(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096920
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上のための粉体組成物及びその製造方法とその利用
(51)【国際特許分類】
C09D 5/03 20060101AFI20230630BHJP
C09D 11/03 20140101ALI20230630BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230630BHJP
A43B 13/02 20220101ALN20230630BHJP
【FI】
C09D5/03
C09D11/03
C09D7/61
A43B13/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212987
(22)【出願日】2021-12-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://camp-fire.jp/projects/view/344468 ウェブサイトの掲載日 : 令和3年1月5日 〔刊行物等〕 ウェブサイトのアドレス:https://naturalab.theshop.jp/ https://naturalab.theshop.jp/categories/3225060 ウェブサイトの掲載日 : 令和3年1月8日 〔刊行物等〕ウェブサイトのアドレス:https://benechan.shop/tky95851-002/ ウェブサイトの掲載日 : 令和3年3月24日 〔刊行物等〕ウェブサイトのアドレス:https://www.amazon.co.jp/スパオール血流改善はらまき(スパオール) -グレー/dp/B091PJ3YKY ウェブサイトの掲載日 : 令和3年4月1日 〔刊行物等〕 ウェブサイトのアドレス:https://alles-inc.com/spaore/ ウェブサイトの掲載日 : 令和3年10月1日 〔刊行物等〕 ウェブサイトのアドレス:hthttps://web-mihonichi.tokyo/company/natural-ab/index. ウェブサイトの掲載日 : 令和3年5月17日 〔刊行物等〕 ウェブサイトのアドレス:https://spaore.com/ https://www.sankeibiz.jp/business/news/210804/prl2108040933010-n1.htm ウェブサイトの掲載日 : 令和3年8月1日 〔刊行物等〕 ウェブサイトのアドレス:https://www.idog.jp/blog/2021/10/21/idogwellneswear/ ウェブサイトの掲載日 : 令和3年10月21日 〔刊行物等〕 発行者名:株式会社主婦と生活社 刊行物名:疲れとり「極」ミラクルシート 頒布日 :令和3年4月15日 (発行日 令和3年4月30日)
(71)【出願人】
【識別番号】520156937
【氏名又は名称】株式会社ナチュラルアビリティ
(71)【出願人】
【識別番号】508115990
【氏名又は名称】株式会社アレス
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100213746
【弁理士】
【氏名又は名称】川成 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100221752
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 雅与
(72)【発明者】
【氏名】小池 正樹
【テーマコード(参考)】
4C082
4F050
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4C082AA07
4C082AE01
4C082AV11
4C082AV13
4F050BA02
4F050HA98
4J038HA021
4J038HA431
4J038HA552
4J038KA20
4J038LA07
4J038MA14
4J038NA17
4J038NA27
4J038PA02
4J038PB01
4J039BA02
4J039BA26
4J039BE33
4J039CA10
4J039EA48
4J039FA03
(57)【要約】
【課題】神経のコンディションを整える作用により、血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上の効果を有する粉体組成物を提供する。
【解決手段】微粉末状のラジウム1重量部に対して、微粉末状の炭化粉を4.5~50重量部の割合で含有する血流促進作用、リラクゼーション及び運動能力向上のための粉体組成物であり、例えば、本発明の粉体組成物を含有させたインキや塗料等を用いて物品に印刷を施すことによって血流促進作用、リラクゼーション及び運動能力向上の作用を有する物品を製作することができるものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉末状のラジウム1重量部に対して、微粉末状の炭化粉を4.5~50重量部の割合で含有する、血流促進作用、リラクゼーション及び運動能力向上のための粉体組成物。
【請求項2】
前記炭化粉は、30~97%の割合でケイ素を含有することを特徴とする請求項1に記載の、粉体組成物。
【請求項3】
前記炭化粉は、天然植物材料を炭化することにより得られるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の、粉体組成物。
【請求項4】
更に、微粉末状のゲルマニウムおよび微粉末状の銅の少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の、粉体組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の、粉体組成物を含有することを特徴とするインキまたは塗料。
【請求項6】
繊維状、布状または板状基材に、請求項5に記載のインキまたは塗料を塗布もしくは含浸させたことを特徴とする繊維、布または板材。
【請求項7】
ラジウムを含有する鉱石を破砕して微粉末状の粉砕物を作成すると共に、
天然植物材料を温度700~1500℃で1~5時間加熱して得た炭化物を粉砕することにより微粉末状の炭化粉を作成し、
前記粉砕物と炭化粉とを混合することにより粉体組成物を作成することを特徴とする、粉体組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上の作用を有する粉体組成物に関し、より詳細には、腹まき、枕カバー、靴用インソール、シャツ、アクセサリー等、様々な物品に印刷等の手段によって適用できることより、形状や材質を問わず広範囲の物品が作成可能であり、適用後の当該物品に接近する者に対して血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上の効果を付与することができる粉体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
体の冷えや自律神経の乱れは、健康面で様々な不調を引き起こす原因となることが知られている。体の冷えが生じる一因としては血行不良がある。身体の血流が悪くなることで手足の末端まで血液が十分に循環されない状態となり、いわゆる「冷え性」が慢性化した状態となる。これにより、「体が温まり難い」「布団に入っても手足が冷たく眠れない」といった、いわゆる「冷え性」の症状を生じるばかりでなく、代謝が悪化することで更に種々の不調を生じることとなる。具体的には、肩のコリや痛み、頭痛、不眠、生理不順等、様々な症状に悩まさるといった症状が現れたり、また、代謝が落ちることで痩せ難い体質となり肥満に繋がり易い、便秘気味になって肌が荒れる等の美容面での悪影響を及ぼす場合もある。更に、免疫力が低下することにより、風邪などの病気にかかり易い体質となってしまうおそれすらもある。
【0003】
また、自律神経は、体を活発に動かすときに働く交感神経と、体を休めるときやリラックスした状態で働く副交感神経で成り立っている。この2つのバランスが崩れた場合、だるい、眠れない、疲れが取れない等の症状が現れ易くなる。また、自律神経が乱れると各個人の弱い部分に不調が現れ易いと言われており、頭痛やめまい、息切れ、動悸、下痢、便秘、冷え等に繋がることもある。更に、自律神経の乱れは、精神面への影響も大きく、情緒不安定や鬱等の症状の原因となることもある。
【0004】
このように、血行不良や自律神経の乱れは、身体面や精神面での様々の不調の原因となるため、血流を改善し血行をよくする効果や自律神経を整えるべく、様々な方法や器具・装置等がこれまで提案されてきた。例えば、微量の放射線による「ホルミシス効果」を利用したものも多数提案されている。一例をあげると「ホルミシス効果」に注目した遠赤外線照射装置がある(特許文献1参照)。これは、ラジウム粉末またはブラックシリカ粉末のうち少なくとも一方と、炭粉末をそれぞれ所定量混入した岩盤浴クッション芯材とその底面側に配した発熱体より構成される岩盤浴マットユニットの上に人体が横たわり、更に頭部以外の身体を覆部ですっぽりと覆うことで、微弱な放射線によって生成されるマイナスイオン及び遠赤外線を利用者に放射し、いわゆる岩盤浴効果により、温熱効果、新陳代謝、自然治癒力の向上、ストレス改善等の効果を有するとされるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、当該装置は、人体が横たわるに足るスペースが必要であり、それなりに大型な装置となることは避けられない。また、いわゆる岩盤浴であるため、効果を得るためには一定時間の間、そこに留まり続けることが必要であり、日常生活に気楽に取り込むのは難しい側面もあった。また、体の冷えや自律神経の乱れによる不調は、数回の処置によって全快するということは少ないため、これらの症状に悩まされる人にとっては、日常的に気楽に使用できる物や方法で健康を維持できるのであれば、その方が望ましいことは言うまでもない。本発明は、このような実情を鑑み、どのような物品にも応用が容易である粉体形状となっている。粉体であることから種々の物品への適用が極めて容易であり、使用者が普段から日常的に使用や着用している物品へも容易に適用することができる。このため、使用者は使用していることすらほとんど意識することなく、本発明の粉体組成物を日常生活に取り込むことが可能である。このように、本発明は、使用が極めて容易でありながら、確実に血行促進や自律神経を整える効果を有する血流促進及びリラクゼーションのための粉体組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、「ホルミシス効果」により身体の重心を安定させることで、つまずき等の外的内的要因による転倒等を防止する効果を有する、微粉末状のラジウムと微粉末状の炭粉とを含有した粉体組成物を提案している(特許第6802940号公報)。
本発明者が鋭意検討を続けた結果、当該粉体組成物は、ラジウムと炭粉が特定の組成比率であるときに、特に神経コンディショニング効果を発揮することによって、血流促進作用や自律神経のバランスを整える作用が極めて優れていることを見出した。更に、この「神経のコンディションを整える」作用によって、身体パフォーマンスの向上等の運動能力向上の作用をも有していることを見出し、本発明の「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上のための粉体組成物」(以下、これらを総称する意において「本発明の粉体組成物」と称する)を完成するに至ったものである。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の粉体組成物は、微粉末状のラジウム1重量部に対して、微粉末状の炭化粉を4.5~50重量部の割合で含有することを特徴としている。
【0009】
ここで、炭化粉は30~97%の割合でケイ素を含有してもよく、天然植物材料を炭化することで得られるものであってもよい。
【0010】
また、本発明の粉体組成物は、更に、微粉末状のゲルマニウムおよび微粉末状の銅の少なくとも1つを含有してもよい。
【0011】
そして、本発明の粉体組成物の製造方法は、ラジウムを含有する鉱石を破砕して微粉末状の粉砕物を作成すると共に、天然植物材料を温度700~1500℃で1~5時間加熱して得た炭化物を粉砕することにより微粉末状の炭化粉を作成し、前記粉砕物と炭化粉とを混合することにより粉体組成物を作成することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の粉体組成物を含有することを特徴とするインキまたは塗料として使用することができ、繊維状、布状または板状基材に、本発明の粉体組成物を含有するインキまたは塗料を塗布もしくは含浸させたことを特徴とする繊維、布または板材として使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粉体組成物は、粉体形状であることにより、広く種々の物品に適用することができる。具体的には、本発明の粉体組成物を、例えばインキや塗料に配合し印刷手段を介して物品に適用することにより、多種多様な種々の物品へ優れた「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」の効果を付与することができる。一例を挙げれば、日常的に身に付ける物品である、腹まき、肩掛け、枕用シート、靴のインソール、アイマスクや、肩こり部分や冷え易い部位に貼付するパッチ、更には首から掛けたり胸に付けるIDカードのケースに入る大きさのシート等、の種々の物品に本発明の粉体組成物を適用することで、血流促進による冷えの防止、リラクゼーション効果による心身のリラックス効果、運動能力向上効果によるスポーツのパフォーマンス成績の向上の効果を手軽に得ることが可能となる。
【0014】
物品への適用は、例えば、本発明の粉体組成物を含有させたインキ等を印刷技術を介して物品に付与することで適用することができる。このため、岩盤浴装置のような大掛かりな装置等を製造するのに比較して、大幅に安価な製造コストで本発明の粉体組成物を適用した物品を製作することが可能である。また、腹まきや肩掛けを始めとする使用者が日常的に使用している物品に対して手軽に適用が可能であるため、使用者自身が普段から使用している物品に適用すれば、当該物品をいつも通りに身に着けていつも通りの日常生活を送るだけで、冷えの防止、心身のリラックスや運動能力の向上の効果が得られるメリットがある。
【0015】
また、安価に適用できることから、一つの物品に対して様々なデザインをラインアップすることも比較的容易である。市場において特定のデザインのものしか入手できない場合、当該デザインが個人的嗜好に合わず身に付けることを躊躇してしまうといったことが起こり得る。しかし、製造が比較的安価かつ容易であれば、各人それぞれの好みに合わせた多様なデザインのものをラインアップすることができ、利用者の選択の幅を広げることができる。
【0016】
本発明の粉体組成物の物品への付与について具体的な一例を挙げれば、例えば腹まきの場合には、シルクで作成した腹まきに印刷を介して本願発明の粉体組成物を適用(付加)して、当該腹まきに「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」効果を付与することができる。品への適用は、必ずしも物品全体に均一に付加する必要はなく、
図1に示すようなドットパターンの他、文字や画像等、ある程度の面積を持って適用すれば十分であるためデザインに対する自由度も比較的高い。また、本願発明の粉体組成物を予め繊維に練り込み、当該繊維を用いて紡織することで繊維製品とすることもできる。このような方法によれば、更にデザインに対する自由度を高めることも可能である。
【0017】
また、本願発明の粉体組成物は、身体に接触させずともある程度まで接近させることで「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」の効果が期待できる。このため、身体に直接触れる物品に限らず、衣服の上に身に付けるIDカードケースやアクセサリーといった物品に適用して利用することも可能である。この効果により、適用する物品の選択肢が広がるため、利用者が一番利用し易い物品に適用することで、物品の存在を意識することなく冷え防止やリラックス効果を得ることが期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例の1形態である靴用インソールの一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施例の1形態である靴用インソールの他の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施例の1形態であるシートの一例を示す図である。
【
図4】<簡易バランス試験>の試験方法例を示す図である。(実施例1)
【
図5】<関節の稼働域試験>の試験方法例を示す図である(実施例1)
【
図6】<脳波測定試験>で得られた脳波データの評価基準を示す図である。(実施例1)
【
図7】本発明の布シートを使用したときの、被験者Aの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図8】本発明の布シートを使用したときの、被験者Bの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図9】本発明の布シートを使用したときの、被験者Cの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図10】本発明の布シートを使用したときの、被験者Dの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図11】本発明の布シートを使用したときの、被験者Eの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図12】本発明の布シートを使用した着席-立位試験における、被験者Aの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図13】本発明の布シートを使用した着席-立位試験における、被験者Bの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図14】本発明の布シートを使用した着席-立位試験における、被験者Cの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図15】本発明の粉体組成物を適用した(a)腹まき、(b)IDカード状のシート及び(c)枕カバーを使用した脳波測定試験における、被験者の当該物品の装着状態の一例を示す図である(実施例4)。
【
図16】本発明の腹まきを使用したときの、被験者Fの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図17】本発明の腹まきを使用したときの、被験者Gの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図18】本発明の腹まきを使用したときの、被験者Hの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図19】本発明のIDカード状のシートを使用したときの、被験者Hの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図20】本発明のIDカード状のシートを使用したときの、被験者Iの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図21】本発明の枕カバーを使用したときの、被験者Iの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図22】本発明の枕カバーを使用したときの、被験者Fの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図23】本発明のシートをメガネの弦に巻きつけて使用したときの、被験者Iの脳波を示す三次元グラフである(実施例4)
【
図24】本発明の腹まきを使用した被験者の体温測定試験における、腹まき装着前の被験者の体温を示すサーモグラフィである(実施例5)
【
図25】本発明の腹まきを使用した被験者の体温測定試験における、腹まき(未加工品)装着時の被験者の体温を示すサーモグラフィである(比較例)
【
図26】本発明の腹まきを使用した被験者の体温測定試験における、腹まき(加工済み品)装着時の被験者の体温を示すサーモグラフィである(実施例5)
【
図27】本発明の腹まきを使用した被験者の体温測定試験における、被験者の体温を示すサーモグラフィを比較した図である(実施例5)
【
図28】本発明のIDカード状のシートを使用した被験者の体温測定試験における、シート装着前の被験者の体温を示すサーモグラフィである(実施例5)
【
図29】本発明のIDカード状のシートを使用した被験者の体温測定試験における、シート装着後の被験者の体温を示すサーモグラフィである(実施例5)
【
図30】本発明のシートを使用した被験者の手の甲の体温測定試験における、(a)試験時のシート装着例を示す図、(b)被験者の右手の甲(本発明)と左手の甲(比較例)のサーモグラフィである(実施例5)
【
図31】本発明のシートを使用した被験者の手の平の体温測定試験における、被験者の右手の平(本発明)と左手の平(比較例)のサーモグラフィである(実施例5)
【
図32】神経線維の電位の乱れを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の粉体組成物は、微粉末状のラジウム1重量部に対して微粉末状の炭化粉を4.5~50重量部の割合で含有するものである。当該比率で微粉末状のラジウムと微粉末状の炭化粉を配合することで、粉末状態としても、天然鉱石の発する微弱電磁波の効果と炭化粉による放射熱効果の両方を極めて効果的に発揮し、更に、神経コンディショニング効果も同時に発揮することで、優れた「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」効果を発揮するものである。
【0020】
ここで「神経コンディショニング」とは、神経のコンディションを整える作用のことであり、「神経のコンディションが整う」とは、神経線維に興奮部が存在することで電位配列が乱れ電流(命令)の流れが阻害されているときに、何らかの働きかけにより正常な電位配列に戻った状態を指すものである。電流(命令)の流れがスムーズな状態に戻ることで、阻害されていた神経の命令伝達が末梢神経まで届くことになる。この働きにより、身体の重心バランスが安定し、更に高い効果を発揮する場合には運動パフォーマンスの向上といった運動能力向上効果となって現れることになる。また、神経の乱れによるストレスが軽減されることにより、副交感神経優位にスイッチし易い状態になって心身のリラクゼーション効果を得ることができる。本願発明の粉体組成物では、これらの働きに加えて、前述の天然鉱石の発する微弱電磁波の効果と炭化粉による放射熱効果も同時に発揮されることとなる。天然鉱石の発する微弱電磁波によってリラクゼーション効果は更に増大される。また、炭化粉による放射熱効果によって血行促進作用が得られる。血行が促進されて血流が良くなることで身体が温まり、よりリラックスし易い状態になるという相乗効果を発揮するものである。
【0021】
次に、本願発明の粉体組成物について詳述する。
本願発明の粉体組成物は、微粉末状ラジウムと微粉末状の炭粉の他に、更に、微粉末状のゲルマニウムおよび微粉末状の銅の少なくとも1つを含有させることができる。以下、それらの微粉末状物について具体例を示して説明するが、本発明に用いることができる物がそれらに限定されるものではない。
【0022】
本発明における微粉末状のラジウムとは、ラジウムを含む化合物、例えば、酸化ラジウム、水酸化ラジウム、フッ化ラジウム、塩化ラジウム、臭化ラジウム、ヨウ化ラジウム、炭酸ラジウム、硫酸ラジウム、硫化ラジウム、過酸化ラジウム等のラジウム化合物の他、ラジウムを含有する天然鉱石を原料として、これらの物質を公知の方法で微粉末状にしたものをいう。
【0023】
本発明における微粉末状のゲルマニウムとは、ゲルマニウムを含む化合物、例えば、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレート、ゲルマニウム-β-ナフトレート等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム、次亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物および酢酸ゲルマニウム化合物等のゲルマニウムを含む化合物の他、ゲルマニウムを含有する天然鉱石や天然鉱物を原料として、これらの物質を公知の方法で微粉末状にしたものをいう。
【0024】
本発明における微粉末状の銅とは、銅を含む化合物、例えば、酸化第一銅、酸化第二銅、塩化第一銅、塩化第二銅、硫化第一銅、硫化第二銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、硫酸第一銅、硫酸第二銅等の銅化合物の他、精製銅や銅鉱物を原料として、これらの物質を公知の方法で微粉末状にしたものをいう。なお、以上のゲルマニウム、ラジウム、銅の各化合物については、水溶液等の液状態のものを以下に述べる炭粉に含浸させてもよい。
【0025】
本発明における微粉末状の炭化粉とは、炭素を含有する物質を微粉末状にしたものを用いることができる。微粉末状の炭化粉の原材料としては、グラファイトや石墨、黒鉛等の結晶質物質であってもよいが、非晶質物質である植物材料を焼成して作成したいわゆる炭を特に好適に用いることができる。炭の場合には、木炭や竹炭等の他、ヤシ殻、石炭、木炭等を原料とした活性炭等、炭素を含有するものであればどのようなものも用いることができる。炭を用いる場合には、自身で焼成した炭を微粉末状にしたものであってもよいし、粉末の炭(パウダー状の炭)、炭の粉、木炭微粉、粉炭、炭パウダー等の種々の名称で市販されているものを用いてもよい。
【0026】
本発明における微粉末状の炭粉は、ケイ素を含むものを特に好ましく用いることができる。上記の結晶質炭素を粉末にしたものに、ケイ素化合物の粉末を混合したものであってもよいが、天然の植物材料を炭化させた炭を原料として作成した炭粉には植物由来のケイ素が含まれるため極めて好適に用いることができる。ケイ素化合物を用いる場合には、シリカ(二酸化ケイ素)、合成非晶質シリカ(二酸化ケイ素)、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、炭化ケイ素、ケイ藻土等のケイ素含有化合物を広く用いることができる。天然の植物材料を炭化させたものとしては、安価に広く流通しているもみ殻くん炭やその他のくん炭を用いることもできるし、自ら木材、竹、もみ殻等の植物材料を焼成した炭やくん炭を用いてもよい。
【0027】
自ら、もみ殻等の植物材料を焼成して炭やくん炭を作る場合には、植物材料を高温短時間で焼成したものを特に好ましく用いることができる。焼成条件は、700~1500℃で1~5時間、特に好ましくは800~1200℃で2~4時間の焼成が望ましい。焼成時には、焼成開始時からできるだけ早く800~1200℃の焼成温度にまで到達させることが望ましく、例えば焼成炉の電圧を一気に上げて焼成開始時から30~60分で焼成温度に到達させて焼成させることでケイ素含有量を高めることができる点で特に望ましい。微粒子状のラジウムに、このように高温短時間で焼成した炭やくん炭から作成されるケイ素含有率の高い炭粉を混合することで、特に好ましい本願発明の粉体組成物とすることができる。
【0028】
本願発明に用いる微粉末状物質を作成する方法としては、上記のそれぞれの化合物を、例えばミルと分級機を用いて粉砕し微粉末状にする等の公知の方法を用いることができる。粉砕後の粒径は特に限定されず、用途に合わせて粗くしてもよいし、微細粉としてもよい。扱い易さの点で、粒径は3μm~0.1mmが好ましく、5μm~7μmが特に好ましい。
【0029】
微粉末状にしたそれぞれの化合物を混合する方法は、特に限定されない。ある程度まで均一に混合されていれば本発明の効果を得るのに十分であるので、公知の一般的な方法にて混合することができる。本発明の粉体組成物における各成分の混合比は、ラジウム1重量部に対して微粉末状の炭粉を4.5~50重量部加えて混合したものが本発明の有意な効果を得るために好ましく、特に好ましくはラジウム1重量部に対して微粉末状の炭粉を5~20重量部加えて混合したものが顕著な効果を得るために好ましい。更に、微粉末状のゲルマニウムもしくは微粉末状の銅を混合する場合には、それぞれ重量比でラジウム1重量部に対して微粉末状のゲルマニウムもしくは微粉末状の銅をそれぞれ0.1~5重量部加えることができる。微粉末状のゲルマニウムもしくは微粉末状の銅を更に加えることで、効果を補強することができると共にラジウムの使用量を減量することができる。微粉末状のゲルマニウムもしくは微粉末状の銅は、それぞれどちらか一方を加えることもできるし、両方をそれぞれ上記の比率で加えることもできる。
【0030】
本発明の粉体組成物は、次のような方法で使用することができる。たとえば、本発明の粉体組成物をそのまま容器等に入れてそれを身に付ける等の手段により身体に接近させることで、血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上の効果を得ることができる。他の方法としては、例えば本発明の粉体組成物をインキや塗料に混合させ、当該インキや塗料を用いて目的物品に印刷あるいは塗布をする方法がある。このように本発明の粉体組成物を適用させた物品に対して、身体を接近させることで本発明の「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」の効果を得ることができる。
【0031】
また、本発明の粉体組成物は、例えば液体に分散させて流体形態としてもよいし、公知の方法により固化させて固形状としてもよい。どのような形態へ加工しても本発明の有する「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」の効果が失われることはないため、使用目的や流通の利便性等により適宜最適な形態での使用が可能である。
【0032】
以下、具体的な使用方法についていくつか詳述するが、本発明はこれらの使用方法や使用形態に限定されず、どのような方法であれ、本発明の粉体組成物に対して身体が接近した状態となるように用いることで本発明の粉体組成物による「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」の効果を得ることができる。
【0033】
第一の実施形態として、本発明の粉体組成物を含有させたインキや塗料を用いて目的物に付与することで、当該物品に本発明の「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」の効果を具有させる方法がある。なお、本明細書において、インキ(インク)または塗料とは、一般的な意味でのインキ、塗料の他、塗装材、顔料、染料等を含む幅広い意味で用いるものである。
【0034】
本発明の粉体組成物は、適用対象である目的物品に、どのような手段であるかを問わず、付着、付加、含有等の方法により、物品に対していわゆる適用された状態とすることで、適用させた物品に接近した身体に対して「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」効果を示すものである。このため、たとえば、本発明の粉体組成物を、分散、混合、溶解等の公知の方法でインキや塗料等に含有させ、当該インキや塗料等を用いて、印刷、塗布、含浸、表面に接着させる等の公知の手段により目的物品へ適用させることで、「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」効果を持つ物品を製作することが可能となる。
【0035】
適用方法としては、印刷もしくはそれに類する手段の他、例えば、本発明の粉体組成物を接着剤に分散させて当該接着剤を物品表面に塗布する方法でもよいし、粉体組成物を分散させた水や油等の液体を目的物品に含浸させることで物品に適用する方法であってもよい。本明細書におけるインキまたは塗料とは、このようにどのような方法であるかを問わず、目的物品に粉体組成物を適用するために用いることができる液体や粘性物、個体等を含む広い意味で用いるものである。
【0036】
本発明の粉体組成物を含有させたインキや塗料の作成方法は特に限定されず、一般的な方法を用いることができる。どのような方法であれ、本発明の粉体組成物がインキや塗料に含まれた状態となればよい。ある程度均一に、本発明の粉体組成物が分散した状態のインキや塗料であれば、本発明の効果を得ることができる。例えば、通常用いられる印刷用インキに本発明の粉体組成物を加えた後によく撹拌して混合する方法であってもよい。本発明の粉体組成物のインキへの配合量の目安は、印刷により適用した目的物品の1m2あたり粉体組成物10g以上が含まれるように配合することで、本発明の重心安定効果を有意に得ることができる。
【0037】
インキや塗料に混ぜることで、布、紙、ゴム、塩ビ、金属板等広い素材に例えば印刷を介して本発明の粉体組成物を適用することが可能となり、多種多様な物品に本発明の血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上効果を付与することが可能となる。一例を挙げれば、作成した腹まきの表面に本発明の粉体組成物を含有させたインキを用いて印刷を施すことで、血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上の効果を有する腹まきを作成することができる。
【0038】
また、熱転写紙のインキに本発明の粉体組成物を含有させ作成した熱転写シートを用いて、いわゆるアイロンプリントの方法で靴下やシャツ等に本発明の粉体組成物を適用することもできる。このような方法によれば、本発明の「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」効果が付与された物品を家庭でも手軽に作成可能となる。
【0039】
本発明の粉体組成物の適用対象は、このように印刷手段によって物品へ適用する場合には、対象物は印刷可能な物であれば、紙、布、不織紙、木材、プラスチック、金属等、どのような材料へも適用可能である。また、印刷を施すのが難しい材料の場合には、本発明の粉体組成物を分散させた適当な接着剤や溶剤を塗布や含浸させる等の手段によって物品へ適用することもできる。また、衣料品の場合には、繊維に本発明の粉体組成物を公知の方法で予め練り込み、当該繊維を用いて衣料品を作成する方法によって適用することも可能である。その他、方法を問わず物品に本発明の粉体組成物を付加、付着、含有した状態とすれば、当該物品に「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」の作用を付加することが可能である。すなわち、薄くてペラペラした紙状の物質、ある程度の厚みや固さを有する板状基材等、あらゆる素材に対して、本発明の粉体組成物を含有させたインキや塗料等を塗布または含浸させることで、本発明の「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」効果を有する布や板材等の材料を作成することが可能である。これは、これらの布や板を用いて物品を製作することで、本発明の「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」効果を有する多種多様な製品を製造できることを意味している。
【0040】
物品に印刷される形態は特に制限されず、ドットパターンのような繰り返しパターンでもよいし、文字やイラスト等のデザインされたものでもよい。一例として、帆布を用いて作成した靴用インソールの表面に本発明の粉体組成物を、印刷を介して適用した例を
図1および2に示した。
図1は言語的意味を持たないドットパターンを印刷した例であり、
図2は文字を印刷した例である(
図2は2枚のインソールを重ねた状態を示したものであり、また、印刷されたSPAOREの文字は商標である)。ドットパターン、文字のどちらであっても本発明の「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」効果に違いは生じない。このように、どのような文字や画像であっても本発明の効果に影響はないため、印刷される内容は物品のデザイン性を優先した図柄等であってもよいし、靴下の滑り止めパターンのような実用的なパターン模様等としてもよい。靴下の滑り止めパターンであれば、滑り止め用凹凸の生成材料に本発明の粉体組成物を含有させて凹凸を作成することで、靴下に滑り止め防止効果を付与するのと同時に、本発明の「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」効果も付与することもできる。
【0041】
また、第二の使用形態として、本発明の粉体組成物そのものを身につける方法であってもよい。例えば、小瓶のような小さな容器に本発明の粉体組成物を封入し、それをペンダントのようなアクセサリー形態として身につける方法でも本発明の「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」の効果を得ることができる。
【0042】
更に第三の使用形態として、本発明の粉体組成物を添加した成型材料を用いて種々の成型製品を製造することもできる。例えば、本発明の粉体組成物を添加したプラスチック樹脂やラバー樹脂等の合成樹脂を用いて杖やステッキ、ゴルフクラブのグリップ(握り)部分を成型製造することで、「血流促進、リラクゼーション及び運動能力向上」効果を有する杖やステッキ、ゴルフクラブを製造することができる。
【0043】
以下、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例0044】
各成分を表1に示した比率(重量部)で混合して、比較例および本発明の実施例の重心安定用粉体組成物を作成した。ラジウムは、ラジウム天然鉱石を粉砕して微粒粉末とした市販品を用いた。炭化粉は、入手した稲のもみ殻を燃焼炉により800℃で4時間焼成してもみ殻くん炭を作成し、それを粉砕して微粒粉末としたものを用いた。それぞれの微粒粉末の粒径は概ね7μmとした。
【0045】
試験1-1 <簡易バランス試験>
各成分を表1の比率(重量部)で混合して作成した各サンプル番号の粉体組成物を、インキに混ぜてよく攪拌してインキ中に均等に分散させて印刷用インキとした。尚、サンプルNo.7~11は、ラジウム1重量部に対して、炭化粉を4.5~50重量部の割合で混合させた本発明の実施例であり、サンプルNo.1及び2は、ラジウムか炭化粉のいずれか一方のみを含む比較例、サンプルNo.3~6は、ラジウムに対する炭化粉の混合割合を本発明の範囲外とした比較例である。使用したインキは、東京インキ製油性黒色インキを用いた。このようにして作成したインキを用いて
図3に示したシートを作成した。具体的には、1000mm×600mmのシート状の帆布21の表面全面に
図3に示したドットパターン22を印刷し、粉体組成物を適用したシート2とした。尚、粉体組成物のインキへの配合量は、印刷後のシート1m
2あたり粉体組成物が概ね10~20g含まれるように調整した。
【0046】
【0047】
被験者である成人男女4人に対し、サンプル番号1~11のうちから無作為に抽出したサンプルを、1被験者あたり5~7つを割り当てた。ただし、サンプル番号1つあたりの被験者は最低2人となるように調整をおこなった。粉体組成物を適用したシート2を約12cm×10cmの大きさにカットし、被験者の服のポケット(上着のサイドポケット)に入れて身に着けてもらう形で以下に示す試験をおこなった。尚、ポケットにシートを入れる際に、被験者に何番のサンプルであるかはもちろん、どのような機能を持つシートであるかの告知は行っていない。
【0048】
[試験方法]
まず、被験者にはリラックスした状態でベンチに座ってもらい、左腕を真横にまっすぐ伸ばしてもらう。実験者は、被験者の伸ばした左腕をつかんで被験者の左方向へ軽く引っ張る。これにより被験者の身体がわずかに左に傾いた状態となる。その態勢のままで、実験者が被験者の左肩の上に手を置いて上から強く下方向へ被験者の肩を押す(
図4のa-1は押し始めるところを表す)。このとき、被験者が実験者の押す力に負けて体勢が崩れるか否かを見た。実験者の力に負けたときは被験者の上半身は左方向へ大きく傾くことになるが(
図4のa-2の状態)、実験者の押す力に耐えられる場合には被験者の体勢は崩れることがない。次に右側に対しても同様の所作により試験を行う。
【0049】
試験は、まずポケットに何も入れない状態で上記の肩を押す一連の動作を行って、被験者がどの程度まで体勢を崩してしまうのかを確認した。その後、リセット動作として、被験者に立ちあがってもらってその場で数回の足踏みをしてもらった。そして次に、再度着席してもらい、サンプルを被験者の上着ポケットに入れて、上記の肩を押す一連の動作を再度同様に行って体勢が崩れるかを見た。そして最後に確認試験として、再び立ち上がってもらって足踏みという上記のリセット動作後に着席してもらってから、ポケットからサンプルを取出して、同様の一連の動作によって被験者の体勢の崩れを確認した。評価は以下の基準により行った。尚、本試験においては被験者によるバラつきは見られず、同一サンプルに対する各被験者は皆ほぼ同じ挙動を示した。
[評価基準]
サンプルをポケットに入れていない場合には、どの被験者も肩を押されることで大きく体勢を崩した。
×:サンプルを入れた場合でも、肩を押されると大きく体勢を崩した。
△:サンプルを入れた場合は、入れない場合に比べて明らかに体勢の崩れが小さかった。
○:サンプルを入れた場合は、肩を押されてもほとんど体勢の崩れが見られなかった。
【0050】
[結果]
各サンプルの結果を表1の「簡易バランス試験」の欄に示した。
試験結果の一例として、サンプルNo.10の粉体組成物を適用したシートを用いた試験を撮影した動画映像からキャプチャーした画像を
図4に示す。
図4の(a-1)、(a-2)は、サンプルを入れない状態での試験画像である。(a-1)は、実験者が被験者の肩の上に手を置いて下方へ力を加えようとしている場面である。(a-2)は、実験者の押す力に負けて、被験者の体勢が崩れた状態である。次に、上記のリセット動作を行ってもらった後に、被験者の上着の右ポケットにサンプルのシートを入れて試験を行った。(b-1)は、これから力を加えようとする場面である。そして、(b-2)は、実験者に力を加えられても被験者がその力に負けずに体勢を崩していない場面である。ふたたびリセット動作を行ってもらった後に、被験者のポケットからサンプルを取出して同様に肩を押して力を加える試験を行ったときの画像が(c-1)、(c-2)である。
【0051】
本図から明らかなように、(a-2)及び(c-2)のサンプル無しの場合には、被験者の体勢が崩れているのに対して、(b-2)のサンプル有りの場合には、実験者の押す力に負けることなく、(b-1)の状態から体勢がほとんど崩れていないことが分かる。尚、(a-2)と(c-2)では、(c-2)の方が被験者の崩れが大きくなっているが、これはキャプチャー瞬間のわずかなズレに基づくもので、何れも被験者が大きく体勢を崩した度合いに有意な差はなかった。ここで、(a-2)(c-2)と(b-2)の実験者の体勢の違いに注目すると、(b-2)では実験者は腰を入れて強い力で押していることが伺える。それに比べて、(a-2)(c-2)では実験者がそのように強い力を加える前に被験者の体勢が崩れたために、実験者の体勢は力を加える前の(a-1)(c-1)からほとんど変わっていない。これらのことからも、サンプル有りの(b-2)では体幹のバランス(身体の重心)を安定させる効果を示していることが分かる。
【0052】
試験1-2 <関節の可動域試験>
表1に示した組成比の各サンプルを配合した印刷用インキを、上記の(1)<簡易バランス試験>と同様にして用意した。このインキを用いて、約70cm×60cmの綿布にドットパターンを印刷して本発明の粉体組成物を適用したシートとした。 被験者である成人男女4人に対し、サンプル番号1~11のうちから無作為に抽出した5~7つのサンプルを割り当てた。ただし、サンプル番号1つあたりの被験者は最低2人となるように調整をおこなった。
【0053】
[試験方法]
(i)肩関節の可動域テスト
被験者にベンチに座ってもらって両腕を後に伸ばした状態で、後ろから実験者が被験者の両手を持ち、被験者の両腕の間隔がどこまで狭まるかを試験した。最初に、本発明の粉体組成物を適用したシートを用いない状態で被験者の状態を確認した(
図5のa-1)。次に、上記の本発明の粉体組成物を適用したシートを被験者の両肩から上半身に掛けた状態で、同様の試験を行った(
図5のa-2)。
【0054】
(ii)股関節の可動域テスト(内旋)
まず、被験者にベンチに仰向けに横になってもらう。実験者は一方の手で被験者の踵を持ち、もう一方の手でひざ裏を支える。次に、実験者は被験者の股関節と膝関節をそれぞれ直角に屈曲させる。実験者は、ひざ裏を支えていた手を移動させて被験者のひざ頭押さえる。その状態で被験者のかかとを実験者側に引きつけるようにして、ひざを軸にして被験者の股関節を内旋させる。試験は、まず、本発明の粉体組成物を適用したシートを用いない状態で被験者の状態を確認した(
図5のb-1)。次に、上記の本発明の粉体組成物を適用したシートを被験者の下半身に掛けた状態で、同様の試験を行った(
図5のb-2)。
【0055】
評価は以下の基準により行った。尚、どのサンプルの場合も、(i)肩関節の可動域テストと(ii)股関節の可動域テスト(内旋)でほぼ同様の結果を示した。
[評価基準]
×:サンプル無しと有りの場合で、関節可動域に差が認められなかった。
△:サンプル有りの場合、サンプル無しのときに比べて若干、可動域が広がった。
○:サンプル有りの場合、サンプル無しのときに比べて明確に可動域が広がった。
【0056】
試験1-3 <脳波測定試験>
上記の(2)<関節の可動域試験>で使用したものと同じく、表1に示した各サンプルの粉体組成物を適用したシートを、被験者(男性○才代)に身に着けてもらって座位でリラックスした状態で脳波測定を行った。
測定方法:脳波計(IVBA Ver.3)を用いて、 臨床検査技師による脳波および眼球振動測定
測定時間:約10分
【0057】
脳波測定は、まず本発明の粉体組成物を適用したシートを身に着けない状態で測定を始め、約5分経過後に測定を継続したままシートを腹部に当てる等によって身に着けてもらって脳波に変化が生じるかを確認した。得られた脳波データの評価方法は以下の通りである(
図6を参照)。測定により
図6の(a)図のような脳波データを得る。水平長辺方向が時間軸であり、図の右奥から左手前へ向かって時間が進行している。水平短辺方向は測定される脳波の種類を示しており、左奥方向から手前に向かって順に眼球振動δ波、θ波、α波、β波であることを示している。直交縦軸が脳波電圧を示しており、各波形の高さが高いほど脳波電圧が高いことを示している。実測で得られるのは3次元カラー画像であり、脳波電圧が高い部分は赤からピンクに着色され、順に黄-緑-青と低くなる。実測データはこのようにデータの色分けによって脳波の高低が一目瞭然となっているが、本願に添付の図はモノクロ変換したものであるため、主に波形の形状によって以下の説明を行う(適宜、色の違いをグレー濃淡に変換して説明する場合もあり)。
【0058】
図6(a)に示すように、3Dチャートの一番奥に示される眼球振動の動きによって、被験者の眼球振動の有無を知ることができる。眼球振動が増えると波形が高くなるため、波形が低くかつ山状部分が疎らに見えるほど、眼球振動が少なく被験者がリラックスした状態であることを示す。
図6(b)はδ波を拡大したものであり、本図のδ-1図は被験者がストレスを感じている状態であり、δ-2を経てδ-3に行くほど被験者がリラックスしていることを示している。図においてδ-1及びδ-2図のおける山状や針状に見える部分は脳波電圧が高いことを示すピンクである。δ-3図の突起部はピンクであり、その手前の平坦部は緑-青で示される。
図6(c)図はβ波部分を拡大したものである。こちらも左のβ-1図は被験者がストレスを感じている状態であり、β-2を経てβ-3へ行くほどリラックス状態となる。
β-1及びβ-2の図において白く見える突起状部分は、カラーチャートでは脳波電圧が高いピンクで示された部分であり、β-2とβ-3図の手前側に現れた濃いグレーの平坦部は脳波電圧が一番低い青で示された部分である。その中間にある薄いグレー部分は、カラーチャートでは脳波が低いことを示す緑であった。
【0059】
[評価基準]
以上を踏まえて、測定により得られた脳波データから以下の基準によって本発明の粉体組成物を適用した各サンプルのシートについて、被験者に対するリラクゼーション効果の有無を確認した。評価は主に、眼球振動とβにおける波形に現れた山の数及び山の高さ変化により以下の通りとした。
○:被験者がシートを身に着ける前後で顕著にδ波とβ波にリラックス傾向が現れた
△:被験者がシートを身に着ける前後で、δ波とβ波にリラックス傾向が認められるがその度合いが小さい
×:被験者がシートを身に着ける前後で、δ波とβ波にリラックス傾向が現れたとまでは言えない
ここで、○評価と△評価の違いについては、例えば
図6(b)において、δ-1からδ-3へ変化した場合や、(c)においてβ-1からβ-3へ変化した場合のような顕著な減少が認められたときは○評価とした。変化度合がδ-1からδ-2へ程度だった場合や、β-1からβ-2へ程度のように、大きく減少したとまでは言えないものの明らかに減少したと認識できた場合には△評価とした。そして、グラフ上の変化が僅かであるため明らかに減少したとまでは認識できない場合、又は全く減少が認められない場合は、×評価とした。結果は表1に示した。
【0060】
比較例であるサンプルNo.1~6では、脳波データから被験者がリラックス状態に遷移したことは読み取れなかった。唯一、サンプルNo.4のみは、シート着衣によってリラックス方向へ波形が変化したと認められる部分もあったがその度合いは小さく、また、ほぼ変化なしと言える部分もありシートの効果としてはやや疑問であった。本発明の実施例であるサンプルNo.7~10は、シート着衣により被験者がリラックス状態になったことを示す顕著な波形変化が認められた。サンプルNo.11についてもリラックス状態への明らかな波形変化が認められたが、その変化度合が小さいため△評価とした。以上より、ラジウム粉末と炭化粉のいずれか一方のみ(サンプルNo.1及び2)ではリラクゼーション効果がないことが確認された。同時に、ラジウム粉末と炭化粉の両方を含有するのみ(サンプルNo.3~6)ではリラクゼーション効果は得られず、特定の比率で両方を含有する場合(サンプルNo.7~11)にのみリラクゼーション効果を有することが確認された。
【0061】
試験1-4 <被験者の効果実感アンケート>
本発明の粉体組成物を適用したシートを2日から10日程の間、日常生活で体に装着してもらい、なんらかの効果が感じられたかについてアンケート調査を行った。各被験者は、本発明の粉体組成物を適用したシートを、自身が日常生活で使用し易い形状となるようにカットしたものを身体に装着した。表1に示したサンプルNo.3~11について、各サンプル毎に13人から15人を被験者とした。被験者は、10代~70代の男女である。以下に示すような、何らかの効果を実感したと思われる回答について肯定的意見とし、装着前と比べて大きな変化が現れたとまで言えない場合は肯定的意見としてはカウントしていない。尚、装着することで症状が悪化したというような完全な否定的意見は全くなかった。各サンプル毎に、(肯定的意見を得た人数/当該サンプルの被験者数)により肯定的意見の%を求め、得られた値の一の位を四捨五入して10%毎の値として表1に結果を示した。
【0062】
[肯定的意見の例]
・円状にカットしたシートをインソールとして靴の中に入れたり、ズボンのポケットに入れて使用したところ、通勤時に疲労が軽減して電車内で立ちっ放しでも苦にならなくなった。
・アイマスクとして使用することで、目の疲労回復が実感できたと共に、ものが見易くなった気がする。
・メガネの弦にシートを巻いて使用したところ、眼精疲労の回復を感じる事ができ、以前よりはっきりと物が見えるようになったと感じる。
・自動車の運転時に、座席にシートを敷いて使用したところ、目が疲れることがなくなり、体の疲れもたまらなくなった。
・シートを折り畳んでベルト状として首に巻いて使用したところ、以前より体のだるさを感じなくなった。
・就寝時に頭や背中の下にシートを敷いて寝たところ熟睡できた。
【0063】
[総合評価]
以上の試験1-1~試験1-4の結果から、各サンプルについてリラクゼーション効果の有無を総合的に評価して結果を表1に示した。サンプルNo.4~6は簡易バランス試験の結果は良好であったが、脳波測定試験においてはリラクゼーション効果が認められなかったことから総合評価は×とした。本発明の実施例であるサンプルNo.7~11は、簡易バランス試験のみならず、脳波試験においても良好なリラクゼーション効果が認められた。また、これらの実施例サンプルNo.7~11では、関節可動域試験の結果も良好であった。尚、試験1-4のアンケート調査における肯定的意見(%)は、主観的なものであるため、総合評価を出すにあたっては判断材料としていない。
炭化粉の作成方法によって効果が異なるかを以下の試験により確認した。入手した稲のもみ殻を、焼却炉で表2の焼成温度及び焼成時間で焼成することで、もみ殻くん炭を作成し、それを粉砕して微粒粉末としたものを炭化粉とした。ラジウム粉末は、ラジウム天然鉱石を粉砕して微粒粉末とした市販品を用いた。実施例1で示した表1のサンプルNo.9と同様に、ラジウム1重量部に対して、炭化粉を10重量部の割合で混合して本発明の粉体組成物とした。当該粉体組成物を用いて実施例1における(1)<簡易バランス試験>と同様の方法にて印刷を介してシートを作成した。
本試験における炭化粉を作成する際の焼成温度の設定は、焼却炉の温度設定ダイヤルを用いて行ったものであるため、それが焼却時間内における最高到達温度となる。実施例であるサンプルNo.26~29は、設定した時間内に炭化させるために、焼成スタートから強い火力を用いることとなった。これにより、サンプルNo.26~29は短時間で設定した到達最高温度に到達して焼成されることとなった。これに対してサンプルNo.21~25は設定した焼成時間に余裕がありスタートから強い火力を用いる必要がなかったため、焼成スタート時から最高到達温度に達するまでにより長い時間がかかった。結果的に、比較例であるサンプルNo.21~24は低温長時間焼成に近い焼成となり、実施例であるサンプルNo.25~29は高温短時間焼成となった。サンプルNo.22と25、23と26、24と27のように同じ焼成温度であっても効果に違いが出たのはこのためと考えられる。尚、サンプルNo.23及びNo.26の炭化粉についてケイ素含有量を分析したところ、No.23では40%であったのに対してNo.26では95%であった。
表3に示した評価結果から、ケイ素含有率35~98%の炭粉を用いて本発明の粉体組成物を作成した場合に、被験者に対するリラクゼーション効果が見られた。しかしながら、植物由来のくん炭を使用した場合に比べると、その効果は明らかに弱かった。この結果から、ケイ素含有量によりリラクゼーション効果が異なる事が分かったが、無機ケイ素を用いた場合には、植物素材を焼成することで作成したくん炭を用いた炭化粉よりも効果が弱い結果となった。