。
【0031】
<着色顔料>
着色顔料として例えば、イエロー顔料としては、ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー1)、ハンザイエロー等が挙げられ、マゼンタ顔料としては、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド等が挙げられる。シアン顔料としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー等が挙げられ、ブラック顔料としてはファーネスカーボンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
【0032】
<ワニス>
印刷インキ組成物に用いるワニスは少なくともロジン変性フェノール樹脂を含有し、用いるワニスは公知の方法で得ることができ、例えばロジン変性フェノール樹脂に植物油、有機溶剤を添加して加熱溶解させ、植物油成分とのエステル交換反応および/またはアルミキレーション反応を行う方法が挙げられる。ロジン変性フェノール樹脂と併用可能な他の樹脂としては、石油樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂変性アルキッド樹脂、ロジンエステル樹脂等が挙げられる。また、ワニスの製造に用いる植物油成分の種類や、エステル交換反応の温度を変更することによっても調整することができる。
【0033】
<植物油>
植物油は大豆油、亜麻仁油、米油、キリ油、ひまし油、脱水ひまし油、コーン油、サフラワー油、南洋油桐油、カノール油等の油類及びこれらの熱重合油、酸化重合油が挙げられる。また、アマニ油脂肪酸メチルエステル、アマニ油脂肪酸エチルエステル、アマニ油脂肪酸プロピルエステル、アマニ油脂肪酸ブチルエステル、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸エチルエステル、大豆油脂肪酸プロピルエステル、大豆油脂肪酸ブチルエステル、パーム油脂肪酸メチルエステル、パーム油脂肪酸エチルエステル、パーム油脂肪酸プロピルエステル、パーム油脂肪酸ブチルエステル、ひまし油脂肪酸メチルエステル、ひまし油脂肪酸エチルエステル、ひまし油脂肪酸プロピルエステル、ひまし油脂肪酸ブチルエステル、南洋油桐油のエステル、ラウリン酸イソブチルエステル、ラウリン酸n-ブチルエステル等の植物油脂肪酸エステルも同様に用いることができる。また、植物油成分として、再生植物油を使用することもできる。再生植物油とは、調理等に使用された油を回収し、再生処理された植物油のことである。
【0034】
<有機溶剤>
有機溶剤は、従来公知のものでナフテン分を主成分とする低臭・低芳香族・低毒性の溶剤を使用する。JIS K2254記載の蒸留試験によって得られる初留点が230℃以上であり、終点が350℃以下であることがよい。
【0035】
<体質顔料>
体質顔料としてはろう石クレー等のクレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ベントナイト、酸化チタン等、公知のものを1種類または2種類以上用いることができる。これらの体質顔料は、ロジン酸などにより表面処理されていてもよいし、未処理であってもよい。また、一次粒径が30nm以上150nm以下であるものが好ましい。
【0036】
<乾燥促進剤>
乾燥促進剤(ドライヤー)は、インキ塗膜の乾燥性を向上させる目的で添加されるものであり、例えば、コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛等の金属とオクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸等のカルボン酸との塩である金属石鹸類等が挙げられる。
【0037】
[フレキソ印刷、グラビア印刷]
グラビア印刷やフレキソ印刷は凸版又は凹版の印刷版を使用する印刷方式である。これらの印刷に使用される印刷インキとして、有機溶剤を主溶媒とする有機溶剤型リキッド印刷インキと、水を主溶媒とする水性リキッド印刷インキとに大別して記述する。
【0038】
<有機溶剤型リキッド印刷インキ>
有機溶剤型リキッド印刷インキは、着色剤の他、後述のバインダー樹脂、有機溶剤媒体、分散剤、消泡剤等を添加した混合物を分散機で分散し、顔料分散体を得る。得られた顔料分散体に樹脂、水性媒体、必要に応じてレベリング剤等の添加剤を加え、撹拌混合することで得られる。分散機としてはグラビア、フレキソ印刷インキの製造に一般的に使用されているビーズミル、アイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等を用いて製造される。
【0039】
有機溶剤型リキッド印刷インキのインキ粘度は、グラビアインキとして使用する場合であっても、フレキソインキとして使用する場合であっても、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
【0040】
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、バインダー樹脂、顔料、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0041】
有機溶剤型リキッド印刷インキは、紙、合成紙等の基材と密着性に優れ、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキとして有用である。
有機溶剤型リキッド印刷インキを用いてグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式から形成される印刷インキの膜厚は、例えば10μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0042】
<<バインダー樹脂>>
有機溶剤型リキッド印刷インキ用のバインダー樹脂としては特に限定なく、一般のリキッド印刷インキに使用される、ポリウレタン系樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
上記の中でも、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ダンマル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂および環化ゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むバインダー樹脂が好ましい。
バインダー樹脂の含有量は、水性リキッド印刷インキの固形分換算で固形分換算で1~50質量%の範囲であり、更に好ましくは2~40質量%である。
【0043】
<<有機溶剤>>
有機溶剤型リキッド印刷インキ用の有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらを単独または2種以上を混合しても用いることができる。
【0044】
有機溶剤型リキッド印刷インキでは更に必要に応じて、ワックス、キレート系架橋剤、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。
【0045】
<<着色剤>>
着色剤としては、食品と直接接触しても安全な観点から、一般的な天然の食用色素を用いることが好ましい。このような色素として代表的なものは、カロチノイド、クロロフィル、アントシアニン、ウコン等が挙げられる。
また、着色剤としては、一般のインキ、塗料、及び記録剤などに使用されている有機顔料及び/または無機顔料を使用してもよい。
有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。
【0046】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏などの白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカおよび/またはアルミナ処理を施されているものが好ましい。
白色以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられ、アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
前記顔料の平均粒子径は、10~200nmの範囲にあるものが好ましくより好ましくは50~150nm程度のものである。
【0047】
前記顔料は、水性リキッド印刷インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキの総質量に対して1~60質量%、インキ中の固形分質量比では10~90質量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの顔料は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0048】
<水性リキッド印刷インキ>
水性リキッド印刷インキは、着色剤の他、後述のバインダー樹脂、水性媒体、分散剤、消泡剤等を添加した混合物を分散機で分散し、顔料分散体を得る。得られた顔料分散体に樹脂、水性媒体、必要に応じてレベリング剤等の添加剤を加え、撹拌混合することで得られる。分散機としてはグラビア、フレキソ印刷インキの製造に一般的に使用されているビーズミル、アイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等を用いて製造される
水性リキッド印刷インキを、フレキソインキとして使用する場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#4を使用し25℃にて7~25秒であればよく、より好ましくは10~20秒である。また、得られたフレキソインキの25℃における表面張力は、25~50mN/mが好ましく、33~43mN/mであればより好ましい。インキの表面張力が低いほどフィルム等の基材へのインキの濡れ性は向上するが、表面張力が25mN/mを下回るとインキの濡れ広がりにより、中間調の網点部分で隣り合う網点どうしが繋がり易い傾向にあり、ドットブリッジと呼ばれる印刷面の汚れの原因と成りやすい。一方、表面張力が50mN/mを上回るとフィルム等の基材へのインキの濡れ性が低下し、ハジキの原因と成り易い。
【0049】
一方で水性リキッド印刷インキを、グラビアインキとして使用する場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#3を使用し25℃にて7~25秒であればよく、より好ましくは10~20秒である。また、得られたグラビアインキの25℃における表面張力は、フレキソインキと同様に25~50mN/mが好ましく、33~43mN/mであればより好ましい。インキの表面張力が低いほどフィルム等の基材へのインキの濡れ性は向上するが、表面張力が25mN/mを下回るとインキの濡れ広がりにより、中間調の網点部分で隣り合う網点どうしが繋がり易い傾向にあり、ドットブリッジと呼ばれる印刷面の汚れの原因と成りやすい。一方、表面張力が50mN/mを上回るとフィルム等の基材へのインキの濡れ性が低下し、ハジキの原因と成り易い。
【0050】
水性リキッド印刷インキは、紙、合成紙等の基材と密着性に優れ、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキとして有用である。
水性リキッドインキを用いてグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式から形成される印刷インキの膜厚は、例えば10μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0051】
<<バインダー樹脂>>
水性リキッド印刷インキ用のバインダー樹脂としては特に限定なく、一般の水性リキッド印刷インキに使用される、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル系重合体エマルジョン、ポリエステル系ウレタンディスパージョン、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体などのアクリル共重合体;スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体などのスチレン-アクリル酸樹脂;スチレン-マレイン酸;スチレン-無水マレイン酸;ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体;ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体;酢酸ビニル-エチレン共重合体、酢酸ビニル-脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びこれらの塩を使用することができる。これらのバインダ―樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
なかでも、前記バインダー樹脂としては、アクリル樹脂またはウレタン樹脂を使用することが、入手しやすく好ましく、特にアクリル酸エステル系重合体エマルジョン、ポリエステル系ウレタンディスパージョンが好ましい。
前記バインダー樹脂は、水性リキッド印刷インキの固形分換算で5~50質量%であることが好ましい。5質量%以上であれば、インキ塗膜強度が低下することもなく、基材密着性、耐水摩擦性等も良好に保たれる。反対に50質量%を以下であれば、着色力が低下する事が抑制でき、また高粘度となる事が避けられ、作業性が低下することもない。中でも5~40質量%であることがなお好ましく、5~20質量%であることが最も好ましい。
【0052】
<<水性媒体>>
水性リキッド印刷インキ用の水性媒体としては、例えば、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム溶剤などが挙げられる。水性媒体は、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。また、水性媒体としては、安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、または、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0053】
水性リキッド印刷インキは、その他、前述の着色剤、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。中でも耐摩擦性、滑り性等を付与するためのオレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド類及び印刷時の発泡を抑制するためのシリコン系、非シリコン系消泡剤及び顔料の濡れを向上させる各種分散剤等が有用である。
【0054】
(オーバーコーティング塗工層)
本発明の塗工紙には、オーバーコーティング塗工層が積層されており、該オーバーコーティング塗工層は、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体からなるスチレンアクリル共重合体を含有する。
本発明では、少なくとも一つのオーバーコーティング塗工層が最外層となる態様が好ましい。
【0055】
オーバーコーティング塗工層は、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(A)を含有することが好ましい。
耐油性・耐水性に優れた好適な実施形態の一例である、第1の実施形態におけるオーバーコーティング塗工層は、例えば、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンと、水性媒体とを含有するコーティング組成物(CS)により形成される。
特に耐水性に優れた好適な実施形態の一例である、第2の実施形態におけるオーバーコーティング塗工層は、例えば、水性溶剤と、スチレンアクリル系共重合体とワックスを少なくとも含有するオーバーコーティング塗工層形成用の耐水コート組成物により形成される。
【0056】
さらに、オーバーコーティング塗工層は、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとのアクリル共重合体(B)とからなるスチレンアクリル共重合体を含有してもよい。
また、上記スチレンアクリル共重合体は、コアシェル構造を有しているスチレンアクリル共重合体であることが好ましい。
【0057】
以下、耐油性・耐水性に優れた第1の実施形態におけるオーバーコーティング塗工層について説明した後、特に耐水性に優れた第2の実施形態におけるオーバーコーティング塗工層について説明する。
【0058】
[第1の実施形態におけるオーバーコーティング塗工層]
上述したように、第1の実施形態におけるオーバーコーティング塗工層は、例えば、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンと、水性媒体とを含有するコーティング組成物(CS)により形成される。実施形態に係るオーバーコーティング塗工層は、耐油性・耐水性に優れたコート層である。
【0059】
<スチレンアクリル共重合体(A)を含有するコーティング組成物(CS)>
<<スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョン>>
まず、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンについて説明する。尚、本実施形態において(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの総称を表し、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸の総称を表す。
【0060】
本実施形態において、スチレンアクリル共重合体(A)中のαメチルスチレンは、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレンのいずれかまたは混合物を表す。
【0061】
また、スチレンアクリル共重合体(A)は、上記スチレンや上記αメチルスチレン以外のスチレン誘導体(p-ジメチルシリルスチキシスチレン、p-tert-ブチルジメチルシロキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン)、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1-ジフェニルエチレンらを本実施形態の範囲を損なわない範囲において一部使用してもよい。
【0062】
(メタ)アクリレートとしては特に限定はなく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸iso-アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピル、メタクリル酸ペンタフルオロプロピル、メタクリル酸オクタフルオロペンチル、メタクリル酸ペンタデカフルオロオクチル、メタクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレンオキサイド基含有(メタ)アクリル単量体等、汎用の(メタ)アクリレートを使用することが出来る。中でも、アクリレートを有するホモポリマーがより低いガラス転移温度を呈することから好ましく、炭素原子数1~20のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましく、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましい。このような炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸iso-プロピル、アクリル酸アリル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-アミル、アクリル酸iso-アミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル等が挙げられる。
【0063】
本実施形態のスチレンアクリル共重合体(A)の構成成分として用いられる(メタ)アクリレートは、1種類であっても2種類以上であってもよいが、2種類以上の(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、中でも、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレート2種類以上を主成分として用いることが好ましい。
【0064】
スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンは、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体を更に含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体は、(メタ)アクリル酸と上記(メタ)アクリレートとの共重合体である(アクリル共重合体(B)ともいう)。上記(メタ)アクリレートとしては特に限定はないが、中でも炭素原子数1~20のアルキル基を有するアクリレートであることが好ましく、アクリレートを有するホモポリマーがより低いガラス転移温度を呈することから好ましく、炭素原子数1~20のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましく、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましい。このような炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸iso-プロピル、アクリル酸アリル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-アミル、アクリル酸iso-アミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル等が挙げられる。
【0065】
スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンは、上記スチレンアクリル共重合体(A)と上記アクリル共重合体(B)とを含有することが好ましいが、これは、乳化重合や転送乳化等の公知の水性媒体を使用する重合法で重合した上記スチレンアクリル共重合体(A)のエマルジョンと、乳化重合や転送乳化等の公知の水性媒体を使用する重合法で重合した上記アクリル共重合体(B)のエマルジョンとを適宜混合したエマルジョンであってもよいし、上記スチレンアクリル共重合体(A)と上記アクリル共重合体(B)とがコアシェル構造を形成する樹脂のエマルジョンであってもよい。なお、「スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂」は、例えば、スチレンアクリル共重合体(A)からなるコアシェル構造を形成する樹脂であってもよいし、上記スチレンアクリル共重合体(A)と上記アクリル共重合体(B)とがコアシェル構造を形成する樹脂であってもよい。
【0066】
なお、コアシェル構造とは、「スチレンアクリル共重合体(A)」が多く存在する領域と、「アクリル共重合体(B)」が多く存在する領域を有することにより、コアシェル構造を形成するものである。該コアシェル構造において、例えば、「スチレンアクリル共重合体(A)」が多く存在する領域に「アクリル共重合体(B)」が存在していてもよいし、また、これらの共重合体が互いに重合していてもよい。
【0067】
スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンは、スチレンアクリル共重合体(A)を少なくとも含む樹脂を含有し、最低造膜温度が-30℃~30℃の範囲であることが好ましく、-10~25℃の範囲がより好ましく、-5~20℃の範囲が更に好ましい。本実施形態において最低造膜温度は、合成ゴムラテックスの水分が蒸発して乾燥するとき、連続したフィルムが形成されるのに必要な最低の温度であり、温度勾配板法により得られるものである。
【0068】
スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンのガラス転移温度(以下Tgと称する場合がある)は、-40℃~30℃の範囲であることが好ましく、中でも-35~25℃の範囲が好ましく、-30~23℃の範囲がより好ましい。本実施形態においてガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0069】
また上記エマルジョンの酸価は30~80mgKOH/gの範囲であることが好ましく、中でも40~75mgKOH/gの範囲が好ましく、50~70mgKOH/gの範囲がより好ましい。本実施形態において酸価は、JIS試験方法K0070-1992に準拠した測定方法により得られるものである。
【0070】
スチレンアクリル共重合体(A)のエマルジョンを含むコーティング組成物(CS)は、ピンホール等の欠陥の無い緻密な造膜性を有するため、耐水性、耐油性に優れる。そのため、積層体の耐水性、耐油性を向上させることができる。また、コーティング組成物(CS)は接着性も有するため、ヒートシール性コート層及び/又は紙基材との接着性に優れ、また、ヒートシール性コート層の機能を損なうこともないことから、ヒートシール性コート層と組み合わせて用いた場合の相性に優れている。
【0071】
また、本実施形態の組成物はスチレンアクリル共重合体(A)を含むため、耐熱性が向上する。そのため、収容物が加熱食品などの高温の場合にも適応可能である。
【0072】
<<スチレンアクリル共重合体(A)を含有するエマルジョンの製造方法>>
本実施形態においてエマルジョンは特に限定なく公知の乳化重合や転送乳化等の公知の水性媒体を使用する重合法で重合して得ることができる。また水性媒体にポリマーが分散した形態にはエマルジョンやディスパージョン、懸濁液等様々な表現があるが本実施形態においてはエマルジョンに統一する。
【0073】
例えば水性媒体中にモノマー混合物を供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてエマルジョンを重合する。
【0074】
上記スチレンアクリル共重合体(A)のエマルジョンと、上記アクリル共重合体(B)のエマルジョンとを適宜混合したエマルジョンの場合は、それぞれのモノマー混合物を重合させたエマルジョンを混合させることで得られる。
【0075】
また、コアシェル構造を形成するエマルジョンの場合は、コアポリマーを形成するモノマー混合物を供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーを形成する工程(1)と、シェルポリマーを形成するモノマー混合物を工程(1)のコアポリマーに供給し、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーにシェルを形成する工程(2)により得られる。また、シェルポリマーを形成するモノマー混合物を供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてシェルポリマーを形成する工程(i)と、コアポリマーを形成するモノマー混合物を工程(i)のシェルポリマーに供給し、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーにシェルを形成する工程(ii)により得られる。
【0076】
開始剤としては特に限定なく、乳化重合法等で使用される過酸化物、過硫酸塩、アゾ化合物、又はレドックス系、或いはこれらの混合物を使用すればよい。過酸化物としては、例えば、過酸化水素、過酸化アンモニウム、過酸化ナトリウム、又は過酸化カリウム、t-ブチルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、及びベンゼンペルオキシドが挙げられる。また過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、又は過硫酸カリウムが挙げられる。またアゾ化合物としては、例えば、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、及び4,4’-(4-シアノバレリン酸)が挙げられる。またレドックス系は酸化剤と還元剤とから成り、酸化剤としては、例えば、先に挙げたうちの1の過酸化物、過硫酸塩、若しくはアゾ化合物、又は塩化ナトリウム若しくは塩化カリウム、又は臭化ナトリウム若しくは臭化カリウムが挙げられる。還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、グルコース、又はアンモニウム、硫酸水素ナトリウム若しくは硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム若しくは亜硫酸水素カリウム、ナトリウムチオスルフェート若しくはカリウムチオスルフェート、又は硫化ナトリウム若しくは硫化カリウム、又は鉄(II)アンモニウムスルフェートが挙げられる。中でも過硫酸塩、より好ましくは過硫酸アンモニウムが好ましい。
【0077】
上記モノマー混合物の重合は、例えば界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤等の添加剤の存在下で、例えば、界面活性剤及び連鎖移動剤の存在下で行うことができる。これらの添加剤は、工程(1)で使用する水性媒体に予め添加させておいてもよいし、工程(1)あるいは工程(2)で供給するモノマー混合物と混合させておいてもよい。
【0078】
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、二ナトリウムドデシルジフェニルオキシド、ジスルホン酸塩等が挙げられる。また連鎖移動剤としても特に限定されないが、例えば、α-メチルスチレン二量体、チオグリコール酸、亜リン酸水素ナトリウム、2-メルカプトエタノール、N-ドデシルメルカプタン、及びt-ドデシルメルカプタン等が挙げられる。キレート剤としては特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン四酢酸が挙げられる。
【0079】
コアシェル構造を形成する場合、水媒体中での安定性を高めるためには、酸性基を有する上記アクリル共重合体(B)がシェルとなることが好ましいが合成中に全ての上記アクリル共重合体(B)がシェルとなっておらず一部上記スチレンアクリル共重合体(A)がシェルとなっている構造を有するエマルジョンであっても問題ない。
【0080】
また中和が必要な場合は、中和剤としてアンモニア、トリエチルアミン、アミノメチルプロパノール、モノエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等の塩基類等を使用することができる。
【0081】
<<その他の樹脂>>
本実施形態に係るコーティング組成物(CS)は、スチレンアクリル共重合体(A)やアクリル共重合体(B)以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂の材料は特に限定されるものではないが、本実施形態に係るコーティング組成物(CS)の耐油性、耐熱性等の特性を損なわないために、スチレンアクリル共重合体であることが好ましく、上記スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂と同様の材料であることがより好ましい。また、その他の樹脂の含有量は本実施形態の効果を損なわない範囲で適宜調節可能であるが、スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂とその他の樹脂との重量比(スチレンアクリル共重合体(A)/その他の樹脂)が100/0~50/50であることが好ましく、100/0~60/40であることが好ましい。
【0082】
<<水性溶剤>>
コーティング組成物(CS)は、水を含有する。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、上記水としては、紫外線照射または過酸化水素添加等によって滅菌された水を用いることが、組成物を長期保存する場合に、カビまたはバクテリアの発生を防止することができるため好適である。中でも水を用いることが最も好ましい。
【0083】
水に溶解するアルコール類等の水溶性有機溶剤等を混合して用いてもよい。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコールなどを挙げることができる。これらのアルコール類は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0084】
<<その他の添加剤>>
コーティング組成物(CS)は、その他シリカ、アルミナ、ポリエチレンワックス、消泡剤、レベリング剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤等も配合することができる。
【0085】
コーティング組成物(CS)は、ワックスを含有してもよい。ワックスとしては、脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレン-ワックス、アマイドワックスなどのワックスを挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし併用してもよい。
【0086】
中でも脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスを使用することが好ましく、特にカルナバワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスを使用することが好ましい。
【0087】
脂肪酸アミドワックスの具体例としては、例えば、ペラルゴン酸アミド、カプリン酸アミド、ウンデシル酸アミド、ラウリン酸アミド、トリデシル酸アミド、ミリスチン酸アミド、ペンタデシル酸アミド、パルミチン酸アミド、ヘプタデシル酸アミド、ステアリン酸アミド、ノナデカン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、オレイン酸アミド、セトレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、これらの混合物及び動植物油脂脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0088】
上記カルナバワックスの具体例としてはMICROKLEAR418(Micro Powders,Inc.社製)、精製カルナバワックス1号粉末(日本ワックス株式会社)等が挙げられる。
【0089】
上記オレフィンワックスの具体例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスが挙げられ、例えばMPP-635VF(MicroPowders,Inc.)、MP-620VF XF(Micro Powders,Inc)等が挙げられる。
【0090】
上記パラフィンワックスの具体例としては、例えばMP-28C、MP-22XF、MP-28C(Micro Powders,Inc.)等が挙げられる。
【0091】
上記ワックスの配合量は、ワックス総量がコーティング組成物(CS)中の固形分100質量%全量に対し1.5~20質量%であることが好ましい。ワックス総量がコーティング組成物(CS)中の固形分100%全量に対し3質量%以上であれば耐ブロッキング性を保持できる傾向にあり、ワックス総量がコーティング組成物(CS)の固形分100%全量に対し15質量%以下であればヒートシール性が保持できる傾向にある。
【0092】
また、ワックスの融点は、耐油性、耐熱性の観点から、80℃~130℃の範囲であることが好ましい。上記ワックスは、スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂のエマルジョンに直接添加し混合分散させてもよいし、ワックスの分散体を作製した後、エマルジョンと混合させてもよい。分散方法としては、公知の方法、例えばメディアを用いた分散装置として、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル等を使用することができ、メディアを用いないものとして超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等で分散することができる。
【0093】
粉体のワックスを使用する場合は、ワックスを均一分散させるために、メディアを用いて練肉を行ったり、ワックスの分散体を作製した後配合を行ったりすることが好ましい。
練肉方法は公知の方法で行うことができる。
【0094】
また複数種のワックスを併用する際には、複数種のワックスを同時に添加してもよいし、複数の工程に分けて添加してもよい。
【0095】
また、コーティング組成物(CS)は、各種コーターを使用してコーティングする際に組成物が泡立つことを防止するため、ポリマー系消泡剤、シリコン系消泡剤、フッ素系消泡剤が好ましく使用される。これら消泡剤としては乳化分散型及び可溶化型などいずれも使用できる。中でもポリマー系消泡剤が好ましい。
【0096】
上記消泡剤の添加量としては、コーティング組成物(CS)は全量の0.005重量%~0.1重量%が好ましい。
【0097】
[第2の実施形態におけるオーバーコーティング塗工層]
上述したように、第2の実施形態におけるオーバーコーティング塗工層は、例えば、水性溶剤と、スチレンアクリル系共重合体とワックスを少なくとも含有するオーバーコーティング塗工層形成用の耐水コート組成物により形成される。本実施形態に係るオーバーコーティング塗工層は、特に耐水性に優れたコート層である。
【0098】
<水性溶剤>
水性溶剤としては、上記<スチレンアクリル共重合体(A)を含有するコーティング組成物(CS)>の欄の上記<<水性溶剤>>に記載した水性溶剤と同様のものを用いることができる。
【0099】
<スチレンアクリル系共重合体>
スチレンアクリル系共重合体は、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体からなる共重合体であるか、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体、及びスチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体からなる共重合体であることが好ましい。
また、上記スチレンアクリル系共重合体は、コアシェル構造を有しているスチレンアクリル系共重合体であることがより好ましい。
【0100】
スチレンアクリル共重合体の構成成分として用いられるスチレン類及び(メタ)アクリレートは、上述したオーバーコーティング塗工層におけるスチレンアクリル共重合体(A)に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0101】
スチレンアクリル共重合体の構成成分として、スチレン類、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸以外の他の公知の重合性化合物を含有していてもよい。
【0102】
耐水コート組成物に含有されるスチレンアクリル系共重合体(A)中には、後述するワックスを含有することが好ましい。スチレンアクリル系共重合体(A)中にワックスを含有することにより、耐水性をより向上させることができる。ワックスは、コア部に存在していてもシェル部に存在していてもよい。スチレンアクリル系共重合体の表面に存在していてもよい。
【0103】
耐水コート組成物に含有されるスチレンアクリル系共重合体(A)において、「スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体」と「スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体」の割合は、質量比で20:80~95:5の範囲が好ましく、30:70~92:8の範囲がより好ましく、40:60~90:10の範囲が最も好ましい。
【0104】
スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体において、スチレン類と(メタ)アクリレートの割合は、質量比で20:80~80:20の範囲が好ましく、30:70~70:30の範囲がより好ましく、40:60~60:40の範囲が最も好ましい。
【0105】
スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体において、スチレン類の割合は10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であること最もが好ましい。また、スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体において、(メタ)アクリレートの割合は10~80質量%であることが好ましく、15~70質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることが最も好ましい。また、スチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体において、(メタ)アクリル酸の割合は10~70質量%であることが好ましく、15~60質量%であることがより好ましく、20~50質量%であることが最も好ましい。
【0106】
スチレンアクリル共重合体(A)において、スチレン類、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸以外の他の公知の重合性化合物を含有する場合は、スチレンアクリル共重合体(A)における他の重合性化合物の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが好ましい。
【0107】
スチレンアクリル共重合体(A)のガラス転移温度(以下Tgと称する場合がある)は、-30℃~10℃の範囲であり、好ましくは-25℃~5℃の範囲であり、より好ましくは-20℃~0℃の範囲である。本実施形態においてガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0108】
スチレンアクリル共重合体は公知の方法により製造することができる。中でも、スチレンアクリル共重合体は、モノマー混合物の重合をワックスの存在下で行うことが好ましい。つまり、ワックスを水性媒体に予め添加させておくか、又はモノマー混合物と混合させておくことにより、スチレンアクリル共重合体中にワックスがとりこまれた状態のコアシェル構造が形成できる。
【0109】
<ワックス>
耐水コート組成物は、ワックスをさらに含有することにより、耐水性をより向上させることができる。ワックスは、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレン ワックス、アマイドワックスから選ばれる少なくとも一つ以上のワックスが好ましく、パラフィンワックス又はマイクロクリスタリンワックスがより好ましい。これらは単独で使用してもよいし併用してもよい。
【0110】
ワックスの融点は、30℃~130℃の範囲であることが好ましく、50℃~100℃の範囲であることがより好ましい。ワックスの配合量は、スチレンアクリル共重合体100質量%に対して0.5~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることが好ましい。
【0111】
ワックスは、耐水コート組成物中に分散して存在していればよいが、上述のように、スチレンアクリル共重合体のコア部及び/又はシェル部に存在することにより、スチレンアクリル共重合体と一体化して存在することが好ましい。耐水コート組成物において、ワックスが、スチレンアクリル共重合体中に含まれる形で存在するものと、スチレンアクリル共重合体中に含まれずに存在するものとが混在していてもよい。
【0112】
<その他の添加剤>
耐水コート組成物は、本実施形態の目的を阻害しない範囲において、上述した成分の他に、更に、シリカ、アルミナ、ワックス、消泡剤、レベリング剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤等の添加剤が配合されていてもよい。また、スチレンアクリル系共重合体以外の他の樹脂が配合されていてもよい。中でも、レベリング剤及び/又はワックスが更に配合されていることが好ましい。
【0113】
(紙基材)
本発明の塗工紙に積層されている紙基材としては、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。
製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。また、市販の各種上質紙やコート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。
【0114】
上記紙基材は、目的に応じ紙の種類、厚み等を逐次選択する事ができる。例えばバーガーラップであれば米坪対応20グラム/m2程度、紙カップであれば米坪対応200~300グラム/m2、紙皿、紙スプーン、紙マドラー等であれば米坪対応50~500グラム/m2のカップ原紙等の食品用原紙が好ましい。これらの用紙は、リサイクル効率やコスト低減の観点から、ポリエチレン-フィルムやアルミ等をラミネートされていないことが好ましい。
【0115】
本発明の塗工紙は、上述した紙基材、印刷層、オーバーコーティング塗工層の他に、以下に記載するプライマー層(アンカー層)や、ヒートシール層をさらに積層させてもよい。
【0116】
(ヒートシール層)
本発明の塗工紙には、ヒートシール層が積層されていてもよい。
ヒートシール層は、ヒートシール剤を含有するコート層をいう。該ヒートシール層は、公知のヒートシール塗工剤(ヒートシール剤(HS)ともいう)を用いて形成することができる。
以下、ヒートシール剤の組成例を説明する。
【0117】
<ヒートシール剤(HS)>
ヒートシール剤(HS)は、耐水性を向上させるために、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体系樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0118】
塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであれば、特段限定されない。ヒートシール性を向上させる観点から、酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体であることが好ましく、酸変性された塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂がより好ましい。酸基としてはマレイン酸、もしくはフマル酸を使用したものが好ましい。
【0119】
(メタ)アクリレート系樹脂としては、(メタ)アクリレートの単独重合体もしくは共重合体であれば特に制限は無く、共重合体としては(メタ)アクリレートと共重合しうるビニルモノマーとを共重合させた共重合体があげられる。また、水性溶剤を用いる場合は水分散性や水溶性を付与する目的から酸価を有する共重合体であることが好ましい。
【0120】
(メタ)アクリレートの単独重合体もしくは共重合体の構成成分として用いられる(メタ)アクリレートとしては特に限定はなく、上述したスチレンアクリル共重合体(A)において用いられる(メタ)アクリレートと同様のものが用いられる。
【0121】
また、(メタ)アクリレートや(メタ)アクリレートと共重合しうるビニルモノマーの例としては、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2-ヒドロドキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルキルポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート等のフッ素系(メタ)アクリレート;スチレン、スチレン誘導体(p-ジメチルシリルスチレン、(p-ビニルフェニル)メチルスルフィド、p-ヘキシニルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルジメチルシロキシスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン等)、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1-ジフェニルエチレン等の芳香族ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートトリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリレート;2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、ナフチルビニルピリジン等のビニルピリジン化合物;1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン等の共役ジエンなどが挙げられる。これらのモノマーは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0122】
また、カルボキシル基及びカルボキシル基が塩基性化合物によって中和されたカルボキシレート基からなる群より選ばれる1種以上の酸性基を導入することを目的として、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合させることで、酸価を有するコポリマーを得ることができる。
【0123】
酸性基を導入する場合は、酸価が所望の範囲となるようにモノマー量を適宜調整することが好ましい。
【0124】
(メタ)アクリレートの単独重合体もしくは共重合体は、例えば、重合開始剤の存在下、50℃~180℃の温度領域で1種又は2種以上のモノマーを重合させることにより製造することができ、80℃~150℃の温度領域であればより好ましい。重合の方法は、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。また、重合様式は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。また、コポリマーはコアシェル型であってもよい。
【0125】
オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体系樹脂としては、オレフィンと、α,β-不飽和カルボン酸、α,β-不飽和カルボン酸の金属塩、及び、α,β-不飽和カルボン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーとの共重合体等が挙げられる。具体的には、α,β-不飽和カルボン酸、α,β-不飽和カルボン酸の金属塩又はα,β-不飽和カルボン酸エステルとオレフィンとの共重合体であり、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸-無水マレイン酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体、エチレン-メタクリル酸-無水マレイン酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体、及びこれらの金属塩等が挙げられる。これらの共重合体は、単独であっても2種以上の混合物であってもよい。
【0126】
中でも、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体が好ましい。オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレンとα,β-不飽和カルボン酸のランダム共重合体またはブロック共重合体が挙げられる。
【0127】
上記オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン、ブタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなどが挙げられる。中でもエチレンが好ましい。
上記α,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。これらのα,β-不飽和カルボン酸は、単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。
【0128】
上記α,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、特に限定なく公知のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、アルコキシアルキルエステル等を使用することができる。例えば具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸nオクチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-メトキシエチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸nプロピル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nへキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸nラウリル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-エトキシエチルなどのメタクリル酸エステルを例示することができる。これらは1種又は2種以上組合せて使用することができる。
【0129】
上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体の製造方法としては、公知の方法、例えば高温、高圧下のラジカル共重合により得ることができる。
【0130】
上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体中のα,β-不飽和カルボン酸の含有量は、8~24重量%、好ましくは18~23重量%であることが望ましい。α,β-不飽和カルボン酸の含有量が8重量%未満の場合、エチレン-単位に由来する非極性な性質のために水系分散媒に対する分散性に劣り、優れたオレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体樹脂水性分散液を得ることが難しくなるおそれがある。また、α,β-不飽和カルボン酸の含有量が24重量%を超える場合、得られた皮膜の耐ブロッキング性が悪くなるおそれがある。
【0131】
ヒートシール剤において使用するオレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体は、水性溶剤に分散させた水分散体として使用することが好ましい。水性溶剤に分散させる方法としては特に限定されず公知の方法で行えばよい。例えば界面活性剤で乳化し水性溶剤中に分散させる方法や、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体を塩基性化合物で中和したのち水性溶剤中に分散させる方法等が挙げられる。
【0132】
上記乳化させる際に使用する界面活性剤としては、公知の各種アニオン性、カチオン性、ノニオン性界面活性剤、もしくは各種水溶性高分子を適宜併用して使用することができる。
【0133】
また上記中和する際に使用する塩基性化合物としては、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。これらの塩基性化合物は単独、あるいは2種以上併用して用いてもよい。
【0134】
塩基性化合物による中和度は、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体が水性溶媒中で安定に存在する中和度であればよい。例えば該共重合体のカルボキシル基の30~100モル%であればよく、より好ましくは40~90モル%であることが望ましい。
【0135】
上記分散方法としては、公知の方法、例えばメディアを用いた分散装置として、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル等を使用することができ、メディアを用いないものとして超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等で分散することができる。
【0136】
本発明で使用するオレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体の水分散体の固形分は特に限定はなく、ヒートシール剤として適用させる際の所望される粘度や、ヒートシール剤適用後の乾燥条件、皮膜の膜厚等により適宜決定すればよい。一般には、固形分濃度が10~40質量%の範囲で適用することが多い。
【0137】
<溶剤>
ヒートシール剤(HS)は、塗布性能をあげるために、上述した樹脂を各種有機溶剤又は水性溶剤に溶解して使用することが好ましい。例えば、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂を使用する場合は、有機溶剤を用いることが好ましい。
【0138】
有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系、溶解性の良好な有機溶剤として、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤の各種有機溶剤が挙げられる。これらのうち通常は乾燥速度が速いトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチルや、これらの混合物を使用するのが好ましい。
【0139】
(メタ)アクリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いる場合は、水性溶剤を用いることが好ましい。水性溶剤としては、上述のコーティング組成物(CS)において用いられる水性溶剤と同様のものを用いることができる。中でも、水を用いることが好ましい。
【0140】
<ワックス>
ヒートシール剤(HS)は、ワックスを含有することが好ましい。ワックスを含有することで耐ブロッキング性を保つことができる。上記ワックスとしては、脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレン-ワックス、アマイドワックスなどのワックス、ヤシ油脂肪酸や大豆油脂肪酸などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし併用してもよい。
【0141】
中でも脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスを使用することが好ましく、特に脂肪酸アミドワックス、カルナバワックスを使用することが好ましい。
【0142】
脂肪酸アミドワックスの具体例としては、例えば、ペラルゴン酸アミド、カプリン酸アミド、ウンデシル酸アミド、ラウリン酸アミド、トリデシル酸アミド、ミリスチン酸アミド、ペンタデシル酸アミド、パルミチン酸アミド、ヘプタデシル酸アミド、ステアリン酸アミド、ノナデカン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、オレイン酸アミド、セトレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、これらの混合物及び動植物油脂脂肪酸アミド等が挙げられる。
上記カルバナワックスの具体例としてはMICROKLEAR 418(Micro Powders,Inc.社製)、精製カルナバワックス1号粉末(日本ワックス株式会社等が挙げられる。
【0143】
上記ワックスの配合量は、ワックスの総量がヒートシール剤(HS)の固形分100質量%全量に対し1.5~20質量%であることが好ましい。ワックスの総量がヒートシール剤(HS)の固形分100%全量に対し3質量%以上であれば耐ブロッキング性を保持できる傾向にあり、ワックスの総量がヒートシール剤(HS)の固形分100%全量に対し15質量%以下であればヒートシール性が保持できる傾向にある。
【0144】
上記ワックスのうち、上記脂肪酸アミドワックスと上記カルナバワックスとを併用すると、耐ブロッキング性が更に向上しより好ましい。併用する場合、その比率には特に限定はないが好ましくは、脂肪酸アミドワックス:カルバナワックス=1:1~1:10の範囲が好ましく、1:1~1:5の範囲がなお好ましい。
【0145】
また、上記ワックスのうち、ポリオレフィンワックスとパラフィンワックスとを併用すると、耐ブロッキング性が更に向上しより好ましい。併用する場合、その比率には特に限定はないが好ましくは、ポリオレフィンワックス:パラフィンワックス=1:1~10:1の範囲が好ましく、1:1~5:1の範囲がなお好ましい。
【0146】
水性溶剤を使用する場合にワックスを更に用いることが好ましく、中でも、上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体、又は(メタ)アクリル系樹脂と組み合わせて用いることが好ましい。この場合、ワックスはオレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体又は(メタ)アクリル樹脂の水分散体に直接添加し混合分散させてもよいし、上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体又は(メタ)アクリル樹脂を水性溶剤に分散させる際に同時に添加し混合分散させてもよい。分散方法は上述の上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体の水性溶剤への分散方法で使用する方法を適宜用いることができる。
【0147】
また複数種のワックスを併用する際には、複数種のワックスを同時に添加してもよいし、複数の工程に分けて添加してもよい。例えば第一のワックスを上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体又は(メタ)アクリル樹脂の水性溶剤に分散させる際に加えた後、第二のワックスを、得られた第一のワックスと上記オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体又は(メタ)アクリル樹脂との水性分散液に更に追加する方法で、ヒートシール剤(HS)を得ることができる。
【0148】
ヒートシール剤(HS)は、本発明の目的を阻害しない範囲において上記成分の他に、シリカ、アルミナ、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤、酸化防止剤、シリコーンオイル等の添加剤が配合されていてもよい。
【0149】
また、ヒートシール剤(HS)では、各種コーターを使用してコーティングする際に泡立つことを防止するため、ポリマー系消泡剤、シリコン系消泡剤、フッ素系消泡剤が好ましく使用される。これら消泡剤としては乳化分散型及び可溶化型などいずれも使用できる。中でもポリマー系消泡剤が好ましい。上記消泡剤の添加量としては、水性ヒートシール剤全量の0.005重量%~0.1重量%が好ましい。
【0150】
ヒートシール剤(HS)は、袋、箱等の紙包装材や紙容器を製造する際のヒートシール剤として使用することができるし、シール(接着)部位以外の塗工部分は、スチレンアクリル共重合体を含有するオーバーコーティング塗工層との積層により、積層体の耐水性をより向上させることができる。ヒートシール部分を貼り合わせることにより、袋、箱、容器等の種々の包装材を用途に合わせて作製でき、加工性に優れている。
【0151】
(塗工紙の特性)
本発明の塗工紙において、オーバーコーティング塗工層の塗布量は、0.5~10.0g/m2であり、1.0~5.0g/m2であることがより好ましい。
本発明の塗工紙において、オーバーコーティング塗工層の塗布量は、1~10g/m2であり、1~5g/m2であることがより好ましい。
本発明の塗工紙において、ヒートシール層の塗布量は、0.5~12g/m2であることが好ましく、2.0~8.0g/m2であることがより好ましい。
【0152】
(塗工紙の製造方法)
本発明の塗工性の製造方法は、印刷層を形成する工程と、オーバーコーティング塗工層を形成する工程とを、連続したインライン方式で印刷する事ができる。これにより、マイグレーションを制御した塗工紙を得ることができる。
また、本発明の塗工性の製造方法は、印刷層を形成する工程と、オーバーコーティング塗工層を形成する工程とをオフラインで印刷してもよい。
本発明の塗工紙は、例えば、紙基材上の一方の面に、印刷を施し(プライマー層を積層させる場合には、プライマー層を塗布した後、印刷層を形成し)、形成した印刷層上に、インライン方式でオーバーコー層を塗布することにより形成することができる。
【0153】
また、本発明の塗工紙が、ヒートシール層を有する場合、例えば、紙基材上の他方の面に、ヒートシール層を塗布することにより形成することができる。
【0154】
塗工用の組成物を、紙基材やその他各層上に塗布する場合の方法としては、コンマコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、リバースグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、ロールキスコーター、リバースキスコーター、キスグラビアコーター、リバースキスグラビアコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、リップコーター、ディップコーター、ブレードコーター、ブラシコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、フレキソコーター、含浸コーター、キャストコーター、スプレイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等のいずれかもしくは二つ以上の塗工方法を組み合わせて用いることができる。
【0155】
また、紙基材、又は紙基材やその他の層を含む積層体を、組成物中に含浸させることにより、紙基材、又は紙基材を含む積層体上に積層させたい塗布層を設けてもよい。また塗工後オーブン等で乾燥工程を設けてもよい。
【0156】
[包装体又は容器]
本発明の塗工紙は、箱、袋、容器等に加工することができ、包装体または容器として用いることができる。
【0157】
包装体は、例えば、パッケージ用の袋、紙袋、紙箱、段ボール、ラップ紙、封筒、カップスリーブ、蓋等が挙げられる。容器としては、紙容器、紙皿、トレイ、カップホルダー、紙カップ等が挙げられる。本発明の塗工紙は、耐水性、耐油性に優れていることから、耐水性・耐油性を必要とする食品、肥料等の包装材に利用することが好ましい。また、本発明の塗工紙は、水蒸気バリア性、ガスバリア性に優れていることから、水蒸気バリア性、ガスバリア性を必要とする食品、肥料等の包装材に利用することが好ましい。
例えば、カップ麺、アイスクリーム、プリン、ゼリー等のデザート用のカップ又は蓋、菓子、穀類、豆類、粉体、ペット用のフード、肥料等を収容する袋又は箱、ハンバーガーやホットドックのラップ紙、ピザ等の持ち帰り用容器、から揚げやポテト等のホットスナック用容器、納豆等の総菜を対象とするカップ類等の食品用紙容器又包装材や、洗剤、サニタリー用品をはじめとする衛生品用の袋又は箱等が挙げられる。
【0158】
例えば、本発明の塗工紙を用いて紙カップを作製する場合、容器内面及び容器を組み立てる際の貼り合わせ部にヒートシール層を設けて接着するとよい。すなわち、紙カップは、本発明の塗工紙を丸めて重ね合わせた両端部の貼り合わせ面を接着した胴部材(1)と、上記胴部材(1)の下端に接着された板状の底部材(2)とを有し、接着部に設けられたヒートシール層はヒートシール機能により接着し、接着部以外の部分に設けられたヒートシール層やオーバーコーティング塗工層は耐水性、耐油性の機能を発揮できる。接着部以外の部分に設けられたヒートシール層やオーバーコーティング塗工層は、人体及び環境安全性が高いことから、食品と直接接して収容することも可能である。更に、紙カップの外側にオーバーコーティング塗工層として耐水性に優れたコート層を設けることにより、長時間使用した場合にも優れた耐水性を得られる。
【0159】
同様に、紙箱、紙袋等も本発明の塗工紙を用いてヒートシールすることにより製造できる。
【0160】
ヒートシールの具体的な方法として、塗工紙の2つの部位のうち、少なくとも片方の部位(両方の部位であってもよい)に、ヒートシール層を配し、2つの部位を重ね合わせて加熱により軟化させる方法が好ましい。ヒートシール剤はバーナーや熱風で加熱することにより容易に軟化し紙同士または紙と他素材とを接着させることができ、その後冷却することで接着部分が固化し紙同士または紙と他素材とを強固にシールすることができる。
なお、本発明の塗工紙における各種層の積層順番としては、上述したように好ましいパターンがいくつかあるため、ヒートシール層とヒートシール層との重ね合わせや、ヒートシール層とオーバーコーティング塗工層とを重ね合わせてヒートシールするだけでなく、紙基材とオーバーコーティング塗工層とを重ね合わせてヒートシールしたり、オーバーコーティング塗工層とオーバーコーティング塗工層とを重ね合わせてヒートシールしてもよい。ヒートシール層を設けてヒートシールする場合に比べるとヒートシール層を設けずこれらの層をヒートシールする場合は、シール性は若干劣るが、本発明の組成のオーバーコーティング塗工層を用いてヒートシールするため、良好なシール性を確保することができる。
【0161】
上記加熱方法としては、バーナー等の熱源、熱風、電熱、赤外線、電子線等の従来公知の手段を用いる事ができるが、具体的にはバーナーや熱風で加熱する方法や、成形の形によっては熱溶着シール法や超音波シール法、あるいは高周波シール法が好ましい。この時の加熱温度は200~500℃、加熱時間は0.1~3秒が好ましい。
【0162】
また、ヒートシール剤(HS)は、ヒートシールバー等の直接熱源と接触させて溶融化させる方法以外に、非接触の加熱であっても容易に加熱軟化し、且つ、熱源から離れてもある程度の時間ヒートシール機能が持続する。本発明の塗工紙は、紙基材を使用するため、直接熱源と接触させると紙が焦げる可能性があるが本発明のヒートシール剤は非接触の加熱でヒートシール機能が発現し且つその機能が持続することから、高速のラインスピードが要求される紙容器の工業生産向けヒートシール剤として特に有用である。
【0163】
ヒートシール剤(HS)を塗工し該塗工部位を加熱軟化させた後、該塗工部位と、もう1つの部位とを重ね合わせた状態で圧着させることにより、ヒートシール剤として使用できる。圧着方法としては特に限定なく、熱板方式、超音波シール、高周波シールの方法で行うことができる。
【実施例0164】
以下に、本発明の内容および効果を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
以下の実施例中の「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0165】
(スチレンアクリル共重合体(A)を含有するコーティング組成物(CS)の調整)
窒素ガス置換した四つ口フラスコに、イソプロピルアルコールを100部仕込み、温度を80~82℃に上げた後、滴下ロートに仕込んだミリスチルアクリレート1部、スチレン30部、アクリル酸10部、メチルメタクリレート5部、過酸化ベンゾイル1部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過酸化ベンゾイル0.5部を追加し、更に2時間反応させた。温度を40℃に下げ、ジメチルエタノールアミン、イオン交換水を添加した。その後、反応フラスコの温度を80~82℃に上げ、ストリッピングを行ない、最終的に固形分30%の水溶性樹脂を得た。
【0166】
上記で得た水溶性樹脂に、イオン交換水10部を反応フラスコに仕込み、温度を80℃~82℃に上げた後、過硫酸カリウムを2部添加し、スチレン15部、αメチルスチレン5部、2-エチルヘキシルアクリレート24部、ブチルアクリレート10部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過硫酸カリウム0.2部を添加し、2時間反応させた。このようにして得られたアクリルエマルジョン(樹脂1)の固形分は40%であり、最低造膜温度は1℃、ガラス転移点は-27℃、固形分の酸価は64mgKOH/gであった。
【0167】
上記アクリルエマルジョン(樹脂1)を85部、ポリマー系消泡剤0.03部、及びイオン交換水14.97部の合計100部を25℃にて15分間、ディスパーにて十分撹拌しコーティング組成物(CS1)を作製した。
【0168】
(スチレンアクリル共重合体(B)の調整)
<製造例1>
窒素ガス置換した四つ口フラスコに、イソプロピルアルコールを100部仕込み、温度を80~82℃に上げた後、滴下ロートに仕込んだスチレン30部、2-エチルヘキシルアクリレート15部、(メタ)アクリル酸20部、メチルメタクリレート5部、過酸化ベンゾイル1部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過酸化ベンゾイル0.5部を追加し、更に2時間反応させた。温度を40℃に下げ、ジメチルエタノールアミン、イオン交換水を添加した。その後、反応フラスコの温度を80~82℃に上げ、ストリッピングを行ない、最終的に固形分30%の水溶性樹脂を得た。
上記で得た水溶性樹脂に、ワックス類(W2)としてパラフィンワックス(パラフィンワックス155、日本精蝋株式会社製)を2質量部を仕込み、撹拌してワックス分散体を作製した。続いて、ワックス分散体に、イオン交換水10部を反応フラスコに仕込み、温度を80℃~82℃に上げた後、過硫酸カリウムを2部添加し、スチレン30部、2-エチルヘキシルアクリレート24部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過硫酸カリウム0.2部を添加し、2時間反応させた。このようにして得られたスチレンアクリル系共重合体の水分散体(B-1)の固形分は35%であり、ガラス転移点は-10℃であった。
【0169】
<製造例2>
スチレンアクリル系共重合体(B-1)の合成において、パラフィンワックスの代わりにマイクロクリスタリンワックス(Hi-Mic-1080、日本精蝋株式会社製)を添加した以外はスチレンアクリル系共重合体(B-1)の合成と同様にして、スチレンアクリル系共重合体の水分散体(B-2)を得た。水分散体(B-2)の固形分は35%であり、ガラス転移点は-10℃であった。
【0170】
<製造例3>
スチレンアクリル系共重合体(B)として、スチレン類と(メタ)アクリレートとの共重合体、及びスチレン類と(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体がコアシェル構造を形成し、ガラス転移温度が-30℃~10℃の範囲である市販のスチレンアクリル系共重合体の水分散体(B-3)を用いた。水分散体(B-3)の固形分は40%であり、ガラス転移点は-21℃であった。
【0171】
(塗工紙(積層体)の作製)
<実施例1>
紙基材(パールカード 三菱製紙 260g)を準備し、紙基材の一方の面に、オフセット印刷機で印刷層を施した。印刷層の印刷インキは、Sun Chemical社製のSunPak DirectFood Plusを用いた。
その後、印刷層上にオーバーコーティング塗工層を以下のようにして塗布した。上記の水分散体(B-1)を使用し、表1の組成に従って混合した組成物をディスパーにて十分撹拌しオーバーコーティング塗工層用組成物を調整した。該オーバーコーティング塗工層用組成物を、膜厚の厚みが5g/m2になるように塗布し、乾燥機を用いて60℃にて乾燥させた。
このようにして、実施例1の塗工紙を作製した。
【0172】
<実施例2~4>
実施例1において、上記の水分散体(B-1)を、表1に記載するように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4の塗工紙を作製した。
【0173】
<実施例5>
実施例1において、上記の水分散体(B-1)の代わりに、上記のコーティング組成物(CS1)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の塗工紙を作成した。
【0174】
【表1】
表中のワックス(W3)は、ケミパールW-400(三井化学(株)製)を使用した。
また、表中のレベリング剤は、サーフィノール420(日信化学工業(株)製)を使用した。
【0175】
実施例1~5の本発明の塗工紙は、耐油性、耐水性、及び安全性の全てに優れた塗工紙であった。