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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096914
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】切替開閉器
(51)【国際特許分類】
   H01H 19/10 20060101AFI20230630BHJP
   H01H 19/56 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H01H19/10 A
H01H19/56 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212973
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑太
【テーマコード(参考)】
5G219
【Fターム(参考)】
5G219GS33
5G219HT02
5G219HU02
5G219JU05
5G219KU41
5G219KW34
(57)【要約】
【課題】 1つの切替開閉器で特定の電路の接続先を3つ以上の電路の何れかに切り替えて接続できる切替開閉器を提供する。
【解決手段】 固定接点2aは、所定の径の円の周上に外方に向けて配置される一方、可動接点aは、外方から任意の固定接点2aに接触するよう、円の中心に設けた軸棒7から一定の距離で移動可能に配置され、軸棒7には、ハンドル4aを備えると共に可動接点3aを先端に備えた可動接触子3の基部が連結されて可動接点3aの移動を実施するハンドル部材4が軸支されて成り、ハンドル4aの回動操作で、可動接点3aが円の円周に沿って移動して、接触する固定接点2aを変更して電路の切り替えが行われる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の対を成して設けられた固定接点と、1対の可動接点と、前記可動接点を接続する前記固定接点を切り替えるハンドルとを有し、特定の電路の接続先を複数の電路の間で切り替える切替開閉器であって、
前記固定接点は、所定の径の円の周上に外方に向けて配置される一方、
前記可動接点は、外方から任意の前記固定接点に接触するよう、前記円の中心に設けた軸棒から一定の距離で円周方向へ移動可能に配置され、
前記軸棒には、前記ハンドルを備えると共に前記可動接点を先端に備えた可動接触子の基部が連結されて前記可動接点の移動を実施するハンドル部材が軸支されて成り、
前記ハンドルの回動操作で、前記可動接点が前記円の円周に沿って移動して、接触する前記固定接点を変更して電路の切り替えが行われることを特徴とする切替開閉器。
【請求項2】
前記軸棒には、前記可動接触子の途中に係合して、前記可動接点の前記固定接点への接続/解離を案内するガイド部材が配置され、
前記ハンドルの操作で前記可動接触子が移動操作された際に、前記可動接点が前記ガイド部材の作用で、前記円の径方向の移動を伴うことを特徴とする請求項1記載の切替開閉器。
【請求項3】
隣接する前記固定接点の間に、電路が接続されていないダミー接点が配置され、
前記可動接点の切替操作が成されると、前記固定接点と解離した前記可動接点は、まず前記ダミー接点に接続され、更に切替操作が継続されると前記ダミー接点と解離して隣接する前記固定接点に接続されることを特徴とする請求項1又は2記載の切替開閉器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の電路の接続先を変更する切替開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特定の電路の接続先を2系統の電路の何れかに切り替える切替開閉器がある。
例えば、特許文献1では、操作ハンドルを前方或いは後方に傾倒して特定の電路へ接続する電路を切り替え、操作ハンドルを起立させた状態では、何れにも接続されないオフ状態を形成した切替装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-216098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の切替開閉器は、上述したように2つの電路を選択して特定の電路と接続する機能を備えているが、特定の電路の接続先を3つの電路から選択する場合は、そのような切替開閉器は存在しなかった。
一方で、近年のSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の重要性が認識されてきており、電力供給業者の電力に加えて、状況に応じて負荷の電源を太陽光発電や蓄電池等の複数の分散電源の何れかに容易に切り替えできる切替開閉器の要望がある。
しかしながら上述したように、特定の電路の接側先を、3つ以上の電路から選択して何れかに接続できる切替開閉器は存在しない。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、1つの切替開閉器で特定の電路の接続先を3つ以上の電路の何れかに切り替えできる切替開閉器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、複数の対を成して設けられた固定接点と、1対の可動接点と、可動接点を接続する固定接点を切り替えるハンドルとを有し、特定の電路の接続先を複数の電路の間で切り替える切替開閉器であって、固定接点は、所定の径の円の周上に外方に向けて配置される一方、可動接点は、外方から任意の固定接点に接触するよう、円の中心に設けた軸棒から一定の距離で円周方向へ移動可能に配置され、軸棒には、ハンドルを備えると共に可動接点を先端に備えた可動接触子の基部が連結されて可動接点の移動を実施するハンドル部材が軸支されて成り、ハンドルの回動操作で、可動接点が円の円周に沿って移動して、接触する固定接点を変更して電路の切り替えが行われることを特徴とする。
この構成によれば、固定接点が円の周上に配置され、その周囲に可動接点を配置して円周に沿って移動させて切替動作するため、固定接点が3組或いはそれ以上であっても容易に切り替えできる。また、固定接点の数が増加しても同様の構成で切替を実施でき拡張性がある。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、軸棒には、可動接触子の途中に係合して、可動接点の固定接点への接続/解離を案内するガイド部材が配置され、ハンドルの操作で可動接触子が移動操作された際に、可動接点がガイド部材の作用で、円の径方向の移動を伴うことを特徴とする。
この構成によれば、ガイド部材の作用で可動接点が固定接点に対する接触/解離動作を行うため、確実な接触/解離動作を実施できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、隣接する固定接点の間に、電路が接続されていないダミー接点が配置され、可動接点の切替操作が成されると、固定接点と解離した可動接点は、まずダミー接点に接続され、更に切替操作が継続されるとダミー接点と解離して隣接する固定接点に接続されることを特徴とする。
この構成によれば、何れの電路にも接続されないオフ状態を容易に形成でき、電路のメンテナンス等をし易い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固定接点が円の周上に配置され、その周囲に可動接点を配置して円周に沿って移動させて切替動作するため、固定接点が3組或いはそれ以上であっても容易に切り替えできる。また、固定接点の数が増加しても同様の構成で切替を実施でき拡張性がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る切替開閉器の一例を示す説明図であり、ハンドル部材を分離した主要部の斜視図を示している。
図2図1の分離状態を下方から見た斜視図である。
図3】ガイド部材の説明図であり、接点同士が接触した状態を示している。
図4】ガイド部材の説明図であり、接点同士が解離した状態を示している。
図5】オン状態の説明図である。
図6】切替機構部の平面説明図である。
図7】切替開閉器の使用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1,2は本発明に係る切替開閉器の一例を示す説明図で、主要部である切替機構部を示している。何れもハンドル部材を分離した状態を示し、図1,2は斜視図であり、角度を変えた方向から見た状態を示している。
切替開閉器1は、個々の電路を接続する接続端子を備えたハウジング(図示せず)に図に示す切替機構部1aを収容して構成されている。尚、ここでは3つの電路を切り替えて特定の電路と接続する構成を示しており、ハウジングには全4電路の接続端子が配置されている。
【0012】
図において、2は固定接点2aを備えた固定接触子、3は可動接点3aを備えた可動接触子、4は切替操作するハンドル4aを備えたハンドル部材、5は可動接触子3に係合するガイド部材、6は可動接点3aの開放状態を安定させるためのダミー接点6aを備えたダミー接触子、7はハンドル4aの中心軸であり、ハンドル部材4を支持する軸棒である。以下、図示する上方を切替機構部1aの上部、図示する下方をハンドル4aの下部として説明する。
【0013】
固定接触子2及び可動接触子3は、2本の電線から成る電路に対応するよう2個1組で構成されている。この固定接点2aと可動接点3aとが接触することでオン状態となり、固定接触子2が接続されている電路と可動接触子3が接続されている電路とが接続される。
【0014】
軸棒7は中心部が金属製であるが、ハウジングの底部から起立形成された合成樹脂製の筒体10と一体に形成されている。
【0015】
可動接触子3は棒状の導体であり、下部に可動接点3aを備え、上端にハンドル部材4に連結される連結部3bを備え、中央の胴部3cにはハウジングに設けられた所定の接続端子から配設された可撓導線9が接続されている。
可動接点3aは軸棒7に向けて配置され、固定接点2aと対峙するよう配置されている。また連結部3bは、ハンドル部材4に設けられた保持孔4cに挿入されて連結され、可動接触子3はハンドル部材4から垂下するように配置されている。更に、胴部3cは円柱状を成し、軸棒7との間に伸張されたコイルバネ11が配置され、軸棒7の方向に常時付勢されている。
こうして垂下された状態で、可動接触子3はガイド部材5に沿って、軸棒7を中心に円弧を描くように切替動作する。
【0016】
尚、このコイルバネ11を係止させた胴部3cは、絶縁被覆12がなされ、コイルバネ11と可動接触子3との絶縁が図られている。また、固定接触子2もそれぞれ導線が接続されて、ハウジングに設けられた所定の接続端子と接続されている。
【0017】
連結部3bを更に説明すると、断面が可動接触子3が移動する横方向に狭く、軸棒7の方向に長く形成され、長円状に形成されている。保持孔4cは、この連結部3bの形状に合わせ形成され、挿入した可動接触子3が回転しないよう形成されている。
また、連結部3bの側部には凹部3dが形成されており、保持孔4c内に設けられている図示しない突起に係合して、抜け防止が図られている。
【0018】
ここで、固定接触子2と可動接触子3の長さを説明する。対を成す可動接触子3(第1可動接触子31,第2可動接触子32)同士は、長さが異なり、互いの可動接点3aの取付位置が異なっている。第1可動接触子31は短く可動接点3aの位置が高く、第2可動接触子32は長く可動接点3aの位置が低い。このように接点位置を変えることで、接触する固定接点2aが選択され、異なった極性同士の接続が無いよう、また異なる電路に跨いで接続されることがないよう構成されている。
そして、対応する固定接点2aも、対を成す固定接触子2(第1固定接触子21、第2固定接触子22同士の長さ(高さ)が、可動接点3aの位置に合わせて異なっている。
【0019】
固定接触子2は帯状導体をL字状に折り曲げて形成され、3組設けられており合計6個の固定接触子2を備えている。それぞれ切替開閉器のハウジングに下部が固定されている。そして、この固定された下部に導線(図示せず)が溶接等で接続され、ハウジングに設けられている所定の接続端子にそれぞれ接続されている。
また、各固定接触子2の間にはダミー接点6aを備えたダミー接触子6が配置されており、全12個の接触子が、軸棒7を中心に例えば直径3cmの円周に沿って起立配置され、全体は円筒状に配置されている。
【0020】
ダミー接触子6は、ハウジングに設けられた保持部(図示せず)に、それぞれ起立した状態で保持されている。可動接点3aの2つの位置に対応するよう、上下2つのダミー接点6aを備えている。尚、図1,2は、このダミー接点6aに可動接点3aを接触させた状態、即ち切替開閉器1のオフ状態を示している。
【0021】
可動接触子3は、コイルバネ11の収縮力により、常時軸棒7の方向に付勢されているが、軸棒7に設けられている円盤状のガイド部材5に係合しており、ガイド部材5の径以下に軸棒7に接近することがなく、軸棒7から一定の距離を有して回動する。
ガイド部材5は、谷部5aと山部5bを有し、歯車状に形成されている。谷部5aは固定接触子2及びダミー接触子6の位置に合わせて等間隔で形成され、谷部5aは可動接触子3が略鉛直状態となり、可動接点3aが固定接点2a及びダミー接点6aに良好に接触するよう切り込み形成されている。
【0022】
一方、山部5bは、可動接触子3が切替操作された際に、可動接点3aを固定接点2aから解離させるために設けられている。
図3、4は、ガイド部材5の説明図であり、第1可動接触子31との係合状態を示している。図3は接点同士が接触したオン状態、図4は接点同士が解離したオフ状態を示している。
図3に示すように、接点同士が接触した状態では、可動接触子3がガイド部材5の谷部5aに位置している。この状態から、電路を切り替えるために可動接触子3を移動操作すると、可動接触子3は谷部5aから山部5bに移動し、図4に示すように接点同士が大きく解離する。そして、その後更に移動させると隣接する谷部5aに移動して、ダミー接点6aに接触して安定したオフ状態となる。
このように可動接触子3は、軸棒7から離れる径方向への移動を伴って、軸棒7を中心とする円周方向へ移動する動作を行う。
【0023】
ハンドル部材4は円盤状に形成され、天面に切替操作の際に把持されるハンドル4aが形成され、底面中央に軸棒7を挿入する軸孔4bが形成されている。この挿入した軸棒7に軸支し、軸棒7を中心とした回転操作を可能としている。
また底面には、所定の間隔を設けて2つの可動接触子3を挿入する保持孔4cが形成されている。保持孔4cは、挿入した可動接触子3が切替操作を受けた際に、移動方向に抗する反対方向に傾倒しないよう十分な深さで形成され、挿入した連結部3bを安定して支持するよう形成されている。
【0024】
図5は、上記のように構成された切替開閉器1のオン状態の説明図である。図5に示すように、対を成す2本の可動接触子3は可動接点3aの位置が異なるため、接続する電路を切り替えても、第1可動接触子31は常に第1固定接触子21に接続され、第2可動接触子32は常に第2固定接触子22に接続される。即ち、対を成す可動接点3aが同一の固定接点2aに接触することがない。
そのため、可動接触子3に接続された電線の極性と、可動接触子3に接続された電線の極性を合わせることができ、交流電路に限らず直流電路であってもその切替に使用することができる。
【0025】
ここで、図1,2に示すオフ状態から図5に示すオン状態に移行させる操作を説明する。
図6は、切替機構部1aの平面説明図であり、固定接触子2、ダミー接触子6の配置と可動接触子3の位置、そしてガイド部材5との関係を示している。尚、A,B,Cは接続先の3つの電路を示し、可動接触子3は図1,2に示すオフ位置にある状態を示している。ここでは、3つの電路を選択する構成であるため、上述したように固定接触子2、ダミー接触子6はそれぞれ6個であり、ガイド部材5の谷部5aは12個となっている。
【0026】
今、可動接触子3に接続された電路は負荷に接続されているとして、負荷の電源をA,B,Cの3つから選択するとして説明する。
このオフ位置から、負荷を電路Aに接続する場合は、ガイド部材5の山部5bを1つ超えれば良く、ハンドル4aを矢印P2の方向に1つの山部5bを超える操作をすれば良い。
一方、電路Bに接続する場合は、第1可動接触子31は第1固定接触子21に接続する必要があるため、矢印P1の方向に3つの山部5bを超える操作を行うことで接続される。また、電路Cに接続する場合は、矢印P1の方向に5個の山部5bを超える操作をして接続される。このような操作で電路の切り替えが実施される。
尚、可動接触子3には可撓導線9が接続されており、ハンドル4は1方向に最大180度までに制限されている。
【0027】
このように、固定接点2aが円の周上に配置され、その周囲に可動接点3aを配置して円周に沿って移動させて切替動作するため、固定接点2aが3組であっても容易に切り替えできる。また、ガイド部材5により可動接点3aが固定接点2aに対する接触/解離動作を行うため、確実な接触/解離動作を実施できる。
更に、ダミー接点6aを備えるため、何れの電路にも接続されないオフ状態を容易に形成でき、電路のメンテナンス等をし易い。
【0028】
図7は、切替開閉器1の使用説明図であり、切替開閉器1を分電盤45に組み込んで、特定の負荷40の電源を、商用電源41、太陽光発電装置42、電気自動車43の何れかに切り替える構成を示している。このように、3種類の電源を選択する場合に好適に適用できる。
【0029】
尚、上記実施形態では、特定の電路の接続先を3つの電路から選択する構成を説明したが、固定接点2aは円周上に配置されるため、固定接点2aの数を増やすことも容易に実施できる。その際、可動接触子3の構成を変更する必要がない。よって、切替機構に拡張性があり、4電路の切替、5電路の切替も同様の構成で実施できる。
【符号の説明】
【0030】
1・・切替開閉器、1a・・切替機構部、2・・固定接触子、2a・・固定接点、3・・可動接触子、3a・・可動接点、4・・ハンドル部材、4a・・ハンドル、5・・ガイド部材、6・・ダミー接触子、6a・・ダミー接点、7・・軸棒、10・・筒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7