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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096931
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】詰替用包装袋及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/62 20060101AFI20230630BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20230630BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230630BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230630BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20230630BHJP
   B31B 70/81 20170101ALI20230630BHJP
   B31B 160/20 20170101ALN20230630BHJP
   B31B 170/20 20170101ALN20230630BHJP
【FI】
B65D75/62 A
B32B9/00 A
B32B27/00 H
B32B27/36
B65D33/00 C
B31B70/81
B31B160:20
B31B170:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213001
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椎橋 祐太
(72)【発明者】
【氏名】川西 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】花田 真一
【テーマコード(参考)】
3E064
3E067
3E075
4F100
【Fターム(参考)】
3E064AB23
3E064BA27
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064EA23
3E064EA30
3E064FA03
3E064HM01
3E064HP01
3E064HP02
3E064HS05
3E067AA03
3E067AC01
3E067BA12A
3E067BB15A
3E067BB18A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067CA05
3E067CA06
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB02
3E067EB07
3E067EB10
3E067EE02
3E067EE59
3E067FA01
3E067FB07
3E067FC01
3E075AA07
3E075BA47
3E075BA70
3E075BB14
3E075CA02
3E075DB17
3E075DD12
3E075DD45
3E075DD49
3E075DE12
3E075DE23
3E075GA05
4F100AB10B
4F100AK42A
4F100AK42C
4F100AK63D
4F100AK63G
4F100DA04
4F100DB021
4F100DB022
4F100EH661
4F100EH662
4F100EH66B
4F100EJ332
4F100EJ381
4F100EJ38A
4F100EJ38C
4F100GB16
4F100JK033
(57)【要約】      (修正有)
【課題】加重方向への縦裂けの発生を抑制可能な注口部を有する自立性の詰替用包装袋を提供する。
【解決手段】外層S11が二軸延伸PET層、中間層S12が片面にアルミニウム蒸着膜が形成された二軸延伸PET層、内層S13が130μm以上の厚みを有する直鎖状低密度ポリエチレン層から構成される積層体からなり、中間層S12のアルミニウム蒸着膜が形成された面は内層S13側であり、注口部11は、詰替用包装袋1の上部の左右いずれか一端から突起状に形成され、レーザ加工により外層S11側から設けられた傾斜易開封線12,22を有する、詰替用包装袋。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注口部を有する自立性の詰替用包装袋であって、
外層が二軸延伸PET層、中間層が片面にアルミニウム蒸着膜が形成された二軸延伸PET層、内層が130μm以上の厚みを有する直鎖状低密度ポリエチレン層から構成される積層体からなり、
前記中間層の前記アルミニウム蒸着膜が形成された面は内層側であり、
前記注口部は、前記詰替用包装袋の上部の左右いずれか一端から突起状に形成され、レーザ加工により前記外層側から設けられた傾斜易開封線を有する、詰替用包装袋。
【請求項2】
前記外層がメカニカルリサイクルにより再生された二軸延伸PET層である、請求項1に記載の詰替用包装袋。
【請求項3】
前記傾斜易開封線が複数本形成された、請求項1又は2に記載の詰替用包装袋。
【請求項4】
前記積層体は、前記外層と前記中間層との間に印刷層を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の詰替用包装袋。
【請求項5】
上部の左右いずれか一端から突起状に形成された注口部を備えた自立性の詰替用包装袋の製造方法であって、
外層、中間層、および内層を積層して積層体を形成する段階であり、前記外層は、二軸延伸PET層であり、前記中間層は、前記内層側の面にアルミニウム蒸着膜が形成された二軸延伸PET層であり、前記内層は、厚さ130μm以上の直鎖状低密度ポリエチレン層である、段階と、
前記積層体の前記外層側からレーザ加工を行って、前記注口部に傾斜易開封線を形成する段階と、
前記積層体を用いて包装袋を製袋する段階と、
を備える、詰替用包装袋の製造方法。
【請求項6】
前記外層と前記中間層との間に印刷層を形成する段階を備える、請求項5に記載の詰替用包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、詰替用包装袋及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肩部から斜め上方向に突出した注口部を備えたパウチ容器(包装袋と呼ぶ)が知られている。このような包装袋は、注口部を手指で摘まみ、注口部の全幅を斜めに横断する線状溝(傾斜易開封線と呼ぶ)にガイドされて引き裂くことで、容易に注口部を開封して注口を形成することができる。例えば特許文献1には、ベースフィルム層、延伸ポリエステル層にアルミニウム蒸着を施したバリア層、およびシーラント層からなる積層体の周縁部をヒートシールして構成される、注口部を備えた包装袋が開示されている。注口部の傾斜易開封線は、非熱融着部分ではベースフィルム層およびバリア層を貫通しており、熱融着部分では全層を貫通している。
特許文献1 特開2003-137308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、アルミニウム蒸着膜を含む積層体をレーザ加工しても引き裂きをガイドするのに十分に深い線状溝が形成されず、開封する際に積層体が線状溝から逸れて縦方向に引き裂かれてしまい(所謂、縦裂けが生じてしまい)、注口を形成できないことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、注口部を備える自立性の詰替用包装袋であって、外層が二軸延伸PET層、中間層が片面にアルミニウム蒸着膜が形成された二軸延伸PET層、内層が130μm以上の厚みを有する直鎖状低密度ポリエチレン層から構成される積層体からなり、中間層のアルミニウム蒸着膜が形成された面は内層側であり、注口部は、詰替用包装袋の上部の左右いずれか一端から突起状に形成され、レーザ加工により外層側から設けられた傾斜易開封線を有する、詰替用包装袋が提供される。
【0005】
本発明の第2の態様においては、注口部を備えた自立性の詰替用包装袋の製造方法であって、外層、中間層、および内層を積層して積層体を形成する段階であり、外層は、二軸延伸PET層であり、中間層は、内層側の面にアルミニウム蒸着膜が形成された二軸延伸PET層であり、内層は、厚さ130μm以上の直鎖状低密度ポリエチレン層である、段階と、積層体を用いて包装袋を形成する段階と、注口部を、包装袋の上部の左右いずれか一端から突起状に形成する段階と、積層体の外層側からレーザ加工を行って、注口部に傾斜易開封線を形成する段階と、を備える、詰替用包装袋の製造方法が提供される。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】本実施形態に係る包装袋の構成を示す。
図1B】包装袋が開封された状態を示す。
図1C】比較例に係る包装袋に縦裂けが生じた状態を示す。
図2A】比較例に係る積層体の易開封加工前の状態を示す。
図2B】比較例に係る積層体の易開封加工後の状態を示す。
図3A】本実施形態に係る積層体の易開封加工前の状態を示す。
図3B】本実施形態に係る積層体の易開封加工後の状態を示す。
図4】易開封加工が施された積層体の製造工程のフローを示す。
図5】包装袋の連続シートに対して行われる易開封加工を示す。
図6】レーザ加工機の概略構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1Aに、本実施形態に係る包装袋1の構成を示す。包装袋1は、上部の左右いずれか一端から突起状に形成された注口部11を備える自立性の詰替用包装袋である。ここで、注口部11の中ほどにその全幅を斜めに横断する線状溝、すなわち後述する傾斜易開封線12,22が設けられ、傾斜易開封線12,22に沿って引き裂くことで注口部11を容易に開封して注口を形成することができる。なお、図1A等において、図面左右方向を左右方向又は横方向、図面上下方向を上下方向又は縦方向、図面手前を単に手前、図面奥方を単に奥方とも呼ぶ。包装袋1は、積層体(フィルム)10,20,30を備える。
【0010】
積層体10,20は、それぞれ包装袋1のおもて面及び裏面を構成する可撓性の積層体である。積層体10,20は、一例として矩形状を有し、ただし3つの角部は丸く加工され、残る1つの角部には注口部11の片面となる突起が形成され、周縁部に互いに又は積層体30と貼り合わせるためのシール領域、すなわち、左端部および注口部周辺に互いに貼り合わせるためのシール領域18a,28a、右端部に互いに貼り合わせるためのシール領域18b,28b、上端部に互いに貼り合わせるためのシール領域18c,28c、下端部に積層体30と貼り合わせるためのシール領域18d,28dが設けられている。ここで、シール領域18d,28dは、左右の両端が中央に対して縦方向に幅広である。本実施形態では、それらの境界は放物線状に配置することとするが、これに限らず、例えばV字状に配置することとしてもよい。積層体10,20は、傾斜易開封線12,22、及びノッチ17bを含む。
【0011】
傾斜易開封線12,22は、包装袋1の注口部11を開封する際に積層体10,20の引き裂きをガイドするためにそれらの表面に設けられた加工溝で、注口部11の全幅に亘ってそれぞれ斜めに形成されている。傾斜易開封線12,22は、すくなくとも一つ設けられればよいが、複数平行に設けることにより、一つの傾斜易開封線12,22から引き裂きが逸れてしまっても、他の傾斜易開封線12,22によって引き裂きをガイドし、縦裂け等の意図しない引き裂きを防止することができる。
【0012】
ノッチ17bは、積層体10,20の引き裂きを開始するための切り欠きであり、注口部11の傾斜易開封線12,22に連続するように形成されている。なお、ノッチ17bは、互いに貼り合わされたシール領域に形成されることで、包装袋1の密封が維持される。
【0013】
積層体30は、包装袋1の底面を構成する可撓性の積層フィルムである。積層体30は、一例として矩形状を有し、ただし4つの角部は丸く加工され、その中心を通って横方向に延びる基準線L30に対して山折りに折り曲げられ、手前半部に積層体10のシール領域18dとシールされるシール領域30c、奥方半部に積層体20のシール領域28dとシールされるシール領域30dが設けられている。シール領域30c,30dの左右端部には、積層体10,20の内面を互いに接着するための半円形状の2組の切欠き30eが設けられている。
【0014】
包装袋1は、上述の部材を用いて形成される。まず、積層体10,20の内面を互いに対向し、積層体30を基準線L30について二つ折りしてその折辺を上に向け、一片を積層体10に、他片を積層体20に対向して積層体10,20の間に挿入する。次いで、積層体10,20,30の周縁部、すなわち積層体10,20のシール領域18a,28a並びにシール領域18b,28b、積層体10のシール領域18d及び積層体30のシール領域30c、積層体20のシール領域28d及び積層体30のシール領域30dをそれぞれヒートシール(熱融着)する。このとき、積層体30の切欠き30eを介して、積層体10のシール領域18d及び積層体20のシール領域28dの一部が直接融着する。次いで、レーザ加工装置を用いて傾斜易開封線12,22を設けた後、規定寸法にカットし、コーナーカット加工、ノッチ17bの加工をおこなう。最後に、包装袋1の上端側の開口から内容物を充填し、積層体10,20のシール領域18c,28cをヒートシールする。それにより、二つ折りされた積層体30の中央領域30aが広がって凹状の底面を形成するとともに、積層体10,20の下端が、左右端部が積層体30の切欠き30eを介して固定され且つ左右中央が広がって脚部を形成することで、包装袋1は自立可能なスタンディングパウチを構成する。
【0015】
図1Bに、傾斜易開封線12,22に沿って注口部11が開封された包装袋1を示す。包装袋1を開封する際には、ユーザは、注口部11の先端及び基端をそれぞれ左右の手指で摘まみ、ノッチ17bの下側に対して上側を手前に引く又は奥方に押すことでノッチ17bを広げ、それらに連続する傾斜易開封線12,22に沿って注口部11を他側まで引き裂く。それにより、注口部11の上端部が切り取られて包装袋1が開封され、注口が形成される。
【0016】
図1Cに、縦裂けの生じた比較例に係る包装袋1dを示す。注口部11は斜め方向に突出しているため、注口部11の略中央を手指で摘まんで引き裂く際に、注口部11に対して下方向(加重方向)に大きな力が加わる。傾斜易開封線12,22が十分深くない場合、この下方向の力によって傾斜易開封線12,22から引き裂きが逸れて、縦裂け1daを生じてしまうことがある。この傾向は、外層に二軸延伸PETを使用した場合に多く見られるため、環境対応等の目的で、外層として二軸延伸されたリサイクルPETを使用する際には、特に問題となる。
【0017】
このような縦裂けを抑制するために、本発明者らはまず易開封加工(レーザ加工)の方法を検討した。
【0018】
表1に、易開封加工(レーザ加工)の条件1~8を示す。各条件のとおり、レーザ出力、及びスキャンスピードをそれぞれ設定して易開封加工を施した包装袋を10袋作成し、実際に注口部11を引き裂いて縦裂けの発生数を4段階で評価した。ここで、レーザ出力は一面の積層体を加工するレーザの基準出力21~22W、他面の積層体を加工するレーザの基準出力25~26Wに対して与えられ、スキャンスピードはレーザ光の焦点が積層体上を走査する速度である。
【表1】
官能評価基準:
A:縦裂け発生が0袋、
B:縦裂け発生が1~2袋、
C:縦裂け発生が3~5袋、
R:縦裂け発生が6袋以上。
【0019】
条件1~3では、スキャンスピードY(中速)に対してレーザ出力を100%まで上げることで、包装袋の縦裂けは少なくなった。また、条件4から8では、スキャンスピードX(低速)に対してレーザ出力を50、60、70、80、90%と上げることで、包装袋の縦裂けは少なくなった。特に、レーザ出力90%で縦裂けは発生しなかった。
【0020】
このように、レーザ出力を増加させること及びスキャンスピードを低下させることで縦裂けを有意に抑制できることが判明した。しかしながら、例えば長期の使用によりレーザ出力が下がると縦裂けが生じ得ることから、縦裂けを防止するためにレーザ出力を厳格に管理する必要がある。また、スキャンスピードを下げることは生産速度の低下につながり得る。そこで、本発明者らは、積層体の構造でもって、縦裂け抑制を図ることを検討した。
【0021】
図2Aに、比較例に係る積層体S'の断面構造を示す。ここで、積層体S'の基本構成を説明するために、易開封加工の前状態(傾斜易開封線12,22が形成される前状態)における積層体S'の断面構造を示す。積層体S'は、外層S11、印刷層S14、中間層S12'、内層S13を積層して形成される。外層S11は、中間層S12'を擦れ等から保護する層であり、印刷層S14は印刷物が設けられる層であり、中間層S12'は光等の侵入を防ぐバリア層であり、内層S13はシーラント層である。中間層S12'は、内層S13側に二軸延伸PET層S122及び外層S11側にアルミニウム蒸着膜S121を備える。
【0022】
図2Bに、レーザにより易開封加工を施した比較例に係る積層体S'の断面構造を示す。易開封加工により積層体S'に線状溝12が形成されている。しかし、アルミニウム蒸着膜S121によりレーザ光が反射されることで、傾斜易開封線12(線状溝12)は外層S11のみ貫通し、中間層S12'には届いていない。従って、比較例に係る積層体S'の構成では、十分に深い傾斜易開封線12,22は形成されず、これが包装袋1の縦裂けの要因となり得る。
【0023】
図3Aに、本実施形態に係る積層体(包装袋用フィルム)Sの断面構造を示す。ここで、積層体Sの基本構成を説明するために、易開封加工の前状態(傾斜易開封線12,22が形成される前状態)における積層体Sの断面構造を示す。本発明に係る積層体は、外層、中間層、内層の3層構成であるが、各層間に接着剤層及び印刷層を設けてもよい。図3Aの積層体Sは、外層S11、中間層S12、内層S13、印刷層S14、および接着剤層(図示しない)を含む。
【0024】
外層S11は、二軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)層であり、例えば12μm厚で形成されることで、高い透明性及び非伸縮性を備える。二軸延伸PET層は、例えばチューブラ法又はテンター法により成形され、高い強靭性を備えると同時に印刷用の基層としても好適である。なお、外層S11の二軸延伸PET層を、メカニカルリサイクルにより再生された二軸延伸PETを用いて形成してもよい。外層S11の二軸延伸PET層として、メカニカルリサイクルにより再生された二軸延伸PET層を用いることにより、環境性を向上させた詰替用包装袋を提供することができる。
【0025】
中間層S12は、二軸延伸PET層S122の片面にアルミニウム蒸着膜S121を形成したものであり、印刷層S14を介して外層S11上に積層され、外層S11と後述する内層S13との間に位置する。中間層S12は、アルミニウム蒸着膜S121を形成されることにより、詰替用包装袋の内容物を光、酸素等のガス、水分等から内容物をバリアする。ここで、アルミニウム蒸着膜は酸素や水だけでなく光もバリアでき、かつ金属蒸着によって容易に膜を形成できるという利点を有する。しかし、先述のとおりアルミニウム蒸着膜S121が易開封加工のためのレーザ光を反射することで、それより下層への線状溝の形成を妨げる蓋然性がある(図2B参照)。そこで、アルミニウム蒸着膜S121を図2Bに示した比較例に係る積層体S'のように外層S11側に設けるのではなく図3Bに示すように内層S12側に設けることで、外層S11と中間層S12のアルミニウム蒸着膜S121を除く部分の全厚みについて線状溝を形成して、引き裂きをガイドするのに十分な深さの傾斜易開封線を得ることができる。
【0026】
内層S13は、直鎖状低密度ポリエチレン層であり、130μm以上の厚みを有することにより、包装袋1の洗剤等の内容物が内層S13に浸透することを防ぎ、積層体Sの各層間の接着力を維持することができる。また、スタンディングパウチを形成した際に自立可能な高い剛性を備えるとともに、100~130℃で溶融してヒートシール(熱融着)するのに好適なシーラント層を構成する。
【0027】
印刷層S14は、外層S11と中間層S12とにより挟まれた極薄層である。印刷層S14は、例えば、外層S11の内側の面、または中間層S12の外側の面に、凸版印刷(フレキソ)、凹版印刷(グラビア)、平版印刷(オフセット)等によって印刷形成される。このような構成により、印刷層S14で画像や商標等を示すことにより商品の訴求力を向上させつつ、印刷層S14を外層S11で外部刺激から保護することができる。
【0028】
図3Bに、レーザにより易開封加工を施した積層体Sの断面構造を示す。易開封加工により積層体Sに線状溝12が形成されている。アルミニウム蒸着膜S121が内層S13側にあるため、レーザ光が外層S11及び中間層S12の二軸延伸PET層S122を透過することで傾斜易開封線12,22の線状溝が中間層S12の二軸延伸PET層S122を貫通して形成され、傾斜易開封線12,22が十分深くなり、図1Cに示した包装袋1の縦裂けが抑制される。ここで、レーザ加工により形成された線状溝は、カッター刃等を用いて形成された線状溝と異なり、溝の両側に、レーザ光を照射されて変形したフィルム部材が盛り上がり、山状のショルダ部が形成される(図示しない)。このショルダ部が、包装袋を引き裂く際にガイドの役割を果たすため、レーザ加工線状溝は開封線として適している。
【0029】
このように、注口部11を有する自立性の詰替用包装袋1において、外層S11が二軸延伸PET層、中間層S12が片面にアルミニウム蒸着膜S121が形成された二軸延伸PET層、内層S13が130μm以上の厚みを有する直鎖状低密度ポリエチレン層から構成される積層体Sからなり、中間層S12のアルミニウム蒸着膜S121が形成された面は内層S13側であり、注口部11は、詰替用包装袋1の上部の左右いずれか一端から突起状に形成され、レーザ加工により外層S11側から設けられた傾斜易開封線12,22を有することにより、アルミニウム蒸着膜S121によって光、ガス、水を遮断すると同時に、斜め方向に注口部11を引き裂いて注口を形成するにあたって加重方向への縦裂けの発生を抑制可能な詰替用包装袋を提供することができる。
【0030】
なお、非加熱用パウチ容器の積層体として、上述の外層S11、中間層S12、及び内層S13の積層を使用することができる。外層S11は印刷層S14を積層するのに好適であり、中間層S12は高いバリア性を有し、内層S13はヒートシール層として好適である。
【0031】
図4に、本実施形態に係る易開封加工が施された積層体Sの製造工程S100のフローを示す。
【0032】
ステップS101では、外層S11として片面にグラビア印刷機等によって印刷層S14を設けた二軸延伸PET層を、中間層S12として片面にアルミニウム蒸着膜S121を形成した二軸延伸PET層S122を、内層S13として130μm以上の厚みを有する直鎖状低密度ポリエチレン層を用意し、これらを積層して積層体Sを形成する。積層の際、中間層S12のアルミニウム蒸着膜S121が、内層S13側を向くようにする。なお、積層は、接着剤を使用して層間を熱圧着するドライラミネートによってもよいし、内層S13の材料を溶融し、中間層S12上にフィルム状に押し出す押出コートラミネートによってもよいし、或いは熱可塑性のウレタン系接着剤のように溶剤を含まない接着剤を使用して、乾燥工程無しで接着するノンソルラミネート(無溶剤ラミネートとも呼ぶ)によってもよい。
【0033】
ステップS102では、ステップS101で形成された積層体Sを裁断して幅が決められた原反フィルム(積層体10および積層体20の連続体)を形成する。ここで、ステップS101の積層工程において積層体Sに不良部分が検出された場合、フィルム端部にフラッグが挿入される。そこで、そのフラッグを目印にして不良部分を切断して除去し、分断された積層フィルムを接続してもよい。さらに、フィルムの滑り性を向上するために内面側に散粉してもよい。
【0034】
ステップS103では、各原反フィルムにおける注口部11となる部位に注口エンボス加工を施す。積層体10,20それぞれの注口部11となる部位をヒータで熱し、内層S13側に凸型の、外層S11側に凹型の金型を配置して、外層S11側に広がるように挟圧し、注口部11となる部位にエンボス加工を行う。
【0035】
ステップS104では、2枚の原反フィルムと底部フィルムを重ね、包装袋1の底となる部分のヒートシール(ボトムシール)、および両側となる部分および注口部周辺のヒートシール(サイドシール)を施し、包装袋1の連続シートSを形成する。ボトムシールでは、底となる部分をヒータで加熱して内層S13を溶融させ、両原反フィルムを挟圧して密着させ、冷却する。サイドシールでは、包装袋1の両側となる部分および注口部周辺に同様の加工を行う。
【0036】
ステップS105では、ステップS104で形成された包装袋1の連続シートSに対して、レーザ加工を行い、傾斜易開封線12,22を形成する。
【0037】
図5に、包装袋1の連続シートSに対して行われる易開封加工を示す。包装袋1の連続シートSにおいて、2つの包装袋1の上側が隣り合うように、すなわち、注口部11が隣り合うように2つの包装袋1が並び、この2つの包装袋1のセットが、包装袋1の両側方向に連続する。そこで、矢印方向に搬送される連続シートSにおける隣り合う2つの注口部11にV字状にレーザを照射することで、2つの包装袋1に傾斜易開封線が効率良く形成される。
【0038】
ステップS106では、ステップS105で加工を施された包装袋1の連続シートSを規定寸法にカットし、さらにノッチカット加工、コーナーカット加工を施す。その後、加工状態をインラインカメラで画像検査し、規定数をスタックして払い出し梱包を行う。
【0039】
このように、上部の左右いずれか一端から突起状に形成された注口部11を備えた自立性の詰替用包装袋1の製造方法が、外層S11、中間層S12、および内層S13を積層して積層体Sを形成する段階であり、外層S11は、二軸延伸PET層であり、中間層S12は、内層S13側の面にアルミニウム蒸着膜S121が形成された二軸延伸PET層であり、内層S13は、厚さ130μm以上の直鎖状低密度ポリエチレン層である、段階と、前記積層体の前記外層側からレーザ加工を行って、前記注口部に傾斜易開封線を形成する段階と、積層体Sを用いて包装袋1を製袋する段階と、を備えることにより、アルミニウム蒸着膜S121によって光、ガス、水を遮断すると同時に、斜め方向に注口部11を引き裂いて注口を形成するにあたって加重方向への縦裂けの発生を抑制可能な詰替用包装袋を提供することができる。
【0040】
図6に、レーザ加工機50の概略構成を示す。レーザ加工機50は、ステップS105で包装袋の連続シートSにレーザ光を照射して傾斜易開封線12,22を形成する装置であり、光源51、反射素子52、集光光学系53、および走査光学系54を備える。なお、これらの装置は連続シートSの上面に傾斜易開封線12を形成するものであり、さらに連続シートSの下面に傾斜易開封線22を形成する同様の装置が備えられる。
【0041】
光源51は、レーザ光を発生する光源装置であり、本実施形態では一例としてCOレーザを採用する。なお、包装袋1の連続シートSに傾斜易開封線12,22を形成することができれば、任意の波長の任意のレーザ光源を採用してもよいし、レーザ光に限らず高強度の光ビームを発するその他の光源を使用してもよい。
【0042】
反射素子52は、レーザ光を反射して連続シートSに向ける光学素子であり、例えばミラー素子が界面に設けられたプリズムを採用することができる。
【0043】
集光光学系53は、レーザ光を集光して連続シートS上にスポットを成形するためのレンズ素子を含む光学系である。
【0044】
走査光学系54は、集光光学系53により成形されたレーザ光を連続シートS上で二次元方向に走査するための光学系である。
【0045】
光源51から射出されたレーザ光は、反射素子52を介して連続シートSに向けられ、集光光学系53により連続シートS上でスポットを形成し、走査光学系54により、矢印方向に搬送される連続シートS上で二次元走査される。それにより、連続シートSに傾斜易開封線12,22等が形成される。
【実施例0046】
(実施例1)
厚さ12μmの二軸延伸PET層を用意し、これを外層とした。片面にアルミニウム蒸着膜が形成された厚さ12μmの二軸延伸PET層を用意し、これを中間層とした。厚さ130μmの直鎖状低密度ポリエチレン層を用意し、これを内層とした、外層、中間層および内層を、中間層のアルミニウム蒸着膜が内層側を向くように配置してドライラミネートにより積層して積層体を得た。この積層体を用いて、注口部と傾斜易開封線を備える包装袋を10袋成形した。易開封加工はレーザ出力50%、スキャンスピードY(中速)で行った。
【0047】
(実施例2)
易開封加工をレーザ出力70%、スキャンスピードZ(高速)で行ったこと以外は実施例1と同様にして、包装袋を10袋成形した。
【0048】
(比較例1)
中間層のアルミニウム蒸着膜を外層側に向けたこと以外は実施例1と同様にして、包装袋を10袋成形した。
【0049】
(比較例2)
中間層のアルミニウム蒸着膜を外層側に向けたこと以外は実施例2と同様にして、包装袋を10袋成形した。
【0050】
【表2】
官能評価基準:
A:10袋中、縦裂け発生が0袋、
R:10袋中、縦裂け発生が6袋以上。
【0051】
中間層のアルミニウム蒸着膜が内層側に存在する実施例1,2のいずれも、レーザ加工の条件に依らず、10袋全てについて縦裂けは発生しなかった。一方、中間層のアルミニウム蒸着膜が外層側に存在する比較例1,2ではレーザ加工の条件を変更しても、10袋中6袋以上で縦裂けが発生した。このことから、本発明の積層体の構成が、レーザ加工の詳細条件を要さず、簡易に、縦裂けを起こさない包装袋を実現できることが分かる。
【0052】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0053】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0054】
1,1d…包装袋、1da…縦裂け、10,20,30…積層体(フィルム)、12,22…傾斜易開封線(線状溝)、17b…ノッチ、18a,18b,18c,18d,28a,28b,28c,28d…シール領域、30a…中央領域、30c,30d…シール領域、30e…切欠き、50…レーザ加工機、51…光源、52…反射素子、53…集光光学系、54…走査光学系、60…製袋装置、S,S'…積層体(包装袋用フィルム、連続シート)、S100…製造工程、S11…外層、S12,S12'…中間層、S121…アルミニウム蒸着膜、S122…二軸延伸PET層、S13…内層、S14…印刷層。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6